【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0064】
<実施例で用いたベタイン>
本発明の実施例において用いたベタイン(化合物1〜8)について、化合物1としては、市販のグリシンベタイン(スペーサー長:C
1)(型番023-10862、和光純薬製)を用いた。化合物2〜8は、以下のようにして合成したものを用いた。
【0065】
〔1.前駆体の合成〕
既述の一般式(1)におけるR
1、R
2、R
3がエチル基で、R
6がメチレン基である分子内に1組の双性イオンを持つベタインの前駆体(2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)−酢酸エチルエステル臭化物塩)を、
図5に示すスキームに従って合成した。
【0066】
まず、トリエチルアミン100mlを酢酸エチル100mlに溶解させた。この溶液に対してブロモ酢酸エチル(37.5g)をゆっくりと滴下した。滴下後、この溶液を室温で一晩攪拌した。その後、生成した沈殿を濾別した。得られた沈殿を真空乾燥して、前駆体1(2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)−酢酸エチルエステル臭化物塩)を得た(収量50.2g、収率86%)。
【0067】
上記で得られた化合物の同定は、IR、および
1H NMRによって行われた。表1にIR解析の結果を、表2に
1H NMR解析の結果を示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
IR、および
1H NMRの結果、目的物である2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)−酢酸エチルエステル臭化物塩(すなわち、
図1における化合物4の前駆体)が合成されたことが確認できた。
【0071】
図1における化合物2の前駆体を合成した結果を、表3(IR)および表4(
1H NMR)に示す。表3および4によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
図1における化合物3の前駆体を合成した結果を、表5(IR)および表6(
1H NMR)に示す。表5および6によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0075】
【表5】
【0076】
【表6】
【0077】
図1における化合物5の前駆体を合成した結果を、表7(IR)および表8(
1H NMR)に示す。表7および8によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0078】
【表7】
【0079】
【表8】
【0080】
図1における化合物6の前駆体を合成した結果を、表9(IR)および表10(
1H NMR)に示す。表9および10によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0081】
【表9】
【0082】
【表10】
【0083】
図1における化合物7の前駆体を合成した結果を、表11(IR)および表12(
1H NMR)に示す。表11および12によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0084】
【表11】
【0085】
【表12】
【0086】
図1における化合物8の前駆体を合成した結果を、表13(IR)および表14(
1H NMR)に示す。表13および14によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0087】
【表13】
【0088】
【表14】
【0089】
〔2.ベタインの合成〕
得られた前駆体(2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)−酢酸エチルエステル臭化物塩)1.0gを蒸留水10mlに溶解した。この溶液を陰イオン交換カラム(アンバーライト:登録商標IR−402、ローム アンド ハース社製)を充填したカラムに通した。溶離液をエバポレーターで減圧濃縮し、五酸化二リンの共存下、減圧乾燥し、ベタイン(2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)−アセテート)を得た(収量0.59g、収率100%)。
【0090】
上記で得られた化合物の同定は、IRおよび
1H NMRによるエステルピークの消失確認と、C、H、N元素分析による塩の混入の有無を確認することで行った。表15にIR解析の結果を、表16に
1H NMR解析の結果を、表17に元素分析の結果を示す。
【0091】
【表15】
【0092】
【表16】
【0093】
【表17】
【0094】
表15〜17の結果、目的物である2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)−アセテート(すなわち、
図1における化合物4)が得られたことが確認された。
【0095】
図1における化合物2を合成した結果を、表18(IR)、表19(
1H NMR)、および表20(元素分析)に示す。表18〜20によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0096】
【表18】
【0097】
【表19】
【0098】
【表20】
【0099】
図1における化合物3を合成した結果を、表21(IR)、表22(
1H NMR)、および表23(元素分析)に示す。表21〜23によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0100】
【表21】
【0101】
【表22】
【0102】
【表23】
【0103】
図1における化合物5を合成した結果を、表24(IR)、表25(
1H NMR)、および表26(元素分析)に示す。表24〜26によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0104】
【表24】
【0105】
【表25】
【0106】
【表26】
【0107】
図1における化合物6を合成した結果を、表27(IR)、表28(
1H NMR)、および表29(元素分析)に示す。表27〜29によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0108】
【表27】
【0109】
【表28】
【0110】
【表29】
【0111】
図1における化合物7を合成した結果を、表30(IR)、表31(
1H NMR)、および表32(元素分析)に示す。表30〜32によれば目的とする化合物が合成されたことが確認できた。
【0112】
【表30】
【0113】
【表31】
【0114】
【表32】
【0115】
図1における化合物8を合成した結果を、表33(IR)、表34(
1H NMR)、および表35(元素分析)に示す。表33〜35によれば目的とする化合物が合成されたことが確認できた。
【0116】
【表33】
【0117】
【表34】
【0118】
【表35】
【0119】
〔実施例1〕
<α−グルコシダーゼの加水分解速度に及ぼすベタイン添加の効果>
得られた各種ベタイン(化合物1〜8)の添加による酵素活性向上効果を評価、検討するため、ベタイン存在下でのα−グルコシダーゼの加水分解速度を測定した。α−グルコシダーゼ(Saccharomyces由来)(型番076-02841、和光純薬製)の基質としては、紫外可視分光測定から加水分解をモニターできるα−p−ニトロフェニル−D−グルコピラノシド(型番325-34671、和光純薬製)を用いた。
【0120】
基質であるα−p−ニトロフェニル−D−グルコピラノシドは350nmに極大吸収波長を持つが、α−グルコシダーゼによってグルコースとp−ニトロフェノールに加水分解されると、pH7.0においてはp−ニトロフェノールは水酸基のプロトンが解離してp−ニトロフェノラートとなる。結果として、極大吸収波長は長波へシフトし、400nm近傍の吸光度が上昇する。405nmのp−ニトロフェノラートのモル吸光係数(pH7.0、37℃)である7660M
−1cm
−1を利用すれば、加水分解によって生成するp−ニトロフェノールの濃度を見積もることができ、反応速度を算出することができる。ここで405nmを使用したのはマイクロプレートリーダーのフィルターの関係である。
【0121】
加水分解速度の測定は、酵素反応溶液(100mM リン酸緩衝溶液(pH7.0),2mM α−p−ニトロフェニル−D−グルコピラノシド,2.5×10
−5mg/mL α−グルコシダーゼ)を用いて、37℃で行った。ベタインは、最終濃度50mMとなるように上記酵素反応溶液に添加した。
【0122】
α−グルコシダーゼの反応速度は反応時間に対する405nmの吸光度変化のグラフの初期の傾きから算出し、加水分解産物であるp−ニトロフェノールのモル吸光係数(pH7.0、37℃)7660M
−1cm
−1を用いて加水分解速度を算出した。
【0123】
また、酵素活性の誤差を最小限とするため、ベタイン添加による効果は活性比で表した。当該「活性比」とは、〔発明を実施するための形態〕の<1.本発明にかかる組成物>で上述したように、本発明にかかる組成物存在下における酵素の反応速度に対する本発明にかかる組成物非存在下における酵素の反応速度の比を指す。
【0124】
結果を
図2に示す。
図2は、各種ベタインを最終濃度50mMとなるように酵素反応溶液に添加した場合の活性比を表すグラフである。化合物1〜8のいずれのベタインを添加した場合も、活性比は1を上回った。これは、ベタインを添加しなかった場合のα−グルコシダーゼ活性と比較して、ベタインを添加した場合のα−グルコシダーゼ活性が上昇したことを表している。特に、化合物6では活性比は8.7、化合物8では活性比は7.9と、ベタイン添加の効果が顕著であった。
【0125】
一方、後述する比較例1に示すように、酵素活性を向上することが報告されているエタノール(非特許文献4を参照)では活性比は1.0、グリセロール(非特許文献4を参照)では活性比は0.9、ポリエチレングリコール(非特許文献5を参照)では活性比は0.1と、これらの物質を添加することによる酵素活性向上効果はほとんど確認できなかった。
【0126】
〔比較例1〕
酵素活性を向上させるために一般的に用いられるエタノール、グリセロール、またはポリエチレングリコール(PEG、平均分子量6,000)をベタインの代わりに最終濃度50mMとなるように酵素反応溶液に添加した以外は、実施例1と同様の方法によりα−グルコシダーゼ活性を測定し、活性比を求めた。
【0127】
〔試験例1〕
<ベタインの濃度の与える効果>
添加するベタインの最適濃度を調べるために、ベタインの濃度を変化させたときの活性比を測定した。一例として、化合物1、化合物2、および化合物6の結果を
図3に示す。
【0128】
図3には化合物1、化合物2、および化合物6の濃度変化による活性比の変化が示されている。
【0129】
化合物2を最終濃度50mMで添加した場合の活性比は3.3であったが、添加する化合物2の濃度が上昇すると加水分解速度は濃度依存的に上昇し、最終濃度1.0Mで添加した場合の活性比は9.5であった。
【0130】
また、化合物6は最終濃度50mMで添加すると顕著な効果を示したが、最終濃度0.5M以上の濃度では活性比が低下した。
【0131】
化合物6に関し、活性の低下は酵素(α−グルコシダーゼ)の沈殿によるものと推察されたため、基質非存在下で酵素溶液の濁度測定を行った。
【0132】
一方、化合物1は最終濃度50mMの添加で活性比の上昇が飽和挙動を示し、活性比2以上となるような酵素活性向上効果はもたらさないことが明らかとなった。これにより、化合物2〜8のベタインは、天然のベタインである化合物1と比較しても明らかな効果があることが確認された。
【0133】
また、
図4は、高濃度の化合物6存在下におけるα−グルコシダーゼタンパク質の沈殿の有無を示すグラフである。α−グルコシダーゼタンパク質の沈殿の有無は、沈殿の生成によって生じた粒子の起こす光散乱を検出する方法(濁度測定)により評価した。
【0134】
具体的に説明すると、本発明にかかる組成物には500nmに吸収帯を持つ分子は含まれておらず、沈殿を生じない溶液では光はすべて透過するため、吸光度はゼロとなる。一方、沈殿が生じた場合は光の散乱が生じ、吸光度はゼロよりも大きな値を示す。したがって、沈殿生成による光の散乱に伴う500nmの吸光度変化を測定すれば、α−グルコシダーゼタンパク質の沈殿の有無を評価することができる。ただし、散乱強度は粒子の大きさ等にも依存するため、500nmの吸光度の強度と沈殿量とには相関はない。
【0135】
化合物6を最終濃度が0.5M以上添加すると活性比が低下したが、これは、
図4に示すように酵素を沈殿させることが原因であることが判明した。化合物6に関しては、低濃度領域(1mM〜0.3M)において高い活性向上効果が確認されており、この結果は本発明を制限するものではない。
【0136】
試験例1の結果に従って、実施例1で用いた各種ベタインの使用濃度範囲と最大効果を表36に示した。
【0137】
【表36】
【0138】
化合物1、化合物2、および化合物3は、ベタインのカチオンとアニオンとの距離をスペーサーによって変化させたものであるが、スペーサー長が長くなれば酵素活性向上効果は高いことが明らかになった。
【0139】
化合物4、化合物5、および化合物6は、アルキル鎖長を長くすることによって、カチオンであるアンモニウム基の嵩高さを変えたものであるが、アンモニウム基が嵩高くなるほど酵素活性向上効果は高いことが明らかになった。また、ベタインの添加量が低濃度であっても酵素活性向上効果があらわれることが明らかになった。しかし、化合物5、化合物6に関しては高濃度での使用は酵素を沈殿させるため、使用に際しては濃度範囲の調節が必要となることが明らかになった。
【0140】
化合物7、化合物8は、アンモニウム基の嵩高さは同じであるが、アンモニウム基に導入される官能基を疎水性から親水性に変えたものである。アンモニウム基に導入される官能基が疎水性である化合物8の方が、親水性官能基が導入された化合物7よりもその酵素活性向上効果が高いことが明らかになった。
【0141】
〔試験例2〕
<各種α−グルコシダーゼに与えるベタインの効果>
種々のα−グルコシダーゼに与えるベタインの添加効果を比較した。α−グルコシダーゼとしては、市販の3種類のα−グルコシダーゼ(Saccharomyces由来(型番076-02841、和光純薬製)、Bacillus Stearothermophilus由来(型番G3651-250un、シグマアルドリッチ製)、またはBakers Yeast由来(型番G5003-100un、シグマアルドリッチ製)を用いて評価し、ベタインとしては化合物4、5、および6を用いた。化合物4は、最終濃度が750mMになるように添加し、化合物5は、最終濃度が200mMになるように添加した。化合物6は、沈殿を生じないよう最終濃度が50mMになるように添加した。
【0142】
測定条件は実施例1に記載の条件に従って行い、反応時間(分)に対して産生されたp−ニトロフェノールの濃度を測定した結果を
図6〜10に示す。
図6は、Saccharomyces由来のα−グルコシダーゼを用い、ベタインとして化合物6を用いた結果を表す。
図7は、Bacillus Stearothermophilus由来のα−グルコシダーゼを用い、ベタインとして化合物6を用いた結果を表す。
図8は、Bakers Yeast由来のα−グルコシダーゼを用い、ベタインとして化合物6を用いた結果を表す。
図9は、Bacillus Stearothermophilus由来のα−グルコシダーゼを用い、ベタインとして化合物4を用いた結果を表す。
図10は、Bacillus Stearothermophilus由来のα−グルコシダーゼを用い、ベタインとして化合物5を用いた結果を表す。
【0143】
図6〜8に示す結果から、由来の異なる3種類のα−グルコシダーゼのすべてにおいて、化合物6の添加によって化合物6非存在下と比較して反応速度の上昇が確認された。また、
図9および10に示す結果から、化合物4または5の添加によっても、これらの化合物非存在下と比較して反応速度の上昇が確認された。
【0144】
すなわち、これらの結果は、本発明にかかる組成物を構成するベタインを添加することによって酵素タンパク質の沈殿を生じない場合であれば、添加しない場合と比較して、酵素活性が少なくとも1倍より大きくなることを示している。
【0145】
〔試験例3〕
<α−グルコシダーゼの基質選択性に与える効果>
α−グルコシダーゼの基質選択性に与えるベタインの添加効果を比較した。α−グルコシダーゼとしては、市販のα−グルコシダーゼ(Bacillus Stearothermophilus由来(型番G351-250un)、シグマアルドリッチ製)を用いた。ベタインとしては化合物6を用いた。基質としては、α−p−ニトロフェニル−D−グルコピラノシド(型番325-34671、和光純薬製)、β−p−ニトロフェニル−D−グルコピラノシド(型番N0235、東京化成製)、α−p−ニトロフェニル−D−ガラクトピラノシド(型番N0492、東京化成製)、およびα−p−ニトロフェニル−D−マンノピラノシド(型番N503995、TRC製)を用いた。
【0146】
試験例3では、各基質に対するα−グルコシダーゼの反応速度は、反応時間に対する405nmの吸光度変化のグラフの初期の傾きから算出し、加水分解物であるp−ニトロフェノールのモル吸光係数(pH7.0,37℃)7660M
−1cm
−1を用いて算出した。
【0147】
試験例3では、加水分解速度の測定は、実施例1に記載の酵素反応溶液に、記載のα−p−ニトロフェニル−D−グルコピラノシドの代わりに、上記の4種類の基質のいずれかを、最終濃度が2mMになるように上記酵素反応溶液に添加した。また、化合物6を、最終濃度が50mMになるように上記酵素反応溶液に添加した。上述した以外は実施例1に記載の条件に従って行った。化合物6存在下、または非存在下において、反応時間(分)に対して産生されたp−ニトロフェノールの濃度から算出した反応速度を表37に示す。
【0148】
【表37】
【0149】
α−グルコシダーゼの基質であるα−p−ニトロフェニル−D−グルコピラノシドに対するα−グルコシダーゼの反応速度は、化合物6を添加することによって2.5倍に上昇したが、α−グルコシダーゼの基質の類似化合物であるβ−p−ニトロフェニル−D−グルコピラノシド、α−p−ニトロフェニル−D−ガラクトピラノシド、およびα−p−ニトロフェニル−D−マンノピラノシドに対するα−グルコシダーゼの反応速度は、化合物6を添加することで低下した。
【0150】
すなわち、この結果は、本発明にかかる組成物を構成するベタインは、α−グルコシダーゼの基質に対する反応速度のみを上昇させることを示している。つまり、本発明にかかる組成物を構成するベタインを添加することによって酵素タンパク質の基質選択性(基質特異性)を向上させることができることを示している。
【0151】
〔試験例4〕
<β−グルコシダーゼに与えるベタインの効果>
α−グルコシダーゼと異なる糖加水分解酵素であるβ−グルコシダーゼに与えるベタインの添加効果を比較した。β−グルコシダーゼとしては、市販のβ−グルコシダーゼ(Almond由来(型番306-50981)、和光純薬製)を用いた。ベタインとしては化合物4、5および6を用いた。基質としてはβ−p−ニトロフェニル−D−グルコピラノシド(型番N0235、東京化成製)を用いた。
【0152】
β−グルコシダーゼの反応速度は、反応時間に対する405nmの吸光度変化のグラフの初期の傾きから算出し、加水分解物であるp−ニトロフェノールのモル吸光係数(pH7.0,37℃)7660M
−1cm
−1を用いて加水分解速度を算出した。
【0153】
試験例4では、測定条件は、酵素反応溶液II(100mM リン酸緩衝溶液(pH7.0),2mM β−p−ニトロフェニル−D−グルコピラノシド,1.3×10
−3mg/mL β−グルコシダーゼ)を用いて、37℃で行った。化合物4〜6のいずれかを、最終濃度50mMとなるように上記酵素反応溶液IIに添加し、反応時間(分)に対して産生されたp−ニトロフェノールの濃度を測定した。結果を
図11に示す。
【0154】
図11は、化合物4〜6のいずれかを用い、Almond由来のβ−グルコシダーゼを用いた場合の、反応時間(分)に対して産生されたp−ニトロフェノールの濃度を表すグラフである。
図11に示す結果から、α−グルコシダーゼとは異なる基質を認識して加水分解するβ−グルコシダーゼを用いた場合であっても、本発明にかかる組成物を構成するベタインの添加によって、ベタイン非存在下の場合と比較して反応速度が上昇することが確認された。また、化合物4〜6のいずれのベタインを用いても、反応速度の上昇効果が認められた。
【0155】
すなわち、この結果は、本発明にかかる組成物を構成するベタインを添加することによって、α−グルコシダーゼとは異なる糖加水分解酵素についても、その活性を向上させることができることを示している。
【0156】
〔試験例5〕
<アルカリホスファターゼに与えるベタインの効果>
糖加水分解酵素以外の加水分解酵素に与えるベタインの添加効果を調べるために、リン酸エスエル加水分解酵素であるアルカリホスファターゼを用いて実験を行った。アルカリホスファターゼとしては、市販のアルカリホスファターゼ(Calf intestine由来(型番308-51041)、和光純薬製)を用いた。ベタインとしては化合物4、5および6を用いた。基質としては、p−ニトロフェニルホスフェート(型番N22002-5G、アルドリッチ製)を用いた。
【0157】
アルカリホスファターゼの反応速度は、反応時間に対する405nmの吸光度変化のグラフの初期の傾きから算出し、加水分解物であるp−ニトロフェノールのモル吸光係数(pH7.0, 37℃)7660M
−1cm
−1を用いて加水分解速度を算出した。
【0158】
試験例5では、測定条件は、酵素反応溶液III(100mM Tris−HCl緩衝溶液(pH7.5),2mM p−ニトロフェニルホスフェート,1.0×10
−3mg/mL アルカリホスファターゼ)を用いて、37℃で行った。化合物4〜6のいずれかを、最終濃度50mMとなるように上記酵素反応溶液IIIに添加し、反応時間(分)に対して産生されたp−ニトロフェノールの濃度を測定した。結果を
図12に示す。
【0159】
図12は、化合物4〜6のいずれかを用い、Calf intestine由来のアルカリホスファターゼを用いた場合の、反応時間(分)に対して産生されたp−ニトロフェノールの濃度を表すグラフである。
図12に示す結果から、リン酸エステルを加水分解するアルカリホスファターゼを用いた場合であっても、ベタインの添加によって、ベタイン非存在下と比較して反応速度が上昇することが確認された。また、化合物4〜6のいずれのベタインを用いても、反応速度の上昇効果が認められた。
【0160】
すなわち、この結果は、本発明にかかる組成物を構成するベタインを添加することによって、糖加水分解酵素以外の加水分解酵素の活性についても、その活性を向上させることができることを示している。
【0161】
〔試験例6〕
<乳酸脱水素酵素に与えるベタインの効果>
糖加水分解酵素、リン酸エスエル加水分解酵素等の加水分解酵素以外の酵素に与えるベタインの添加効果を調べるため、酸化還元酵素の1つである乳酸脱水素酵素を用いて実験を行った。乳酸脱水素酵素としては、市販の乳酸脱水素酵素(Chicken heart由来(型番305-51431)、和光純薬製)を用いた。ベタインとしては化合物4、5および6を用いた。基質としては、ピルビン酸(型番162-05553、和光純薬製)を用い、補酵素としてNADH(型番305-50451、和光純薬製)を用いた。
【0162】
乳酸脱水素酵素による基質の酸化還元反応速度は、反応時間(分)に対する340nmの吸光度変化のグラフの初期の傾きから算出し、補酵素であるNADHのモル吸光係数(pH7.5,37℃)2970M
−1cm
−1を用いて算出した。
【0163】
基質であるピルビン酸が酸化還元される際に、補酵素であるNADHも等モル消費され、減少する。その結果、NADH極大吸収波長である340nmの吸光度が低下する。このため、NADHのモル吸光係数(pH7.5,37℃)2970M
−1cm
−1を利用すれば、酸化還元によって消費されたNADHの濃度を見積もることができ、反応速度を算出することができる。
【0164】
試験例6では、測定条件は、酵素反応溶液IV(80mM Tris−HCl衝溶液(pH7.5),2mM ピルビン酸,1.5mM NADH,10mM KCl,5.0×10
−5mg/mL 乳酸脱水素酵素)を用いて、37℃で行った。化合物4〜6のいずれかを、最終濃度50mMとなるように上記酵素反応溶液IVに添加し、反応時間(分)に対して、基質であるピルビン酸の消費と共に減少したNADHの濃度を測定した。結果を
図13に示す。
【0165】
図13は、化合物4〜6のいずれかを用い、Chicken heart由来の乳酸脱水素酵素を用いた場合の、反応時間(分)に対して、基質であるピルビン酸の消費と共に減少したNADHの濃度を表すグラフである。
図13に示す結果から、酸化還元酵素である乳酸脱水素酵素を用いた場合であっても、ベタインの添加によって、ベタイン非存在下と比較して反応速度が上昇することが確認された。また、化合物4〜6のいずれのベタインを用いても、反応速度の上昇効果が認められた。
【0166】
すなわち、この結果は、本発明にかかる組成物を構成するベタインを添加することによって加水分解酵素以外の酵素の活性についても、その活性を向上させることができることを示している。