特許第5721295号(P5721295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5721295
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20150430BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   B66B5/02 G
   B66B5/02 F
   B66B3/00 M
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-80327(P2014-80327)
(22)【出願日】2014年4月9日
【審査請求日】2014年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山梨 貴生
【審査官】 筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−212914(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/006704(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/001643(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 − 5/28
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置されたエレベータの運転を制御し、前記エレベータ内に設置された津波避難時操作スイッチに接続されたエレベータ制御装置において、
地震が発生し前記エレベータが休止した後に、予め備えた自動復旧機能により自動復旧が可能であるか否かを診断する診断部と、
外部システムにより発令された、津波警報を受信する津波警報受信部と、
前記診断部で前記エレベータの運転の自動復旧が可能であると診断されると、前記エレベータの運転を再開し、その後、所定時間以内に前記津波警報受信部で津波警報を受信し、さらに前記津波避難時操作スイッチがON状態に操作されると津波避難時管制運転を開始し、予め設定された基準階に避難対象者がいないと判断されるまでの間、前記エレベータの乗りかごを、前記基準階と前記建物の最上階との間で巡回するように自動で呼びを登録して運転する運転制御部と
を備えることを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記基準階から前記最上階へは、前記乗りかごを低速で運転する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記運転制御部は、
前記基準階または前記最上階に乗りかごが着床し戸開した後、前記乗りかご内の戸閉ボタンが長押し操作されたときに戸閉して、登録された呼びに応答して運転する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記運転制御部は、前記津波警報受信部で受信した津波警報が、大津波警報であるときには、前記津波避難時操作スイッチの操作状況にかかわらず、津波避難時管制運転を開始する
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータでは、地震等の災害が発生すると自動的に管制運転に切り替え、予め設定された緊急動作を行う。
【0003】
管制運転による緊急動作としては例えば、外部への出入り口がある基準階に乗りかごを直行運転させる動作や、最寄の階床に乗りかごを停止させて戸開させる動作などがある。
【0004】
このように、災害発生時に自動的に管制運転による緊急動作が行われることにより、利用者は避難のためのエレベータ操作を行わなくても、乗りかごに閉じ込められることなく、迅速に避難行動をとることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−212914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地震が発生した際は、その後に発生する津波に対する避難対策も必要であるが、建物内の避難対象者を確実かつ安全に津波から避難させるための津波避難時管制運転が行われていないという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、地震発生後、津波警報が発令された際に、建物内の避難対象者を確実かつ安全に津波から避難させるための津波避難時管制運転を行うエレベータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータ制御装置は、実施形態によればエレベータ制御装置は、診断部と、運転制御部とを備える。診断部は、地震が発生し前記エレベータが休止した後に、予め備えた自動復旧機能により自動復旧が可能であるか否かを診断する。運転制御部は、診断部でエレベータの運転の自動復旧が可能であると診断されるとエレベータの運転を再開し、その後、エレベータ内に設置された津波避難時操作スイッチがON状態に操作されると津波避難時管制運転を開始し、予め設定された基準階に避難対象者がいないと判断されるまでの間、エレベータの乗りかごを、基準階と建物の最上階との間で巡回するように自動運転し、基準階から最上階へは、低速で運転する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態によるエレベータ制御装置を利用したエレベータシステムの構成を示す全体図。
図2】一実施形態によるエレベータ制御装置の構成を示すブロック図。
図3】一実施形態によるエレベータ制御装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈一実施形態によるエレベータシステムの構成〉
本発明の一実施形態によるエレベータシステムの構成について、図1を参照して説明する。
【0011】
本実施形態によるエレベータシステム1は、建物Aに設置されており、昇降路2上部に設置された巻上げ機3にメインロープ4が掛け渡され、メインロープ4の一端には乗りかご5が吊り下げられ、他端には釣り合い錘6が吊り下げられている。乗りかご5および釣り合い錘6は、巻上げ機3のモータ(図示せず)が駆動することにより昇降路2を昇降する。
【0012】
乗りかご5にはかご内操作盤51が設置されており、かご内操作盤51には、行き先階ボタン群511、戸開ボタン512、戸閉ボタン513、および津波避難時操作スイッチ514が設けられている。
【0013】
津波避難時操作スイッチ514は、津波警報を認識した管理人によりON状態に操作されると津波避難信号を生成し、エレベータ制御盤8に送信する。またON状態からOFF状態に操作されると、津波避難解除信号を生成し、エレベータ制御盤8に送信する。
【0014】
また昇降路2の下部には地震検知器7が設置されている。地震検知器7は、地震を検知すると地震検知信号を出力する。
【0015】
また昇降路2の上部にはエレベータ制御盤8が設置され、乗りかご5にテールコード(図示せず)で接続されるとともに、巻上げ機3および地震検知器7に信号線で接続されている。
【0016】
またエレベータ制御盤8は、ネットワーク9を介して外部の気象情報システム10に接続されており、気象情報システム10から発令された津波警報を受信する。
【0017】
エレベータ制御盤8の詳細な構成を、図2に示す。エレベータ制御盤8は、運転制御部81と、検知信号受信部82と、診断部83と、津波警報受信部84と、警報出力部85とを有する。
【0018】
運転制御部81は、乗りかご5の現在位置、かご内操作盤51の行き先階ボタン群511、戸開ボタン512、戸閉ボタン513、津波避難時操作スイッチ514の操作状況や、エレベータ制御盤8内の検知信号受信部82、診断部83、津波警報受信部84から送出される情報に基づいて、通常運転、地震時管制運転、または津波避難時管制運転を行う。
【0019】
検知信号受信部82は、地震検知器7から出力された地震検知信号を受信し、運転制御部81に送出する。
【0020】
診断部83は、地震発生後に、運転制御部81の運転状況に基づいて、エレベータの自動復旧が可能か否かを診断する。
【0021】
津波警報受信部84は、外部の気象情報システム10から発令される津波警報を受信する。
【0022】
警報出力部85は、津波警報受信部84で受信された津波警報を、表示や音声により出力して管理者や在館者に報知する。
【0023】
〈一実施形態によるエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステム1の動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0024】
まず、エレベータ制御盤8の運転制御部81により通常運転が行われているときに、地震検知器7で地震が検知されると地震検知信号が出力され、検知信号受信部82で取得される(S1)。
【0025】
検知信号受信部82で地震検知信号が取得されると(S1の「YES」)、運転制御部81において地震時管制運転が実行される(S2)。
【0026】
ここでは、地震時管制運転として、利用者が乗車している乗りかご5を最寄の階床に停止させて戸開させる動作を行う。利用者は戸開した階床で降車し、避難階段を利用して外部への出入り口がある1階に避難する。最寄階で停止したエレベータは、その後休止状態となる。
【0027】
次に、地震発生により停止したエレベータの運転を、予め運転制御部81に備えた自動復旧機能により復旧可能であるか否かが、診断部83で診断される(S3)。
【0028】
診断部83で、エレベータ運転の自動復旧が可能であると診断されると(S3の「YES」)、所定の自動復旧動作後、通常運転が再開される(S4)。
【0029】
自動復旧により通常運転が再開された後、所定時間(例えば数時間)以内に、気象情報システム10から津波警報が発令されると津波警報受信部84で受信され(S5の「YES」)、警報出力部85から表示や音声により出力される。また津波警報受信部84で受信された津波警報は、運転制御部81にも送出される。
【0030】
運転制御部81では、津波警報が取得されると、予め基準階として設定されている1階に乗りかご5を移動させ、着床後、戸開させる(S6)。
【0031】
その後、出力された津波警報を認識した管理人により津波避難時操作スイッチ514がON状態に操作されると、津波避難信号が生成されてエレベータ制御盤8に送信される。
【0032】
エレベータ制御盤8では、運転制御部81で津波避難信号が受信されると(S7の「YES」)、津波避難時管制運転が開始される。運転制御部81で実行される津波避難時管制運転について説明する。
【0033】
まず、津波避難時管制運転が開始されると、最上階を目的階とする呼びが登録される(S8)。
【0034】
次に、基準階で戸開している乗りかご5に避難対象者が乗り込み、戸閉ボタン513が長押し操作されると(S9の「YES」)、乗りかご5が戸閉され、目的階である最上階まで低速運転して着床後、戸開される(S10)。低速で運転することにより、車椅子利用者や高齢者などに対して安全が図られる。
【0035】
避難対象者は最上階で降車し、避難階段等を利用して屋上に移動することで、津波に対する避難行動をとることができる。
【0036】
次に、基準階にまだ避難対象者がいるか否かが判断され、避難対象者がいると判断されたとき(S11の「YES」)には、基準階を目的階とする呼びが登録される(S12)。
【0037】
ここで、基準階に避難対象者がいるか否かは、例えば、基準階のエレベータ乗場の設置された監視カメラの映像を解析することにより判断される。
【0038】
次に、乗りかご5に避難誘導者等が乗り込み、戸閉ボタン513が長押し操作されると(S13の「YES」)、乗りかご5が戸閉され、目的階である基準階まで移動して着床後、戸開される(S14)。
【0039】
以降、基準階に避難対象者がいないと判断されるまでの間、ステップS9〜S14の処理が繰り返され、乗りかご5が基準階と最上階との間で巡回するように自動運転が行われる。
【0040】
全ての避難対象者が最上階にエレベータで移動して基準階にはいなくなった後(S11の「NO」)、気象情報システム10から津波警報の解除が通知されると、当該通知が津波警報受信部84で受信され、警報出力部85から表示や音声により出力される。
【0041】
警報出力部85から出力された津波警報の解除通知が管理人により認識され、津波避難時操作スイッチ514がOFF状態に操作されると、津波避難解除信号が生成されてエレベータ制御盤8に送信される。
【0042】
エレベータ制御盤8では、運転制御部81で津波避難解除信号が受信されると(S15の「YES」)、乗りかご5を最上階に停止させたまま戸閉させ(S16)、津波避難時管制運転が終了され、通常運転に戻る。
【0043】
またステップS3において、地震発生により停止したエレベータの運転を、自動復旧機能により復旧可能ではないと判断されたとき(S3の「NO」)には、運転停止状態となる(S17)。
【0044】
以上の本実施形態によれば、地震発生後、津波警報が発令された際に、管理者等の特定の操作に基づいて津波避難時管制運転を行うことにより、建物内の避難対象者を確実かつ安全に津波から避難させるよう管制運転を行うことができる。
【0045】
また上述した実施形態において、津波警報受信部84で受信した津波警報が、大津波警報であるときには、津波避難時操作スイッチ514の操作状況に関わらず、当該大津波警報を受信したときに津波避難時管制運転を開始するようにしてもよい。
【0046】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…エレベータシステム、2…昇降路、3…巻上げ機、4…メインロープ、6…釣り合い錘、7…地震検知器、8…エレベータ制御盤、9…ネットワーク、10…気象情報システム、51…かご内操作盤、81…運転制御部、82…検知信号受信部、83…診断部、84…津波警報受信部、85…警報出力部、511…行き先階ボタン群、512…戸開ボタン、513…戸閉ボタン、514…津波避難時操作スイッチ
【要約】
【課題】地震発生後、津波警報が発令された際に、建物内の避難対象者を確実かつ安全に津波から避難させるための津波避難時管制運転を行うエレベータ制御装置を提供する。
【解決手段】実施形態によればエレベータ制御装置は、診断部と、運転制御部とを備える。診断部は、地震が発生し前記エレベータが休止した後に、予め備えた自動復旧機能により自動復旧が可能であるか否かを診断する。運転制御部は、診断部でエレベータの運転の自動復旧が可能であると診断されるとエレベータの運転を再開し、その後、エレベータ内に設置された津波避難時操作スイッチがON状態に操作されると津波避難時管制運転を開始し、予め設定された基準階に避難対象者がいないと判断されるまでの間、エレベータの乗りかごを、基準階と建物の最上階との間で巡回するように自動運転し、基準階から最上階へは、低速で運転する。
【選択図】図2
図1
図2
図3