【実施例1】
【0019】
本発明の薬品類カセットの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1(a)〜(c)は、単体を真っ直ぐ立てて置いた薬品類カセット10を示しており、(a)が外観正面図、(b)が縦断正面図、(c)が縦断右側面図である。
また、同図(d)は、少し後へ傾けて設置した単体の薬品類カセット10の縦断側面図であり、同図(e)は、傾斜設置の薬品類カセット10を背向かいで多段に組み込んだPTP払出装置30の要部の縦断側面図である。
【0020】
この薬品類カセット10は、既述したピロー包装体6(薬品類)を各々は横にしたうえで縦に積み重ねて整列収納させた状態で保持する整列収納部11〜16と、そのピロー包装体6を下から順に横送りして後へ排出する順次排出機構21〜26とを具えている。
整列収納部11〜16は、例えば金属や硬質プラスチック等からなる縦長の箱状体であり、ピロー包装体6の収納空間10aを囲う左側板11と後背板12と右側板13と前板14と内底部16とを具えているが、補充容易化等のため、上面が解放されており、前板14が開閉式になっていて、さらに閉時には磁力等で前板14の閉状態が維持されるようにもなっている。前板14の前面には、図示は割愛したが、補充時の薬品確認やバーコード入力作業が容易かつ的確に行えるよう、例えばピロー包装体6の中の薬品名や識別コードを印刷したラベルが貼り付けられている。
【0021】
また、この整列収納部11〜16は、収納空間10aの中に収納されたピロー包装体6が多数であれ少数であれ、そのピロー包装体6を前方から目視で容易に確認できるよう、前板14の横幅が収納空間10aの横幅より狭くされ、カセット前面から収納空間10aを覗き込めるようになっている。
さらに、この整列収納部11〜16では、後背板12の下端部が内底部16の縁上まで切り欠かれて、そこに排出口10bが形成されている。排出口10bは、ピロー包装体6のうち最下のものは円滑に通過させるが、ピロー包装体6のうち下から二番目のものとそれより上のものは通過させないような大きさに形成されている。
【0022】
また、この整列収納部11〜16では、上端部を揺動中心とする揺動留具15が後背板12の外面に装着されて、その下端部が排出口10bのところに垂れ下がっている。しかも、その揺動留具15がバネ弾撥力や磁力等によって後背板12に向けて常時付勢されているので、最下のピロー包装体6が、何かの拍子で排出口10bから外へ出るような動きをし始めたとしても、付勢力に打ち勝って揺動留具15を揺動させることができなければ、揺動留具15の下端部に移動を阻止されて、収納空間10aの中で内底部16の上面の上にとどまり続けるようになっている。また、後背板12の外面のうち揺動留具15の下端部寄りのところには例えば接触式のメカニカルスイッチ等からなる揺動センサ15aが装着されており、揺動センサ15aは、揺動留具15が揺動範囲内で後背板12に近づくと揺動留具15に押されてオンし、揺動留具15が揺動範囲内で後背板12から遠ざかると揺動留具15から離れてオフ状態になるので、揺動留具15の揺動に応じて作動することにより間接的に排出口10bからの薬品類排出を検出するものとなっている。
【0023】
順次排出機構21〜26は、下部枠21と支軸22と押出部材23と電動モータ24と伝動ギヤ25と排出センサ26とを具えたものであり、整列収納部11〜16の下に設けられて、下部枠21の天板部分が収納空間10aの内底部16を兼ねている。
下部枠21は、例えば金属や硬質プラスチック等の板体を背の低い箱状に組み上げたものであり、下部枠21のうち内底部16を兼ねる天板部分とそれに連なる前板部分には、押出部材23の回転運動時に押出部材23を通過させる切欠16aが、押出部材23と同じ個数だけ形成されている。このような下部枠21に対して、支軸22と押出部材23と電動モータ24と伝動ギヤ25は内蔵され、排出センサ26は外装されている。排出センサ26は、従来カセット(特許文献1〜4参照)に装備されていたものと同じ光学式の排出センサで良く、反射光検出型でも遮光検出型でも良く、排出口10bからの薬品類排出を非接触で直接的に検出するようになっている。
【0024】
支軸22は、丸棒状の例えば金属シャフトからなり、両端部を下部枠21の側板によって軸支されて、軸方向・長手方向を水平かそれに近い方向にした横向きになっている。
電動モータ24及び伝動ギヤ25は、支軸22を軸回転させる駆動手段であり、回転出力軸と支軸22とが伝動ギヤ25を介在させて噛合している。そして、図示しない内蔵の又は外部の制御回路の制御に従い、ピロー包装体6を一つ排出する必要が生じる度に支軸22を軸回転させ、その排出が完了すると、支軸22の軸回転を止めるようになっている。
【0025】
ピロー包装体6の排出の有無は例えば光学式の排出センサ26によって直接的に検出されるが、揺動センサ15aによる揺動留具15の揺動検出によって間接的にも検出されるので、それに基づいて制御回路がダブルチェックするのが望ましく、具体的には、ピロー包装体6を一つ排出する動作を制御回路が順次排出機構21〜26に行わせる度に、揺動センサ15aと排出センサ26とが共に感応してピロー包装体6の排出動作を検出したときには薬品類排出動作が正常であったと制御回路が判定して次の薬品類排出動作を許容するが、揺動センサ15aと排出センサ26とのうち何れか一方しか感応しないときには何らかの異常が発生した状態であると制御回路と判定して以後の排出動作を停止するようになっている。なお、揺動センサ15aも排出センサ26も共に感応しないときには、カセットが空になったと判定するように制御回路がなっている。
【0026】
押出部材23は、この例では二個ほど設けられ、何れも支軸22に外嵌めされて、適度に離れたところで支軸22に固定されている。そのような支軸22の支持により、支軸22が軸回転すると、それに随伴して、押出部材23が回転運動するようになっている。また、押出部材23の端面・側面を支軸22の軸方向から見た押出部材23は、支軸22から外周方向へ渦巻状に突き出た形をしていて、回転時に先端部23aを円運動させるものとなっている。さらに、押出部材23の外周面は、支軸22寄りの近心部外周面23dから中間部外周面23cを経て先端部23a寄りの遠心部外周面23bにかけて単調に外周面半径・渦半径を増す形にされるとともに、円滑面に仕上げられている。
【0027】
そして、電動モータ24によって支軸22が軸回転させられると、それに伴って、押出部材23が回転運動するとともに、その先端部23aが円運動し(
図1(c)の二点鎖線を参照)、それによって押出部材23の先端部23aが内底部16の下から内底部16の上に出てピロー包装体6のうち最下のものに当接してその最下のピロー包装体6を横送りするようになっている。また、その横送りにて最下のピロー包装体6を排出口10bからカセット外へ送り出すが、それに加えて、ピロー包装体6のうち次に内底部16の上に来る二番目のものを押出部材23の外周面が内底部16の下になるまで暫時は下支えするようになっている。しかも、その際、下支えする外周面部分が遠心部外周面23b,中間部外周面23c,近心部外周面23dの順で移り変わるようになっている。
【0028】
このような薬品類カセット10は、真っ直ぐ立てて設置しても良いが(
図1(a)〜(c)参照)、例えば5゜〜10゜ほど後傾させて設置しても良く(
図1(d)参照)、その方が視認性や補充作業性の良くなることが多い。
また、薬品類カセット10に専用の制御回路を付設して、単体の薬品類カセット10を独立動作させても良いが、薬品類払出装置30に多数の薬品類カセット10を組み込むような場合(
図1(e)参照)、後背側を向かい合わせにした薬品類カセット10の対を横(紙面貫通方向)に並べるとともに、その下方に排出後のピロー包装体6を収集する搬送機構31を設置して一段分を構成し、それを上下に配設して多段化すると良い。
【0029】
この実施例1の薬品類カセット10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図2及び
図3は、(a)〜(d)が何れも薬品類カセット10の縦断右側面図であり、ピロー包装体6を排出する動作を時系列で示している。なお、ここでは、個々のピロー包装体6を区別したいときには、6aや6bといった符号を使用する。
【0030】
薬品類カセット10が空の場合は手作業で前板14を開けて解放前面からピロー包装体6を補充する。そのとき、各々のピロー包装体6を横にしたうえで、多数のピロー包装体6の長手方向も短手方向もなるべく同じ向きに揃えて、それらを内底部16の上面に積み上げることで、整列収納部11〜16の収納空間10aの中にピロー包装体6を収納する。それから、収納したピロー包装体6の側面等を指等で押して、後背板12に軽く押し付けるようにして、ピロー包装体6の列を整える。こうして、多数のピロー包装体6が縦長の収納空間10aに整列収納されるので、前板14を閉めると、ピロー包装体6の順次排出の準備が整う(
図2(a)参照)。
【0031】
その後、ピロー包装体6を一つずつ排出させるときには、図示しない制御回路に排出の指令や指示を与えて、薬品類カセット10に排出動作を行わせる。具体的には、制御回路が、排出センサ26の反射光不検出を確認しつつ、電動モータ24を作動させる。そうすると、支軸22が軸回転し、それに随伴して押出部材23が回転運動し、前方で上向きになった又は上向きになっていた押出部材23の先端部23aが切欠16aを通過して内底部16より上に出てから後方へ進行する。そして、先端部23aが最下のピロー包装体6aに横から当接し(
図2(b)参照)、更に先端部23aが進行して最下のピロー包装体6aを排出口10bへ横送りする(
図2(c)参照)。
【0032】
それからも先端部23aが進行を続けて最下のピロー包装体6aと共に揺動留具15の下端部も押し動かし(
図2(d)参照)、揺動センサ15aがオンからオフになる。最下のピロー包装体6aがほとんど排出口10bから出かかるころには、下から二番目のピロー包装体6bが最下のピロー包装体6aから外れて押出部材23の外周面に乗り移る(
図3(a)参照)。そのとき、二番目のピロー包装体6bが押出部材23の外周面のうち先端部23aに近い遠心部外周面23bに乗り移るが、そこの高さが最下のピロー包装体6aの上面の高さと大差ないので、二番目のピロー包装体6bは最下のピロー包装体6aから押出部材23へ穏やかに乗り移る。
【0033】
さらに、押出部材23が回転して先端部23aが排出口10bの近くまで進むと(
図3(b)参照)、最下のピロー包装体6aが揺動留具15から外れて自重で落下し始めるとともに、二番目だったピロー包装体6bを下支えする押出部材23の外周面が遠心部外周面23bから中間部外周面23cに移行する。それから、最下だったピロー包装体6aが排出口10bから後方へ放出されると(
図3(c)参照)、それが排出センサ26にて検出されるとともに、そのころには、二番目から最下になったピロー包装体6bを下支えする押出部材23の外周面が中間部外周面23cから近心部外周面23dに移行する。また、それまでに揺動留具15の下端部がピロー包装体6aから離れて排出口10bに戻っていて、その付勢力が押出部材23の外周面とピロー包装体6bの下面との摩擦力に勝るので、ピロー包装体6bは、排出口10bから出ないで、収納空間10aにとどまる。また、揺動留具15の下端部が排出口10bに戻ったことによって揺動センサ15aがオフからオンに戻るので、揺動センサ15aによるピロー包装体6aの排出動作の検出シーケンスが完了する。
【0034】
そして、最後に(
図3(d)参照)、押出部材23が一回転を終えて元の位置に戻り、押出部材23が外周面も含めて内底部16の下に来ると、最下になったピロー包装体6bが押出部材23の近心部外周面23dから内底部16の上面に乗り移る。
このように、二番目から最下になる過程で下降する際、ピロー包装体6bがピロー包装体6aの上面から押出部材23の遠心部外周面23bと中間部外周面23cと近心部外周面23dとをその順に経由して内底部16に至るが、押出部材23の外周面の下支え担当部分の高さが漸減するように押出部材23の外周面が形成されているので、ピロー包装体6bもその上に積み重なっている他のピロー包装体6も穏やかに下降する。
また、揺動センサ15aか排出センサ26か何れかが故障すると、異常の判定がなされて、薬品類カセット10の動作が停止し、さらに、ブザー等があれば警報音が発せられ、アラームランプ等があればそれが点滅する。
【実施例2】
【0035】
本発明の薬品類カセットの実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図4は、押出部材23の構造例を幾つか示しており、(a)〜(d)が斜視図、(e)〜(f)が側面図である。
【0036】
図4(a)に示した押出部材23は、上述した実施例1で採用されたものであり、二個の押出部材23が先端部23aの位置(位相角)を揃えて支軸22に装着されている。
図4(b)に示した押出部材23は、先端部23aや遠心部外周面23bは二つに分離しているが、中間部外周面23cや近心部外周面23dが繋がって一体化している。
図4(c)に示した押出部材23は、一個の押出部材23であるが、軸方向の長さが長くなっている。
【0037】
図4(d)に示した押出部材23は、
図4(a)のものと同じく二個の押出部材23が支軸22に装着されているが、
図4(a)のものと異なり、先端部23aの位置(位相角)が明確にずれた状態で固定されている。
図4(e)に示した押出部材23は、点対称・反対称な二個の押出部材23を一体化したものであり、支軸22の半回転毎に交互に押出部材23が働くようになっている。
図4(f)に示した押出部材23は、放射状に配置した三個の押出部材23を一体化したものであり、支軸22の1/3回転毎に順に押出部材23が働くようになっている。
【0038】
[その他]
なお、上記実施例では、下部枠21の天板部分と収納空間10aの内底部16とが兼用の一体物になっていたが、それらは別体のものであっても良い。
上記実施例では、支軸22と押出部材23とが別体のものからなり押出部材23が支軸22に外嵌めされている構造例を図示したが、それらは、一体成形されたものでも良く、溶着等にて一体化されていても良い。
上記実施例では、伝動部材がギヤ25であったがベルトなど他の部材であっても良く、伝動ギヤ25を省いて支軸22と電動モータ24とを直結させても良い。
【0039】
上記実施例では、最下のピロー包装体6aの排出完了にて支軸22の軸回転を止めるようになっていたが、複数個のピロー包装体6を排出する場合は、一個毎に回転を止めることはしないで、複数個を排出し終えてから支軸22の軸回転を止めるようにしても良い。また、支軸22ひいては押出部材23の回転停止位置を正確にするには、例えば原点センサを順次排出機構21〜26に設けて、その検出結果に基づいて押出部材23の回転位置が確認されるようにすると良い。