特許第5721090号(P5721090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5721090
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】枠組足場洗浄用回転ノズルヘッド
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/02 20060101AFI20150430BHJP
   E04G 19/00 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   B08B3/02 F
   B08B3/02 G
   E04G19/00
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-114524(P2014-114524)
(22)【出願日】2014年6月3日
【審査請求日】2014年6月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506329155
【氏名又は名称】株式会社ワールドエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】安藤 誠治
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−080265(JP,A)
【文献】 特開平09−295013(JP,A)
【文献】 特許第3776437(JP,B2)
【文献】 特許第4204555(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/02
E04G 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場で使用される枠組み足場を加圧水で洗浄するために用いられる回転しながら加圧水を噴出させる枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドであって、
加圧水の流路が内部に形成された矩形の棒状のノズルヘッド本体と、
前記ノズルヘッド本体の長手方向中心部に形成された、前記ノズルヘッド本体を回転させるときの回転中心でもある、加圧水を導入するための加圧水導入口と、
前記流路及び前記加圧水導入口と連通し、加圧水を噴出させるための複数のスプレーノズルと、を備え、
前記ノズルヘッド本体の長手方向において、前記ノズルヘッド本体の回転中心を真ん中として片側半分を第1端部とし、反対側半分を第2端部としたとき、前記スプレーノズルは、前記ノズルヘッド本体の加圧水導入口が設けられた面と対向する面に、前記第1端部と第2端部とに交互に、前記ノズルヘッド本体の回転中心からの距離がそれぞれ、r1,r2,r3,r4,r5(nは自然数、r1<r2<r3<r4<r5)となるように配置される枠組足場洗浄用回転ノズルヘッド。
【請求項2】
建設現場で使用される枠組み足場を加圧水で洗浄するために用いられる回転しながら加圧水を噴出させる枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドであって、
加圧水の流路が内部に形成された矩形の棒状のノズルヘッド本体と、
前記ノズルヘッド本体の長手方向中心部に形成された、前記ノズルヘッド本体を回転させるときの回転中心でもある、加圧水を導入するための加圧水導入口と、
前記流路及び前記加圧水導入口と連通し、加圧水を噴出させるための複数のスプレーノズルと、を備え、
前記ノズルヘッド本体の長手方向において、前記ノズルヘッド本体の回転中心を真ん中として片側半分を第1端部とし、反対側半分を第2端部としたとき、前記スプレーノズルは、前記ノズルヘッド本体の加圧水導入口が設けられた面と対向する面に、前記第1端部と第2端部とに交互に、前記ノズルヘッド本体の回転中心からの距離がそれぞれ、r1,r2,r3,r4,r5,r6,r7,r8(nは自然数、r1<r2<r3<r4<r5<r6、r7=r8)となるように配置される枠組足場洗浄用回転ノズルヘッド。
【請求項3】
前記ノズルヘッド本体を回転させる回転手段として、回転により前記ノズルヘッド本体の重心位置が移動しない回転である自転を行う自転手段のみを更に備える請求項1または2に記載の枠組足場洗浄用回転ノズルヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧水を噴出照射して、建設用軽量仮設機材の一つであるパイプ製建枠を効率的に洗浄するための枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設作業現場等で足場として用いられるパイプ製仮設機材として枠組み足場がある。この枠組み足場について図2を参照して説明する。図2は、建設現場等で建設作業者の足場として用いられている枠組足場100を示した斜視図である。なお、図2は枠組足場100の2層目の組み立てについて示している。
【0003】
建設現場での枠組足場100の組み立て手順は、1層目(枠組足場1階部分)として先ずベースジャッキ108を所定の位置に配置し、次にパイプ材で形成された建枠102の縦架材102aの下端部をベースジャッキ108に差し込み、建枠102が接地面に対して垂直になるように設置する。
【0004】
さらに、交差筋交い(ブレース)106を隣り合う建枠102同士を繋ぐように取り付け、複数設置された建枠102それぞれが倒れないよう補強、最後に板付布枠104を建枠102上部の横架材102bに対し、板付布枠104の四隅に設置されたつかみ金具104aを引っかけて係止することで枠組足場1ユニット分の組み立てが完了。この工程を枠組足場100の1層目すべてについて行う。
【0005】
次に枠組足場100の2層目の組み立ては、枠組足場100の1層目の建枠102の縦架材102aの上端部に対し2層目の建枠102の縦架材102aの下端部を差し込むことにより行われる。以降は枠組足場100の1層目の組み立てと同様に交差筋交い106の取り付け、板付布枠104の取り付けにより行われる。
【0006】
以降、枠組足場3層目、4層目と建築物の規模に合わせて各階層が構築される。なお、図示していないが、枠組足場の他の構成品としては、階段、手摺柱、手摺など様々なものがある。
【0007】
このように、枠組み足場は地面に対して垂直に複数並列設置された建枠と、隣り合う建枠同士が倒れないように接続された交差筋交い(ブレース)と、建枠上部に足場として水平に設置される板付布枠とから構成され、足場の構築機材として使用されているものであるが、建設作業の性質から塗料やコンクリート等の付着物による汚れがひどく、その洗浄、除去には困難を伴っていた。
【0008】
また、枠組み足場は建築物の大型化、高層化に伴い建設現場に多数搬送する必要があることから軽量化が求められ、鋼製からアルミ合金製への置き換えが進められてきた。従来、粉塵の飛散や枠組み傷がつきやすいアルミ合金製の枠組み足場構成部材の損傷等の弊害を伴うことなく、加圧水を噴射して汚れを洗浄、除去する方法としてウォータージェット工法が用いられており、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0009】
特許文献1には、加圧水が送り込まれる回転軸の下端部に回転軸と直交するように円盤状の回転ノズルが取り付けられ、加圧水は円盤状の回転ノズルの中心から円盤内に盤面と平行に設けられた流路を通り盤面の外周側下面に形成されたノズル口から加圧水をジェットとして噴出させる円盤状回転ノズルが提案されている。
【0010】
また、特許文献2には、4本の給水管を水平方向にかつ放射状に取り付け、それぞれの先端部に加圧水を噴射する噴射ノズルを下方に向けて取り付けた構成の回転ノズルヘッドが提案されている。
【0011】
更に、特許文献3には、加圧水の供給を、受け軸を中心としてその廻りに水平方向に回転する回転ノズルヘッドの本体内に、搬送コンベヤー上に定置された建枠構成パイプの表裏いずれか片面側外周面における頂点とその周辺部分の湾曲面の範囲に対し直角方向に加圧水を噴出照射する複数の垂直ノズルと、更にその外側外周側面部分の湾曲面の範囲に対し加圧水を内向き傾斜方向に噴出照射する複数の内向き傾斜ノズルとを、夫々適宜間隔を配し同心円の円周上に配設せしめ、且つ、垂直ノズルと建枠構成パイプの表裏いずれか片面側外周面における頂点部分との距離即ち洗浄が有効に働く距離を建枠構成パイプの径とノズルの径に対応して所定距離に設定して用いることを特徴とする建枠洗浄用加圧水噴射回転ノズルヘッドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平09−4228号公報
【特許文献2】特開平10−140829号公報
【特許文献3】特許第4659158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これら従来のノズルヘッドは、回転円周上にノズル口を配置しているため回転ヘッドが大型化し、さらに加圧水噴射の反力に耐えられるよう高剛性を確保する必要があり高重量となること、機械加工部品が多くコスト高になる等の問題があった。
【0014】
また、大型、高重量であることから必然的に装置全体の構成として、回転ノズルヘッドを定位置に固定させて被洗浄物をコンベア等により単純移動させることで被洗浄物を洗浄する方式を採用せざるを得ない。そのため、枠組み足場の建枠のような主にパイプ材で構成されている被洗浄物の場合、ノズルヘッドの有効洗浄範囲に対して被洗浄物の表面積が小さいので、加圧水噴射の大部分が無駄になり、結果として水の使用量に対して、洗浄効果はあまり期待できないという問題があった。
【0015】
建枠のように構造物の大きさに対する表面積の割合が小さい被洗浄物の洗浄効率を向上させるため、小型で軽量、高剛性な回転ノズルヘッドを産業用ロボットのアーム先端に取り付けることが可能となれば、被洗浄物の形状データを元に、回転ノズルヘッドを予め教示された経路に合わせて直接被洗浄物の表面に対して正確に倣いつつ移動させるようにできるので、水の使用量を大幅に低減させ、かつ洗浄効率を高くすることが期待できる。
【0016】
本発明は、係る実情を鑑み、小型軽量であり、産業用ロボットに把持させて建設用枠組み足場を洗浄するのに適した枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の課題は、下記の各発明によって解決することができる。即ち、本発明の枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドは、建設現場で使用される枠組み足場を加圧水で洗浄するために用いられる回転しながら加圧水を噴出させる枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドであって、加圧水の流路が内部に形成された棒状のノズルヘッド本体と、前記ノズルヘッド本体の長手方向中心部に形成された、前記ノズルヘッド本体を回転させるときの回転中心でもある、加圧水を導入するための加圧水導入口と、前記流路及び前記加圧水導入口と連通し、加圧水を噴出させるための複数のスプレーノズルと、を備え、前記スプレーノズルは、前記ノズルヘッド本体の前記加圧水導入口が設けられた面と対向する面の、前記ノズルヘッド本体の長手方向両端部に少なくともひとつずつ配置されることを主要な特徴としている。
これにより、ノズルヘッド本体が棒状なので、ノズルヘッドを小型軽量なものとすることができる。
【0018】
また、本発明の枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドは、前記ノズルヘッド本体を回転させる回転手段として、回転によりノズルヘッドの重心位置が移動しない回転である自転を行う自転手段のみを更に備えることを主要な特徴としている。
これにより、構造が簡単なのでノズルヘッドを高速回転させることが可能になり、洗浄効果を高くすることができる。
【0019】
更に、本発明の枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドは、前記スプレーノズルが、回転中心である前記加圧水導入口を挟んで左右非対称に設置されていることを主要な特徴としている。
これにより、各スプレーノズルから照射される加圧水の軌跡は、前記ノズルヘッド本体の回転により同心円を描くので、それぞれ被洗浄物の別の場所を洗浄することになり、洗浄効率を高めることができる。
【0020】
更にまた、本発明の枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドは、前記スプレーノズルが、前記加圧水導入口を挟んで左側と右側とにそれぞれに2個以上設置され、前記左側と前記右側のそれぞれの最外側に配置された前記スプレーノズルが、鉛直方向に対して前記加圧水導入口側に30°〜45°の傾斜角度を有して設置されていることを主要な特徴としている。
これにより、枠組み足場の側面も効果的に洗浄することができる。
【0021】
また、本発明の枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドは、前記スプレーノズルが、前記加圧水導入口を挟んで左側と右側とにそれぞれに4個以上設置され、前記左側と前記右側のそれぞれの最外側に配置された前記スプレーノズルは、前記加圧水導入口に対して対称に設置され、それ以外のスプレーノズルは前記加圧水導入口に対して非対称に設置されていることを主要な特徴としている。
これにより、周速度が速くなるため、スプレーノズル1つあたりの洗浄力が落ちるノズルヘッド本体の長手方向両端側に配置されたスプレーノズルにおいても、ノズルヘッド本体の長手方向両端側それぞれのスプレーノズルからの加圧水が同じ軌跡を描くことになるので、2つのノズルヘッドで被洗浄物の同じ部分を洗浄し、スプレーノズル一つあたりの洗浄力の低下を補うことが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
小型軽量であり、産業用ロボットに把持させて建設用枠組み足場を洗浄するのに適した枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドの斜視図である。
図2】一般的な枠組足場の構成を示す斜視図である。
図3】本発明の枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドが被洗浄物を洗浄している状態を示す図である。
図4】産業用ロボットに取り付けた本発明の枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドにより被洗浄物の自動洗浄を行っている様子を示す斜視図である。
図5】スプレーノズルの配置に関する他の実施例を示す図である。
図6】板付布枠の洗浄作業を示す斜視図および正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本発明において、値の範囲を"〜"を用いて表した場合は、その両境界の値は、範囲内に含まれるものとする。
【0025】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施形態を図1図3および図4を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の枠組足場洗浄用回転ノズルヘッド10の斜視図、図3は本発明の枠組足場洗浄用回転ノズルヘッド10が被洗浄物を洗浄している状態を示す図、図4は産業用ロボットに取り付けた本発明の枠組足場洗浄用回転ノズルヘッド10により被洗浄物の自動洗浄を行っている様子を示す斜視図である。
【0026】
図1および図3を参照して、本発明に係る枠組足場洗浄用回転ノズルヘッド10(以後単に回転ノズルヘッド10とも称する。)は、主に、棒状のノズルヘッド本体12と複数のスプレーノズル14とから構成される。
【0027】
ノズルヘッド本体12は回転軸中心すなわち長手方向中心部に加圧水導入口(図示せず)が穿設されており、ノズルヘッド本体12の内部には長手方向に渡って流路(図示せず)が形成されている。この流路は、加圧水導入口とノズルヘッド本体12の下部である、ノズルヘッド本体12の加圧水導入口が設けられた面と対向する面に設置されたスプレーノズル14とを連通するよう形成されているため、加圧水導入口に供給された加圧水はスプレーノズル14から外部へと射出される。スプレーノズル14は、ノズルヘッド本体12の長手方向両端部に少なくともひとつずつ配置される。
【0028】
給水・回転ユニット20は、主に流体スピンドル30と、高圧ホース32と、モータ34と、空圧ホース36とから構成され、回転ノズルヘッド10に加圧水を供給し、かつ、高速回転させるという機能を有する。ハウジング22の側面にはブラケット24が取り付けられ、ブラケット24に穿設された取り付け穴24aにより図4に示す産業用ロボットアーム200の先端部202に給水・回転ユニット20が取り付け可能に構成される。
【0029】
ハウジング22には高圧ホース32を介して高圧プランジャポンプ(図示せず)により加圧された加圧水を回転ノズルヘッド10に供給する流体スピンドル30が設置される。流体スピンドル30の高圧ホース32の接続部とは反対側の端部にはフランジ16が流体スピンドル30の軸廻りに回転自在に設置され、ノズルヘッド本体12の側面に形成された突出部12aとフランジ16とがボルト18により強固に締結されている。これにより、流体スピンドル30に供給された加圧水はフランジ16を介してノズルヘッド本体12の加圧水導入口へと導かれる。モータ34は流体スピンドル30と並んでハウジング22に設置され、ハウジング22内部でギアまたはベルト等の駆動機構により流体スピンドル30を回転駆動する。
【0030】
モータ34は電動モータ、空圧モータ(エアモータ)、水圧モータ等、回転力を発生させる様々な駆動方式のものを使用することが可能であるが、洗浄水や洗浄後の汚水がシャワー状に周囲にまき散らされている環境での作業であることと、比較的デリケートな構造を有する産業用ロボットアーム200のアーム先端部202に取り付けられることなどから、軽量で、高トルク、制御のしやすいエアモータを使用することが好ましい。
【0031】
空圧ホース36はエアモータの駆動源であるエアコンプレッサ(図示せず)からの圧縮空気を供給するためのものであり、他の駆動形式モータの場合は電気モータを駆動させるための電力ケーブルまたは、水圧モータを駆動させる比較的低圧の水を供給するための水圧ホース等に置き換えられる。
【0032】
次にノズルヘッド本体12の形状と、ノズルヘッド本体12に取り付けられるスプレーノズル14の配置とについて図3を用いて説明する。
図3を参照して、本発明の回転ノズルヘッド10は、棒状の形状を成している。従来のノズルヘッドは、上述したように様々な形状があるが、本発明のように棒状の形状を成して回転する(自転のみで遊星回転、公転はしない)ものは存在しない。このように一番シンプルな棒状の形態にすることにより、以下の特徴を有する。
【0033】
即ち、軽量化が可能になる。また、重心位置を正確に特定しやすいため、重心位置に回転軸を設置しやすい。そのため、高速回転が可能になり、高速回転させてもぶれることがなく、カウンターバランスも必要ない。また、回転も自転のみなので、構造が簡単になると共に、遊星回転(自転しながら公転する回転)や公転(ノズルヘッドの重心を回転中心として回転させるのではなく、ノズルヘッドの重心自体が重心以外の回転中心を中心として回転すること)をする場合の問題点である、回転ぶれや、回転ぶれを防ぐためのカウンターバランスなどが必要ない。
【0034】
これに対して、特許文献1〜3に示される従来のノズルヘッドは、複雑な形状をしているので、重量が大きくなると共に、重心の位置を正確に特定することが困難になる。そのため、高速回転が困難であり、回転ぶれが発生し、カウンターバランスも必要となる。
【0035】
従来は、加圧水を噴出させるスプレーノズルが直線上ではなく、平面内に複数配置させることが、洗浄効果を高めるためには有利と考えられていた。そのため、特許文献1〜3に示されるような、平面上にスプレーノズルが配置される形状がいろいろ提案されてきた。
【0036】
本発明者は、鋭意研究の結果、実は、一番単純な形状である棒状のノズルヘッドが、洗浄困難な汚れを有する枠組足場の洗浄には極めて効果が高く最適であることを見いだした。また、ノズルヘッドは、遊星回転や公転をさせず、自転のみの場合の方が、構造が簡単になり、重量が軽くすむので、高速回転可能になり、結局は、遊星回転や公転させるよりも洗浄効果が高くなることも見いだした。
【0037】
特に産業用ロボットにノズルヘッドを把持させて、自動洗浄を行わせる場合には、軽量であり、かつ、ノズルヘッドの重心位置が回転により移動しない自転のみを行う本発明のノズルヘッドは、最適である。ノズルヘッドが遊星回転や公転を行う場合には、重心位置が回転により移動するので、カウンターバランスを付けても揺れが発生し、産業用ロボットにとって負担になるからである。
【0038】
よって、本発明の枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドは、回転によりノズルヘッドの重心位置が移動しない回転である自転を行う自転手段を有し、遊星回転手段、公転手段を有さないことが極めて好ましい。自転手段は、上述した給水・回転ユニット20に含まれるものであり、主に流体スピンドル30やモータ34等から構成される。
【0039】
また、本発明の枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドは、ノズルヘッド本体12の回転中心軸から2つのスプレーノズル14各々までの距離が異なるように設定されていることが好ましい。つまり回転軸に対し図の左右設置位置で非対称とすることも本発明の特徴の一つとなる。
【0040】
図3において、ノズルヘッド本体12の回転軸から図面左側に設置されたスプレーノズル14までの距離をr1、ノズルヘッド本体12の回転軸から図面右側に設置されたスプレーノズル14までの距離をr2とし、このノズルヘッド本体12が流体スピンドル30により回転されつつ加圧水を噴射させた場合、噴射された加圧水(洗浄水)が被洗浄物に描く軌跡は半径r1、r2の二重の円となる。つまり、ノズルヘッド本体12の回転軸から等距離にスプレーノズル14を配置した場合と比較して1回の回転でより広範囲で、かつきめ細かい洗浄が可能となる。
【0041】
本発明の鋭意研究の結果、スプレーノズル14の数を増やすよりも、スプレーノズル14の数を減らしてその分スプレーノズル14一つ当たりの水の圧力を強くした方が、洗浄力が高くなることを見いだした。ここで、供給される水の圧力が一定の場合、スプレーノズル14の数が少ない方がスプレーノズル14一つ当たりの洗浄エネルギー(水の速度、圧力)が大きくなり、ノズルヘッド本体12に設置するスプレーノズル14の数は少ないほどスプレーノズル一つ当たりの洗浄力が向上することとなるが、単位時間当たりの洗浄範囲は低下する。しかしながら、これをノズルヘッド本体12の回転軸に対しスプレーノズル14を非対称な距離で配置する工夫を行うことで単位時間当たりの洗浄範囲が広くなるので、洗浄能力を上げつつ、洗浄効率も向上させることができる。
【0042】
上述したように、スプレーノズル14の数が少ないとノズル一個当たりの洗浄力は向上するが単位時間当たりの洗浄範囲は小さくなる。スプレーノズル14の数を多くすると単位時間当たりの洗浄力は大きくなるがノズル一個当たりの洗浄力は低下する。
【0043】
本発明者は実験により高圧プランジャポンプの出力水圧30MPa〜294MPaの範囲でスプレーノズル14の数が2個〜10個であれば洗浄力と洗浄速度つまり洗浄効率が適正範囲となり、さらにスプレーノズル14の数が5個〜8個で洗浄効率が最適となることを見いだした。
【0044】
また、スプレーノズル14の数が少なくても洗浄効率が落ちないと言うことは言い換えればスプレーノズル14が設置されるノズルヘッド本体12を小型化できると言うことである。これにより、回転ノズルヘッド10全体が小型化でき、ノズルヘッドをより高回転で駆動させることが可能となる。また、ノズルヘッド本体12は従来の円盤状の回転ヘッドや送水パイプを放射状に配置した回転ヘッドと比較してより加工精度の出しやすい矩形としているので、回転バランスを取りやすいという利点がある。
【0045】
さらに、ノズルヘッド本体12の長さを短く抑えることにより、周速度の差を小さくすることができる。その結果、各ノズルの洗浄効率に大きな差が出ず、洗浄力の強いノズルヘッドが実現できる。
【0046】
図4を参照して、被洗浄物としては大型の部材である枠組み足場の建枠102の自動洗浄について説明する。建枠102の搬送装置210はその設置面積が小さくなるよう被洗浄物である建枠102を縦保持できる構造となっている。被洗浄物を縦保持することで複数の産業用ロボット(図示せず)を配置して例えば建枠102の両面から洗浄が可能となる利点がある。また、高圧の水ジェットの照射は人体や精密機器等に対し損傷を与える恐れがあるため、周囲を厳重に囲う必要がある。これらのことから搬送装置210の設置面積を少なくできる被洗浄物の縦保持構造はシステムの小型化等、平面保持に比べて大変有利である。
【0047】
建枠102は保持枠212により着脱自在に保持され、かつ、保持枠212はトロッコ構造となっており、保持枠212に設置された走行モータ(図示せず)により、レール214上を図4の奥行き方向のプログラムされた位置に正確に移動が可能となっている。産業用ロボットアーム200は予め教示された動作経路に従い回転ノズルヘッド10を、建枠102を構成するパイプ部材に一定の間隔を保持させつつ近接させて洗浄作業を行う。このとき、回転ノズルヘッド10は先に説明したように回転バランスが良いことと、空圧モータによる低振動さとが相まって正確で確実な清掃作業をおこなうことができる。
【0048】
また、回転ノズルヘッド10は、小型で回転バランスが良いため、回転ノズルヘッド10を従来よりも高回転で駆動できる。この結果、従来のノズルヘッドの駆動回転数は従来750rpm〜1200rpm程度であったのに対し、本発明品は1000rpm〜3000rpmとより高回転での運用が可能となり、洗浄効率も格段に高めることができるようになった。
【0049】
図5はスプレーノズル14の配置に関する他の実施例を示す図である。図5(A)はスプレーノズル14を5個配置した実施例を示す。
ノズルヘッド本体12の回転中心軸からスプレーノズル14までの距離をそれぞれr1、r2、r3、r4、r5とし、それぞれの回転軸中心からスプレーノズル14までの距離の相関はr1<r2<r3<r4<r5となっている。
【0050】
このように配置されているスプレーノズル14から洗浄水を噴射させつつノズルヘッド本体12を回転させると、洗浄水が被洗浄物に描く軌跡は半径r1、r2、r3、r4、r5の同心円となるため、スプレーノズル14をノズルヘッド本体12の回転軸に対して対称配置とした場合に比べてピッチの細かい軌跡が得られる、つまり被洗浄物に対しより細部まで洗浄できることとなる。
【0051】
図5(B)はスプレーノズル14の配置に関する更に別の実施例を示す。
図5(B)はノズルヘッド本体12を延長してスプレーノズル14を8個配置した実施例である。
ノズルヘッド本体12の回転中心軸からスプレーノズル14までの距離のうちr1、r2、r3、r4、r5、r6までの関係は図5(A)の場合と同様に、回転中心軸からそれぞれのスプレーノズル14までの距離の相関はr1<r2<r3<r4<r5<r6となっている。
図5(B)の実施例が図5(A)の実施例と異なる点は回転軸中心から図面に対し左右それぞれ最遠に位置するスプレーノズル14のr7とr8を等距離に設定していることである。
【0052】
スプレーノズル14から噴射された洗浄水が被洗浄物に描く軌跡の速度、つまり周速度は回転軸中心からスプレーノズル14までの距離が近いほど小さくなる。各スプレーノズル14から噴射する洗浄水の単位時間の水量を同じとした場合、周速度が小さいほど洗浄力は向上する。言い換えれば回転軸中心からスプレーノズル14が遠いほど周速度が高くなり、洗浄力は低下する。
【0053】
このため、回転軸中心から遠いスプレーノズル14の距離を等距離に設定すれば、スプレーノズル14から噴射された洗浄液が同じ軌跡を描くこととなり、結果として周速度が半分になったことと同様の効果が期待でき、洗浄効率をより高めることが可能となる。
【0054】
図5(C)は本発明のさらに別の実施例を示す。
図5(C)において回転軸中心から最遠のスプレーノズル14以外のスプレーノズル14の配置は図5(A)、図5(B)と同様であるので説明は省略する。
【0055】
図5(C)では回転軸中心から最遠のスプレーノズル14がノズルヘッド本体12の長手方向に対し、回転軸中心方向内向きに(角度θで)傾斜させて取り付けられていることを特徴とする。本発明者は、鋭意研究の結果、建設現場で使用される枠組み足場の洗浄には、傾斜角度θが、15°〜60°であれば、枠組み足場の両端も同時に効果的に洗浄でき、傾斜角度θが30°〜45°であれば、最も効果的に洗浄できることを見いだした。これにより垂直またはそれに近い側面部を有する被洗浄物、例えば枠組足場100の板付布枠104の洗浄に適したノズルヘッドを提供することができる。
【0056】
次に、図6を参照して説明する。図6は、板付布枠104の洗浄作業を示す斜視図および正面図である。図6の(A)は板付布枠104の洗浄作業を示す斜視図、図6の(B)は板付布枠104の洗浄作業を示す正面図である。
板付布枠104は枠組足場100において建設作業員の通路踏み板として使用される。板付布枠104は主に地面に対し平行な状態で使用されるため、汚れは板付布枠104の上面と側面となる。
【0057】
このため、板付布枠104の上面と側面を同時に洗浄可能とするよう、板付布枠104の幅よりもノズルヘッド本体12を若干長く形成し、スプレーノズル14を板付布枠104の上面の幅いっぱいに対応できるよう配置し、かつ回転中心軸から最遠のスプレーノズル14を回転軸中心方向内向きに傾斜させて取り付け、板付布枠104の側面に斜めに水ジェットを照射できるようにしている。スプレーノズル14の傾斜角度θは、ノズルヘッド本体12の回転軸と平行な軸に対して斜め内向きに15°〜60°程度とすることが望ましく、30°〜45°とするのがより効果的である。
【0058】
図6においては、地面に対して平行に板付布枠104を設置した状態で洗浄する例を示しているが、これに限定されるものではなく、図4に示される建枠102と同様に、縦置きにして表面、裏面を同時に洗浄しても良い。
【符号の説明】
【0059】
10…回転ノズルヘッド、12…ノズルヘッド本体、14…スプレーノズル、16…フランジ、18…ボルト、20…給水・回転ユニット、22…ハウジング、24…ブラケット、24a…取り付け穴、30…流体スピンドル、32…高圧ホース、34…モータ、36…空圧ホース、100…枠組足場、102…建枠、102a…縦架材、102b…横架材、104…板付布枠、104a…つかみ金具、106…交差筋交い、108…ベースジャッキ、200…産業用ロボットアーム、202…先端部、202…アーム先端部、210…搬送装置、212…保持枠、214…レール
【要約】
【課題】建設用枠組み足場を効果的に洗浄するための枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドを提供する。
【解決手段】
建設現場で使用される枠組み足場を加圧水で洗浄するために用いられる枠組足場洗浄用回転ノズルヘッドであって、加圧水の流路が内部に形成された棒状のノズルヘッド本体と、前記ノズルヘッド本体の長手方向中心部に形成された、前記ノズルヘッドを回転させるときの回転中心でもある、加圧水を導入するための加圧水導入口と、前記流路及び前記加圧水導入口と連通し、加圧水を噴出させるための複数のスプレーノズルと、を備え、前記スプレーノズルは、前記ノズルヘッド本体の加圧水導入口が設けられた面と対向する面の、前記ノズルヘッド本体の長手方向両端部に少なくともひとつずつ配置される枠組足場洗浄用回転ノズルヘッド。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6