(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、石炭をガス化するガス化炉が生成する石炭ガスの発熱量は、石炭種や石炭の性状が変化することによって変動することが知られている。このような場合に、従来は、例えば、石炭の性状変化によって発熱量が低下すると、石炭ガス化炉に投入する石炭量と空気量とを増加させ、石炭ガス化炉から生成される石炭ガス化ガスを増加させることによって発熱量の低下分を補っていた。
【0005】
しかしながら、上記従来の方法では、ガス化炉に投入される空気はガスタービンの圧縮機から抽気された空気を使用するため、ガス化炉に投入する空気量を増加させると圧縮機から抽気される空気が増加し、圧縮機の運転点が変化して効率的な運転が実現されず、場合によっては圧縮機の不安定運転を招くおそれがあった。
【0006】
また、石炭ガス化複合発電装置の場合、圧縮機はガスタービンと連動しているため、圧縮機からの抽気空気量が増えるとガスタービンへ流入する空気量が減りガスタービンの出力が低下することで、ガスタービンに接続された発電機の発電量に影響を及ぼすことになる。したがって、所望の発電量を出力することが要求される石炭ガス化複合発電装置では、圧縮機からの抽気空気量を変化させると、所望の発電量を得ることが困難になるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、石炭種や石炭の性状が変化し、その発熱量に変動が生じる場合であってもガス化炉によって生成される石炭ガス化ガスの発熱量を安定させることのできるガス化炉
設備及びその制御方法並びにプログラム、及びこれを備えた石炭ガス化複合発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
【0009】
本発明は、石炭と圧縮機から供給される供給空気とを反応させて石炭ガス化ガスを生成する石炭ガス化炉
と、該石炭ガス化炉への石炭供給量を調整するための石炭流量調整弁と、前記石炭ガス化炉への空気供給量を調整するための空気流量調整弁と、前記石炭供給量と前記空気供給量とを指令するガス化炉入力指令を出力し、前記石炭流量調整弁の弁開度および前記空気流量調整弁の弁開度とをそれぞれ制御する制御装置と、前記石炭ガス化炉の出口における前記石炭ガス化ガスの圧力を計測するための圧力センサと、を具備する石炭ガス化炉設備において、前記制御装置は、前記石炭ガス化ガスの目標圧力と前記圧力センサにより計測された計測圧力との圧力差を出力する出力手段と、前記目標圧力に対応する前記ガス化炉入力指令と前記出力手段が出力する前記圧力差とに基づいて前記石炭ガス化ガスの発熱量が変化した場合に
生じる前記圧力差を収束させるように
前記石炭供給量を補正する石炭量補正手段とを有し、前記制御装置は、前記石炭ガス化ガスの発熱量が変化した場合に、前記空気供給量を
前記目標圧力に対応する一定
流量とし
つつ、前記石
炭供給量を
前記石炭量補正手段によって補正された流量とすることによって前記発熱量を一定に維持することを特徴とする石炭ガス化炉
設備を提供する。
【0010】
このような構成によれば、石炭ガス化ガスの発熱量が変化した場合に、供給空気の供給量を略一定とし、石炭の供給量を調整することによって発熱量を一定に維持する。
例えば、石炭種や石炭の性状が変化すると、石炭ガス化ガスの発熱量が変化する。この場合に、発熱量を一定に維持するために石炭の供給量だけでなく空気量をも変化させると、空気を供給する圧縮機の運転点が変化して効率的な運転が実現されず、場合によっては圧縮機の不安定運転を招くおそれがある。そこで、本発明では、供給空気の供給量を一定としたうえで、石炭の供給量を調整することによって発熱量を一定に維持することとした。これにより、圧縮機の効率的な安定運転を維持しつつ、所望の発熱量の石炭ガス化ガスを得ることができる。
本発明の石炭ガス化炉
設備は、後述する石炭ガス化複合発電装置に用いることができ、あるいは、所望の組成の石炭ガス化ガスを得ることを目的としたガス生成装置としても用いることができる。
本発明は、圧縮機と、該圧縮機から供給される供給空気と石炭とを反応させて石炭ガス化ガスを生成する石炭ガス化炉を有する石炭ガス化炉設備と、該石炭ガス化炉設備にて生成された石炭ガス化ガスを前記圧縮機から供給された供給空気によって燃焼させる燃焼器と、該燃焼器によって生成された燃焼ガスによって駆動されるガスタービンと、該ガスタービンによって駆動されるとともに発電するガスタービン発電機とを具備する石炭ガス化複合発電装置であって、前記石炭ガス化炉設備は、前記石炭ガス化炉への石炭供給量を調整するための石炭流量調整弁と、前記石炭ガス化炉への空気供給量を調整するための空気流量調整弁と、前記石炭ガス化ガスの発熱量が変化した場合に、前記石炭の供給量と前記発熱量から算出される入熱の差によって生じる前記石炭ガス化炉の出口
における前記石炭ガス化ガス
を計測した計測圧力と
該石炭ガス化ガスの目標圧力との
圧力差を収束させるように、前
記空気供給量を一定として、前記石
炭供給量を調整することによって前記発熱量を一定に維持する
ガス化炉制御手段とを具備し、前記ガス化炉制御手段は、前記計測圧力と前記目標圧力との圧力差に基づいて決定され、該圧力差を低減させる前記石炭流量調整弁の弁開度を決定する指令値である第1のガス化炉入力指令を算出するガス化炉入力指令設定手段と、前記ガスタービン発電機の出力を設定する出力設定値と前記ガスタービンの入熱を安定させる前記石炭流量調整弁の弁開度を決定する指令値である第2のガス化炉入力指令とを関連付けた情報を参照し、前記出力設定値に関連付けられる前記第2のガス化炉入力指令を決定し、前記第1のガス化炉入力指令と前記第2のガス化炉入力指令との差分に相当する発熱量を発生させる前記石炭供給量を決定する補正係数を算出する補正手段と、前記補正係数と前記第1のガス化炉入力指令とに基づいて、前記石炭ガス化炉へ供給する前記石炭供給量を決定する石炭量決定手段と、を具備することを特徴とする石炭ガス化
複合発電装置を提供する。
【0011】
本発明は、上記の石炭ガス化炉
設備と、前記圧縮機と、前記石炭ガス化炉
設備にて生成された石炭ガス化ガスを前記圧縮機から供給された供給空気によって燃焼させる燃焼器と、該燃焼器によって生成された燃焼ガスによって駆動されるタービンと、該タービンによって駆動されるとともに発電する発電機と、を備えている石炭ガス化複合発電装置を提供する。
本発明は、石炭と圧縮機から供給される供給空気とを反応させて石炭ガス化ガスを生成する石炭ガス化炉を有する石炭ガス化炉設備と、前記圧縮機と、前記石炭ガス化炉設備にて生成された前記石炭ガス化ガスを前記圧縮機から供給された圧縮空気によって燃焼させる燃焼器と、該燃焼器によって生成された燃焼ガスによって駆動されるタービンと、該タービンによって駆動されるとともに発電する発電機と、を備え、前記石炭ガス化炉設備に供給される前記供給空気は、前記圧縮機から前記燃焼器へ供給される前記圧縮空気の一部を抽気した抽気圧縮空気のみからなり、前記石炭ガス化炉設備は、前記石炭ガス化ガスの発熱量が変化した場合に、前記石炭の供給量と前記発熱量から算出される入熱の差によって生じる前記石炭ガス化炉の出口圧力であるシステムガス圧力とシステムガスの目標圧力との偏差を収束させるように、前記供給空気の供給量を一定として、前記石炭の供給量を調整することによって前記発熱量を一定に維持することを特徴とする石炭ガス化複合発電装置を提供する。
【0012】
例えば
、発熱量が減っても石炭量だけを変化させるので、圧縮機からの抽気空気量は変わらず、石炭ガス化複合発電装置を安定して運転することができる。
【0013】
本発明は、石炭と圧縮機から供給される供給空気とを反応させて石炭ガス化ガスを生成する石炭ガス化炉
と、該石炭ガス化炉への石炭供給量を調整するための石炭流量調整弁と、前記石炭ガス化炉への空気供給量を調整するための空気流量調整弁と、前記石炭供給量と前記空気供給量とを指令するガス化炉入力指令を出力し、前記石炭流量調整弁の弁開度および前記空気流量調整弁の弁開度とをそれぞれ制御する制御装置と、前記石炭ガス化炉の出口における前記石炭ガス化ガスの圧力を計測するための圧力センサと、を具備する石炭ガス化炉設備の制御方法において、
前記石炭ガス化ガスの目標圧力と前記圧力センサにより計測された計測圧力との圧力差を出力する第1過程と、前記目標圧力に対応する前記ガス化炉入力指令と前記第1過程により出力される前記圧力差とに基づいて前記石炭ガス化ガスの発熱量が変化した場合に
生じる前記圧力差を収束させるように
前記石炭供給量を補正する第2過程と、前記石炭ガス化ガスの発熱量が変化した場合に、前記空気供給量を
前記目標圧力に対応する一定
流量とし
つつ、前記石
炭供給量を
前記第2過程によって補正された流量とすることによって前記発熱量を一定に維持する
第3過程とを有する石炭ガス化炉
設備の制御方法を提供する。
【0014】
本発明は、石炭と圧縮機から供給される供給空気とを反応させて石炭ガス化ガスを生成する石炭ガス化炉
と、該石炭ガス化炉への石炭供給量を調整するための石炭流量調整弁と、前記石炭ガス化炉への空気供給量を調整するための空気流量調整弁と、前記石炭供給量と前記空気供給量とを指令するガス化炉入力指令を出力し、前記石炭流量調整弁の弁開度および前記空気流量調整弁の弁開度とをそれぞれ制御する制御装置と、前記石炭ガス化炉の出口における前記石炭ガス化ガスの圧力を計測するための圧力センサと、を具備する石炭ガス化炉設備の制御プログラムにおいて、
前記石炭ガス化ガスの目標圧力と前記圧力センサにより計測された計測圧力との圧力差を出力する第1処理と、前記目標圧力に対応する前記ガス化炉入力指令と前記第1処理により出力される前記圧力差とに基づいて前記石炭ガス化ガスの発熱量が変化した場合に
生じる前記圧力差を収束させるように
前記石炭供給量を補正する第2処理と、前記石炭ガス化ガスの発熱量が変化した場合に、前記空気供給量を
前記目標圧力に対応する一定
流量とし
つつ、前記石
炭供給量を
前記第2処理によって補正された流量とすることによって前記発熱量を一定に維持
させる第3処理とをコンピュータに実行させるための石炭ガス化炉
設備の制御プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、石炭種や石炭の性状が変化し、その発熱量に変動が生じる場合であっても、ガス化炉における熱量を安定させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るガス化炉を適用した石炭ガス化複合発電装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るガス化炉を石炭ガス化炉3、これを適用した石炭ガス化複合発電装置(以下「IGCC」という。)1、及び石炭ガス化炉3の制御装置50について図を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るIGCC1の全体の概略構成を示した図である。
図1に示されるように、本実施形態に係るIGCC1は、主として、石炭ガス化炉3、ガスタービン設備5、蒸気タービン設備7、及び排熱回収ボイラ(HRSG)30を備えている。
【0019】
石炭ガス化炉3の上流側には、石炭ガス化炉3へと微粉炭を供給する石炭供給設備10が設けられている。この石炭供給設備10は、原料炭を粉砕して数μm〜数百μmの微粉炭とする粉砕機(図示せず)を備えており、この粉砕機によって粉砕された微粉炭が複数のホッパ11,11…に貯留されるようになっている。
各ホッパ11に貯留された微粉炭は、一定流量ずつ空気分離装置15から供給される窒素とともに石炭ガス化炉3へと搬送される。
【0020】
石炭ガス化炉3は、下方から上方へとガスが流されるように形成された石炭ガス化部3aと、石炭ガス化部3aの下流側に接続されて、上方から下方へとガスが流されるように形成された熱交換部3bとを備えている。
石炭ガス化部3aには、下方から、コンバスタ13およびリダクタ14が設けられている。コンバスタ13は、微粉炭およびチャーの一部分を燃焼させ、残りは熱分解により揮発分(CO,H
2,低級炭化水素)として放出させる部分である。コンバスタ13には噴流床が採用されている。しかし、流動床式や固定床式であっても構わない。
【0021】
コンバスタ13及びリダクタ14には、それぞれ、コンバスタバーナ13a及びリダクタバーナ14aが設けられており、これらバーナ13a,14aに対して石炭供給設備10から微粉炭が供給される。
コンバスタバーナ13aには、抽気空気昇圧機17からの空気が、空気分離装置15において分離された酸素とともにガス化剤(酸化剤)として供給されるようになっている。このようにコンバスタバーナ13aには酸素濃度が調整された空気が供給されるようになっている。
【0022】
リダクタ14では、コンバスタ13からの高温燃焼ガスによって微粉炭がガス化される。これにより、石炭からCOやH
2等の気体燃料となる石炭ガス化ガスが生成される。石炭ガス化反応は、微粉炭およびチャー中の炭素が高温ガス中のCO
2及びH
2Oと反応してCOやH
2を生成する吸熱反応である。
【0023】
石炭ガス化炉3は、石炭とターボ圧縮機(以下「圧縮機」という。)5cから供給される供給空気とを反応させて石炭ガス化ガスを生成する。具体的には、石炭ガス化炉3の熱交換部3bには、複数の熱交換器(図示略)が設置されており、リダクタ14から導かれるガスから顕熱を得て蒸気を発生させるようになっている。熱交換器において発生した蒸気は、主として、蒸気タービン7bの駆動用蒸気として用いられる。熱交換部3bを通過したガスは、チャー回収装置20へと導かれる。このチャー回収装置20は、ポーラスフィルタを備えており、ポーラスフィルタを通過させることによってガスに混在するチャーを捕捉して回収する。捕捉されたチャーは、ポーラスフィルタに堆積してチャー層を形成している。チャー層には、ガスに含まれるNa分およびK分が凝縮し、結果的にチャー回収装置20においてNa分およびK分も除去される。
【0024】
このように回収されたチャーは、空気分離装置15において分離された窒素とともに石炭ガス化炉3のコンバスタバーナ13aへと返送されてリサイクルされる。なお、チャーとともにコンバスタバーナ13aへと返送されたNa分およびK分は、最終的に溶融した微粉炭の灰とともに石炭ガス化部3aの下方から排出される。溶融排出された灰は水で急冷、破砕されガラス状のスラグとなる。
【0025】
チャー回収装置20を通過したガスは、燃料ガスとしてガスタービン設備5の燃焼器5aへと送られる。
チャー回収装置20とガスタービン設備5の燃焼器5aとの間には、分岐路22が設けられており、この分岐路22の下流にはグランドフレア24が設けられている。グランドフレア24は、ガスタービン設備5に導入しない石炭ガス化ガスを完全燃焼し、無害なクリーンガスとして大気中に放出する設備である。
【0026】
ガスタービン設備5は、ガス化された燃料が燃焼させられる燃焼器5aと、燃焼ガスによって駆動されるガスタービン5bと、燃焼器5aへと高圧空気を送り出す圧縮機5cとを備えている。ガスタービン5bと圧縮機5cとは同一の回転軸5dによって接続されている。圧縮機5cにおいて圧縮された空気は、燃焼器5aとは別に、抽気空気昇圧機17へも導かれるようになっている。
【0027】
ガスタービン5bを通過した燃焼排ガスは、排熱回収ボイラ30へと導かれる。
蒸気タービン設備7の蒸気タービン7bは、ガスタービン設備5と同じ回転軸5dに接続されており、いわゆる一軸式のコンバインドシステムとなっている。蒸気タービン7bには、石炭ガス化炉3及び排熱回収ボイラ30から高圧蒸気が供給される。なお、一軸式のコンバインドシステムに限らず、二軸式のコンバインドシステムであっても構わない。
ガスタービン5b及び蒸気タービン7bによって駆動される回転軸5dから電気を出力する発電機Gが、蒸気タービン設備7を挟んでガスタービン設備5の反対側に設けられている。なお、発電機Gの配置位置については、この位置に限られず、回転軸5dから電気出力が得られるようであればどの位置であっても構わない。
排熱回収ボイラ30は、ガスタービン5bからの燃焼排ガスによって蒸気を発生するとともに、燃焼排ガスを煙突31から大気へと放出する。
【0028】
次に、上記構成の石炭ガス化炉3を適用したIGCC1の動作について説明する。
原料炭は粉砕機(図示せず)で粉砕された後、ホッパ11へと導かれて貯留される。ホッパ11に貯留された微粉炭は、空気分離装置15において分離された窒素とともに、リダクタバーナ14a及びコンバスタバーナ13aへと供給される。さらに、コンバスタバーナ13aには、微粉炭だけでなく、チャー回収装置20において回収されたチャーが供給される。
【0029】
コンバスタバーナ13aの燃焼用気体としては、ガスタービン設備5の圧縮機5cから抽気された圧縮空気を抽気空気昇圧機17によってさらに昇圧された圧縮空気に、空気分離機15において分離された酸素が添加された空気が使用される。コンバスタ13では、微粉炭およびチャーが燃焼用空気によって部分燃焼させられ、残部は揮発分(CO,H
2,低級炭化水素)へと熱分解させられる。
リダクタ14では、リダクタバーナ14aから供給された微粉炭およびコンバスタ13内で揮発分を放出したチャーが、コンバスタ13から上昇してきた高温ガスによりガス化され、COやH
2等の可燃性ガスが生成される。
【0030】
リダクタ14を通過したガスは、石炭ガス化炉3の熱交換部3bを通過しつつ各熱交換器にその顕熱を与え、蒸気を発生させる。熱交換部3bで発生させた蒸気は、主として、蒸気タービン7bの駆動のために用いられる。
熱交換部3bを通過したガスは、チャー回収装置20へと導かれ、チャーが回収される。ガス中のNa分およびK分は、ここで凝縮してチャーに取り込まれる。回収されたNa分およびK分を含むチャーは、石炭ガス化炉3へと返送される。
【0031】
チャー回収装置20を通過したガスは、ガスタービン設備5の燃焼器5aへと導かれ、圧縮機5cから供給される圧縮空気とともに燃焼させられる。この燃焼ガスによってガスタービン5bが回転させられ、回転軸が駆動させられる。
【0032】
ガスタービン5bを通過した燃焼排ガスは、排熱回収ボイラ30へと導かれ、この燃焼排ガスの顕熱を利用することによって蒸気が発生させられる。排熱回収ボイラ30において発生した蒸気は、主として、蒸気タービン7bの駆動のために用いられる。
蒸気タービン7bは、石炭ガス化炉3からの蒸気および排熱回収ボイラ30からの蒸気によって回転させられ、ガスタービン設備5と同一の回転軸を駆動させる。回転軸の回転力は、発電機Gによって電気出力へと変換される。
【0033】
次に、上述したIGCC1における石炭ガス化炉3の運転制御について
図2および
図3を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係る石炭ガス化炉3の制御装置50の概略構成を示した図である。
図2に示されるように、微粉炭を石炭ガス化炉3へ供給する供給配管には、石炭ガス化炉3への微粉炭投入量を調節するための微粉炭流量調節弁41が設けられており、微粉炭流量調節弁41の弁開度は石炭ガス化炉3の制御装置(以下単に「制御装置」という。)50から出力されるガス化炉入力指令に基づいて制御される。また、ガスタービンの発電機出力は、ガスタービンにシステムガスを供給する供給配管上に設けられたシステムガス流調弁43の弁開度を調整することにより制御される。
【0034】
空気(酸化剤)を石炭ガス化炉3へ供給する供給配管には、石炭ガス化炉3への空気投入量を調節するための空気流量調整弁42が設けられている。
また、石炭ガス化炉3により生成されたシステムガス(石炭ガス化ガス)を
図1のガスタービン設備5の燃料器5aへと導く燃料配管における石炭ガス化炉3の出口付近には、石炭ガス化炉3の出口圧力を計測するための圧力センサPTが設けられている。この圧力センサの計測値は、制御装置50に出力される。
【0035】
図2に示されるように、制御装置50は、統括負荷圧力制御部51、ガスタービン制御部52、およびガス化炉制御部53を備えている。
【0036】
統括負荷圧力制御部51は、目標とする発電機の出力設定値(負荷設定)Xと、システムガスの目標圧力(圧力設定)Pとが格納されている。
統括負荷圧力制御部51は、発電機の出力設定値Xと発電機から計測された発電機出力との差分を算出し、システムガスの目標圧力と圧力センサPTから計測されたシステムガス圧力との差分を算出し、これら差分に基づいて求められるガスタービン(GT)発電機出力指令をガスタービン制御部52に出力する。
また、統括負荷圧力制御部51はシステムガスの目標圧力Pと圧力センサPTから計測されたシステムガス圧力との圧力差をガス化炉制御部53に出力する。
【0037】
ガスタービン制御部52は、統括負荷圧力制御部51から取得したガスタービン(GT)の発電機出力指令に基づいて、システムガス流調弁43を制御する。
具体的には、目標とされる発電機の出力設定(発電量)に基づいて決定されるGT発電機出力指令に応じて、システムガス流調弁43が制御される。
【0038】
ガス化炉制御部53は、システムガス
の発熱量が変化した場合に、供給空気の供給量を略一定として
、発熱量を略一定に維持するべく石炭の供給量を調整する。具体的には、システムガス
の発熱量の変化は、圧力センサPTから計測されるシステムガスの圧力とシステムガスの目標圧力との差に基づいて算出する。
【0039】
ガス化炉入力指令設定部60は、計測されたシステムガスの圧力と既定のシステムガスの目標圧力との差を低減させ、目標とする発電機の出力設定値から決定される出力が得られるようなガス化炉入力指令´を算出する。このガス化炉入力指令´では、現在のシステムガスの計測値に応じた、石炭ガス化炉3に流入させる空気量と石炭量(第1の石炭量)との情報が含まれる。
ガス化炉入力指令設定部60は、ガス化炉入力指令´を補正部61に出力する。
【0040】
補正部61は、目標とする発電機の出力設定から決定されるガス化炉入力指令とGT(ガスタービン)発電機出力指令とが関連付けられた情報(例えば、テーブル)を保有する。この情報は、IGCC1を安定運転させ、ガスタービン設備5の入熱を安定させるための指令値の組み合わせであり、例えば、ガス化炉入力指令とGT発電機出力指令との比は1:1であるとする。
補正部61は、上記情報を参照し、目標の発電機の出力設定に対応するGT発電機出力指令とガス化炉入力指令との組み合わせを読み出す。さらに、補正部61は、ガス化炉入力指令´と、上記情報から読み出されたGT発電機出力指令およびガス化炉入力指令とを比較し、ガス化炉入力指令´が上記情報から逸脱しているか否かを判定する。
【0041】
補正部61は、ガス化炉入力指令´と、発電機の出力設定値に基づいて決定されるGT発電機出力指令とに基づいて、ガス化炉入力指令´が、上記情報のガス化炉入力指令と一致するように比例積分制御(PI制御)を行う。そして、空気量は略一定とし、石炭量を調整することによって、この発熱量を得られるような石炭量を決定するための補正係数を算出する。このように、石炭の発熱量の変化が生じた場合に、空気量を略一定にし、石炭量だけを調整させることによって、石炭流量と発熱量から算出される入熱の差によって生じるシステムガス圧力と目標圧力との偏差を収束させることができる。また、この補正係数は、ガス化炉入力指令を所定の範囲を逸脱しない石炭投入量となるように決定されることとする。
【0042】
例えば、発電機の出力設定に基づいて決定されるガス化炉入力指令を100パーセントとした場合に、GT発電機出力指令は100パーセントとされる。このとき、圧力センサPTから計測されるシステムガスの圧力がシステムガスの目標圧力より低く、圧力差があるときには、その圧力差を補うように、ガス化炉入力指令´は増加し(例えば、10パーセント)、110パーセントとなる(つまり、石炭ガス化炉3に投入させる石炭量と空気量とが増加する)。このような場合に、GT発電機出力指令との指令の比率を勘案して、ガス化炉入力指令からガス化炉入力指令´への増分10パーセント分を、投入させる負荷の増分に相当する熱量として算出する。そして、空気量を略一定とした場合に、この熱量を発生させることのできる現在の石炭の石炭投入量を得るための係数を補正係数として算出する。
補正部61は、算出した補正係数を石炭量決定部62に出力する。
【0043】
また、ガス化炉入力指令´とGT発電機出力指令との割合に差がない場合には、通常通りの運転となる。
ガス化炉入力指令´とGT発電機出力指令との割合に差がある場合は、補正部61によって繰り返し補正係数が算出される。
【0044】
石炭量決定部62は、補正部61から算出された補正係数とガス化炉入力指令´とに基づいて、石炭ガス化炉3へ供給する石炭投入量を決定する。
なお、石炭ガス化炉3に流入させる空気量は変更されず、略一定に制御する流量とされる。具体的には、目標とされる発電機の出力設定の値に基づいて決定される空気量とする。
【0045】
このように、制御装置50は、石炭量決定部62によって決定された石炭投入量と、空気量(略一定)とに基づいて決定されるガス化炉入力指令を出力する。この補正されたガス化炉入力指令によって、微粉炭流量調整弁41および空気流量調整弁42の弁開度が制御される。
【0046】
このように、システムガス
の発熱量が変化した場合であっても、石炭ガス化炉3に投入される負荷のうち、供給空気(酸化剤)の供給量を略一定とし、石炭の供給量だけを調整することによっ
て発熱量を略一定に維持する。
これにより、圧縮機5cから抽気される空気は増加させないので、圧縮機5cの運転点は変わらず、圧縮機5cは効率的な運転ができる。また、石炭ガス化複合発電装置の場合、圧縮機5cとガスタービン設備5は連動しているため、圧縮機5cからの抽気空気量が増えるとガスタービン設備5の出力が低下し、ガスタービン設備5に接続された発電機の発電量に影響を及ぼすことになる。しかし、本実施形態においては、圧縮機5cからの抽気空気量を略変化させないので、ガスタービン5bに接続された発電機の発電量に影響を及ぼさない。したがって、所望の発電量を出力すること可能となる。
【0047】
続いて、上述した各部の動作をタイミングチャートを用いて説明する。
図4および
図5に補正部61を用いずに、石炭ガス化炉3の制御を実施した場合のIGCC1のシステムガスの発熱量の推移を、
図6に、上述した本実施形態に係る補正部61を用いて石炭ガス化炉3の制御を実施した場合の石炭ガス化複合発電装置1のシステムガスの発熱量の推移を示す。
【0048】
図4は、横軸は時刻、縦軸は各値(システムガス発熱量、システムガス圧力、ガス化炉入力指令、石炭投入量)の大きさを示しており、時刻t0からt1は、正常な運転状態であることとする。
図4の時刻t1からt2に示されるように、システムガス
の発熱量が低下すると、ガスタービンに流入される石炭ガス化ガス量が増加し、システムガスの圧力が低下する。この圧力低下を回復させ、所望の入熱を供給するために、ガス化炉入力指令が増加されることによって、石炭ガス化炉3に供給される石炭投入量と空気量とが増加する。時刻t2からt3において
もシステムガス発熱量が低下している場合には、さらにガス化炉入力指令が増加し、石炭投入量と空気量とが増加される。時刻t3以降において
、システムガス発熱量が低下していても、ガス化炉入力指令が上限値に到達すると、それ以上ガス化炉入力指令が増加させることができない。このため、ガス化炉入力指令が上限値に到達した時点(時刻t3)で、石炭投入量は一定となり、システムガス圧力は低下し続ける(ケースa)。
【0049】
なお、
図5に示されるように、システムガス
の発熱量が時刻t2のときの値で静定した場合、ガスタービンに流入させるシステムガスの流量も時刻t2の値で静定し、システムガス圧力は時刻t2の圧力で静定する。この場合、ガス化炉入力指令は、システムガスの圧力を回復させるために上昇し、システムガスの圧力が回復できたところで静定する(ケースb)。ガス化炉入力指令が上限値に到達すると、それ以上ガス化炉入力指令が増加させることができない。このため、ガス化炉入力指令が上限値に到達した時点(時刻t3)で、石炭投入量は一定となり、システムガス圧力はそれ以上回復することができない。
【0050】
図6は、横軸は時刻、縦軸は各値(システムガス発熱量、システムガス圧力、ガス化炉入力指令、ガスタービン発電機の出力指令、補正係数、石炭投入量)の大きさを示しており、時刻t0からt1は、正常な運転状態であることとする。
【0051】
図6に示されるように、本実施形態に係るIGCC1の制御装置50では、時刻t1からt2において、システムガス
の発熱量が低下するとシステムガスの圧力が低下する。また、システムガスの圧力が低下するとシステムガスの目標圧力との偏差が大きくなるので、この偏差を補正するようにガス化炉入力指令が増加する。また、GT発電機出力指令は一定に制御されるので、ガス化炉入力指令が増加すると、ガス化炉入力指令とガスタービン発電機の出力指令値とに基づいて決定される補正係数は増加する。結果として、ガス化炉入力指令と補正係数とを乗算して算出される石炭投入量は、補正係数を用いない場合よりも速やかに増加する。
【0052】
また、時刻t1からt2において、石炭投入量が増加することにより、システムガス発熱量が増加する。システムガス発熱量が増加するとガスタービンに供給されるシステムガスが減り、システムガス圧力が増加する。システムガス圧力はシステムガスの目標圧力と比較され、目標圧力となるように制御され(偏差がなくなるように制御され)、ガス化炉入力指令は減少する。時刻t2からt3においてガス化炉入力指令が減少すると、ガス化炉入力指令とGT発電機出力指令の偏差に基づいて算出される補正係数が減少するので、石炭投入量は減少する。
【0053】
このように、ガス化炉入力指令が所定の範囲を逸脱しないよう補正係数に基づいて石炭投入量を決定することにより、石炭投入熱量を一定にし、IGCC1の安定運転を行うことが可能となる。
【0054】
以上説明してきたように、本発明に係る石炭ガス化炉3及びその制御方法並びにプログラム、及び石炭ガス化複合発電装置1によれば、ガス化炉入力指令設定部60において、システムガスの圧力とそのシステムガスの目標圧力との差分および発電機の出力設定値に基づいて、石炭投入量を決定するためのガス化炉入力指令´が設定される。また、補正部においてIGCC1を安定運転させるGT発電機出力指令値とガス化炉入力指令とが対応付けられた情報が備えられ、この情報に基づいて、GT発電機出力指令値とガス化炉入力指令´とのバランスが適切でない場合には、GT発電機出力指令値とガス化炉入力指令とが所望のバランスになるように石炭ガス化炉3に投入させる空気量は略一定とし、石炭投入量が制御(調整)される。
【0055】
このように、石炭種や石炭の性状が変化することによってシステムガス
の発熱量が変化した場合であっても、ガス化炉入力指令が所定の範囲を逸脱しないように石炭投入量が調整される。また、ガス化炉に投入する空気量は略一定とし、石炭量だけを調整するので、圧縮機5cから抽気される空気量は略一定となる。これにより、圧縮機5cの効率的な安定運転を維持しつつ、所望の発熱量の石炭ガス化ガスを得ることができる。
【0056】
また、圧縮機5cから抽気される空気は増加させないので、圧縮機5cの運転点が変化してしまうことなく、圧縮機5cは効率的に運転できる。また、石炭ガス化複合発電装置1の場合、圧縮機5cとガスタービンは連動しているため、圧縮機5cからの抽気空気量が増えるとガスタービンの出力が低下し、ガスタービンに接続された発電機の発電量に影響を及ぼすことになるが、本実施形態においては、圧縮機5cからの抽気空気量を略変化させないので、ガスタービンに接続された発電機の発電量に影響を及ぼさない。したがって、所望の発電量を出力することが可能となる。
【0057】
なお、本実施形態では、石炭ガス化炉3をIGCC1に適用した場合について説明したが、本発明の石炭ガス化炉はこれに限定されず、例えば、所望の組成の石炭ガス化ガスを得ることを目的としたガス生成装置として用いてもよい。
また、本実施形態では、石炭ガス化複合発電装置の制御装置としてハードウェアによる処理を前提としていたが、このような構成に限定される必要はない。例えば、別途ソフトウェア(石炭ガス化複合発電装置の制御プログラム)にて処理する構成も可能である。この場合、石炭ガス化複合発電装置の制御プログラムは、CPU、RAM等の主記憶装置、上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、CPUが上記記憶媒体に記録されているプログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述の石炭ガス化複合発電装置と同様の処理を実現させる。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0058】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。