特許第5721304号(P5721304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721304
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】NKG2Aに対するモノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20150430BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20150430BHJP
   A61K 39/35 20060101ALI20150430BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20150430BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150430BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20150430BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20150430BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   C07K16/28ZNA
   A61K35/28
   A61K39/35
   A61K39/395 L
   A61K39/395 N
   A61K39/395 Y
   A61K45/00
   A61P1/00
   A61P1/04
   A61P1/16
   A61P3/10
   A61P5/14
   A61P7/06
   A61P9/00
   A61P9/10
   A61P17/00
   A61P17/06
   A61P17/14
   A61P19/02
   A61P21/00
   A61P21/04
   A61P25/00
   A61P27/02
   A61P29/00 101
   A61P31/12
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P37/02
   A61P37/06
   A61P37/08
   A61P43/00 105
   A61P43/00 111
   C07K16/46
   C12N15/00 A
   G01N33/53 D
【請求項の数】8
【全頁数】71
(21)【出願番号】特願2007-548918(P2007-548918)
(86)(22)【出願日】2005年12月27日
(65)【公表番号】特表2008-525520(P2008-525520A)
(43)【公表日】2008年7月17日
(86)【国際出願番号】IB2005004013
(87)【国際公開番号】WO2006070286
(87)【国際公開日】20060706
【審査請求日】2008年9月26日
【審判番号】不服2012-20040(P2012-20040/J1)
【審判請求日】2012年10月11日
(31)【優先権主張番号】60/639,465
(32)【優先日】2004年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/639,832
(32)【優先日】2004年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506000184
【氏名又は名称】イナート・ファルマ・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】INNATE PHARMA PHARMA S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】502174302
【氏名又は名称】ウニヴェルシタ ディ ジェノヴァ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITA DI GENOVA
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ・モレッタ
(72)【発明者】
【氏名】エマヌエラ・マルチェナーロ
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・ロマーニュ
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・アンドレ
【合議体】
【審判長】 郡山 順
【審判官】 中島 庸子
【審判官】 小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−528824号(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0095965号細書(US,A1)
【文献】 International Immunology,2000年,Vol.13,No.2,p.193−201
【文献】 BLOOD,2004年12月 1日,Vol.104,No.12,p.3664−3671
【文献】 Eur.J.Immunol.,1998年,Vol.28,p.1280−1291
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C07K16/00-16/46
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
MEDLINE/CA/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.NKG2Aに特異的に結合すること;
b.ヒトFcγ受容体III(CD16)には特異的に結合しないこと、ここで、配列番号6のアミノ酸配列の軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、CDR2およびCDR3および配列番号2のアミノ酸配列の重鎖相補性決定領域1(CDR1)、CDR2およびCDR3を含む
c.ヒトNK細胞上のNKG2Aに結合する場合、前記NK細胞をして、標的細胞表面上にHLA−EまたはQa1を有する標的ヒト細胞を溶解せしめ、その場合、前記標的細胞が前記NK細胞に接触すること;および
d.ヒトNKG2CまたはヒトNKG2Eには結合しないこと
を特徴とする、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
非ヒト霊長類NKG2Aに結合することをさらに特徴とする、請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
非ヒト霊長類NK細胞上のNKG2Aに結合する場合、前記NK細胞をして、標的細胞表面上にHLA−Eを有する標的非ヒト霊長類細胞を溶解せしめ、その場合、前記標的細胞が前記NK細胞に接触する、請求項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
ヒトF受容体への結合を防止するように改変されているマウスまたはヒトIgG領域を含んでなる、請求項1〜のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
ヒト、キメラもしくはヒト化抗体である、請求項1〜のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
ヒトIgG定常領域を含んでなる、請求項1〜のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
a.有効量の請求項1〜のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント;および
b.医薬的に許容可能なキャリアまたは賦形剤、
を含んでなる医薬組成物。
【請求項8】
CNCM受託番号I−3549の下に寄託されている細胞により生産されるモノクローナル抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NK細胞表面受容体NKG2Aに対して指向されるモノクローナル抗体およびそのフラグメント、ならびにそのような抗体を産生させ、評価する方法に関する。モノクローナル抗体およびそのフラグメントは、免疫障害、特に、自己免疫障害、ならびにモジュレートされたNK細胞機能を必要とする他の疾患を処置するのに有用である。一般的に、本方法は、処置しようとする障害の病因に寄与する樹状細胞または活性化されたT細胞のようなHLA−EまたはQa1発現細胞の溶解をもたらすNK細胞上のNKG2A受容体の刺激を防止するための抗体およびそのフラグメントの使用に関与する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫反応を誘発せずに有効な免疫監視機構を維持するには、エフェクターT細胞応答の正確な力価測定が必要である。自己免疫障害は、免疫系が自己抗原に対する免疫応答を展開する場合に生じる(例えば、非特許文献1を参照のこと)。自己免疫反応の誘発および維持に関与する機構は不明である一方、二次リンパ器官においてこれまで免疫学的に認められなかった抗原の出現が関与するようである。
【0003】
樹状細胞は、免疫応答において重要な役割を果たす骨髄由来の抗原提示細胞(APC)である(例えば、非特許文献2を参照のこと)。DCは、食作用、エンドサイトーシス、ならびに飲作用を介して、細菌、ウイルス、死にかかっている細胞、および多様な複雑な分子を内在化する。組み入れられたタンパク質はペプチドに分解され、次いで、MHCクラスIおよびクラスII分子と共にDC細胞表面上に提示される。MHCクラスI上に装填される抗原は、典型的に、内因性タンパク質から誘導され、CD8+T細胞によって認識される一方、MHCクラスIIに装填される抗原は、一般的に、外部タンパク質から誘導され、CD4+T細胞によって認識される。抗原捕捉後、未熟DC細胞は成熟して、減少した食作用を示す成熟DCを形成し、リンパ組織に移動し、増強されたT細胞刺激能を有する。
【0004】
リンパ組織では、DCは、生来の(naive)T細胞に抗原刺激を与えて、それらのクローン発現および分化を刺激し、また、B細胞、およびNK細胞を含む自然免疫系の細胞とも相互作用することができる。活性化されたNK細胞は、未成熟DC細胞を死滅させることができるが、成熟DC細胞を死滅させることができない。Tリンパ球の抗原輸送および一次感作は、主に抗原提示樹状細胞よって媒介されるため、樹状細胞による自己抗原の不適切な提示は、少なくとも部分的に自己免疫障害に寄与するようである。
【0005】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、従来にない免疫に関与するリンパ球のサブ集団である。NK細胞は、腫瘍またはウイルス感染細胞のような所望されない細胞を排除することができる効率的な免疫監視機構を提供する。NK細胞活性は、活性化および抑制シグナルの両方に関与する複雑な機構によって調節される(例えば、非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7を参照のこと;その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)。
【0006】
NK細胞媒介認識およびHLAクラスI欠損標的細胞の死滅に重要な役割を果たすいくつかの異なるNK特異的受容体が同定されている。NKp30、NKp46およびNKp44と称されるこれらの受容体は、Igスーパーファミリーのメンバーである。特異的なmAbによって誘導されるそれらの架橋は、強力なNK細胞活性化をもたらし、細胞内Ca++レベルの増加、細胞障害性の誘発およびリンフォカイン放出を生じる。重要なことに、NKp30、NKp46、および/またはNKp44のmAb媒介活性化は、多くのタイプの標的細胞に対するNK細胞障害性の活性化を生じる。これらの所見は、天然の細胞障害性におけるこれらの受容体の中心的役割の根拠を提供する。
【0007】
NK細胞は、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI特異的抑制性受容体によってネガティブに調節される(非特許文献8;非特許文献9)。これらの特異的受容体は、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子またはHLAの多型性決定基に結合し、ナチュラルキラー(NK)細胞溶解を阻害する。ヒトでは、キラーIg様受容体(KIR)と称される受容体のファミリーの所定のメンバーがHLAクラスI対立遺伝子のグループを認識する(例えば、非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12を参照のこと;その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)。
【0008】
NK細胞上のもう1つの重要な抑制性受容体はCD94−NKG2Aであり、非古典的MHCクラス1分子HLA−Eと相互作用する(例えば、非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19;特許文献1を参照のこと;そのそれぞれの開示内容全体は参照により本明細書に援用される)。これらの受容体のいくつかは、T細胞抗原受容体依存性T細胞活性化の閾値をモジュレートする能力を有する。稀に抑制性受容体が存在しない場合、活性化アイソフォームはT細胞エフェクター機能を増大し、自己免疫病理に寄与し得る。NKG2Aのアミノ酸配列は、霊長類を含む哺乳動物の間でばらつきがある。例えば、NKG2Aタンパク質のヒトおよびアカゲザルバージョンは、リガンド結合ドメイン内で約86%を含む90%未満の同一性を共有する。
【0009】
NKG2Aをモジュレートするため、本質的に、炎症の防止のための療法に対する努力は、非古典的MHCクラスI分子、ヒト受容体に対するHLA−Eおよびマウス受容体に対するQa−1bの研究に集中している。細胞表面発現のために、これらのMHC分子は、好ましくは、他のMHCクラスI分子のシグナルペプチドから誘導されるペプチドに結合する。他のクラスIMHC分子の発現は、HLA−Eの発現を調節することができ、それによって、NK細胞は潜在的標的細胞におけるMHCクラスI依存性抗原提示経路の状態をモニターすることが可能である。細胞表面HLA−Eのレベルは、腫瘍およびウイルス感染細胞に対するNK細胞の細胞障害性に極めて重要である。HLA−E発現または機能をモジュレートするための治療ストラテジーは、一般的に、HLA−IまたはHSP60ペプチドを使用して、NK細胞が活性化されないような炎症の防止のための保護状態を誘導することに指向されている。
【0010】
特許文献1は、NKG2A、NKG2CおよびNKG2Eに結合する抗体、3S9を開示している。3S9は、それらの受容体の架橋およびNK細胞媒介溶解の同時阻害を生じるとされている。共有のPCT特許公開特許文献2は、NK型顆粒リンパ球増多症(NK−LDGL)を患う患者を処置するためのNKG2Aを含むNK受容体に特異的に結合する抗体の使用について開示している。そのような抗体はNK細胞活性を阻害する。
【0011】
モノクローナル抗体は、多様な疾患の診断および処置に非常に有用であることが証明されている。治療用モノクローナル抗体は、異なる機構を介して作用することができる。Rituxanのようないくつかの抗体は、病理学的細胞、例えば、腫瘍細胞の表面上に存在する抗原を認識し(Rituxanの場合、CD20)、認識された細胞を破壊するように免疫系に指令することによって作用する。Bexxar、Oncolym、またはZevalinのような他の抗体は、放射性同位元素、化学療法剤、もしくは毒素に結合され、抗体によって結合された細胞の直接的死滅をもたらす。バシリキシマブおよびダクリズマブ(IL−2を阻止する)、IgEを阻止するオマリズマブ、ならびにエファルジマブ(efaluzimab)のようなさらに他のものも作用して、特定のタンパク質の活性を阻止する。抗体に基づく療法は当該分野において周知であり、例えば、非特許文献20、非特許文献21、非特許文献22、非特許文献23、非特許文献24、非特許文献25(そのそれぞれの開示内容全体は参照により本明細書に援用される)においてレビューされている。
【0012】
抗体をヒトにおける治療アプリケーションに使用するか、または臨床治験に参加させ得る前に、それらは、非ヒト動物における前臨床研究を経て、それらの毒性、インビボでの効力、バイオアベイラビリティ、半減期ならびに他の多様な薬物動態学的および薬力学的パラメータのような多様なパラメータを評価しなければならない。そのようなアッセイは、典型的に、哺乳動物において行われ、好ましくは、ここで、それらは、生物学的活性を有し、即ち、ここで、mAbは、種において相同分子に反応し、従って、ここで、ヒトに対してもっとも大きな生理学的類似性を期待することができる。しかし、ヒトタンパク質に対して指向された抗体が標的タンパク質の非ヒト動物相同物に結合しない場合、非ヒト霊長類における研究は妨げられ得る。対照的に、交差反応が存在する場合、抗体のインビボでの効力を動物において試験することができるだけでなく、抗体の標的タンパク質への結合に関連する副作用、毒性、または動態学的特性のような他の問題もまた、研究することができる。容易に利用可能な霊長類の例として、カニクイザル(Macaca mulatta)、アカゲザル(Macacus mulatta)、アフリカミドリザル(Chlorocebus aethiops)、マーモセット(Callithrix jacchus)、リスザル(Saimiri sciureus)のような新世界ザルおよび旧世界ザル(すべて、「Centre de Primatologie」(CDP:ULP,Fort Foch,67207 Niederhausbergen、仏国)より入手可能)、ならびに「Station de Primatologie du CNRS」、CD56,13790 Rousset/Arc、仏国)から入手可能なヒヒ(Papio hamadryas)が挙げられる。そのような事例は稀であり、一般的に、試験のための他の代替物が存在しないか、またはすべて試みられている場合にのみであるが、一般に、チンパンジー(Chimanzee)および類人猿もまた、候補医薬品を試験するために使用することができる。
【0013】
抗体はそれらの標的の特定の3次元特徴に結合するため、標的タンパク質のアミノ酸配列における僅かな変化が結合を完全に廃止し得、1つの種由来のタンパク質に対して指向された所定の抗体がいくつかを共有するが完全な配列同一性は共有しない相同タンパク質にもまた結合するかどうかについては予測することができない。例えば、ヒトタンパク質に対して指向された抗体が、近縁種においてであっても相同物には結合しない多くの事例が記載されている。ヒトおよびアカゲザルCD4タンパク質は、94%近くもの同一性パーセントを共有するが、例えば、ヒトCD4タンパク質に対するいくつかの抗体は、サル相同物に結合しない(例えば、非特許文献26;非特許文献27その開示内容全体が本明細書において参照により援用される)を参照のこと)。他の例として、ヒトCD3(抗体開発のために広範に追及されている薬学的標的)に対するいくつかの抗体が挙げられ;もしそうでなければ、開発に適する特性を有する抗体、例えば、UCHT2は、サルCD3タンパク質と交差反応しない。
【0014】
多くの自己免疫障害の台頭および重症度、ならびに自己抗原に対する免疫応答を調整する際の成熟樹状細胞の役割を考慮すると、そのような障害の基礎となる樹状細胞の活性またはレベルをモジュレートする新規かつ効果的な治療法が当該分野において大いに必要とされる。さらに、免疫系による破壊からそれら自体を保護することが可能である異常細胞(例えば、所定の癌またはウイルス感染(infrected)細胞)によって特徴付けられる障害に対する治療法の必要性が存在する。最後に、NKG2Aに対するモノクローナル抗体のヒトにおける治療能力の有効なインビボ試験システムを見出す必要性も存在する。本発明は、このようなおよび他の必要性に取り組む。
【特許文献1】米国特許公開第2003/0095965号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/105849号パンフレット
【非特許文献1】リューデビッヒ(Ludewig)ら(1999)Immunol Rev.169:45−54
【非特許文献2】オニール(O’Neill)ら(2004年)Blood 104:2235−2246
【非特許文献3】モレッタ(Moretta)ら(2001年)Annu Rev Immunol 19:197−223
【非特許文献4】モレッタ(Moretta)ら(2003年)EMBO J EPub Dec 18
【非特許文献5】ラベッチ(Ravetch)ら(2000年)Science 290:84−89
【非特許文献6】ザンベロ(Zambello)ら(2003年)Blood 102:1797−805
【非特許文献7】モレッタ(Moretta)ら(1997年)Curr Opin Immunol 9:694−701
【非特許文献8】カリー(Kaerre)ら、(1986年)Nature 319:675−8
【非特許文献9】エーレン(Oehlen)ら、(1989年)Science 246:666−8
【非特許文献10】ヤワタ(Yawata)ら(2002年)Crit Rev Immunol 22:463−82
【非特許文献11】マーティン(Martin)ら(2000年)Immunogenetics.51:268−80
【非特許文献12】ラニーア(Lanier)(1998年)Annu Rev Immunol.16:359−93
【非特許文献13】ブラウド(Braud)ら(1998年)Nature 391:795−799
【非特許文献14】リー(Lee)ら(1998年)PNAS 95:5199−5204
【非特許文献15】バンス(Vance)ら(2002年)PNAS 99:868−873
【非特許文献16】ブルックス(Brooks)ら(1999年)J Immunol 162:305−313
【非特許文献17】ミラー(Miller)らJ Immunol(2003年)171:1369−75
【非特許文献18】ブルックス(Brooks)ら(1997年)J Exp Med 185:795−800
【非特許文献19】バン・ベネデン(Van Beneden)ら(2001年)4302−4311
【非特許文献20】ガット(Gatto)(2004年)Curr Med Chem Anti−Canc Agents4(5):411−4
【非特許文献21】カサデバル(Casadevall)ら(2004年)Nat Rev Microbiol.2(9):695−703
【非特許文献22】ヒノダ(Hinoda)ら(2004年)Cancer Sci.95(8):621−5
【非特許文献23】オルシュウィスキー(Olszewski)ら(2004年)Sci STKE.Jul06(241):pe30
【非特許文献24】コイフェル(Coiffier)(2004年)Hematol J.補遺3:S154−8
【非特許文献25】ローク(Roque)ら(2004年)Biotechnol Prog.20(3):639−54
【非特許文献26】Genbank ID GI:116013および20981680
【非特許文献27】シャルマ(Sharma)ら(2000年)JPET 293:33−41,2000
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、NKG2A受容体に対して指向されたモノクローナル抗体およびそのフラグメントを提供する。本発明のモノクローナル抗体およびそのフラグメントは、通常感受性の標的細胞を溶解するNK細胞の能力を阻害してもよく(「NK細胞阻害抗体」)またはそれ以外の保護された標的細胞を溶解するNK細胞の能力を再構成してもよい(「NK細胞活性化抗体」)。本発明のモノクローナル抗体およびそのフラグメントの機能は、Fc受容体に結合するそれらの能力に依存する。
【0016】
Fcγ受容体のようなFc受容体は、白血球の表面上において発現される。これらの受容体は、免疫グロブリン(Ig)のFc部分に結合し、例えば、Fcγ受容体はIgGのFc部分に結合する。この結合は、抗体による抗原の認識と細胞に基づくエフェクター機構とを結び付けることによって免疫機能に寄与することに役立つ。異なる免疫グロブリンクラスは、免疫グロブリンFc領域と免疫細胞上の特異的Fc受容体(FcR)との特異な相互作用を介して、異なるエフェクター機構を誘発する。活性化Fcγ受容体には、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIC、およびFcγRIIIAが含まれる。FcγRIIBは、抑制性Fcγ受容体と考えられる。(レビューのために、例えば、ウフ(Woof)ら(2004年)Nat Rev Immunol.4(2):89−99、バウマン(Baumann)ら(2003年)Arch Immunol Ther Exp (Warsz)51(6):399−406;パン(Pan)ら(2003年)Chin Med J(Engl)116(4):487−94;タカイ(Takai)ら(1994年)Cell76:519−529;ラヴェチ(Ravetch)ら(2001年)Annu Rev Immunol 19:275−290(そのそれぞれの開示内容全体は参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。
【0017】
理論にとらわれずに述べると、本発明者らは、本発明の抗体およびフラグメントにFc受容体結合領域が存在すると、Fc受容体を有する細胞の存在下で、NK細胞溶解の阻害が引き起こされると考えている。Fc受容体結合領域を欠くそれらの抗体およびフラグメントは、それらの細胞表面においてHLA−EまたはQa1を有する標的細胞のNK細胞溶解を再構築することが可能である。そのような標的細胞は、典型的に、HLA−EまたはQa1とNKG2A受容体との相互作用を介するNK細胞溶解に対して保護される。
【0018】
本発明はまた、本発明の抗体およびフラグメントを含んでなる組成物、ならびに異なる疾患および障害を処置するためのそのような組成物を利用する治療方法を提供する。本発明は、ヒトNKG2Aに対する抗体またはそのフラグメントの活性、毒性および適切な投与規則を評価ならびに特徴付けするために非ヒト霊長類を使用するための方法をさらに提供する。
【0019】
従って、1つの態様では、本発明は:a)NKG2Aに特異的に結合すること;b)Fc受容体には特異的に結合しないこと;およびc)ヒトNK細胞上のNKG2Aに結合する場合、前記NK細胞に、標的細胞表面にHLA−EまたはQa1bを有する標的ヒト細胞を溶解させることであって、前記標的細胞は前記NK細胞に接触すること、を特徴とするモノクローナル抗体またはそのフラグメントである活性化抗体を提供する。好ましくは、モノクローナル抗体またはフラグメントは、他のヒトNKG2受容体、具体的には、活性化受容体NKG2CまたはNKG2Eに結合しない。本発明の抗体またはフラグメントがZ199もしくはZ270から選択される抗NKG2モノクローナルと完全に競合することが、さらにより好適である。
【0020】
1つの好適な実施態様では、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは非ヒト霊長類NKG2Aに結合することが可能である。非ヒト霊長類NK細胞上のNKG2Aに結合する際、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、標的細胞が前記NK細胞に接触する場合に前記標的細胞表面上にHLA−Eを有する標的非ヒト霊長類細胞の溶解を再構成する能力を有することが、さらにより好適である。
【0021】
別の好適な実施態様では、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、Z270の可変重鎖領域またはZ270の可変軽鎖領域のアミノ酸配列を含んでなる。代替的に好適な実施態様では、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、Z199の可変重鎖領域またはZ199の可変軽鎖領域のアミノ酸配列を含んでなる。
【0022】
なお別の好適な実施態様では、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、Fc受容体への結合を防止するように改変されているマウスもしくはヒトIgG定常領域、またはヒトIgG定常領域を含んでなる。
【0023】
別の好適な実施態様では、抗体またはフラグメントはキメラもしくはヒト化されたものである。ch270VKもしくはch270VHを含んでなる抗体またはそのフラグメントが、より好適である。
【0024】
別の実施態様では、そのフラグメントの抗体は、そのバイオアベイラビリティまたはインビボでの安定性を増強するように誘導体化される。別の実施態様では、抗体はPEGで誘導体化される。
【0025】
本発明の活性化抗体およびフラグメントは、NK細胞媒介溶解に対して通常耐性である所定の標的細胞の溶解を再構成するのに有用である。従って、別の実施態様では、本発明は、NK細胞および標的細胞を含んでなる集団における前記標的細胞のNK細胞媒介溶解を再構成する方法であって、ここで、前記NK細胞は、その表面上のNKG2Aによって特徴付けられ、そして前記標的細胞は、その表面上のHLA−EまたはQa1の存在によって特徴付けられ、前記NK細胞と上記のモノクローナル抗体またはフラグメントとを接触させる工程を含んでなる方法を提供する。好ましくは、標的細胞はヒト細胞である。より好ましくは、標的細胞は、樹状細胞(「DC」)、癌細胞またはウイルス感染細胞である。最も好ましくは、標的は成熟樹状細胞(「mDC」)である。
【0026】
活性化抗体およびそのフラグメントは、薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤をさらに含んでなる組成物に処方されていてもよい。そのような組成物は、薬学的投与に適切であるように処方されていてもよい。医薬組成物は、場合により、処置する特定の疾患または病態に有用な第2の治療用薬剤を含んでもよい。そのようなすべての組成物もまた、本発明の一部である。
【0027】
本発明の活性化抗体組成物を利用して、患者において、自己免疫(atuoimmune)もしくは炎症性障害、または免疫応答を処置または防止してもよく;あるいは患者において、その表面上においてHLA−EまたはQa1を発現する癌細胞の存在によって特徴付けられる癌、またはその表面上においてHLA−EまたはQa1を発現するウイルス感染細胞の存在によって特徴付けられるウイルス性疾患を処置してもよい。これらの方法は、処置する特定の疾患または病態に有用な第2の治療用薬剤を患者に投与する工程をさらに含んでもよい。第2の治療用薬剤は、個別の剤形としてまたは前記組成物の一部としていずれで投与してもよい。
【0028】
1つの実施態様では、本発明の活性化抗体またはフラグメントを含んでなる組成物ならびに該活性化抗体またはフラグメントを利用する方法における第2の治療用薬剤は、NKp30、NKp44、およびNKp46のようなNK細胞受容体の活性化を作動する化合物である。別の実施態様では、第2の治療用薬剤は、インヒビターKIR受容体のような抑制性NK細胞受容体のアンタゴニストである。別の実施態様では、第2の治療用薬剤はTGF−β1のアンタゴニストである。別の実施態様では、第2の治療用薬剤は、サイトカインインヒビター、造血成長因子、鎮痛剤、インスリン、抗炎症剤、および免疫抑制薬よりなる群から選択される。別の実施態様では、第2の治療用薬剤は、抗癌化合物または制吐剤である。別の実施態様では、第2の治療用薬剤は抗ウイルス化合物である。
【0029】
別の実施態様では、防止もしくは処置しようとする自己免疫または炎症性障害は、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、結節性多発動脈炎、全身性エリテマトーデス、ウェゲナー肉芽腫症、アルツハイマー病、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、クローン病、原発性胆汁性肝硬変(primary bilary cirrhosis)、強皮症、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、1型糖尿病、ぶどう膜炎、グレーブス病、甲状腺炎、1型糖尿病、心筋炎、リウマチ熱、強皮症、強直性脊椎炎、関節リウマチ、糸球体腎炎、サルコイドーシス、皮膚筋炎、重症筋無力症、多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、円形脱毛症、天疱瘡/類天疱瘡、乾癬、および白斑よりなる群から選択される。
【0030】
別の態様では、本発明は:a)NKG2Aに特異的に結合すること;b)Fc受容体に特異的に結合すること;c)NKG2CもしくはNKG2Eには結合しないこと;d)Z270もしくはZ199との完全な競合;e)NK細胞感受性標的細胞のNK細胞溶解を阻害することが可能であることによって特徴付けられる阻害モノクローナル抗体またはその阻害フラグメントを提供し、ここで、前記架橋モノクローナル抗体はZ199ではない。1つの好適な実施態様では、阻害抗体は非ヒト霊長類NKG2Aに結合することをさらに特徴とする。
【0031】
より好適な実施態様では、阻害抗体またはそのフラグメントは、Z270の可変軽鎖領域またはZ270の可変重鎖領域のアミノ酸配列を含んでなる。最も好適な実施態様の1つでは、抗体はZ270である。
【0032】
別の好適な実施態様では、阻害抗体またはフラグメントはキメラもしくはヒト化である。ch270VKもしくはch270VHを含んでなる阻害抗体またはその阻害フラグメントが、より好適である。別の最も好適な実施態様では、抗体はchZ270またはZ270である。
【0033】
別の実施態様では、本発明は、有効量の上記の阻害抗体もしくはその阻害フラグメント、またはZ199;および薬学的に許容可能なキャリアもしくは賦形剤を含んでなる組成物を提供する。これらの阻害抗体組成物は、好ましくは、医薬用途のために処方される。
【0034】
本発明の阻害抗体組成物は、場合により、他の細胞の所望されないNK細胞媒介溶解、過剰反応のNK細胞活性、または所望されないNK細胞増殖によって特徴付けられる疾患または病態を処置するのに有用な第2の治療用薬剤(therapuetic agent)を含んでなる。そのような第2の治療用薬剤(therapuetic agent)は、例えば、サイトカイン、抗癌化合物(例えば、化学療法化合物(chemotherapuetic compound)、抗血管新生化合物(anti−angioenic compound)、アポトーシス促進化合物、ホルモン剤、DNA複製、有糸分裂および/もしくは染色体分離を妨害する化合物、またはポリヌクレオチド前駆体の合成および正確性を崩壊する薬剤)、補助化合物、抑制性NK細胞受容体を刺激することが可能な化合物(例えば、天然のリガンド、CD94/NKG2A受容体の活性を刺激することができる抗体もしくは小分子、またはKIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR3DL1、およびKIR3DL2のような抑制性KIR受容体)、あるいは活性化NK細胞受容体(例えば、NKp30、NKp44、またはNKp46)のインヒビターから選択され得る。
【0035】
本発明の阻害抗体およびフラグメントは、細胞のNK細胞媒介溶解を減少する方法において利用してもよい。あるいは、本発明の阻害抗体およびフラグメントは、細胞集団におけるNK細胞の数を減少する方法において利用してもよい。これらの方法の両方とも、前記NK細胞と、インヒビターモノクローナル抗体またはフラグメントとを接触させる工程を含んでなる。
【0036】
阻害抗体を含んでなる薬学的に適切な本発明の組成物は、他の細胞の所望されないNK細胞媒介溶解、過剰反応のNK細胞活性、もしくは所望されないNK細胞増殖によって特徴付けられる病態または障害を患う患者を処置あるいは防止する方法において用いてもよく、前記方法は、前記組成物を患者に投与する工程を含んでなる。そのような1つの病態はNK−LDGLである。NK−LDGL(NK型顆粒リンパ球増多症;あるいはNK−LGLと呼ばれる)は、NK細胞またはNK様細胞、即ち、表面抗原発現(例えば、CD3−、CD56+、CD16+など;例えば、ラフラン(Loughran)(1993年)Blood82:1を参照のこと)の特徴的組み合わせを示す大顆粒リンパ球のクローン発現によって引き起こされる増殖性障害のクラスを指す。
【0037】
代替的実施態様では、本発明の阻害抗体を利用する方法のいずれも、第2の治療用薬剤を前記患者に投与するさらなる工程を含んでなり得る。本発明の阻害抗体組成物は、場合により、他の細胞の所望されないNK細胞媒介溶解、過剰反応のNK細胞活性、または所望されないNK細胞増殖によって特徴付けられる疾患または病態を処置するのに有用な第2の治療用(therapuetic)薬剤を含んでなる。そのような薬剤の例は上記に記載されている。第2の治療用薬剤は、個別の剤形としてまたは阻害抗体またはフラグメント組成物の成分として投与され得る。
【0038】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体またはそのフラグメントのいずれか1つもしくはそれ以上を含んでなるキットを提供する。典型的に、キットはまた、本発明の方法に従う抗体を使用するための指示書を含んでなる。関連の実施態様では、キットは、個別の容器において、多様な疾患もしくは病態の処置または防止における活性化あるいは阻害抗体またはフラグメントのいずれかとの共同での使用のための上記のいずれかのような第2の治療用薬剤をさらに含んでなる。
【0039】
別の態様に従えば、本発明は:a)前記抗体と、その表面上のNKG2Aによって特徴付けられる非ヒト霊長類細胞、または非ヒト霊長類NKG2Aポリペプチドとを接触させる;およびb)前記細胞もしくはポリペプチドに結合するかまたはその活性に影響を及ぼす前記抗体の能力を評価する工程を含んでなる、ヒトNKG2Aに対する抗体を評価する方法を提供する。関連の実施態様では、方法は活性化抗体を評価するために使用され;前記抗体は、非ヒト霊長類NK細胞および標的細胞を含んでなる細胞集団と接触され、ここで、前記NK細胞はその表面上のNKG2Aによって特徴付けられ、そして前記標的細胞はその表面上のHLA−Eの存在によって特徴付けられ、そして前記評価工程は前記標的細胞が溶解されるかどうかを決定する。
【0040】
別の実施態様では、本発明は、ヒトの疾患処置における使用に適切な抗体を産生させる方法を提供し、前記方法は次を含んでなる:a)ヒトNKG2Aを含んでなる組成物で非ヒト哺乳動物を免疫する工程;b)NKG2Aに結合するが、NKG2CまたはNKG2Eに結合しないモノクローナル抗体を選択する工程;c)前記抗体をヒトにおける使用に適切にする工程;d)非ヒト霊長類に前記抗体を投与する工程;ならびにe)前記霊長類においてインビボでNKG2Aに結合する前記抗体の能力および前記抗体に対する前記霊長類の忍容性を評価する工程。抗体が結合し、前記非ヒト霊長類に忍容される場合、それは、前記抗体がヒトの疾患処置における使用に適切であることを示す。好適な実施態様では、方法は、工程dの前にFc受容体に結合しないように前記抗体を改変するさらなる工程を含んでなる。
【0041】
本発明はまた、この方法によって産生される抗体も提供する。
【0042】
なお別の実施態様では、ヒトNKG2Aに対して指向された治療用抗体に適切な投与規則を同定する方法を提供し、前記方法は次を含んでなる:a)前記抗体の用量または回数が変更される一連の投与規則を使用して、前記抗体を非ヒト霊長類に投与する工程;ならびにb)前記非ヒト霊長類におけるNKG2A発現細胞の活性および前記投与規則のそれぞれについての前記霊長類の忍容性を決定する工程。一旦、規則が前記霊長類に忍容され、NKG2A発現細胞の前記活性における検出可能なモジュレーションをもたらすことが決定されると、該投与規則はヒトにおける使用に適切であるとみなされる。
【0043】
代替的実施態様に従えば、本発明は:a)抑制性または活性化抗体、およびb)細胞障害性薬剤を含んでなるコンジュゲートを提供する。得られるコンジュゲートは、NK細胞を死滅させるために使用される。従って、活性化抗体のみによって達成される該細胞の活性化とは対照的に、活性化抗体と細胞障害性薬剤とのコンジュゲーションにより、NK細胞を死滅させる分子が産生される。本発明の細胞毒素/抗体コンジュゲートは、組成物に処方して、本発明の阻害抗体に類似の様式における方法で使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
緒論
本発明は、それらの細胞表面上にHLA−EまたはQa1を発現する細胞の存在によって特徴付けられる標的細胞のNK細胞媒介溶解を活性化するNKG2Aに対する新規の抗体、治療用途のために該抗体を産生させ、評価し、特徴付けるための方法;ならびに自己免疫または炎症性障害および樹状細胞のようなそれらの細胞表面上にHLA−EまたはQa1を発現する細胞の存在によって特徴付けられる他の病態の処置のために該抗体を含んでなる組成物および該抗体を使用する方法を提供する。本発明は、部分的に、NKG2Aが多くのNK細胞による成熟樹状細胞の溶解を阻害するための主因を有するという驚くべき発見に基づく。成熟樹状細胞は、NK細胞上に存在するNKG2A受容体を介して作用し、樹状細胞の標的化を阻害する有意なレベルのHLA−Eを発現する。従って、以下の理論にとらわれずに述べると、NK細胞のNKG2A媒介阻害を阻止することは、NK細胞による樹状細胞標的化の増加をもたらし、それによって、自己免疫または炎症性障害あるいは樹状細胞、特に、成熟樹状細胞の活性を減少することによって緩和もしくは治癒され得る実にあらゆる病態の有効な処置を提供すると考えられる。従って、本発明はまた、より一般的には、哺乳動物における樹状細胞、好ましくは、成熟樹状細胞の数を阻害または減少させる、ならびに一般的に、免疫応答、好ましくは、自己反応性免疫応答を減少させるような方法を提供する。
【0045】
逆に言えば、本発明はまた、標的細胞のNK細胞媒介溶解を阻害するNKG2Aに対する新規の抗体、治療用途のための該抗体を産生させ、評価し、特徴付ける方法;ならびに自己免疫障害または移植拒絶の処置のための該抗体を含んでなる組成物および該抗体を使用する方法を提供する。
【0046】
定義
本明細書において使用される以下の用語は、他で指定しない限り、それらに帰属する意味を有する。
【0047】
明細書に記載の「NK」細胞は、従来にない免疫に関与するリンパ球のサブ集団を指す。NK細胞は、CD16、CD56、および/またはCD57を含む特異的表面抗原の発現、細胞表面におけるα/βまたはγ/δTCR複合体の不在、特定の細胞溶解性酵素の活性化により、「自己の」MHC/HLA抗原を発現することができない細胞に結合して死滅させる能力、腫瘍細胞またはNK活性化受容体に対するリガンドを発現する他の罹患した細胞を死滅させる能力、ならびに免疫応答を刺激または阻害するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力のような所定の特徴ならびに生物学的特性によって同定することができる。当該分野において周知の方法を使用してNK細胞を同定するために、これらの特徴および活性のいずれかを使用することができる。
【0048】
樹状細胞は、骨髄において産生される異種集団の免疫細胞である(例えば、オニール(O’Neill)ら(2004年)Blood 104:2235−2246、モハマデゼ(Mohamadzadeh)ら(2004年)J Immune Based Ther Vaccines.2004;2:1を参照のこと;その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)。本明細書において言及されるとおり、DCは、DC前駆体、未熟DC、および成熟DCを含むことができる。DC前駆体および未熟DCは、リネージネガティブ(CD3− CD14− CD19− CD56−)HLA−DR+単核細胞である。これらの細胞は、さらに2つの集団、骨髄由来DCおよび形質細胞様DCに分類することができる。骨髄由来DCはCD11c+およびCD123lowであり、単球様外観を呈し、形質細胞様DCは、形質細胞に類似の形態学的特徴を伴うCD11c−およびCD123highである。抗原捕捉後、DCは、捕捉された抗原がペプチドにプロセシングされ、細胞表面上での提示のためにMHCクラスIまたはII上に装填される成熟のプロセスを経験する。成熟DCは、より低い食細胞内への取り込みを示し、ベールと呼ばれる細胞質伸長を有し、リンパ組織へ移動し、CD83およびDC−LAMPのような特徴的マーカーを発現する。TLRもまたDCにおいて発現され、異なるDC型は異なるTLRマーカーを発現する(例えば、オニール(O’Neill)ら(2004年)を参照のこと)。
【0049】
NKG2A(OMIM161555、その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)は、NKG2グループの転写物のグループである(ホーチンス(Houchins)ら(1991年)J.Exp.Med.173;1017−1020)。NKG2Aは、いくつかの他と異なるスプライシングを示す25kbに及ぶ7つのエキソンによってコードされる。NKG2AはNK細胞の表面上において見出される抑制性受容体である。抑制性KIR受容体のように、それは、その細胞質ドメインにおいてITIMを所有する。本明細書において使用する「NKG2A」は、NKG2A遺伝子またはコードされるタンパク質の任意の変種、誘導体、もしくはアイソフォームを指す。また、野生型、全長NKG2Aと1つもしくはそれ以上の生物学的特性または機能を共有し、少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸同一性を共有する任意の核酸あるいはタンパク質配列も包含する。NKG2Aはまた、本開示全般を通して「NKG2A受容体」とも称される。
【0050】
NKG2C(OMIM602891、その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)およびNKG2E(OMIM602892、その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)は、NKG2グループの転写物の他の2つのメンバーである(ギレンケ(Gilenke)ら(1998年)Immunogenetics48:163−173)。NKG2CおよびNKG2EはNK細胞の表面上において見出される活性化受容体である。本明細書において使用する「NKG2C」および「NKG2E」は、NKG2CもしくはNKG2E遺伝子あるいはそれぞれコードされるタンパク質の任意の変種、誘導体、またはアイソフォームを指す。また、野生型、全長NKG2CまたはNKG2Eと1つもしくはそれ以上の生物学的特性または機能を共有し、開示される遺伝子またはコードされるタンパク質と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸同一性を共有する任意の核酸あるいはタンパク質配列も包含する。
【0051】
CD94(OMIM602894、その開示内容全体はそのすべてが参照により本明細書に援用される)。CD94、NK細胞上において好適に発現される抗原(チャン(Chang)ら(1995年)Europ.J.Immun.25:2433−2437)。CD94は、NK細胞系統において0.8、1.8、および3.5kbの3つの多数の転写物および5.5kbの少数の転写物として発現され、147アミノ酸細胞外ドメインおよびC−型レクチンに特徴的ないくらかのモチーフを伴うタンパク質をコードする。CD94のアミノ酸配列は、NKG2ファミリーメンバーNKG2A、NKG2C、NKG2D、およびNKG2Eのそれらに対して27〜32%同一である。細胞質ドメインの実際上の不在のため、CD94は、NKG2A、NKG2C、およびNKG2Eとジスルフィド結合型ヘテロダイマーを形成する他の受容体との会合を必要とする(ラゼティック(Lazetic)ら(1996年)J.Immun.157:4741−4745。本明細書において使用する「CD94」は、CD94遺伝子またはコードされるタンパク質の任意の変種、誘導体、もしくはアイソフォームを指す。また、野生型、全長CD94と1つもしくはそれ以上の生物学的特性または機能を共有し、少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸同一性を共有する任意の核酸あるいはタンパク質配列も包含する。
【0052】
HLA−E(OMIM143010、その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)は、細胞表面上に発現され、他のMHCクラスI分子のシグナル配列から誘導されるペプチドの結合によって調節される非古典的MHC分子である。HLA−Eは、ナチュラルキラー(NK)細胞ならびにいくつかのT細胞に結合して、CD94/NKG2A、CD94/NKG2B、およびCD94/NKG2Cに特異的に結合するが、抑制性KIR受容体には結合しない(例えば、OMIM604936(その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)を参照のこと)(例えば、ブラウド(Braud)ら(1998年)Nature391:795−799(その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。HLA−Eの表面発現は、CD94/NKG2A+NK細胞クローンによる溶解から標的細胞を保護するのに十分である。本明細書において使用する「HLA−E」は、HLA−E遺伝子またはコードされるタンパク質の任意の変種、誘導体、もしくはアイソフォームを指す。また、野生型、全長HLA−Eと1つもしくはそれ以上の生物学的特性または機能を共有し、少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸同一性を共有する任意の核酸あるいはタンパク質配列も包含する。
【0053】
Qa1は、NKG2Aのための生理学的リガンドであるマウス細胞表面抗原である。本明細書において使用する「Qa1」は、Qa1遺伝子またはコードされるタンパク質の任意の変種、誘導体、もしくはアイソフォームを指す。また、野生型、全長Qa1と1つもしくはそれ以上の生物学的特性または機能を共有し、少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸同一性を共有する任意の核酸あるいはタンパク質配列も包含する。
【0054】
「自己免疫」障害は、自己と非自己もしくは他のものとを識別する能力の破壊のため、免疫系が自己の細胞または組織に対する反応を展開する任意の障害、病態、あるいは疾患を含む。自己免疫障害の例として、橋本病、悪性貧血、アジソン病、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ライター症候群、グレーブス病、多発性筋炎、ギラン・バレー、ウェゲナー肉芽腫症(Wegener’s granulomatosus)、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、側頭動脈炎、ベーチェット病(Bechet’s disease)、チャーグ・ストラウス症候群、高安動脈炎などが挙げられる。「炎症性障害」は、消耗されない免疫応答によって特徴付けられる任意の障害を含む。自己免疫および炎症性障害は、免疫系の任意の成分に関与し得、身体の任意の細胞または組織型を標的化し得る。
【0055】
NKG2A活性に関して、用語「阻害する」、「減少する」、「阻止する」、「ダウンモジュレートする」および「ダウンレギュレートする」は、細胞、好ましくは、NK細胞上のNKG2A受容体の刺激もしくは発現を減速、減少、逆転、または任意の方法でネガティブに影響を及ぼす任意のプロセス、方法、あるいは化合物を指す。これらの用語は、リガンドの非存在下でアンタゴニストのように作用して、受容体の活性を減少するか、受容体の発現レベルを減少するか、NKG2Aによって誘発されるシグナル伝達もしくは遺伝子発現を阻止するか、またはNKG2A活性化から生じる細胞の他の任意の活性を阻止するリガンドによってNKG2Aの刺激を阻害する化合物を指し得る。好適な実施態様では、阻害化合物または方法は、リガンド、例えば、HLA−Eによる受容体の結合を防止する。NKG2A受容体分子の数または上記の活性のいずれも、例えば、本出願において他に開示されているような任意の標準的な方法で測定することができる。
【0056】
本明細書において使用する用語「抗体」は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を指す。重鎖の定常ドメインのタイプに依存して、抗体は、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMのうちの1つに割り当てられる。これらのうちのいくらかは、さらに、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのようなサブクラスまたはイソタイプに分けられる。例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含んでなる。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一な対よりなり、各対は、1本の「軽」(約25kDa)および1本の「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識を担う約100〜110もしくはそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定する。用語「可変軽鎖(VL)」および「可変重鎖(VH)」は、それぞれ、これらの軽および重鎖を指す。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ「α」、「δ」、「ε」、「γ」および「μ」と呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元構造が周知である。IgGおよび/またはIgMは生理学的状況において最も一般的な抗体であるため、およびそれらは実験施設において最も容易に作製されるため、それらは本発明において用いられる好適なクラスの抗体であり、IgGが特に好適である。
【0057】
好ましくは、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。ヒト化、キメラ、ヒト、またはそれ以外のヒトに適切な抗体が特に好適である。用語「抗体」はまた、本開示物に関して、そのような包含が重複を引き起こす場合(例えば、「抗体またはそのフラグメント」に対する具体的言及)を除いて、本明細書に記載の抗体のいずれかの任意のフラグメントまたは誘導体を含む。1つの好適な実施態様では、抗体は非枯渇化抗体であり、それらは、NK細胞に結合し、NKG2A刺激を阻害する(それらの細胞表面上にHLA−EまたはQa1を有する細胞の溶解をもたらす)が、NKG2A発現細胞の死滅をもたらさないことを意味する。非枯渇化抗体または抗体フラグメントは、IgG4抗体、Fc部分を欠く抗体フラグメント、あるいはそのFcテイルがFc受容体による結合を減少もしくは排除するように改変されている他の任意の抗体のようなFc受容体によって認識されないか、またはごく僅かにしか認識されないものである(例えば、国際公開第03101485号パンフレット(その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。
【0058】
別の好適な実施態様では、抗体または抗体フラグメントはFc受容体に結合する。そのような抗体およびフラグメントは、NKG2A分子の架橋を引き起こし、NK細胞活性の阻害、およびいくつかの場合、NK細胞死をもたらす。
【0059】
用語「特異的に結合する」は、抗体が、好ましくは、競合結合アッセイにおいて、結合パートナー、例えば、NKG2Aに結合することができることを意味し、組換え形態のタンパク質、その中のエピトープ、または単離されたNKもしくは他の細胞の表面上に存在する生来のタンパク質のいずれか一方を使用して評価される。競合結合アッセイおよび特異的結合を決定するための他の方法については、以下においてさらに説明するものとし、当該分野において周知である。
【0060】
「ヒトに適切な」抗体は、例えば、本明細書に記載の治療的方法において、ヒトにおいて安全に使用することができる任意の抗体、誘導体化された抗体、または抗体フラグメントを指す。ヒトに適切な抗体は、ヒト化、キメラ、または完全なヒト抗体、あるいは抗体の少なくとも一部が、ヒトから誘導されるか、もしくはそうでなければ、生来の非ヒト抗体が使用される場合に一般に惹起される免疫応答を回避するように改変される任意の抗体のすべてのタイプを含む。
【0061】
本発明の目的のために、「ヒト化」抗体は、1つもしくはそれ以上のヒト免疫グロブリンの定常および可変フレームワークが、結合領域、例えば、動物免疫グロブリンのCDRと融合されている抗体を指す。そのようなヒト化抗体は、結合領域が、非ヒト抗体に対する免疫反応を回避するように誘導される非ヒト抗体の結合特異性を維持するように設計される。
【0062】
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が異なるもしくは改変されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域、または新たな特性をキメラ抗体に付与する全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物などに連結されるように、定常領域、またはその部分が改変、置き換え、または交換されるか;あるいは(b)可変領域、またはその部分が、異なるもしくは改変された抗原特異性を有する可変領域で改変、置き換え、または交換される抗体分子である。
【0063】
「ヒト」抗体は、抗原チャレンジに応答して特異的ヒト抗体を産生するように「操作」されているトランスジェニックマウスまたは他の動物から得られる抗体である(例えば、グリーン(Green)ら(1994年)Nature Genet7:13;ロンベルグ(Lonberg)ら(1994年)Nature368:856;テイラー(Taylor)ら(1994年)Int Immun6:579(これらの教示内容全体は参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。十分なヒト抗体はまた、遺伝子または染色体トランスフェクション方法、ならびにファージディスプレイ技術(これらのすべては当該分野において公知である)によっても構築することができる(例えば、マキャフェルティー(McCafferty)ら(1990年)Nature348:552−553を参照のこと)。ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞(例えば、米国特許第5,567,610号明細書および同第5,229,275号明細書(それらの全体が参照により援用される)を参照のこと)によって作製することができる。
【0064】
本発明では、「活性な」または「活性化された」NK細胞は、生物学的に活性なNK細胞、より詳細には、標的細胞を溶解する能力を有するNK細胞を表す。例えば、「活性な」NK細胞は、NK活性化受容体−リガンドを発現し、「自己の」MHC/HLA抗原(KIR不適合細胞)を発現することができない細胞を死滅させることが可能である。そのような細胞は、本明細書において、「NK細胞感受性標的細胞」とも称される。再指向性死滅アッセイ(redirected killing assay)における使用に適切であるそのような標的細胞の例には、P815およびK562細胞がある。しかし、任意の多くの細胞型を使用することができ、当該分野において周知である(例えば、シボリ(Sivori)ら(1997年)J.Exp.Med.186:1129−1136;バイタレ(Vitale)ら(1998年)J.Exp.Med.187:2065−2072;ペッシノ(Pessino)ら(1998年)J.Exp.Med.188:953−960;ネリ(Neri)ら(2001年)Clin.Diag.Lab.Immun.8:1131−1135を参照のこと)。「活性な」または「活性化された」細胞はまた、遊離の細胞内カルシウムレベルの増加のサイトカイン(例えば、IFN−γおよびTNF−α・産生・のようなNK活性に関連する分野において公知の他の任意の特性もしくは活性によっても同定することができる。本発明の目的のために、活性化されたNK細胞は、理想的には、NKG2A受容体が刺激されず、NCR、好ましくは、NKp30が刺激され、それによって、成熟樹状細胞に対する細胞の細胞障害性をもたらすNK細胞を指す。
【0065】
本明細書において使用する用語「NKG2A刺激」は、NKG2Aがその天然のリガンド(例えば、HLA−EまたはQa1)またはその機能的フラグメントに結合する場合、NKG2A、例えば、NK細胞を有する細胞において生じるプロセスを指す。NKG2Aは抑制性受容体であるため、そのような結合はNK細胞活性の阻害を引き起こすことができる。従って、「NKG2A刺激の阻害」は、NKG2Aのその天然のリガンドまたはその機能的フラグメントへの結合が減少されるかもしくは防止されるプロセスを指し、ここで、結合が生じるが、NK細胞活性の阻害は引き起こさない。
【0066】
従って、NKG2Aに対する抗体に関して本明細書において使用する用語「活性化抗体」は、NK細胞上のNKG2Aへの結合を介して、NKG2Aと標的細胞上のその天然のリガンド(例えば、HLA−EもしくはQa1)との会合を防止するか、またはHLA−Eポジティブ標的によって通常媒介されるNKG2A依存性シグナル伝達を防止し、それ故に、NKG2Aとリガンドとの会合によって引き起こされるNK細胞による標的細胞の溶解の阻害を逆転する抗体を意味することが意図される。従って、活性化抗体はNKG2A刺激の阻害を引き起こす。
【0067】
NKG2Aに対する抗体に関して本明細書において使用する用語「阻害抗体」は、NK細胞上のNKG2Aへの結合を介して、そうでなければ溶解される細胞を溶解するNK細胞の能力の阻害を引き起こす抗体を意味することが意図される。本発明の阻害抗体は、典型的に、NK細胞においてNKG2A分子の架橋を引き起こし、該NK細胞の阻害、そして時々死をもたらす。本発明のNKG2Aに対する阻害抗体は、NKG2Aと、その天然のリガンドまたはその活性なフラグメントとの会合を防止し得るが、細胞を溶解するNK細胞の能力は抗体によって阻害されているため、天然のリガンドを有する細胞の溶解は生じないことに留意すべきである。
【0068】
用語「単離された」、「精製された」または「生物学的に純粋な」は、その生来の状態において見出されるように、通常、材料に伴う成分を実質的または本質的に含まない材料を指す。純度および均質度は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーのような分析化学技術を使用して、典型的に決定される。調製物に存在する優勢な種であるタンパク質が実質的に精製される。
【0069】
本明細書において使用する用語「生物学的サンプル」として、生物学的液体(例えば、血清、リンパ、血液)、細胞サンプルまたは組織サンプル(例えば、骨髄)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は交換可能に使用され、アミノ酸残基の高分子を指す。該用語は、1つもしくはそれ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学類似物であるアミノ酸高分子、ならびに天然に存在するアミノ酸高分子および天然に存在しないアミノ酸高分子に当てはまる。
【0071】
例えば、細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用される場合の用語「組換え」は、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入または生来の核酸またはタンパク質の改変によって改変されていること、あるいは、細胞が、そのようにして改変された細胞から誘導されることを示す。従って、例えば、組換え細胞は、該細胞の生来の(非組換え)形態内において見出されない遺伝子を発現するか、または他の点で異常に発現されるか、不十分に発現されるか、もしくは全く発現されない生来の遺伝子を発現する。
【0072】
用語「と競合する」は、特定のモノクローナル抗体(例えば、Z199もしくはZ270)について言及する場合、組換えNKG2A分子または表面発現NKG2A分子のいずれかを使用する結合アッセイにおいて、試験する抗体またはそのフラグメントが、該参照モノクローナル抗体(例えば、Z199もしくはZ270)のNKG2Aへの結合を(該参照モノクローナル抗体およびNKG2Aを含んでなるが、試験抗体を欠くコントロールと比較して)減少することを意味する。例えば、抗体が、結合アッセイにおけるZ270のヒトNKG2A分子への結合を減少する場合、抗体はヒトNKG2A分子への結合についてZ270と「競合」する。
【0073】
本明細書において使用する用語「と完全に競合する」は、試験抗体が、参照モノクローナルと実質的または本質的に同じエピトープに結合することを意味する。
【0074】
本明細書において使用する「有効量」は、所望される結果を達成または促進するために必要もしくは十分である任意の量を指す。いくつかの場合、有効量は治療有効量である。治療有効量は、被験体において所望される生物学的応答を促進または達成するために必要もしくは十分な任意の量である。任意の特定のアプリケーションのための有効量は、処置する疾患または病態、投与する特定の薬剤、被験体のサイズ、または疾患または病態の重症度のような因子に依存して変動し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定の薬剤の有効量を経験的に決定することができる。
【0075】
非ヒト霊長類という用語は、類人猿、新世界ザル、旧世界ザル、原猿類、Pongo pygmaeus pygmaeus(ボルネオ・オランウータン)、Pongo pygmaeus abelii(スマトラ・オランウータン)、Gorilla gorilla(ニシローランドゴリラ)、Pan paniscus(ボノボ)、Pan troglodytes(チンパンジー)、Pan troglodytes verus(チンパンジー)、Lemur fulvus(チャイロキツネザル)、Saguinus fuscicollis(シロクチタマリン)、Saguinus labiatus(アカハラタマリン)、Callicebus molloch pallescens(パラグアイ・ティティ(paraguayan titi))、Saimiri sciureus(リスザル)、Ateles geoffroyi(ジェフロイクモザル)、Lagothrix lagotricha(ウーリーモンキー)、Macaca arctoides(ベニガオザル)、Macaca fascicularis(カニクイザル)、Macaca fuscata(ニホンザル)、Macaca mulatta(アカゲザル)、Macaca nemestrina(ブタオザル)、Macaca nigra(セレベスサル)、Erythrocebus patas(パタスモンキー)、ヒヒ、マーモセット、オマキザル、カニクイザル、ホエザル、クモザル、マンドリル、オナガザル、パタスモンキー、コロブス、テナガザル、キツネザル、アイアイ、ロリス、ブッシュベビー、およびメガネザルを含む霊長目内の任意の哺乳動物を含む。好適な実施態様では、本発明において使用される非ヒト霊長類は、類人猿ではなく、例えば、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、またはテナガザル以外の非ヒト霊長類である。本発明の目的のために、非ヒト霊長類を使用して行われると言えるアッセイとして、抗体が霊長類に投与されるインビボアッセイ、例えば、霊長類から採取される細胞が抗体で処置され、霊長類に戻されるエクスビボアッセイ、および霊長類から採取される細胞、タンパク質、または組織に関与するインビトロアッセイを挙げることができる。
【0076】
非ヒト霊長類のような哺乳動物が抗NKG2A抗体の投与規則を「忍容する」と言う場合、それは、副作用が重度でない限りそれらはなお存在し得るけれども、投与が致死性ではなく、動物において任意の重度の副作用を有さないこと、および一般的に、それらより、投与による治療便益性のほうが優ることを意味する。
【0077】
NKG2Aに特異的に結合する化合物を入手すること
本発明は、免疫細胞、好ましくは、NK細胞上のNKG2Aに結合する活性化および阻害抗体の両方、ならびにそれらの同定、産生、評価および使用に関与する。そのような抗体を同定する1つの方法は、NKG2Aに結合することが可能であるそれらを見出すことである。一旦、特異的に結合する抗体が同定されると、例えば、NK細胞上においてNKG2Aを阻害または活性化するそれらの能力について、それらを試験することができる。しかし、そのような結合アッセイを行うことは、本発明の実施には決して必要ではないことが理解されよう。
【0078】
抗体のNKG2Aへの結合を評価するために、多様なアッセイのいずれかを使用することもできる。とりわけ、ELISA、ラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロッティング、BIACORE、および他の競合アッセイに基づくプロトコルは、使用に適切であり、当該分野において周知である。
【0079】
例えば、試験抗体が標的タンパク質またはエピトープ(例えば、NKG2Aもしくはその一部)の存在下でインキュベートされ、結合抗体が洗浄除去され、例えば、放射性標識、質量分析のような物理的方法、または例えば、フローサイトメトリー分析(例えば、FACScan)を使用して検出される直接もしくは間接的蛍光標識を使用して、結合抗体の存在が評価される、簡単な結合アッセイを使用することができる。そのような方法は、当業者に周知である。コントロール、非特異的抗体との間に認められる量を超える結合の任意の量は、抗体が特異的に標的に結合することを示す。
【0080】
そのようなアッセイでは、標的細胞またはヒトNKG2Aに結合する試験抗体の能力を、同じ標的に結合する(ネガティブ)コントロールタンパク質、例えば、構造的に関連のない抗原に対して惹起される抗体、または非Igペプチドもしくはタンパク質の能力と比較することができる。任意の適切なアッセイを使用して、コントロールタンパク質に対して25%、50%、100%、200%、1000%もしくはそれ以上増加した親和性を伴って標的細胞またはNKG2Aに結合する抗体あるいはフラグメントは、標的を「特異的に結合する」または「特異的に相互作用する」と言い、下記の治療方法における使用に好適である。
【0081】
1つの実施態様では、NKG2A、例えば、3S9、20d5、Z270もしくはZ199、またはその誘導体に対する(ポジティブ)コントロール抗体の結合に影響を及ぼす試験抗体の能力が評価される。別に、NKG2A、例えば、HLA−Eに対する天然のリガンドの結合に影響を及ぼす試験抗体の能力が評価される。3S9については、米国特許公開第2003/0095965号明細書(その開示内容は参照により本明細書に援用される)に記載されている。3S9は、NKG2CおよびNKG2E、ならびにNKG2Aに結合する。20d5は市販の抗体(BD Biosciences Pharmingen、カタログ番号550518、米国)である。20d5はマウスNKG2A、NKG2EおよびNKG2Cに結合する。Z199は、市販の抗体(Beckman Coulter,Inc.,製品番号IM2750、米国)である。Z270については、本明細書において詳細に記載している。Z270はヒトNKG2Aに特異的に結合するが、ヒトNKG2CまたはNKG2Eには結合しない。
【0082】
さらに、コントロール抗体(例えば、3S9、Z270またはZ199)および試験抗体が混合され(もしくは予め吸着される)、NKG2Aを含有するサンプルに適用される簡単な競合アッセイを用いてもよい。特定の実施態様では、阻害型NKG2A含有サンプルに適用する前のある期間にコントロール抗体と様々な量の試験抗体(例えば、1:10または1:100)とを予め混合し得る。他の実施態様では、コントロールおよび様々な量の試験抗体を、抗原/標的サンプルへの曝露中に簡単に混合することができる。(例えば、非結合抗体を排除するための分離または洗浄技術を使用することによって)結合抗体と遊離抗体および(例えば、種特異的もしくはアイソタイプ特異的第二抗体を使用することによって、検出可能な標識でコントロール抗体を特異的に標識することによって、または異なる化合物間を識別するための質量分析のような物理的方法を使用することによって)コントロール抗体と試験抗体とを識別することができる限り、試験抗体がコントロール抗体の抗原への結合を減少するかどうかを決定し、試験抗体がコントロールと実質的に同じエピトープを認識することを示すことが可能である。
【0083】
上記の競合アッセイでは、完全に関連のない抗体の存在下で(標識される)コントロール抗体の結合は、コントロール高値である。コントロール低値は、標識された(ポジティブ)コントロール抗体(例えば、3S9、Z270またはZ199)を、正確に同じタイプ(例えば、3S9、Z270またはZ199)の非標識抗体と共にインキュベートすることによって得られ、ここで、競合が生じ、標識された抗体の結合を減少する。
【0084】
試験アッセイでは、試験抗体の存在下における標識された抗体反応性の有意な抑制は、同じエピトープ(即ち、標識されたコントロール抗体と「交差反応する」もの)を認識する試験抗体を示す。約1:10〜約1:100の間のコントロール:試験抗体の任意の割合で、標識されたコントロールの抗原/標的への結合を、少なくとも50%もしくはより好ましくは70%だけ減少する任意の試験抗体または化合物は、コントロールと実質的に同じエピトープもしくは抗原決定基に結合する抗体または化合物とみなされる。好ましくは、そのような試験抗体または化合物は、コントロールの抗原/標的への結合を少なくとも90%だけ減少する。それにもかかわらず、コントロール抗体もしくは化合物の結合を任意の測定可能な程度で減少する任意の化合物または抗体を、本発明において使用することができる。
【0085】
問題のモノクローナル抗体と実質的に同じエピトープに結合する1つもしくはそれ以上の抗体の同定は、抗体の競合を評価することができる様々な免疫学的スクリーニングアッセイを使用して、容易に決定することができる。そのようなアッセイは当該分野において日常的である(例えば、米国特許第5,660,827号明細書(参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。抗体が結合するエピトープを実際に決定するのに、いずれの方法においても、問題のモノクローナル抗体と同じかまたは実質的に同じエピトープに結合する抗体を同定する必要はないことが理解されよう。
【0086】
1つの実施態様では、競合を、フローサイトメトリー試験によって評価することができる。例えば、NKG2A/CD94受容体を有する細胞が、最初に、受容体に特異的に結合することが既知であるコントロール抗体(例えば、3S9、Z270またはZ199)と共に、次いで、例えば、蛍光色素またはビオチンで標識されている試験抗体と共にインキュベートされる。飽和量のコントロール抗体とのプレインキュベーションで得られる結合がコントロールとのプレインキュベーションを伴わない抗体によって得られる結合(蛍光の平均)の80%、好ましくは、50%、40%もしくはそれ以下である場合、試験抗体はコントロールと競合すると言う。あるいは、飽和量の試験抗体と共にプレインキュベートした細胞上の(蛍光色素またはビオチンにより)標識されたコントロールにより得られる結合が、抗体とのプレインキュベーションを伴わずに得られる結合の80%、好ましくは50%、40%、もしくはそれ以下である場合、試験抗体はコントロールと競合すると言う。
【0087】
1つの好適な例では、試験抗体が予め吸着され、抗体結合のための基質、例えば、例えば、NKG2A/CD94受容体、または例えば、3S9によって結合されることが公知であるそのエピトープ含有部分が固定化される表面に、飽和濃度で、適用される簡単な競合アッセイを用いることができる。表面は、好ましくは、BIACOREチップである。次いで、コントロール抗体(例えば、3S9、Z270またはZ199)を、基質飽和濃度で表面と接触させ、コントロール抗体の基質表面結合を測定する。コントロール抗体のこの結合を、試験抗体非存在下でのコントロール抗体の基質含有表面への結合と比較する。試験アッセイでは、試験抗体の存在下における基質含有表面の結合の有意な減少は、試験抗体が同じエピトープ(即ち、コントロール抗体と「交差反応する」もの)を認識することを示す。コントロール抗体の抗原含有基質への結合を、少なくとも30%またはより好ましくは40%だけ減少する任意の試験抗体は、コントロール抗体と実質的に同じエピトープまたは抗原決定基に結合する抗体とみなされる。好ましくは、そのような試験抗体は、コントロール抗体の基質への結合を少なくとも50%だけ減少する。コントロールおよび試験抗体の順序は、逆転させることができ、即ち、コントロール抗体をまず表面に結合させ、その後に、試験抗体を表面に接触させることが理解されよう。予想されるとおり、第二抗体について認められる結合の減少(抗体が交差反応しているものとみなす)は、より大きな大きさになるため、好ましくは、まず、基質抗原に対してより高い親和性を有する抗体を、基質含有表面に結合させる。そのようなアッセイのさらなる例は、サウナル(Saunal)ら、(1995年)J.Immunol.Meth183:33−41(その開示内容は本明細書において参照により援用される)において提供される。
【0088】
好ましくは、NKG2Aを認識する本発明に従うモノクローナル抗体は、自己免疫もしくは炎症性障害を伴う患者における実質的百分率のNK細胞上に存在するエピトープと反応するが、他の細胞、即ち、NKG2Aを発現しない免疫または非免疫細胞とは有意には反応しない。従って、一旦、NK、好ましくは、ヒトNK細胞のような細胞上のNKG2Aを特異的に認識する抗体が同定されると、自己免疫または炎症性障害を伴う患者から採取されるNK細胞に結合するその能力について、それを試験することができる。同様に、本方法は、例えば、NKG2Aの異なるエピトープまたはアイソフォームに対して指向される複数の抗体を使用して、NKG2Aの刺激を最大限に阻害するように設計された方法で、実践することができることが理解されよう。1つの実施態様では、NK細胞および樹状細胞が、抗体または化合物の投与前に患者から採取され、樹状細胞の溶解のNKG2A媒介阻害を克服する試験抗体の能力が評価される。
【0089】
他の抗原(例えば、他の種由来のNKG2A、NKG2C、NKG2E、Fc受容体)への特異的結合または特異的結合の欠如を測定しなければならない本発明のそれらの実施態様では、上記に類似のアッセイを用いて、NKG2Aの代わりに適切な抗原を用い、結合がアッセイされる抗原に特異的であるコントロール抗体を用いてもよい。そのような抗原およびコントロール抗体は当該分野において周知であり、多くが市販されている。
【0090】
NKG2A刺激を阻害する抗体の能力を評価すること
HLA−EまたはQa1によるNKG2A/CD94の刺激を阻害することが可能である本発明の活性化抗体の同定は、一般に、試験抗体の存在下でNKG2A活性を評価するための細胞に基づくアッセイに関与する。いくつかの実施態様では、候補抗体が、最初に、上記のようなNKG2Aに結合するそれらの能力に基づいて同定される。他の実施態様では、細胞に基づくスクリーニングが実施され、それらの結合親和性にかかわらず、NKG2A刺激を阻害することが可能な抗体が直接同定される。
【0091】
1つの実施態様では、NKG2Aのモジュレーターが、米国特許公開第2003/0171280号明細書;ブラウド(Braud)ら(1998年)Nature391:795−799;リー(Lee)ら(1998年)PNAS95:5199−5204;バンス(Vance)ら(2002年)PNAS99:868−873;ブルックス(Brooks)ら(1999年)J Immunol162:305−313;ミラー(Miller)らJ Immunol(2003年)171:1369−75;ブルックス(Brooks)ら(1997年)J Exp Med185:795−800;バン・ベネデン(Van Beneden)ら(2001年)4302−4311;米国特許公開第2003/0095965号明細書(そのそれぞれの開示内容全体は参照により本明細書に援用される)に記載の方法またはアッセイを使用して同定される。
【0092】
1つの実施態様では、本発明の活性化抗体は、リガンドによるNKG2A受容体の刺激を阻害するそれらの能力について評価される。多数のアッセイ、分子、細胞に基づく、および動物に基づくモデルの両方を使用することができる。典型的な実施態様では、細胞、例えば、NKG2Aを発現するNK細胞がNKG2Aリガンド(またはリガンドを発現する細胞)、好ましくは、HLA−Eに曝露され、受容体の刺激を崩壊する抗体の能力が評価される細胞に基づくアッセイが使用される。
【0093】
遺伝子発現に基づく活性、細胞障害性に基づくアッセイ、および増殖アッセイを含むNKG2A活性を評価する多くの細胞に基づくアッセイのいずれを使用することもできる。所定の実施態様では、インビトロアッセイは、細胞、例えば、自己免疫または炎症性障害を伴う患者から採取されるNK細胞を使用するが、一般に、YTSまたはNK−92(ATCCから入手可能)のようなNK細胞系統を含む任意のNKG2A発現細胞を使用することができる。例えば、発現される受容体の刺激が、例えば、シグナル伝達経路を活性化するか、増殖に影響を及ぼすか、もしくは細胞の細胞障害性を改変する検出可能な方法で細胞の活性または特性を改変する限り、細胞系統を、NKG2Aをコードする導入遺伝子でトランスフェクトし、本アッセイで使用することができる。そのようなアッセイでは、NKG2A、CD94、またはHLA−Eの任意のアイソフォーム(例えば、OMIM参照番号161555、602894、および143010(その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)を参照のこと)を、そのようなアッセイ(または本明細書に記載のNKG2Aに関与する他の任意のアッセイもしくは方法)において使用することができることが理解されよう。
【0094】
1つの好適な実施態様では、NKG2A発現細胞、例えば、NK細胞が、HLA−EのようなNKG2Aリガンド、またはNKG2Aリガンドを発現する細胞、好ましくは、樹状細胞と共にインキュベートされ、NK細胞の阻害を阻止する試験化合物の能力が評価される細胞アッセイが使用される。そのようなアッセイでは、樹状細胞の溶解は、それ自体、NK細胞活性の反映として測定することができる。
【0095】
1つの実施態様では、細胞系統は、自己免疫または炎症性障害を伴う患者由来のNK細胞を使用して、確立される。多数の実施態様では、非ヒト細胞あるいは非ヒトNKG2A/CD94、例えば、NKG2A/CD94を発現する非ヒト霊長類細胞、または適切なリガンド(例えば、マウスの場合、Qa−1)の封入を伴うマウスもしくはヒトNKG2A/CD94のいずれかを発現するマウス細胞を使用するアッセイが使用される。
【0096】
適切なリガンドへのNKG2Aの結合は、NKG2Aを有する細胞において、多くの生理学的変化を引き起こす。これらは、遺伝子発現、細胞成長、細胞増殖、pH、細胞内セカンドメッセンジャー、例えば、Ca2+、IP3、cGMP、もしくはcAMP、サイトカイン産生、または細胞障害活性のような活性の変化を含む。そのような変化は、本明細書において「NKG2A活性」と称される。NKG2Aリガンドの存在下におけるこれらの変化の任意の逆転を使用して、試験抗体の有用性を評価することができる。そのような逆転は、本明細書において「NKG2A活性の阻害」と称される。1つの実施態様では、NKG2A活性は、NKG2A応答性遺伝子またはタンパク質、例えば、SHP−1もしくはSHP−2あるいはそれらの標的の発現または活性を検出することによって評価される(例えば、レ・デュリーン(Le Drean)ら(1998年)Eur J Immunol28:264−276、オーググリアロ(Augugliaro)ら(2003年)Eur J Immunol33:1235−141を参照のこと;その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)。
【0097】
本明細書に記載のアッセイのいずれにおいても、細胞におけるNKG2A活性の任意の検出可能な測定における5%、10%、20%、好ましくは、30%、40%、50%、最も好ましくは60%、70%、80%、90%、95%、の減少もしくはそれ以上の減少は、試験抗体が本方法における使用の適切な候補であることを示す。
【0098】
結合に加えて、NK細胞に、NKG2Aリガンドを有する標的細胞、例えば、樹状細胞、所定の癌細胞、あるいは所定のウイルス感染細胞の増殖もしくは活性化を阻害するか、または好ましくは、該細胞を死滅させる抗体または化合物の能力を評価することができる。1つの実施態様では、NKG2A受容体を発現するヒトNK細胞が、NKG2Aリガンドを有する標的細胞と共にプレート、例えば、96ウェルプレートに導入され、多様な量の試験抗体に曝露される。バイタル染料、即ち、AlamarBlue(BioSource International,Camarillo、カリフォルニア州)のような無傷(intact)な細胞によって取り込まれる色素を添加し、洗浄して、過剰な染料を除去することにより、光学密度(抗体によって死滅した細胞が多いほど、光学密度が低い)によって、生存可能な細胞の数を測定することができる。(例えば、コノリー(Connolly)ら(2001年)J Pharm Exp Ther298:25−33(その開示内容は、その全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。
【0099】
最も好ましくは、本発明の活性化抗体は、Fc受容体の実質的な特異的結合を実証しない。そのような抗体は、Fc受容体に結合しないことが公知である多様な重鎖の定常領域を含んでなり得る。そのような1つの例は、IgG4定常領域である。あるいは、FabまたはF(ab’)2フラグメントのような定常領域を含まない抗体フラグメントを使用して、Fc受容体結合を回避することができる。Fc受容体結合は、例えば、BIACOREアッセイにおいてFc受容体タンパク質への抗体の結合を試験することを含む当該分野において既知の方法に従って、評価することができる。また、Fc部分がFc受容体への結合を最小にするかまたは排除するように改変される他のいずれの抗体型を使用することもできる(例えば、国際公開第03101485号パンフレット(その開示内容は参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。Fc受容体結合を評価するためのアッセイ、例えば、細胞に基づくアッセイは当該分野において周知であり、例えば、国際公開第03101485号パンフレットに記載されている。
【0100】
好ましくは、本発明の活性化モノクローナル抗体は、Fc領域、好ましくは、IgG4もしくはG2サブタイプのFc領域、またはFc受容体への結合を減少するように改変されているIgG1もしくはG3サブタイプのFc領域を含んでなる。最も好ましくはG4またはG2Fc領域は、Fc受容体への結合をさらに最小にするかもしくは完全に廃止するように改変される(例えば、アンガル(Angal)ら(1993年)Molecular Immunology30:105−108(その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。
【0101】
IgG4アイソタイプは、Fc結合活性を完全に欠くものではなく、Fcγ(「Fcg」)受容体への若干の結合を示す(ニューマン(Newman)ら(2001年)Clin.Immunol.(98(2):164−174)。改変されていないIgG4モノクローナル抗体は、インビボで細胞枯渇を引き起こし得る(アイザックス(Isaacs)ら、(1996年)Clin.Exp.Immunol.106,427)。Fcg受容体への結合を主に担うことが報告されている配列は、LLGGPSと規定されている(バートン(Burton)ら、(1992年)Adv.Immunol.51:1)。重鎖CH2領域のN末端に配置されるこの配列(EU番号234−239)は、ヒトIgG1、IgG3、およびマウスIgG2aアイソタイプにおいて保存され、それらのすべてがFcg受容体に強度に結合する。IgG4アイソタイプの野生型配列は、234位でフェニルアラニンを含有し、モチーフFLGGPSを付与する。マウスIgG2bアイソタイプはまた、Fcg受容体の貧弱なバインダーであり、配列LEGGPSを含有する。ニューマン(Newman)ら(2001年)は、マウスIgG2bと会合したグルタミン酸残基をヒト野生型IgG4CH2ドメインに組み入れ、そのことによりCDCおよびADCC活性をさらになお減少させ、インビトロでのFcgRIおよびFcgRIIへの結合を事実上排除した配列FEGGPSを付与した。グルタミン酸の導入に加えて、プロリンによるセリン228の置き換えにより、野生型IgG4より安定な分子が生じた。IgG4分子は、ヒンジ領域における鎖内ジスルフィド結合の不十分な形成を示す傾向がある。プロリンの導入は、ヒンジ部に剛性を提供し、より効率的な鎖内結合を促進し、228位のセリンの存在は、隣接するシステイン分子による鎖内ジスルフィド結合よりも好適な鎖内連結を促進し得るといわれた。そのような任意の改変およびその他により、容易に本発明の抗体になり得る。
【0102】
多くの場合、本発明の阻害抗体は、Fc受容体に結合する前者の能力のほとんどまたはすべてを廃止することによって、本発明の活性化抗体に変換され得る。
【0103】
NK細胞活性を阻害するNKG2Aに対する抗体の能力を評価する
NKG2Aに結合し、NK細胞活性、特に、細胞のNK細胞溶解を阻害することが可能である本発明の阻害抗体の同定は、細胞に基づくアッセイを使用してアッセイされる。典型的に、NK細胞のようなNKG2Aを有する細胞は、多様な量の試験抗体の存在下で、RMA、RMAのTAP−2誘導体、P815およびK562のようなNK感受性細胞と接触される。試験抗体の存在下で死滅されるNK感受性細胞の百分率が、抗体の非存在下での死滅と比較される。
【0104】
本発明の阻害抗体のための別のアッセイでは、NK細胞は、多様な量の試験抗体の存在下でインキュベートされ、抗体の非存在下でのNK細胞死と比較して、抗体の直接的死滅作用が、NK細胞に対して影響を及ぼすことを決定する。NK細胞死滅はまた、NK感受性細胞の応答を含むアッセイにおいて決定され得る。
【0105】
本明細書に記載のいずれにおいても、5%、10%、20%、好ましくは、30%、40%、50%、最も好ましくは、60%、70%、80%、90%、95%のNK感受性細胞死滅の減少および/または5%、10%、20%、好ましくは、30%、40%、50%、最も好ましくは、60%、70%、80%、90%、95%のNK細胞死の増加は、試験抗体が本発明の阻害抗体であることを示す。
【0106】
霊長類種間のNKG2Aの交差反応性
ヒトおよび非ヒト霊長類NKG2A間に交差反応性があることが観察されている。従って、受容体活性に対する抗NKG2A抗体の効果を評価するためのアッセイは、任意の霊長類由来のNKG2Aポリペプチドを使用して行うことができる。例えば、そのようなアッセイは、インビトロで非ヒト霊長類NK細胞を使用することによって実施できるか、または抗体を非ヒト霊長類に投与することができ、そして、例えば、NK細胞活性における変更に反映されるNKG2A活性をモジュレートするそれらの能力を測定することができる。
【0107】
抗体を産生させること
本発明の抗体は、様々な当該分野において公知の技術のいずれかによって産生させることができる。典型的に、それらは、T細胞またはNK細胞または樹状細胞のような細胞の表面上の(または本明細書に記載のすべての実施態様のための、CD94、もしくはHLA−Eのための)NKG2A受容体を含んでなる免疫原による非ヒト動物、好ましくは、マウスの免疫化によって産生される。受容体は、細胞全体または細胞膜、NKG2A(もしくはCD94など)の全長配列、または任意のNKG2Aのフラグメントもしくは誘導体、典型的に免疫原性フラグメント、即ち、受容体を発現する細胞の表面上に曝露されるエピトープを含んでなるポリペプチドの一部を含んでもよい。NKG2Aの任意のアイソフォームまたはスプライシングフラグメントを使用することができる(例えば、OMIM161555を参照のこと;その開示内容は参照により本明細書に援用される)。そのようなフラグメントは、典型的に、成熟ポリペプチド配列の少なくとも7連続アミノ酸、さらにより好ましくは、その少なくとも10連続アミノ酸を含有する。それらは、本質的に、受容体の細胞外ドメインから誘導される。好適な実施態様では、抗体を作製するために使用されるNKG2A受容体はヒト受容体である。所定の実施態様では、例えば、CD94と会合したヘテロダイマーで存在するNKG2Aを使用して、抗体を作製することができる。
【0108】
最も好適な実施態様では、免疫原は、脂質膜、典型的に細胞表面の野生型ヒトNKG2A受容体ポリペプチドを含んでなる。特定の実施態様では、免疫原は、無傷(intact)なNK細胞、特に、無傷なヒトNK細胞、場合により処置または溶解された細胞を含んでなる。好適な実施態様では、免疫原は、自己免疫または炎症性障害を伴う患者から採取されるNK細胞である。
【0109】
1つの実施態様では、抗体は、NKG2A、例えば、Z199(デラ・キエーサ(Della Chiesa)ら、(2003年)Eur.J.Immunol.33:1657−1666)、Z270、3S9(例えば、米国特許公開第2003/0095965号明細書を参照のこと)、または20D5(バンス(Vance)ら、(1990年)J.Exp.Med.190(12):1801−1812)(その開示内容は参照により本明細書に援用される)を認識する1つもしくはそれ以上の既に存在するモノクローナル抗体から誘導される。所定のアプリケーションのために、細胞、好ましくは、自己免疫または炎症性障害を伴う患者由来のNK細胞の存在に対してNKG2Aの存在を決定するための診断用抗体としての使用のために、そのような抗体を、直接的または間接的に(即ち、標識された第二抗体で使用される)標識することができる。さらに、抗体を、本治療方法における使用のために本明細書に記載のようにヒトへの投与に適切にすることができる。
【0110】
本抗体は、全長の抗体または抗体フラグメントもしくは誘導体であり得る。抗体フラグメントの例として、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)、およびFvフラグメント;二重特異性抗体;一本鎖Fv(scFv)分子;ただ1つの軽鎖可変ドメイン、または関連重鎖部分を伴わずに軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有するそのフラグメントを含有する一本鎖ポリペプチド;ただ1つの重鎖可変領域、または関連軽鎖部分を伴わずに重鎖可変領域の3つのCDRを含有するそのフラグメントを含有する一本鎖ポリペプチド;および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。そのようなフラグメントおよび誘導体ならびにそれらを調製する方法は、当該分野において周知である例えば、ペプシンを使用して、ヒンジ領域のジスルフィド結合より下流の抗体を消化して、F(ab)’(それ自体がジスルフィド結合によってV−CH1に結合される軽鎖であるFabの二量体である)を生成させることができる。F(ab)’を、穏やかな条件下で還元して、ヒンジ領域のジスルフィド結合を切断し、それによって、F(ab)’二量体をFab’単量体に変換してもよい。Fab’単量体は、本質的に、ヒンジ領域の部分を伴うFabである(Fundamental Immunology(ポール(Paul)編、第3版、1993年)を参照のこと)。多様な抗体フラグメントが無傷(intact)な抗体の消化によって規定される一方、当業者は、そのようなフラグメントを、化学的かまたは組換えDNA方法論を使用するかのいずれかによって、デノボで合成することができることを理解している。
【0111】
好適な実施態様では、活性化抗体は非枯渇化抗体であり、それらは、NK細胞に結合し、NKG2A刺激を阻害するが、NKG2A発現細胞の死滅をもたらさないことを意味する。NKG2A発現細胞を死滅させる能力は、抗体が細胞障害性ではなく、結合細胞を直接死滅させることを確実にするためのインビトロアッセイ、ならびに抗体が投与され、NKG2A発現細胞のレベルおよび活性が評価されるインビボアッセイを含む標準的な方法で評価することができる。特に好適な実施態様では、上記のように、Fc受容体によって認識されない(またはごく僅かにしか認識されない)抗体が使用される。従って、好適な抗体には、IgG4、FabもしくはF(ab’)2のようなフラグメント、またはFc部分がFc受容体による結合を減少または排除するように改変されている他の任意のIgG、IgE、IgMなどが含まれる(例えば、国際公開第03101485号パンフレット(その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。
【0112】
モノクローナルまたはポリクローナル抗体の調製については当該分野において周知であり、多数の利用可能な技術のいずれかを使用することができる(例えば、ケーラー(Kohler)およびミルスタイン(Milstein)、Nature256:495−497(1975年);コズボール(Kozbor)ら、Immunology Today4:72(1983年);コール(Cole)ら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy(1985)の77−96頁を参照のこと)。一本鎖抗体の産生のための技術(米国特許第4,946,778号明細書)を適応して、所望されるポリペプチド、例えば、NKG2Aに対する抗体を産生させることができる。また、トランスジェニックマウス、または他の哺乳動物のような他の生物体を使用して、ヒト化、キメラ、または同様に修飾された抗体を発現させてもよい。あるいは、ファージディスプレイ技術を使用して、選択された抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロメリックなFabフラグメントを同定することができる(例えば、マキャフェルティー(McCafferty)ら、Nature348:552−554(1990年);マークス(Marks)ら、Biotechnology10:779−783(1992年)を参照のこと)。1つの実施態様では、方法は、ライブラリーまたはレパートリーから、NKG2A受容体と交差反応するモノクローナル抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体を選択することを含んでなる。例えば、レパートリーは、場合により、任意の適切な構造(例えば、ファージ、細菌、合成複合体など)によってディスプレイされる抗体またはそのフラグメントの任意の(組換え)レパートリーであってもよい。
【0113】
当該分野において周知の任意の様式で、非ヒト哺乳動物を抗原で免疫する工程を行うことができる(例えば、E.ハーロー(E.Harlow)およびD.レーン(D.Lane)、Antibodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor、ニューヨーク州(1988)を参照のこと)。一般に、免疫原は、場合により完全フロイントアジュバントのようなアジュバントと共に、緩衝液に懸濁または溶解される。免疫原の量、緩衝液のタイプおよびアジュバントの量を決定するための方法は当該分野において周知であり、本発明に対する任意の方法において限定されない。
【0114】
同様に、抗体の産生を刺激するのに十分な免疫の場所および回数もまた、当該分野において周知である。典型的な免疫プロトコルでは、1日目に非ヒト動物に免疫原が腹腔内に注入され、1週間後に再度注入される。これに続いて、場合により、不完全フロイントアジュバントなどのアジュバントを伴って、約20日目に抗原が再注入される。再注入は静脈内で実施され、数日間連続で反復され得る。これに続いて、静脈内または腹腔内のいずれかで、典型的にアジュバントを伴わずに、40日目に追加注入が行われる。このプロトコルにより、約40日後に、抗原特異的抗体産生B細胞が生じる。他のプロトコルもまた、それらが、免疫に使用される抗原に対する抗体を発現するB細胞の産生を生じる限り、利用することができる。
【0115】
別の実施態様では、非免疫非ヒト哺乳動物由来のリンパ球が単離され、インビトロで増殖され、次いで、細胞培養において免疫原に曝露される。次いで、リンパ球を回収し、下記の融合工程を行う。
【0116】
本発明の目的に好適であるモノクローナル抗体では、次の工程は、細胞、例えば、免疫された非ヒト哺乳動物由来のリンパ球、脾細胞、またはB細胞の単離、および抗体産生ハイブリドーマを形成するための該脾細胞、またはB細胞、またはリンパ球と不死化細胞との以後の融合である。従って、本明細書において使用される用語「免疫動物から抗体を調製すること」は、免疫動物からB細胞/脾細胞/リンパ球を入手すること、およびそれらの細胞を使用して、抗体を発現するハイブリドーマを産生させること、ならびに免疫動物の血清から直接抗体を入手することを含む。例えば、非ヒト哺乳動物からの脾臓細胞の単離は当該分野において周知であり、例えば、麻酔した非ヒト哺乳動物から脾臓を取り出し、それを小片に切断し、単一の細胞懸濁液が生成されるように、セルストレーナーのナイロンメッシュを介して、適切な緩衝液に脾包(splenic capsule)から脾臓細胞を圧搾することに関与する。細胞を洗浄し、遠心分離し、任意の赤血細胞を溶解する緩衝液に再懸濁する。溶液を再度遠心分離し、ペレット内に残留するリンパ球を最終的に新鮮緩衝液に再懸濁する。
【0117】
一旦、単離され、単一細胞懸濁液中に存在すると、抗体産生細胞を不死細胞株に融合させることができる。これは、典型的にはマウス骨髄腫細胞系統であるが、ハイブリドーマを作製するのに有用な他の多くの不死細胞系統が当該分野において公知である。好適なマウス骨髄腫株として、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego、カリフォルニア州、米国より入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍、American Type Culture Collection,Rockville、メリーランド州、米国より入手可能なX63 Ag8653およびSP−2細胞が挙げられるが、これらに限定されない。融合は、ポリエチレングリコールなどを使用して行う。次いで、得られるハイブリドーマを、非融合親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1つもしくはそれ以上の物質を含有する選択培地で増殖させる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的に、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む(HAT培地)(該物質はHGPRT欠損細胞の増殖を妨害する)。
【0118】
ハイブリドーマは、マクロファージのフィーダー層上で増殖され得る。マクロファージは、脾臓細胞を単離するために使用される非ヒト哺乳動物の同腹仔由来であることが好ましく、典型的に、ハイブリドーマプレート化の数日前に、不完全フロイントアジュバントなどで刺激する。融合方法は、例えば、ゴーディング(Goding)「Monoclonal Antibodies:Principles and Practice」、59〜103頁(Academic Press、1986年)に記載されており、この開示内容は、本明細書において参照により援用される。
【0119】
コロニー形成および抗体産生に十分な時間、細胞を増殖させる。これは、通常、7〜14日間の間である。次いで、ハイブリドーマコロニーを、所望される基質、例えば、NKG2Aを特異的に認識する抗体の産生についてアッセイする。アッセイは、典型的に発色ELISA型アッセイであるが、ハイブリドーマが増殖するウェルに適応することができるいずれのアッセイを用いてもよい。他のアッセイとしては、免疫沈降およびラジオイムノアッセイが挙げられる。所望の抗体産生にポジティブのウェルを試験して、1つもしくはそれ以上の異なるコロニーが存在するかどうかを決定する。1を超えるコロニー多存在する場合、細胞を再クローニングして、増殖させ、ただ単一の細胞が所望の抗体を産生するコロニーを生じていることを確実にする。明らかに単一のコロニーを伴うポジティブウェルを、典型的に再クローニングし、再アッセイし、ただ1つのモノクローナル抗体が検出され、産生されていることを確実にする。
【0120】
次いで、本発明のモノクローナル抗体を産生することが確認されるハイブリドーマを、DMEMまたはRPMI−1640のような適切な培地において、より多量に培養する。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0121】
所望されるモノクローナル抗体を産生させるのに十分な増殖後、モノクローナル抗体(または腹水液)を含有する増殖培地を細胞から分別し、そこに存在するモノクローナル抗体を精製する。精製は、ゲル電気泳動、透析、タンパク質Aもしくはタンパク質G−Sepharose、またはアガロースもしくはSepharoseビーズのような固相支持体に連結された抗マウスIgを使用するクロマトグラフィーによって、典型的に達成される(すべて、例えば、Antibody Purification Handbook,Amersham Biosciences、出版番号18−1037−46、AC版(その開示内容は参照により本明細書に援用される)に記載されている)。結合抗体は、低pH緩衝液(グリシンまたはpH3.0もしくはそれ未満の酢酸緩衝液)を使用し、抗体を含有する画分を直ちに中和することによって、タンパク質A/タンパク質Gカラムから典型的に溶出される。これらの画分をプールし、透析し、必要であれば濃縮する。
【0122】
好適な実施態様では、NKG2A免疫原上に存在する決定基に結合する抗体をコードするDNAをハイブリドーマから単離し、適切な宿主へのトランスフェクションのために適切な発現ベクターに配置する。次いで、宿主を、抗体の抗原認識部分を含んでなる抗体、その変異体、その活性なフラグメント、またはヒト化もしくはキメラ抗体の組換え産生のために使用する。好ましくは、本実施態様において使用されるDNAは、自己免疫または炎症性障害を伴う患者から採取されるNK細胞のようなNK細胞上のNKG2A受容体に存在する決定基を認識する抗体をコードする。
【0123】
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、(例えば、マウス抗体の重および軽鎖をコードする遺伝に特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドを使用することによって)従来の手順を使用して、容易に単離され、配列決定され得る。一旦単離されたら、DNAを発現ベクターに配置することができ、次いで、それは大腸菌(E.coli)細胞、サル(simian)COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または他では免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞のような宿主細胞にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成が得られる。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現は当該分野において周知である(例えば、スケラ(Skerra)ら、(1993年)Curr.Opinion in Immunol.5:256;およびプリュックサン(Pluckthun)、(1992年)Immunol.Revs.130:151を参照のこと)。抗体はまた、例えば、ウォード(Ward)ら、(1989年)Nature,341:544に開示されているような免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーの選択によって、産生させてもよい。
【0124】
特定の実施態様では、抗体は、モノクローナル抗体Z199またはZ270のうちの1つと本質的に同じエピトープまたは抗原決定基に結合する。1つの好適な実施態様では、モノクローナル抗体は、Z270のFabまたはF(ab’)部分を含んでなる。別の好適な実施態様に従えば、モノクローナル抗体は、Z270の可変重鎖領域の3つのCDR(CDR1=配列番号2のアミノ酸31〜35;CDR2=配列番号2のアミノ酸50〜66;CDR3=配列番号2のアミノ酸99〜108)を含んでなる。Z270の可変重鎖領域(Z270VH;配列番号2)を含んでなるモノクローナル抗体がより好適である。Z270の可変重鎖領域を含んでなり、chZ270VH(配列番号3)を含んでなるヌクレオチド配列から転写および翻訳されるモノクローナル抗体がなおより好適である。別の好適な実施態様に従えば、モノクローナル抗体は、Z270の可変軽鎖領域の3つのCDR(CDR1=配列番号6のアミノ酸24〜34;CDR2=配列番号6のアミノ酸50〜56;CDR3=配列番号6のアミノ酸89〜95)を含んでなる。Z270の可変軽鎖領域(配列番号6)を含んでなるモノクローナル抗体がより好適である。Z270の可変軽鎖領域を含んでなり、chZ270VK(配列番号7)を含んでなるヌクレオチド配列から転写および翻訳されるモノクローナル抗体がなおより好適である。なお別の好適な実施態様では、抗体はZ270である。Z270は、2005年12月22日付、受託番号I−3549で、Collection Nationale de Culture de Microorganismes,Institute Pasteur,25,Rue du Docteur Roux,F−75725Paris、仏国に寄託した。
【0125】
NKG2Aに対する活性化および抑制性モノクローナル抗体の両方とも、それらを、ヒトにおける治療用途に適切にするように、一般的に改変される。例えば、それらを、ヒト化するか、キメラ化するか、または当該分野において周知の方法を使用して、ヒト抗体のライブラリーから選択してもよい。そのようなヒトに適切な抗体は、本発明の治療方法において直接使用することができるか、または本発明の方法における使用のために、下記のような細胞障害性抗体にさらに誘導体化することができる。
【0126】
1つの好適な実施態様では、本発明の抗体、例えば、Z199またはZ270と実質的に同じエピトープに結合する抗体を産生するハイブリドーマのDNAは、発現ベクターへの挿入前に、例えば、相同非ヒト配列の代わりにヒト重および軽鎖定常ドメインのコーディング配列を置換することによって(例えば、モリソン(Morrison)ら、(1984年)PNAS81:6851)、または免疫グロブリンコーディング配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコーディング配列のすべてもしくは一部を共有結合させることによって、修飾することができる。該様式では、本来の抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体が調製される。典型的に、そのような非免疫グロブリンポリペプチドが、本発明の抗体の定常ドメインに対して置換される。
【0127】
好適な実施態様では、抗体は、ヒト重鎖定常領域に融合したZ270の可変重鎖領域(配列番号2)を含んでなる。1つの好適な実施態様では、ヒト重鎖定常領域はIgG4定常領域である。別の好適な実施態様では、ヒト重鎖定常領域は、IgG1定常領域、好ましくは、ヒトIgG1m(−1、−2、−3)定常領域である。好ましくは、そのようなヒト重鎖定常領域含有抗体は、chZ270VH(配列番号3)を含んでなるヌクレオチド配列から転写および翻訳される。
【0128】
別の好適な実施態様では、抗体は、ヒト軽鎖定常領域に融合したZ270の可変軽鎖領域(配列番号6)を含んでなる。ヒトκ(k3)軽鎖定常領域に融合したZ270の可変軽鎖領域を含んでなる抗体がより好適である。好ましくは、そのようなヒト軽鎖定常領域含有抗体は、chZ270VK(配列番号7)を含んでなるヌクレオチド配列から転写および翻訳される。
【0129】
ヒト軽鎖定常領域に融合した270VKおよびヒト重鎖定常領域に融合した270VKの両方を含んでなる抗体がなおより好適である。好ましくは、軽鎖定常領域はκ(k3)定常領域であり、重鎖定常領域は、IgG4またはIgG1m(−1、−2、−3)から選択される。また、好ましくは、抗体のそれぞれの重および軽鎖は、それぞれ、chZ270VH(配列番号3)を含んでなるヌクレオチド配列およびchZ270VK(配列番号7)を含んでなるヌクレオチドを含んでなるヌクレオチド配列から転写される。
【0130】
1つの特に好適な実施態様では、本発明の抗体はヒト化される。本発明の抗体の「ヒト化」形態は、マウスあるいは他の非ヒト免疫グロブリンから誘導される最小配列を含有する特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖または(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、もしくは抗体の他の抗原結合配列のような)それらのフラグメントである。ほとんどの部分について、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、本来の抗体(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられる一方、本来の抗体の所望される特異性、親和性、および能力は維持される。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基を、対応する非ヒト残基によって置き換えてもよい。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはインポートされたCDRまたはフレームワーク配列のいずれにも見出されない残基を含んでなることができる。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改質し、最適化するために作製される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、および典型的に2つの可変ドメインの実質的にすべてを含んでなり、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが本来の抗体の該領域に対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の該領域である。より詳細については、ジョーンズ(Jones)ら、Nature,321:522(1986年);ライヒマン(Reichmann)ら、(1988年)Nature、332:323;フェルホエン(Verhoeyen)ら(1988年)Science239:1534(1988年);プレスタ(Presta)(1992年)Curr.Op.Struct.Biol.2、593(それぞれはその全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0131】
ヒト化抗体を作製するのに使用すべきヒト可変ドメイン(軽鎖および重鎖の両方)の選択は、抗原性を減少させるのに極めて重要である。いわゆる「ベストフィット」方法に従えば、本発明の抗体の可変ドメインの配列を、公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングされる。次いで、マウスの配列に最も近いヒト配列は、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として許容される(シムズ(Sims)ら、(1993年)J.Immun.,151:2296;チョチア(Chothia)およびレスク(Lesk)(1987年)J.Mol.Biol.196:901))。別の方法は、軽または重鎖の特定の亜群のすべてのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを、いくらかの異なるヒト化抗体に使用することができる(カーター(Carter)ら、(1992年)PNAS89:4285;プレスタ(Presta)ら、(1993年)J.Immunol.51:1993))。
【0132】
ヒト化される一方、NKG2A、好ましくは、ヒトおよび非ヒト霊長類NKG2Aに対する高い親和性、ならびに他の好適な生物学的特性を保持する抗体がさらに重要である。この目的を達成するために、好適な方法に従い、親配列の解析のプロセスならびに親およびヒト化配列の3次元モデルを使用する多様な概念上のヒト化産物によって、ヒト化抗体が調製される。3次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者に熟知されている。選択された候補免疫グロブリン配列の見込まれる3次元コンフォメーション構造を例示および示すコンピュータプログラムが利用可能である。これらの標示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列の機能性における残基の可能な役割の解析、即ち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の解析を可能にする。この方法では、FR残基が選択され、標的抗原の増加した親和性などの所望される抗体の特徴が達成されるように、コンセンサスおよびインポート配列から合わせられる。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に、直接的および最も実質的に関与する。
【0133】
好適な実施例では、本発明は、実質的にヒトFcγRIIIa(CD16)に結合しない少なくとも5、6、8、9、10、15または20日の半減期を有するヒトまたはヒト化活性化抗NKG2A抗体を提供する。より好ましくは、活性化抗NKG2A抗体はヒト化抗体であり、ヒトNKG2Aへの結合についてZ199またはZ270抗体と完全に競合する。本明細書に記載の方法に従う使用に適切な好適な抗体による例示の目的のために、Z199またはZ270抗体を使用して、ヒト化抗体を調製することができる。本発明に従う好適なヒト化抗体は、ヒトフレームワーク、非ヒト抗体由来の少なくとも1つのCDRを含んでなり、ここで、存在する任意の定常領域はヒト免疫グロブリン定常領域に実質的に同一、例えば、少なくとも約60〜90%、好ましくは少なくとも95%同一である。従って、おそらくCDRを除くすべての部分のヒト化抗体は、1つもしくはそれ以上の生来のヒト抗体配列の対応する部分に実質的に同一である。いくつかの場合において、ヒト化抗体は、非ヒト抗体由来のCDRに加えて、ヒトフレームワーク領域においてさらなる非ヒト残基を含む。
【0134】
ヒト化抗体の設計は、以下のとおりに行うことができる。アミノ酸が以下のカテゴリーに当てはまる場合、使用すべきヒト抗体(アクセプター抗体)のフレームワークアミノ酸は、CDRを提供する非ヒト抗体(ドナー抗体)由来のフレームワークアミノ酸によって置き換えられる:(a)アクセプター抗体のヒトフレームワーク領域におけるアミノ酸は、該位置でヒト抗体には普通でない一方、ドナー抗体において対応するアミノ酸は、該位置でヒト抗体に典型的であること;(b)アミノ酸の位置は、CDRの1つのすぐ近くに隣接すること;または(c)アミノ酸は、三次構造抗体モデルにおいてCDRと相互作用することが可能であること(C.クイーン(C.Queen)らProc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029(1989年)、およびコ(Co)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88,2869(1991年)(その開示内容は本明細書において参照により援用される)を参照のこと)。
【0135】
ヒト化抗体の産生のさらなる詳細な説明については、クイーン(Queen)ら、(前掲)およびコ(Co)ら、(前掲)ならびに米国特許第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書、同第5,693,761号明細書、および同第5,530,101号明細書(その開示内容は本明細書において参照により援用される)を参照のこと。通常、ヒト化抗体におけるCDR領域は実質的に同一であり、より通常は、それらが誘導されたマウス抗体における対応するCDR領域に同一である。通常は所望されないが、得られるヒト化抗体の結合親和性にそれほど影響を及ぼすことなく、CDR残基の1つもしくはそれ以上の保存的アミノ酸置換を作製することが時々可能である。時折、CDR領域の置換は、結合親和性を増強することができる。上記で考察した特定のアミノ酸置換以外についても、ヒト化抗体のフレームワーク領域は、通常、実質的に同一であり、より通常は、それらが誘導されたヒト抗体のフレームワーク領域に同一である。もちろん、フレームワーク領域におけるアミノ酸の多くは、抗体の特異性または親和性に対してほとんどもしくは全く直接的寄与を生じない。従って、フレームワーク残基の多くの個々の保存的置換は、得られるヒト化抗体の特異性または親和性のそれほどの変化を伴わずに、忍容されうる。ヒト化抗体の抗原結合領域(非ヒト部分)は、NKG2Aに対する特異性を有するドナー抗体と称される非ヒト由来の抗体から誘導することができる。例えば、適切な抗原結合領域は、Z199またはZ270モノクローナル抗体から誘導することができる。他の供給源として、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)、ウサギ、ブタ、ヤギまたは非ヒト霊長類(例えば、サル)またはラクダ科の動物(例えば、ラクダおよびラマ)のような非ヒト供給源から得られるNKG2A特異的(ブロッキング)抗体が挙げられる。さらに、Z199またはZ270抗体と同じもしくは類似のエピトープに結合する抗体のような他のポリクローナルまたはモノクローナル抗体を作製することができる(例えば、ケーラー(Kohler)ら、Nature,256:495−497(1975年);ハーロー(Harlow)ら、1988年、抗体:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor、ニューヨーク州);およびCurrent Protocols in Molecular Biology、第2巻(補遺27、1994年夏)、アウスベル(Ausubel)ら、編(John Wiley&Sons:New York、ニューヨーク州)、第11章(1991年))。
【0136】
1つの実施態様では、ヒトならびに非ヒト霊長類NKG2Aに対する結合特異性を有するヒト化抗体は、非ヒト由来の少なくとも1つのCDRを含んでなる。例えば、ヒトならびに非ヒト霊長類NKG2Aに対する結合特異性を有するヒト化抗体は、重鎖および軽鎖を含んでなる。軽鎖は、NKG2Aおよびヒト由来の軽鎖から誘導されるFRに結合する非ヒト由来の抗体から誘導されるCDRを含んでなることができる。例えば、軽鎖は、抗体がヒトおよび非ヒト霊長類NKG2Aに特異的に結合するようなZ199もしくはZ270抗体のいずれか1つのそれぞれのCDRに類似または実質的に同じアミノ酸配列を有するCDR1、CDR2および/またはCDR3を含んでなることができる。重鎖は、NKG2Aおよびヒト由来の重鎖から誘導されるFRに結合する非ヒト由来の抗体から誘導されるCDRを含んでなることができる。例えば、重鎖は、下記のアミノ酸配列、あるいは抗体がヒトおよび非ヒト霊長類NKG2Aに特異的に結合するようなZ199もしくはZ270抗体のそれぞれのCDRに類似または実質的に同じアミノ酸を有するCDR1、CDR2および/またはCDR3を含んでなることができる。
【0137】
本発明の実施態様は、ヒトおよび非ヒト霊長類NKG2Aに特異的に結合し、Z199またはZ270抗体由来の3つの軽鎖CDRを含んでなるヒト化軽鎖およびヒト抗体軽鎖由来の軽鎖可変領域フレームワーク配列を含んでなるヒト化抗体である。本発明は、Z199またはZ270抗体由来の3つの重鎖CDRおよびヒト抗体重鎖由来の重鎖可変領域フレームワーク配列を含んでなるヒト化重鎖をさらに含んでなる。
【0138】
ヒト由来(ヒト部分)であるヒト化抗体または抗体鎖の部分は、任意の適切なヒト抗体または抗体鎖から誘導することができる。例えば、ヒト定常領域またはその一部は、存在するならば、対立遺伝子改変体を含むヒト抗体のκもしくはλ軽鎖、および/またはγ(例えば、γ1、γ2、γ3、γ4)、μ、α(例えば、α1、α2)、δもしくはε重鎖から誘導することができる。IgG2bもしくはIgG4のような特定の定常領域、その変種または一部を選択して、エフェクター機能を整えることができる。後者の定常領域、またはその一部は、それらが実質的にNK細胞上のFcγIIIa受容体(CD16)に結合せず、従って、実質的に本発明の抗NKG2A抗体と結合するNKエフェクターのADCC媒介溶解を誘導しない点で特に好適である。例えば、「変種」とも称される変異型定常領域を、融合タンパク質に組み入れて、Fc受容体への結合および/または補体に結合する能力を最小にすることができる(例えば、ウィンター(Winter)ら、米国特許第5,648,260号明細書;モリソン(Morrison)ら、国際公開第89/07142号パンフレット;モーガン(Morgan)ら、国際公開第94/29351号パンフレットを参照のこと)。さらに、天然のFc領域と比較して、分裂促進応答を減少する変異型IgG2Fcドメインを作製することができる(例えば、ツォ(Tso)ら、米国特許第5,834,597号明細書(その教示内容はその全体が本明細書において参照により援用される)を参照のこと)。存在する場合、ヒトFRは、好ましくは、抗原結合領域ドナーの類似または等価領域に対する配列類似性を有するヒト抗体可変領域から誘導される。ヒト化抗体のヒト由来の部分に対するFRの他の供給源として、ヒト可変コンセンサス配列が挙げられる(ケトルボロウ,C.A.(Kettleborough,C.A.)ら、Protein Engineering4:773−783(1991年);クイーン(Queen)ら、米国特許第5,585,089号明細書、同第5,693,762号明細書および同第5,693,761号明細書(そのすべての教示内容は、その全体が本明細書において参照により援用される)を参照のこと)。例えば、非ヒト部分を得るために使用される抗体または可変領域の配列は、カバット,E.A.(Kabat,E.A.)ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services,U.S.Government Printing Office(1991年)に記載のヒト配列と比較することができる。好適な実施態様では、ヒト化抗体鎖のFRは、少なくとも約60%の全長配列同一性、好ましくは少なくとも約80%の全長配列同一性を有するヒト可変領域から誘導され、非ヒトドナー(例えば、Z199またはZ270抗体)の可変領域を伴う。
【0139】
2つの核酸またはポリペプチド(例えば、ヒト化抗体をコードするDNAもしくはヒト化抗体のアミノ酸配列)に関する語句「実質的に同一な」は、以下の配列比較方法および/または目視検査を使用して測定した場合の最大対応するように比較および整列される場合、少なくとも約80%、最も好ましくは、90〜95%もしくはそれ以上ヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有する2つもしくはそれ以上の配列またはサブ配列を指す。そのような「実質的に同一な」配列は、典型的に相同とみなされる。好ましくは、「実質的同一性」は、少なくとも約50残基長である配列の領域にわたって、より好ましくは、少なくとも約100残基の領域にわたって存在し、最も好ましくは、配列は、少なくとも約150残基にわたって、または比較しようとする2つの配列の全長にわたって実質的に同一である。下記のように、2つの任意の抗体配列は、カバット(Kabat)における番号付けスキームを使用することによって、一方向でのみ整列することができる。従って、抗体については、同一性%は、唯一的かつ良好に規定される意味を有する。
【0140】
抗体の成熟重および軽鎖の可変領域由来のアミノ酸は、それぞれHxおよびLxを表し、ここで、xは、カバット(Kabat)、Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda、メリーランド州、1987年および1991年)のスキームに従ってアミノ酸の位置を表す番号である。カバット(Kabat)は、それぞれのサブグループについて抗体の多くのアミノ酸配列を列挙し、該サブグループにおけるそれぞれの残基位置について最も一般的に生じるアミノ酸を列挙している。カバット(Kabat)では、列挙された配列において各アミノ酸に対する残基番号を割り当てるための方法を使用し、残基番号を割り当てるためのこの方法は、当該分野において標準的になっている。カバット(Kabat)のスキームは、問題の抗体とカバット(Kabat)におけるコンセンサス配列のうちの1つとを整列することによって、彼の概論には含まれない他の抗体にまで拡張可能である。カバット(Kabat)の番号付けシステムの使用は、異なる抗体における等価な位置でのアミノ酸を容易に同定する。例えば、ヒト抗体のL50位のアミノ酸は、マウス抗体のアミノ酸位置L50に等価な位置を占有する。N末端からC末端にかけて、軽および重鎖可変領域の両方とも、交互に存在するフレームワークおよび(CDR)「FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4」を含んでなる。各領域に対するアミノ酸の割り当ては、カバット(Kabat)(1987年)および(1991年)、上掲ならびに/またはチョティア(Chothia)およびレスク(Lesk)、J.Mol.Biol.196:901−917(1987年);チョティア(Chothia)ら、Nature342:878−883(1989年)の規定に従う。
【0141】
結合および/または接着アッセイあるいは他の適切な方法はまた、必要な特異性を伴うヒト化抗体(例えば、ライブラリー由来)の同定および/または単離のための手順に使用することもできる(例えば、競合アッセイ)。
【0142】
本発明における使用のための非ヒトおよびヒト由来の抗体部分は、軽鎖、重鎖ならびに軽および重鎖の一部を含む。これらの抗体部分は、(例えば、一部のデノボ合成によって)抗体から入手もしくは誘導することができるか、あるいは所望される特性(例えば、NKG2Aに結合する、例えば、Z199もしくはZ270抗体との配列類似性)を有する抗体またはその鎖をコードする核酸を産生および発現させることができる。合成および/または組換え核酸を使用して、ヒトおよび非ヒト由来の所望される部分(例えば、抗原結合領域、CDR、FR、C領域)を含んでなるヒト化抗体を産生させ、所望されるヒト化鎖をコードする遺伝子(例えば、cDNA)を調製することができる。鎖の一部を調製するために、1つもしくはそれ以上の終止コドンを所望される位置に導入することができる。例えば、PCR変異誘発方法を使用して、新たに設計されるヒト化可変領域をコードする核酸配列を構築し、現存するDNA配列を変更することができる(例えば、カンマン,M.(Kamman,M.)ら、Nucl.Acids Res.17:5404(1989年)を参照のこと)。新規のCDRをコードするPCRプライマーは、同じ、または極めて類似のヒト可変領域に基づく先にヒト化された可変領域のDNAテンプレートにハイブリダイズすることができる(サト,K.(Sato,K.)ら、Cancer Research53:851−856(1993年))。テンプレートとして使用するための類似のDNA配列が入手できない場合、可変領域配列をコードする配列を含んでなる核酸を、合成オリゴヌクレオチドから構築することができる(例えば、コルビンガー,F.(Kolbinger,F.)、Protein Engineering8:971−980(1993年)を参照のこと)。シグナルペプチドをコードする配列もまた、(例えば、合成において、ベクターへの挿入の際に)核酸に組み入れることができる。天然のシグナルペプチド配列が入手不能である場合、別の抗体由来のシグナルペプチド配列を使用することができる(例えば、ケトルボロウ,C.A.(Kettleborough,C.A.)、Protein Engineering4:773−783(1991年)を参照のこと)。これらの方法、本明細書に記載の方法または他の適切な方法を使用して、変種を容易に産生させることができる。1つの実施態様では、クローニングされた可変領域を変異誘発することができ、所望される特異性を伴う変種をコードする配列を選択することができる(例えば、ファージライブラリーから;例えば、クレベル(Krebber)ら、米国特許第5,514,548号明細書;ホーゲングーム(Hoogengoom)ら、国際公開第93/06213号パンフレット、1993年4月1日公開)を参照のこと)。
【0143】
本発明はまた、本発明のヒト化抗体またはヒト化抗体軽もしくは重鎖をコードする配列を含んでなる単離されたおよび/または組換え(例えば、本質的に純粋なを含む)核酸に関する。
【0144】
ヒト抗体はまた、免疫化のために、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されている他のトランスジェニック動物を使用することのような他の多様な技術に従って、産生させてもよい。この技術では、ヒト重および軽鎖遺伝子座のエレメントが、内因性重および軽鎖遺伝子座の標的化された崩壊を伴うマウスまたは他の動物に導入される(例えば、ジャコボビッツ(Jakobovitz)ら(1993年)Nature362:255;グリーン(Green)ら(1994年)Nature Genet.7:13;ロンベルク(Lonberg)ら(1994年)Nature368:856;テイラー(Taylor)ら(1994年)Int.Immun.6:579(それらの開示内容全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。あるいは、遺伝子または染色体トランスフェクション方法によって、またはファージディスプレイ方法を使用する抗体レパートリーの選択を介して、ヒト抗体を構築することができる。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子は、糸状バクテリオファージの大または小コートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上の機能的抗体フラグメントとしてディスプレイされる。糸状粒子は、一本鎖DNAコピーのファージゲノムを含有するため、抗体の機能的特性に基づく選択はまた、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択を生じる。この方法では、ファージは、B細胞のいくつかの特性を模倣する(例えば、ジョンソン(Johnson)ら(1993年)Curr Op Struct Biol3:5564−571;マキャフェルティー(McCafferty)ら(1990年)Nature348:552−553(開示内容の全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞(例えば、米国特許第5,567,610号明細書および同第5,229,275号明細書(それらの開示内容は、それらの全体が参照により援用される)を参照のこと)によって作製することができる。
【0145】
1つの実施態様では、免疫化のために、XenoMouse(登録商標)(Abgenix,Fremont、カリフォルニア州)のような動物を使用して、「ヒト化」モノクローナル抗体が作製される。XenoMouseは、機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子によって置き換えられるその免疫グロブリン遺伝子を有したマウス宿主である。従って、このマウスによりまたはこのマウスのB細胞から作製されたハイブリドーマにおいて産生される抗体は、すでにヒト化されている。XenoMouseは、米国特許第6,162,963号明細書において説明されており、該文献は本明細書においてその全体が参照により援用される。HuMAb−MouseTM(Medarex)を使用して、類似の方法を達成することができる。
【0146】
本発明の抗体はまた、それらが所望される生物学的活性を示す限り、重および/または軽鎖の部分が本来の抗体における相同する配列と同一かあるいは相同である一方、鎖の残りの部分は別の種から誘導されるかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列に同一かあるいは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにそのような抗体のフラグメントに誘導体化され得る(例えば、モリソン(Morrison)ら、(1984年)PNAS81:6851;米国特許第4,816,567号明細書を参照のこと)。
【0147】
別の実施態様では、本発明は、細胞障害性薬剤にコンジュゲートされた上記の抗体またはそのフラグメント(活性または抑制性であるかにかかわらず)を提供する。本明細書において使用する用語「細胞障害性薬剤」は、その細胞表面上のNKG2A受容体を有する細胞を死滅させることが可能である分子である。本明細書において使用する用語「コンジュゲートされる」は、2つの薬剤が、共有結合および/または非共有結合を介してどちらも相互に結合されるか;あるいは直接もしくは連結部分を介して、相互に連接またはそうなければ接続されることを意味する。
【0148】
多数の毒性部分またはストラテジーのうちのいずれかを使用して、そのような細胞障害性抗体コンジュゲートを産生させることができる。所定の好適な実施態様では、抗体は、放射性同位元素または他の毒性化合物で直接誘導体化される。そのような場合、標識された単一特異性抗NKG2A抗体を、患者に注入することができ、ここで、次いで、それは、該標的抗原を発現する細胞、詳細には、NK細胞に結合し、死滅させることができ、非結合抗体は、簡単に身体から浄化される。「Affinity Enhancement System」(AES)のような間接的ストラテジーを使用することもできる(例えば、米国特許第5,256,395号明細書;バーベット(Barbet)ら(1999年)Cancer Biother Radiopharm14:153−166を参照のこと;それらの開示内容全体が参照により本明細書に援用される)。この特定のアプローチは、放射性標識ハプテンならびにNK細胞受容体および放射性ハプテンの両方を認識する抗体の使用に関与する。この場合、抗体は、まず、患者に注入され、標的細胞に結合され、次いで、一旦、非結合型抗体が血流から浄化され、放射性標識ハプテンが投与される。ハプテンは過剰増殖性LGL(例えば、NKまたはT)細胞上の抗体−抗原複合体に結合し、それによって、それらを死滅させ、非結合型ハプテンは、身体から浄化される。
【0149】
細胞障害性または細胞抑制効果を伴う部分の任意のタイプは、本発明の細胞障害性コンジュゲートを形成させ、特異的NK受容体発現細胞を阻害または死滅させるために本抗体にコンジュゲートさせることができ、放射性同位元素、毒性タンパク質、毒性小分子、例えば、薬物、毒素、免疫調節物質、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、酵素、オリゴヌクレオチド、酵素インヒビター、治療用放射性核種、血管新生インヒビター、化学療法薬、ビンカアルカロイド類、アントラサイクリン系薬剤、エピドフィルロトキシン類(epidophyllotoxins)、タキサン系薬剤、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗生物質、COX−2インヒビター、SN−38、有糸分裂阻害剤、抗血管新生およびアポトーシス誘導剤(apoptotoic agent)、特に、ドキソルビシン、メトトレキサート、タキソール、CPT−11、カンプトテシン類(camptothecans)、ナイトロジェンマスタード、ゲムシタビン、アルキルスルホン酸、ニトロソ尿素類、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、白金配位錯体、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、リシン、アブリン、5−フルオロウリジン、リボヌクレアーゼ(RNase)、DNaseI、ブドウ球菌(Staphylococcal)エンテロトキシン−A、ヨウシュヤマゴボウ(pokeweed)抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア(diphtherin)毒素、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、およびシュードモナス(Pseudomonas)内毒素などを含む(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版、(Mack Publishing Co.1995年);Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics (McGraw Hill,2001年);パスタン(Pastan)ら(1986年)Cell47:641;ゴールデンベルグ(Goldenberg)(1994年)Cancer Journal for Clinicians 44:43;米国特許第6,077,499号明細書を参照のこと;それらの開示内容全体が参照により本明細書に援用される)。毒素は、動物、植物、真菌、もしくは微生物由来であり得るか、または化学合成によりデノボで作製され得ることが理解されよう。
【0150】
毒素または他の化合物は、任意の多くの利用可能な方法を使用して、直接的もしくは間接的に抗体に連結することができる。例えば、薬剤を、N−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)のような架橋剤を使用するジスルフィド結合形成を介するか、または抗体のFc領域における炭水化物部分を介して、還元型抗体成分のヒンジ領域に付着させることができる(例えば、ウー(Yu)ら(1994年)Int.J.Cancer56:244;ウォン(Wong)、Chemistry of Protein Conjugation and Cross−linking(CRC Press1991年);ウペスラシス(Upeslacis)ら、「Modification of Antibodies by Chemical Methods」、Monoclonal antibodies:principles and applications、バーチ(Birch)ら(編)、187−230頁(Wiley−Liss,Inc.1995年);プライス(Price)、「Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies」、Monoclonal antibodies:Production,engineering and clinical application、リッター(Ritter)ら(編)、60−84頁(Cambridge University Press1995年)、カテル(Cattel)ら(1989年)Chemistry today7:51−58、デルプリノ(Delprino)ら(1993年)J.Pharm.Sci82:699−704;アルピッコ(Arpicco)ら(1997年)Bioconjugate Chernistry8:3;ライスフィールド(Reisfeld)ら(1989年)Antihody,Immunicon.Radiopharrn.2:217を参照のこと;それらのそれぞれの開示内容全体が参照により本明細書に援用される)。
【0151】
1つの好適な実施態様では、抗体は、I−131のような放射性同位元素で誘導体化される。多くの適切な放射性同位元素のいずれかを使用することができ、インジウム−111、ルテチウム−171、ビスマス−212、ビスマス−213、アスタチン−211、銅−62、銅−64、銅−67、イットリウム−90、ヨウ素−125、ヨウ素−131、リン−32、リン−33、スカンジウム−47、銀−111、ガリウム−67、プラセオジム−142、サマリウム−153、テルビウム−161、ジスプロシウム−166、ホルミウム−166、レニウム−186、レニウム−188、レニウム−189、鉛−212、ラジウム−223、アクチニウム−225、鉄−59、セレン−75、ヒ素−77、ストロンチウム−89、モリブデン−99、ロジウム−105、パラジウム−109、プラセオジム−143、プロメチウム−149、エルビウム−169、イリジウム−194、金−198、金−199、および鉛−211を含むがこれらに限定されない。一般に、放射性核種は、好ましくは、オージェ放射体については、20〜6,000keVの範囲、好ましくは、60〜200keVの範囲で、β放射体については100〜2,500keV、およびα放射体については4,000〜6,000keVの崩壊エネルギーを有する。α粒子の発生に伴って実質的に崩壊する放射性核種もまた好適である。
【0152】
本細胞障害性組成物における抗NKG2A抗体へのコンジュゲーションのための細胞障害性部分を選択する際に、該部分は、ヒト身体における心臓、腎臓、脳、肝臓、骨髄、結腸、乳、前立腺、甲状腺、胆嚢、肺、副腎、筋肉、神経線維、膵臓、皮膚、あるいは他の生命を維持する器官または組織から選択される1つもしくはそれ以上の組織のような生命を維持する正常な組織に対して有意なインビボでの副作用を発揮しないことを確実にすることが所望される。本明細書で使用する用語「有意な副作用」は、インビボで投与する場合、化学療法中に通常遭遇するような極僅かなもしくは臨床的に管理可能な副作用しか生じない抗体、リガンドまたは抗体コンジュゲートを指す。
【0153】
いくらか関連する実施態様では、本発明はまた、検出マーカーにコンジュゲートされる本発明の抗体を提供する。本明細書において使用する用語「検出マーカー」は、定量的もしくは定性的に観察または測定することができる任意の分子を指す。本発明のコンジュゲートされた抗体において有用な検出マーカーの例は、放射性同位元素、蛍光染料、または抗原/抗体(NKG2Aに対する抗体以外)、レクチン/炭水化物;アビジン/ビオチン;受容体/リガンド;もしくは分子インプリントポリマー/プリント分子系のいずれか1つのメンバーのような相補的結合対のメンバーである。
【0154】
本発明の抗体にコンジュゲートされる検出可能なマーカーを使用して、インビトロまたはインビボのいずれかで、NKG2Aに対する抗体の結合を検出してもよい。そのようなコンジュゲートもまた、競合型実験において、NKG2Aへの別の分子の結合を検出するために利用してもよい。インビボ設定では、本発明の検出マーカー(detctable marker)−抗体コンジュゲートを使用して、検出マーカーのエクスビボ検出(例えば、全身スキャンなどを介する)によってかまたは患者から得られる生物学的材料(例えば、血液、生検組織、他の体液、皮膚掻爬物など)における検出によって、本発明のNKG2A抗体組成物による患者の処置の効力をモニターすることができる。多様な生物学的材料におけるマーカーの検出は、前記材料における治療用抗体の存在と相関関係がある。
【0155】
関連する実施態様では、本発明は、個別の容器において:検出マーカー−抗NKG2A抗体コンジュゲート;およびNKG2A含有材料を含んでなるキットを提供する。NKG2A含有材料は、単離されたNKG2A、本発明の抗NKG2A抗体が結合するエピトープを含んでなるNKG2Aのフラグメント、またはその細胞表面上においてNKG2Aを発現する細胞であってもよい。
【0156】
非ヒト霊長類における抗ヒトNKG2A抗体の評価
好適な一連の実施態様では、本発明の抗NKG2A抗体の活性は、非ヒト霊長類においてインビボで評価される。そのような実施態様は、任意の極めて多様な理由によって行うことができる。ヒトNKG2Aと非ヒト霊長類由来のNKG2Aとの間の交差反応を考慮すると、および霊長類間の生理学的類似性を考慮すると、ヒトNKG2Aを認識する抗体を非ヒト霊長類に投与することによって、NKG2Aを発現する細胞(例えば、NK細胞)の活性をモジュレートするその能力、生成される副作用、毒性、薬力学、薬物動態学、バイオアベイラビリティ、半減期、投与の至適用量もしくは回数、他の治療用薬剤との組み合わせを含む至適処方、あるいは抗体の効力、安全性、または至適投与を決定するために測定され得る他の任意の特性を含むが、これらに限定されない多くの態様について、抗体をインビボで評価することが可能である。候補治療用化合物をインビボで評価する方法については当該分野において周知であり、例えば、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy、第17版、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版(その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0157】
類人猿、サル、および原猿類を含む任意の非ヒト霊長類を、本明細書に記載の方法に使用することができる。好適な霊長類として、アカゲザル(Macacus mulatta)、アフリカミドリザル(Chlorocebus aethiops)、マーモセット(Callithrix jacchus)、リスザル(Saimiri sciureus)、カニクイザル、およびヒヒ(Papio hamadryas)が挙げられる。別の好適な実施態様では、霊長類は類人猿ではなく、例えば、チンパンジー以外の霊長類である。非ヒト霊長類は、候補ヒト治療用薬剤のための安全性および効力アッセイにおいて一般に使用され、それらのケア、投与、生物学、および他の関連の特徴は当業者に周知である。1つの実施態様では、任意の非ヒト霊長類(またはアッセイにおける非ヒト霊長類由来の組織、細胞、もしくはタンパク質の使用)への任意の抗体の投与の前に、候補抗ヒトNKG2A抗体と非ヒト霊長類由来のNKG2Aとの交差反応が確認される。
【0158】
所定の実施態様では、非ヒト霊長類は、NKG2A調節化合物によって処置され得る疾患または病態のモデルとして役立つ。例えば、疾患または病態の徴候を処置もしくは緩和する抗体の能力を評価するために、例えば、自己免疫障害、アレルギー、癌、あるいは感染性疾患のモデルを使用することができる。本発明の実践のために決して制限するわけではないが、所定の非ヒト霊長類は、特定のタイプの疾患または病態を研究するのに特に有用である。例えば、マーモセットは、免疫および循環器系疾患の研究のためのモデル動物として役立っており、リスザルは感染性疾患の研究に、マカク(アカゲザルを含む)は特定の化合物の薬理学および毒物学の研究に、ヒヒは外科的研究、移植、および生体材料のモデルとして役立っている。
【0159】
1つの実施態様では、抗NKG2A抗体を非ヒト霊長類に投与して、NKG2A活性への結合および/またはモジュレートにおける抗体の効力を評価する。そのような実施態様では、抗体を、任意の用量、回数、または処方で投与することができ、実際にそのような因子は、効力に及ぼすそれらの関連の影響を評価するために変動することができる。抗体の効力は、任意の極めて多様な方法で評価することができる。例えば、NKG2AもしくはNKG2A発現細胞への抗体のインビボ結合、細胞、例えば、NK細胞上のNKG2Aの発現に対する抗体のインビボ効果、またはNKG2Aの活性に対する抗体のインビボでの影響を評価することができ、例えば、NK細胞活性のための上記のアッセイのいずれかを使用して測定される。そのような実施態様では、抗体は典型的に、非ヒト霊長類に投与され、例えば、非ヒト霊長類から得られる生物学的サンプルに対して、その効果が検出される。あるいは、所定の方法をインビトロで行うことができ、ここで、例えば、非ヒト霊長類から得られるNKG2A発現細胞に対する抗体の効果が調べられる。
【0160】
抗ヒトNKG2A抗体の結合を評価するために、抗体は、直接的または間接的のいずれかで標識することができる。例えば、抗体は、投与前に放射性同位元素で標識することができ、投与後、異なる時間で得られる多様な生物学的サンプル(例えば、血液、多様な組織または器官、骨髄、脾臓、リンパ系成分などのような免疫に関連する組織)を調べることによって、動物内のその局在が評価される。1つの好適な実施態様では、PBLが得られ、例えば、蛍光標識第二抗体を使用して、例えば、FACS解析によって結合抗体が検出されることで、NK細胞への抗体の結合が決定される。
【0161】
同様に、抗体を非ヒト霊長類に投与し、NKG2A活性に対するそれらの効果を評価することができる。例えば、NK細胞は、抗NKG2A抗体の投与の前後に得ることができ、NKG2Aの活性、発現、および/または2つ(もしくはそれ以上)の組の細胞の数を、任意の標準的な方法を使用して評価することができる。NKG2A刺激を阻止する(そしてそれによって、受容体を介するNK細胞の阻害を阻止する)本発明の活性化抗体は、NK細胞活性を増加することが予想される。NKG2A受容体を架橋する本発明の阻害抗体は、NK細胞活性を減少し、生存中のNK細胞の数を減少することが予想される。非ヒト霊長類において変更されたNK細胞活性を引き起こす両方のタイプの抗体は、ヒトにおける障害を処置する際の使用に適切であるとみなされ、ここで、NK細胞活性の増加または減少が所望される。
【0162】
別の組の実施態様では、抗体の安全性ならびにそれらの多様な薬物動態学的および薬力学的特性を評価するために、抗NKG2A抗体が非ヒト霊長類に投与される。安全性は、任意の極めて広範な方法で評価することができる。例えば、抗体の全体毒性が、半数致死量(LD50)を決定することによって評価することができ、これは、典型的に、キログラムあたりミリグラム(mg/kg)として表現され、ここで、値50は、研究下の動物間の死亡百分率を指す。LD50を決定することに加えて、心拍数、血圧などによって明示される挙動的、物理的、または生理学的変化を含む、投与に対する任意の検出可能な応答について動物をモニターすることによって、安全性もまた評価することができる。応答もまた、腎機能についてのクレアチンまたはBUN、肝機能などを決定するためのプロトロンビン、ビリルビン、アルブミン、または多様な酵素のような器官の機能を示すマーカーを調べるための血液および他の検査室に基づく試験に関与することができる(例えば、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy、第17版(参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。
【0163】
抗体のインビボでの薬物動態学的および薬力学的評価のための方法は、標準的であり、当該分野において周知である(例えば、ヘイ(He)ら(1998年)J.Immunol.160:1029−1035;アルヤナキアナ(Alyanakian)ら(2003年)Vox Sanguinis84:188−192、シャルマ(Sharma)ら(2000年)JPET293:33−41(その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。そのようなアッセイは、典型的に、抗NKG2A抗体を非ヒト霊長類に投与すること、ならびに投与後、多様な時間で、抗体の(血漿および他の組織における)レベル、分布、結合、安定性、および他の特性を調べることに関与する。そのようなアッセイは、前臨床研究の極めて重要な構成分であり、抗体のインビボでの半減期、分布、バイオアベイラビリティなどを決定することによって、治療域ならびに、従って、投与された抗体によるNK発現細胞の至適標的化を可能にする適切な投与規則(例えば、投与の回数および用量)を決定するのに役立つ。
【0164】
抗NKG2A抗体の効力、安全性、薬力学および薬物動態学の研究との共同で、多様な処方および投与規則についてもまた、体系的に試験して、抗ヒトNKG2A抗体についての至適効力および安全性を得ることができる。例えば、治療域(高い確率の治療成功を有する抗体の血漿濃度の範囲)、ならびにNKG2Aを標的化し、インビボでNK細胞活性をモジュレートするのに至適に安全かつ有効である該規則および処方を決定することができる。例えば、所定の抗体を、1、2、3、4、5、もしくは6日間ごと、または1、2、3、もしくは4週間ごとなどに投与し、安全性、効力、動態学などのパラメータを調べることができる。同様に、ある時点で投与される抗体の用量を変動することができ、同じパラメータを調べるか、または投与の用量および回数の任意の組み合わせを試験することができる。さらに、異なる処方、例えば、異なる賦形剤、抗NKG2A抗体の異なる組み合わせ、またはNKG2A抗体と他の治療用薬剤(処置する病態に依存する例えば、癌を処置するための化学療法剤)との異なる組み合わせを含む組成物を、非ヒト霊長類において試験することができる。また、異なる投与経路、例えば、静脈内、肺、局所などを比較することができる。投与パラメータを変動するそのような方法は、当業者に周知である。
【0165】
医薬組成物
本発明はまた、医薬組成物、例えば適切な賦形剤中の本発明の抗体(フラグメントを包含)およびその誘導体ならびに医薬状許容される担体を含有する医薬組成物を提供する。
【0166】
これらの組成物に使用され得る薬学的に許容可能なキャリアとして、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
本発明の組成物は、経口的、非経口的、吸入スプレーにより、局所的、直腸内、経鼻的、頬側的、膣内に、あるいはインプラントされたリザーバを介して投与することができる。本明細書で使用する「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注入または輸注技術を含む。RAのような局在化された障害では、組成物は、しばしば、局所的、例えば、炎症関節に投与される。
【0168】
本発明の無菌注入可能な形態は、水性または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適切な分散または湿潤剤および懸濁剤を使用して、当該分野において公知の技術に従って処方することができる。無菌注入可能な調製物はまた、非毒性の非経口的な許容可能な希釈剤もしくは溶媒における無菌注入可能な溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中溶液として)であってもよい。なかでも、用いられ得る許容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として従来的に用いられる。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリドを含む任意の低刺激不揮発性油を用いることができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、注入可能物の調製に有用であり、それらは、特に、ポリオキシエチレン化バージョン(polyoxyethylated version)のオリーブ油またはヒマシ油のような天然の薬学的に許容可能な油である。これらの油溶液または懸濁液はまた、エマルジョンおよび懸濁液を含む薬学的許容可能な剤形の処方において一般に使用される長鎖アルコール希釈液または分散剤、例えば、カルボキシメチルセルロースまたは類似の分散剤を含有してもよい。薬学的に許容可能な固体、液体、または他の剤形の製造に一般に使用される他の一般に使用される界面活性剤、例えば、Tween、Spanおよび他の乳化剤またはバイオアベイラビリティーの増強剤もまた、処方の目的のために使用することができる。
【0169】
本発明の組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液を含むがこれらに限定されない任意の経口的な許容可能な剤形で経口的に投与することができる。経口使用のための錠剤の場合、一般に使用されるキャリアとして、乳糖およびトウモロコシデンプンが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた、典型的に添加される。カプセル形態の経口投与のための有用な希釈剤として、乳糖および乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。経口用途に水性懸濁液が必要な場合、有効成分は乳化および懸濁剤と組み合わせられる。所望であれば、所定の甘味、風味付け、または着色剤もまた添加することができる。
【0170】
あるいは、本発明の組成物は、直腸内投与のための坐剤の形態で投与することもできる。これらは、薬剤と、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、従って、直腸内では融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤とを混合することによって調製することができる。そのような材料として、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。そのような組成物は、薬学的処方の分野において周知の技術に従って調製される。
【0171】
本発明の組成物は、特に、処置の標的が眼、皮膚、関節、もしくは下部腸管の疾患を含む局所適用によって用意にアクセス可能な領域または器官を含む場合、局所的に投与することができる。適切な局所処方は、これらの領域または器官のそれぞれについて容易に調製される。下部腸管のための局所適用は、直腸用坐剤処方(上記を参照のこと)または適切な浣腸処方で行うことができる。局所用経皮パッチも使用することができる。
【0172】
局所適用のために、組成物は、1つもしくはそれ以上のキャリアに懸濁または溶解された有効成分を含む適切な軟膏で処方してもよい。本発明の化合物の局所投与のためのキャリアとして、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、組成物は、1つもしくはそれ以上の薬学的に許容されたキャリアに懸濁または溶解された有効成分を含有する適切なローションまたはクリームにおいて処方することができる。適切なキャリアとして、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベイト60(polysorbate60)、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
眼科用途のために、組成物を、等張性、pH調整した滅菌食塩水中の微粉化懸濁液、または好ましくは、等張性、pH調整した食塩水中の溶液として、塩化ベンジルアルコニウムのような保存剤を伴うもしくは伴わずに、処方してもよい。あるいは、眼科用途として、組成物を、ワセリンのような軟膏において処方してもよい。
【0174】
本発明の処方物はまた、経鼻エアゾルまたは吸入によって投与してもよい。そのような組成物は、薬学的処方の分野に周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールもしくは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティーを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化もしくは分散剤を用いる食塩水中の溶液として調製してもよい。
【0175】
1つの実施態様では、本発明の抗体または治療用化合物は、単独かまたは患者または動物に対して標的化された送達のための別の物質と共に、リポソーム(抗体の場合、「免疫リポソーム」)に組み入れられ得る。そのような他の物質として、遺伝子治療のための遺伝子の送達のためかまたはNK細胞を活性化するもしくは成熟樹状細胞を阻害するためのアンチセンスRNA、RNAiもしくはsiRNAの送達のための核酸、あるいは他の手段を介するNK細胞の活性化(もしくは樹状細胞の阻害)のための毒物または薬物、あるいは本発明の目的に有用であり得る本明細書に記載の他の任意の薬剤を挙げることができる。
【0176】
別の実施態様では、本発明の抗体または他の化合物は、バイオアベイラビリティ、インビボでの半減期などを改善するために改変することができる。例えば、任意の数の形態のポリエチレングリコールおよび当該分野において公知の付着方法(例えば、リー(Lee)ら(2003年)Bioconjug Chem.14(3):546−53;ハリス(Harris)ら(2003年)Nat Rev Drug Discov.2(3):214−21;デケルト(Deckert)ら(2000年)Int J Cancer.87(3):382−90を参照のこと)を使用して、抗体および他の化合物をペグ化することができる。
【0177】
投与の用量および回数を決定すること
上記のように、本発明の重要な部分は、投与の安全かつ有効な用量および回数を決定するために、非ヒト霊長類において抗NKG2A抗体を試験することである。投与規則の適切な開始は、既に開発されている他の治療用モノクローナル抗体による経験を調べることによって、決定することができる。いくらかのモノクローナル抗体は、Rituxan(リツキシマブ(Rituximab))、Herceptin(トラツズマブ(Trastuzumab))またはXolair(オマリズマブ(Omalizumab))、Bexxar(トシツモマブ)、Campath(アレムツズマブ)、Zevalin、Oncolymならびに類似の投与規則(即ち、処方および/または用量および/または投与プロトコル)が本発明の抗体と共に使用され得るような臨床的状況において効率的であることが示されている。投与のためのスケジュールおよび用量は、例えば、製造者の指示書を使用して、これらの製品のための既知の方法に従って決定することができる。例えば、モノクローナル抗体は、100mg(10mL)または500mg(50mL)の単回使用のバイアルのいずれかにおいて10mg/mLの濃度で供給することができる。生成物は、9.0mg/mL塩化ナトリウム、7.35mg/mLクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLポリソルベイト(polysorbate80)、および注射用滅菌水において、靜注投与のために処方される。pHは6.5に調整される。本発明の抗体のための例示的に適切な用量範囲は、約10mg/m2〜500mg/m2であり得る。しかし、これらのスケジュールは例示的であること、ならびに至適スケジュールおよび規則は、臨床治験において決定されなければならない抗体の親和性および抗NKG2A活性を考慮して適応することができることが理解されよう。24時間、48時間、72時間または1週間もしくは1箇月間、細胞を飽和するNKG2Aへの抗体の注入の量およびスケジュールは、抗体の親和性およびその薬物動態パラメータを考慮して決定される。
【0178】
しかし、これらのスケジュールは例示的であること、ならびに至適スケジュールおよび規則は、臨床治験または前臨床治験において決定されなければならない抗体の親和性および抗NKG2A活性を考慮して適応することができることが理解されよう。24時間、48時間、72時間または1週間もしくは1箇月間、細胞を飽和するNKG2Aへの抗体の注入の量およびスケジュールは、抗体の親和性およびその薬物動態パラメータを考慮して決定される。
【0179】
本方法において患者または非ヒト霊長類に投与される用量は、経時的に被験体において有益な応答を生じるのに十分であるべきである。用量は、用いられる特定のモジュレーターの効力および被験体の病態、ならびに体重または処置しようとする領域の面積によって決定される。用量のサイズはまた、特定の被験体における投与に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質、および程度によって決定される。特定の患者において投与しようとする化合物の有効量を決定する際に、医師は、化合物の循環血漿レベル、化合物毒性、および抗化合物抗体の産生を評価し得る。一般に、化合物の等価用量は、典型的な被験体について、約1ng/kg〜10mg/kgである。投与は、単回または分割用量を介して達成することができる。
【0180】
ヒトおよび非ヒト霊長類NKG2A受容体の両方に結合する本発明の抗体は、投与の用量および回数を決定する際に有利に使用することができる。抗NKG2A抗体による治療のための至適治療域の選択は、非ヒト霊長類への抗体の投与に基づいて行うことができる。短期間(24時間共培養)におけるNK細胞活性化は、骨髄細胞(BMC)毒性を回避することが示唆されている一方、より長期間(骨髄細胞と活性化されたNK細胞との48時間共培養)は、造血再構成(hematopioetic reconstitution)に有害な影響を及ぼすことが示されている(コウ(Koh)ら(2002年)Biol.Blood Marrow Transplant.8:17−25)。しかし、より長期間(例えば、24時間または48時間さえよりも長い)にわたる個体におけるNK細胞のNK細胞活性化抗NKG2A抗体への曝露を可能にする投与規則を用いることは貴重である。理論にとらわれないことを所望するならば、抗NKG2A抗体が24時間または48時間を超えて存在するような規則は、標的(例えば、癌、感染、炎症)細胞に対する治療効果のために個体において、抗NKG2A抗体が十分な量のNK細胞に接触し、該細胞を活性化することを可能にする。従って、本発明者らは、個体を抗NKG2A抗体で処置する方法であって、前記個体を抗NKG2A抗体に、24時間、より好ましくは、48時間を超える期間、曝露させることを含んでなる上記方法を提供する。最も好ましくは、本発明は、24時間、または48時間を超える、あるいはより好ましくは、少なくとも5、6、7、10、14もしくは20日間の血漿中半減期を有する抗NKG2A抗体を前記個体に投与することを含んでなる。最も好ましくは、本発明は、Fc部分、好ましくは、G2またはG4タイプのFc部分を含んでなる抗NKG2A抗体を前記個体に投与することを含んでなる。本明細書においてさらに考察されるように、NKG2A機能を阻止する任意の適切な抗体、例えば、Z199またはZ270の結合特異性を有する抗体を使用することができる。好適な実施態様では、抗体は、2回目もしくはそれより後の投与で投与され、抗体は、キメラ、CDRグラフト化、ヒトまたはヒト化抗体である。
【0181】
本発明は、ヒトNKG2Aに対して指向される治療用抗体のための適切な投与規則を同定する方法を提供し、該方法は、投与規則、好ましくは、抗体の用量または回数が変動される一連の規則を使用して、抗体を非ヒト霊長類に投与すること、ならびに非ヒト霊長類におけるNKG2A発現細胞の活性および特に、投与規則のための霊長類の骨髄細胞(BMC)および/または造血細胞(hematopoeitic cell)、特に、骨髄細胞再構成に対する治療の効果を決定することを含んでなる。好ましくは、方法は、抗NKG2A抗体投与後の骨髄再構成を評価することをさらに含んでなり、一般的に、骨髄再構成が、例えば、抗NKG2A療法前に観察されるレベルに接近するレベルまたは予め決定された最小レベルにまで正常化するのに要する日数を決定することに関与する。次いで、骨髄再構成を正常化させることを可能にする投与規則を選択または同定することが可能である。
【0182】
本発明は、非ヒト霊長類におけるNKG2A発現細胞の活性を決定することおよび/またはNKG2A発現細胞の活性において検出可能なモジュレーションをもたらす投与規則を同定もしくは選択することをさらに含んでなることができる。
【0183】
前記投与規則は、例えば、個体のNK細胞を活性化する抗NKG2A抗体への曝露の期間、および抗体投与の回数について、表され得る。そのようなパラメータに基づいて、投与回数および用量は、例えば、抗体の血漿中半減期、親和性、バイオアベイラビリティ(またはピーク血清濃度までの時間)などを考慮し、使用される特定の抗体に依存して、適応することができる。
【0184】
規則が、霊長類による骨髄再構成の部分的もしくは完全な回復または正常化を可能にし、NKG2A発現細胞の活性における検出可能なモジュレーションをもたらすという決定は、投与規則がヒトにおける使用に適切であることを示す。
【0185】
内因性ヒト免疫グロブリンの異化速度については、良好に特徴付けされている。IgGの半減期は、アイソタイプに従ってばらつきがあり、IgG1、IgG2、およびIgG4では3週間まで、およびIgG3では約1週間である。薬物動態学が抗原結合性または免疫原性によって変更されない限り、無傷(intact)なヒトIgGモノクローナル抗体は内因性IgGに匹敵する薬物動態学を示す。先に考察したように、ヒトIgG1、IgG2、およびIgG4アイソタイプの非常に長い半減期は、FcRnによる異化保護が原因である。FcRnは、肝細胞、内皮細胞、および網内系(RES)の食細胞上で発現される。IgGがエンドサイトーシスを受ける場合、エンドソームの低いpHは、IgGFcドメインのFcRnへの結合を促進し、これは、IgGを細胞表面へリサイクルし、リソソーム分解からIgGをサルベージする。他のIgGアイソタイプと比較してIgG3の短い半減期は、FcRn結合ドメインにおける単一のアミノ酸の差異(435位のヒスチジンの代わりにアルギニン)が原因である。
【0186】
無傷(intact)なマウスIgG1およびIgG2抗体の排除は、対応するヒトアイソタイプよりかなり速い。マウス抗体の半減期は、ヒトにおいて12〜48時間の範囲である。ヒトにおけるマウス抗体の短い半減期は、マウスFcドメインのヒトFcRnへの低い親和性結合が原因である。ヒトFcRnは、ヒト、ウサギ、およびモルモットIgGに結合するが、ラット、ウシ、ヒツジ、またはマウスIgGに有意には結合せず;マウスFcRnは、これらのすべての種由来のIgGに結合する。F(a’)2、Fab、およびscFVを含む抗体フラグメントは、Fcドメインを欠き、FcRnには結合しない。従って、これらのフラグメントの半減期は無傷(intact)なIgGよりも実質的に短く、半減期は、主にそれらの分子量によって決定される。より低い分子量のFabおよびscFvフラグメントは、腎クリアランスに供されて、排泄が加速される。報告された半減期は、F(ab’)2フラグメントでは11〜27時間の範囲であり、Fabフラグメントでは0.5〜21時間の範囲である。一価および多価scFv構築物の半減期は、数分〜数時間の範囲であり得る。
【0187】
抗原結合性は、抗体の薬物動態学に有意に影響を及ぼし得る。抗体が内在化された細胞膜抗原に結合するか、または分泌型抗原によって形成される免疫複合体が循環から効率的に排除される場合、抗原は、抗体クリアランスのための「シンク(sink)」として作用し得る。抗原シンクは、用量依存的薬物動態学を生じる。用量レベルが抗原プールを飽和するのに不十分である場合、抗原媒介クリアランスが優勢であり、抗体半減期は内因性IgGの半減期より短く;抗原を飽和する用量レベルでは、RES媒介クリアランスが優勢であり、半減期は内因性IgGに類似する。
【0188】
本発明の好適な実施態様は、抗NKG2A抗体が1回目の投与で投与される投与規則について記載している。抗NKG2A抗体の1回目の投与は、NK細胞を活性化し、間接的に、活性化NK細胞によって、個体における骨髄細胞再構成を阻害し得る。抗NKG2A抗体の2回目の投与は、骨髄細胞再構成回復の薬力学的プロファイルに一致して投与され、例えば、個体の骨髄細胞再構成の速度が少なくとも部分的に回復していることが予想される時に投与されるべきである。従って、ヒトおよび非ヒト霊長類において受容体を交差反応する抗NKG2A抗体を使用することによって、本発明者らは、骨髄再構成が影響を受けないことが報告されている24時間を超える期間の間、NK細胞を抗NKG2A抗体に接触させる方法を提供する。
【0189】
好適な実施態様では、抗NKG2A抗体の2回目の投与は、初回投与の少なくとも6、7、8、9または10日後、好ましくは、初回投与の少なくとも14、15、16、または20日後に投与される。最も好ましくは、抗NKG2A抗体の2回目の投与は、被験体における抗NKG2A抗体血漿濃度が、初期(投与時)濃度の半分に到達することが見積もられる時間(日)の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10日後または少なくとも14、15、16、もしくは20日後、好ましくは、抗NKG2A抗体の少なくとも1つの血漿中半減期の期間の少なくとも6〜10日後または少なくとも15〜20日後に投与される。あるいは、方法は、抗NKG2A抗体のピーク血清濃度について表され得、ここで、抗NKG2A抗体の2回目の投与は、被験体における抗NKG2A抗体血漿濃度が個体のピーク血清濃度の半分に到達することが見積もられる時間(日)の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10日後または少なくとも14、15、16、もしくは20日後に投与される。
【0190】
さらなる実施態様では、抗NKG2A抗体の2回目の投与は、被験体における抗NKG2A抗体血漿濃度が、検出不能な濃度に到達することが見積もられる時間(日)の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10日後または少なくとも14、15、16、もしくは20日後、好ましくは、抗NKG2A抗体の少なくとも2、3、4またはそれ以上の血漿中半減期の期間の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10日後または少なくとも14、15、16、もしくは20日後に投与される。
【0191】
好適な実施態様では、投与規則は、G2b、好ましくは、G4サブタイプのFc領域を含んでなる抗体(それぞれIgG2bまたはIgG4)について記載される。好ましくは、前記抗体は、約5、6、7、8、9、10、12、15、18、20、21日間、または好ましくは、約10〜15日間、15〜21日間の血漿中半減期を有する。好ましくは、抗体は、NK細胞上のFc受容体(CD16)に実質的に結合しないFc領域を含んでなる。前記抗体は、好ましくは、1回目の投与、ならびに2回目および/またはその後の投与で投与され、ここで、2回目および/またはその後の投与は、抗体がその初期濃度の半分に到達することが見積もられる少なくとも6、7、8、9、10、14、15、16、もしくは20日後に投与される。前記2回目および/またはその後の投与は、投与後の日数の絶対数、例えば、好ましくは、初回投与の少なくとも6、7、8、9もしくは10日後、好ましくは、1回目の投与の少なくとも14、15、16、20、21、24、28、30もしくは35日後で表され得る。前記抗体は、天然に存在するFc部分、好ましくは、天然に存在するヒトFc部分を含んでなる抗体であってもよく、またはより好ましくは、抗体の血漿中半減期を増加するおよび/またはFc受容体への結合を改変する、例えば、Fcn受容体への結合を増加して、血漿中半減期を増加するか、もしくはFcγIIIaへの結合を減少して、NK細胞に対する望ましくない毒性(ADCC)を減少する1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換のような改変を含有してもよい。そのような改変は、当該分野において周知の方法に従って行うことができ、その改変のいくらかは、本明細書においてさらに記載されている。
【0192】
なお別の好適な実施態様では、投与規則は、抗体フラグメント、好ましくは、例えば、約5、6、7、8、9、10、12、15、18、20、21日間の血漿中半減期を有するように本明細書に記載のようなポリエチレングリコールで改変されたF(ab’)2フラグメントについて記載される。前記抗体は、好ましくは、1回目の投与、ならびに2回目および/またはその後の投与で投与され、ここで、2回目および/またはその後の投与は、抗体がその初期濃度の半分に到達することが見積もられる少なくとも6、7、8、9、10、14、15、16、もしくは20日後に投与される。前記2回目および/またはその後の投与は、投与後の日数の絶対数で表され得、例えば、好ましくは、初回投与の少なくとも6、7、8、9もしくは10日後、好ましくは、1回目の投与の少なくとも14、15、16、20、21、24、28、30もしくは35日後である。
【0193】
薬学的組み合わせ
本発明の別の重要な実施態様に従えば、抗NKG2A抗体および/または他の化合物は、抗体もしくは化合物が投与されている特定の治療目的のために通常利用される薬剤を含む1つもしくはそれ以上のさらなる治療用薬剤と共に処方されてもよい。さらなる治療剤は、通常、処置する特定の疾患または病態のための単剤治療における該薬剤に典型的に使用される用量で投与される。そのような治療用薬剤として、癌の処置において使用される治療用薬剤(化学療法化合物、ホルモン、血管新生インヒビター、アポトーシス誘導剤(apoptiotic agent)などを含む「抗癌化合物」);感染性疾患を処置するために使用される治療用薬剤(抗ウイルス化合物を含む);自己免疫疾患、炎症性障害、および免疫拒絶の処置のような他の免疫療法において使用される治療用薬剤;サイトカイン;免疫調節剤;補助化合物;または他の抗体ならびに活性化および抑制性NK細胞受容体の両方に対する他の抗体のフラグメントが挙げられる。他で具体的に述べない限り、下記の組み合わせの組成物の組は、本発明の活性化抗体、阻害抗体または細胞毒素−抗体コンジュゲートのいずれかを含んでなることができる。
【0194】
癌の処置のための治療用薬剤として、化学療法剤(DNA複製、有糸分裂および染色体分離(chromosomal segreagation)を妨害する薬剤、ならびにポリヌクレオチド前駆体の合成および正確性を崩壊する薬剤を含む)、ホルモン療法剤、抗血管新生剤、ならびにアポトーシスを誘導する薬剤が挙げられる。
【0195】
例示的に考えられる化学療法剤として、アルキル化剤、代謝拮抗剤、細胞障害性抗生物質、ビンカアルカロイド、例えば、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキサート、カンプトテシン、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン(系薬剤)、ならびにそれらの誘導体およびプロドラックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0196】
ホルモン剤としては、例えば、LHRHアゴニスト、例えば、リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、およびブセレリン;抗エストロゲン、例えば、タモキシフェンおよびトレミフェン;抗アンドロゲン例えば、フルタミド、ニルタミド、シプロテロンおよびビカルタミド;アロマターゼ阻害剤例えば、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾールおよびファドロゾール;ならびにプロゲスターゲン例えば、メドロキシ、クロルマジノンおよびメゲストロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0197】
併用治療のための化学療法剤が米国特許第6,524,583号明細書の表Cに列挙されており、薬剤および適応に関する開示内容は、具体的に、本明細書において参照により援用される。列挙されたそれぞれの薬剤は例示的であり、限定的ではない。当業者は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、第33章、特に624〜652頁を参照のこと。用量の変動は、処置する病態に依存して生じる可能性がある。処置を施行する医師は、個々の被験体に対する適切な用量を決定することが可能である。
【0198】
抗血管新生剤の例として、それぞれVEGFまたはVEGF受容体に対して指向される中和抗体、アンチセンスRNA、siRNA、RNAi、RNAアプタマーおよびリボザイムが挙げられる(米国特許第6,524,583号明細書、その開示内容は本明細書において参照により援用される)。国際公開第98/16551号パンフレット(具体的に本明細書において参照により援用される)に記載されているように、拮抗特性を伴うVEGFの変異体もまた用いることができる。併用治療に関して有用であるさらなる例示的抗血管新生剤が米国特許第6,524,583号明細書の表Dに列挙されており、薬剤および適応に関する開示内容は、具体的に、本明細書において参照により援用される。
【0199】
例示的アポトーシス誘導剤として、bcr−abl、bcl−2(bcl−1、cyclin D1とは異なる;(GenBank)寄託番号M14745、X06487;米国特許第5,650,491号明細書;および同第5,539,094号明細書;それぞれ、本明細書において参照により援用される)ならびにBcl−x1、Mcl−1、Bak、A1、およびA20を含むファミリーメンバーが挙げられるが、これらに限定されない。bcl−2の過剰発現はT細胞リンパ腫においてはじめて発見された。癌遺伝子bcl−2は、Bax、アポトーシス経路におけるタンパク質に結合し、不活化することによって、機能する。bcl−2機能を阻害すると、Baxの不活化が防止され、アポトーシス経路を促進させることが可能である。例えば、アンチセンスヌクレオチド配列、RNAi、siRNAまたは小分子の化学化合物を使用するこのクラスの発癌遺伝子の阻害が、アポトーシスの増強を生じさせるための本発明での使用のために考慮される(米国特許第5,650,491号明細書;同第5,539,094号明細書;および同第5,583,034号明細書;それぞれは本明細書において参照により援用される)。
【0200】
本発明の分子と組み合わせて使用することができる有用な抗ウイルス剤として、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよびヌクレオシド類似体が挙げられるが、これらに限定されない。抗ウイルス剤の例として、ジドブジン、アシクロビル、ガングシクロビル、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、およびリバビリン、ならびにフォスカルネット、アマンタジン、リマンタジン、サキナビル、インディナビル、アンプレナビル、ロピナビル、リトナビル、α−インターフェロン、アデフォビル、クレバジン、エンテカビル、およびプレコナリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0201】
自己免疫または炎症性障害については、とりわけ、免疫抑制薬、例えば、アザチオプリン(例えば、Imuran)、クロラムブシル(例えば、Leukeran)、シクロホスファミド(例えば、Cytoxan)、シクロスポリン(例えば、Sandimmune、Neoral)、メトトレキサート(例えば、Rheumatrex)、副腎皮質ステロイド、プレドニゾン(例えば、Deltasone、Meticorten)、エタネルセプト(例えば、Enbrel)、インフリキシマブ(例えば、Remicade)、TNFのインヒビター、FK−506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、抗リンパ球グロブリン、デオキシスパガリンまたはOKTを含む1つもしくはそれ以上のタイプの自己免疫または炎症性障害、あるいは自己免疫もしくは炎症性障害の任意の徴候または特徴に有効であることが既知の他の任意の化合物。
【0202】
免疫調節化合物の好適な例はサイトカインを含む。他の例として、効果、好ましくは、NK細胞活性の活性化もしくは増強の、あるいはNK細胞の増殖を誘導または支持する効果を有する化合物が挙げられる。免疫調節性化合物の例として、NODおよびPKR受容体のリガンド、TLR3(dsRNA、ポリI:CおよびポリA:U)、TLR4(ANA380、イサトリビン(isatoribine)、LPSおよびMPLのような模倣物)、TLR7(オリゴヌクレオチド、ssRNA)、TLR9(CpGsのようなオリゴヌクレオチド)のアゴニストのようなTLR(Toll様受容体)のアゴニスト(それらの多くの例が、アキラ(Akira)およびタケダ(Takeda)((2004年)Nature Reviews4:499)に記載されている)ならびにNK細胞上の抑制性受容体を阻止する(例えば、KIR2DL1およびKIR2DL2/3活性を阻害する)かまたはNK細胞活性化受容体にアゴニストとして作用する(例えば、NCR受容体NKp30、NKp44またはNK046を架橋する抗体)抗体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明に従う組み合わされたアプローチにおいて多様なサイトカインが用いられ得る。本発明によって考慮される組み合わせにおいて有用なサイトカインの例として、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−21、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNF−α、TNF−β、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β、またはIFN−γが挙げられる。本発明の併用処置または組成物において使用されるサイトカインは、患者の状態およびサイトカインの相対的毒性のような臨床適応に一致する標準的な規則に従って、投与される。
【0203】
補助化合物はとしては、その例として、制吐剤、例えば、セロトニン拮抗薬および治療薬、例えば、フェノチアジン系薬剤、置換ベンズアミド系薬剤、抗ヒスタミン系薬剤、ブチロフェノン系薬剤、副腎皮質ステロイド、ベンゾジアゼピン系薬剤およびカンナビノイド系薬剤;ビスホスホネート系薬剤、例えば、ゾレドロン酸およびパミドロン酸;ならびに造血成長因子、例えば、エリスロポエチンおよびG−CSF、例えば、フィルグラスチム、レノグラスチムおよびダルベポエチンを挙げることができる。
【0204】
本発明の活性化抗NKG2A抗体とともに処方され得る他の治療用薬剤は、NK細胞を活性化することができる他の化合物を含む。例えば、NCR、例えば、NKp30、NKp44、およびNKp46を刺激する化合物を使用することができ(例えば、PCT国際公開第01/36630号パンフレット、バイタレ(Vitale)ら(1998年)J.Exp.Med.187:2065−2072、シボリ(Sivori)ら(1997年)J.Exp.Med.186:1129−1136;ペッシノ(Pessino)ら(1998年)J.Exp.Med.188:953−960;ペッシノ(Pessino)ら(1998年)J.Exp Med.188:953−960を参照のこと;その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)、KIR抑制性受容体のインヒビターが可能であることと同様である(例えば、ヤワタ(Yawata)ら(2002年)Crit Rev Immunol22:463−82;マーティン(Martin)ら(2000年)Immunogenetics.51:268−80;ラニーア(Lanier)(1998年)Annu Rev Immunol.16:359−93を参照のこと;その開示内容全体は参照により本明細書に援用される)。好ましくは、NKp30のアクチベーター、例えば、天然のリガンドまたは活性化抗体が使用される。1つの実施態様では、TGF−β1はNKp30をダウンレギュレートすることができるため、TGF−β1のインヒビターが使用される(例えば、カストリコニ(Castriconi)ら(2004年)C.R.Biologies327:533−537を参照のこと(その開示内容全体は、そのすべてが本明細書に援用される))。
【0205】
本発明の阻害抗NKG2A抗体と共に処方することができる治療用化合物は、NK細胞を阻害することができる化合物である。そのような化合物として、NCR、例えば、NKp30、NKp44、およびNKp46のインヒビター、活性化NKG2受容体(例えば、NKG2C)のインヒビター;抑制性KIR受容体のアクチベーター、または抑制性Ly49受容体のアクチベーターが挙げられる。
【0206】
本発明の活性化抗体はまた、忍容性が所望される抗原と共に処方され得る。本発明の活性化抗体によって引き起こされる樹状細胞の増強された死滅は、その時に免疫系に提示される抗原の局在化を引き起こすと考えられる。そのような組成物は、自己免疫疾患、ならびにアレルギーを処置するのに有用である。本発明の活性化抗体と共に処方され得る抗原の例として、ミエリン塩基性タンパク質(mylein basic protein)、ブタクサならびに他の花粉および植物アレルゲン、ペットアレルギーの原因アレルゲン、(ピーナッツおよび他のナッツアレルゲン、乳製品アレルゲン、ゴマおよび他の種子アレルゲンのような)食物アレルギーの原因アレルゲンまたは昆虫アレルゲンが挙げられる。
【0207】
動物およびヒトの用量の相互関係(体表面積の平方メートルあたりのミリグラムに基づく)については、フレイレイヒ(Freireich)ら、(1966年)Cancer Chemother Rep50:219に記載されている。体表面積は、患者の身長および体重から概算しよもよい。例えば、Scientific Tables,Geigy Pharmaceuticals,Ardley、ニューヨーク州、1970,537を参照のこと。本発明の有効量の化合物は、約0.001mg/kg〜約1000mg/kg、より好ましくは、0.01mg/kg〜約100mg/kg、より好ましくは、0.1mg/kg〜約10mg/kgの範囲;または範囲の下限が0.001mg/kg〜900mg/kgの間の任意の量であり、範囲の上限が0.1mg/kg〜1000mg/kgの間の任意の量である任意の範囲(例えば、0.005mg/kg〜200mg/kg、0.5mg/kg〜20mg/kg)であり得る。有効用量はまた、当業者により認識されているように、治療する疾患、投与経路、賦形剤の使用、および他の薬剤の使用のような他の治療処置との併用の可能性に依存して変動する。
【0208】
さらなる治療用薬剤を含んでなる医薬組成物では、さらなる治療用薬剤の有効量は、単に該さらなる薬剤を使用する単剤療法規則において通常利用される用量の約20%〜100%の間である。好ましくは、有効量は、通常の単剤療法用量の約70%〜100%の間である。これらのさらなる治療用薬剤の通常の単剤療法用量(monotherapuetic dosage)は、当該分野において周知である。例えば、ウェルズ(Wells)ら、編、Pharmacotherapy Handbook、第2版、Appleton and Lange,Stamford,Conn.(2000年);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000、上製版、Tarascon Publishing,Loma Linda、カリフォルニア州(2000年)(それぞれの文献は、その全体が本明細書において参照により援用される)を参照のこと。
【0209】
上記で列挙したさらなる治療用薬剤のいくつかは、本発明の化合物と相乗的に作用することが予想される。これが生じる場合、それは、さらなる治療用薬剤および/または本発明の化合物の有効用量を、単剤療法において必要とされる用量から減少することが可能である。これは、さらなる治療用薬剤または本発明の化合物のいずれかの毒性副作用を最小にする、効力における相乗的改善、投与もしくは使用の改善された簡易性および/または化合物調製もしくは処方の費用全体の減少の利点を有する。
【0210】
上記の所定の治療用薬剤は、上記で開示された2つもしくはそれ以上のカテゴリーに当てはまることが、当業者に認識されるであろう。本発明の目的のために、そのような治療用薬剤は、療法の該カテゴリーのそれぞれのメンバーであるとみなされるべきであり、ある特定されたカテゴリーにある任意の治療用薬剤の特徴付けは、別の特定されたカテゴリー内にも属するとみなすことを妨げない。
【0211】
なお別の実施態様では、本発明は、本発明の抗体および上記の薬剤またはアレルゲンのいずれかから選択される第2の治療用薬剤もしくはアレルゲンを含んでなる物質の組成物を提供し、ここで、抗体および第2の薬剤は、個別の剤形であるが、相互に会合しない。本明細書において使用する用語「相互に会合する」は、個別の剤形が同じ規則の部分として販売および投与されることを意図することが容易に明らかであるように、個別の剤形が、一緒に、またはそうでなければ、相互に付着されて包装されることを意味する。薬剤および抗体は、好ましくは、ブリスターパックもしくは他のマルチチャンバ包装、または(例えば、2つの容器間の引っ掻き線上で破開することによって)使用者によって分離することができる(ホイルポーチなどのような)接続され、個別に密封された容器において一緒に包装される。
【0212】
なお別の実施態様では、本発明は、個別の容器において、a)本発明の抗体;およびb)第2の治療用薬剤またはアレルゲンを含んでなるキットを提供する。また、上記の治療用薬剤またはアレルゲンのいずれもそのようなキット中に存在してよい。
【0213】
抗NKG2A抗体および組成物の治療用途
本発明の活性化抗体は、NK細胞が標的細胞に接触する場合、NK細胞を、それらの細胞表面上にHLA−EまたはQa1を有する標的細胞を溶解することが可能であるようにする。従って、1つの実施態様に従えば、本発明は、NK細胞および標的細胞を含んでなる集団における前記標的細胞のNK細胞媒介溶解を再構成する方法であって、ここで、前記NK細胞は、その表面上のNKG2Aによって特徴付けられ、そして前記標的細胞は、その表面上のHLA−EまたはQa1の存在によって特徴付けられ、前記NK細胞と上記の活性化モノクローナル抗体またはそのフラグメントとを接触させる工程を含んでなる、上記方法を提供する。
【0214】
この活性は、それらの細胞表面上にHLA−EまたはQa1を発現する有害な細胞によって特徴付けられる病態および障害の処置において、特に有用である。そのような1つの細胞型は樹状細胞、好ましくは、成熟樹状細胞である。従って、本発明は、自己免疫または炎症性障害あるいは少なくとも部分的に、過度の樹状細胞、もしくは過剰反応の樹状細胞活性によって引き起こされる他の任意の障害を処置する方法を提供する。そのような障害を処置する方法は、活性化抗体を含んでなる本発明の非細胞障害性組成物を患者に投与する工程を含んでなる、
【0215】
本方法を使用して処置可能な例示的自己免疫障害として、とりわけ、溶血性貧血、悪性貧血、結節性多発動脈炎、全身性エリテマトーデス、ウェゲナー肉芽腫症、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、クローン病、原発性胆汁性肝硬変(primary bilary cirrhosis)、強皮症、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、1型糖尿病、ぶどう膜炎、グレーブス病、アルツハイマー病、甲状腺炎、心筋炎、リウマチ熱、強皮症、強直性脊椎炎、関節リウマチ、糸球体腎炎、サルコイドーシス、皮膚筋炎、重症筋無力症、多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、円形脱毛症、天疱瘡/類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、橋本病、乾癬、および白斑が挙げられる。
【0216】
これらの方法で処置することができる炎症性障害の例として、副腎炎、肺胞炎、胆嚢胆管炎、虫垂炎、亀頭炎、眼瞼炎、気管支炎、滑液胞炎、心臓炎、蜂窩織炎、子宮頚炎、胆嚢炎、声帯炎、蝸牛炎(cochlitis)、潰瘍性大腸炎、結膜炎、膀胱炎、皮膚炎、憩室炎、脳炎、心内膜炎、食道炎、耳管炎、結合組織炎、毛包炎、胃炎、胃腸炎、歯肉炎、舌炎、肝脾炎、角膜炎、内耳炎、喉頭炎、リンパ管炎、乳房炎、中耳炎、髄膜炎、子宮炎、粘膜炎(mucitis)、心筋炎、筋炎(myosititis)、鼓膜炎、腎炎、神経炎、精巣炎、離断性骨軟骨炎、耳炎、心膜炎、腱鞘炎(peritendonitis)、腹膜炎、咽頭炎、静脈炎、急性灰白髄炎、前立腺炎、歯髄炎、網膜炎、鼻炎、卵管炎、強膜炎、強膜脈絡膜炎(selerochoroiditis)、陰嚢炎、副鼻腔炎、脊椎炎、脂肪組織炎、口内炎、滑膜炎、耳管炎、腱炎、扁桃腺炎、尿道炎、および膣炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0217】
また、樹状細胞のアロ反応性NK細胞死滅は、骨髄移植における造血細胞の生着を改善したことも示されている(L.ルッジェーリ(L.Ruggeri)ら、Science,2002,295:2097−2100)。従って、別の実施態様では、本発明は、患者における造血細胞の生着を改善する方法であって、活性化抗体を含んでなる本発明の組成物を前記患者に投与する工程を含んでなる上記方法を提供する。移植の改善は、移植片対宿主病の発症率または重症度の減少、移植片の生存の延長、または移植によって処置されている疾患(例えば、造血器癌)の徴候の減少もしくは排除により、明らかである。この方法は、好ましくは、白血病の処置において使用される。
【0218】
癌細胞はまた、それらの表面上のHLA−Eの存在を介する死滅を回避することが示されている。HLA−Eは、外科的に取り出された神経膠芽腫標本、神経膠腫細胞系統および神経膠芽腫細胞培養(J.ウィチフセン(J.Wischhusen)ら、J Neuropathol Exp Neurol.2005年;64(6):523−8);ならびに白血病由来細胞系統、黒色腫、黒色腫由来細胞系統および頚部腫瘍(Rマリン(R Marin)ら、Immunogenetics.2003年、54(11):767−75)において検出されている。従って、別の実施態様では、本発明は、癌を患う患者を処置する方法であって、ここで、前記癌は、HLA−Eを発現する細胞によって特徴付けられ、活性化抗体を含んでなる本発明の組成物を前記患者に投与する工程を含んでなる上記方法を提供する。
【0219】
この方法に従って処置され得る癌の例として、膀胱、乳、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、頚部、甲状腺および扁平上皮癌を含む皮膚の癌種を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫を含むリンパ球系統の造血器腫瘍;急性および慢性骨髄性白血病および前骨髄球性白血病を含む骨髄系統の造血器腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、奇形癌種、神経芽細胞腫および神経膠腫を含む他の腫瘍;星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、および神経鞘腫を含む中枢および末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫(rhabdomyoscaroma)、および骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;ならびに黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌および奇形癌種を含む他の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0220】
本発明に従って処置することができる好適な癌として、神経膠腫、神経膠芽腫、白血病、黒色腫、および頚部腫瘍が挙げられる。
【0221】
ウイルス感染細胞はまた、NK細胞死滅を回避する機構として、HLA−E発現を使用する。HLA−E発現は、C型肝炎ウイルス感染細胞(J.マッターマン(J.Mattermann)ら、American Journal of Pathology.2005年;166:443−453);およびサイトメガロウイルス感染細胞(C.セルボニ(C.Cerboni)ら、Eur J Immunol.2001年;31(10):2926−35)と関連している。従って、別の実施態様では、本発明は、ウイルス感染を患う患者を処置する方法であって、ここで、前記ウイルス感染は、HLA−Eを発現するウイルス感染細胞によって特徴付けられ、活性化抗体を含んでなる本発明の組成物を前記患者に投与する工程を含んでなる上記方法を提供する。
【0222】
この方法によって処置され得るウイルス感染の例として、レトロウイルス科(Retroviridae)(例えば、HIV−1(また、HTLV−III、LAVもしくはHTLV−III/LAV、またはHIV−IIIとも称される;およびHIV−LPのような他の単離体)のようなヒト免疫不全ウイルス);ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カルシウイルス科(Calciviridae)(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(Togaviridae)(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(Flaviviridae)(例えば、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(Coronaviridae)(例えば、コロナウイルス(Coronaviruses));ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(Filoviridae)(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器多核体ウイルス);オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えば、インフルエンザウイルス)またはトリインフルエンザウイルス(例えば、H5N1もしくは関連ウイルス);ブニヤウイルス(Bungaviridae)科(例えば、ハンタウイルス、ブニヤウイルス(bunga viruses)、フレボウイルスおよびナイロウイルス(Nairo viruses));アレナウイルス科(Arenaviridae)(出血熱ウイルス);レオウイルス科(Reoviridae)(例えば、レオウイルス(Reoviruses)、オルビウイルス(orbiviurses)およびロタウイルス);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(Parvoviridae)(パルボウイルス);パポーバウイルス科(Papovaviridae)(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(Adenoviridae)(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)(単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV));ポックスウイルス科(Poxviridae)(天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);イリドウイルス科(Iridoviridae)(例えば、アフリカ豚コレラウイルス);ならびに未分類のウイルス(例えば、海綿状脳症の原因因子、デルタ肝炎の因子(B型肝炎ウイルスの欠損サテライト(defective satellite)と思われる)、非A非B型肝炎の因子(クラス1=内部伝染;クラス2=非経口的伝染(即ち、C型肝炎);ノーウォーク(Norwalk)および関連ウイルス、およびアストロウイルス)のウイルスによって引き起こされる感染が挙げられるが、これらに限定されない。
【0223】
最も好ましくは、処置しようとするウイルス感染は、C型肝炎ウイルス感染またはサイトメガロウイルス感染から選択される。
【0224】
また、本発明の活性化抗体を使用して、抗原に対する忍容性を誘導することもできる。従って、別の実施態様に従えば、本発明は、患者において抗原に対する忍容性を誘導する方法であって、活性化抗体;を含んでなる本発明の組成物を前記患者に投与する工程;および忍容性が所望される抗原を前記患者に投与する工程を含んでなる、上記方法を提供する。方法は、好ましくは、アレルギーを処置するために使用され、ここで、抗原はアレルゲンである。抗原の選択は、本発明の活性化抗体および抗原を含んでなる組み合わせ組成物のための上記のものから作製することができる。
【0225】
本発明の阻害抗体または細胞毒素−抗体コンジュゲートを含んでなる組成物は、NK細胞を死滅させるか、NK細胞の活性を減少するか、NK細胞の増殖を減少するか、NK細胞溶解に対して感受性な細胞の溶解を防止するかまたは集団におけるNK細胞の数を減少するのに有用である。1つの実施態様に従えば、本発明は、NK細胞の活性を減少するか、NK細胞の増殖を減少するか、NK細胞溶解に対して感受性な細胞の溶解を防止するか、または集団におけるNK細胞の数を減少する方法であって、NK細胞と、阻害抗体または細胞毒素−抗体コンジュゲートを含んでなる本発明の組成物とを接触させる工程を含んでなる上記方法を提供する。これらの方法は、NK過剰反応および/または過剰増殖によって特徴付けられる疾患において、特に有用である。
【0226】
例えば、共有のPCT公開国際公開第2005/105849号パンフレットは、NK型LDGLの処置のための多様なNK細胞受容体に対する抗体の使用について概説している。PCT公開国際公開第2005/115517号パンフレットは、NK細胞過剰反応が膵島自己免疫の存在、促進、および/または亢進に関連し、従って、I型糖尿病において役割を果たすことを公開している。従って、1つの実施態様に従えば、本発明は、NK細胞過剰反応またはNK細胞過剰増殖によって特徴付けられる病態を患う患者を処置する方法であって、阻害抗体または細胞毒素−抗体コンジュゲートを含んでなる本発明の組成物を前記患者に投与する工程を含んでなる上記方法を提供する。好適な実施態様では、病態は、NK型LDGLまたはI型糖尿病から選択される。
【0227】
上記の治療方法のいずれも、処置する病態に適切な第2の治療用薬剤を患者に投与するさらなる工程を含んでなり得る。患者に投与され得る第2の治療用薬剤のタイプの例として、サイトカイン、サイトカインインヒビター、造血成長因子、インスリン、抗炎症剤、免疫抑制薬、抗癌化合物(例えば、化学療法化合物(chemotherapuetic compound)、抗血管新生化合物(anti−angioenic compound)、アポトーシス促進化合物、ホルモン剤、DNA複製、有糸分裂および/もしくは染色体分離を妨害する化合物、またはポリヌクレオチド前駆体の合成および正確性を崩壊する薬剤)、補助化合物(例えば、鎮痛剤もしくは制吐剤)、活性化NK細胞受容体を作動する化合物、(例えば、NKp30、NKp44、およびNKp46)、抑制性NK細胞受容体のアンタゴニスト、(例えば、インヒビターKIR受容体)、TGF−β1のアンタゴニスト、抑制性NK細胞受容体を刺激することが可能な化合物、(例えば、天然のリガンド、CD94/NKG2A受容体の活性を刺激することができる抗体もしくは小分子、またはKIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR3DL1、およびKIR3DL2のような抑制性KIR受容体)、あるいは活性化NK細胞受容体のインヒビター、(例えば、NKp30、NKp44、もしくはNKp46)が挙げられる。
【0228】
上記のクラスの化合物の具体的な例については、薬学的組み合わせに関するセクションに記載されており、任意のそのような特定の化合物、ならびに任意のこれらのクラスの治療用薬剤(therapuetic agent)の他のメンバーを、本発明の方法で患者に投与してもよい。使用するための治療用薬剤の選択は、医学分野の当業者によって容易に行われ、処置または防止する病態の性質、病態の重症度、処置される患者の全般的健康状態、および処置する医師の判断に依存する。
【0229】
第2の治療用薬剤は、本発明(inventionor)の抗NKG2A組成物と同時、前、または後に投与してもよい。同時に投与する場合、第2の治療用薬剤は、個別に処方された組成物(即ち、複数の剤形)か、または抗体含有組成物の一部のいずれかとして投与し得る。
【0230】
いくつかの実施態様では、本発明のNKG2A抗体組成物の投与の前に、NK細胞上のNKG2A、およびおそらく他のタンパク質の発現が評価され、ならびに/あるいは樹状細胞(好ましくは、成熟樹状細胞)の活性もしくは数および/または細胞上のNKG2Aリガンド(例えば、HLA−EもしくはQa1)の存在が測定される。これは、NKまたは患者由来の樹状細胞のサンプルを入手し、NK細胞について、例えば、イムノアッセイを使用して試験して、細胞上のKIR受容体、他のNKG2受容体、またはNCR(例えば、NKp30、NKp44、NKp46)のようなマーカーの相対的台頭を決定することによって、達成することができる。また、他の方法を使用して、RNAに基づく方法、例えば、RT−PCRまたはノーザンブロッティングのように、これらのタンパク質の発現を検出することができる。患者においてNKG2Aを発現するNK細胞の検出は、本方法が患者を処置する際の使用に良好に適することを示す。
【0231】
処置は、複数ラウンドの抗体に関連するものであってもよい。例えば、初回ラウンドの投与後、NKG2A発現NK細胞、ならびに/あるいは樹状細胞、またはそれらの表面上にNKG2AもしくはHLA−E、またはQa1を発現する他の細胞のレベルおよび/または活性を再測定することができ、適切であれば、さらなるラウンドの投与を実施することができる。この方法では、複数ラウンドの受容体/細胞/リガンド検出および抗体組成物投与を、例えば、障害が抑制されるまで実施することができる。
【0232】
また、本方法を使用して、1を超える抗体を産生および/または使用することができることが理解されよう。例えば、NKG2Aの異なるエピトープ、NKG2A、CD94、もしくはHLA−Eの異なる組み合わせ、または任意の個体において存在し得る3つのタンパク質のいずれかの異なるアイソフォームに対して指向される抗体の組み合わせを、一般的にまたは(例えば、適切な処置規則を決定するための患者におけるNKG2A発現細胞の分析に従って)任意の個々の患者のいずれかにおけるNKG2A刺激の阻害またはNK細胞化成の阻害の理想のレベルを入手するのに適切であるように、使用することができる。
【0233】
特定の治療アプローチが、患者の病態自体に有害であることが知られておらず、NKG2A抗体処置を有意に妨げない限り、その本発明との組み合わせが考慮される。
【0234】
本発明はまた、手術などの古典的アプローチと組み合わせて使用してもよい。1つもしくはそれ以上の第2の治療用薬剤またはアプローチを本治療と組み合わせて使用する場合、組み合わされた結果が、各処置を個別に行う場合に観察される効果の相加である必要はない。少なくとも相加的効果が一般的に所望されるが、本発明の抗体組成物が、NK細胞を阻害または活性化するのに有効性を保持する限り、本発明の方法は、第2の治療用薬剤または他のアプローチの使用をさらに含んでなり得る。また、組み合わされた処置が相乗効果を示すことを求める特定の要件は存在しないが、このことは間違いなく可能であり、有利である。NKG2A抗体に基づく処置は、例えば、数分〜数週間および数箇月の範囲の間隔だけ他の処置より先行するか、または後に続き得る。1回を超える本発明の抗NKG2A組成物の投与を利用することもまた、想定される。第2の治療用薬剤または他のアプローチは、数日おきもしくは数週間おきに本発明のNKG2A抗体組成物と交換可能に投与してもよく;あるいは抗NKG2A処置のサイクルが与えられた後、他の薬剤療法またはアプローチのサイクルが続いてもよい。いずれにしても、第2の治療用薬剤を患者に投与するさらなる工程を含んでなる方法で必要なのは、投与時間にかかわらず、治療上有益な効果を発揮するのに有効な組み合わされた量で第2の治療用薬剤および本発明の抗体の両方を送達することだけである。
【0235】
抗体および組成物を患者に投与する本方法はまた、動物を試験するか、またはヒト疾患の動物モデルにおける本明細書に記載の方法または組成物のいずれかの有効性を試験するために使用することができることが理解されよう。従って、本明細書において使用する用語「患者」は、任意の温血動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、霊長類、最も好ましくは、ヒトを意味する。
【0236】
本発明のさらなる態様および利点を、以下の実施例のセクションで開示するが、これは例示的であり、本出願の範囲を制限するものではないとみなすべきである。
【実施例】
【0237】
実施例1.自家移植iDCの死滅は、CD94/NKG2A+KIR−NK細胞のサブセットによって媒介される
外因性IL−2の存在下で培養されたポリクローナルNK細胞は、iDCに対して強力な細胞溶解活性を呈することは先に示されていた。従って、本研究では、ドナーAM、ACおよびDBから単離されたポリクローナルNK細胞集団が、自家移植および同種異系iDCの両方を効率的に死滅させた。しかし、自家移植iDCに対する細胞溶解活性は、適切な抗HLAクラスImAbの存在下で増加され得る。
【0238】
これらのデータは、DC上の自己HLAクラスIとNK細胞上の抑制性受容体との間に生じる阻害相互作用の崩壊の結果であり得る。これらの結果に基づいて、本発明者らは、全NK細胞プールの機能のみがiDCに対する自発的細胞障害性を示す一方、それらの受容体とHLAクラスI分子との間の有効な阻害相互作用のため、他のNK細胞は示さないという仮定を立てた。この可能性について分析するために、ドナーAM、ACおよびDBから単離されたNK細胞クローンのパネルを、自家移植(および同種異系)iDCに対する細胞溶解活性について評価した。本発明者らの仮定と一致して、NK細胞クローンの機能のみが自家移植iDCを溶解した。他のクローンは、ほとんどもしくは全く細胞障害性を示さなかった。さらに、細胞性溶解クローンの百分率は、標的細胞が同種異系iDCによって提示された場合、僅かに増加した(下記を参照のこと)。
【0239】
所定のNK細胞クローンがiDCを溶解できないことが、それらの抑制性NKRとHLAクラスI分子との相互作用に反映するかどうかを確認するために、これらのクローンを、抗HLAクラスImAbの非存在または存在下(即ち、阻害相互作用を崩壊する条件下)のいずれかで自家移植iDCを溶解する能力について分析した。これらの実験の結果に基づいて、NK細胞クローンを3つの異なる機能カテゴリーに分け、さらに、キラーIg様受容体(KIR)2DL、KIR3DL1およびCD94/NKG2Aを含むHLAクラスI特異的抑制性受容体(即ち、ヒトにおける主要なMHCクラスI特異的抑制性受容体)の発現について分析した。
【0240】
NKクローンの第1のグループ(グループA)は、iDCに対する自発的細胞溶解活性によって特徴付けられた。それらの細胞溶解性活性の大きさは、抗HLAクラスImAbの存在下では、増加し得なかったか、またはごく最小限にしか増加し得なかった。これらのクローンは、それらがCD94/NKG2Aを発現したが、自己HLAクラスI対立遺伝子を反応するKIR2DLおよびKIR3DL1を欠如したため、抑制性受容体の発現について、むしろ同種である。NK細胞クローンの第2のグループ(グループB)もまた、自発的にiDCを死滅させる能力について特徴付けられた。しかし、グループAのクローンと異なり、それらの細胞障害性は、抗HLAクラスImAbの存在下で増加した。このことは、NK細胞媒介細胞溶解を制限するが、廃止しない阻害相互作用の存在を示唆するものであった。このグループはまた、CD94/NKG2A+クローンからなり、自己HLAクラスI対立遺伝子と反応性のKIRを欠如した。意外にも、グループBのNKクローンの細胞溶解性活性はまた、抗CD94mAbの存在下で増加され得、従って、細胞障害性の(部分的)阻害が実際にCD94/NKG2Aによって媒介されたことが示された。
【0241】
第3のグループ(グループC)に属するNKクローンは、自家移植iDCに対する細胞障害性を示さなかった。しかし、抗HLAクラスImAbの存在下で、iDCは効率的に溶解され、強力な阻害相互作用の存在が示唆された。これらのNKクローンは、抑制性受容体の発現に関してより異種であった。意外にも、自己HLAクラスI対立遺伝子に特異的なKIR2DLまたはKIR3DL1を発現する事実上すべてのNKクローンは、このグループに含まれた。さらに、これらのうちのいくつかのクローンは、単一のKIRの発現によって特徴付けられた一方、他は、異なる特異性を伴う複数のKIRを発現した。iDCに対する細胞溶解活性の再構成は、抗HLAクラスImAbによってだけでなく、抗KIRmAbによっても得ることができた(下記を参照のこと)。
【0242】
最終的に、少数の画分のグループCのNK細胞クローンがKIR−CD94/NKG2A+であった。それらの細胞障害性は、CD94のmAb媒介阻止または抗HLAクラスImAbによって再構成され得る。これらのデータは:(a)すべてのNK細胞が自家移植iDCを死滅させることが可能というわけではない(但し、すべてのNK細胞は、抗HLAクラスImAbの存在下でiDCを溶解し得る)こと;(b)iDCに対する自発的細胞溶解活性を示すクローンは、CD94/NKG2A+KIR−表面表現型によって特徴付けられるNKサブセット(グループAおよびB)に制限されること;(c)自己HLAクラスI対立遺伝子に特異的であるKIR2DLまたはKIR3DL1を発現するクローンは、自家移植iDCを死滅させない(グループC)ことを示す。
【0243】
いくつかのNKクローンは、自己反応性KIRおよびCD94/NKG2Aの両方を発現した。すべての場合において、それらはグループCに託され、それらの細胞溶解活性は、抗HLAクラスIおよび抗KIRmAbの両方によって再構成され得る一方、抗CD94mAbはほとんどまたは全く効果を有さなかった。最終的に、iDCが同種異系(KIRミスマッチ)個体から誘導された実験のみにおいてKIR+NKG2A−クローンがiDCに対する細胞溶解活性を示すことが見出されたことを述べる価値がある。この場合、発現されたKIRは、同種異系DC上のHLAクラスI対立遺伝子を認識することができないため、KIR+NKG2A−細胞は、アロ反応性を示す。代表的なNKクローンAM4(KIR3DL1+)は、自家移植iDC(BW4+BW6−)を死滅させることができなかった一方、それは、同種異系KIRミスマッチ(BW4−BW6+)iDCを溶解した。自家移植iDCの死滅は、抗HLAクラスImAbの存在下で再構成され得る一方、同種異系iDCの死滅は、有意に改変されなかった。
【0244】
自家移植と同種異系KIRミスマッチiDCとの間を区別するKIRの能力を示す別の例は、KIR2DL1およびKIR2DL2を同時発現するクローンDB3によって提供される。このクローンは、そのKIR表現型に基づいて、すべての異なるHLA−C対立遺伝子(グループ1およびグループ2の両方)を認識すべきであるため、「非アロ反応性」として規定することができる。実際に、このクローンは、自家移植または同種異系iDCを死滅させなかった一方、両方の標的の溶解は、抗HLAクラスImAbによって効率的に再構成され得る。さらに、溶解の再構成が、自家移植(CW1/CW3)iDCに対する抗KIR2DL2mAbおよび同種異系(CW2/CW4)iDCに対する抗KIR2DL1mAbによって得られた。最終的に、予想されるように、NKG2A+KIR−クローンの場合、自家移植または同種異系iDCを死滅させる能力において、実質的に異なる差異は認められなかった。
【0245】
実施例2−iDCのNK媒介細胞障害性に対する感受性は、HLA−EクラスI分子のダウンモジュレーションに反映する
先の研究は、iDCおよびmDCが、HLAクラスI表面発現に関して顕著な差異を示すことを実証した。従って、HLA−A、B、CおよびE分子の単一形態の決定基に特異的なmAbの使用によって、成熟を経験しているDCは、細胞表面でそれらのHLAクラスI発現を著しくアップレギュレートすることが示されている。さらに、HLAクラスIのアップレギュレーションは、mDCがNK細胞媒介溶解に対して耐性になる極めて重要な機構を提示した。
【0246】
異なる段階のDC成熟を代表する細胞上の多様なHLAクラスI分子の発現を直接評価するために、本発明者らは、単球上のHLA−A、B、CおよびE、同じ個体から誘導されるiDCおよびmDCの発現を比較分析した。すべてのHLAクラスI分子は、iDCと比較して、mDCにおいて高度にアップレギュレートされた。意外にも、それらは、単球(即ち、iDCの前駆体)と比較して、iDCにおいて明らかにダウンレギュレートされた。従って、単球由来のiDCの作製は、新規表面分子(例えば、CD1a)および機能的特性の獲得(またはアップレギュレーション)だけではなく、CD14、ならびにHLA−A、B、CおよびE分子を含む多様な分子の発現の消失(またはダウンレギュレーション)をもたらすようである。このことは、HLAクラスIダウンレギュレーションの程度が、iDCが、特定のサブセットのNK細胞(CD94/NKG2A+KIR−)によって媒介される溶解に感受性になることを可能にするレベルに同調されることを示唆するものであろう。
【0247】
この方針に沿って、KIR+NK細胞はiDCを死滅させることができないため、iDCによって発現されるHLA−BまたはHLAC分子の量は、KIR交差反応および抑制性シグナルの送達を生じるのに十分であることが考えられる。一方、HLA−Eのダウンレギュレーションは、KIR−NKG2A+NK細胞がiDCを死滅させる機能を可能にするのに十分である。実際、(HLA−E特異的3D12mAbによって検出されるように)HLA−Eは、iDCにおいてほとんど検出することができない一方、それは、mDC上において部分的にのみ再発現されることが認められ得る。しかし、すべての場合において、mDCにおけるHLA−E発現は、単球または同じ個体から誘導されるPBLと比較してより低かった。驚くべきことに、HLA−A、BおよびC分子は、PHA芽球によるよりもmDCにより高いレベルで発現されるが、HLA−Eの表面発現は、PHA芽球におけるよりもmDCにおける方が一貫して低かった。これに関して、先の研究は、エフェクターNK細胞のKIR/NKG2A表現型とは独立して、自家移植PHA芽球が、NK溶解に高度に耐性であるという明らかな証拠を提供した。
【0248】
実施例3−NKクローンの小画分は、mDCの死滅を媒介することができる
ポリクローナルNK細胞がmDCを効率的に死滅させないという先の報告に一致して、本発明者らは、iDCを溶解するほとんどのNK細胞クローンがmDCを死滅させなかったことを示す。しかし、興味深いことに、mDCは、グループAに属するNKクローンのより少数の画分(即ち、抗HLAクラスImAbによって増加され得ない自発的抗iDC細胞溶解活性を示すもの)によって溶解された。自家移植mDCの溶解はiDCのそれと比較して低く、抗HLAクラスImAbの存在下で増加することができた。このことは、iDCと比較してmDCにおけるHLAEのより高い発現が、CD94/NKG2Aを介するより効率的なシグナル伝達を生じることを示唆する(これはまた、それらの溶解を増加する抗CD94mAbの能力によっても示唆される)。グループBのNKクローン(即ち、iDCを死滅させることが可能であり、その溶解は抗HLAクラスImAbによって増加される)に関して、それらは、mDCに対する溶解活性を示さなかったが;しかし、細胞溶解活性は、抗HLAクラスIまたは抗CD94mAbの存在下で示され得た。最後に、iDCを死滅させることができないグループCに属するクローン(ほとんどの場合、KIR+)はまた、mDCを死滅させることもできなかった。mDCに対する細胞障害性は、HLAクラスIとKIRとの間の相互作用のmAb媒介崩壊においてのみ検出され得た。
【0249】
実施例4−DCを死滅させる能力におけるKIR−NKG2A+NK細胞の異種性
上記で例示されるように、グループAおよびBに属するNK細胞クローンが、同種KIR−NKG2A+表面表現型によって特徴付けられる一方、グループCは、KIR+NKG2A−またはKIR−NKG2A+クローン(またはより低い頻度で、KIR+NKG2A+クローン)のいずれかを含む。KIRを介するネガティブなシグナル伝達が、NKG2Aを介するものより効率的であると想定すると、(それらのシグナル伝達能における本質的差異またはDC上における特異的HLAクラスIリガンドの異なる利用可能性のいずれかのため)、何故、KIR−NKG2A+細胞がNKクローンのすべての3つのグループにおいて検出可能であるかを明らかにすべきである。所定のNK細胞クローンの細胞溶解活性は、抑制性(KIR、NKG2A)と誘発性(NCR、NKG2D)受容体との間の均衡の結果であるため、本発明者らは、異なるグループのNKクローンにおけるこれらの分子の発現のレベルについて分析した。特に、本発明者らは、NKG2AおよびNKp30の発現(即ち、iDCおよびmDCのNK細胞媒介溶解の誘導において優勢な役割を果たす誘導性NCR)に注目した。
【0250】
最初に、グループA、BおよびCに属するNKG2A+KIR−クローンを、NKG2A表面発現のレベルについて評価した。グループCに属するNKクローンは、グループAおよびBと比較して、極めて高いレベルのNKG2Aを発現した。さらに、グループAクローンは、グループBクローンと比較して、NKG2Aのより低い発現によって特徴付けられた。これらのデータは、NKG2A発現のレベルとiDC(およびmDC)を死滅させる能力との間の負の相関関係の存在を示唆する。iDCにおいて発現される低い量のHLA−E分子は、高いまたは低いレベルのNKG2Aを発現するNK細胞によって、特異に感知され得る一方、(高いレベルのHLA−Eを発現する)mDCは、極めて低いNKG2A表面密度によって特徴付けられるNKクローンによってのみ溶解に感受性である。NKp30の発現に関して、これは、分析したほとんどのNKG2A+クローンにおいて比較可能であった。これらのデータに一致して、抗HLAクラスImAbの存在下(即ち、阻害相互作用の非存在下)でiDCを死滅させるそれらの能力は、有意差を示さなかった。
【0251】
考察.異種性は、細胞溶解応答の大きさにおいて、NKG2A+KIR−細胞の間でさえも存在する。これは、NKG2Aの表面密度と負の相関関係を示すようである。従って、低いレベルのNKG2Aを発現するNKクローン(グループA)は、iDCおよびmDCの両方を溶解する一方、より高いレベルのNKG2Aを発現するクローンは、iDCのみを死滅させるか、または若干の場合(NKG2Aブライト)において、iDCおよびmDCの両方を死滅させることができなかった。
【0252】
明らかに、本発明者らはまた、HLA−Eの表面発現が単球と比較してiDCにおいて鋭敏に減少する一方、それは、mDCにおいて部分的に回復することを示す。対照的に、iDCにおいて減少した細胞表面レベルのHLA−BおよびHLA−Cはなお、KIR3DL1またはKIR2DLに効率的に従事するのに十分である。
【0253】
予想外の所見は、自家移植mDCを死滅させることが可能であるグループAに属するNK細胞クローンの小さなサブセット(5〜10%)の同定であった。これらのNKクローンは、自己反応性KIRを発現せず、低レベルのNKG2Aによって特徴付けられた。これにより、これらのNK細胞は、より高いレベルのNKG2Aを発現するNK細胞と比較して、標的細胞上におけるHLA−Eのダウンレギュレーションを容易に感知することが可能である。従って、抗HLAクラスImAbの存在下では、iDCに対するNKG2AlowNK細胞の細胞溶解活性の増加は認められなかった。一方、(より高いレベルのHLA−Eを発現する)mDCの場合、抗HLAクラスImAbの添加により、細胞溶解活性の増加が生じ、これにより、十分なレベルの受容体−リガンド相互作用が提供されれば、グループAクローンによって発現されるNKG2A分子が溶解を阻害できることが示された。mDCでは、いくつかの程度の異種が、HLA−EのおよびおそらくNKp30のリガンドの発現において存在し得ることが考えられる。異なる量のHLA−Eを発現する細胞間を区別するNK細胞の画分の能力が付与されれば、mDC間のいくつかのみNK細胞のこの特定のサブセットに耐性を与えるのに十分なHLA−Eの表面密度を発現し得ることが可能である。
【0254】
実施例5−Z270抗NKG2AmAbは成熟樹状細胞に対するNK細胞株の溶解活性を増加する
Z270は、NKG2Aに対するマウスIgG1モノクローナル抗体である。Z270のアミノ酸配列は配列番号に記載されている。Z270はマウス抗体であるため、それはヒトFc受容体に結合せず、従って、ヒト細胞系またはマウスFc受容体を有する細胞を欠く任意の系において本発明の活性化抗体として作用する。対照的に、マウス(mounse)Fc受容体を有する細胞を含んでなる系では、そのIgG1定常領域がそのようなFc受容体に結合するという事実のため、Z270は本発明の阻害抗体である。
【0255】
NKG2Aおよび未成熟樹状細胞を発現するヒトNK細胞クローン(形質細胞様樹状細胞または骨髄系樹状細胞)を、標準的な方法を使用して作製した。得られるヒトNK細胞クローンBH3、BH18およびBH34の溶解活性を、自家移植未成熟樹状細胞上において試験した。iDCに対するこれらのクローンのそれぞれの溶解活性は、CD94(IgM)およびNKG2A(Z270、IgG1)に対するモノクローナル抗体の非存在または存在下で平行に試験した。比較のため、抗HLAクラスI抗体およびコントロールIgG1(抗2B4抗体)の存在下での溶解活性についても試験した。
【0256】
以下の表1に示されるように、NKクローンは、抗体の非存在下またはコントロール抗体抗2B4mAbの存在下でiDCの溶解をほとんど示さなかった。しかし、自家移植iDCの死滅は、抗CD94、抗NKG2AmAbZ270または抗HLAクラスImAbのいずれかの存在下で再構成され得る。この結果は、NKG2A機能の妨害により、iDCのNK細胞溶解が再構成されることを実証する。また、モノクローナルZ270のNKG2A結合領域は、NKG2Aの抑制機能を阻止することが可能であることを実証する。
【0257】
【表1】
【0258】
実施例6−抗NKG2A抗体を使用する自家移植標的細胞溶解の再構成
抗体の非存在下またはmAbZ199、もしくはmAbZ270の存在下で、HLA−Eを発現する自家移植PHA芽球標的細胞に対するヒトNKバルク細胞の細胞溶解活性について試験した。細胞溶解活性を、標準的な4時間の51Cr遊離アッセイによって評価した。すべての標的は、マイクロ滴定プレートのウェルあたり3000個の細胞で使用した。NK細胞の数を変動させて、図1に示されるように、0.01〜100の間のエフェクター/標的比を生成した。
【0259】
抗体の非存在下では、NK細胞は、HLA−Eを発現する標的細胞に対する細胞溶解活性をほとんど示さなかった。しかし、抗NKG2A抗体(mIgG1定常領域を有する)Z270または(mIgG2b定常領域を有する)Z199の存在下で、NKクローンは、それらのHLA−Eリガンドを認識することができなくなり、PHA芽球標的に対して強力な細胞溶解活性を示した。Z270はマウスIgG1定常領域を有し、Z199はマウスIgG2b定常領域を有する。それらのいずれの抗体もヒトFc受容体に有意に結合することができない。
【0260】
同様に、HLA−Eポジティブ自家移植PHA芽球細胞のNKバルク細胞死滅の阻害は、Z270F(ab’)2フラグメント(図2)、抗KIRmAbDF200もしくはKIR2DL1およびKIR2DL2、3を介するシグナル伝達を阻止するpan2Dの使用、または抗体W6/32によって、効率的に逆転され得る。また、試験した条件(E/T比=1、50μg/ml mAb)下では、PHA芽球細胞は、NKバルク細胞によって死滅されなかったが、しかし、この阻害は、Z270mAbまたはZ270Fabフラグメントのいずれかの使用によって、逆転され得た。
【0261】
実施例7−材料および方法
mAb.この研究では、本発明者らの研究室で生成された以下のmAbを使用した:JT3A(IgG2a、抗CD3)、AZ20およびF252(それぞれIgG1およびIgM、抗NKp30)、c127(IgG1、抗CD16)、c218(IgG1、抗CD56)、EB6b(IgG1、抗KIR2DL1およびKIR2DS1)、GL183(IgG1、抗KIR2DL2 KIR2DL3およびKIR2DS2)、FES172(IgG2a、抗KIR2DS4)、Z27(IgG1、抗KIR3DL1)、XA185(IgG1、抗CD94)、Z199、Z270(IgG2b、抗NKG2A)、A6−136(IgM、抗HLAクラスI)、131(IgG1、A3、A11およびA24を含む抗HLA−A対立遺伝子)ならびにE59/53(IgG2a、抗HLA−A)[シッコネ(Ciccone)ら、(1990年)PNAS USA87:9794−9797;ペンデ(Pende)ら、(1998年)J Immunol.28:2384−2394]。mAbF4/326(IgG、抗HLA−C)[マーシュ(Marsh)ら、(1990年)Tissue Antigens36:180−186]、116−5−28(IgG2a、抗HLA−Bw4対立遺伝子)および126−39(IgG3、抗HLA−Bw6対立遺伝子)は、K.ゲルストルプ(K.Gelsthorpe)博士(Sheffield,GB)(XII International HLA Workshop)より贈呈され、3D12(IgG1、抗HLA−E)[リー(Lee)ら(1998年)J.Immunol.160:4951−4960]は、ダニエル・ゲラフティ(Daniel Geraghty)博士(Fred Hutchinson Cancer Research Center,Seattle、ワシントン州)より贈呈された。
【0262】
抗CD1a(IgG1−PE)、抗CD14(IgG2a)、抗CD83(IgG2b)および抗CD86(IgG2b−PE)は、Immunotech(Marseille、仏国)から購入した。D1.12(IgG2a、抗HLA−DR)mAbは、R.S.アコラ(R.S.Accolla)博士(Pavia、伊国)より提供された。HP2.6(IgG2a、抗CD4)mAbは、P.サンチェス−マドリード(P.Sanchez−Madrid)博士(Madrid、西国)より提供された。
【0263】
ポリクローナルまたはクローナルNK細胞集団の作製PBLを得るために、PBMCをFicoll−Hypaque勾配上で単離し、プラスチック付着細胞から枯渇させた。富化されたNK細胞を、PBLを抗CD3(JT3A)、抗CD4(HP2.6)および抗HLA−DR(D1.12)mAbと共にインキュベート(4℃で30分間)し、続いて、ヤギ抗体マウス被覆Dynabeads(Dynal,Oslo、諾国)と共にインキュベート(4℃で30分間)し、免疫磁気枯渇により単離した。CD3−CD4−HLA−DR−細胞を、100U/ml rIL−2(Proleukin,Chiron Corp.,Emeryville、カリフォルニア州)および1.5ng/ml PHA(Gibco Ltd,Paisley、英国)の存在下、照射処理されたフィーダー細胞上で培養し、ポリクローナルNK細胞集団を入手したか、または先に記載のように、限界希釈後、NK細胞クローンを入手した。
【0264】
DCの作製。 PBMCを健康なドナーから誘導し、プラスチック付着細胞を、IL−4およびGMCSF(Peprotech,London、英国)の存在下、それぞれ20ng/mlおよび50ng/mlの最終濃度で培養した。6日間の培養後、細胞は、iDCに対応するCD14−CD1a+CD83−表現型によって特徴付けられた。CD14−CD1a+CD83+CD86+mDCを作製するために、iDCを、2日間、LPS(Sigma−Aldrich,St.Louis、ミシガン州)により、1μg/mlの最終濃度で刺激した。
【0265】
フローサイトフルオロメトリー分析および細胞溶解活性1または2色サイトフルオロメトリー分析(FACSCalibur,Becton Dickinson and Co.,Mountain View、カリフォルニア州)では、細胞を、適切なmAb、続いて、PE−またはFITCコンジュゲートアイソタイプ特異的ヤギ抗マウス第2試薬(Southern Biotechnology Associated,Birmingham)で染色した。ポリクローナルおよびクローナルNK細胞集団を、自家移植または異種DCのいずれかに対する4時間の[51Cr]遊離アッセイにおいて細胞溶解活性について試験した。マスキング実験のために、添加された多様なmAbの濃度は10μg/mlであった。E/T比をテキストで示す。
【0266】
実施例8−Z270重および軽鎖可変領域の特徴付け
マウスハイブリドーマ株、Z270の凍結細胞ペレットを融解し、RNeasy Midiキット(Qiagenカタログ番号75142)を使用して処理し、71μgの全RNAを単離した。約5マイクログラムのZ270RNAを逆転写に供し、Amersham Biosciences 1st strand synthesis kit(Amersham Biosciences、カタログ番号27−9261−01)を使用して、Z270cDNAを生成した。免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)cDNAを、どのプライマー対がPCRに最も安定であるかを決定するために、定常領域プライマーと組み合わされた異なる多くのIgHプライマーを使用して、PCRによって増幅した。同様に、免疫グロブリンκ鎖可変領域(VK)を、κ定常領域プライマーと組み合わされた複数のIgKを使用して、増幅した。
【0267】
重および軽鎖可変領域のそれぞれについての適切なプライマーを同定し、大腸菌(E.coli)TPO10細菌への形質転換、増幅および配列決定(BigDye(登録商標)ターミネーターv3.0Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(ABI)を使用する)のために、pCR2.1(登録商標)−TOPOベクター(登録商標)に個別に連結した。重鎖可変領域(Z270 VH)および対応するアミノ酸配列のDNA配列は、それぞれ、配列番号1および配列番号2に記載されている。軽鎖可変領域(Z270 VK)および対応するアミノ酸配列のDNA配列は、それぞれ、配列番号3および配列番号4に記載されている。
【0268】
Z270VKの特徴付けは、適切なプライマーおよびPCR、HindIII制限部位、Kozak翻訳開始部位および5’末端でのK2A/RFT2κリーダー配列およびスプライスドナー部位およびZ270VKDNA配列の3’末端でのBamHI制限部位を介する導入を要した。得られるPCR産物を、Z270軽鎖の可変領域を含有する全長キメラ軽鎖をコードするように、ヒトκ軽鎖の定常領域をコードするベクターにクローニングした。得られるchZ270VKおよび対応するアミノ酸配列のDNA配列は、それぞれ、配列番号5および配列番号6に記載されている。
【0269】
Z270VHの特徴付けは、適切なプライマーおよびPCR、HindIII制限部位、Kozak翻訳開始部位および5’末端でのA003リーダー配列およびZ270VHのDNA配列の3’末端での天然のApaI制限部位を含むγ1C領域の5’末端を介する導入を要した。得られるPCR産物を、Z270重鎖の可変領域を含有する全長キメラIgG1重鎖をコードするように、ヒトIgG1重鎖の定常領域をコードするベクターにクローニングした。得られるchZ270VHおよび対応するアミノ酸配列のDNA配列は、それぞれ、配列番号7および配列番号8に記載されている。
【0270】
得られる重および軽鎖含有プラスミドを、COS7細胞に同時にエレクトロポレートし、Z270の得られるヒトIgG1κキメラ化(chimersation)構築物を発現させた。
【0271】
実施例9−新規mAbの作製
5週齢のBalbCマウスNKクローンSA260(CD94bright)を免疫することによって、mAbを作製した。異なる細胞融合後、最初に、mAb Z199およびZ270を、(モレッタ(Moretta)ら、(1994年)J.Exp.Med.180:545に記載のように選択した。CD94分子の分布についての休止または活性されたNK細胞集団の分析を、モレッタ(Moretta)ら(1994年)に記載のように1または2色蛍光フローサイトメトリー分析を使用して実施した。
【0272】
ポジティブなモノクローナル抗体を、NKクローンによる溶解を再構成するそれらの能力についてさらにスクリーニングした。NKクローンの細胞溶解活性を、エフェクターNK細胞を、多様なHLAクラスI遺伝子をトランスフェクトされたもしくはトランスフェクトされていないP815マウス細胞系統またはC1Rヒト細胞系統に対して試験する標準的な4時間の51Cr遊離アッセイにより評価した。これらの研究において使用される他の標的細胞は、シボリ(Sivori)ら(1996年)Eur.J.Immunol.26:2487−2492に記載のように、多様なHLAクラスでトランスフェクトされていないまたはトランスフェクトされたヒトHLA−クラスI−LCL721.221細胞系統によって示された。
【0273】
実施例10−PBLの精製ならびにポリクローナルおよびクローナルNK細胞系統の作製
PBLを、Ficoll Hypaque勾配およびプラスチック付着細胞の枯渇によって、健康なドナーから得る。富化されたNK細胞を得るために、PBLを、抗CD3、抗CD4および抗HLA−DRmAb(4℃で30分間)、続いて、ヤギ抗マウス磁気ビーズ(Dynal)(4℃で30分間)と共にインキュベートし、当該分野において既知の方法(ペンデ(Pende)ら、1999年)によって免疫磁気選択を行う。CD3、CD4、DR細胞を、刺激したフィーダー細胞、100U/mlインターロイキン2(Proleukin、Chiron Corporation)および1.5ng/ml PhytohemagglutininA(GibcoBRL)上で培養し、ポリクローンNK細胞集団を得る。NK細胞を限界希釈によりクローニングし、NK細胞のクローンを細胞表面受容体の発現についてのフローサイトメトリーによって特徴付ける。
【0274】
実施例11−抗NKG2a mAbに結合する受容体の個々の発現を同定するためのサル由来の全血の染色
材料
サル血液:アカゲザルおよびカニクイザルの血液は、Centre de Primatologie,ULP,Strasbourgで購入した。ヒヒのサル血液は、Centre de Primatologie,CNRS,Station Roussetで購入した。サル血液は、EDTAまたはクエン酸ナトリウムを含有する「vacutainer」管で回収した。血液を、回収後24時間以内に処理し、室温で保持した。
【0275】
抗体:FITC−CD3、−CD4、−CD14、−CD20、およびCyCr−CD45は、BD Pharmingen由来であり、PC7−CD16はBeckman Coulterから入手した;これらのすべてのクローンはサルPBMCと交差反応する。PE−GaM(ヤギF(ab’)2フラグメント抗マウスIgG(H+L)−PE)、およびOptiLyse(登録商標)CはBeckman Coulterから購入した。抗NKG2a mAb(クローンZ270、マウスIgG1)を1μg/mlで使用した。
【0276】
他の試薬:PBS(1×)はGibco Invitrogenより;マウス血清はJanvier由来のNMRIマウスより;ホルムアルデヒド37%はSigmaより入手した。
【0277】
方法:
細胞染色は、以下のプロトコルにしたがって行った:
・100μlの血液+10μlの10×精製されたmAb
・撹拌しながら30分間RTでインキュベートする
・3mlのPBSで洗浄する(1400RPM、10分間、RT)
・100μlのPE−GaMまたはPE−GaHを添加して、1:200最終とし、ボルテックス撹拌する
・撹拌しながら30分間RTでインキュベートする
・3mlのPBSで洗浄する(1400RPM、10分間、RT)
・50μlの20%マウス血清を添加し、ボルテックス撹拌し、10分間インキュベートする
・30μl〜60μlのFITC−CD3、(−CD4、−CD14、−CD20)、PC7−CD16、CyCr−CD45混合物または10μlのそれぞれの対応するアイソタイプコントロールを添加する
・撹拌しながら30分間RTでインキュベートする
・500μlのOptiLyse(登録商標)Cを添加し、ボルテックス撹拌し、10分間インキュベートする
・500μlのPBSを添加し、ボルテックス撹拌し、10分間インキュベートする
・3mlのPBSで洗浄する(1400RPM、10分間、RT)
・細胞ペレットを300μlのPBS+0.2%ホルムアルデヒドに再懸濁する
【0278】
フローサイトメトリーは、以下のプロトコルに従って行った:
・サンプルをXL/MCLサイトメーター(Beckman Coulter)上に通過させるEXPOTM32 v1.2ソフトウェア(Beckman Coulter)により獲得および分析を実施した。
・分析は、それらのFSCおよびSSC特徴によって同定されるリンパ球を中心に行った
・T細胞またはNK細胞コンパートメントの分析:
T細胞=CD3リンパ球は、Lyにゲート設定された抗CD3染色ヒストグラムのポジティブ細胞として定義される
NK細胞=CD3CD56リンパ球は、CD3/CD56ドットプロットにおけるCD3CD56ゲートに対応する(4分円の左上部分)。
【0279】
結果
アカゲザル、カニクイザルおよびヒヒに対するNKG2Aモノクローナル抗体Z270の結合を評価した。カニクイザルバルクNK細胞(16日目、300μmlを、30分間、4℃でmAb(1μg/ml)インキュベートし、洗浄し、20分間、4℃でPE−GaMで標識した。図1は、Z270がカニクイザルNK細胞に結合することを実証する、カニクイザルNK細胞への結合、ならびにIgG1および抗CD16結合を示す。Macaca mulatta(アカゲザル)NK細胞(全血由来)を、mAbと共にインキュベートし、洗浄し、PE−GaMで標識した。表2に示される結果は、アカゲザルNK細胞へのクローンZ270の結合を実証する。最終的に、ヒヒNK細胞(全血由来)を、mAbと共にインキュベートし、洗浄し、PE−GaMで標識した。表3に示される結果は、ヒヒNK細胞へのクローンZ270の結合を実証する。
【0280】
実施例12:抗NKG2a mAbに結合する受容体の個々の発現を同定するためのサル由来の全血の染色
材料
アカゲザルおよびカニクイザル由来のサル血液を、EDTAまたはクエン酸ナトリウムを含有するチューブに回収した。抗体:FITC−CD3、−CD4、−CD14、−CD20、およびCyCr−CD45は、BD Pharmingen由来であり、PC7−CD16はBeckman Coulterから入手した;これらのすべてのクローンはサルPBMCと交差反応する。PE−GaM(ヤギF(ab’)2フラグメント抗マウスIgG(H+L)−PE)、およびOptiLyse(登録商標)CはBeckman Coulterから購入した。他の試薬:PBS(1×)はGibco Invitrogenから;Formaldehyde37%はSigmaから入手した。
【0281】
方法:
細胞染色は、以下のプロトコルにしたがって行った:
100μl全血(EDTA)+11μl mAb溶液、Z270もしくはZ199(10μg/ml)またはアイソタイプコントロールを、30分間、RTでインキュベートした。
・PBSで洗浄し、100μlのPE−またはFITC GaM(1/200最終)を添加し、30分間、RTで放置する
・PBSで洗浄し、50μlのマウス血清20%を添加し、60μl含有FITC−抗CD3、−CD4、−CD14、−CD20、CyCr−CD45、PC7−CD16を添加し、30分間RTで放置視する
・500μlのoptilyseCを添加し、10分間RTで放置する
・500μlのPBSを添加し、10分間、RTで放置する
・PBSおよび0.2%ホルムアルデヒドで洗浄する
・CD45bright小細胞(CD45/SSC)、次いで、CD16+CD3−CD4−CD14−CD20−細胞を中心に分析を行う
【0282】
結果
NKG2Aモノクローナル抗体Z270ならびにZ299のアカゲザルNK細胞およびカニクイザルNK細胞への結合を評価および比較した。カニクイザルバルクNK細胞(16日目、300μlを、30分間、4℃でmAb(1μg/ml)インキュベートし、洗浄し、20分間、4℃でPE−GaMで標識した。図4は、Z199およびZ270の両方がカニクイザルNK細胞に結合することを実証する、Z199およびZ270の両方のカニクイザルNK細胞への結合、ならびにIgG1および抗CD16結合を示す。Macaca mulatta(アカゲザル)NK細胞(全血由来)を、mAbと共にインキュベートし、洗浄し、PE−GaMで標識した。表5に示される結果は、アカゲザルNK細胞へのZ199およびZ270の両方の結合を実証する。
【0283】
(ビアッソニ(Biassoni)ら、(2005年)J.Immunol.174:5695−5705、図5および6を参照のこと)Z199は、NKG2Aに加えて、カニクイザルNKG2Cにも結合すること、さらに、このmAbは、再指向された死滅アッセイにおいてP815標的細胞の増加を生じることがさらに観察されている。溶解における後者の増加はヒトNK細胞では逆に観察され、インヒビター受容体NKG2Aについて予想されるものに相反する。従って、理論にとらわれないことを所望するならば、本発明者らは、Z199が、カニクイザルにおいて活性化受容体NKG2Cを介して作用することを提唱する。Z270はまた、カニクイザル細胞に結合し、再指向された死滅アッセイにおけるP815標的細胞の溶解の増加の増加を生じ、Z270もまた、カニクイザルにおいてNKG2Cを認識することが示唆される。
【0284】
しかし、同じ種(例えば、カニクイザル)における2つのmAbの結合のレベルは、染色された細胞の百分率および蛍光の強度の両方において非常に異なる。このことは、2つの抗体が別々にNKG2Aエピトープに結合することを意味する。
【0285】
【表2】
【0286】
【表3】
【0287】
【表4】
【0288】
【表5】
【0289】
本明細書において引用されたすべての刊行物および特許出願は、それぞれ個々の刊行物または特許出願が、あたかも具体的かつ個別に参照により組み入れられて示されているが如く、それらの全体が、参照により、本明細書に援用される。
【0290】
上述の発明は、例えば、理解を明確にする目的で、例示および例の方法でいくらか詳細に説明してきたが、当業者であれば、本発明の教示内容に照らし合わせて、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、それに所定の変更および改変を加えられ得ることが、容易に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0291】
図1】NK細胞対PHA芽球の様々な比におけるHLA−E発現PHA芽細胞のNK細胞溶解に対する異なる3つの濃度のZ270の効果を示す。
図2】NK細胞対PHA芽球の様々な比におけるHLA−E発現PHA芽細胞のNK細胞溶解に対する異なる3つの濃度のZ199の効果を示す。
図3】HLA−E発現PHA芽細胞のNK細胞溶解に対するZ270のF(ab’)2フラグメントの効果を示す。
図4】Z270がカニクイザルNK細胞に結合することを実証する、抗体Z270ならびにIgG1および抗CD16のカニクイザルNK細胞への結合を示す。結合はまた、アカゲザルおよびヒヒについても示された。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]