【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するために本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法は、350℃〜475℃において、反応容器内で油脂脱炭酸分解触媒と油脂が接触して、前記油脂脱炭酸分解触媒によって(化1)に示される脱炭酸分解反応でC8〜C24の炭化水素を主として生成し、前記油脂脱炭酸分解触媒はシリカ、アルカリ金属とアルカリ土類金属のうち1以上によって酸点が被毒されたFCC廃触媒、及びそれらの複合体からなる混合物の内いずれか1以上がマグネシウムの水酸化物、酸化物、炭酸塩のいずれか1以上からなる弱アルカリ性化合物によってコーティングされたものを含む構成を有している。
【0009】
【化1】
【0010】
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)350℃〜475℃において、油脂脱炭酸分解触媒と油脂を接触させると、油脂脱炭酸分解触媒の作用によりグリセリンのエステル結合部分が開裂され、(化1)に示す脱炭酸分解が起こり、バイオディーゼル燃料となる分解ガス(炭化水素)を得ることができる。なお、油脂脱炭酸分解触媒の種類によっては、優先的に脱COが起こることも考えられる。(化1)に示す反応から明らかなようにグリセリンを副生しないので、グリセリンの処理技術の確立や処理工数等を必要としない。また、副生物として、プロパン、メタン、エタン、ブタンのガス状化合物が得られるので気体燃料として用いることができ、油脂脱炭酸分解触媒を加熱するための燃料とすることもできる。
(2)この脱炭酸分解は、アルコールが実質的に存在しない条件下で行なわれるため、ランニングコストを大幅に安くでき、また原料油脂中のジエン類やパーオキサイド等の不安定な不純物が油脂脱炭酸分解触媒表面上で容易に分解されるため、生成物中に残留し難く、カルボン酸(遊離脂肪酸)等の不純物も副生され難いため、空気等に対して安定で黒変や異臭が生じ難い貯蔵安定性に優れたバイオディーゼル燃料を得ることができる。また、パーオキサイド等の不純物を、吸着剤を使って吸着・除去する工程も不要となり、経済性に優れる。さらに、コークの生成量が少ないため、コークが触媒の表面に析出することによる油脂脱炭酸分解触媒の活性低下や、油脂脱炭酸分解触媒が結合し塊状化するといった問題も生じ難く、高い収率で安定操業が可能となる。
(3)原料中に遊離脂肪酸が存在するが、油脂等のグリセリンのエステル結合部分が開裂され脱CO
2が行なわれることにより、カルボン酸(遊離脂肪酸)等の不純物が副生され難く、反応中に遊離脂肪酸が副生されても容易に炭化水素と炭酸ガスに分解されるため、副生されたカルボン酸(遊離脂肪酸)によって触媒の活性が低下するという問題が生じ難い。このため、活性低下分を見込んで触媒を大量に使用する必要がなく、使用済み触媒の処理や再活性化等の付帯作業によって、ランニングコストが上昇したり生産性が低下したりすることがない。廃油や不飽和結合を多く持つ油脂(ヤトロファ油等)は酸化劣化により多くの遊離脂肪酸を含有するので非常に有効である。
(4)油脂脱炭酸分解触媒を用いた脱炭酸分解でグリセリンの脱CO
2若しくは脱COが起こり、残りの炭素鎖を回収することにより、主に炭素数8〜24の炭化水素として凝固点が−20℃前後の流動性に優れたバイオディーゼル燃料を得ることができる。
(5)油脂脱炭酸分解触媒の活性の低下を防ぐための原料油脂から遊離脂肪酸を除去する前処理等が不要となり、また接触分解工程は常圧下で行うことができるため、バイオディーゼル燃料の製造工程及び反応装置を簡素化することができ生産性に優れるとともに、バイオディーゼル燃料を低コストで製造できる。このため、反応装置を、植物系バイオマスの生産拠点や必要とされる場所に低コストで建設することができ、必要な場所で必要なエネルギーを供給する分散型のエネルギー供給システムを構築できる。
(6)油脂脱炭酸分解触媒が350〜475℃に加熱されているので、脱炭酸分解の反応速度が大きく、高い生産性で炭素数8〜24のオレフィン及びパラフィンを主成分とするバイオディーゼル燃料を製造できる。
(7)350〜475℃では油脂は液状であり、ほとんど蒸発しない。したがって反応容器から生成物だけがガスとなって導出される。
(8)350〜475℃では油脂はほとんど熱分解しない。したがって油脂がほとんど脱炭酸分解されるので、2重結合部分が熱的に切断され低分子化することを防ぐ。
(9)ガスとして生成物を導出するので原料中のリン酸が油脂脱炭酸分解触媒に沈着し分解油にほとんど移行しない。そのためエンジンのリン酸による性能低下や損傷事故が無く、分解油を安心して使用できる。特にリン酸含有量の高いヤトロファや魚滓(或いは魚油)、大豆等を原料とした場合に有効である。
(10)シリカ、酸化マグネシウム、アルカリ金属とアルカリ土類金属のうち1以上によって酸点が被毒されたFCC廃触媒、及びそれらの複合体の混合物は鉱物油をほとんど低分子化しないので油脂や搾油原料と鉱物油との混合物を、原料として用いると鉱物油が搾油原料や残渣中に残った油脂の抽出剤として働き、さらに効率を上げることができる。
(11)アルカリ金属とアルカリ土類金属のうち1以上によって酸点を被毒され酸点が弱められたことで、油脂中の二重結合部分の切断が抑えられ、効率的に脱炭酸分解が起こる。また脂肪酸の生成も抑えられる。そのため燃料の生成収率が高くなる。
(12)コークの発生が抑えられ、装置のメンテナンスが少なくなり、触媒の劣化が遅くなる。
(13)石油の流動接触分解で広く使用されているFCC触媒を使用できるので、触媒を得ることが容易である。
(14)マグネシウムの水酸化物、酸化物、炭酸塩のいずれか1以上からなる弱アルカリ性化合物によってコーティングされたシリカ、アルカリ金属とアルカリ土類金属のうち1以上によって酸点が被毒されたFCC廃触媒は、鉱物油をほとんど低分子化しないので油脂や搾油原料と鉱物油との混合物を、原料として用いると油脂の抽出効率が上がり、分解油の収率を上げることができる。
【0011】
ここで、油脂としては、搾油して得られた菜種油,パーム油,パーム核油,オリーブ油,大豆油,エゴマ油,ひまし油,ヤトロファ油、コーン油等の植物油、テルペン類、魚油,豚脂,牛脂等の動物脂等、ある種の藻類から採取された油脂やこれらの混合物を用いることができる。また、天ぷら油等の廃食用油を用いることもできる。常温で固化する豚脂,牛脂等の油脂は、加熱された触媒や予熱により融けて液状化するため、油脂は液状,固形状のいずれも用いることができる。
油脂は、一種若しくは複数種の混合物を触媒と接触させて反応させることができる。また、油脂は、触媒に接触させる前に、475℃以下の温度で予熱することもできる。触媒と接触した後、速やかに加熱されるようにして、分解効率を高めるためである。
油脂はトリアシルグリセロール(3つのアシル基がグリセリンにエステル結合したもの)であるが、リン脂質や糖脂質や脂肪酸なども本発明の原料に用いることができる。
【0012】
油脂脱炭酸分解触媒には弱アルカリ性、中性、弱酸性のものが好ましい。具体的には、固体触媒のシリカ、アルカリ被毒した固体酸触媒の1以上が用いられる。また、多くのセラミックも触媒として用いることができる。
より具体的には、シリカ、アルカリ金属とアルカリ土類金属のうち1以上によって酸点が被毒されたFCC廃触媒、及びそれらの複合体からなる混合物の内いずれか1以上がマグネシウムの水酸化物、酸化物、炭酸塩のいずれか1以上からなる弱アルカリ性化合物によってコーティングされたものを含むもので、MgO,CaO,SrO,BaO等のアルカリ土類金属酸化物、La
2O
3,Th
2O
3等のランタノイド,アクチノイドの酸化物、ZrO
2やTiO
2等の金属酸化物、アルカリ土類金属等の金属炭酸塩、SiO
2−MgO,SiO
2−CaO等の複合酸化物、RbやCs等のアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンで交換したゼオライト、アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を添加し部分的あるいは全面的に被毒したFCC触媒やFCC廃触媒、Na,K等のアルカリ金属が蒸着されたNa/MgO,K/MgO等の金属蒸着金属酸化物、KF/Al
2O
3,LiCO
3/SiO
2等のアルカリ金属塩等の混合物や担持物(例えば、シリカ,コークス等に固体塩基を担持させた担持物)等を用いることができる。また、加熱されるとMgOとCaOの混合物となるドロマイト等の鉱物も好適に用いることができる。
これらのアンモニア昇温離脱温度はアルミナが50〜250℃、シリカゲルが30〜200℃、ゼオライト200〜600℃、活性炭が0〜100℃である。Na被毒したFCC触媒が30〜200℃、酸化マグネシウムを担持させた酸化ケイ素が0〜60℃、酸化マグネシウムを担持させた活性炭が0〜70℃である。アンモニア昇温離脱温度が400℃より高いものは、非常に強い酸触媒であり、油脂中のアルキル基の炭素間結合を切断して生成物が低分子化しやすく、また炭素間二重結合を攻撃して芳香族を多く生成するためにコークの生成が増える。このため、生成油の収率が下がり、さらに増加したコークにより触媒の活性低下が早まり、脱炭酸能が低下してカルボン酸の生成が多くなり生成油の品質が低下するため好ましくない。アンモニア昇温離脱温度が400℃より高いものを使用すると生成油中の芳香族が多いためセタン価が低い上に、酸が多く品質が低いためディーゼル燃料として実際に使用するには不適である。なお、触媒の内、活性炭、活性コークス等アンモニア昇温離脱温度が100℃以下の触媒を用いる場合には、油脂と鉱物油との混合物を、原料として用いることができる。活性炭、活性コークス等の触媒は鉱物油をほとんど低分子化しないからである。鉱物油としては、原油を蒸留して得られる常圧残油,常圧残油をさらに減圧蒸留して得られる減圧軽油,減圧残油,これらの水素化処理油、または熱分解油、及びそれらの混合物が挙げられる。また油脂の脱炭酸分解で生成した炭化水素も用いることができる。これらの鉱物油が残渣中に残った油脂の抽出剤として機能してさらに効率を上げることができる。
【0013】
酸点の被毒は50%以上が採用され、より好ましくは90%以上が採用される。酸点の被毒が50%未満であると、コークと軽質ガスの生成が増えて、好ましくない。
酸点が被毒されることでアンモニア昇温離脱温度は低下する。アンモニア昇温離脱温度は400℃未満が好ましく、より好ましくは200℃未満、さらに好ましくは100℃未満にまで被毒により下げたものが採用される。400℃以上では生成物を低分子化しやすい上に、芳香族が多く生成してコークとなり触媒活性が低下しやすいからである。100℃未満では炭素間結合をほとんど切断しないので、鉱物油などが混在している原料に対しても使用できる。
【0014】
FCC触媒とは石油の流動接触分解プロセスで使用される、40〜80μmの粒粉状に造粒された合成ゼオライト系の固体酸触媒である。FCC触媒のアルカリ金属による被毒には、様々な方法が用いうるが、例えばアルカリ金属塩水溶液にFCC触媒を浸漬して被毒させる方法が使用できる。
またFCC触媒として、産業廃棄物として処理されているFCC廃触媒も使用できる。FCC廃触媒とは石油の流動接触分解プロセスから排出されるものである。石油の流動接触分解プロセスでは触媒表面にコークが蓄積し触媒活性が徐々に低下する。そのため、このコークを加熱・焼却して触媒を再生する工程を石油の流動接触分解プロセスは有するが、触媒活性を一定に保つために新しい触媒を加える工程と古い触媒を抜き出す工程を有する。この抜き出された古い触媒がFCC廃触媒であり、多くは産業廃棄物として処理されている。FCC廃触媒は未だ触媒活性を十分に有している上に、非常に安価に入手できる。FCC廃触媒表面にコークが蓄積して触媒機能が低下した場合には、酸素雰囲気下で触媒を加熱することで、触媒表面のコークが焼却され触媒を再生することができる。
【0015】
油脂脱炭酸分解触媒の加熱温度が350℃より低くなると、脱炭酸分解反応の進行が遅くなる上に油脂の重合固化が起こり炭化水素の生産性が低下する傾向がみられる。また、475℃より高くなると、炭素数4以下の軽質ガスやコークの生成量が増加し、炭素数8〜24のオレフィン及びパラフィンを主成分とする生成物の生成量が低下する傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
【0016】
バイオディーゼル燃料を製造する反応装置としては、例えば、油脂脱炭酸分解触媒が収容された反応容器と、反応容器内の油脂脱炭酸分解触媒を加熱する加熱装置と、を備えたものが用いられる。反応容器は、固定床方式、流動床方式、ロータリキルン方式、撹拌方式等を用いることができる。なかでも、撹拌方式が好ましい。操業中に反応条件等が悪化すると、油脂脱炭酸分解触媒の表面に油脂等の分解物(芳香族化合物等)が重合して付着し、その重合物によって複数の油脂脱炭酸分解触媒が結合して反応容器内で塊状化して操業できなくなることがあるが、撹拌によって機械的に解砕し塊状化を防止できるからである。
脱炭酸分解工程において、油脂脱炭酸分解触媒を加熱し触媒が反応温度に達したら、搾油原料や油脂を噴霧,噴射,滴下,散布等によって反応容器内に導入し、油脂脱炭酸分解触媒と接触させる。連続式に処理を行なうことができ、バッチ式に処理を行なうこともできる。油脂は、加熱された油脂脱炭酸分解触媒と接触して分解され、可燃性ガスとして蒸気圧をもつようになる。窒素ガス,ヘリウムガス等の不活性ガスや水蒸気等のフローガスを連続的若しくは間欠的に導入することにより、生成された可燃性ガスを系外に排出させることができる。排出された可燃性ガスは冷却されバイオディーゼル燃料油となる。水蒸気をフローガスとして用いることにより、水溶成分を水蒸気に溶解させて可燃性ガスの洗浄効果を得ることができ、CaO等の触媒を用いる場合は、後述するように触媒の活性低下を防止できる。
失活した油脂脱炭酸分解触媒も、必要に応じて反応容器内で若しくは反応容器から抜き出した後、再生することができる。
【0017】
油脂脱炭酸分解触媒と接触した油脂の反応の一例を示すと、MgO(触媒)は油脂のCO
2と結合して油脂を分解し、炭酸マグネシウムとなる。炭酸マグネシウムは350〜450℃で分解して脱炭酸が起こるため、脱炭酸後のMgOは繰り返し油脂の分解に寄与する。
また、CaO(触媒)は、水分の存在下で油脂のCO
2と結合して油脂を分解し、炭酸水素カルシウムとなる。炭酸水素カルシウムは300℃付近で分解して脱炭酸が起こるため、脱炭酸後のCaOは繰り返し油脂の分解に寄与する。
【0018】
反応容器内の圧力は、大気圧乃至は正圧に維持するのが好ましい。油脂等の脱炭酸分解により軽油や灯油等の可燃性ガスが生成されるため、負圧であると反応容器内に空気が導入され、生成された可燃性ガスに着火し爆発する可能性があるからである。
【0019】
脱炭酸分解工程において、油脂の油脂脱炭酸分解触媒(体積)に対する1時間当たりの投入量(体積)を示す液空間速度としては0.05/h〜2.0/h、好ましくは0.3/h〜1.0/hが好適に用いられる。液空間速度が0.05/h未満であると、処理効率が低い上に2次的な分解により生成油分が軽質ガス化して灯・軽油分の収率が低下するため好ましくない。また2.0/hを超えると、触媒と油脂等との接触時間が短くなり油脂分解率が低下するため好ましくない。
【0020】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法であって、前記油脂脱炭酸分解触媒と前記油脂の内いずれか1あるいは両方が、接触して脱炭酸分解反応をするよりも前に350℃〜475℃に加熱されている構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)加熱された油脂脱炭酸分解触媒又は加熱された油脂の一方、あるいは双方が熱媒体となり、油脂脱炭酸分解触媒の表面で油脂と接触した部分の温度が上昇し、油脂脱炭酸分解触媒の作用によりグリセリンのエステル結合部分が開裂される反応が円滑に進行する。
【0021】
ここで、運転開始時には油脂脱炭酸分解触媒と油脂の双方を加熱しておくことで、反応容器内の温度が均一に保たれ、円滑に反応が進行するので好ましい。反応が安定した後では、加熱するのを一方とすることで、エネルギー消費を下げることができる。
【0022】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法であって、前記油脂の代わりに搾油原料が用いられる構成を有している。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)搾油原料は350℃〜475℃で油脂脱炭酸分解触媒に接触すると、搾油原料の内の殻等のセルロースが炭化されるとともに、搾油原料の油脂成分が溶出して油脂脱炭酸分解触媒に接触して油脂成分のエステル結合部分が開裂され、(化1)に示す脱CO
2若しくは脱COが起こり、バイオディーゼル燃料となる分解ガス(炭化水素)を得ることができる。
(2)搾油原料は、加熱され分解される際に水蒸気を発生するため、CaO等のように水分の存在下で良好に機能する油脂脱炭酸分解触媒を用いる場合には好適である。
【0023】
ここで、搾油原料としては、アブラヤシの果肉や種子,ココヤシの胚乳,菜種,オリーブの果実,エゴマやトウゴマ等の種子,ナンヨウアブラギリ(ヤトロフア)やコウヒジュの種子等の搾油前の植物の果実や種子等を用いることができる。またある種の藻類は油脂を細胞内に蓄えることが知られており、この藻類を脱水して濃縮したものを用いることもできる。搾油原料は乾燥させた後に用いるのが好ましい。水分を除去して加熱効率を高めるためである。また、油脂脱炭酸分解触媒による分解効率を高めるため、搾油原料は、粉砕若しくは破砕して表面積を広くしたものを用いるのが好ましい。圧搾等によって搾油された後の搾油原料も用いることができる。これらは搾油後であっても、まだ多くの油脂が残存していることが知られている。
なお、搾油原料の殻等のセルロースは、炭化して反応容器内に残留するため、残留した炭化物は必要に応じて反応容器内から抜き出せば良い。
【0024】
油脂や搾油原料と鉱物油との混合物として、ヘキサンなどの鉱物油によって熱的に搾油した後の搾油原料なども使用できる。これらは搾油後であっても、まだ多くの油脂が残存していることが知られている。
この他、油脂の精製工程から排出されるアルカリ油滓や魚滓、畜産滓(内臓類)なども油脂や脂質が多く、原料として使用できる。
【0025】
また前記油脂脱炭酸分解触媒は500℃〜600℃に加熱し、酸素を含む雰囲気に晒すことで再生することができる。コークの付着などで活性の低下した油脂脱炭酸分解触媒を加熱しながら通気するだけで油脂脱炭酸分解触媒の表面に付着したコークが焼失し、再生できるので省資源性に優れる。
油脂脱炭酸分解触媒の再生には反応容器をそのまま使用することができる。再生のための加熱の温度は500℃〜600℃が好ましい。500℃未満では再生に時間が掛かり実用的でない。600℃を超えるとセラミック類の構造が変わるなど油脂脱炭酸分解触媒の変性が起こり活性の低下が起こる恐れがあり好ましくない。
【0026】
原料油脂又は前記搾油原料に含まれている有機酸は触媒毒となり触媒の活性を下げるという課題があったが、油脂脱炭酸分解触媒によって有機酸が容易に炭化水素と炭酸ガスに分解されるため、触媒の活性が低下するという問題が生じ難い。このため、活性低下分を見込んで触媒を大量に使用する必要がなく、使用済み触媒の処理や再活性化等の付帯作業によって、ランニングコストが上昇したり生産性が低下したりすることがない。
【0027】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法であって、前記油脂脱炭酸分解触媒がバイオディーゼル燃料の製造後に残った前記搾油原料由来の炭化物を酸素雰囲気下、加熱して活性化された炭素としたものを含有する構成を有している。
この構成により、請求項3で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)酸素雰囲気下で加熱することで、反応容器内の油脂脱炭酸分解触媒の表面に蓄積していたコークが燃焼され油脂脱炭酸分解触媒が再生される。
(2)搾油原料の殻等のセルロースは、炭化して反応容器内に残留するため、適宜抜き出し廃棄する必要があるが、活性化した炭素に変えるので、触媒として有効利用でき、廃棄する必要がなくなる。
(3)工業化や交通網の整備が進んでいない地域であっても、容易に油脂脱炭酸分解触媒を調達できる。
【0028】
ここで搾油原料由来の炭化物の活性化には反応容器をそのまま使用することができる。再生のための加熱の温度は500℃〜600℃が好ましい。500℃未満では触媒の再生及び炭素の活性化に時間が掛かり実用的でない。600℃を超えるとセラミック類の構造が変わるなど油脂脱炭酸分解触媒の変性が起こり活性の低下が起こる恐れがあり好ましくない。
【0029】
本発明の請求項5に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法は、請求項1乃至4の内いずれか1に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法であって、前記脱炭酸分解反応においてモル比で1/10〜10/1(H
2O/油脂)の水蒸気が共存する構成を有している。
この構成により、請求項1乃至4で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)エステル結合の加水分解を水蒸気が促進するので油脂の分解効率が向上する。
【0030】
ここで本発明における油脂の脱炭酸分解反応では、副反応で必ず水が生成するので、別段、水蒸気を加えなくても反応は進行する。したがって水蒸気の量がモル比1/10以下ではその促進効果が明瞭でない。
原料中の水分がモル比で10/1を超えると生成油中に水分が多くなり品質低下をきたすので原料段階あるいは生成油からの水分除去(乾燥)が必要となる。搾油原料や魚滓等を利用した場合がこれに相当する。後述の実施例6の大豆の場合に表3に示したように水成分が多いのはこのためである。ただし、後段に生成油から水成分を除去する工程を加えれば格段の問題は生じない。
【0031】
本発明の請求項6に記載のバイオディーゼル燃料の製造装置は、請求項1乃至5の内いずれか1に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法に用いるバイオディーゼル燃料の製造装置であって、前記油脂脱炭酸分解触媒を内部に有した第1反応容器と、前記油脂脱炭酸分解触媒又は前記油脂若しくは搾油原料を加熱する加熱部と、前記搾油原料や前記油脂を前記第1反応容器に投入する投入部と、生成したガス混合物を前記第1反応容器から導出する第1ガス導出部と、を有する構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)搾油原料や油脂が加熱された油脂脱炭酸分解触媒によって加熱されると同時に脱炭酸分解反応が進行するので、コークなどの発生が少なく、熱効率がよく、収率のよい燃料製造が行える。
(2)原料油脂又は搾油原料を加熱して投入することで連続運転ができ、反応容器の構造が簡潔となり管理し易くなる。
【0032】
ここで第1反応容器には攪拌装置を設けることができる。特に搾油原料を用いる場合には、反応容器内の触媒と搾油原料とが十分接することができるように攪拌装置を設けることが好ましい。
脱炭酸分解工程において、油脂脱炭酸分解触媒を加熱し触媒が反応温度に達したら、搾油原料や油脂を噴霧,噴射,滴下,散布等によって反応容器内に投入し、油脂脱炭酸分解触媒と接触させる。油脂及び搾油原料の投入は連続式に行なうことができ、バッチ式に行なうこともできる。油脂は、加熱された油脂脱炭酸分解触媒と接触して分解され、可燃性ガスとして蒸気圧をもつようになる。窒素ガス,ヘリウムガス等の不活性ガスや水蒸気等のフローガスを連続的若しくは間欠的に導入することにより、生成された可燃性ガスを系外に排出させることができる。排出された可燃性ガスは冷却されバイオディーゼル燃料油となる。
【0033】
油脂脱炭酸分解触媒の量は5容量%以上が好ましく、より好ましくは20容量%以上が採用される。油脂脱炭酸分解触媒の量が5容量%未満では、触媒に接触できる油脂の比率が下がり、加熱により熱分解する油脂の比率が上がるので軽質ガスの生成が増え、生成油の収率が下がり好ましくない。また搾油原料を投入する場合は60容量%を超えると搾油原料など嵩の大きい原料を投入したときに触媒と接触できないで加熱される原料が増えることおよび、残渣の排出頻度が増えることから好ましくない。
搾油原料を投入する場合はより好ましくは油脂脱炭酸分解触媒の量は50容量%以下が採用される。
【0034】
搾油原料や油脂を加熱して分解を行う場合はそれらが反応温度に達したら、搾油原料や油脂を噴霧,噴射,滴下,散布等によって反応容器内に投入し、油脂脱炭酸分解触媒と接触させる。加熱した油脂等によって触媒が加熱されるので連続処理を行なうことができる。バッチ式に処理を行なう場合には搾油原料や油脂を触媒の加熱に必要な熱量分を考慮して高めに加熱するか、触媒を予熱することが好ましい。
【0035】
本発明の請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のバイオディーゼル燃料の製造装置であって、前記第1ガス導出部に接続され前記油脂脱炭酸分解触媒が充填された第2反応容器と、前記第1反応容器の生成ガス混合物を前記第2反応容器の内部に導入するガス導入部と、前記第2反応容器の前記油脂脱炭酸分解触媒で脱炭酸分解されたガス混合物を導出する第2ガス導出部を備えている構成を有している。
この構成により、請求項6で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)第1反応容器から生成したガス混合物を導入する第2の反応容器が前記油脂脱炭酸分解触媒を内部に充填しており、第1反応容器から生成したガス中の有機酸が第2反応容器の油脂脱炭酸分解触媒により脱炭酸分解されるので、生成物中の酸がさらに少なくなり品質が上がる。
(2)第1反応容器で生成した有機酸や原料油脂に含まれていた有機酸が第1反応器の上部を通じて、触媒に触れることなく第1反応器内で生成したガスと共に導出されても、第2反応容器によって脱炭酸分解されるので、生成物中の有機酸が少なくなり高品質が維持される。
(3)装置を長時間運転して、触媒の機能が低下してくると、第1反応容器で反応が不完全となり、反応しきれなかった有機酸が生成したガス混合物中に混入して、生成物の品質が下がる。この品質の低下を抑えるので、装置をさらに長時間運転できるようになり、運転効率を上げる。
【0036】
ここで第1反応容器と第2反応容器に使用する油脂脱炭酸分解触媒は必ずしも同一である必要はない。また第1反応容器から導出され第2反応容器に導入されるガス混合物は高温であるので、必ずしも第2反応容器の油脂脱炭酸分解触媒を加温する必要はない。ただし、運転中の第2反応容器の油脂脱炭酸分解触媒の温度が350℃を下回る場合には第2反応容器の油脂脱炭酸分解触媒を加熱する加熱装置が必要となる。第2反応容器は単管若しくはラジアルフロー式等の充填層反応器が用いられる。
【0037】
本発明の請求項8に記載の発明は、請求項1乃至5の内のいずれか1に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法、又は請求項6若しくは7に記載のバイオディーゼル燃料の製造装置で使用する油脂脱炭酸分解触媒であって、シリカ、アルカリ金属とアルカリ土類金属のうち1以上によって酸点が被毒されたFCC廃触媒、及びそれらの複合体による混合物の内いずれか1以上がマグネシウムの水酸化物、酸化物、炭酸塩のいずれか1以上からなる弱アルカリ性化合物によってコーティングしたものを含む構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)マグネシウムの水酸化物、酸化物、炭酸塩のいずれか1以上からなる弱アルカリ性化合物によってコーティングされたシリカ、アルカリ金属とアルカリ土類金属のうち1以上によって酸点が被毒されたFCC廃触媒、及びそれらの複合体による混合物は、鉱物油をほとんど低分子化しないので油脂や搾油原料と鉱物油との混合物を、原料として用いると油脂の抽出効率が上がり、分解油の収率を上げることができる。
(2)アルカリ金属とアルカリ土類金属のうち1以上によって酸点を被毒され酸点が弱められたことで、油脂中の二重結合部分の切断が抑えられ、効率的に脱炭酸分解が起こる。また脂肪酸の生成も抑えられる。そのため燃料の生成収率が高くなる。
(3)コークの発生が抑えられ、装置のメンテナンスが少なくなり、触媒の劣化が遅くなる。
(4)石油の流動接触分解で広く使用されているFCC触媒を使用できるので、触媒を得ることが容易である。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)従来のFAME法と違って、副原料のアルコールを必要としないため、ランニングコストを大幅に安くでき、また原料油脂中のジエン類や水酸基等の不純物が生成物中に残留し難く、コークの生成量が少なく、カルボン酸(遊離脂肪酸)等の不純物も副生され難いため、空気等に対して安定で黒変や異臭が生じ難い貯蔵安定性に優れ、凝固点が−20℃前後の流動性にも優れたバイオディーゼル燃料が得られるバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
(2)従来のFAME法と違って、グリセリンを副生しないので、グリセリンの処理技術の確立や処理工数等を必要とせず、またパーオキサイド等の不純物を、吸着剤を使って吸着・除去する工程も不要となり、さらにコークが触媒の表面に析出することによる触媒の活性低下や、触媒が結合し塊状化するといった問題も生じ難く、高い収率で安定操業が可能となるバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
(3)原料中に遊離脂肪酸が存在するが、油脂等のグリセリンのエステル結合部分が開裂され脱CO
2が行なわれることにより、カルボン酸(遊離脂肪酸)等の不純物が副生され難く、反応中に遊離脂肪酸が副生されても容易に炭化水素と炭酸ガスに分解されるため、副生されたカルボン酸(遊離脂肪酸)によって触媒の活性が低下するという問題が生じ難く、活性低下分を見込んで触媒を大量に使用する必要がないため、使用済み触媒の処理や再活性化等の付帯作業によって、ランニングコストが上昇したり生産性が低下したりすることがなく、生産効率及び生産性に優れたバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
(4)原料油脂から遊離脂肪酸を除去する前処理等が不要となり、また反応を常圧下で行うことができるため、バイオディーゼル燃料の製造工程及び反応装置を簡素化することができ、生産性に優れるとともにバイオディーゼル燃料を低コストで製造でき、必要な場所で必要なエネルギーを供給する分散型のエネルギー供給システムを構築できるバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
(5)熱分解が抑えられるので、収率がよくなるとともに、生成物中の脂肪酸の濃度が下がり、生成物を安心して燃料として使用できるバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
(6)触媒が安定に活性を保つので繰り返し使用でき、低原価で良質なバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
(7)酸点が弱められたことで、油脂中の二重結合部分の切断が抑えられ、効率的に脱炭酸分解が起こる。また有機酸の生成も抑えられる。そのため燃料の生成収率が高い油脂脱炭酸分解触媒を提供できる。
(8)コークの発生が抑えられ、装置のメンテナンスが少なくなり、触媒の劣化が遅い油脂脱炭酸分解触媒を提供できる。
(9)広く使用されているFCC触媒が簡単な操作で利用できるので、実施することが容易となる。またFCC触媒は触媒機能が低下しても簡単に再生できるので、大掛かりな再生装置が必要ない。また再生せずに処理するとしても処理方法が確立しているために、安心して施設運転ができる油脂脱炭酸分解触媒を提供できる。
(10)廃棄物として処理されているFCC廃触媒も利用できるので、運転コストが非常に安くなる油脂脱炭酸分解触媒を提供できる。
(11)シリカは鉱物油をほとんど低分子化しないので油脂や搾油原料と鉱物油との混合物を、原料として用いると鉱物油が油脂の抽出剤として働き、効率の高いバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
(12)マグネシウムの水酸化物、酸化物、炭酸塩のいずれか1以上からなる弱アルカリ性化合物によってコーティングされたシリカは、鉱物油をほとんど低分子化しないので油脂や搾油原料と鉱物油との混合物を、原料として用いると油脂の抽出効率が上がり、分解油の収率の高いバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
【0039】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)加熱された油脂脱炭酸分解触媒又は加熱された油脂の一方が熱媒体となり、油脂脱炭酸分解触媒の表面で油脂と接触した部分の温度が上昇し、油脂脱炭酸分解触媒の作用によりグリセリンのエステル結合部分が開裂される反応が円滑に進行するので、加熱のためのエネルギー消費を下げることができるバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
(2)運転開始時には油脂脱炭酸分解触媒と油脂の双方を加熱しておくことで、反応容器内の温度が均一に保たれ、円滑に反応が進行するバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
【0040】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)搾油原料は350℃〜475℃で油脂脱炭酸分解触媒に接触すると、搾油原料の内の殻等のセルロースが炭化されるとともに、搾油原料の油脂成分が溶出して油脂脱炭酸分解触媒に接触して油脂成分のエステル結合部分が開裂され、(化1)に示す脱CO
2若しくは脱COが起こり、バイオディーゼル燃料となる分解ガス(炭化水素)を得ることができるので、搾油原料などの油脂分を多く含んだ有機物を乾燥するだけで、原料にできるバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
(2)搾油原料は、加熱され分解される際に水蒸気を発生するため、CaO等のように水分の存在下で良好に機能する油脂脱炭酸分解触媒を用いる場合には好適であるので、搾油原料を用いた効率のより高いバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
【0041】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、
(1)酸素雰囲気下で加熱することで、反応容器内の油脂脱炭酸触媒の表面に蓄積していたコークが燃焼され油脂脱炭酸触媒が再生されるので、触媒を繰り返し使用できるバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
(2)搾油原料の殻等のセルロースは、炭化して反応容器内に残留するため、適宜抜き出し廃棄する必要があるが、活性化した炭素に変えるので、触媒として有効利用でき、廃棄する必要がなくなるので、連続運転が可能なバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
(3)工業化の進んでいない地域であっても、連続運転できる油脂脱炭酸分解触媒を調達できるので、地域を選ばずに導入し易いバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
【0042】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の効果に加え、
(1)エステル結合の加水分解を水蒸気が促進するので油脂の分解効率が向上するバイオディーゼル燃料の製造方法を提供できる。
【0043】
請求項6に記載の発明によれば、
(1)搾油原料や油脂が350℃〜475℃で油脂脱炭酸分解触媒と接触すると同時に脱炭酸分解反応が進行するので、コークなどの発生が少なく、熱効率がよく、収率のよいバイオディーゼル燃料の製造装置を提供できる。
(2)原料油脂又は搾油原料を加熱して投入されることで連続運転が容易で熱効率がよく、管理し易いバイオディーゼル燃料の製造装置を提供できる。
【0044】
請求項7に記載の発明によれば、請求項6の効果に加え、
(1)第1反応から生成したガス混合物を導入する第2の反応容器が前記油脂脱炭酸分解触媒を内部に充填しており、第1反応容器から生成したガス中の有機酸が第2反応容器の油脂脱炭酸分解触媒により脱炭酸分解されるので、生成物中の酸がさらに少なくなり生成油の品質がよいバイオディーゼル燃料の製造装置を提供できる。
(2)第1反応容器で生成した有機酸や原料油脂に含まれていた有機酸が第1反応器の上部を通じて、触媒に触れることなく第1反応器内で生成したガスと共に導出されても、第2反応器によって脱炭酸分解されるので、生成物中の有機酸が少なくなり生成油の高品質が維持されるバイオディーゼル燃料の製造装置を提供できる。
(3)装置を長時間運転して、触媒の機能が低下してくると、第1反応容器で反応が不完全となり、生成したガス混合物中の有機酸が増加して、生成油の品質が下がる。この品質の低下を抑えるので、装置をさらに長時間運転できるようになり、運転効率が高いバイオディーゼル燃料の製造装置を提供できる。
【0045】
請求項8に記載の発明によれば、
(1)マグネシウムの水酸化物、酸化物、炭酸塩のいずれか1以上からなる弱アルカリ性化合物によってコーティングされたシリカ、アルカリで修飾された非酸性型ゼオライト、及びそれらの複合による混合物は、鉱物油をほとんど低分子化しないので油脂や搾油原料と鉱物油との混合物を原料として用いると油脂の抽出効率が上がり、分解油の収率の高い油脂脱炭酸分解触媒を提供できる。
(2)酸点が弱められたことで、油脂中の二重結合部分の切断が抑えられ、効率的に脱炭酸分解が起こる。また有機酸の生成も抑えられる。そのため燃料の生成収率が高い油脂脱炭酸分解触媒を提供できる。
(3)コークの発生が抑えられ、装置のメンテナンスが少なくなり、触媒の劣化が遅い油脂脱炭酸分解触媒を提供できる。
(4)広く使用されているFCC触媒が簡単な操作で利用できるので、実施することが容易となる。またFCC触媒は触媒機能が低下しても簡単に再生できるので、大掛かりな再生装置が必要ない。また再生せずに処理するとしても処理方法が確立しているために、安心して施設運転ができる油脂脱炭酸分解触媒を提供できる。
(5)廃棄物として処理されているFCC廃触媒も利用できるので、運転コストが非常に安くなる油脂脱炭酸分解触媒を提供できる。