【文献】
森 達宏,他,塩化物気相法によるAlN単結晶粒子の作製,2010年春季 第57回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,2010年 3月 3日,18P-TC-2
【文献】
岡本 直也 他,二段階気相法によるGaN/AlN2層構造粒子の合成,電子情報通信学会技術研究報告,2006年,vol.105,no.568,p.41-44
【文献】
原 和彦,研究紹介 二段階気相成長法によるGaN粉体の合成と発光中心不純物の添加,応用物理,社団法人応用物理学会,2004年,第73巻,第3号,p.373-377
【文献】
原 和彦,他,二段階気相法を応用したGaN系積層構造蛍光体粒子の作製,第55回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,2008年 3月27日,vol.0,p.37,27p-ZD-6
【文献】
Moo-Chin WANG,et al.,Preparation and characterization of AlN powders in the AlCl3-NH3-N2 system,Journal of Crystal Growth,2000年,Vol.216,p.69-79
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−54182号公報
【特許文献2】特開2006−199876号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「新時代を拓くナイトライドセラミックス」、第III部第1章、ティー・アイ・シー(2001)
【非特許文献2】H.Hirosaki, R.-J.Xie ,K.Inoue, T.Sekiguchi, B.Dierre, K.Tamura,"Blue-emitting AIN:Eu2+nitride phosphor for field emission displays",Appl.Phys.Lett.91,061101(2007).
【非特許文献3】K.Kumagai,T.Yamane, T.Miyaji, H.Murakami, Y.Kangawa and A.Koukitu, "Hydride vaporphase epitaxy of AIN: thermodynamic analysis of aluminum source and its applicationto growth",phys.stat.sol.(c),0,2498-2501(2003).
【非特許文献4】Y-H.Liu, T.Tanabe, H.Miyake, K.Hiramatsu, T.Shibata, M.Tanaka andY.Masa, "Growth of thick AIN layer by hydride vapor phase epitaxy", Jpn.J.Appl.Phys.44,L505-L507(2005).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した方法で得られる結晶は多結晶であり、単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を製造することは困難である。また、多結晶の窒化アルミニウム結晶粒子は、大型窒化アルミニウム結晶育成用の種結晶として利用することができない。さらに、多結晶の窒化アルミニウム結晶粒子は、窒化アルミニウム結晶粒子を母体とする蛍光体の大幅な高効率化を図ることができない。
【0006】
本発明は、この問題点を鑑みてなされたものであり、単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を効率よく製造することができる窒化アルミニウム結晶粒子の製造装置および該製造装置を用いた窒化アルミニウム結晶粒子の製造方法を提供すること、及び本発明による製造装置を用いた製造方法により製造された窒化アルミニウム結晶粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明による窒化アルミニウム結晶粒子の製造装置は、
反応管の内部に設けられ、反応管の一端面に設置されたガスラインから供給される塩化水素ガスと融点以下の温度に加熱されたアルミニウムとを反応させて、塩化アルミニウムガスを発生させる第1の反応室と、
反応管の内部に設けられ、アンモニアガスと塩化アルミニウムガスとを反応させて、窒化アルミニウム結晶粒子を成長させる第2の反応室と、
反応管の高さ方向における一部の周囲に設置され、第1の反応室及び第2の反応室をまとめて加熱する加熱装置と、アンモニアガスと塩化アルミニウムガスとを第2の反応室まで隔離する
ために、第1の反応室を構成する反応容器との間に第2の反応室への窒素ガスの流路を形成するシュラウドとを備え
、反応容器は
、シュラウドの内側に
おいて加熱装置の一端面側の端よりもさらに一端面寄りに設置され
、アルミニウムの温度が580℃以上融点以下の温度になるように加熱装置との距離が調整されており、アンモニアガスはシュラウドの外側を通過して第
2の反応室に導かれ、第2の反応室の温度は、1350℃以上1450℃以下の範囲内であることを特徴とする。
【0008】
上記した窒化アルミニウム結晶粒子の製造装置は、窒化アルミニウム結晶粒子の製造に塩化アルミニウムを用いることを特徴とする。また、アルミニウムの温度を融点以下の温度にすることにより、石英ガラスを腐蝕させるAlClの生成を抑制することができる。これにより、単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を高い割合で含む粉末を製造することが可能となるため、単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を効率よく製造することができる。また、第1の反応室がシュラウドによりアンモニアガスから隔離されている。これにより、第2の反応室の温度が例えば1350℃以上の高温になる場合であっても、第1の反応室に設置されたアルミニウムが融点以上の温度に加熱されることを防ぐことができる。
また、第2の反応室の温度が1350℃以上1450℃以下の範囲内であることにより、製造された窒化アルミニウム結晶粒子の粒径を均一にすることができる。
【0009】
なお、ここでいう窒化アルミニウム結晶粒子は、排気管に設置された繊維性フィルタにより捕集されることが好ましい。これにより、効率的に窒化アルミニウム結晶粒子を捕集することができる。
【0010】
(削除)
【0011】
本発明による窒化アルミニウム結晶粒子の製造方法は、
反応管の内部に設けられた第1の反応室を構成する反応容器との間に第2の反応室への窒素ガスの流路を形成するシュラウドによりアンモニアガスから隔離された第1の反応室に設置されたアルミニウムを、
反応管の高さ方向における一部の周囲に設置され、第1の反応室
と反応管の内部に設けられた第2の反応室
とをまとめて加熱する加熱装置を用いて該アルミニウムの融点以下の温度に加熱し、アルミニウムと
、反応管の一端面に設置されたガスラインから第1の反応室へ供給された塩化水素ガスとを反応させて、第1の反応室で塩化アルミニウムガスを発生させ、塩化アルミニウムガスとアンモニアガスとを、加熱装置によって1350℃以上1450℃以下の範囲内で加熱された第2の反応室で反応させて、第2の反応室で窒化アルミニウム結晶粒子を成長させ、第
1の反応室を構成する反応容器は
、シュラウドの内側に
おいて加熱装置の一端面側の端よりもさらに一端面寄りに設置され
、アルミニウムの温度が580℃以上融点以下の温度になるように加熱装置との距離が調整されており、アンモニアガスはシュラウドの外側を通過して第
2の反応室に導かれることを特徴とする。
【0012】
上記した窒化アルミニウム結晶粒子の製造方法は、窒化アルミニウム結晶粒子の製造に塩化アルミニウムを用いることを特徴とする。また、アルミニウムの温度を融点以下の温度にすることにより、石英ガラスを腐蝕させるAlClの生成を抑制することができる。これにより、単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を高い割合で含む粉末を製造することが可能となるため、単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を効率よく製造することができる。また、第1の反応室はシュラウドによりアンモニアガスから隔離されている。これにより、第2の反応室の温度が例えば1350℃以上の高温になる場合であっても、第1の反応室に設置されたアルミニウムが融点以上の温度に加熱されることを防ぐことができる。
また、第2の反応室の温度が1350℃以上1450℃以下の範囲内であることにより、製造された窒化アルミニウム結晶粒子の粒径を均一にすることができる。
【0013】
なお、ここでいう窒化アルミニウム結晶粒子は、排気管に設置された繊維性フィルタにより捕集されることが好ましい。これにより、効率的に窒化アルミニウム結晶粒子を捕集することができる。
【0014】
(削除)
【0015】
また、本発明による窒化アルミニウム結晶粒子は、シュラウドによりアンモニアガスから隔離された第1の反応室に設置されたアルミニウムを該アルミニウムの融点以下の温度に加熱し、第1の反応室へ供給された塩化水素ガスと反応させて、第1の反応室で塩化アルミニウムガスを発生させ、塩化アルミニウムガスとアンモニアガスとを第2の反応室で反応させて、第2の反応室で窒化アルミニウム結晶粒子を成長させることにより製造されたことを特徴とする。
【0016】
上記した窒化アルミニウム結晶粒子は、第1の反応室がシュラウドによりアンモニアガスから隔離されている状態で製造される。これにより、第2の反応室の温度が例えば1350℃以上の高温になる場合であっても、第1の反応室に設置されたアルミニウムが融点以上の温度に加熱されることを防いだ状態で製造されることができる。また、上記した窒化アルミニウム結晶粒子によれば、従来の多結晶の窒化アルミニウム結晶粒子では不可能であった大型窒化アルミニウム結晶育成用の種結晶として、窒化アルミニウム結晶粒子を利用することができる。また、結晶性の優れた単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を使用することにより、従来の多結晶の窒化アルミニウム結晶粒子では困難であった、窒化アルミニウムを母体とする蛍光体の大幅な高効率化を図ることができる。
【0017】
また、窒化アルミニウム結晶粒子の形状は、各々独立した六角柱又は六角鼓形であって、窒化アルミニウム結晶粒子の粒径は、0.05μm以上1μm以下でもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明による窒化アルミニウム結晶粒子の製造装置および該製造装置を用いた窒化アルミニウム結晶粒子の製造方法によれば、単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を効率よく製造することができ、本発明による製造装置を用いた製造方法により製造された窒化アルミニウム結晶粒子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明による窒化アルミニウム結晶粒子の製造装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
まず、本方法に好適に用いられる窒化アルミニウム結晶粒子の製造装置の構成について説明する。
図1は、本方法に用いられる製造装置1の構成を示す概略図である。この製造装置1は、気相法により結晶粒子を製造するための装置である。
図1を参照すると、製造装置1は、反応管2、加熱装置3、ガスライン4〜6、シュラウド9及び排気管12を備える。
【0022】
反応管2は、第2の反応室2a、及び反応容器7を内部に有する。加熱装置3は、反応管2の高さ方向における一部の周囲に設置されている。加熱装置3としては、例えば電気管状炉が好適である。
【0023】
ガスライン4は、アンモニアガスを反応室2aへ供給するための管であり、反応管2の端面2b寄りの壁面に設置されている。また、ガスライン5は、塩化水素ガスを反応容器7の内部へ供給するための管であり、反応管2の端面2bに設置されている。さらに、ガスライン6は、窒素ガスを反応室2aへ供給するための管であり、反応管2の端面2bに設置されている。
【0024】
反応容器7の内部は第1の反応室7aとなっている。反応室7aは塩化アルミニウムガス(AlCl
3)を発生させるための領域である。反応容器7は、加熱装置3の下端3aよりもさらに端面2b寄りに設置されている。反応容器7の端面2b寄りの端面7bには、ガスライン5の先端部が接続されている。反応容器7の端面7bと対向する他の端面7cには、ノズル10が接続されている。ノズル10は、反応容器7の端面7cから反応室2aまで延伸されている。反応室7aには、原料8であるアルミニウムが設置されている。さらに、反応室7aには、ガスライン5より熱電対11が挿入され、熱電対11の先端は、原料8の位置に設置されている。
【0025】
シュラウド9は、反応管2の内部に配置され端面2bから反応容器7とノズル10の先端部との間の位置まで延伸されている。反応容器7はシュラウド9の内側に設置されている。また、ガスライン4から供給されるアンモニアガスは、反応管2の壁面とシュラウド9の間にある空隙を通過して、反応室2aに導かれる。従って、反応室7aで発生する塩化アルミニウムガスは、シュラウド9によりアンモニアガスから隔離されている。
【0026】
排気管12は、反応室2aにおいて反応の結果生じた残余ガスを排出するために、反応管2の端面2bと対向する他方の端面2cに設置されている。排気管12の先端部には、繊維性フィルタ13が設けられている。繊維性フィルタ13は、反応の結果生じた窒化アルミニウム結晶粒子を捕集するためのものである。繊維性フィルタ13としては、例えばシリカ繊維性フィルタ、ガラス繊維性フィルタが好適である。
【0027】
図2は、反応室2aの温度分布を示す一例である。
図2の左側にあるグラフは、反応室2aの高さ方向の温度分布を示している。Aは加熱装置3の下端3aの位置である。反応管2の高さ方向の距離はAを座標原点としている。Bはノズル10の先端部の位置であり、Aからの距離は185mmである。Cは加熱装置3の上端の位置であり、Aからの距離は625mmである。Dは繊維性フィルタ13の位置であり、Aからの距離は695mmである。
図2のグラフを参照すると、Aからの距離が150mm以上450mm以下の領域で、約1400℃(1350℃以上1450℃以下)の均一な温度分布が得られていることがわかる。また、ノズル10の先端部は、約1400℃の均一な温度分布が得られている領域内にあることがわかる。これにより、ノズル10から供給される塩化アルミニウムガス及びガスライン4から供給されるアンモニアガスは、反応室2aの約1400℃(1350℃以上1450℃以下)の領域で反応することがわかる。
【0028】
ここで、上記した製造装置1を用いた窒化アルミニウム結晶粒子の製造方法について説明する。まず原料8として、アルミニウムを用意する。そして、このアルミニウムを反応室7aに設置する。
【0029】
続いて、反応室2aへガスライン6から窒素ガスを供給する。そして、反応室2aに窒素ガスの流れを形成しながら、加熱装置3によって反応室2aの温度を例えば1350℃以上1450℃以下の範囲内に加熱する。また、これと並行して反応室7aに設置した原料8であるアルミニウムを、例えば580℃以上アルミニウムの融点以下の温度の範囲内(例えば600℃)に加熱する。従って、アルミニウムは完全には溶解しない。このとき、反応室7aに設置したアルミニウムの温度は、熱電対11により計測される。アルミニウムの温度が580℃以上アルミニウムの融点以下の温度になるように、反応容器7と加熱装置3との距離が調整される。
【0030】
反応室2aの温度が例えば1350℃以上1450℃以下の範囲内になった後、ガスライン5より塩化水素ガスを反応室7aに供給する。これにより、アルミニウムと、塩化水素ガスとが反応し、塩化アルミニウムガスが発生する(Al+3
HCl→AlCl
3+1.5H
2)。また、発生した塩化アルミニウムガスは、シュラウド9によりアンモニアガスから隔離される。
【0031】
続いて、ガスライン4よりアンモニアガスを反応室2aへ供給する。これにより、アンモニアガスと、ノズル10により導出された塩化アルミニウムガスとは、1350℃以上1450℃以下の範囲内の温度に加熱された反応室2aにおいて反応し、窒化アルミニウム結晶粒子が製造される(AlCl
3+NH
3→Al
N+3HCl)。製造された窒化アルミニウム結晶粒子は、繊維性フィルタ13により捕集される。製造された窒化アルミニウム結晶粒子の粒径は、0.05μm以上1μm以下の大きさである。
【0032】
以上に説明した工程により、単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を製造することができる。
【0033】
本実施形態による窒化アルミニウム結晶粒子の製造装置は、窒化アルミニウム結晶粒子の製造に塩化アルミニウムを用いることを特徴とする。従来は、窒化アルミニウム結晶粒子の製造に蒸発させたアルミニウムが用いられていたが、この方法では単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を得ることが困難であった。また、アルミニウムの温度を融点以下にすることにより、石英ガラスを腐蝕させるAlClの生成を抑制することができる。従って、本実施形態による製造装置によれば、単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を高い割合で含む粉末を製造することが可能となるため、単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を効率よく製造することができる。
【0034】
また、本実施形態による窒化アルミニウム結晶粒子の製造装置は気相法を用いた装置であるため、連続合成が可能であり、量産への応用が容易にできる。さらに、本実施形態では、シュラウド9により、第1の反応室に設置されたアルミニウムが融点以上の温度に加熱されることを防ぐことができる。
【0035】
本実施形態では、繊維性フィルタ13により効率的に窒化アルミニウム結晶粒子を捕集することができる。また、本実施形態では、塩化アルミニウムガス及びアンモニアガスを1350℃以上1450℃以下の範囲内で反応させることにより、製造された窒化アルミニウム結晶粒子の粒径を均一にすることができる。
【0036】
本実施形態による窒化アルミニウム結晶粒子の製造方法は、窒化アルミニウム結晶粒子の製造に塩化アルミニウムを用いることを特徴とする。従来は、窒化アルミニウム結晶粒子の製造に蒸発させたアルミニウムが用いられていたが、この方法では単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を得ることが困難であった。また、アルミニウムの温度を融点以下にすることにより、石英ガラスを腐蝕させるAlClの生成を抑制することができる。従って、本実施形態による製造方法によれば、単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を高い割合で含む粉末を製造することが可能となるため、単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を効率よく製造することができる。
【0037】
また、本実施形態による窒化アルミニウム結晶粒子の製造方法は気相法であるため、連続合成が可能であり、量産への応用が容易にできる。さらに、本実施形態では、シュラウド9により、第1の反応室に設置されたアルミニウムが融点以上の温度に加熱されることを防ぐことができる。
【0038】
本実施形態では、繊維性フィルタ13により効率的に窒化アルミニウム結晶粒子を捕集することができる。また、本実施形態では、塩化アルミニウムガス及びアンモニアガスを1350℃以上1450℃以下の範囲内で反応させることにより、製造された窒化アルミニウム結晶粒子の粒径を均一にすることができる。
【0039】
上記した窒化アルミニウム結晶粒子は、第1の反応室がシュラウドによりアンモニアガスから隔離されている状態で製造される。これにより、第2の反応室の温度が例えば1350℃以上の高温になる場合であっても、第1の反応室に設置されたアルミニウムが融点以上の温度に加熱されることを防いだ状態で製造されることができる。また、上記した本実施形態による窒化アルミニウム結晶粒子によれば、従来の多結晶の窒化アルミニウム結晶粒子では不可能であった大型窒化アルミニウム結晶育成用の種結晶として、窒化アルミニウム結晶粒子を利用することができる。大型窒化アルミニウム単結晶は、GaN系発光及び電子デバイスのエピタキシャル成長基板として利用することができる。また、結晶性の優れた単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を使用することにより、従来の多結晶の窒化アルミニウム結晶粒子では困難であった、窒化アルミニウムを母体とする蛍光体の大幅な高効率化を図ることができる。
【実施例1】
【0040】
反応管2として内径60mm、高さ1000mmである高純度アルミナ製縦型反応管と、加熱装置3として加熱部の長さが500mmである電気管状炉とを含む製造装置1を準備した。反応管2は、重力加速度の方向と反応管2の高さ方向とが互いに沿うように設置され、窒素ガス、塩化水素ガス及びアンモニアガスは、端面2b寄りに設置されたガスライン4〜6から供給され、反応の結果生じたガスは、端面2c寄りに設置された排気管12より排気されるものである。使用する原料8は金属アルミニウムである。使用するガスは20%窒素希釈の塩化水素ガス、アンモニアガス及び窒素ガスである。
【0041】
本実施例では、反応室2aの温度と、窒素ガス、塩化水素ガス及びアンモニアガスの流量とを変数とし、それぞれ異なる3つの条件を設定して、試料a、b及びcを製造した。
図3は、それぞれ異なる3つの条件と試料a、b及びcとの対応を示す表である。ここで、ガス流量の単位は、1分間あたりの標準状態での体積をccで表記した場合のガス流量である。
【0042】
次に、例えば試料aの製造工程を説明する。まず、ガスライン6から窒素ガスを1730sccmの流量で反応室2aに供給し、反応室2aに窒素ガスの流れを形成しつつ、反応室2aの温度が1450℃になるように加熱する。これと並行して、反応室7aに設置した金属アルミニウムの温度が約600℃になるように加熱する。反応室2aの温度が一定になった後、反応管2の端面2bに設置されたガスライン5から、20%窒素ガス希釈の塩化水素ガスを20sccmの流量で反応室7aへ供給し、塩化水素ガスと金属アルミニウムとを反応させることにより、塩化アルミニウムガスを発生させる(Al+3
HCl→AlCl
3+1.5H
2)。
【0043】
続いて、ガスライン4からアンモニアガスを250sccmの流量で反応室2aに供給し、アンモニアガスと塩化アルミニウムガスとを、反応室2aの1450℃の領域で反応させ、窒化アルミニウム結晶粒子を製造する(AlCl
3+NH
3→Al
N+3HCl)。窒化アルミニウム結晶粒子は、ガラス繊維性フィルタ13により捕集される。
【0044】
図4は、製造した試料a、b及びcについて、X線回折測定(XRD法)を行った結果である。
図4を参照すると、試料a、b及びcは、全て窒化アルミニウム結晶粒子のみで構成されていることがわかる。
【0045】
図5は、
図3のa、b及びcの条件で製造した窒化アルミニウム結晶粒子の走査電子顕微鏡写真である。
図5において(a)は試料aの写真であり、(b)は試料bの写真であり、(c)は試料cの写真である。
図5を参照すると、ほとんどの粒子は、ウルツ鉱構造を反映した6回対称の各々独立した六角柱又は六角鼓形であり、単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子が高い割合で製造されていることがわかる。ここで、六角鼓形の形状とは、六角形の端面に挟まれる領域の断面形状が六角形であり、該六角形は端面の六角形よりも小さい形状である立体形状をいう。また、窒化アルミニウム結晶粒子の粒径は、およそ0.05μm以上0.8μm以下であることがわかる。
【実施例2】
【0046】
実施例1に示した条件と異なる条件で、窒化アルミニウム結晶粒子を製造した。まず、実施例1と同様の製造装置1を準備した。使用する原料8は金属アルミニウムである。使用するガスは20%窒素希釈の塩化水素ガス、アンモニアガス及び窒素ガスである。
【0047】
次に、製造工程を説明する。まず、ガスライン6から窒素ガスを反応室2aに供給し、反応室2aに窒素ガスの流れを形成しつつ、反応室2aの温度が1450℃になるように加熱する。これと並行して、金属アルミニウムの温度が約600℃になるように加熱する。反応室2aの温度が一定になった後、反応管2の端面2bに設置されたガスライン5から、4sccmの流量である塩化水素ガスと16sccmの流量である窒素ガスとを混合したガスを反応室7aへ供給し、塩化水素ガスと金属アルミニウムとを反応させることにより、塩化アルミニウムガスを発生させる(Al+3
HCl→AlCl
3+1.5H
2)。
【0048】
続いて、ガスライン4から窒素ガスとアンモニアガスとを混合したガスを反応室2aに供給する。混合したガスのうち、アンモニアガスの流量は250sccm以上1000sccm以下である。アンモニアガスと塩化アルミニウムガスとを反応室2aで反応させ、窒化アルミニウム結晶粒子を製造する(AlCl
3+NH
3→Al
N+3HCl)。製造された粒子は、シリカ繊維性フィルタ13により捕集される。なお、ガスライン4及び6から供給される窒素ガスの流量は、併せて980sccm以上1730sccm以下である。
【0049】
上記した条件で製造した窒化アルミニウム結晶粒子の特徴を確認した結果、窒化アルミニウム結晶粒子は単結晶でウルツ鉱構造の六角柱型及び六角鼓形を有していた。また、粒子の大きさは0.05μm以上0.8μm以下であった。最も大きな粒子は直径及び長さが約0.8μmであり、粒子の平均長さは約0.3μmであった。
【実施例3】
【0050】
図6は、反応室2aの温度を1400℃として製造した窒化アルミニウム結晶粒子の走査電子顕微鏡写真である。
図6を参照すると、A粒子は、完全な単結晶粒子であり、B粒子は、c軸の向きが真逆の2つの単結晶グレインが結合した粒子である可能性があることがわかる。また、
図6を参照すると、A粒子のうち、C面及びD面は一方が(0001)Al面であり他の一方が(0001)N面であることがわかる。結晶方位は、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定される回折スポット形状を解析することで確定できる。
【実施例4】
【0051】
図7は、反応室2aの温度を1500℃として製造した窒化アルミニウム結晶粒子の電子線励起発光(CathodoLuminescence)の強度とその光の波長との関係を測定した結果である。
図7を参照すると、最大発光強度の波長は、約375nmであることがわかる。この波長は、製造条件により多少変動する。
【実施例5】
【0052】
アンモニアガスの分圧が窒化アルミニウム結晶粒子の粒子形成に与える影響を調べるために、次の実験を行った。まず、実施例1と同様な製造装置1を準備した。反応室7aに金属アルミニウムを設置し、金属アルミニウムが約600℃になるまで加熱した。その後、塩化水素ガスを4sccmの流量で反応室7aに供給し、塩化アルミニウムガスを生成させた。続いて、反応室2aの温度が1450℃になるまで加熱し、塩化アルミニウムガスとガスライン4から供給したアンモニアガスとを反応させて、窒化アルミニウム結晶粒子を製造した。本実施例
5では、アンモニアガスの流量と、アンモニアガスの分圧を変化させた。ここで、アンモニアガスの分圧は、アンモニアガスに窒素ガスを混合することにより変化させた。
【0053】
図8は、異なる分圧条件で製造した窒化アルミニウム結晶粒子について、X線回折測定を行った結果である。
図8において、グラフGaはアンモニアの分圧が0.25atmである場合を示し、グラフGbはアンモニアの分圧が0.125atmである場合を示している。
図8を参照すると、異なる分圧条件であっても、製造される粒子は、窒化アルミニウム結晶粒子のみであることがわかる。
図9は、異なる分圧条件で製造された窒化アルミニウム結晶粒子の電子顕微鏡写真である。
図9(a)は、アンモニアの分圧が0.25atmである場合の写真であり、
図9(b)はアンモニアの分圧が0.125atmである場合の写真である。
図9を参照すると、製造された結晶粒子は、ウルツ鉱構造を反映した6回対称の形状をもつ単結晶粒子が多いことがわかった。また、
図9(a)と
図9(b)とを比較すると、アンモニアガスの分圧の増加に従い粒径が増大する傾向があることがわかった。これは、窒化反応が促進されたためと考えられる。
【0054】
上記した結果より、塩化アルミニウムは単結晶の窒化アルミニウム結晶粒子を製造するための材料として適していることがわかった。
【0055】
本発明による窒化アルミニウム結晶粒子の製造方法、及び該方法により製造された窒化アルミニウム結晶粒子は、上記した実施形態及び実施例に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。