特許第5721306号(P5721306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721306
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】ファン回転速度直線補償方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20060101AFI20150430BHJP
   H02P 6/08 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   H02P7/00 B
   H02P6/02 371J
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2008-150154(P2008-150154)
(22)【出願日】2008年6月9日
(65)【公開番号】特開2009-296839(P2009-296839A)
(43)【公開日】2009年12月17日
【審査請求日】2009年11月30日
【審判番号】不服2014-2373(P2014-2373/J1)
【審判請求日】2014年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】504013546
【氏名又は名称】陞達科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】林 招慶
(72)【発明者】
【氏名】祝 林
(72)【発明者】
【氏名】林 秀興
(72)【発明者】
【氏名】林 有康
(72)【発明者】
【氏名】曾 炳達
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 堀川 一郎
【審判官】 矢島 伸一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−325389(JP,A)
【文献】 特開平7−337065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICを経由し、ファンの回転に関するPWM信号を読取り、当該PWM信号の作動周期に対する前記ファンの回転速度が示す曲線関係における複数の作動周期の範囲ごとに補償演算を行って、作動周期が100%のときの最大回転速度(R(MAX))に対する、当該範囲内の所定の作動周期のときの前記曲線関係を近似する直線関係に基づく理想回転速度(R1)から当該曲線関係に基づく回転速度(R2)までの増分(ΔR=R2-R1)の比率(ΔR/R(MAX)×100%)である補償値を求め、
前記複数の作動周期の範囲ごとに、補償後のPWM信号が、出力が小さくなる方向を下方向とした場合の下放物線関係を示すように、前記PWM信号の作動周期(%)から補償値たる前記比率(%)をマイナスし
前記複数の作動周期の範囲ごとに、前記補償後のPWM信号の作動周期に対する前記ファンの回転速度が前記直線関係を示すべく、前記ICは前記補償後のPWM信号に基づき、ファンの回転速度をオープンループ制御する
ことを特徴とするファン回転速度直線補償方法。
【請求項2】
前記補償演算は、
補償前の前記PWM信号の作動周期に対する前記ファンの回転速度の関係を示す曲線をPWM作動周期0%〜100%の間でセクション分割し、
分割された第一セクションは直角三角形で近似し、当該直角三角形の斜率に対して補償演算して第一直線を求め、
分割された第二セクションは平行四辺形で近似し、当該平行四辺形の斜率に対して補償演算して第二直線を求め、
分割された第三セクションは直角三角形で近似し、当該直角三角形の斜率に対して補償演算して第三直線を求め、
該第一直線、該第二直線及び該第三直線を統合して補償後の回転速度曲線を求める
ことを特徴とする請求項1記載のファン回転速度直線補償方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一種のファン回転速度直線補償方法に関する。特にICにより補償後のPWM信号を提供し、ファン回転速度を制御し、ファンの回転速度は曲線補償を経た後、直線かつ線性を呈するファン回転速度直線補償方法に係る。
【背景技術】
【0002】
電子パーツの高速化と複雑化は、電子パーツ作動時に発生する熱エネルギーを増大させている。よって多くの電子パーツ上或いはその作動環境中には散熱ファンを設置し、電子パーツを冷却し正常に作動させるよう確保しなければならない。
現在コンピュータ、グラフィクスカード或いはノート型コンピュータ(パソコン)においてファンが使用される時、一般的に重視される点は散熱ファンの回転速度制御等の問題である。散熱ファンの運転方式制御においては、オン/オフ(ON/OFF)以外に、主なものはPWM(Pulse Width Modulation)を用いたファン運転を制御することで、各単位時間内において作動周期(duty cycle)の差異を調整し、これによりファン回転速度を制御する。
【0003】
図1、2に示すように、公知のファン速度制御が、オープンループ(Open Loop)測定回転速度制御を行う時は、IC(Integrated Circut)により受信した入力PWM(Pulse width modulation)信号を出力PWM信号に転換する。
図1中PWM信号の作動周期は0%〜100%で、しかも前記PWM信号の入力信号は出力信号に対応し、前記作動周期範囲内の曲線は直線A1を呈する。しかも1:1の比率で、前記ICは出力PWM信号に基づきファン運転を制御し、ファンの回転速度曲線は図2に示すように上放物線F1を呈する。前記図2では、ファン回転速度がPWM作動周期に対応する曲線は上放物線F1を呈する。上記公知のファン回転速度制御には以下の三つの欠点が存在する。
1.ファン回転速度のPWM作動周期に対応する曲線は上放物線であるため、ファン回転速度の不安定を招き易い。
2.もし、オープンループの制御曲線(すなわち、ファン回転速度とPWM作動周期の曲線図)を直線性に設計するなら、回路を別に増設しなければならず、パーツコストの増加を招いてしまう。
3.各ファンモーターの特性は異なるため、ファン回転速度の規格も制定しにくい。
【特許文献1】特開2007−124853公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、上記公知技術の欠点を解決し、ICを通して補償後のPWM信号を提供し、ファン回転速度を制御し、ファンの回転速度曲線は補償を経た後、直線かつ帯ではなく線性を呈する効果を達成するファン回転速度直線補償方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は下記のファン回転速度直線補償方法を提供する。
ファン回転速度直線補償方法は以下を含み、
IC(Integrated Circut)によりPWM(Pulse width modulation)信号を読取り、補償演算を行い、補償を求め、
前記PWM信号から補償値をマイナス或いはプラスし、得られた補償後のPWM信号は上放物線を呈し、
前記ICは前記補償後のPWM信号に基づき、ファンの回転速度を制御し、ファンの回転速度は曲線補償を経た後、直線かつ線性を呈する。
【発明の効果】
【0006】
上記のように、本発明はICにより補償後のPWM信号を提供し、ファン回転速度を制御し、ファンの回転速度は曲線補償を経た後、直線かつ帯ではなく線性を呈するのでファン回転速度を安定させ、オープンループの制御曲線(すなわち、ファン回転速度とPWM作動周期の曲線図)を直線性に設計するので回路を別に増設しなくてもよくパーツコストも増加せず、各ファンモーターの特性は異なるがファン回転速度の規格に対して設計しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の上記目的及びその構造と機能上の特性について、図を参照して本発明の最適実施例に対して説明を行う。
図3、4、5に示すように、本発明ファン回転速度直線補償方法の最適実施例は以下のステップを含む。
(300)スタート。
(301)IC(Integrated Circuit)によりPWM(Pulse Width Modulation)信号を読取り、補償演算を行い、補償を求める。
(302)前記PWM信号から補償値をマイナス或いはプラスし、得られた補償後のPWM信号は下放物線A2を呈する。
(303)前記ICは前記補償後のPWM信号に基づき、ファンの回転速度を制御し、ファンの回転速度は曲線補償を経た後は直線かつ線性を呈する。
(304)終了。
上記のように、本発明の実施例のファン回転速度はPWM作動周期の線性に対応し(すなわち直線)曲線F2は明確に公知ファンの上放物線F1に比べスムーズで、しかも線性である。
【0008】
さらに、図4、5、6に示すように、ファンがオープンループ(Open Loop)測定回転速度制御を行う時、該ICを通して前記PWM信号を読取り補償算を行った後、前記補償を求める。次に該ICはPWM信号より前記補償値をマイナス或いはプラスし、これにより補償後のPWM信号を求める(図4参照)。こうして前記ICは補償後のPWM信号に基づきファンの回転速度を制御し、ファン回転速度はPWM作動周期に対応する曲線補償を経た後、直線でかつ帯ではなく線性の効果を呈し(図5参照)、しかもファン回転速度の安定が達成できる。
【0009】
以下に例を挙げ説明する。
9センチのファンがオープンループ測定回転速度制御を行う時、測定を経て、ファンのPWM作動周期100%時の回転速度が5000RPM(すなわち全速)であることが分かる。つまり、それは50%における理想の回転速度値は2500RPMであるべきだが、ファンモーターの素因により、実際にはPWM作動周期50%時のファンの回転速度は3000RPMであるため、前記理想的回転速度値が必要なPWM作動周期は40%であるはずで、補償が必要である。もとのPWM作動周期50%からPWM作動周期10% (すなわち前記補償値) をマイナスし、必要なPWM作動周期40%を求める。こうしてファン回転速度はPWMに対応し作動周期の曲線補償を経た後、直線かつ線性の効果を呈する。
【0010】
ファン回転速度とPWM作動周期の曲線指示図である図6、7に示すように、図中では補償前の回転速度曲線B1(すなわち公知の上放物線F1)をセクション分割方式により(三セクション、四セクション等に分ける)補償演算を行い、その後に補償後の回転速度曲線B2(すなわち本最適実施の線性(すなわち直線)曲線F2)を得る。前記補償演算を行うステップを以下に説明する。
(400)スタート
(401)前記補償前の回転速度曲線B1をPWM作動周期0%からPWM作動周期100%までの間を三セクションに分け補償演算を行う。図6中から分かるように、第一セクションはPWM作動周期0%からX%までの間で補償演算を行い、第二セクションはPWM作動周期X%からY%までの間で補償演算を行い、第三セクションはPWM作動周期Y%から100%までの間で補償演算を行う。前記X%とY%の値は、X%は30%、Y%は70%のように、事前に予知する数値であり、且つ該数値は補償前の回転速度曲線の変化により分かる。
(402)先ず、該第一セクションは直角三角形を区画し、その斜率(m=Δy/Δx:傾斜率)に対して補償演算後、第一直線L1を求める。前記斜率の補償演算は、既知の0%とX%の
2点の内挿法(補間法)によって斜率を求める。(即ち、前記第一直線L1)
(403)次に、該第二セクションは平行四辺形を区画し、その斜率に対して補償演算後、第二直線L2を求める。前記斜率の補償演算は、既知のX%とY%の2点の内挿法によって
斜率を求める。(即ち、前記第二直線L2)
(404)該第三セクションは直角三角形を区画し、その斜率に対して補償演算後、第三直線L3を求める。前記斜率の補償演算は、既知のY%と100%の2点の内挿法によって斜
率を求める。(即ち、前記第三直線L3)
(405)前記第一直線、第二直線及び第三直線を統合後、補償後曲線B2を求める。
(406)終了
上述は、本発明の好適な実施例であり、本発明を実施する時、前記PWM作動周期0% 〜100%間の補償演算を三段階に分けて行うことを限定せず、四段、五段、六段、七段・・・等に分けて補償演算することも可能であり、分段数を多くするほど、補償後の回転速度曲線は直線に近づき、更に好適な線性化を得られる。
したがって、前実施例と同様に、本発明の本実施例のファン回転速度はPWM作動周期の線性に対応し(すなわち直線)曲線B2は明確に公知ファンの上放物線B1に比べスムーズで、しかも、帯状でなない線性である。
【0011】
以上のように、本発明の各実施例は、ICにより補償後のPWM信号を提供し、ファン回転速度を制御し、ファンの回転速度は曲線補償を経た後、直線かつ帯ではなく線性を呈するのでファン回転速度が安定し、オープンループの制御曲線(すなわち、ファン回転速度とPWM作動周期の曲線図)を直線性に設計するので回路を別に増設しなくてもよくパーツコストも増加せず、各ファンモーターの特性は異なるがファン回転速度の規格に対して設計しやすい。
なお、上記の各実施例は本発明を限定するものではない。当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明が掲示する技術内容に基づき、本発明の製品と領域を脱しない範囲内で各種の変動や潤色を加えることができ、したがって本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】公知のPWM出力とPWM入力の曲線指示図である。
図2】公知のファン回転速度と作動周期の曲線指示図である。
図3】本発明の主要フローチャートである。
図4】本発明のPWM出力とPWM入力の曲線指示図である。
図5】本発明のファン回転速度と作動周期の曲線指示図である。
図6】本発明のファン回転速度と作動周期の補償曲線指示図である。
図7】本発明の補償演算のフローチャートである。
【符号の説明】
【0013】
A2 下放物線
F2 線性曲線
B1 補償前曲線
B2 補償後曲線
L1 第一直線
L2 第二直線
L3 第三直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7