(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記封止部材(7)は、前記接続部(12)の近傍において全周にわたって内壁面(11c)に環状溝(6)が設けられるようにして形成されたことを特徴とする請求項1記載の圧力容器。
【背景技術】
【0002】
配管や圧力容器あるいは壁部材等の構造体の接続部には、内部の液体や気体等の流体が外部へ漏れ出さないように、若しくは、外部から内部へ異物等が入り込まないように、通常、ガスケット等の封止部材が取り付けられ、ボルト等による締付け力と封止部材の圧縮反力によりシールされている。しかし、封止部材の性能は配管や圧力容器等の安全性に極めて大きな影響を与える。そこで、従来、その接続部のシール性を高めるために様々な研究が行われている。そして、それに関して、既に幾つかの発明や考案が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「ガスケットおよび継ぎ手」という名称で、耐食性及び耐高温性に優れたガスケットと、このガスケットがシール面に凸形のエッジを有するナイフエッジフランジに用いられた継ぎ手に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明である継ぎ手は、フランジシール面に凸部が設けられるとともに磁力を有する一組の真空用のフランジの間に、鉄の成分が99.95%以上であり、ビッカース硬度が50Hvから100Hvのシール面を有するガスケットが設置された構造となっている。
このような構造によれば、銅ガスケットを用いる場合に比べて、耐食性及び耐高温性が向上する。また、磁力によってガスケットをフランジシール面上に固定することができるため、フランジをガスケットに取り付ける際にずれが発生し難い。
【0004】
また、特許文献2には、「メタル継手構造およびインナーグランドの製造方法」という名称で、高真空用又は特殊なガスを流す配管に用いられるメタル継手とそのインナーグランドの製造方法に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明であるメタル継手は、鏡面加工されたクリーンステンレス製のガスケットと、このガスケットを挟んで対向配置されるクリーンステンレス製のインナーグランドを備えている。そして、各インナーグランドの端面には、上記ガスケットよりも硬度が高く、かつ、断面が略半円状をなし、別体のフランジ部材によってガスケットの表裏面に垂直方向からのみ押圧可能に環状凸部が形成されている。
このような構造のメタル継手においては、ガスケットとインナーグランドとの接触面がともに鏡面加工されているため、高い密封性能を有する。また、環状凸部の断面が略半円状であるため、ガスケットとの接触状態が安定する。さらに、環状凸部は、ガスケットに対して垂直方向にのみ締め付け力を作用させる構造であるため、ガスケットとの接触面に傷が付き難い。
【0005】
さらに、特許文献3には、「超気密管継手」という名称で、超高真空利用の装置に用いられる管継手に関する考案が開示されている。
特許文献3に開示された考案は、シールボルトとシールチューブの間に設置されたガスケットを、シールボルトに袋ナットを螺合させるようにして挟圧する管継手において、ガスケットがシール面を鏡面とするメタルCリングからなり、このメタルCリングの開口部に係止する止め輪を保持可能に、シールチューブと対向するシールボルトの面にホルダが設けられた構造となっている。
このような構造の管継手においては、シール面が横向きや下向きの場合であっても、シールボルトからのガスケットの落下を防ぐことができる。
【0006】
ゲージブロックを大気中でつき合わせると離れなくなる現実を、圧力容器の継手の部分に持ち込んで、容器の内部の流体が外部に漏洩するのを封止する技術である。
次に、特許文献4の第2図によると、圧力容器の筒状部材1の内面から突出する突出部9の基部面10が内圧側の高圧である流体の圧力を受ける受圧面となる。そして、平滑面である接触面11がシール面となる。また、突出部9は弾性変形するとある。この提案には容器内の流体の圧力を利用してシールしようとする意図がある。
次に、特許文献5には、「真空容器におけるフランジ部のシール構造及びシール方法」という名称で、真空容器のシール構造が示されているが、真空容器であるので、容器の外側の圧力が内圧よりも高いので
図2の盲フランジを見れば外圧を利用してシールできることは当然である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の従来技術である特許文献1に開示された発明においては、銅ガスケットを用いた場合と同等の硬度を有しつつ、さらに耐食性や耐高温性が向上するというメリットがあるものの、シール性に関しては従来以上に高めることができないという課題があった。また、ボルトにおける締付け力と磁力によりガスケットを変形させているため、フランジの芯ずれや一時的な変位が発生すると、流体が漏れてしまうという課題があった。さらに、ボルトの締付け力を均等に保つのが難しいという課題もあった。
【0009】
また、特許文献2に開示された発明では、流体が流路からガスケットとインナーグランドの間に入り込む構造となっているため、内部に高圧の流体が流れる配管の継ぎ手として用いた場合、流体の圧力によってボルトの締付け力と逆方向の力が生じ、ガスケットとインナーグランドの間のシール性が低下するおそれがあった。
【0010】
さらに、特許文献3に開示された考案においては、シールボルトに対するガスケットの設置作業を容易に行うことができるものの、シールボルトとシールチューブの接合部分の構造及びガスケットを保持する構造が複雑であるため、安価に製造できないという課題があった。また、チューブ内の流体がシールボルトのシール面とガスケットの間や、シールチューブのシール面とガスケットの間に入り込む構造となっているため、流体の圧力が高い場合には、流体がシールボルトやシールチューブとガスケットをそれぞれ引き離すように作用し、シール性を低下させてしまうおそれがある。従って、本考案の継手は、高圧流体用の配管に適用できないという課題があった。
【0011】
さらに特許文献4においては、第2図で容器の軸に垂直な面における面積について見ると、容器の外周の内側の面積が1番大きくて、容器の内側の面積S
aが2番目に大きくて、シール面の面積が3番目に大きくて、最後に4番目として内部流体の圧力を受ける受圧面の面積が最も小さい。
文章の中にこれらの面積に関する記述がない。またボルトの軸力Wに関する記述もない。
したがって目視による具体的に明確な容器の軸に垂直な面における面積だけからいえることは、この受圧面の面積をS
jとおくときに、突出部9が無い時のシール面の面積をS
bとおくと、この容器のシール面の面積はS
b+S
jとなる。
すなわち受圧面で受けた流体圧力を、受圧面よりも広いシール面積に拡散してしまうのでシール面の面圧を内部流体の圧力よりも常に高く保つことは困難だと推測できる。
すなわち容器内の流体の圧力をP
a、シール面の面圧をP
sとすると、P
aS
j=P
s(S
b+S
j)の関係になり、P
s=P
aS
j/(S
b+S
j)となるので、S
j<S
b+S
jであるからP
s<P
aとなるのでシール面圧を流体圧力よりも高めることは困難だと推測できる。
さらに特許文献5においては、真空容器は必然的にシール面圧が流体圧力よりも高くなるので本提案の範囲から除外する。
背景技術を上述の範囲で見る限り、圧力容器の継手のシール面の面圧を一定の条件のもとでその流体の圧力によりその流体の圧力よりも常に高く保つ技術が確立していない。
圧力容器のフランジ継手は相対向するシール面を押し合うシール面の面圧が高圧側の流体の圧力よりも低い場合に高圧側の流体が直接シール面に侵入する場合と、相対向する面のうち、シール面以外の面に高圧側の流体がかかるとその対面する面間を拡大させてシール面の面間を開きシール面に高圧側の流体が侵入する場合がある。シール面にいったん高圧側の流体が侵入すると流体はシール面圧より高い流体圧によりシール面の面間を拡大して流路の断面積を拡大して、侵入面積を拡大し、シール面の離反荷重を増加させてゆく。
これに対して、相対面する面のシール面以外の面で高圧側の流体圧がかかる面積を極小にして、シール面の面圧を常に高圧側の流体の圧力よりも高く保つ場合には、シール面に高圧側の流体が侵入するのを防げる。仮に不測の要因でシール面に高圧側の流体が侵入したとしても、この場合には侵入した流体をシール面から排除できる。
このような理由から圧力容器の継手のシール面の面圧を一定の条件のもとで容器内の流体の圧力によりその流体の圧力よりも常に高く保つ技術が必要となる。
さらに同一封止部材にシール面を複数設けて相対向する面との間に空間を作り、その空間の圧力、濃度、成分などの情報を容器の内又は外に導き、安全な場所で多数の継手の漏洩をリアルタイムに集中制御する技術もどうしても必要な技術である。
【0012】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、安価に製造することが可能であり、故障し難く、かつ、内部の流体の圧力を利用してシール性を高めることができる封止部材を備えた圧力容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、内圧が外圧よりも高い状態で使用される圧力容器において、表裏両面にそれぞれシール面と受圧面を有しつつ一対の平板状をなす封止部材が内側へ突出するように設置された接続部を備え、封止部材は、少なくとも一方のシール面が受圧面と反対方向へ突出するように設けられる凸部の端面に形成され、この凸部の端面の面積を受圧面の面積よりも狭くして、シール面の面積が受圧面の面積よりも狭くなるように形成されたことを特徴とするものである。
このような構造の圧力容器では、一対の封止部材において、受圧面に加わる流体の圧力がシール面を相手方の部材のシール面に押しつけるように作用する。また、一対の封止部材において、相手方のシール面が突状又は凹状のいずれの形に形成されていても互いのシール面同士が密着し易いという作用を有する。さらに、一対の封止部材において、受圧面に加わる流体の圧力よりも大きな圧力によって、シール面が相手方の部材のシール面に押しつけられるという作用を有する。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の圧力容器において、封止部材は、接続部の近傍において全周にわたって内壁面に環状溝が設けられるようにして形成されたことを特徴とするものである。
このような構造の圧力容器においては、環状溝の内部に入り込んだ流体の圧力が封止部材の受圧面に加わることによって、シール面が相手方の部材のシール面に押しつけられるという作用を有する。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の圧力容器において、シール面が複数の部分からなることを特徴とするものである。
このような構造の圧力容器においては、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加えて、対向する一対のシール面の間に空間部が形成されるという作用を有する。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の圧力容器において、封止部材の対向面間に形成される環状空間部と、一端がこの環状空間部に開口するように接続部に形成される給排気孔と、この給排気孔の他端に接続される給排気手段と、を備えたことを特徴とするものである。
このような圧力容器においては、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発明の作用に加えて、給排気手段によって環状空間部内の気体を排出し、その内圧を流体の圧力よりも低くすることで、シール面同士の密着力が強まり、また、給排気手段によって環状空間部内に気体を供給し、その内圧を高くすることで、シール面同士の密着力が弱まるという作用を有する。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項4に記載の圧力容器において、環状空間部の内圧を検出する圧力検出手段を備えたことを特徴とするものである。
このような構造の圧力容器においては、請求項4に記載の発明の作用に加えて、圧力検出手段を用いて環状空間部の内圧を検出することにより、シール面からの流体の漏出の有無が検出されるという作用を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1記載の発明によれば、圧力容器の接続部におけるシール性を容易に高めることができる。また、封止部材は、構造が簡単であるため、故障し難い。加えて、安価に製造することができる。さらに、流体の圧力を利用してシール面同士の密着力を強めることで、十分なシール性を確保できるという効果を奏する。
【0019】
本発明の請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載された発明と同様の効果を奏する圧力容器を安価に製造することができる。
【0020】
本発明の請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載された発明の効果が同様に発揮される。
【0021】
本発明の請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発明の効果を奏することに加え、保守や点検の作業等において圧力容器を分解する必要がある場合、環状空間部の内圧を高めることでシール面同士の密着力が弱まるため、当該接続部を容易に離反させることができる。
【0022】
本発明の請求項5記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果を奏することに加え、流体の漏出という異常事態を速やかに検出し、事故の発生を未然に防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態に係る圧力容器の他、それに用いられる封止部材が壁部材及び配管ユニットの接続部に用いられる場合を例にとり、
図1〜
図18を参照しながら本発明の構成とそれに基づく作用・効果について具体的に説明する。
【実施例1】
【0025】
本実施例の封止部材は、船舶や航空機などの壁部材や圧力容器のように、内部に存在する液体や気体などの流体と、外部に存在する液体や気体などの流体との間に圧力差が発生している状態で用いられる構造体の接続部に用いられるものである。以下、その構造について、
図1〜
図5を用いて説明する。
なお、
図1〜
図5は壁部材と封止部材あるいは圧力容器の壁面と封止部材に対してそれぞれ直交する平面で切断した状態を示す断面図である。また、
図1(a)及び
図1(b)は内圧P
1が外圧P
2よりも高い場合に対応し、
図2(a)及び
図2(b)は外圧P
2が内圧P
1よりも高い場合に対応する。さらに、
図3及び
図4は
図1及び
図2の変形例を示した図である。
【0026】
図1(a)又は
図1(b)に示すように、封止部材7は平板状をなし、両面にシール面5aと受圧面5dがそれぞれ形成されている。そして、シール面5aは、受圧面5dと反対方向へ突出するように設けられる凸部13(
図3(a)に拡大して表示)に形成されるとともに鏡面加工が施されている。また、封止部材7は、内部へ突出するように壁部材11aや圧力容器11bの接続部12に設置されている。
なお、
図1(a)及び
図2(a)では、図示されていないが、内部の圧力を維持するため、壁部材11a,11aの両端は閉塞されている。また、
図1(b)及び
図2(b)に示した圧力容器11bは中空構造であるため、封止部材7は環状をなしている。
【0027】
上記構造の封止部材7においては、壁部材11aや圧力容器11bの内部に存在する流体の圧力が受圧面5dに加わり、封止部材7のシール面5aが他方の封止部材7のシール面5aに押し付けられるという作用を有する。従って、封止部材7,7を壁部材11aや圧力容器11bの接続部12に用いた場合、内部の流体の圧力が封止部材7,7に対して両側から挟み込むように加わるため、シール面5a,5aが互いに押し付け合わされるという作用を有する。
なお、シール面5aには鏡面加工が施されているため、シール面5a,5aの間に流体が入り込み難い。
また、封止部材7はシール面5aが受圧面5dと反対方向へ突出するように形成されているため、仮に他方の封止部材7のシール面5aが平坦ではなく、突状又は凹状に形成されていたとしても、シール面5a,5aが互いに密着し易いという作用を有する。
【0028】
このように、本発明の封止部材7によれば、壁部材11aや圧力容器11bの接続部12におけるシール性を容易に高めることができる。また、封止部材7は、構造が簡単であるため、故障し難い上、製造コストや設置コストを安くすることができる。従って、本発明の封止部材7を壁部材11aや圧力容器11bに用いることによれば、製造コストを削減することが可能である。
なお、本明細書では、上記構造の壁部材11aが機体や隔室の壁に利用された宇宙船、宇宙服、ロケット、航空機、船舶、潜水艇、深海艇等を「壁構造物完成品」といい、上記構造の圧力容器11bが容器本体に利用されたボイラー、塔槽類、熱交換器、タンク等を「圧力容器完成品」というものとする。さらに、本明細書において、例えば、塔槽類、ボイラー、熱交換器、真空機器、油圧機器、ポンプ、バルブ、計装機器、タンク等を配管や電気配線等で有機的に結び付けて、ある目的の生産物を生産する工場設備一式を特に「プラント」というものとする。
【0029】
封止部材7,7において、受圧面5d,5dに加わる流体の圧力が高いほど、シール面5a,5aのシール性が高まる。従って、内圧P
1の方が外圧P
2よりも高い場合には、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、封止部材7,7は流体の圧力が高い方、すなわち、壁部材11aや圧力容器11bの内側へ突出するように形成されることが望ましい。
【0030】
一方、外圧P
2が内圧P
1よりも高い場合には、
図1(a)又は
図1(b)において、封止部材7が壁部材11aや圧力容器11bの外側へ突出するように形成されることが望ましい(
図2(a)及び
図2(b)参照)。
このような構造によれば、壁部材11aや圧力容器11bの外部に存在する流体の圧力が、封止部材7,7を両側から挟み込むように押しつけて、シール面5a,5aにおける密着力を強めるように作用するため、壁部材11aや圧力容器11bの接続部12におけるシール性を容易に高めることができる。
【0031】
なお、
図1(a)や
図2(a)では、封止部材7が壁部材11aに対して直交するように設けられているが、必ずしもこのような構造でなくとも良い。例えば、
図3(a)に示すように、封止部材7が壁部材11aに対して平行に設けられた構造であっても良い。また、封止部材7が壁部材11aに対して0度や90度以外の任意の角度をなすように設けられていても良い。
さらに、シール面5aが受圧面5dの方向へ凹むように設けられる凹部14に形成された構造であっても良い。このような構造によれば、凹部14でガスケット10aが保持される。従って、シール面5aにガスケット10aを設置して、シール面5aの密着性を高めることができる。なお、シール面5aに対する鏡面加工を省略することもできる。
【0032】
また、
図3(b)に示すように、壁部材11aに対して封止部材7と逆方向へ突出するようにフランジ2を設け、互いに突き合わされた状態のフランジ2,2がボルト4aとナット4bを用いて締結された構造とすることもできる。
あるいは、
図3(c)に示すように、封止部材7にボルト穴を設け、封止部材7,7を互いに突き合わせた状態でボルト4aとナット4bによって締結しても良い。
このように、ボルト4aとナット4bを用いてフランジ2,2や封止部材7,7をそれぞれ締結することによれば、封止部材7,7がシール面5aに平行な方向へ互いにずれないように拘束されるため、シール面5aにおけるシール性が高まる。
【0033】
さらに、
図4に示すように、
図1(b)において、圧力容器11bの内壁面11cに対し全周にわたって環状溝6を設けることによって封止部材7を形成しても良い。また、
図4では、ボルト4aとナット4bを用いてフランジ2,2を締結する構造としている。なお、ボルト4aとナット4bを用いてフランジ2,2を締結することによって発揮される作用は、前述した壁部材11aの場合と同様である。
この場合、接続部12に封止部材7を容易に形成することができる。そして、環状溝6の内部に入り込んだ流体の圧力が封止部材7の受圧面5dに加わり、シール面5aにおける密着力を強めるように作用するため、接続部12において十分なシール性が発揮される。すなわち、上記構造によれば、接続部12のシール性に優れる圧力容器11bを安価に製造することが可能である。
なお、環状溝6の深さは
図4に示す場合に限定されない。例えば、環状溝6は内壁面11cの板厚部分を超えて、その一部がフランジ2の内部に形成されていても良い。また、後述の
図7、
図8及び
図10〜17においても同様である。
【0034】
図1〜
図3に示した例では、壁部材11aや圧力容器11bと同じ材質の山形材、T形材、角材等を加工して封止部材7を形成し、材質に適した接合方法で壁部材11aや圧力容器11bと一体化させることができる。また、
図4に示した圧力容器11bは、一般の規格化されたフランジの内周に溝を切り込んだ構造であるため、フランジの設計加工手順で製作した物を接合して一体化させれば良い。ただし、このような方法に限らず、鋳造や射出成型等によって封止部材7を壁部材11aや圧力容器11bと一体的に形成しても良い。
また、
図1、
図2及び
図4に示した圧力容器11bは、円筒形状に限らず、角筒形状等であっても良い。
【0035】
ここで、封止部材7において、受圧面5dとシール面5aの面積がシール性に及ぼす影響について
図5を用いて説明する。
図5は本実施例の封止部材7が壁部材11aの接続部12に取り付けられた状態を示す模式図であり、
図1(a)においてシール面5aの面積が受圧面5dの面積よりも狭くなるように封止部材7が形成された場合に相当する。なお、
図5では、図が煩雑になるのを避けるため、一方の壁部材11aの封止部材7に作用する圧力のみを図示している。
また、ここでは、壁部材用の継手構造を例にとって説明するが、以下の説明は圧力容器用の継手構造や後述する配管用の継手構造に対しても同様に当てはまるものである。
なお、内圧P
1が外圧P
2よりも高い状態で使用される圧力容器では、開閉方向に対して直交する面であって、内圧P
1と外圧P
2が加わる面の面積をそれぞれS
a及びSとおき、ボルト4aとナット4bの締付け力をWとおくと、W+P
2S>P
1S
aが成り立つ。ただし、外圧P
2が圧力容器を閉める方向へ作用する場合に、外圧P
2が加わる面の面積がSであり、このSには、後述する受圧面5fの面積S
4は含まれない。そして、P
2S>P
1S
aが成り立つ場合には、ボルト4aとナット4bの締付け力Wを省略しても良い。
また、
図5は内圧P
1が外圧P
2よりも高く、封止部材7が内側に突出するように形成されている場合を示しているが、外圧P
2が内圧P
1よりも高く、封止部材7が外側に突出するように形成されている場合には、以下の式(1)においてP
1とP
2を置き換えて考えれば良い。
【0036】
図5に示すように、内圧P
1,外圧P
2の作用によりシール面5aから相手方の封止部材7のシール面5aに加わる圧力をQとする。さらに、シール面5aと同じ側にあって内圧P
1,外圧P
2が加わる面をそれぞれ受圧面5e,5fとする。
このとき、圧力Qはシール面5aの面積S
1、受圧面5d〜5fの面積S
2〜S
4を用いると、次のように表わされる。
【0037】
【数1】
【0038】
式(1)から、内圧P
1,外圧P
2が一定のとき、S
1とS
3を小さくすると、Qが大きくなることがわかる。ただし、S
1とS
3を小さくするということはシール面5aと受圧面5eの面積を小さくし、受圧面5fの面積S
4を大きくするということを意味する。従って、内圧P
1,外圧P
2の差が小さい場合には、式(1)の右辺第2項の影響が大きくなってしまう。しかし、式(1)の右辺第2項の影響を無視できる程度に、内圧P
1,外圧P
2の差が大きい場合には、シール面5aを封止部材7の先端近傍に設けて受圧面5eの面積S
3をできるだけ小さくするとともに、シール面5aの面積S
1を小さくすることが望ましい。
このような構造の封止部材7においては、受圧面5dに加わる内圧P
1よりも大きな圧力Qによって、シール面5aが相手方の部材のシール面5aに押しつけられるという作用を有する。この場合、シール面5aの密着力を強めることで、接続部12において十分なシール性が確保できるという前述の効果が、より一層発揮される。
なお、上述の壁部材11aや圧力容器11bの継手構造をそれぞれ備えた壁構造物完成品及び圧力容器完成品においても壁部材11aや圧力容器11bの継手構造における上記作用及び効果は同様に発揮される。また、封止部材7を備えたプラントにおいても上述の封止部材7の作用及び効果は同様に発揮される。
【0039】
本実施例では、シール面5aの密着性を高める方法として鏡面加工を例示しているが、これに限らず、シール面5aにメッキを施すことで面精度を高めることができる。また、周囲の部材よりも表面硬度の低い材質をコーティングすることによりシール面同士のなじみを良くしても良い。このような方法によっても上述した作用及び発明は同様に発揮される。
さらに、シール面同士の位置ずれを防止するために、リーマーボルトやノックピンを用いる方法を採用することができる。
【0040】
前述のとおり、本発明の封止部材7では、シール面5aに高い面精度が要求される。従って、本発明の普及により、シール面5aを高精度で加工する技術に対する需要が高まり、ナノテクノロジーの発展が促進される。
【実施例2】
【0041】
前述の封止部材が、液体や気体などの流体の輸送等に用いられる配管において、バルブやパイプなどの部品の接続部に取り付けられる配管用継手に用いられる場合について説明する。
図6は、封止部材7が配管用継手1aに用いられた状態を示す断面図であり、
図7は、その作用を説明するための図である。さらに、
図8及び
図9は
図6に示した配管用継手の変形例を示す図である。
なお、
図6〜
図9は配管の中心軸を含む平面で切断した状態を示す断面図である。また、
図7は
図6の部分拡大図に相当する。さらに、
図6では、配管用継手のみを断面表示としている。そして、
図7では、配管用継手についても、断面であることを示すハッチングを省略している。
【0042】
図6に示すように、配管用継手1aは金属製であり、一方の端面がシール面5aを構成し、他方の端面が他のパイプ等の壁部材との接続面5bを構成している。そして、シール面5aには鏡面加工が施されている。なお、配管用継手1aは金属製に限らず、プラスチック製であっても良い。
また、接続部12の近傍において、円周方向に複数のボルト穴を有するドーナツ板状のフランジ2が外周面5gに立設されている。すなわち、配管用継手1a,1aは、シール面5a,5aを互いに突き合わせた状態でボルト4aとナット4bを用いてフランジ2,2を締結することにより接続される構造となっている。
さらに、配管用継手1aのシール面5aの近傍には、円環板状の封止部材7が形成されるように、内周面5cの全周にわたって環状溝6が設けられている。すなわち、環状溝6に面する封止部材7の側面は受圧面5dを構成している。
【0043】
ボルト4aとナット4bによってフランジ2,2が締結された状態にある配管用継手1a,1aにおいては、ボルト4aの締め付け力が、シール面5a,5aを密着させると同時に相互の位置関係を維持する力として働く。
また、
図7に示すように、流路3の内部を流れる流体は、環状溝6の内部にも入り込むため、その圧力(以下、内圧Pいう。)は、内周面5cだけでなく、受圧面5dにも加わる。すなわち、内圧Pは封止部材7,7を両側から挟み込むように押しつけて、その密着力を強めるように作用する。
これにより、シール面5a,5aのシール性が高まる。
【0044】
なお、封止部材7は、内周面7aが配管用継手1aの内周面5cと同一平面をなすように形成されているため、配管用継手1aの流路3の内部を流れる流体に対して、障害となることはない。
【0045】
このように、封止部材7を備えた配管用継手1aによれば、流路3の内部を流れる流体の圧力を利用してシール面5aの密着力を強めることで、配管等の接続部12において十分なシール性を得ることができる。また、封止部材7は、配管用継手1aの一部として形成されており、構造が簡単であるため、故障し難いうえ、安価に製造することが可能である。
さらに、ガスケットの選定の手間を省略できる。加えて、相手方の部材が既存のものであっても適用できるため、汎用性が高い。
なお、上記構造の配管用継手1aは、ポンプ、コンプレッサー、弁類、計装機器、ボイラー、塔槽類、熱交換器、タンク等を繋ぐ配管に利用できる。
【0046】
図8に示すように、配管用継手1aには、環状溝6及び封止部材7が形成されていない配管用継手1bを接続することもできる。このような場合にも、流路3の内部を流れる流体の圧力が、配管用継手1aに設けられた封止部材7の受圧面5dに加わることによってシール面5a,5aの密着力が高められるため、配管用継手1aと配管用継手1bの接続部12において、十分なシール性を確保することができる。
なお、
図8に示した配管用継手1a,1bでは、シール面5aに鏡面加工を施す代わりに、渦巻きガスケット10bが設置された構造となっている。
【0047】
本実施例の配管用継手1aは内部の流体の圧力が外部の流体の圧力よりも高い状態で使用される配管に対して特に有効である。しかし、内部の流体の圧力よりも外部の流体の圧力の方が高い状態で使用される配管に対しては、
図9に示す配管用継手1cを用いることが望ましい。
具体的に説明すると、
図9に示すように、配管用継手1cは、配管用継手1aにおいて、封止部材7が接続部12の近傍において外周面5gに立設するように設けられるとともに、フランジ2及び環状溝6が設けられる代わりに、封止部材7がボルト4aとナット4bによって締結された構造となっている。
このような構造の配管用継手1cにおいては、配管用継手1aと同様の作用及び効果が、内部の流体の圧力よりも外部の流体の圧力の方が高い場合において有効に発揮される。すなわち、配管用継手1cは、石油、天然ガス、メタンハイドレイドなどの海底地下資源等を地上に搬送する配管や内部が真空状態で使用される配管等に利用できる。
【実施例3】
【0048】
封止部材7を備えた配管の継手構造の他の実施例について
図10を用いて説明する。
図10は、封止部材7が配管用継手1d,1eに用いられた状態を示す断面図である。なお、
図10は配管の中心軸を含む平面で切断した状態を示す断面図である。また、
図6〜
図9に示した構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。さらに、
図10では、配管用継手について、断面であることを示すハッチングを省略している。そして、本明細書では、以下に説明する配管用の継手構造を備えた配管で接続されるもの及び配管を配管ユニットというものとする。
図10に示すように、配管用継手1dは、実施例2の配管用継手1aにおいて受圧面5dと反対方向へ突出するように形成される円筒状の凸状部8aにシール面5aが設けられ、配管用継手1eは、この凸状部8aに対して係合可能に凹状部9aが形成されている。このような構造によれば、凸状部8a及び凹状部9aは、配管用継手1d,1eを接続した場合に、シール面5aに平行な方向へ互いに移動しないように拘束するという作用を有する。
なお、上述の配管用の継手構造を備えた配管ユニットにおいても上記作用及び効果は同様に発揮される。
また、本実施例では、凸状部8aを円筒状としているが、これに限らず、例えば、凸状部8aは角筒状であっても良い。
【0049】
実施例2の配管用継手1aでは、
図6に示した状態において、配管に振動等が加わると、封止部材7,7がせん断力を受けて、シール面5aに平行な方向へわずかながら、ずれるおそれがある。なお、封止部材7,7がずれて、シール面5aが流体に接触した場合、内圧Pは封止部材7,7を互いに引き離すように作用する。その結果、シール面5a,5aのシール性が低下してしまう。
これに対し、上記構造の配管用継手1d,1eにおいては、
図10に示したように、凸状部8aに凹状部9aが係合するため、配管に振動等が加わって封止部材7,7がせん断力を受けた場合でも、シール面5aに平行な方向へずれ難い。従って、接続部12におけるシール性の低下を防ぐことができる。
【実施例4】
【0050】
封止部材7を備えた配管の継手構造の他の実施例について、さらに
図11を用いて説明する。なお、前述したように、以下の説明は、封止部材7を備えた圧力容器についても同様に当てはまるものである。そして、内圧P
1が外圧P
2よりも高い状態で、この圧力容器が使用される場合には、前述したように、開閉方向に対して直交する面であって、内圧P
1と外圧P
2が加わる面の面積をそれぞれS
a及びSとおき、ボルト4aとナット4bの締付け力をWとおくと、W+P
2S>P
1S
aが成り立つ。ただし、外圧P
2が圧力容器を閉める方向へ作用する場合に、外圧P
2が加わる面の面積がSであり、このSには、前述した受圧面5fの面積S
4は含まれない。そして、P
2S>P
1S
aが成り立つ場合、ボルト4aとナット4bの締付け力Wを省略することができる。
【0051】
図11は、封止部材7が配管用継手1f,1gに用いられた状態を示す縦断面図であり、
図12は、その作用を説明するための図である。さらに、
図13及び
図14は
図11に示した配管用継手の変形例を示す図である。
なお、
図11〜
図14は配管の中心軸を含む平面で切断した状態を示す断面図である。また、
図12は
図11の部分拡大図に相当する。さらに、
図6〜
図10に示した構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。そして、
図11〜
図14では、断面であることを示すハッチングを省略している。
【0052】
図11に示すように、配管用継手1fは、実施例3の配管用継手1dにおいて、凸状部8aに代えて、シール面5aの面積が受圧面5dの面積よりも狭くなるように凸状部8bが形成された構造となっている。
また、フランジ継手1gは、フランジ継手1eにおいて、環状溝6が設けられず、かつ、凹状部9aに代えて、凸状部8bを遊嵌可能な凹状部9bが形成された構造となっている。
【0053】
図12において、内圧P
1の作用によって配管用継手1gのシール面5aが配管用継手1fのシール面5aから受ける圧力Qは、前述の式(1)の右辺第2項が無視できるほど内圧P
1が外圧P
2に比べて十分に大きい場合、配管用継手1fのシール面5aの面積S
1及び及び受圧面5dの面積S
2を用いると、次のように表わされる。
【0054】
【数2】
【0055】
式(2)より、Q>P
1となる。すなわち、内圧P
1の作用によって配管用継手1gのシール面5aが配管用継手1fのシール面5aから受ける圧力Qは、内圧P
1よりも大きくなる。
このように、上記構造の配管用継手1fにおいては、受圧面5dに加わる内圧P
1よりも大きな圧力がシール面5aから配管用継手1gのシール面5aに加わるという作用を有する。従って、流路3の内部の流体の圧力を利用して、シール面5aの密着力を高めることで、接続部12において十分なシール性が確保できるという実施例1で説明した効果が、より一層発揮される。
【0056】
なお、本実施例では、環状溝6が設けられていない配管用継手1gと、環状溝6が設けられたフランジ継手1fを接続した場合について説明したが、例えば、
図13に示すように、配管用継手1f,1f同士を接続することもできる。
このような場合にも本実施例で説明した上述の作用及び効果は同様に発揮される。
また、
図14に示すように、配管用継手1f,1gの代わりに、配管用継手1h,1iを用いることもできる。
なお、配管用継手1hは、配管用継手1fにおいて、凸状部8bに代えて、シール面5aの面積が受圧面5dの面積よりも狭くなるように、シール面5aが円環状の凸状部8cに形成された構造となっている。
また、配管用継手1iは、配管用継手1hにおいて、凸状部8cが設けられる代わりに、凸状部8cを遊嵌可能に環状溝15が設けられるとともに、この環状溝15の内部に円環状のガスケット10cが設置された構造となっている。すなわち、配管用継手1iでは、環状溝15の底面がシール面5aを構成している。
【0057】
このような構造の配管用継手1h,1iを接続した場合でも、上述の作用及び効果は同様に発揮される。なお、ガスケット10cが配管用継手1hのシール面5aと配管用継手1iのシール面5aの間に介設されているため、これらのシール面5a,5aには、必ずしも鏡面加工を施す必要はない。
また、環状溝15の内部に円環状のガスケット10cを設置しない場合、環状溝15が設けられた面(配管用継手1hに当接する面)がシール面となる。すなわち、環状溝15を挟み、流路3に近い側と遠い側にそれぞれシール面が形成される。そして、このような構造によれば、後述するように、環状溝15によって封止部材7,7の対向面間に環状空間部が形成されることになる。
【実施例5】
【0058】
封止部材7を備えた配管の継手構造の他の実施例について
図15及び
図16を用いて説明する。
図15は封止部材7が配管用継手1i,1jに用いられた状態を示す縦断面図であり、
図16は、その作用を説明するための図である。なお、
図16では配管用継手1i,1jについて、断面を示すハッチングを省略している。また、
図11〜
図14に示した構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
図15に示すように、本発明の配管の継手構造に用いられる配管用継手1jは、
図14で示した配管用継手1h,1iにおいて、環状溝15と凸状部8cにより、封止部材7,7の対向面間に環状空間部16が形成され、この環状空間部16の内圧を調節可能に、配管用継手1hに対し給排気孔17が設けられるとともに、この給排気孔17に対して給排気手段18が接続されたことを特徴とする。また、封止部材7はシール面5aの面積が受圧面5dの面積よりも狭くなるように形成されている。
なお、給排気孔17は、凸状部8cの表面に一方の開口端が設けられ、フランジ2の表面に他方の開口端が設けられている。また、配管用継手1iは、
図14に示した場合とは異なり、環状溝15の内部にガスケット10cは設置されていない。
【0059】
給排気手段18は、給排気孔17に一端が接続される給排気管19と、給排気管18の他端に対し、出力側が接続される開放電磁弁20a及び排気用電磁弁20bと、入力側が接続される給気用電磁弁21と、圧力センサ22と、真空ポンプ23及び給気ポンプ24と、制御部25によって構成されている。
なお、開放電磁弁20aの出力側は大気に開放され、排気用電磁弁20bの出力側と給気用電磁弁21の入力側には、真空ポンプ23及び給気ポンプ24がそれぞれ接続されている。すなわち、圧力センサ22は環状空間部16の内圧を給排気孔17と給排気管18を通して検出する圧力検出手段として機能し、圧力センサ22による検出値は制御部25に送られる。この検出値に基づいて、制御部25は開放電磁弁20a、排気用電磁弁20b及び給気用電磁弁21に対してそれぞれ開信号又は閉信号を送り、真空ポンプ23及び給気ポンプ24に対して稼働信号又は停止信号を送る。
【0060】
このように構成される給排気手段18において、制御部25からの閉信号及び開信号に従って、開放電磁弁20a及び給気用電磁弁21が閉じられるとともに排気用電磁弁20bが開かれる。さらに、制御部25からの稼働信号に従って真空ポンプ23が運転を開始すると、環状空間部16の気体が給排気孔17及び給排気管19を通して強制的に配管用継手1jの外部へ排出される。そして、圧力センサ22による検出値が所定の値に達すると、制御部25からの停止信号に従って、真空ポンプ23が停止し、閉信号に従って排気用電磁弁20bが閉じられる。これにより、環状空間部16の内部が所定の圧力まで減圧され、シール面5aの密着力が強まる。
一方、制御部25の開信号に従って開放電磁弁20aが開くと、配管用継手1jの外部の空気が給排気孔17及び給排気管19を通して環状空間部16へ流入する。その結果、環状空間部16の圧力が大気圧と等しくなり、シール面5aの密着力が弱まる。そして、制御部25の閉信号及び開信号に従って、それぞれ開放電磁弁20aが閉じるとともに給気用電磁弁21が開き、さらに、制御部25の稼働信号に従って給気用ポンプ24が運転を開始すると、配管用継手1jの外部の空気が給排気孔17及び給排気管19を通して環状空間部16へ強制的に送り込まれる。これにより、環状空間部16の圧力が大気圧よりも高くなり、シール面5aの密着力がさらに弱まる。
また、本発明の配管の継手構造においては、圧力センサ22を用いて環状空間部16の内圧を検出することで、シール面5aからの流体の漏出の有無が検出される。したがって、本発明によれば、流体の漏出という異常事態を速やかに検出し、事故の発生を未然に防ぐことができる。
【0061】
ここで、環状空間部16の内圧の作用について
図16を用いて説明する。
図16に示すように、内圧P
1の作用によって配管用継手1jのシール面5aが配管用継手1iのシール面5aから受ける圧力Qは、環状溝15の内面15a(封止部材7の受圧面5dに平行な面)の面積をS
6、環状空間部16の内圧をP
3とおくと、シール面5aの面積S
1及び及び受圧面5dの面積S
2を用いて、次のように表わされる。なお、
図16では、環状溝15を挟み、流路3に近い側と遠い側の2箇所に、それぞれシール面5aが形成されている。このように、シール面5aが複数存在する場合、すべてのシール面5aの面積を合計したものが、面積S
1となる。
【0062】
【数3】
【0063】
式(3)より、P
1>P
3であれば、常にQ>0となる。すなわち、内圧P
3が内圧P
1よりも低くなるように給排気手段18によって環状空間部16が減圧された場合、内圧P
1と外圧P
2の大小関係に関わらず、内圧P
3が低いほど、圧力Qは高くなり、配管用継手1jのシール面5aと配管用継手1iのシール面5aとの密着力が強まるという作用を有する。そして、内圧P
3が内圧P
1に比べて無視できる程度に十分小さい場合、内圧P
1の作用によって配管用継手1jのシール面5aが配管用継手1iのシール面5aから受ける圧力Qは、内圧P
1よりも大きくなる。一方、給排気手段18によって環状空間部16に気体が供給され内圧P
3が高くなると、配管用継手1jのシール面5aと配管用継手1iのシール面5aとの密着力が弱まるという作用を有する。
すなわち、配管用継手1i,1jを配管の接続部に用いることによれば、流体の圧力を利用してシール面5a,5aの間の密着力を強めることで、十分なシール性を確保することができる。特に、保守や点検の作業等において配管を分解する必要がある場合、環状空間部16の内圧を高めることで上記密着力が弱まるため、配管の接続部を容易に離反させることができる。
【実施例6】
【0064】
封止部材7を備えた圧力容器の実施例について
図17を用いて説明する。
図17は封止部材7が圧力容器1kの接続部12に用いられた状態を示す縦断面図である。なお、
図4及び
図15に示した構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
図17に示すように、圧力容器1kは、
図4を用いて既に説明した圧力容器11bに対して実施例5の発明を適用したものである。したがって、このような圧力容器においては、実施例5の発明における作用及び効果が同様に発揮される。
【実施例7】
【0065】
封止部材7を備えた壁部材の継手構造の実施例について
図18を用いて説明する。
図18は封止部材7が航空機等の機体や隔室等の構造体の壁部材11dの接続部12に用いられた状態を示す縦断面図である。なお、図示していないが、開放電磁弁20aの出力側は、構造体の外部へ通じるように壁部材11dに設けられた流路に接続されている。また、
図1及び
図15に示した構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0066】
図17に示すように、壁部材11aは、
図1を用いて既に説明した壁部材11aに対して実施例5の発明を適用したものである。ただし、
図18に示す構造体は、一般に、圧力容器や配管のように円筒状とは限らないため、環状溝15によって封止部材7,7の対向面間に環状空間部16を形成する代わりに、溝26によって空間部27が形成されている。なお、
図18では、図を簡略化するため、便宜上、空間部27の1つに給排気孔17を介して給排気手段18が接続された状態が示されているが、実際には、すべての空間部27に対し給排気孔17を介して給排気手段18が接続された構造となっている。
このような壁部材の継手構造においては、実施例5の発明における作用及び効果が同様に発揮される。
【0067】
なお、実施例5〜7では、環状溝15又は溝26と凸状部8cによって、封止部材7,7の対向面間に環状空間部16又は空間部27が形成される構造となっているが、凸状部8cは必須ではないため、省略することもできる。また、開放電磁弁20aと給気用電磁弁21のうち、いずれか一方を省略しても良い。さらに、給排気孔17を形成する箇所は、上記実施例に示した場合に限定されるものではなく、適宜変更可能である。そして、
図18では、給排気手段18が壁部材11dを有する構造体の内部に設置されているが、これに限らず、例えば、給排気手段18が構造体の外部に設置された構造であっても良い。