(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721110
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】機械式内サイクロイド変換装置を備えた船舶用多方向推進システム
(51)【国際特許分類】
B63H 1/36 20060101AFI20150430BHJP
B63H 23/04 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
B63H1/36
B63H23/04
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-546468(P2012-546468)
(86)(22)【出願日】2010年12月29日
(65)【公表番号】特表2013-516348(P2013-516348A)
(43)【公表日】2013年5月13日
(86)【国際出願番号】ES2010000530
(87)【国際公開番号】WO2011064420
(87)【国際公開日】20110603
【審査請求日】2013年12月24日
(31)【優先権主張番号】P200902421
(32)【優先日】2009年12月30日
(33)【優先権主張国】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】512171641
【氏名又は名称】ユゲ カザーリ,ミゲル
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】ユゲ カザーリ,ミゲル
【審査官】
田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−094656(JP,U)
【文献】
実開昭56−143994(JP,U)
【文献】
実公昭18−000118(JP,Y1)
【文献】
国際公開第2008/129104(WO,A1)
【文献】
英国特許出願公告第573359(GB,A)
【文献】
米国特許第04568290(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 1/36
B63H 23/04
B63H 23/02
B63H 23/30
F16H 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式内サイクロイド変換装置を備えた船舶用多方向推進システムであって、
各動力伝達装置用に、
機械式内サイクロイド変換装置式の駆動システム(100)と、
多方向連結システム(200)と、
水中部分(300)と
を有し、
前記水中部分(300)がフィッシュテイル推進構造によって形成され、
二つの同心軸(15,16)を備え、それらの各々が、各軸(22)及び停止部材(20)を備えた回転ブレード(21)を取り付けたアーム(19)及び本体(18)によって形成されたスイングフレーム(17,17’)を連結し、船舶の推進力の生成に応答可能なものであり、
スイングフレーム(17,17’)の動きが振動式であり、多方向連結システム(200)のために、回転ブレード(21)の推進力の方向、即ち、船舶に加えられる推進力の方向及び進路が変更され得、
多方向連結システム(200)が、各同心軸(15,16)上にクラッチを使用することで、回転ブレード(21)の推進力を、任意の水平方向で0°から360°の間の方向に案内し、各クラッチが二つのディスク(12,13)を備えている
多方向推進システムにおいて、
船舶のプロペラモータが、駆動チェーン(2)を介して駆動システム(100)に連結された駆動軸(1)を回転し、
前記駆動チェーン(2)がその軸(7)を通して、前記回転を、各内歯車(6)の内側を回転する二つの遊星ギヤ(3)に伝達し、
二つの遊星ギヤ(3)を、それらの各ボルトディスク(8)と一体的にし、各ボルトディスク(8)がそれに固定されたボルト(5)を有し、両方のボルト(5)が相互に180°離して配置され、
各ボルト(5)が、一定の長さで、内歯車(6)のピッチ円直径に等しい直線往復軌道を描き、
ボルト(5)が、動力伝達装置の同じ側に設けられた二つの弾性連結ロッド(4)に連結され、それらの往復運動を、多方向連結システム(200)の各駆動ディスク(13)に伝達し、
駆動ディスク(13)が、それらの各同心軸(15,16)を、摺動ディスク(12)を介して動かし、両同心軸(15,16)が、完全に回転することはなく、対向する方向に(対向する軌道で)同期した回転振動運動を実行し、
同心軸(15,16)が、弾性連結部(36)を通して、スイングフレーム(17,17’)を動かす
ことを特徴とする機械式内サイクロイド変換装置を備えた船舶用多方向推進システム。
【請求項2】
推進システムが動作中であろうと停止中であろうと、駆動システム(100)が、それ自身の幾何学的軸を中心に一体的に回転され得、スイングフレーム(17,17’)のスウィープ角度(β)の範囲を徐々に変える
ことを特徴とする請求項1に記載の機械式内サイクロイド変換装置を備えた船舶用多方向推進システム。
【請求項3】
多方向連結システム(200)が、
−相互に連結部を有する二対のディスク(13,12)を有し、ディスク(12,13)が結合(クラッチ連結)された時に、連結ロッド(4)の往復運動を、それらに対応する同心軸(15及び16)に伝達して、回転ブレード(21)がフィッシュテイルのような動きをするように対応する同心軸(15及び16)を動作させることができ、かつ、
多方向連結システム(200)が、さらに、
−駆動システム(100)の二つの同心軸(15,16)を同時に連結解除することが可能な補助機構(24)と、
二つの同心軸(15,16)をそれらの共通幾何学的軸を中心として一体的に回転させるために、補助機構(24)の作用によって一度駆動システム(100)から連結解除された両方の同心軸(15,16)を一時的に連結することを可能にする同期装置(25)と、
補助機構(24)の作用によって一度駆動システム(100)から連結解除され、同期機構(25)の作用によって相互に同期される同心軸(15,16)の共通幾何学的軸を中心にして両方の同心軸(15,16)を一体的回転させることを可能にする回転機構(26)
を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の機械式内サイクロイド変換装置を備えた船舶用多方向推進システム。
【請求項4】
補助機構(24)が、並行であり径方向に対向する二つのロッド(37)を備え、
両方の摺動ディスク(12)の本体に形成された各環状スロット内に、動力伝達装置の動作中に摺動ディスク(12)の回転振動動作を妨げないような緩さで、二つ一組で四つのベアリング(27)が組み込まれ、
二つのロッド(37)が前記ベアリング(27)を介して、同時に上昇又は下降されて、二つの摺動ディスク(12)を動かす
ことを特徴とする請求項3に記載の機械式内サイクロイド変換装置を備えた船舶用多方向推進システム。
【請求項5】
同期装置(25)が、同心軸の外軸(15)の上端で摺動できるが回転できない同期ディスク(28)と、
支持ディスク(29)と
を有し、
前記ディスク(28)が上側の摺動ディスク(12)の本体に収容され、その上面が孔付きクラウンを支持し、
前記支持ディスク(29)が同心軸の内軸(16)に固定され、八つのポンチ(30)を備え、前記ポンチ(30)がバネで重みを加えられ、相互に角度がずらされている
ことを特徴とする請求項3に記載の機械式内サイクロイド変換装置を備えた船舶用多方向推進システム。
【請求項6】
回転機構が、
固定された高さで溝付き下側ヘッドを有し、その上端に取り付けられたフライホイール(38)によって、その幾何学的軸を中心に回転され得る回転軸(32)と、
上側の摺動ディスク(12)が上昇された時に、軸(32)のスプラインの中に挿入され、それにより二つの軸(16,32)間を一時的に連結し、フライホイール(38)の回転を、同期した二つの同心軸(15,16)に伝達することを可能にする内側スプラインリング(31)
を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の機械式内サイクロイド変換装置を備えた船舶用多方向推進システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造船の技術分野に含まれ、より詳細には、ボート、特に、発動機船用の推進及び操舵システムの技術範囲に含まれる。
【背景技術】
【0002】
船舶を推進させて操舵するための現在の手段を有する多方向推進システムの明らかな利点は、同一出願人のES2319149A1において公知であり、同文献に開示されている。特に、前記ES2319149A1に開示されている発明は、船舶の推進効率の向上と操縦性の改善のように二つの主たる目標を達成することを特徴としている。
概して、推進効率を向上させるために、前記文献は連結ロッドクランク式駆動システムによって形成された機構を提供しており、前記駆動システムは、メイン振動軸を動かし、ブレードとスイングフレーム(前記ブレードを支持する構造体)とが前記振動軸と一体に形成されている。(静水面に対して垂直な)軸が回転する時、船舶を動かす推進力を発揮させるための重要な要素であるブレードが引っ張られる。
船舶の操舵性の改善に関しては、多方向連結機構が開示されており、この機構は、スリング及び他の駆動ディスクと付加機構とから成る。前記付加機構は、両方のディスクを分離し、所望の方向で軸を回転させ、二つのディスクを再構築することができる。この方法では、ブレードは、0°から360°まで所望の方向に向けられ得る。
【0003】
本発明は、実質的に、従来の開発の中の改良であり、以下に説明する複数の必須の構成要素を導入することによって、推進力を発生させ、船舶に関する推進力の方向決めをすることの両方に関する。
【0004】
米国特許US272949号(アウグストゥス M フリーマン、1883年)には、「スイングフレーム」上に設けられた二組の旋回フィンを基礎とした振動推進システムを開示しており、前記スイングフレームは、同じ垂直軸を中心に振動又は往復運動動作において交互に回転して力を発生する。しかし、このボートは、手動推進ボートの形式であり、任意の機械的推進機構又は多方向連結機構に適応させる可能性を有するものではない。
【0005】
推進システムに関しては、本発明のスイングフレーム及びブレードなしで、米国特許US6193466号が、伝達ギヤによって動かされる二つの同軸垂直軸に連結された反対方向に回転するブレードに基づくプロペラシステムを開示している。この場合には、軸によって実行される動きは、本発明のそれのように、最小及び最大スウィープ角度を用いて交互に行わず、円(360°)であり、その結果、ブレードのスウィープ角度の範囲を調整することによって速度を調整することはできない。加えて、この文献では、プッシュ式方向決め機構及び速度調整機構が舵柄によって駆動されている。
【0006】
多方向連結機構に関しては、米国特許US2573382号は、ギヤ反転機構、即ち、二つの位置0°又は180°にだけその方向を変えることを開示している。この機構は、例えば、ドックにおいて操作することができないという欠点を有する。
【0007】
WO2005/047100号は、ボートの方向を変更する方法を開示しているが、使用しているシステムが本発明のシステムとは異なり、無端チェーン上に設けられた各ブレードの迎え角を変更するので、我々の船舶の推進システムには適合することができない。
【0008】
米国特許US972972号は、二つの同心軸を使用する三つのプロペラ(一つの中心で二つが側方)のセットを提案しているが、それは、(振動ではなく)完全な回転であり、提案されている駆動システムは、単一の
動力伝達装置に適用することができない多方向式である本発明に係る駆動システムとは異なる(内サイクロイド式ではない)。
【0009】
米国特許US4568290号は、推進用に二つの振動式の非同心軸を使用することを提案している。しかし、これは、水平面上で360°の回転をすることができないので多方向ではない。
【0010】
従って、出願人が見つけた従来技術文献は、何れも、推進力を有するモータ式船舶用のシステムを開示してなく、かつ、同時に、公知の開発で見つけられた問題を解決し、既存のシステムよりも高い性能を有する回転装置も開示していない。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、各
動力伝達装置に、従来技術と同様に水中に沈む部分を設け、この部分が、相互に反対方向に(反対の軌道で)回転して振動する二つの同心軸から成る。これらの軸は、二つの閾値(上限値及び下限値)間のスウィープ角度でのフィッシュテイル式の振動運動を、二つのスイングフレームに伝達する。各スイングフレームは、船舶を動かすための推進力を生じさせるブレードが設けられたアームに結合されたスイングフレーム本体によって形成される。この軸からの振動のスイングフレームへの伝達は、
動力伝達装置に弾性力を与え、振動を防止するために、各軸とそれに対応するスイングフレーム本体との間に挟まれた弾性手段を通して実行される。
【0012】
船舶を動かすために必要な推進力を発生させるために、船舶用の推進モータが設けられ、内サイクロイド式の機械式変換装置から成る駆動システムを介して、その動きが同心軸に伝達される。
【0013】
駆動システムの動作を理解するために、内サイクロイドが、他の準線円周の範囲内でスライドすることなく回転する母線円周上に置かれたポイントの軌跡を表す曲線であることを覚えておくべきであり、回転する円周の直径は、準線円周の直径の半分であり、生成された内サイクロイドは、準線円周の直径と同じ長さの直線である。
【0014】
従って、本発明に係る機械式内サイクロイド変換装置は、生成されるこれらの直線が、二つの連結ロッドのボルトによる移動軌跡に対応するように設計され、二つの駆動ディスクが取り付けられ、二つの同心軸を動かし、推進ブレードを動かす。
【0015】
単一のロト振動軸を使用する代わりに、反対方向への軌道を有する二つの同心回転及び振動(ロト振動)軸を使用することは、単一軸を用いては達成することが不可能である作動中にブレードによって発生する横方向成分のキャンセルの必要性によって正当化される。
【0016】
外軸は常に筒状であり、内軸は筒状又は中実である。その作動位置は、静水面に対して垂直であり、船舶の対称長手方向面上で、又はそれに平行な二つの面上で、船尾に向かって所定の傾きが許容され、もし、船舶が二つの
動力伝達装置を支持している場合には、この傾きの角度の最高点が、対応する内軸の下側端部として使われる。
【0017】
駆動システムとして機械式内サイクロイド変換装置を使用することにより、二つの閾値(最大スウィープ角度である上限値と最小スウィープ角度である最小値)との間で、スイングフレームのスウィープ角度の値を徐々に変更することが可能になる。この閾値間でのスウィープ角度の変更は、
動力伝達装置の作動中でも、それが作動していない時でも、両方の場合に実行され得る。
【0018】
動力伝達装置が作動している時に、スイングフレームのスウィープ角度を変更することによって、生成された推進力が異なる応答になり、小さい範囲のスウィープ(下限値)から大きい範囲のスウィープ(上限値)まで徐々に変更し得ることが強調されるべきである。
【0019】
このスイングフレームのスウィープ角度の範囲内での変動は、内サイクロイド変換装置(駆動システム)が、その幾何学的軸線周りに全体として完全に回転できるので実行することができ、連結ロッドのボルトによって描かれる往復運動(内サイクロイド)直線軌道の方向を変更することが可能である。
【0020】
駆動システムの詳細は、本発明の好ましい実施例でより詳細に説明される。
【0021】
推進システムは多方向連結システムを備え、この多方向連結システムは、任意の水平方向において、0°から360°の間の方向で、ブレードによって発生される推進力の再方向付けを可能にし、その結果、ボートは、例えば、桟橋に横方向に接岸するよう動くことが可能になる。
【0022】
このシステムは、各同心プロペラ軸の各々に二つのクラッチを有し、前記クラッチは、駆動システムを連結解除することが必要な時に、ブレードの方向を変更することが必要である駆動システムへの軸の連結解除及び連結を可能にする。各クラッチは、駆動ディスクと摺動ディスクから成る二つのディスクから成る。
【0023】
各駆動ディスクは、連結ロッドを通して駆動システムに連結され、その対応軸を通して振動運動をウイングフレームに伝達する。摺動ディスクは、駆動ディスクから分離するために、その対応する軸に沿って摺動することだけが可能である。
【0024】
対応する同心軸へ同心ロッドの往復運動を伝達する機能を実行するための各クラッチの二つのディスクの結合は、簡単な機械的連結、電気機械的連結又は任意の同等のシステムであり得る。
【0025】
二つの軸からの摺動ディスクを同時に連結−連結解除するために、船舶の種類に応じて、電気機械的な、又は水圧的等の補助機構が用いられ得る。
【0026】
一度連結解除した後に、同期方法でブレードの再方向付け変更を実行している間に同心軸を回転させるために、両方の軸と同期するための装置が用いられる。
【0027】
補助機構と、それらの同期装置との動作は対立している。一方が連結解除されている時に、他方が自動的に動作状態になり、逆もまた同様である。即ち、もし補助機構が、駆動システムを同心軸から連結解除していたら、同期装置は、二つの軸を連結し、それらを一体的に回転させる。
【0028】
加えて、プロペラブレード用の新しい方向に達するまで、回転機構は、一度分離された同期された二つの軸をそれ自身を中心に回転させることができるようにするために、内軸の上端に連結される。
【0029】
これらの連結が解除されて同期された軸は、それらがブレードの推進力のために選択された新しい方向に達するまで、回転機構の動作によって回転され、同時に、補助機構は、その反転動作によって、摺動ディスクを対応する駆動ディスクに再連結し、同期装置によって生成された二つの軸の一時的な連結を同時に自動的にキャンセルする。回転機構は、様々な形態を取り得、必須ではないが、船舶の種類や大きさに依存する。
【0030】
この新しい船舶用推進及び回転システムによって多くの利点が得られるが、とりわけ、下記のような利点が得られる。
1.船舶の動作中に実際に360°の多方向性が得られる。船舶の方向付け、移動、操舵のための動作(船程、前進、反転、ドック入れ等)が、任意の水平方向及び水平方位で可能である。
2.二重軸が反対方向に同期して回転しているため、振動を避ける推進動作中にブレードによって発生する横方向への力の補償をすることができる。
3.ブレードのスウィープ速度を上げたり下げたりするために、船舶の動作中にブレードのスウィープ角の範囲を変更することが可能であり、同時に、駆動システムの回転数を維持することができる。
4.従来のプロペラを使用する時に、水平軸の従来からあるホーンや、それらに対応するガスケットの使用を取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】機械式内サイクロイド変換装置とその駆動ディスクとの関係を示す概略平面図である。
【
図3】A及びBは、上限値と下限値との間のブレードのスウィープ角度 (β)の変動を示す概略平面図である。
【
図7】多方向連結部の詳細を示す連結状態を示す図(A)及び分離状態を示す図(B)である。
【
図8】多方向連結部の概略斜視図であり、(A)が同期軸を分離した図であり、(B)が連結した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明をより良く理解するために、機械式内サイクロイド変換装置を備えた船舶用多方向推進システムに包含される全ての要素を、その機能と共に詳細に説明していく。
【0033】
図1は、本発明の全体構造の
動力伝達装置を示す概略図である。
図1には、機械式内サイクロイド変換装置タイプの駆動システム(100)と、多方向連結システム又は船舶用推進力方向決めシステム(200)と、
動力伝達装置の水中に沈められている部分(300)とが示されている。
【0034】
動力伝達装置の水中に沈められている部分は、僅かな違いはあるものの、この技術分野に従来から存在しているものと類似している。この
動力伝達装置の水中に沈められている部分(300)は、二つのロト振動同心軸(roto-oscillating concentric shafts)(15,16)と、二つのスイングフレーム(17,17’)とを有し、各スイングフレームは、複数のスイングフレームメインアーム(19)に連結された本体(18)によって形成されており、選択的に、これらのメインアーム(19)間に、幾つかの中間アームが導入される。また、この
動力伝達装置の水中に沈められている部分(300)は、ブレード用軸(22)、二つ又はそれ以上の各ブレード用停止部材(20)及びブレード(21)を備えている。二つのロト振動同心軸(15,16)は、振動を、それらの対応するスイングフレーム(17,17’)に伝達してフィッシュテイル動作を作り出し、各スイングフレームの本体(18)と固定部分との間に挟まれた弾性手段(36)を通して、その動きを対応する軸へ伝達し、
動力伝達装置に弾性を与えて振動を防止する。
【0035】
本発明の持つこの技術分野の他の特許との違いの一つは、この実施例の場合には、二つ同心軸(15,16)が、それらの共通の幾何学的軸を中心に完全に回転することがないことである。これらは、前記幾何学的軸を中心に、相対する方向に、一回転中の僅か(スウィープ角度)な角度だけ回転し、その後、それらの初期位置に戻って振動を完成させる。このスウィープ角度の大きさ(β、
図3)は、
動力伝達装置が作動中の時でさえ、駆動システム(100)の回転数を変更する必要なく、二つの閾値(上限:
図3A及び下限:
図3B、
図3Bではスウィープ角度βは0である。)の間で徐々に変更され得る。
【0036】
軸(15,16)のスウィープ角度(β)のこれらの変動は、勿論、スイングフレーム(17,17’)及びそれらの対応するブレード(21)を通して受けられ、これは、船体の前進への応答のタイプで効果を有する。
【0037】
機械式内サイクロイド変換装置(駆動システム100)が、その幾何学的軸を中心に回されるので、ボルト(5)の内サイクロイド移動の方向を変えることが可能になり(
図3における直線H)、従って、スウィープ角度(β)の値に直接関連する内サイクロイド角度(α)の大きさを、下限の0°(
図3B)から上限(
図3A)まで変えることが可能になる。
【0038】
図2(より明確にするために、二枚の駆動ディスクの一方のみである上側ディスクと、それに対応する連結ロッドとが表されている。)は、機械式内サイクロイド変換装置(100)と、それに関連する駆動ディスク(13)と、それら連結ロッド(4)との概略平面図を示しており、
図4及び
図5は、
図2における二カ所の断面図であり、これらを用いて、機械式内サイクロイド変換装置が説明される。
【0039】
図4及び
図5に示すように、機械式内サイクロイド変換装置(100)の本体は、二つの連結された半体(10)から成る。
【0040】
機械式内サイクロイド変換装置タイプの駆動システム(100)は、回転を、駆動シャフト(1)から駆動チェーン(2)を通して、所定の長さで所定の軌道を有する二つのストレート内サイクロイド動作に変換するように設計された機構であり、
動力伝達装置の二つの同心軸(15,16)の二つのロト振動動作を得るためのものである。
【0041】
機械式内サイクロイド変換装置タイプの駆動システム(100)は、
図1、4及び5に示すように、船体プロペラモータの回転を受け、選択式(ベルト、ギヤ、チェーン等)の駆動チェーン(2)に連結される駆動軸(1)を有し、回転は、主軸(7)を介して二つの遊星ギヤ(3)に伝達され、これらは、それらの
内歯車(6)の範囲内で回転し、両方の軸(15,16)に適用できる前述した直線運動を生成する。
【0042】
これらの遊星ギヤ(3)は、ボルトディスク(8)を中心に一体的に回転する。
【0043】
ボルトディスク(8)にはボルト(5)が取り付けられている。お互いから180°の位置に設けられたボルト(5)(
図6参照)と、
動力伝達装置の同じ側で動作する連結ロッド4)とによって、同心軸(15,16)の回転(振動)の大きさは正確に一致し、かつ、反対向きになる。
【0044】
ディスク(8)は、ボルト(5)をそれらに対応する遊星ギヤ(3)に機械的に連結する。
【0045】
ボルト(5)は、直線(内サイクロイド)運動を描くことによって、連結ロッド(4)を動かし、連結ロッド(4)は、それらの往復運動を駆動ディスク(13)に伝達して、対応する同心軸(15,16)に伝達する。
【0046】
連結ロッド(4)は、
動力伝達装置の動作中に、それらのデッドスポットを通過する時に生じる突発的な力を緩衝するのに十分な弾性を有するように構成される。
【0047】
図2に戻ると、
図2には、各ボルト(5)及び連結ロッド(4)の軌道長が
内歯車(6)のピッチ円直径の長さに等しいことが示されている。これは、上述したように、内サイクロイドでは、回転円周の直径(遊星ギヤ(3)のピッチ円直径)が、準線円周の直径(
内歯車(6)のピッチ円直径)の半分である時、生成される内サイクロイドが
内歯車(6)のピッチ円直径と同じ長さを有する直線になることによる。
【0048】
従って、連結ロッド(4)は、各駆動ディスク(13)に往復回転運動を発生させる。二つの同心軸(15,16)の各々は、連結ロッド(4)から受けた動きを伝達する二つの駆動ディスク(13)の一方に結合され、その結果、両方の軸(15,16)は、同時に反対方向に(対抗する軌道で)回転して振動する。
【0049】
主軸(7)及び遊星ギヤ(3)の両方は、各々、それらが正確に動作することを可能にするベアリング(9,11)を有する。
【0050】
内サイクロイドタイプの駆動システム(100)の説明の後に、この機構の最も重要な目的が、内サイクロイド軌道を通して主軸(7)の回転運動を二つの直線運動に変換し、二つの連結ロッド(4)を介して各軸(15,16)に伝達し、二つのロト振動が完全に同期しているが反対方向(対抗する軌道)になるようにすることであることに注意すべきである。
【0051】
任意の他の方法の代わりに内サイクロイドを利用することによって達成される付加的な技術的効果は、運転中に船舶のために、プロペラブレードのスウィープ角度(β)の範囲を変更することができることである(
図3A及び
図3B)。
【0052】
機械式内サイクロイド変換装置(100)と多方向連結システム(200)との間の機械的連結は、以下の二つの基本的な事項を可能にする特別な支持手段(14)を介して実行される。
1 機械式内サイクロイド変換装置(100)と
動力伝達装置の残りの部分との間の確かな機械的連結を確保すること。
2 それ自身の幾何学的軸を中心とした機械式内サイクロイド変換装置(100)の全体の回転を可能にすること。
【0053】
この変換装置の回転を用いて、(内サイクロイド角度αを変更する)ボルト(5)の直線軌道の方向を変更することによって、(上述したように)スイングフレーム(17,17‘)のスウィープ角度(β)の大きさが変更され得る。このスウィープ角度(β)の変更は、
動力伝達装置の動作中でも、
動力伝達装置の停止中でも実行可能である。
【0054】
図7に示された船舶の推進方向を変更するための多方向連結システム(200)に関しては、以下の構成要素を備えている。
・駆動システム(100)から両方の軸(15,16)の連結を外すことを可能にする各軸(15,16)の二つのクラッチ
各クラッチは、駆動ディスク(13)及び摺動ディスク(12)の二つのディスクから成る。両方の駆動ディスク(13)は、外軸(15)上で自由に回転し得、それらに対応する連結ロッド(4)を通して駆動システム(100)に接続されている。摺動ディスク(12)は、それらに対応する軸上でスライドすることだけができ、それらの駆動ディスク(13)から分離(連結解除)される。好ましい実施例では、二つのディスク(12,13)は、それらの接触面上に、雄雌挿入部(23)を有し、これらは、ディスク(12,13)が連結している時に、連結ロッド(4)の往復運動を、それらに対応する軸(15及び16)に伝達して、それらを振動させる。
【0055】
・二つのクラッチの摺動ディスク(12)を同時に動かす補助機構(24)
この補助機構(24)は、二つの摺動ディスク(12)を同時に動かして、それらを、それらの駆動ディスク(13)から分離(連結解除)し、又は、それらの駆動ディスク(13)に結合(連結)する。この機構は、船舶の種類に依存して、様々な形態(機械式、電機機械式、水圧式等)で始動され得る。補助機構を作動し得る様々な種類の構造の中で、好ましい実施例では、(
図1及び7に一つだけが表されている)二つのロッド(37)が使用され、これらは(多方向の各サイドの一つに)並行であり、かつ、径方向に対向し、
動力伝達装置の動作中にこれらのディスク(12)の振動を妨げるのには十分でない緩さで、両方の摺動ディスク(12)の本体に形成された各環状スロット内に二つ一組で組み込まれた四つのベアリング(27)を通して、同時に上昇又は下降されて、二つの摺動ディスク(12)を動かす。
【0056】
・推進力の方向を変更させる間、二つの軸(15,16)が既に駆動システム(100)から連結解除されている時に、これらの軸を一緒に(同期させて)回転させるための二つの軸(15,16)の同期装置(25)
二つの摺動ディスク(12)の同時分離中に、上側摺動ディスク(12)(内軸(16))の移動により、二つの軸(15,16)の同期装置(25)が自動的に作動され、既に連結解除された両方の軸(15,16)を一時的に連結し、それらの径方向の関係を変えることなく(同期して)、それら自身を中心に両方の軸が一緒に回転することを可能にする。
この同期装置(25)は、駆動軸(1)の回転を停止した後に、軸(15,16)がその最後の振動を実行することによって停止されることになる無作為な相対的角度位置に関係なく、その機能を実行することができるように設計されている。
同期装置(25)を実行し得る様々な種類の構造の中で、好ましい実施例では、以下の構成を使用している。
−外軸(15)上で摺動するが回転せず、上側摺動ディスク(12)の本体に組み込まれ、その上面で孔付きクラウンを支持する同期ディスク(28)
−内軸(16)に固定され、八つのポンチ(30)を備えた支持ディスク(29)
前記八つのポンチ(30)は、バネで重みを加えられ、相互に角度がずらされ、二つの軸(15,16)の連結解除動作中に、それらの間の一時的連結を形成するために、上側摺動ディスク(12)に沿って上昇された時に、ディスク(28)における孔の一つに、少なくともそれらの一つが嵌るようにされる。
【0057】
・同期装置がそれを実行している時に、一度連結が解除されて同期されると、スイングフレーム(17,17’)の新しい方向に、二つの軸(15,16)を一緒に回転できるようにするために前記内軸(16)の上端に同時に接続される回転機構(26)
これらの同期軸(15,16)は、スイングフレーム(17,17’)が、ブレード(21)の前進のために選択された新しい方向に達するまで、回転機構(26)を作動させることによって回転され得、その時に、動作を逆転させる補助機構(24)は、再び二つの摺動ディスク(12)を対応する駆動ディスク(13)に接続して、同期装置(25)による二つの軸(15,16)の一時的な連結を、自動的に解除する。回転機構(26)は、幾つかの形態で実現され得、それらはどれも強制的なものではなく、船舶の形式や大きさに依存することになる。その作動は通常手動である。
回転機構を実現し得る様々な形式の中で、好ましい実施例では、以下の構成が選択されている。
−固定された高さで溝付き下側ヘッドを有し、その上端に取り付けられたフライホイール(38:
図1参照)によって、その幾何学的軸を中心に回転され得る回転軸(32)
−内側スプラインリング(31)
上側摺動ディスク(12)が上昇された時に、軸(32)のスプラインの中に挿入され、それにより二つの軸(16,32)間が一時的に連結され、フライホイール(38)の回転を、同期した二つの同心軸(15,16)に伝達することを可能にする。
【0058】
次いで、
図7及び
図8に基づいて、推進力の方向及びセンスを変えるために、スイングフレーム(17,17’)の方向を任意に変更するための前段階として、駆動軸(1)の回転を停止した後に何が起きるのかを説明していく。
【0059】
図7Aは、連結された
動力伝達装置を示している。クラッチを閉じることによって、動きは、駆動システム(100)からブレードへ伝達され、推進力を発生する。
【0060】
図7Bは、連結解除された
動力伝達装置を示している。この連結解除は、二つの同期軸(15,
16)を回転させてブレード(21)を新しい方向に向けるために必要な前段階である。
【0061】
図8Bに詳述するように、この連結及び連結解除は、以下の通りに実行される。
補助機構(24)を動作させることによって、二つの摺動ディスク(12)が、同時に、それらの駆動ディスク(13)から分離され、それにより、雄雌挿入部材(23)が各クラッチを結合する(この好ましい実施例では、この種の雄雌機械的連結が各クラッチの二つのディスク(12,13)の連結を形成するために使用されているが、例えば、電磁気クラッチのような任意の他の均等な連結であってもよい)。これは、二つの同心軸(15,16)を開放し、その結果、これらの同心軸(15,16)は、スイングフレーム(17,17’)の、従って、推進力の別の方向を得るために、それらの共通軸を中心に一体的に回転され得る。
【0062】
しかし、二つの軸の間の角度遅れを回避するために、これらの回転は同期されるべきである。これは、自動的に作動する同期装置(25)によって実行される。上側摺動ディスク(12)が動く時に、それは同期装置(25)に接続し、従って、二つの軸(15,16)の一時的な連結が確立し、それらの一致した(同期した)回転が可能になる。
【0063】
これらの回転は、ブレード()21)のために選択された新しい作動位置まで同期軸(15,16)を回転させる回転機構(26)を動作させることによって実行される。
【0064】
一度、軸(15,16)が所望の位置(
図8A)まで回転されると、補助機構(24)の作動方向は反転され、それによって、軸(15,16)間の回転機構(26)及び同期装置(25)は、自動的に連結解除され、同時に、雄雌挿入部材(23)が再び連結される。これにより、駆動軸(1)が再び回転することが可能になり、その結果、ブレード(21)がこの新しい方向で推進力を発生する。
【符号の説明】
【0065】
1 駆動軸(船の推進モータからの回転を受ける軸)
2 駆動チェーン装置(ギヤ、チェーンスプロケットホイール等)
3 遊星ギヤ(周囲を回転するギヤ)
4 連結ロッド
5 連結ロッドの回転ボルト
6
内歯車
7 主軸
8 ボルトディスク(各遊星ギヤと一体)
9 主軸ベアリング
10 機械式内サイクロイド変換装置本体(結合される二つの半体)
11 遊星ギヤベアリング
12 摺動ディスク
13 駆動ディスク
14 機械式内サイクロイド変換装置と残りの多方向推進システムとの間の機械式連結用の支持手段
15 外軸
16 内軸
17 上側スイングフレーム
17’ 下側スイングフレーム
18 スイングフレームの本体
19 スイングフレームの腕
19’中間腕(オプショナル)
20 ブレードの先端
21 ブレード
22 ブレードの軸
23 雄雌挿入部材
24 二つの摺動ディスクを分離するための補助機構
25 同心軸用同期装置
26 推進力を再配向している間、二つの軸を一緒に回転させるための回転機構
27 補助機構ベアリング
28 同期装置ディスク
29 同期装置の補助ディスク
30 同期装置用ポンチ
31 回転機構用リング
32 回転機構用軸
33 二つの同心軸用
33 二つの同心軸用船体保護手段
34 外軸用ベアリング支持手段
35 船体保護手段戻り止め部
36 スウィングフレーム用弾性連結部材
37 摺動ディスク(12)のパーティションバー
38 回転機構のフライホイール
100 駆動システム
200 多方向連結システム(船舶推進用ガイダンスシステム)
300
動力伝達装置の沈められている部分