特許第5721222号(P5721222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721222
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】電子部品実装装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20150430BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   H05K13/04 B
   H05K13/08 Q
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-122144(P2011-122144)
(22)【出願日】2011年5月31日
(65)【公開番号】特開2012-253059(P2012-253059A)
(43)【公開日】2012年12月20日
【審査請求日】2014年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】500548884
【氏名又は名称】三星テクウィン株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Techwin Co., Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100082164
【弁理士】
【氏名又は名称】小堀 益
(74)【代理人】
【識別番号】100105577
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 隆人
(72)【発明者】
【氏名】西村 清盛
【審査官】 遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−168600(JP,A)
【文献】 特表2009−508361(JP,A)
【文献】 特開2005−093667(JP,A)
【文献】 特開2005−277132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
H05K 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を吸着する吸着ノズルがノズル保持部材に上下方向に移動可能に設けられ、前記ノズル保持部材がプリント基板を載置する基台に対して水平面内で相対変位するとともに前記吸着ノズルが上下方向に移動することにより、吸着ノズルに吸着された電子部品をプリント基板上に実装するように構成された電子部品実装機であって、
吸着ノズルの先端部分を側方から撮像可能であり、その光学系が前記ノズル保持部材に固定されている側方撮像手段を備え、
前記側方撮像手段は、その光学系の光軸が、吸着ノズルの吸着面に対し水平でなく、上方から所定の角度をなすように電子部品を撮像し、
更に、前記吸着ノズルに正常に吸着された電子部品を前記側方撮像手段により事前に撮像することで得られた画素レートを記憶する画素レート記憶手段と、
前記画素レート記憶手段に記憶された画素レートを使って、前記側方撮像手段により撮像した電子部品の画像データを補正する画像補正手段とを備えたことを特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
前記側方撮像手段の光学系の光軸が、吸着ノズルの吸着面である水平面から上方に4度以上40度以下の角度をなす請求項1に記載の電子部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ等の電子部品をプリント基板上に実装する電子部品実装装置に関する。なお、本明細書では、電子部品実装装置のことを単に実装装置ともいい、電子部品のことを単に部品ともいう。
【背景技術】
【0002】
一般的に、実装装置は、電子部品を吸着する吸着ノズルを有するノズル保持部材により、電子部品を部品供給部から吸着してプリント基板上に移送し、プリント基板上の所定位置に実装するように構成されている。
【0003】
このような実装装置では、不良部品の実装や実装ずれ、あるいは実装ミス(未実装)等を未然に防止するために、部品吸着後、プリント基板への実装に先立って吸着ノズルの先端部分を撮像し、部品の有無、あるいは部品の吸着状態等を画像認識することが行われている。また、部品が実装されたことを確認するために、実装処理後、再度吸着ノズルの先端部分を撮像して部品の有無(部品持帰り)を画像認識することが行われている。
【0004】
吸着ノズルの先端部分を撮像する撮像手段の一つとして、吸着ノズルの先端部分を側方から照明、撮像する側方撮像手段が知られている。従来の側方撮像手段は、特許文献1〜3に見られるように、吸着ノズルの先端部分を水平方向から照明、撮像する。側方撮像手段の光学系は、吸着ノズルとともにノズル保持部材に設けられるが、吸着ノズルが上下動可能であるのに対し、側方撮像手段の光学系はノズル保持部材に固定されている。すなわち、従来の側方撮像手段の光学系の光軸は水平である。
【0005】
このように光学系の光軸が水平である構成において、部品を実装する前に吸着ノズルへの吸着状態を検査する際には、その部品を撮像するために、吸着ノズルに吸着された部品を、吸着ノズルを上下方向に移動させることにより光学系の光軸とほぼ同じ高さ位置に移動させる必要がある。一方で、部品を実装する場合、既に実装された部品がプリント基板上にあるため、その部品との干渉を避けるため、光学系の下端は、部品の最大高さより高い位置に配置する必要がある。つまり、光学系の光軸が水平である場合、部品を吸着しその吸着状態を検査してからプリント基板に実装するまでの吸着ノズルの上下方向の移動量(下降量)は、詳しくは後述するが、(部品の最大高さ+光学系下端までの距離)に対応する距離となる。
【0006】
実装工程の高速化、実装精度の向上のためには、吸着ノズルの上下方向の移動量は減らしたいところではあるが、上述の制限があるため、移動量を減らすことができないのが実情である。また、移動量を減らすためには、部品の高さを減らす必要があり、このことは装置仕様上の欠点となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−78309号公報
【特許文献2】特開2004−349346号公報
【特許文献3】特開2006−41158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、電子部品を吸着する吸着ノズルの上下方向の移動量を減らし、実装工程の高速化、実装精度の向上を図ることができる電子部品実装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実装装置は、電子部品を吸着する吸着ノズルがノズル保持部材に上下方向に移動可能に設けられ、前記ノズル保持部材がプリント基板を載置する基台に対して水平面内で相対変位するとともに前記吸着ノズルが上下方向に移動することにより、吸着ノズルに吸着された電子部品をプリント基板上に実装するように構成された電子部品実装機であって、吸着ノズルの先端部分を側方から撮像可能であり、その光学系が前記ノズル保持部材に固定されている側方撮像手段を備え、前記側方撮像手段は、その光学系の光軸が、吸着ノズルの吸着面に対し水平でなく、上方から所定の角度をなすように電子部品を撮像し、更に、前記吸着ノズルに正常に吸着された電子部品を前記側方撮像手段により事前に撮像することで得られた画素レートを記憶する画素レート記憶手段と、前記画素レート記憶手段に記憶された画素レートを使って、前記側方撮像手段により撮像した電子部品の画像データを補正する画像補正手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、側方撮像手段の光学系の光軸は、吸着ノズルの吸着面である水平面から上方に4度以上40度以下の角度をなすことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実装装置では、側方撮像手段の光学系の光軸が、吸着ノズルの吸着面に対し水平でなく、上方から所定の角度をなすようにして撮像するので、光学系の光軸が水平である場合に対し、光学系をより高い位置に配置することができ、光学系の下端が部品との干渉を避けるための制限条件とならなくなる。よって、吸着ノズルをより下方に位置させた状態で部品を撮像することができ、結果として、撮像後、プリント基板上に実装するまでの下降距離が短くなるので、吸着ノズルの上下方向の移動量を減らすことができる。これにより、容易に実装工程の高速化、実装精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実装装置の効果を説明する概念図である。
図2】吸着ノズルへの部品の吸着状態を示す概念図であり、(a)は正常な吸着状態、(b)は異常な吸着状態、(c)は吸着される部品を示す。
図3】吸着ノズルと側方撮像手段の光学系の位置関係を示す概念図である。
図4】本発明における側方撮像手段の光学系の焦点面と被撮像面との関係を示す概念図である。
図5】Z軸方向の画素レートの違いによる被写体(部品)の画像の変化を示す概念図で、(a)は実際の部品の形状を示し、(b)は撮像された画像を示す。
図6】Z軸方向の画素レートの変化を示す概念図である。
図7】本発明の実装装置の一実施例を示す斜視図で、(a)はその要部の構成、(b)はノズル保持部材近傍の構成を示す。
図8】側方撮像手段の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実装装置の効果を説明する概念図である。
【0015】
図1(a)に示すように、吸着ノズルAに部品を吸着していないときは、吸着ノズルA下端面とプリント基板D表面との距離は、プリント基板Dに既に実装された部品B’の最大高さをa、部品寸法のバラツキやプリント基板Dの反り等を考慮した余裕代をb(1〜2mm程度)とすると、(a+b)であれば吸着ノズルAが部品B’と干渉することはない。図1(b)に示すように吸着ノズルAに部品Bを吸着すると、その部品厚みc分だけ吸着ノズルAを上昇させる必要があるが、プリント基板Dに実装するための吸着ノズルAの移動量は(a+b)のままである。
【0016】
次に、吸着ノズルAへの部品Bの吸着状態を確認するために側方撮像手段で吸着ノズルの先端部分を撮像するが、従来の側方撮像手段では、図1(c)に示すようにその光学系Dの光軸が水平であるため、光学系Dの光軸と下端との距離をdとすると、部品Bの厚みcがc<dの場合、光学系Dの下端が部品B’との干渉を避けるための制限条件となってしまう。また、吸着ノズルAの先端部分を撮像するには、吸着ノズルAの先端を光学系Dの光軸に合わせる必要があるため、図1(b)の状態に対して(d−c)分だけ吸着ノズルAを上昇させる必要がある。その結果、部品Bをプリント基板Dに実装するための吸着ノズルAの移動量は(a+b+(d−c))となる。
【0017】
これに対して、本発明では図1(d)に示すように、側方撮像手段は、その光学系Dの光軸が、部品Bを吸着する吸着ノズルAの吸着面に対し水平でなく、上方から所定の角度θをなすようにして部品Bを撮像する。したがって、光学系Dを上方に設置でき、光学系Dの下端は制限条件とならない。よって図1(d)に示すように、吸着ノズルAは、実装のための移動量が(a+b)の位置に配置でき、図1(c)の従来例に比べ、(d−c)分だけ移動量を減らすことができる。この(d−c)の大きさは光学系Dの光軸の傾斜角度θに比例する。
【0018】
この傾斜角度θは4度以上40度以下とすることが好ましい。その理由を以下に説明する。
【0019】
吸着ノズルへの部品の吸着状態の良否は、側方撮像手段によりノズル先端部分を撮像して画像認識し、その画像を解析することで判定する。良否判定のための画像解析の手法は種々あるが、撮像された部品の高さの比較による方法が、簡単で精度もよく、多用されている。具体的には、図2の(a)に示す吸着状態を正常、(b)に示す吸着状態を異常として、側方撮像手段で画像認識した部品Bの高さを比較することで、吸着状態の良否を判定する。
【0020】
ここで、典型的な実装部品であるセラミックコンデンサは、図2(c)に示すように、長さL、幅W及び高さTの比がL:W:T=2:1:1であるのが一般的である。また、吸着ノズルはW=T=1程度の径で製作する場合が多い。これらを前提と説明すると、図2(a)に示す正常な吸着状態における部品Bの撮像高さは、光学系の光軸の傾斜角度がθの場合、T1+T2=sinθ+cosθとなる。一方、図2(b)に示す異常な吸着状態における部品Bの高さは、2cosθとなる。これらの正常な吸着状態における部品Bの撮像高さ(sinθ+cosθ)と異常な吸着状態における部品Bの撮像高さ(2cosθ)とを比較することで吸着状態の良否を判定するが、θが0度から大きくなるにつれ、(sinθ+cosθ)と(2cosθ)との差が小さくなり、θが45度になると、(sinθ+cosθ)=(2cosθ)となり、撮像高さによって吸着状態の良否を判定できなくなる。したがって、この場合、光学系の光軸の傾斜角度θは45度未満とする必要があり、部品寸法のバラツキを考慮すると傾斜角度θは40度以下とすることが好ましい。
【0021】
一方、傾斜角度θの下限は、光学系の下端の影響を条件として規定する。すなわち、図3に示すように、光学系Dを構成するレンズD1の構造上、光学系の下端からレンズD1の実質的な下端までの距離Yは最低でも2mm程度は必要である。一方、吸着ノズルAが上下動し部品吸着に影響のない距離Xは、30mm程度は必要である。したがって、光学系の光軸の傾斜角度θは最低でも、tan−1(2/30)=3.8≒4度であることが好ましい。
【0022】
以上説明したように、本発明の実装装置において側方撮像手段の光学系の光軸は、吸着ノズルの吸着面、すなわち水平面に対して傾斜角度θをもって傾斜しているので、光学系に対し部品の撮像された画像は場所によって倍率が異なる。例えば部品が直方体である場合、図4に示すように直方体の側面(長方形)が位置するZ軸方向の垂直面に対し、光学系の焦点面Eが傾斜角度θの分だけずれるので、垂直面に位置する長方形(図5(a))は、この光学系Dで撮像されると台形に変形する(図5(b))。つまり、上下のZ軸方向に沿って倍率の変化が発生する。言い換えると、被撮像面におけるカメラ1画素当たりの寸法である画素レート(μm/画素)が異なってくる。
【0023】
この画素レートはZ軸方向に対して平均値(図6の一点鎖線)とすることもできるが、実際には種々の高さの部品があるため、実際の画素レート(図4の実線)が平均値から大きく離れた値となる場合が生じる。この場合、実際の画素レートと計算に使用する画素レートが異なるため、測定に誤差を生じることになる。部品の吸着状態を判断する場合、この誤差により部品形状の判別ミスが生じる可能性がある。
【0024】
そこで、本発明では、吸着ノズルに正常に吸着された部品を側方撮像手段により事前に撮像することで実際の画素レート(図6の実線)を求め、これを画素レート記憶手段に記憶しておく。そして、実際の撮像においては、画素レート記憶手段に記憶された画素レートを使って、側方撮像手段により撮像した部品の画像データを画像補正手段にて補正する。これにより、部品の吸着状態の良否をより正確に判断することができる。なお、図6の実線は直線であるが、必ずしも直線とは限らない。
【実施例】
【0025】
図7は、本発明の実装装置の一実施例を示す斜視図で、(a)はその要部の構成、(b)はノズル保持部材近傍の構成を示す。
【0026】
電子部品を吸着する吸着ノズル1は、ノズル保持部材2に上下方向に移動可能に設けられる。本実施例では、ノズル保持部材2の下面部に、円周方向に沿って複数の吸着ノズル1を設けている。ノズル保持部材2は、装置本体に設けたX方向のガイドレール3及びY方向のガイドレール4に沿って移動可能であり、水平面内でX−Y方向に移動自在である。すなわち、図7に示す実装装置は、ノズル保持部材2がプリント基板5を載置する基台6に対して水平面内で相対変位するとともに、吸着ノズル1が上下方向に移動することにより、吸着ノズル1に吸着された電子部品をプリント基板5上に実装するように構成されている。
【0027】
図7(b)に示すように、ノズル保持部材2には側方撮像手段7が固定されている。この側方撮像手段7は吸着ノズル1の先端部分を側方から撮像する。なお、本実施例では、ノズル保持部材2に複数の吸着ノズル1を設けているが、これらは水平面内でローテーション可能に設けられているので、側方撮像手段7によりそれぞれの吸着ノズル1の先端部分を撮像可能である。
【0028】
図8は、側方撮像手段7の構成例を示す断面図である。図8に示す側方撮像手段7は、CCDセンサ7aと、LEDからなる照明7bと、光学系としてレンズ7c及び反射ミラー7dとを備える。部品Bを吸着した吸着ノズル1の先端部分で反射された照明7bからの照明光は、反射ミラー7dで反射されたのちにレンズ7cを介してCCDセンサ7aに到達し、画像として認識される。本発明の実装装置において側方撮像手段7は、先に説明したように、その光学系の光軸が、部品Bを吸着する吸着ノズル1の吸着面に対し水平でなく、上方から所定の角度θをなすようにして部品Bを撮像する。本実施例では、反射ミラー7dを水平から3.5度傾けることで、光学系の光軸の傾斜角度θを7度としている。
【符号の説明】
【0029】
A 吸着ノズル
B 部品
C プリント基板
D 側方撮像手段の光学系
E 光学系の焦点面
1 吸着ノズル
2 ノズル保持部材
3,4 ガイドレール
5 プリント基板
6 基台
7 側方撮像手段
7a CCDセンサ
7b 照明
7c レンズ(光学系)
7d 反射ミラー(光学系)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8