特許第5721284号(P5721284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5721284貸越枠設定システム、貸越枠設定方法及び貸越枠設定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721284
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】貸越枠設定システム、貸越枠設定方法及び貸越枠設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/02 20120101AFI20150430BHJP
   G06Q 20/06 20120101ALI20150430BHJP
【FI】
   G06Q40/02 122
   G06Q20/06 100
   G06Q40/02 118
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-198862(P2013-198862)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-64788(P2015-64788A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2013年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】397077955
【氏名又は名称】株式会社三井住友銀行
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 永宏
(72)【発明者】
【氏名】駿河 裕太
(72)【発明者】
【氏名】岩男 理敏
【審査官】 山本 雅士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−288484(JP,A)
【文献】 特開2005−128828(JP,A)
【文献】 特開2003−248754(JP,A)
【文献】 特開平11−296610(JP,A)
【文献】 特開2006−209677(JP,A)
【文献】 特開2001−195528(JP,A)
【文献】 特開平09−147038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 50/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金融機関の自動貸越サービスにおける貸越枠を設定する貸越枠設定システムであって、
顧客口座の入出金額及び残高を記録し管理する取引状況管理部と、
前記顧客口座の通貨別のランクに基づいて、前記顧客口座の信用度を判定する信用度判定部と、
前記顧客口座の入出金の取引金額及び前記判定された信用度及び前記顧客口のピーク赤残が当月又は所定期間の貸越極度額に対する割合に応じて、前記顧客口座に対する所定幅の貸越極度変動率を決定し、次回に適用する貸越極度額を算出する貸越極度算出部と、
前記算出された貸越極度額を前記顧客口座に対する次回適用の貸越枠として更新する貸越極度更新部と、
を備えることを特徴とする貸越枠設定システム。
【請求項2】
前記信用度判定部は、さらに国別及び/又は地域別のランクに基づいて、前記顧客口座の信用度を判定することを特徴とする請求項1に記載の貸越枠設定システム。
【請求項3】
前記顧客口座の取引金額は、顧客が指定する別の口座の残高を合算して算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の貸越枠設定システム。
【請求項4】
金融機関のコンピュータシステムにおいて、自動貸越サービスにおける貸越枠を設定する貸越枠設定方法であって、
顧客口座の入出金額及び残高を記録して管理する取引状況管理ステップと、
前記顧客口座の通貨別のランクに基づいて、前記顧客口座の信用度を判定する信用度判定ステップと、
前記顧客口座の入出金の取引金額及び前記判定された信用度及び前記顧客口座のピーク赤残が当月又は所定期間の貸越極度額に対する割合に応じて、前記顧客口座に対する所定幅の貸越極度変動率を決定し、次回に適用する貸越極度額を算出する貸越極度算出ステップと、
前記算出された貸越極度額を前記顧客口座に対する次回適用の貸越枠として更新する貸越極度更新ステップと、
を含むことを特徴とする貸越枠設定方法。
【請求項5】
金融機関の自動貸越サービスにおける貸越枠を設定する貸越枠設定プログラムであって、
コンピュータに、
顧客口座の入出金額及び残高を記録して管理する取引状況管理ステップと、
前記顧客口座の通貨別のランクに基づいて、前記顧客口座の信用度を判定する信用度判定ステップと、
前記顧客口座の入出金の取引金額及び前記判定された信用度及び前記顧客口座のピーク赤残が当月又は所定期間の貸越極度額に対する割合に応じて、前記顧客口座に対する所定幅の貸越極度変動率を決定し、次回に適用する貸越極度額を算出する貸越極度算出ステップと、
前記算出された貸越極度額を前記顧客口座に対する次回適用の貸越枠として更新する貸越極度更新ステップと、
を実行させることを特徴とする貸越枠設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関が提供する自動貸越サービスにおける貸越枠設定システム、貸越枠設定方法及び貸越枠設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から金融機関は、顧客の取引口座の残高が出金時に足りない時に、一定の範囲で自動的に貸し付けを行い、取引口座に入金があった場合は自動的に返済される自動貸越サービスを提供している。自動貸越サービスでは、顧客の与信に応じて、貸越枠すなわち貸越極度額(貸越限度額)が設定されるが、環境(経済の状況、為替レート等)の変化により、一度定めた貸越極度額は常に見直す必要がある。このため、貸越極度額の設定を、特に複数の通貨が関係する場合において、自動的に又は顧客からの要求によって柔軟に行える貸越極度設定方法等が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、顧客の指示により貸越通貨の種類が指定された場合に、各種通貨の担保商品の残高を読み出し、それらの基調通貨の種類に対応した各通貨掛目を読み出して各担保商品の残高に夫々掛合わせてテンポラリ残高を算出し、各対応する科目掛目(定期預金、投資信託等の時価に対する比率)を読み出して夫々の担保商品のテンポラリ残高に掛合わせ、さらに、ユーザの指定した貸越通貨の種類と異なる基調通貨の担保商品のテンポラリ残高に対し為替レートを読み出して夫々掛合わせた後、これらの各テンポラリ残高の合計を得ることで、貸越極度額を算出する極度額算出方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、顧客により取引操作されるATM端末側から口座特定情報及び総合口座貸越の最高貸越限度額の設定変更打診情報が送信されると、その顧客の総合口座に関する記録情報を収集し、その総合口座における最高貸越限度額の変更可能金額範囲を演算し、その後、ATM端末側から設定変更に係る指定金額の情報が送信されると、設定変更の可否判定を行い、最終的に顧客からの確認情報が送信されると、設定変更処理を実行する総合口座貸越の最高貸越限度額設定方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−288484号公報
【特許文献2】特開2005−128828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の方法は、顧客の保有する担保商品の残高とその基調通貨の種類に応じて、貸し手の負うリスクを少なく抑え、且つ借り手にとっては、できるだけ多くの資金の借入ができることを目的としている。また、上記の特許文献2に記載の方法は、総合口座貸越における最高貸越限度額を、顧客ニーズに対応して可能な限り自由に設定できるようにすることを目的としている。
【0007】
一般に、貸越極度額が低いと、貸し手である金融機関側の安全度は増すが、借り手である顧客側(コルレス口座等の場合は他行の場合もある)には取引口座における流動資金(キャッシュフロー)の不足が生じ、決済が滞る流動性リスクが大きくなる。流動性リスクとは、口座残高がマイナスになり、さらに貸越極度額を超過すると出金保留となり顧客側の決済が滞るこという。逆に、貸越極度額が高いと、顧客側の決済の自由度は増すが、金融機関側にとっては貸し倒れ時の損失リスクが大きくなる。このため、貸越極度額の設定は、過去の取引実績、市場動向、取引国の経済状況等の様々な情報を見て金融機関の担当者が随時、マニュアルで見直しを行っていた。しかしながら、このような方法では、担当者毎のばらつきや設定の遅れが生じやすく、上記の流動性リスクや損失リスクの管理の面からも課題があった。
【0008】
上記特許文献1に記載の極度額算出方法は、ユーザの指示により貸越通貨の種類が指定された場合に、貸越極度額の設定を自動化するものであるが、貸し手の負うリスクを、顧客の持つ担保商品の通貨掛目や科目掛目を用いて細かく設定することで、貸し手側の為替変動リスクは抑えられても、その他の顧客の取引状況によるリスクや借り手側の負う流動性リスクまでを考慮したものではない。また、特許文献2に記載の最高貸越限度額設定方法も、通貨に対する借り手側の自由度を増やすことを目的としているため、上記のようなリスク管理の課題を解決するものではない。
【0009】
従って、本発明は、上記のような課題に鑑み、顧客の取引状況に応じた適切な貸越枠を自動設定し、リスク管理の強化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の貸越枠設定システムは、以下のような解決手段を提供する。
【0011】
請求項1に記載の発明は、金融機関の自動貸越サービスにおける貸越枠を設定する貸越枠設定システムであって、顧客口座の入出金額及び残高を記録し管理する取引状況管理部と、前記顧客口座の通貨別のランクに基づいて、前記顧客口座の信用度を判定する信用度判定部と、前記顧客口座の入出金の取引金額及び前記判定された信用度及び前記顧客口のピーク赤残が当月又は所定期間の貸越極度額に対する割合に応じて、前記顧客口座に対する所定幅の貸越極度変動率を決定し、次回に適用する貸越極度額を算出する貸越極度算出部と、前記算出された貸越極度額を前記顧客口座に対する次回適用の貸越枠として更新する貸越極度更新部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、顧客口座の取引金額と為替変動等の取引環境の信用度に基づいて、次回の貸越金額を自動的に設定することで、人手による更新作業が不要となり、事務効率化が可能となる。また、取引状況、市場動向に鑑み貸越極度を設定するので、各取引の正確な判定が実現可能となる。さらに、一定の上下幅をもった貸越極度変動率を設けることで、取引環境が変動しても極端には貸越枠が連動しないようにし、顧客の取引における流動性リスクを抑えることができる。また、ピーク赤残(当月又は所定期間のマイナス残高のピーク値)と貸越極度額との関係も考慮して次回の貸越極度額を算出するので、実際の取引状況をリスク管理に反映することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシステムにおいて、前記信用度判定部は、さらに国別及び/又は地域別のランクに基づいて、前記顧客口座の信用度を判定することを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、取引環境の信用度に国や地域の経済状況を加えることでより適切なリスク管理を行うことができる。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載のシステムにおいて、前記顧客口座の取引金額は、顧客が指定する別の口座の残高を合算して算出することを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、顧客の取引口座以外の別の預金口座の残高を貸越枠の算出対象として取引金額に合算することで、貸越極度額が広がり、顧客のキャッシュフローの流動性リスクを軽減することができる。
【0019】
請求項に記載の発明は、金融機関のコンピュータシステムにおいて、自動貸越サービスにおける貸越枠を設定する貸越枠設定方法であって、顧客口座の入出金額及び残高を記録して管理する取引状況管理ステップと、前記顧客口座の通貨別のランクに基づいて、前記顧客口座の信用度を判定する信用度判定ステップと、前記顧客口座の入出金の取引金額及び前記判定された信用度及び前記顧客口座のピーク赤残が当月又は所定期間の貸越極度額に対する割合に応じて、前記顧客口座に対する所定幅の貸越極度変動率を決定し、次回に適用する貸越極度額を算出する貸越極度算出ステップと、前記算出された貸越極度額を前記顧客口座に対する次回適用の貸越枠として更新する貸越極度更新ステップと、を含むことを特徴とする。
【0020】
上記請求項に記載の発明は、請求項1に記載の貸越枠設定システムをコンピュータにより行う貸越枠設定方法の発明と捉えたものであり、請求項1に記載の発明と同様な作用効果を奏する。
【0021】
請求項に記載の発明は、金融機関の自動貸越サービスにおける貸越枠を設定する貸越枠設定プログラムであって、コンピュータに、顧客口座の入出金額及び残高を記録して管理する取引状況管理ステップと、前記顧客口座の通貨別のランクに基づいて、前記顧客口座の信用度を判定する信用度判定ステップと、前記顧客口座の入出金の取引金額及び前記判定された信用度及び前記顧客口座のピーク赤残が当月又は所定期間の貸越極度額に対する割合に応じて、前記顧客口座に対する所定幅の貸越極度変動率を決定し、次回に適用する貸越極度額を算出する貸越極度算出ステップと、前記算出された貸越極度額を前記顧客口座に対する次回適用の貸越枠として更新する貸越極度更新ステップと、を実行させることを特徴とする。
【0022】
上記請求項の発明は、請求項1に記載の貸越枠設定システムをコンピュータ・プログラムの発明と捉えたものであり、請求項1に記載の発明と同様な作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、顧客の取引状況に応じた適切な貸越枠を自動設定し、リスク管理の強化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の貸越枠設定システムの概念を示した図である。
図2】本発明の実施形態に係る貸越枠設定システム100の機能ブロックを示した図である。
図3】本発明の実施形態に係る貸越枠設定プログラムの処理フローを示した図である。
図4】本発明の実施形態に係る口座取引状況の具体例を示した図である。
図5】本発明の実施形態に係る通貨・国・地域別のランクテーブルを示した図である。
図6】本発明の実施形態に係る貸越極度変動率設定テーブル及び貸越極度設定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0026】
図1は、本発明の貸越枠設定システムの概念を示した図である。図示するように、従来の自動貸越サービスにおいては、顧客の口座残高がマイナスになる場合、貸し付けの限度額である貸越極度の設定又は更新を、金融機関の担当者が手作業でメンテナンスしていた。
【0027】
本発明の貸越枠設定システムでは、顧客の口座の取引金額及び残高を入出金毎に常に記録し管理できるようにし、口座のピーク赤残(マイナス残高の当月又は所定期間内のピーク値)を抽出し、さらに顧客の取引口座の通貨、取引先の国、地域のランクから、外部要因である取引環境の信用度を判定し、上記の取引金額、ピーク赤残、信用度に基づいて顧客口座の貸越極度額を算出する。このとき、貸越極度額の算出には貸越極度変動率を用い、この変動率には所定の上下幅を設ける。
【0028】
このようにして、取引状況(取引金額、残高、ピーク赤残)と、取引環境の信用度(通貨、国、地域)により、次回(典型的には翌月)に適用する貸越極度額を算出し、顧客口座に対する貸越枠として自動的に設定/更新する。ここでいう顧客口座は、海外の金融機関が国内の銀行に保有するコルレス口座であってもよいし、一般企業の取引口座であってもよい。
【0029】
このようにすることで、貸越極度の人手による更新作業が不要となり、事務効率化が可能となる。また、取引状況、市場動向に鑑み貸越極度を設定するので、取引のより適切な判定が可能となる。さらに、貸越枠は絶対額で定めるのではなく取引金額に対する貸越極度変動率とし、貸越極度変動率に上下幅を設けることで、経済状況により取引環境の信用度が変動しても極端には連動しないようにする。このようにすることで顧客の取引口座における流動性リスクを抑えることができる。
【0030】
図2は、本発明をより具体的に説明するために、本発明の実施形態に係る貸越枠設定システム100(以下、本システムと呼ぶ)の機能ブロックを示した図である。本システムは、単一又は複数のコンピュータ(サーバ)で構成してよい。図示する本システムは、典型的には、機能処理部として、取引状況管理部10、通貨・国・地域信用度判定部11、貸越極度算出部12、貸越極度更新部13、判定テーブル更新部14、口座情報照会部15を備えている。また、処理に必要なデータを格納するデータベース(DB)として、顧客の取引口座の入出金情報をすべて格納した顧客口座DB20と、通貨、国、地域ごとのランク(信用度)を格納した判定テーブルDB21を備えている。
【0031】
取引状況管理部10は、顧客口座DB20より、顧客口座の入出金情報を逐次読み出し、当月又は所定期間の口座取引状況として記憶部に記録し管理する。
具体的には、例えば、後述する図4(a)のような口座取引状況テーブルにまとめて記録する。このとき口座の残高がマイナスになる場合は、当月又は所定期間の貸越極度額を上限に、そのマイナス額に相当する金額を自動的に貸し付ける(図に点線で示す)。ただし、この貸し付け処理自体は、別の機能部(図示せず)で行うようにしてもよい。なお、取引状況管理部10は、入出金情報を、それぞれの口座の通貨で管理してもよいし、口座ごとの通貨ではなく円通貨に変換して管理してもよい。
【0032】
通貨・国・地域信用度判定部11は、通貨別、国別及び地域別のランク(信用度)をそれぞれ格納したランクテーブル22を判定テーブルDB21から読み出し、それらのランク値に基づいて、顧客口座の通貨・国・地域別の取引環境の信用度を判定する。ここで、各ランク値に対しては、各ランク値を単純に掛け合わせてもよいが、優先度を付けたり、所定の重みを定義しておいてもよい。
【0033】
貸越極度算出部12は、取引金額及び信用度に応じて一定の上下幅(所定幅)をもった貸越極度変動率を定めた貸越極度変動率設定テーブル23を判定テーブルDB21から読み出し、口座の取引金額と貸越極度変動率から当該口座に対する貸越極度を算出する。そして、貸越極度更新部13は、算出された貸越限度を顧客口座DB20又は別途DBに書き込み、次回適用する貸越極度額として更新する。
【0034】
判定テーブル更新部14は、金融機関のシステム管理者の端末である管理者端末110からの要求を受け付け、判定テーブルDB21からランクテーブル22又は貸越極度変動率設定テーブル23を読み出し、それらのテーブルを適宜更新できる機能を提供する。貸越極度変動率設定テーブル23には、顧客口座の取引金額と取引環境(通貨、国、地域)に応じて算出された信用度に応じて貸越極度変動率が予め設定されている。ただし、貸越極度変動率には適切な上下幅を設け、貸越極度額の極端な連動を避けるようにする。
【0035】
また、口座情報照会部15は、同じく管理者端末110からの要求を受け付け、顧客口座DB20から当該口座の情報を適宜取得できる機能を提供する。各機能の処理ステップ及びDBに格納される各テーブルの具体例は、次の図以降でさらに詳しく説明する。
【0036】
上記の本システムの機能ブロックの構成は、あくまで一例であり、一つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を更に分割したり、複数の機能ブロックをまとめて一つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、システムを構成する1又は複数のコンピュータ装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)又はハードディスク等の記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、CPUにより実行されるコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベース(DB)は、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0037】
図3は、本発明の実施形態に係る貸越枠設定プログラムの処理フローを示した図である。図4は、口座取引状況の具体例を示した図である。図5は、通貨・国・地域別のランクテーブルを示した図である。図6は、貸越極度変動率設定テーブル及び貸越極度設定結果を示した図である。以下、図3図6を参照しながら、本システムが実行する処理についてさらに詳しく説明する。
【0038】
本システムの機能は、システム内のCPUによって実行されるコンピュータ・プログラムで実現されるが、図3は、この機能の内最も重要な、貸越極度設定方法の処理の流れを示したものである。ただし、処理の順序は、必ずしもここで示したフローチャートどおりに行われる必要はなく、入力データと出力データの依存性を損なわない限り、各ステップの順序を入れ替えてもよい。
【0039】
図3に示すように、取引状況管理部10は、ステップS10において、顧客口座のすべての入出金について、入出金額及びそのときの残高を取得し、図4(a)に示すような月毎の口座状況テーブルにまとめる。この口座状況テーブルをグラフで表したものが図4(b)の図である。実際には、入出金額及び口座残高は、入出金のたびに記録されるが、図4では5日毎の表、グラフで単純化して示している。
【0040】
図4(a),(b)で示すように、当月の取引金額は、入金額と出金額の合計(この例では740=320+420)とし、当月で口座残高のマイナスの額が最も大きいものをピーク赤残(この例では25日に記録した−70)とする。なお、この取引金額は、顧客が指定する別の口座の残高を合算することができるようにしてもよい。例えば、顧客が当該取引口座以外に、定期預金の口座や投資信託の口座を保有している場合は、それらの残高に所定の掛目を乗じた金額を当該取引口座の取引金額に加えるようにしてもよい。このようにすることで、貸越枠の算出対象が広がり、顧客のキャッシュフローの流動性リスクを軽減することができる。
【0041】
図3に戻り、取引状況管理部10は、ステップS11において、上記の口座取引状況テーブルから取引金額とピーク赤残を抽出する。なお、特に図示していないが、口座残高がマイナスになるときは、当月又は所定期間の貸越極度の範囲内で、マイナス残高に相当する金額の貸し付けが自動的に行われるのは言うまでもない。ただし、口座残高がマイナスで、さらに貸越極度を超過した場合は、通常は出金保留となり決済が滞ることになる。出金保留を解除するには、その口座に新たな入金が必要であるが、上位権限を有する者の承認があれば、貸越極度を超えて出金保留を解除することも可能である。
【0042】
次に、ステップS12〜S14において、通貨・国・地域信用度判定部11が、通貨別、国別、地域別のランクテーブル22を読み出し、それぞれの信用度を判定する。ステップS12〜S14の処理の順序は不問であるが、場合によっては、一部のステップ(例えばステップS13又はステップS14)をスキップしてもよい。ランクテーブル22は、図5に示すように、通貨別ランクテーブル、国別ランクテーブル、地域別ランクテーブルに分けて判定テーブルDB21に格納される。なお、地域とは、例えば、アジア(日本他)、アジア(中国・韓国等)、中東、欧州、北欧、北米、アメリカ、中米、南米等のように分けてもよいし、さらに細分化してもよい。
【0043】
図3に再び戻り、ステップS15において、貸越極度算出部12が、ステップS12〜S14で求めた通貨別、国別、地域別の信用度、貸越極度変動率設定テーブル23、及びピーク赤残を参照して貸越極度変動率を決定し、当該顧客口座に対して次回に適用する貸越極度額を算出する。貸越極度変動率設定テーブル23とは、通貨、国、地域から求められる信用度(取引環境の信用度)と口座の取引金額に応じて貸越極度の変動率を予め定義したテーブルである。
【0044】
貸越極度変動率設定テーブル23の具体例を図6(a)に示す。図6(a)の例では取引環境の信用度を、通貨、国、地域のランクを単純に掛け合わせて、高(1〜3)、中(4〜8)、低(9〜)のように3段階で算出しているが、このような算出方法に限定されないのは言うまでもない。例えば、既に述べたように、それぞれのランク値に重み係数を掛け合わせて最終的な信用度を求めてもよい。信用度の評価としては、通貨、国、地域に加え、顧客の外部格付、設立年数、取引年数等の顧客口座の信頼度を加えてもよい。また、通貨、国、地域の評価については、現時点の評価だけでなく、信用度の傾向(上昇や下降)を加えてもよい。また、口座が、コルレス口座か一般企業の取引口座であるかによって、異なる指標で信用度の評価をしてもよい。
【0045】
図6(a)では、貸越極度変動率は20%から0%の上下幅で設定できるようにしているが、ここで挙げた上下幅の範囲に限定されるものでなく、リスクが高く、取引が少ない口座は、マイナスの変動率が適用されるようにしてもよい。
【0046】
また、図3のステップS15においては、ピーク赤残の当月又は所定期間の貸越極度に対する割合に応じて、貸越極度変動率を貸越極度変動率設定テーブル23に記載の値ではなく、別途定めた所定の値に設定するようにしてもよい。例えば、当月のピーク赤残が、当月又は所定期間の貸越極度より大幅に少ない場合には、次回の貸越極度変動率をテーブルの設定値に係らず0%としたり、或いはピーク赤残と貸越極度の割合に応じた率に決定したりしてもよい。これは顧客の資金需要に応じて柔軟に対応するためである。もちろん、このようなピーク赤残、貸越極度、貸越極度変動率の関係を貸越極度変動率設定テーブル23に含めて予め定義しておいてもよい。
【0047】
このようにして決定された貸越極度変動率と取引金額から算出された貸越極度算出結果は、例えば、図6(b)のようになる。この例では、口座A,B,Cの当月貸越極度は、−1億円、取引金額は120億円で同じである。しかし、通貨・国・地域により判定された信用度及びピーク赤残と当月貸越極度との関係が異なるため適用される貸越極度変動率が異なり、貸越極度額は、それぞれ−1.2億円、−1億円、−1億円となっている。すなわち、口座Aは、ピーク赤残が貸越極度を超過しているが、信用度が高であり、取引金額も大きいので、貸越極度変動率は上限の20%が適用される。これは、顧客の資金需要が高いと判断されるからである。また、口座Bは、取引金額が大きく、信用度も高であるが、ピーク赤残が小さく、貸越極度を超過していないため、資金需要が少ないと考えられるので、貸越極度変動率は貸越極度変動率設定テーブル23に依らず0%に設定されている。また、口座Cは、取引金額は大きく、ピーク赤残も貸越極度を超過しているが、信用度が低であるので、貸越極度変動率は、貸越極度変動率設定テーブル23の設定どおり0%に留めている。このようにして、本システムによれば、貸し手のリスクと借り手のリスクのバランスをとることができる。
【0048】
最後に、図3のステップS16において、貸越極度変動率と取引金額から算出された貸越極度額は、貸越極度更新部13によって、次回に適用される貸越枠(貸越極度額)として、顧客口座DB20若しくはその他の適切なDB上で更新される。ここで更新された貸越極度額は顧客側にも通知するようにしてもよいのは言うまでもない。
【0049】
なお、図2から図6で示した実施形態(実施例)は、企業の顧客向けの自動貸越サービスを念頭に説明したが、個人の顧客に対しても同様な仕組みが適用できる。
【0050】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0051】
10 取引状況管理部
11 通貨・国・地域信用度判定部
12 貸越極度算出部
13 貸越極度更新部
14 判定テーブル更新部
15 口座情報照会部
20 顧客口座DB
21 判定テーブルDB
22 ランクテーブル(通貨別、国別、地域別)
23 貸越極度変動率設定テーブル
100 貸越枠設定システム
110 管理者端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6