特許第5721459号(P5721459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5721459感光性樹脂組成物、これを用いた硬化物、および多層材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721459
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、これを用いた硬化物、および多層材料
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20150430BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20150430BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20150430BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20150430BHJP
   C08G 69/32 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   G03F7/023
   G03F7/004 501
   H01L21/30 502R
   H05K3/28 D
   C08G69/32
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-23227(P2011-23227)
(22)【出願日】2011年2月4日
(65)【公開番号】特開2012-163712(P2012-163712A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2014年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀口 尚文
(72)【発明者】
【氏名】小淵 香津美
(72)【発明者】
【氏名】小木 聡
(72)【発明者】
【氏名】関根 健二
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−309885(JP,A)
【文献】 特開2003−005369(JP,A)
【文献】 特開2008−007744(JP,A)
【文献】 特開2006−323193(JP,A)
【文献】 特開2008−033157(JP,A)
【文献】 特開2004−085622(JP,A)
【文献】 特開平03−247655(JP,A)
【文献】 特開2006−282880(JP,A)
【文献】 特表2012−516375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物(a)と1分子中に2個以上の二塩基酸無水物基を有する化合物(b)とを反応させて得られるアミド酸(A)、フェノール性水酸基を有するポリアミド樹脂(B)、及び光酸発生剤(C)を含む感光性樹脂組成物であって、フェノール性水酸基を有するポリアミド樹脂(B)が分子中に下記一般式(1)及び一般式(2)で表される芳香族ポリアミドセグメントを有するポリアミド樹脂(B1)であって、さらにゴム変性セグメントを有するポリアミド樹脂(B2)である感光性樹脂組成物
【化1】
(式中、Ar1及びAr3は二価の芳香族基、Ar2はフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基を示す。なお、各セグメントはポリアミド樹脂(B1)の構造中、ランダムに配列しているものである。)
【請求項2】
更に1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の芳香族炭化水素環を有する反応性希釈剤(D)を含む請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
成形用材料である請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
皮膜形成用材料である請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
電気絶縁材料である請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
感光性ソルダーレジスト材料である請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物。
【請求項8】
請求項記載の感光性樹脂組成物の硬化物の層を有する多層材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物(a)と1分子中に2個以上の二塩基酸無水物基を有する化合物(b)とを反応させて得られるアミド酸(A)、フェノール性水酸基を有するポリアミド樹脂(B)、及び光酸発生剤(C)を含む感光性樹脂組成物に関する。該感光性樹脂組成物は、成形用材料、皮膜形成用材料等に好適に用いられる。そして、具体的にはプリント(配線回路)基板製造の際のソルダーレジスト、層間絶縁材料、アルカリ現像可能なその他レジスト材料、接着剤、レンズ、ディスプレー、光ファイバー、光導波路、ホログラム等に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板には、携帯機器の小型軽量化や通信速度の向上をめざし、高精度化、高密度化が求められており、それに伴い回路を被覆する皮膜形成用材料(ソルダーレジスト)への要求も益々高くなっている。例えば、パターンの高精細性、はんだ等を使用する基板製造時や作動時の素子の発熱に耐え得る耐熱性、長期にわたる高い絶縁性の維持による信頼性、メッキ等の化学的処理に耐え得る性能等について高い要求があり、より強靭な硬化物性能を有する皮膜形成用材料が求められている。
【0003】
特に近年、フレキシブル基板のような柔軟なプリント配線基板の使途も拡大している。フレキシブル基板の回路の保護は、カバーレイフィルムをラミネートして使用する方法が一般的である。その加工方法としては、カバーレイフィルムを所定の形状に加工した後、接着剤層を形成し、ラミネートする方法と、接着層付きフィルムをラミネートした後、レーザーやドリル等の機械加工によって所定の形状を形成する方法が用いられている。しかしいずれの方法においても、手作業によるカバーレイフィルムの位置合わせや、機械加工による穴あけ操作のため、微細加工性に劣るという問題がある。また、加工装置や作業性の点から製造コストが上昇するという問題がある。
【0004】
これに対し、ラミネートの課題解決を目的に、塗工、光パターニング、現像可能なソルダーレジスト型の皮膜形成用材料を使用する試みが行われている。しかし、その皮膜は剛直であり、曲げにも追従できる材料であると同時にその他の必要とされる諸特性を満たす材料は見出されていない。
【0005】
一般にポジ型感光性樹脂組成物では高精細なパターンを得ることができる。ネガ型感光性樹脂組成物の場合では現像液により露光部の膨潤が起こりやすく、高解像度の微細加工を行なうことが難しい。
【0006】
非特許文献1には、1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)と1分子中に2個の酸無水物構造を有する化合物(b)とを反応させて得られるアミド酸と光酸発生剤からなるポジ型の感光性樹脂組成物が記載されている。ここで、該組成物は一般的に溶剤への溶解性が低く、N−メチルピロリドン等の極性溶媒の使用が一般的である。この場合、溶剤系を用いたワニスを基板に塗工した後の乾燥させる工程において、その揮発性の悪さが問題となり、乾燥塗膜中に溶剤が多量に残留してしまう。これら極性溶剤は一般的に水溶性であるため、次工程の現像工程で残留溶剤が流出し、パターニング不良を起こすだけではなく、現像時に残る塗膜が水を吸収してしまい、その乾燥時に塗膜の発泡、膨れ、剥がれ等を起こすことが課題となっている。
【0007】
特許文献1には、アミド酸と光酸発生剤、更に不飽和二重結合を有する反応性希釈剤からなる組成物が開示されている。ここで用いられている反応性希釈剤は、ドライフィルムとしての可塑性を向上させることを目的とした脂肪族系の二官能アクリレートである。しかしながら、二官能アクリレートはアミド酸との相溶性が悪く、配合量を多くすることができない。一方単官能アクリレート等の反応性希釈剤は良好な相溶性を有し、かつ、現像乾燥後に塗膜の発泡、膨れ、剥がれ等がない塗膜を得ることができる。しかし、単官能アクリレート等の反応性希釈剤を用いた場合では現像時のコントラストが低く、レジストの特性を十分に満足できていなかった。
【0008】
また、特許文献2にあるように、ポジ型の感光性を発現させる方法としてはアルカリ現像液に可溶なアミド酸に、感光剤としてキノンジアジド化合物を添加する方法が数多く提案されている。
【0009】
キノンジアジド化合物は光照射によってアルカリ可溶性のインデンカルボン酸になり、アルカリ現像液への溶解性を発現するが、光照射前はアルカリ現像液に不溶であるため、光反応性溶解抑制剤としての機能も持つ。しかし、アルカリ現像液に対するアミド酸の溶解性が高すぎるために、露光部と未露光部の溶解性のコントラストを得ることは難しかった。
【0010】
この課題改善のために、非特許文献2には疎水性の高いアミド酸にキノンジアジド化合物を添加することで感度、コントラストともに良好に得られる組み合わせが記載されている。しかしながら、アミド酸の構造が限定されるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−107419号公報
【特許文献2】特開昭52−13315号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】最新感光性ポリイミド(2002年1月28日発行、日本ポリイミド研究会編集)
【非特許文献2】上田充,特集:光化学 総説『感光性ポリイミド』,日本写真学会誌,2003年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、リソグラフィ工程における現像時のコントラスト向上およびその後の乾燥時に、塗膜の発泡、膨れ、剥がれ等がない平滑性に優れた硬化膜を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題に鑑み、アミド酸(A)及びフェノール性水酸基を有するポリアミド樹脂(B)を含む感光性樹脂組成物が現像時のコントラストに優れた硬化物を与えることを見出した。
【0015】
更に、フェノール性水酸基を有するポリアミド樹脂(B)が分子中に下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される芳香族ポリアミドセグメントを有するポリアミド樹脂(B1)である感光性樹脂組成物に関する。
【0016】
【化1】
【0017】
(式中、Ar及びArは二価の芳香族基、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基を示す。なお、各セグメントはポリアミド樹脂(B1)の構造中、ランダムに配列している。)
【0018】
更に、フェノール性水酸基を有するポリアミド樹脂(B)がさらにゴム変性セグメントを有するポリアミド樹脂(B2)である前記の感光性樹脂組成物に関する。
【0019】
更に1分子中に1個の不飽和二重結合と1ないし4個の芳香族炭化水素環を有する反応性希釈剤(D)を含む前記の感光性樹脂組成物に関する。
【0020】
更に、成形用材料である前記の感光性樹脂組成物に関する。
【0021】
更に、皮膜形成用材料である前記の感光性樹脂組成物に関する。
【0022】
更に、電気絶縁材料である前記の感光性樹脂組成物に関する。
【0023】
更に、感光性ソルダーレジスト材料である前記の感光性樹脂組成物に関する。
【0024】
更に、前記の感光性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物に関する。
【0025】
更に、前記の感光性樹脂組成物の硬化物の層を有する多層材料に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物は、光パターニングが可能でありながら、強靭かつフレキシブル基板に適した柔軟性にも優れた硬化物を得ることができる。従って、皮膜形成用材料、アルカリ現像可能なレジスト材料、例えばプリント(配線回路)基板製造の際のソルダーレジスト、層間絶縁材料、接着剤、成型材料として、レンズ、ディスプレー、光ファイバー、光導波路、ホログラム等用の成分として適している。さらに、この組成物は、優れた絶縁信頼性を兼ね備えていることから、電気的な絶縁を目的とする材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物は、1分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物(a)と1分子中に2個以上の酸無水物構造を有する化合物(b)とを反応させて得られるアミド酸(A)、フェノール性水酸基を有するポリアミド樹脂(B)、及び光酸発生剤(C)を含む。
【0028】
1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)(以下「化合物」(a))としては、1分子中に2個の脂肪族アミノ基を有する化合物、1分子中に2個の芳香族アミノ基を有する化合物等が挙げられる。本発明においては1分子中に2個の芳香族アミノ基を有する化合物を用いることが好ましい。
【0029】
1分子中に2個の芳香族アミノ基を有する化合物(a)としては、例えば、フェニレンジアミン、ジメチルフェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等単環型芳香族ジアミン類、ビフェニレンジアミン、ビス(ヒドロキシフェニル)ジアミン、ジアニシジン、ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(メチルアミノフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシアミノフェニル)エーテル、ビス(カルボキシアミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェニル)スルホン、ビス(アミノフェニル)メタン、ビス(アミノフェニル)プロパン、ビス(アミノフェニル)スルフィド、ビス(アミノフェニル)ヘキサフロロプロパン等の二環型芳香族ジアミン類、ビス(ヒドロキシアミノフェニル)ベンゼン、ビス(ヒドロキシアミノフェノキシ)ベンゼン、ビスアミノフェニルフルオレン、ビス[[アミノフェノキシ]フェニル]プロパン、ビス[[アミノフェノキシ]フェニル]スルホン等の多環型芳香族ジアミン類及びそれらの誘導体が挙げられる。本発明においては二環型芳香族ジアミン類、多環型芳香族ジアミン類が好ましい。
【0030】
本発明において用いられる1分子中に2個以上の酸無水物構造を有する化合物(b)(以下「化合物(b)」)とは、本発明の感光性樹脂組成物の目的とする性能に応じて適宜選択されるものであり、単独もしくは2種類以上を同時に使用することができる。
【0031】
化合物(b)としては、例えば、ピロメリット酸無水物等の単環型芳香族四塩基酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフチルテトラカルボン酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリット酸無水物、ジオールビストリメリット酸無水物類(例えば、ヘキサンジオールビストリメリット酸無水物等)等の二環型芳香族四塩基酸二無水物類、ビスフタル酸フルオレン無水物、ビフェノールビストリメリット酸無水物等の多環型芳香族四塩基酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸無水物等が挙げられる。更に、これら芳香族無水物の核水添反応による脂環式酸無水物類も使用できる。中でも、多環型芳香族四塩基酸二無水物、脂環式酸無水物が好ましい。
【0032】
化合物(a)と化合物(b)とを反応させてアミド酸(A)を得ることができる。この反応は、公知一般の方法及び反応条件が使用できる。
【0033】
本発明に使用されるアミド酸樹脂製造方法の一例について説明する。まず、化合物(b)を溶媒中に加え、溶解する。これを撹拌しながら、窒素雰囲気下、氷冷下で、化合物(a)を徐々に加える。この後2〜8時間撹拌して反応させることによってアミド酸(A)を得る。
【0034】
反応温度は室温以下、好ましくは氷冷下付近で行なうことにより、イミド化を進行させずに重合させることができる。
【0035】
化合物(b)と化合物(a)はほぼ等モル量加えるのが好ましい。化合物(b)と化合物(a)の使用割合を変化させることにより、重合度を変化させることができる。
【0036】
この反応に際し、適宜溶剤を使用することができる。該溶剤としては得られるアミド酸(A)が溶解するものであれば特に限定されない。
【0037】
一般にアミド酸(A)は低極性溶剤への溶解性が乏しいため、溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤、ブチロラクトン等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、ブチルジグリコール等のグリコール系溶剤の所謂超極性溶剤が好ましい。
【0038】
本発明において用いられるフェノール性水酸基を有するポリアミド樹脂(B)は、フォトリソグラフィ工程の現像時のコントラスト向上及びその後の乾燥時に塗膜の発泡、膨れ、剥がれ等を防ぐために使用する。
【0039】
フェノール性水酸基を有するポリアミド樹脂(B)(以下「ポリアミド樹脂(B)」)は、分子中にフェノール性水酸基を有するものであれば、本発明の感光性樹脂組成物の目的とする性能に応じて適宜選択されるものであり、単独もしくは2種類以上を同時に使用することができる。
【0040】
中でも、下記一般式(1)及び一般式(2)で表される芳香族ポリアミドセグメントを有するポリアミド樹脂(B1)(以下「ポリアミド樹脂(B1)」)及びポリアミド樹脂(B1)がさらにゴム変性セグメントを有するポリアミド樹脂(B2)(以下「ポリアミド樹脂(B2)」)が好ましい。
【0041】
下記式(1)
【0042】
【化2】
【0043】
(Ar及びArはそれぞれ独立して、同一でも、異なっていてもよい2価の芳香族基を、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基を示す。なお、各セグメントはポリアミド樹脂(B1)の構造中、ランダムに配列しているものである。)
【0044】
以下、ポリアミド樹脂(B1)について述べる。
【0045】
ポリアミド樹脂(B1)は前記一般式(1)及び(2)で表されるセグメントを有する限り特に制限はないが、一般式(2)で現されるセグメントが全てのセグメントに対し、0.05モル%以上0.5モル%未満であれば、一般式(2)で表されるセグメント以外の、後述するゴム変性セグメントや、他のセグメントを有していてもよい。
【0046】
前記一般式(1)において、Arは二価の芳香族基であればよいが、本発明においては置換基を有さない二価のフェニル基が好ましい。また、Arは結合している2つの炭素原子との結合が1,3結合となる構造が好ましい。これは得られるポリアミド樹脂(B)溶剤溶解性が優れるためである。以下にArが置換基を有さない二価のフェニル基の場合の一般式(1)で表されるセグメント(一般式(3))を示す。
【0047】
【化3】
【0048】
(式中、Arは一般式(1)におけるArと同一である。)
【0049】
一般式(2)においてArはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基であればよいが、本発明においては一つ以上のフェノール性水酸基のみを有する二価の芳香族基が好ましい。また、Arは結合している2つの炭素原子との結合が1,3結合となる構造が好ましい。以下にArがフェノール性水酸基のみを有する二価のフェニル基の場合の一般式(2)で表されるセグメント(一般式(4))を示す。
【0050】
【化4】
【0051】
(式中Arは一般式(2)におけるArと同一であり、wは平均置換基数であって1〜4の正数を表す。)
【0052】
一般式(1)乃至一般式(4)で表されるセグメントにおいてArは二価の芳香族基であればよいが、本発明においては、二つ以上の芳香環を含む二価の芳香族基が好ましい。Arに含まれる芳香環は、互いに直接結合していてもよく、また、O、N、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数0〜6で構成される結合で互いに結合していてもよい。また、Arは結合している2つの窒素原子との結合とセグメント内の芳香環同士の結合が3,4’結合または4,4’結合となる構造が好ましい。中でも、下記一般式(5)で表される二価の芳香族基が好ましい。
【0053】
【化5】
【0054】
(式中、Rは水素原子、フッ素原子、水酸基又はO、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数1〜6の置換基、Rは直接結合又はO、N、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数0〜6で構成される結合を表し、a及びbは平均置換基数であってa及びbはそれぞれ0〜4の正数を表す。)
【0055】
一般式(5)において、好ましいRとしては、水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の鎖状アルキル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられ、互いに同一でも異なっていてもよいが、全て同一であるものが好ましい。また、一般式(5)において、好ましいRとしては、直接結合、−O−、−NH−、−SO−、−CO−、−(CH1〜6−、−C(CH−、−C(CF−等が挙げられる。Rとしては水素原子が好ましく、Rとしては−O−が好ましい。
【0056】
本発明においてポリアミド樹脂(B1)は、一般式(3)及び一般式(4)で表されるセグメントを含み、一般式(3)及び一般式(4)で表されるセグメントにおいてArが一般式(5)で表される二価の芳香族基であるものが好ましい。
【0057】
以下、ポリアミド樹脂(B2)について述べる。
【0058】
ポリアミド樹脂(B2)は、ポリアミド樹脂(B)の中でもゴム変性セグメントを有するポリアミド樹脂である。本発明においてはポリアミド樹脂(B1)が、さらに下記一般式(6)で表されるブタジエン重合体セグメント及び(7)で表されるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体セグメントのいずれかから選ばれる一種以上を有するものであることが好ましい。なお、一般式(6)及び/又は(7)で表される各セグメントはポリアミド樹脂(B2)の末端に位置する。ポリアミド樹脂(B2)の末端に位置するセグメントは同一のものであっても、それぞれ異なるものであってもよい。
【0059】
【化6】
【0060】
(式中x、y、およびzはそれぞれ平均値で、xは5〜200の正数を示し、yおよびzは0<z/(y+z)≦0.13を示し、また、y+zは10〜200の正数である。)
【0061】
以下、本発明で使用されるポリアミド樹脂(B)の製造方法について説明する。
【0062】
ポリアミド樹脂(B)の合成については例えば特許2969585号公報等に記載されている方法が応用できる。まず、ピリジン誘導体を含む有機溶剤からなる混合溶剤に亜リン酸エステルを添加し、芳香族ジカルボン酸成分(フェノール性水酸基含有芳香族ジカルボン酸及び/又はフェノール性水酸基を有しない芳香族ジカルボン酸)1モルに対して0.5〜2モルの芳香族ジアミン成分を添加する。次いで窒素などの不活性雰囲気下で加熱撹拌する。反応終了後、反応混合物を水、メタノール、あるいはヘキサンなどの貧溶剤を反応液に添加、もしくは貧溶剤中に反応液を投じて精製重合体を分離した後、再度貧溶剤で洗浄を行なうことにより芳香族ポリアミド樹脂(B)を得ることができる。この製造方法によれば、官能基であるフェノール性水酸基を保護することなしに、更にフェノール性水酸基と他の反応基、例えばカルボキシル基やアミノ基との反応を起こすことなしに、直鎖状の芳香族ポリアミド樹脂を容易に製造できる。また、重縮合に際して高温を必要としない、すなわち約150℃以下で重縮合可能という利点も有する。
【0063】
ポリアミド樹脂(B2)は芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分の反応後、反応系に、両末端カルボン酸または両末端アミンエラストマーを添加し、不活性雰囲気下で加熱撹拌する。このとき、両末端カルボン酸または両末端アミンエラストマーの添加量は、芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分の反応によって得られる反応物1モルに対してに対して0.8〜1.2モルとなるのが好ましい。また、両末端アミンエラストマーの添加はピリジン等の不活性溶媒で希釈し、滴下するとよい。芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分の反応によって得られる反応物と両末端アミンエラストマーとの反応は通常1〜20時間、反応温度は50〜100℃で行われる。反応終了後、反応混合物を水、メタノール、あるいはヘキサンなどの貧溶媒を反応液に添加、もしくは貧溶媒中に反応液を投じて精製重合体を分離した後、再度貧溶剤で洗浄を行なうことにより、ポリアミド樹脂(B2)を得ることが出来る。
【0064】
ポリアミド樹脂(B)を製造するために使用する芳香族ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−トリレンジアミン等のフェニレンジアミン誘導体;4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等のジアミノジフェニルエーテル誘導体;4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル等のジアミノジフェニルチオエーテル誘導体;4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン等のジアミノベンゾフェノン誘導体;4,4’−ジアミノジフェニルスルフォキサイド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等のジアミノジフェニルスルホン誘導体;ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル等のベンジジン誘導体;p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、o−キシリレンジアミン等のキシリレンジアミン誘導体;4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン等のジアミノジフェニルメタン誘導体等が挙げられる。中でもフェニレンジアミン誘導体、ジアミノジフェニルメタン誘導体またはジアミノジフェニルエーテル誘導体が好ましい。ジアミノジフェニルメタン誘導体の中では4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、、ジアミノジフェニルエーテル誘導体の中では4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルが本発明において好ましく用いられる。
【0065】
本発明においてはポリアミド樹脂(B)を製造するためにジカルボン酸を使用するが、ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としてはフェノール性水酸基を有する芳香族ジカルボン酸及びフェノール性水酸基を有さない芳香族ジカルボン酸が挙げられる。フェノール性水酸基を有する芳香族ジカルボン酸及びフェノール性水酸基を有さない芳香族ジカルボン酸のいずれも、一種又は二種以上を混合して用いてもよい。本発明においては、フェノール性水酸基を有する芳香族ジカルボン酸とフェノール性水酸基を有さない芳香族ジカルボン酸を混合して用いることが好ましい。フェノール性水酸基を有する芳香族ジカルボン酸としては、芳香族環が1つのカルボキシル基と1つ以上の水酸基を有する構造であれば特に制限はなく、例えば5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシイソフタル酸、3−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸等ベンゼン環上に1つの水酸基と2つのカルボン酸を有するジカルボン酸を挙げることができる。これらフェノール性水酸基含有芳香族ジカルボン酸のうち、得られるポリマーの溶剤溶解性、純度、電気特性、金属箔およびポリイミドへの接着性等の面から5−ヒドロキシイソフタル酸が好ましい。
【0066】
フェノール性水酸基を有しない芳香族ジカルボン酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−オキシ二安息香酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−メチレン二安息香酸、4,4’−メチレン二安息香酸、4,4’−チオ二安息香酸、3,3’−カルボニル二安息香酸、4,4’−カルボニル二安息香酸、4,4’−スルフォニル二安息香酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ本発明においてはイソフタル酸が好ましい。
【0067】
フェノール性水酸基を有する芳香族ジカルボン酸は、全カルボン酸成分中で0.5モル%以上30モル%未満となる割合で使用する。この仕込み比が、一般式(1)及び(2)におけるn/(n+m)を決定する。
【0068】
上記亜りん酸エステルとしては、亜りん酸トリフェニル、亜りん酸ジフェニル、亜りん酸トリ−o−トリル、亜りん酸ジ−o−トリル、亜りん酸トリ−m−トリル、亜りん酸トリ−p−トリル、亜りん酸ジ−p−トリル、亜りん酸ジ−p−クロロフェニル、亜りん酸トリ−p−クロロフェニル、亜りん酸ジ−p−クロロフェニル等が挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0069】
また、亜りん酸エステルと共に使用するピリジン誘導体としては、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,4−ルチジンなどを例示することが出来る。
【0070】
ポリアミド樹脂(B)の製造において使用される縮合剤は、上記亜りん酸エステルとピリジン誘導体であるが、ピリジン誘導体は有機溶媒に添加して用いられるのが一般的である。該有機溶媒としては亜りん酸エステルと実質的に反応せず、かつ上記芳香族ジアミンと上記ジカルボン酸とを良好に溶解させる性質を有するほか、反応生成物であるポリアミド樹脂(B)に対する良溶媒であることが望ましい。この様な有機溶媒としては、N−メチルピロリドンやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒の他、トルエン、メチルエチルケトン、またはこれらとアミド系溶媒との混合溶媒が挙げられ、中でもN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。通常、ピリジン誘導体と溶媒の混合物中で、ピリジン誘導体が5〜30質量%を占める量で添加した混合物が使用される。
【0071】
また、重合度の大きいポリアミド樹脂(B)を得るには、上記亜りん酸エステルとピリジン誘導体との他に、塩化リチウム、塩化カルシウムなどの無機塩類を添加することが好ましい。
【0072】
上記製造方法において縮合剤である亜りん酸エステルの添加量は、通常、芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基に対して等モル以上であるが、30倍モル以上は効率的ではない。また、亜りん酸トリエステルを用いた場合、副生する亜りん酸ジエステルも縮合剤であるため、芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基に対して80モル%程度でもよい。ピリジン誘導体の量は芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基に対して等モル以上であることが必要であるが、実際には反応溶媒としての役割を兼ねて大過剰使用されることが多い。上記ピリジン誘導体と有機溶媒とからなる混合物の使用量は、理論上得られるポリアミド樹脂(B)100質量部に対して、5〜30質量部となるような範囲が好ましい。反応温度は、通常60〜180℃が好ましい。反応時間は反応温度により大きく影響されるが、いかなる場合にも最高の重合度を表す最高粘度が得られるまで反応系を撹拌することが好ましく、通常数分から20時間である。上記好ましい反応条件下で、5−ヒドロキシイソフタル酸およびイソフタル酸と3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを等モル使用すると、2〜100程度という最も好ましい平均重合度を有するポリアミド樹脂(B)を得ることが出来る。
【0073】
上記、好ましい平均重合度を有するポリアミド樹脂(B)の固有粘度値(30℃における0.5g/dlのN,N−ジメチルアセトアミド溶液で測定)は0.1〜4.0dl/gの範囲にある。一般に好ましい平均重合度を有するか否かは、固有粘度を参照することにより判断する。固有粘度が0.1dl/gより小さいと、成膜性や芳香族ポリアミド樹脂としての性質出現が不十分であるため、好ましくない。逆に固有粘度が4.0dl/gより大きいと、重合度が高すぎるため溶剤溶解性が悪くなり、かつ成形加工性が悪くなるといった問題が発生する。
【0074】
ポリアミド樹脂(B)の重合度を調節する簡便な方法としては、芳香族ジアミンまたは芳香族ジカルボン酸のどちらか一方を過剰に使用する方法を挙げることが出来る。
【0075】
ポリアミド樹脂(B2)を製造する場合に用いられる前記両末端カルボン酸または両末端アミンエラストマーは、前記一般式(6)で表される構造を有するブタジエン重合体であって両末端にカルボキシル基又はアミノ基を有するものや、一般式(7)で表されるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体であって両末端にカルボキシル基又はアミノ基を有するものであれば特に制限はない。
【0076】
このような両末端カルボン酸または両末端アミンエラストマーの具体例としては、両末端カルボン酸ポリブタジエン(宇部興産株式会社製:CTB)または両末端カルボン酸ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(宇部興産株式会社製:CTBN)が好ましい。その使用量は、これら共重合体を反応させる前のポリアミド樹脂の末端カルボキシル基またはアミノ基1当量に対して、アミノ基またはカルボキシル基が等当量以上、好ましくは等当量〜1.5当量である。
【0077】
使用する溶剤としては、例えばγ−ブチロラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。得られた樹脂溶液中の樹脂濃度は通常10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%である。
【0078】
本発明において用いられる光酸発生剤(C)とは、例えば、活性エネルギー線の照射により酸性基を顕在化し、樹脂の特性変化をもたらすことを目的として加えられるものである。結果として、本発明の感光性樹脂組成物の活性エネルギー線照射部と非照射部について、溶剤やアルカリ水溶液への溶解性を変化させ、パターニングをすることが可能となる。
【0079】
即ち、光の照射に伴い酸性基を顕在化させる化合物を用いることで、照射部のアルカリ水溶液等の現像液への溶解性を向上させ照射部を溶解させ、一方、非照射部は現像液への溶解性が乏しいままとすることで、所謂、ポジ型の感光特性を付与することができる。
【0080】
該光酸発生剤(C)としては、例えば、キノンジアジド系化合物が挙げられる。これらは、フェノール性水酸基を複数有するポリヒドロキシ化合物とナフトキノンジアジドスルホン酸塩化物等からエステル化反応により得られる。即ち、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン及び2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンの6−ジアゾ−ジヒドロ−5−オキソ−1−ナフタレンスルホン酸エステル等を挙げることができる。市場からは、東洋合成工業社製のPC−5、NT−200、4NT−300やダイトーケミックス社製のDTEP−300、DTEP−350、PA−6等として得ることができる。
【0081】
本発明の感光性樹脂組成物はアミド酸(A)及びポリアミド樹脂(B)及び光酸発生剤(C)の他に、その他成分として、本発明の感光性樹脂組成物の取り扱いや、本発明の用途に応じて適宜、1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の芳香族炭化水素環を有する反応性希釈剤(D)、溶剤、無機又は有機充填材等を含んでいてもよい。
【0082】
反応性希釈剤(D)としては、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニルフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0083】
本発明においては前記ポリアミド樹脂(B)を用いることにより、1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の芳香族炭化水素環を有する反応性希釈剤(D)を用いても優れたコントラストを得ることができる。
【0084】
溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤、ブチロラクトン等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、ブチルジグリコール等のグリコール系溶剤が挙げられる。
【0085】
無機又は有機充填材としては微粉状シリカ、窒化ホウ素、アルミナ、カーボンブラック等を挙げることができる。また必要に応じて更に他の配合成分を配合しても構わない。他の配合成分としては、用途や要求性能に応じて決定されるが、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、染料や顔料などの着色剤、金属粉などの導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、カップリング剤、界面活性剤などを好適に配合することができる。これらの配合成分は、予め溶液組成物に配合してもよいし、使用に際して添加配合して用いても差し支えない。
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物はアミド酸(A)を100部とした場合、ポリアミド樹脂(B)がアミド酸(A)100部に対して、1部〜30部であり、光酸発生剤(C)はアミド酸(A)100部に対して5部〜40部である。必要に応じて反応性希釈剤(D)をアミド酸(A)100部に対して0〜70部、その他成分を0〜70部で加えてもよい。好ましくは、ポリアミド樹脂(B)が1部〜15部であり、光酸発生剤(C)は5部〜30部である。また、必要に応じて反応性希釈剤(D)を0〜50部、その他成分を0〜40部である。
【0087】
本発明の感光性樹脂組成物は、活性エネルギー線によって容易にポジ型又はネガ型の特性変化を生じる。ここで活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線等が挙げられる。本発明の好適な用途を考慮して、これらの内、紫外線、レーザー光線、可視光線または電子線が好ましい。
【0088】
本発明における現像液としては塩基性水溶液を用いることができる。塩基性化合物としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムイオンの炭酸塩などが挙げられる。具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を用いることができる。
【0089】
本発明の成形用材料とは、未硬化の該組成物を型にいれ若しくは型を押し付けて物体を成形したのち、活性エネルギー線によりポジ型又はネガ型の反応を起こさせ成形させるもの、もしくは未硬化の組成物にレーザー光線等の焦点光などを照射し、ネガ型の特性変化を起こさせ成形させるものを指す。
【0090】
具体的には、平面状に成形したシート;素子を保護するための封止材;未硬化の組成物に微細加工された「型」を押し当て微細な成形を行う、所謂、ナノインプリント材料;更には、難燃性と高い信頼性を求められかつハロゲン化合物が忌避される電気絶縁を目的とした封止材料等が挙げられる。
【0091】
本発明の皮膜形成用材料とは、基板表面を被覆することを目的として利用されるものである。具体的には、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ、オフセットインキ等のインキ材料;ハードコート、トップコート、オーバープリントニス、クリヤコート等の塗工材料;ラミネート用や光ディスク用他各種接着剤及び粘着剤等の接着材料;ソルダーレジスト、エッチングレジスト、マイクロマシン用レジスト等のレジスト材料等が挙げられる。更には、皮膜形成用材料を一時的に剥離性基板に塗工しフィルム化した後、本来目的とする基板に貼合し皮膜を形成させる、所謂、ドライフィルムも皮膜形成用材料に該当する。
【0092】
本発明の電気絶縁材料とは、基板上に該組成物の皮膜層を形成させ、電子回路やその部品などにおいて対象とする2箇所の間で電気抵抗が大きく電圧を掛けても電流が流れない状態にする本発明の感光性樹脂組成物を指す。本発明の感光性樹脂組成物は、フレキシブル配線板のオーバーコート材や多層基板の層間絶縁膜、半導体工業における固体素子への絶縁膜やパッシベーション膜の成型材料及び半導体集積回路や多層プリント配線板等の層間絶縁材料、基板保護のために用いられるソルダーレジスト等に用いられる。特に高い難燃性が求められるフレキシブル基板には特に好適である。即ち、高い難燃性を付与できるだけでなく、長期にわたる絶縁の安定性を発揮することができるためである。
【0093】
また、一般に、基板上には絶縁の必要な部分と導通が必要な部分とがあり、これらをそれぞれ必要に応じてパターニングしなければならないが、印刷法を用いると精細なパターニングが困難であり高密度の基板作成には向かないものの、基板上に本発明の電機絶縁材料の皮膜層を形成させ、その後、紫外線等の活性エネルギー線を部分的に照射し、照射部、未照射部の物性的な差異を利用して描画することで精細なパターニングを可能とすることができる。特に難燃性と高い信頼性を得ることができる特性を生かして、ソルダーレジスト等の永久レジスト用途などのパターニングが必要な絶縁材料としての使用が好ましい。
【0094】
このほかにも本発明の感光性樹脂組成物は、同様に高い難燃性を求められる光導波路としてプリント配線板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光基板等にも利用することが可能である。
【0095】
本発明には前記の感光性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物も含まれ、また、該硬化物の層を有する多層材料も含まれる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中特に断りがない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%を示す。なお、実施例におけるGPC(Gel Permeation Chromatography)の測定条件は以下のとおりである。
機種:TOSOH HLC−8220GPC
カラム:TSKGEL Super HZM−N
溶離液:NMP(N−メチルピロリドン)、0.6ml毎分、温度40℃
検出器:示差屈折計
分子量標準:ポリスチレン
【0097】
合成例1 アミド酸(A)の合成
合成例1−1
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた300ml反応器に、1分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物(a)として4,4’−オキシジアニリン(以下ODAと示す)18.02g(90.00mmol)をN−メチルピロリドン103.8g中、80℃で1時間攪拌し溶解させた。その後、1分子中に2個以上の二塩基酸無水物基を有する化合物(b)として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物26.48g(90.00mmol)を仕込み、更に80℃にて5時間反応しアミド酸(A1)を得た。
【0098】
このアミド酸化合物(A1)の質量平均分子量をGPCで測定したところ、約50000であった。このアミド酸(A1)をE型粘度計を用い25℃で測定した粘度は、63Pa・sであった。
【0099】
合成例1−2
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた300ml反応器に、1分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物(a)としてODA18.02g(90mmol)をN−メチルピロリドン106.4g中、80℃で1時間攪拌し溶解させた。その後、1分子中に2個以上の二塩基酸無水物基を有する化合物(b)として水素化3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物27.57g(90.00mmol)を仕込み、更に80℃にて5時間反応させ、アミド酸(A2)を得た。
【0100】
このアミド酸(A2)のGPCによる質量平均分子量は約30000であった。このアミド酸(A2)をE型粘度計を用い25℃で測定した粘度は、52Pa・sであった。
【0101】
合成例2 フェノール性水酸基を有するポリアミド樹脂(B)の合成
合成例2−1
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施し、5−ヒドロキシイソフタル酸1.8g(9.88mmol)、イソフタル酸81.3g(489.38mmol)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル102g(509.39mmol)、塩化リチウム3.4g、N−メチルピロリドン344g、ピリジン115.7gを加え撹拌溶解させた後、亜りん酸トリフェニル251gを加えて90℃で8時間反応させ、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂(B1−1)の反応液を得た。この反応液を室温に冷却した後、メタノール500gに投入し、析出した樹脂を濾別し、さらにメタノール500gで洗浄した。その後得られた樹脂を乾燥させて樹脂粉末を得た。
【0102】
このポリアミド樹脂粉末(B1−1)のGPCによる質量平均分子量は約110000であった。また、この樹脂粉末(B1−1)0.100gをN,N−ジメチルアセトアミド20.0mlに溶解させ、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した対数粘度は、0.50dl/gであった。
【0103】
合成例2−2
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施し、5−ヒドロキシイソフタル酸9.6g(52.71mmol)、イソフタル酸59.8g(359.96mmol)、3,4‘−ジアミノジフェニルエーテル87.7g(437.97mmol)、塩化リチウム8.1g、N−メチルピロリドン913g、ピリジン101gを加え撹拌し、溶解させた後、そこに亜リン酸トリフェニル220gを加えて90℃で4時間反応させ、両末端アミンのポリアミド体を生成させた。該反応液に、両末端にカルボキシル基を持つポリブタジエン重合体(Hycar CTB 2000X162、BF Goodrich社製、質量平均分子量4200)117g(27.86mmol)を175gのN−メチルピロリドンに溶かした溶液を加え、さらに同温度で4時間反応させ、フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂(B2−1)の反応液を得た。この反応液を室温に冷却した後、メタノール500gに投入し、析出した樹脂を濾別し、さらにメタノール500gで洗浄した。その後得られた樹脂を乾燥させて樹脂粉末を得た。
【0104】
このポリアミド樹脂粉末(B2−1)のGPCによる質量平均分子量は約110000であった。また、この樹脂粉末(B2−1)0.100gをN,N−ジメチルアセトアミド20.0mlに溶解させ、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した対数粘度は、0.40dl/gであった。
【0105】
合成例3 水酸基を持たないポリアミド樹脂の合成
合成例3−1
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施し、イソフタル酸68.6g(412.67mmol)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル87.7g(437.97mmol)、塩化リチウム8.1g、N−メチルピロリドン913g、ピリジン101gを加え撹拌し、溶解させた後、そこに亜リン酸トリフェニル220gを加えて90℃で4時間反応させ、両末端アミンのポリアミド体を生成させた。該反応液に、両末端にカルボキシル基を持つポリブタジエン重合体(Hycar CTB 2000X162、BF Goodrich社製、質量平均分子量4200)117g(27.86mmol)を175gのN−メチルピロリドンに溶かした溶液を加え、さらに同温度で4時間反応させ、フェノール性水酸基を持たないポリアミド樹脂を得た。この反応液を室温に冷却した後、メタノール500gに投入し、析出した樹脂を濾別し、さらにメタノール500gで洗浄した。その後得られた樹脂を乾燥させて樹脂粉末を得た。
【0106】
このポリアミド樹脂粉末のGPCによる質量平均分子量は10000であった。また、この樹脂粉末0.100gをN,N−ジメチルアセトアミド20.0mlに溶解させ、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した対数粘度は、0.50dl/gであった。
【0107】
実施例および比較例(感光性樹脂組成物の調製)
合成例1〜3で得られたアミド酸(A)およびポリアミド樹脂(B)とその他成分を、下記表1の組成で混合して感光性樹脂組成物を得た。
【0108】
【表1】
【0109】
(注)
PA−6 :ダイトーケミックス製 ジアゾナフトキノン系感光剤
EP4080G :旭有機材工業製 クレゾールノボラック
R−128H :日本化薬製 フェニルグリシジルエーテルアクリレート
【0110】
実施例および比較例の感光性樹脂組成物の評価に関して詳述する。また、評価結果を表2に示す。
【0111】
(1)現像性評価
感光性樹脂組成物をスクリーン印刷法により、組成物が25μmの厚さになるように銅貼積層板エスパネックスM(新日鐵化学社製)に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器で60分乾燥させた。
次いで、パターンの描画されたマスクフィルムを密着させ、紫外線露光装置(USHIO製:500Wマルチライト)を用いて、500mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射した。次に現像液として、1%炭酸ナトリウム水溶液(温度30℃)を用いてスプレー現像を行った(スプレー圧:0.2MPa)。さらに基板を水洗、乾燥後、パターンを以下の基準に従い、光学顕微鏡で評価した。

○ ‥ライン幅/スペース幅=30μm/30μmのパターンが形成でき、かつ未露光部の塗膜の膜厚が20μm以上の場合
△ ‥ライン幅/スペース幅=40μm/40μmのパターンが形成でき、かつ未露光部の塗膜の膜厚が20μm以上の場合
× ‥上記以外の、解像度やパターン形成性が劣る場合および未露光部の残存膜厚が20μm以下の場合
【0112】
(2)硬化膜の物性評価
感光性樹脂組成物をスクリーン印刷法により、25μmの厚さになるように銅貼積層板エスパネックスM(新日鐵化学社製)に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器で60分乾燥させた。
次いで、パターンの描画されたマスクフィルムを密着させ、紫外線露光装置(USHIO製:500Wマルチライト)を用いて、500mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射した。次に現像液として、1%炭酸ナトリウム水溶液(温度30℃)を用いてスプレー現像を行った(スプレー圧:0.2MPa)。さらに基板を水洗、乾燥後、200℃の熱風乾燥器で60分間加熱して硬化膜を得た。得られた塗膜に対して下記各種物性評価を行なった。
【0113】
平滑性評価
得られた硬化膜を目視で確認し、泡、ひび等の有無を確認した。
○ ・・硬化膜に異常がないもの
× ・・硬化膜に発泡・ひび等の発生があるもの
【0114】
はぜ折り耐性評価
180度のはぜ折り試験を行ない、硬化膜が切れるまでの回数で評価した。
○ ・・はぜ折り試験を10回以上行なってもクラックが発生しない。
× ・・はぜ折り試験10回未満でクラックが発生する。
【0115】
(3)絶縁信頼性評価
ライン幅/スペース幅=100μm/100μmのくし型パターンフィルム上にレジストの硬化膜を形成した。120℃、85℃RHの環境試験機中で試験片の両端子部分に100Vの電圧を印加し、絶縁抵抗値の変化や絶縁抵抗値の変化やマイグレーションの発生などを確認した。

○ ・・試験開始後、250時間以上で10の9乗以上の抵抗値を示し、マイグレーション、デンドライト、銅の変色などの発生が無いもの。
× ・・試験開始後、250時間以上でマイグレーション、デンドライト、銅の変色などの発生があるもの。
【0116】
【表2】
【0117】
上記の結果から判るように、ポリアミド樹脂(B)を併用することで、反応性希釈剤を用いていても、現像コントラストが良好な硬化膜を得ることができることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の感光性樹脂組成物はポリアミド樹脂(B)を用いることにより、反応性希釈剤(D)を含んでいても、ソルダーレジストとしての基本的特性である現像コントラストに優れる。また、本感光性樹脂組成物は強靭で柔軟な硬化物を得ることができる。従って、皮膜形成用材料、アルカリ現像可能なレジスト材料、例えばプリント(配線回路)基板製造の際のソルダーレジスト、層間絶縁材料、接着剤、成型材料として、レンズ、ディスプレー、光ファイバー、光導波路、ホログラム等用の成分として適している。さらに、この組成物は、優れた絶縁信頼性を兼ね備えていることから、電気的な絶縁を目的とする材料として好適に用いることができる。