特許第5721585号(P5721585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721585
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】部品実装ライン
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
   H05K13/04 A
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-175210(P2011-175210)
(22)【出願日】2011年8月10日
(65)【公開番号】特開2013-38335(P2013-38335A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】安井 義博
【審査官】 遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−283971(JP,A)
【文献】 特許第464162(JP,B2)
【文献】 特開2009−231808(JP,A)
【文献】 特開2011−009538(JP,A)
【文献】 特開2009−177213(JP,A)
【文献】 特開2007−141966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を部品実装位置に搬入し位置決めし搬出する基板搬送装置と、複数の部品を収容する部品収容装置を複数個着脱可能にセットする部品供給装置と、前記部品供給装置の前記部品収容装置から前記部品を採取して位置決めされた前記基板に装着する装着ヘッドおよび前記装着ヘッドを駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置とを備える部品実装機が複数段直列に配置された部品実装ラインであって、
複数段の各部品実装機の部品移載装置は、装着可能な部品種が多く装着能率が低い汎用ヘッドおよび、装着可能な部品種が少なく装着能率が高い高速ヘッドを含む複数種類の装着ヘッドを選択的に取り付け可能であり、
部品実装動作に先立ち、複数の基板種のそれぞれの生産枚数の基板に部品を実装する期間を通して前記装着ヘッドを取り替えない条件下で実装に要すると推定される所要時間を短縮するように前記各部品実装機の部品移載装置の装着ヘッドの種類を決定し、かつ前記各部品実装機の部品供給装置の複数の部品収容装置に収容する部品種の配分を決定する動作条件決定手段をさらに備える部品実装ライン。
【請求項2】
請求項1において、前記動作条件決定手段は、前記各部品実装機が或る基板種の1枚の基板に部品を実装するのに要するそれぞれの個別サイクルタイムをできるだけ均等化し、前記各部品実装機の前記個別サイクルタイムのうちの最大値を当該基板種の基板種サイクルタイムとし、全基板種についてそれぞれ求めた前記基板種サイクルタイムを加算して前記所要時間とする部品実装ライン。
【請求項3】
請求項1において、前記動作条件決定手段は、前記各部品実装機が或る基板種の1枚の基板に部品を実装するのに要するそれぞれの個別サイクルタイムをできるだけ均等化し、前記各部品実装機の前記個別サイクルタイムのうちの最大値を当該基板種の基板種サイクルタイムとし、全基板種についてそれぞれ求めた前記基板種サイクルタイムに前記それぞれの生産枚数を乗算したのちに加算して前記所要時間とする部品実装ライン。
【請求項4】
請求項1において、前記動作条件決定手段は、前記各部品実装機が或る基板種の1枚の基板に部品を実装するのに要するそれぞれの個別サイクルタイムをできるだけ均等化し、前記各部品実装機の前記個別サイクルタイムのうちの最大値を当該基板種の基板種サイクルタイムとし、全基板種についてそれぞれ求めた前記基板種サイクルタイムに基板種ごとの優先度係数を乗算したのちに加算して前記所要時間とする部品実装ライン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記動作条件決定手段は、
まず、全ての部品実装機の部品移載装置の装着ヘッドの種類を前記汎用ヘッドに仮置きし、
次いで、前段側の部品実装機から順番に、前記装着ヘッドの種類を前記汎用ヘッドから、装着可能な部品種が相対的に少なく装着能率が相対的に高い装着ヘッドへと順次取り替えて、全基板種の基板に所定の全部品種の部品を実装できるときに前記所要時間を計算し、
全基板種の基板に所定の全部品種の部品を実装できる見込みがなくなった時点で装着ヘッドの取り替えを打ち切り、
最終的に、所要時間が最短となる装着ヘッドの種類の組み合わせを採用する部品実装ライン。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記動作条件決定手段は、
まず、全ての部品実装機の部品移載装置の装着ヘッドの種類を前記高速ヘッドに仮置きし、
次いで、後段側の部品実装機から順番に、前記装着ヘッドの種類を前記高速ヘッドから、装着可能な部品種が相対的に多く装着能率が相対的に低い装着ヘッドへと順次取り替えて、全基板種の基板に所定の全部品種の部品を実装できるときに前記所要時間を計算し、
計算によって得られる所要時間が過大になった時点で装着ヘッドの取り替えを打ち切り、
最終的に、所要時間が最短となる装着ヘッドの種類の組み合わせを採用する部品実装ライン。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、前記各部品実装機の部品供給装置における複数の部品収容装置の部品種の配列順序は前記基板種ごとに変更可能であり、前記動作条件決定手段は前記基板種ごとに前記部品種の配列順序を決定する部品実装ライン。
【請求項8】
請求項7において、前記動作条件決定手段は、前記基板種ごとに前記各部品実装機が1枚の基板に部品を実装するのに要するそれぞれの個別サイクルタイムを最小化する最適な部品種の配列順序を決定する部品実装ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着ヘッドを取り替え可能な部品実装機が複数段直列に配置された部品実装ラインに関し、より詳細には、複数の基板種の基板を連続して生産するのに先立って各部品実装機の装着ヘッドを決定する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の部品が実装された基板を生産する設備として、はんだ印刷機、部品実装機、リフロー機、基板検査機などがあり、これらを基板搬送装置で連結して基板生産ラインを構築することが一般的になっている。さらに、モジュール化された複数の部品実装機を直列に配置して部品実装ラインを構成することも多い。この種の部品実装機や部品実装ラインでは、生産する基板の種類に応じて実装する部品の種類、大きさ、および個数が変化するので、これらにあわせてオペレータが適正な装着ヘッドに取り替え、生産効率の向上を図る場合が多い。例えば、1本の吸着ノズルのみを有する汎用ヘッドは、小さな部品から大きな部品まで吸着可能であり装着可能な部品種が多く、一方で1部品ごとに部品供給装置と基板の間を往復することになり装着能率が低い。逆に、多数の吸着ノズルを有する高速ヘッドは、各吸着ノズルに吸着される部品の寸法が制約されるので装着可能な部品種が少なくなり、一方で部品供給装置と基板の間を1往復するだけで多数の部品を装着できるので装着能率が高くなる。
【0003】
ここで、部品実装ラインの複数段の部品実装機で装着ヘッドを交換できる構成の場合、すべてを汎用ヘッドにすれば所要とされる全種類の部品を確実に実装できるが、所要時間が延びる。逆に、所要時間を短縮するためにすべてを高速ヘッドにすれば、実装できない部品種の残る場合が生じる。したがって、部品実装ラインでは、所要とされる全種類の部品を実装可能でかつ所要時間を短縮して生産効率を高める各部品実装機の装着ヘッドの組み合わせが存在する。
【0004】
また、装着ヘッドの組み合わせに応じて、各部品実装機への部品種の配分も定まる。このとき、各部品実装機が部品実装に要する個別サイクルタイムをできるだけ均等化するように部品種を配分することが好ましい。これにより、部品実装ライン内でボトルネックと呼ばれる隘路が生じなくなり、個別サイクルタイムの最大値で示される基板種サイクルタイムが短縮され、スループットすなわち生産効率が一層向上する。
【0005】
本願出願人は、この種の装着ヘッドの組み合わせの決定に関する技術を特許文献1の段取データ群作成方法に開示している。この技術は、装着ヘッドの構成および複数の部品供給具(部品収容装置)の配置を変更可能な複数の装着ユニット(部品実装機)を含む電子回路部品装着システム(部品実装ライン)を対象としている。そして、複数種類の電子回路の組立作業開始(部品実装動作)に先立ち、装着ヘッドの構成変更を許容することを条件として、部品供給具の搭載と取外しとの少なくとも一方の回数が可及的に少なくなる段取データ群を作成することを特徴としている。これにより、作成された段取データ群に従って段取り替えを行えば、部品供給具の段取り替え工数が少なくて済み、段取り替えに要する時間が短縮され、生産性が向上する効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4644162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の技術は、基板種を変更するたびに各装着ユニット(部品実装機)の装着ヘッドの変更を許容する条件で、部品供給具の搭載および取外しの回数を少なくする効果があるが、複数の基板種を連続して生産するときに一貫して同じ装着ヘッドの組み合わせを用いるものではない。したがって、基板種ごとの生産枚数が少ない多品種少量生産の場合には、部品実装ラインの動作時間に対して段取り替え時間の比率が高くなり、装着ヘッドを変更することによって段取り替え時間が延び、生産効率が大幅に低下する。このため、多品種少量生産で複数の基板種を生産するときには、途中で各部品実装機の装着ヘッドを変更せずに続けて用いるようにすると生産効率が向上する。
【0008】
また、装着ヘッドの種類や数量が限定される場合、例えば、十分な数量の装着ヘッドが無い場合や、事業所内の複数の部品実装ラインで装着ヘッドを共用して使いまわす場合には、大量生産であっても装着ヘッドの変更が制約される。したがって、複数の基板種を連続して生産し、かつ基板種全体での生産効率が良くなるように各部品実装機の装着ヘッドの組み合わせを固定し、各部品実装機への部品種の配分および各部品実装機の部品供給装置における部品種の配列順序を最適化することが生産効率の向上に有効となる。
【0009】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、装着ヘッドを取り替え可能な部品実装機が複数段直列に配置された構成で、複数の基板種を連続して生産する期間を通して装着ヘッドを取り替えない条件下で、実装に要する所要時間を短縮するように装着ヘッドの種類を決定して生産効率を向上する部品実装ラインを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する請求項1に係る部品実装ラインの発明は、基板を部品実装位置に搬入し位置決めし搬出する基板搬送装置と、複数の部品を収容する部品収容装置を複数個着脱可能にセットする部品供給装置と、前記部品供給装置の前記部品収容装置から前記部品を採取して位置決めされた前記基板に装着する装着ヘッドおよび前記装着ヘッドを駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置とを備える部品実装機が複数段直列に配置された部品実装ラインであって、複数段の各部品実装機の部品移載装置は、装着可能な部品種が多く装着能率が低い汎用ヘッドおよび、装着可能な部品種が少なく装着能率が高い高速ヘッドを含む複数種類の装着ヘッドを選択的に取り付け可能であり、部品実装動作に先立ち、複数の基板種のそれぞれの生産枚数の基板に部品を実装する期間を通して前記装着ヘッドを取り替えない条件下で実装に要すると推定される所要時間を短縮するように前記各部品実装機の部品移載装置の装着ヘッドの種類を決定し、かつ前記各部品実装機の部品供給装置の複数の部品収容装置に収容する部品種の配分を決定する動作条件決定手段をさらに備える。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記動作条件決定手段は、前記各部品実装機が或る基板種の1枚の基板に部品を実装するのに要するそれぞれの個別サイクルタイムをできるだけ均等化し、前記各部品実装機の個別サイクルタイムのうちの最大値を当該基板種の基板種サイクルタイムとし、全基板種についてそれぞれ求めた前記基板種サイクルタイムを加算して前記所要時間とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記動作条件決定手段は、前記各部品実装機が或る基板種の1枚の基板に部品を実装するのに要するそれぞれの個別サイクルタイムをできるだけ均等化し、前記各部品実装機の個別サイクルタイムのうちの最大値を当該基板種の基板種サイクルタイムとし、全基板種についてそれぞれ求めた前記基板種サイクルタイムに前記それぞれの生産枚数を乗算したのちに加算して前記所要時間とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1において、前記動作条件決定手段は、前記各部品実装機が或る基板種の1枚の基板に部品を実装するのに要するそれぞれの個別サイクルタイムをできるだけ均等化し、前記各部品実装機の個別サイクルタイムのうちの最大値を当該基板種の基板種サイクルタイムとし、全基板種についてそれぞれ求めた前記基板種サイクルタイムに基板種ごとの優先度係数を乗算したのちに加算して前記所要時間とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記動作条件決定手段は、まず、全ての部品実装機の部品移載装置の装着ヘッドの種類を前記汎用ヘッドに仮置きし、次いで、前段側の部品実装機から順番に、前記装着ヘッドの種類を前記汎用ヘッドから、装着可能な部品種が相対的に少なく装着能率が相対的に高い装着ヘッドへと順次取り替えて、全基板種の基板に所定の全部品種の部品を実装できるときに前記所要時間を計算し、全基板種の基板に所定の全部品種の部品を実装できる見込みがなくなった時点で装着ヘッドの取り替えを打ち切り、最終的に、所要時間が最短となる装着ヘッドの種類の組み合わせを採用する。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記動作条件決定手段は、まず、全ての部品実装機の部品移載装置の装着ヘッドの種類を前記高速ヘッドに仮置きし、次いで、後段側の部品実装機から順番に、前記装着ヘッドの種類を前記高速ヘッドから、装着可能な部品種が相対的に多く装着能率が相対的に低い装着ヘッドへと順次取り替えて、全基板種の基板に所定の全部品種の部品を実装できるときに前記所要時間を計算し、計算によって得られる所要時間が過大になった時点で装着ヘッドの取り替えを打ち切り、最終的に、所要時間が最短となる装着ヘッドの種類の組み合わせを採用する。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか一項において、前記各部品実装機の部品供給装置における複数の部品収容装置の部品種の配列順序は前記基板種ごとに変更可能であり、前記動作条件決定手段は前記基板種ごとに前記部品種の配列順序を決定する。
【0017】
請求項8に係る発明は、請求項7において、前記動作条件決定手段は、前記基板種ごとに前記各部品実装機が1枚の基板に部品を実装するのに要するそれぞれの個別サイクルタイムを最小化する最適な部品種の配列順序を決定する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る基板生産ラインの発明では、複数段の各部品実装機の部品移載装置は汎用ヘッドおよび高速ヘッドを含む複数種類の装着ヘッドを選択的に取り付け可能であり、部品実装動作に先立ち、複数の基板種に対して装着ヘッドを取り替えない条件下で実装に要すると推定される所要時間を短縮するように各部品実装機の装着ヘッドの種類を決定し、かつ各部品実装機の部品種の配分を決定する。したがって、複数の基板種を生産する期間を通してオペレータが装着ヘッドを交換する段取り替え作業が不要となり、かつ所要時間を短縮できるので、生産効率が向上する。
【0019】
請求項2に係る発明では、或る基板種について各部品実装機の個別サイクルタイムをできるだけ均等化して、その最大値を基板種サイクルタイムとするので、部品実装ライン内で隘路が生じなくなり、基板種サイクルタイムが短縮される。また、全基板種についてそれぞれ求めた基板種サイクルタイムを加算して所要時間とする。このため、各基板種の基板をそれぞれ1枚生産するのに要する時間を意味する所要時間が短縮されて生産効率が向上する。
【0020】
請求項3に係る発明では、請求項2と同様に隘路が生じなくなって基板種サイクルタイムが短縮される。また、全基板種についてそれぞれ求めた基板種サイクルタイムにそれぞれの生産枚数を乗算したのちに加算して所要時間とする。このため、所要時間は各基板種をそれぞれの生産枚数だけ生産するのに要する全数生産時間(厳密には段取り替え時間を除いた全数生産時間)に相当し、この全数生産時間が短縮されて生産効率が向上する。
【0021】
請求項4に係る発明では、請求項2と同様に隘路が生じなくなって基板種サイクルタイムが短縮される。また、全基板種についてそれぞれ求めた基板種サイクルタイムに基板種ごとの優先度係数を乗算したのちに加算して所要時間とする。このため、所要時間は各基板種の優先度を考慮した生産効率の尺度を意味し、この所要時間が短縮されて生産効率が向上する。
【0022】
請求項5に係る発明では、動作条件決定手段は、まず全ての部品実装機を汎用ヘッドに仮置きし、次いで前段側から順番に、汎用ヘッドから装着能率が相対的に高い装着ヘッドへと順次取り替えてそれぞれ所要時間を計算し、最終的に所要時間が最短となる装着ヘッドの種類の組み合わせを採用する。また、請求項6に係る発明では、動作条件決定手段は、まず全ての部品実装機を高速ヘッドに仮置きし、次いで後段側から順番に、高速ヘッドから装着能率が相対的に低い装着ヘッドへと順次取り替えてそれぞれ所要時間を計算し、最終的に所要時間が最短となる装着ヘッドの種類の組み合わせを採用する。どちらの態様でも、装着ヘッドの組み合わせの一部で所要時間を計算するだけで所要時間が最短となる最適な装着ヘッドの組み合わせを決定でき、組み合わせの全部で所要時間を計算する手間を省略できる。
【0023】
また、どちらの態様でも、前段側に高速ヘッド、後段側に汎用ヘッドが優先的に配置されるので、部品種の装着順序が自動的に最適化される。すなわち、まず前段側の高速ヘッドでチップ抵抗やチップコンデンサなどの小形部品が装着され、その後に後段側の汎用ヘッドでIC素子やLSI素子などの大形部品が装着されるので、装着済みの小形部品は大形部品を装着するときの邪魔にならない。仮に、前段側に汎用ヘッドが配置されて大形部品が先に装着されると、後段側の高速ヘッドで小形部品を装着する際に装着済みの大形部品が邪魔になることがある。なぜなら、高速ヘッドは複数の吸着ノズルを有しており、一方で大形部品は部品高さが高いため、両者の干渉するおそれが大きくなるからである。
【0024】
請求項7に係る発明では、各部品実装機の部品供給装置における複数の部品収容装置の部品種の配列順序は基板種ごとに変更可能であり、動作条件決定手段は基板種ごとに各部品実装機における部品種の配列順序を決定する。さらに、請求項8に係る発明では、動作条件決定手段は、基板種ごとに各部品実装機が1枚の基板に部品を実装するのに要するそれぞれの個別サイクルタイムを最小化する最適な部品種の配列順序を決定する。各部品実装機の装着ヘッドが決定したときに部品種の配分も定まるが、各部品実装機の部品供給装置における部品種の配列順序までは定まらない。ここで、動作条件決定手段が各部品実装機の部品種の配列順序を最適化するので個別サイクルタイムが最小化され、さらには基板種サイクルタイムおよび所要時間も最小化されて、生産効率が格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態の部品実装ラインの全体構成を示す斜視図である。
図2】システムベースの1個分すなわち2台の部品実装機を示す斜視図である。
図3】部品移載装置で選択的に取り付け可能な3種類の装着ヘッドを説明する斜視図であり、(1)は高速ヘッド、(2)は中速ヘッド、(3)は汎用ヘッドである。
図4】3種類の各装着ヘッドが装着できる部品の概略の大きさを整理して示した図である。
図5】動作条件決定手段が行う演算処理の内容を示す演算処理フローの図である。
図6】演算処理フローの前提条件および演算処理過程の一例を示す一覧表の図である。
図7】第1実施形態の部品実装ラインで、動作条件決定手段が装着ヘッドの組み合わせを決定する動作を例示説明する図である。
図8】第2実施形態で動作条件決定手段が行う演算処理の内容を示す演算処理フローの図である。
図9】第2実施形態の部品実装ラインで、動作条件決定手段が装着ヘッドの組み合わせを決定する動作を例示説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1実施形態の部品実装ライン1について、図1図7を参考にして説明する。図1は、第1実施形態の部品実装ライン1の全体構成を示す斜視図である。部品実装ライン1は、2台の同一構造の部品実装機を搭載したシステムベース11を4個列設して構成する。したがって、部品実装ライン1は、合計8台の部品実装機21〜28が直列に配置されて構成されており、左奥側の部品実装機21が前段側、右手前側の部品実装機28が後段側となる。また、図中のXY座標軸に示されるように、8台の部品実装機21〜28に順番に基板を搬入出する方向をX軸方向、水平面内でX軸方向に直交する方向をY軸方向とする。図2は、システムベース11の1個分すなわち2台の部品実装機27、28を示す斜視図であり、図2を参考にして部品実装機28の装置構成を詳述する。
【0027】
部品実装機28は、基板搬送装置3、部品供給装置4、部品移載装置5、部品カメラ6、ノズル収容装置8、および制御コンピュータ7などが基台9に組み付けられて構成されている。基板搬送装置3は、部品実装機2の長手方向(Y軸方向)の中央付近に配設されている。基板搬送装置3は、第1搬送装置31および第2搬送装置32が並設された、いわゆるダブルコンベアタイプの装置である。第1搬送装置31は、基台9上にX軸方向に平行に並設された一対のガイドレール、およびガイドレールにそれぞれ案内され基板を載置して搬送する一対のコンベアベルト(図示省略)などにより構成されている。また、第1搬送装置31には、部品実装位置まで搬送された基板を基台9側から押し上げて位置決めするクランプ装置(図示省略)が設けられている。第2搬送装置32も、第1搬送装置31と同様に構成されている。
【0028】
部品供給装置4は、部品実装機28の長手方向の前部(図2の左前側)に設けられている。部品供給装置4は、複数のカセット式フィーダ41が本体部(図示省略)上に着脱可能に取り付けられて構成されている。カセット式フィーダ41は部品収容装置に相当し、フィーダ本体42と、フィーダ本体42の後部(部品実装機28の前側)に回転可能かつ脱着可能に装着された供給リール43と、フィーダ本体42の先端(部品実装機28の中央寄り)に設けられた部品供給部44とを備えている。供給リール43は部品を供給する媒体であり、所定個数の部品を一定の間隔で保持したキャリアテープ(図示省略)が巻回されている。このキャリアテープの先端が部品供給部44まで引き出され、キャリアテープごとに異なる部品が供給される。
【0029】
部品移載装置5は、X軸方向およびY軸方向に移動可能ないわゆるXYロボットタイプの装置であり、部品実装機28の長手方向の後部(図2の右奥側)から前部の部品供給装置4の上方にかけて配設されている。部品移載装置5は、ヘッド駆動機構51および装着ヘッド52などにより構成されている。装着ヘッド52は、後述するように複数種類あって、オペレータにより選択的に取り付け可能とされている。ヘッド駆動機構51は、装着ヘッド52をX軸方向およびY軸方向に駆動する。
【0030】
部品カメラ6は、部品移載装置5の装着ヘッド52の吸着ノズルが吸着した部品の良否、および部品吸着状態の良否を判定する装置である。部品カメラ6は、部品供給装置4の部品供給部44と第1搬送装置31との間の基台9上に配設されている。また、部品カメラ6に隣接して、基台9上にノズル収容装置8が配設されている。ノズル収容装置8は、複数のノズル保持穴にそれぞれ吸着ノズルを収容する装置である。
【0031】
制御コンピュータ7は、上部のカバー91の前側上部に配設されている。制御コンピュータ7は、基板搬送装置3、部品供給装置4、部品移載装置5、および部品カメラ6と制御線によって連携されており、適宜情報を交換しつつ指令を発する。また、8台の部品実装機21〜28の各制御コンピュータ7は、図略のホストコンピュータに連携されており、各制御コンピュータ7およびホストコンピュータは協調して部品実装動作を制御するようになっている。
【0032】
制御コンピュータ7からの制御により、部品移載装置5の装着ヘッド52は、まず部品供給装置4に移動して部品を吸着し、次いで部品カメラ6に移動して部品吸着状態を撮像され、三番目に基板に移動して部品を装着し、最後に部品供給装置4に戻る。この一連の動作を装着サイクルと言い、1回の装着サイクルに要する時間を装着サイクルタイムと言う。また、各部品実装機21〜28で装着サイクルを繰り返すことによって、配分された部品種の部品を実装するのに要する時間が個別サイクルタイムである。なお、本第1実施形態では、第1および第2搬送装置31、32で交互に基板を搬入出し、部品移載装置5で交互に部品実装を行うものとする。
【0033】
次に、部品移載装置5の装着ヘッド52の種類について説明する。第1実施形態において、装着ヘッド52はヘッド駆動機構51に対して選択的に取り付け可能とされ、オペレータによって取り替えられるようになっている。図3は、部品移載装置5で選択的に取り付け可能な3種類の装着ヘッド52を説明する斜視図であり、(1)は高速ヘッド52H、(2)は中速ヘッド52M、(3)は汎用ヘッド52Lである。なお、装着ヘッド52は3種類に限定されず、高速ヘッド52Hおよび汎用ヘッド52Lの2種類の場合や4種類以上の場合でも本発明を実施できる。
【0034】
図3の(1)に示される高速ヘッド52Hは、装着可能な部品種が少なく装着能率が高い装着ヘッドである。高速ヘッド52Hは、ヘッド本体53Hの下側にホルダ保持体54Hを昇降可能かつ回転可能に保持している。ホルダ保持体54Hは、複数個例えば8個のノズルホルダ55Hを下向きに有し、各ノズルホルダ55Hはそれぞれ吸着ノズル56Hを下向きに着脱可能に保持している。高速ヘッド52Hのノズルホルダ55Hおよび吸着ノズル56Hは小形であり、かつ互いに隣接する吸着ノズル56H間の距離の制約もあり、装着できる部品がチップ抵抗やチップコンデンサなどの小形部品に限定される。一方で、1回の装着サイクルにより最大8個の部品を装着でき、装着能率が高い。
【0035】
図3の(3)に示される汎用ヘッド52Lは、装着可能な部品種が多く装着能率が低い装着ヘッドである。汎用ヘッド52Lは、ヘッド本体53Lの下側に唯1個のノズルホルダ55Lを昇降可能かつ回転可能に保持し、ノズルホルダ55Lは吸着ノズル56Lを下向きに着脱可能に保持している。汎用ヘッド52Lのノズルホルダ55Lおよび吸着ノズル56Lは大形であるので、大形の部品や特殊形状の部品を装着できて汎用性に優れ、極端に小さな部品は装着できない。一方で、1部品ごとに1回の装着サイクルが必要となり、装着能率が低い。
【0036】
図3の(2)に示される中速ヘッド52Mは、高速ヘッド52Hと汎用ヘッド52Lとの中間的な特性を有する装着ヘッドである。中速ヘッド52Mは、ヘッド本体53Mの下側に2個のノズルホルダ55M、57Mを保持している。一方のノズルホルダ55Mは、汎用ヘッド52Lの大形のノズルホルダ55Lに類似しており、大きな吸着ノズル56Mを下向きに着脱可能に保持している。他方のノズルホルダ57Mは、水平方向の軸線まわりに複数個例えば6個の吸着ノズル58Mを選択可能に保持している。中速ヘッド52Mは図略のノズル選択装置を有しており、ノズル選択装置は他方のノズルホルダ57Mの複数個の吸着ノズル58Mを軸線まわりに回動させ、下方に配置されて下向きとなる吸着ノズル58M1を選択する。中速ヘッド52Mの一方のノズルホルダ55Mおよび吸着ノズル56Mは大形の部品や特殊形状の部品を装着できて汎用性に優れ、他方のノズルホルダ57Mは吸着ノズル58Mを選択できるので装着できる部品の種類が多くなる。一方で、2部品ごとに1回の装着サイクルが必要になり、装着能率は中庸である。
【0037】
なお、図3には省略されているが、各装着ヘッド52H、52M、52Lは、ヘッド本体53H、53M、53Lの内部にノズル駆動部および空気圧制御部を有している。ノズル駆動部は、吸着ノズル56H、56M、56L、58Mの昇降および回動を行う部位であり、サーボモータを駆動源としている。空気圧制御部は、部品を吸着する際の負圧の発生および制御を行う部位であり、エアポンプや弁類などで構成されている。
【0038】
図4は、3種類の各装着ヘッド52H、52M、52Lが装着できる部品の概略の大きさを整理して示した図である。図中の横軸は部品の大きさL、縦軸は装着ヘッド52の種類を示している。図示されるように、高速ヘッド52Hは最小の大きさL1からL3までの小形部品のみを装着できる。また、中速ヘッド52Mは、装着できる部品の最小の大きさL2が高速ヘッド52Hの最小の大きさL1よりも大きく、装着できる部品の最大の大きさL4が高速ヘッド52Hの最大の大きさL3よりも大きい(L1<L2<L3<L4)。さらに、汎用ヘッド52Lは、装着できる部品の最小の大きさL2が中速ヘッド52Mと同程度で、装着できる部品の最大の大きさL5が中速ヘッド52Mの最大の大きさL4よりも大きい(L4<L5)。
【0039】
次に、ホストコンピュータが有する動作条件決定手段の機能について説明する。図5は、動作条件決定手段が行う演算処理の内容を示す演算処理フローの図である。動作条件決定手段は、部品実装動作に先立ち、複数の基板種のそれぞれの生産枚数の基板に部品を実装する期間を通して装着ヘッド52を取り替えない条件下で実装に要すると推定される所要時間Tを短縮するように各部品実装機21〜28の部品移載装置5の装着ヘッド52の種類を決定する。さらに、動作条件決定手段は、決定した装着ヘッド52の組み合わせの条件下で、各部品実装機21〜28の部品供給装置4の複数のカセット式フィーダ41(部品収容装置)に収容する部品種の配分を決定する。
【0040】
まず、図6を参考にして、演算処理フローの前提条件を説明する。図6は、演算処理フローの前提条件および演算処理過程の一例を示す一覧表の図である。図6の一覧表で、1行目の「基板種情報」の欄は、装着ヘッド52を取り替えずに連続的に生産する複数の基板種を示し、一例として4種類の基板種A〜Dを示している。2行目の「部品種情報」の欄は、それぞれの基板種A〜Dに実装される全部品の部品種PA〜PD(=ΣPAk〜ΣPDk)の情報を示している。具体的に、部品種PAの情報は、基板種Aの基板に部品種PA1、PA2、PA3……がそれぞれ何個ずつ実装されるかを示す情報と、部品種PA1、PA2、PA3……を装着可能な装着ヘッド52の種類の情報とを含んでいる。また、3行目の「生産枚数N」の欄は、基板種A〜Dの基板のそれぞれの予定の生産枚数NA〜NDを示している。4行目の「優先度係数K」の欄は、基板種A〜Dに設定されたそれぞれの優先度係数KA〜KDを示している。生産枚数Nおよび優先度係数Kは、後述するように特定の所要時間TN、TKを演算する際に使用する。
【0041】
動作条件決定手段は、図5のステップS1で、まず前提条件を把握する。前提条件としては、上述した基板種情報、部品種情報、生産枚数N、および優先度係数Kの他に、各装着ヘッド52H、52M、52Lの種類に応じた装着サイクルタイムや所要時間Tの選択決定などを含む。これらの前提条件は、予めホストコンピュータ内のメモリに格納されるか、あるいは部品実装動作に先立って入力設定される。
【0042】
所要時間Tは、最終的に各部品実装機21〜28の装着ヘッド52の種類の組み合わせを決定する際に採用する評価パラメータであり、生産計画などを考慮して次に列記する3つから択一して決定する。
(1)所要時間TS:全基板種の基板種サイクルタイムの和
(2)所要時間TN:各基板種の基板種サイクルタイムと生産枚数Nとの積を全基板種に ついて加算した和
(3)所要時間TK:各基板種の基板種サイクルタイムと優先度係数Kとの積を全基板種 について加算した和
【0043】
(1)の所要時間TSは、各基板種A〜Dの基板をそれぞれ1枚生産するのに要する時間を意味する。所要時間TSは、各生産枚数NA〜NDが概ね等しい場合、例えば、各基板種A〜Dの基板が組み合わせられて1つの最終製品とされる場合などに好ましい評価パラメータである。また、所要時間TSは、各生産枚数NA〜NDが未定あるいは不定の場合にも選択することができる。(2)の所要時間TNは、各基板種A〜Dをそれぞれの生産枚数NA〜NDだけ生産するのに要する全数生産時間、厳密には段取り替え時間を除いた全数生産時間に相当する。所要時間TNは、各生産枚数NA〜NDが大きく異なっている場合に好ましい評価パラメータである。(3)の所要時間TKは、各基板種A〜Dの優先度を考慮した生産効率の尺度を意味する。所要時間TKは、特定の基板種の優先度が高いとき、例えば、特定の基板種の納期が差し迫り急いで生産する必要がある場合などに好ましい評価パラメータである。
【0044】
次にステップS2で、全ての部品実装機21〜28の部品移載装置5の装着ヘッド52の種類を汎用ヘッド52Lに仮置きする。次にステップS3で、各基板種A〜Dにおける各部品実装機21〜28への部品種PA〜PDの配分を最適化する。配分の最適化とは、或る基板種の1枚の基板に部品を実装するのに要する各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムをできるだけ均等化することを意味する。最適化により、図6の5行目から12行目に示される個別サイクルタイムtjiが演算される。なお、個別サイクルタイムtjiの符号の添字jは部品実装機21〜28の区別を示し、添字iは基板種A〜Dの区別を示している。
【0045】
例えば図6の例では、基板種Aにおける各部品実装機21〜28への部品種PAの配分を最適化した結果、個別サイクルタイムt1A〜t8Aが得られる。同様に、基板種B〜Dにおいて、個別サイクルタイムt1B〜t8B、個別サイクルタイムt1C〜t8C、および個別サイクルタイムt1D〜t8Dが得られる。ここで、個別サイクルタイムt1A〜t8Dは、概ね各部品実装機21〜28における装着サイクル数と装着サイクルタイムとの積で求められる。したがって、動作条件決定手段は、各部品実装機21〜28の装着ヘッド52の種類を考慮して装着可能な部品種を配分するだけでなく、各部品実装機21〜28にできるだけ均等に部品種PA〜PDおよびその部品点数を配分する。ただし、装着ヘッド52の種類の組み合わせに依存して最適化の演算処理は複雑化するので、動作条件決定手段は、必要に応じ試行錯誤を繰り返して最適化を実行する。
【0046】
次にステップS4で、各基板種A〜Dの基板種サイクルタイムtA〜tDを求める。例えば、図6の13行目の基板種Aの基板種サイクルタイムtAは、各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムt1A〜t8A(5〜12行目)のうちの最大値で求められる。
【0047】
次にステップS5で、次の三式のいずれかを用いて、3つの所要時間TS、TN、TKのいずれかを演算する。
TS=Σti (i=A〜D)
TN=Σ(Ni×ti) (i=A〜D)
TK=Σ(Ki×ti) (i=A〜D)
ここまでで、図6の最下行までの演算処理が行われて、所要時間T(TSまたはTNまたはTK)が求められる。所要時間Tは、装着ヘッド52の組み合わせ1種類について得られるものである。
【0048】
次にステップS6で、所要時間Tが短縮されたか否か調査し、短縮されたときにステップS7に進み、そうでないときにS8に進む。なお、全てが汎用ヘッド52Lである初回のステップS6では、所要時間Tの初期値が求められるので、無条件でステップS7に進む。ステップS7では、短縮された所要時間Tを得ることができた装着ヘッド52の組み合わせ(ステップS9で設定される)および部品種の配分(ステップS3で設定される)を更新保持する。
【0049】
ステップS7の後ステップS8に合流し、前段側の部品実装機から順番に、汎用ヘッド52Lを高速ヘッド52Hまたは中速ヘッド52Mに取り替え可能か否か調査する。つまり、未だ汎用ヘッド52Lが残されているか否か、および取り替えを実施したときに全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種PA〜PDの部品を実装できる見込みがあるか否かを調査する。取り替え可能のときステップS9に進んで、当該の装着ヘッド52を取り替える。例えば、初回のステップS9では、最前段の部品実装機21の汎用ヘッド52Lを高速ヘッド52に取り替える。この後ステップS3に戻る。なお、装着ヘッド52の種類によって使用できる数量が限定されている場合には、限定範囲内での取り替えを実施する。
【0050】
2度目以降のステップS3〜S6では、設定された新しい装着ヘッド52の組み合わせに対してそれぞれ、図6の5行目以下の演算処理過程を実施して所要時間Tを求め、短縮されたか否かを調査する。そして、所要時間Tが短縮されたときには好ましい演算結果であるので、ステップS7で装着ヘッド52の組み合わせおよび部品種の配分を更新保持し、ステップS8に進む。また、所要時間Tが短縮されなかったときには好ましい演算結果ではないので、更新保持を行わずにステップS8に進む。
【0051】
2度目以降のステップS8では、装着ヘッド52が取り替え可能か調査し、可能である間ステップS9からステップS3に戻る演算処理を繰り返す。そして、汎用ヘッド52Lがなくなった時点、または全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種PA〜PDの部品を実装できる見込みがなくなった時点で装着ヘッド52の取り替えを打ち切り、ステップS10に進む。ステップS10では、保持している装着ヘッド52の組み合わせおよび部品種の配分を採用して、演算処理フローを終了する。採用した演算処理結果は、最終的に所要時間Tが最も短縮された好ましいものである。
【0052】
この後、動作条件決定手段は、採用した部品種の配分を基にして、基板種A〜Dごとに各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムt1A〜t8Dを最小化する最適な部品種の配列順序を決定する。つまり、各部品実装機21〜28の部品供給装置4のカセット式フィーダ41の配列順序を決定する。例えば、動作条件決定手段は、或る部品実装機の部品供給装置4において使用頻度の高い部品種を中央寄り配置し、使用頻度の低い部品種を端寄り配置するように配列順序を結締する。これにより、装着ヘッド52の総移動距離を短縮して個別サイクルタイムt1A〜t8Dを最小化することができる。なお、カセット式フィーダ41の配列順序を決定する演算処理は、各部品実装機21〜28の制御コンピュータ7で実行するように機能分担してもよい。
【0053】
次に、第1実施形態の部品実装ライン1の動作について例示説明する。図7は、第1実施形態の部品実装ライン1で、動作条件決定手段が装着ヘッド52の組み合わせを決定する動作を例示説明する図である。図7の「ケースNo.」の欄は図5の演算処理フロー中のステップS3〜S8までの繰り返し回数を示し、「各部品実装機の吸着ノズルの種類」の欄は、ステップS2およびS9で設定された装着ヘッド52の組み合わせを示している。また、「実装可否判定」の欄は全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種PA〜PDの部品を実装できる(図中の○印)か否(図中の×印)かの判定結果を示し、「所要時間T」の欄は実装できるときに求めた値である。
【0054】
図7のケースC1で、全ての部品実装機21〜28を汎用ヘッド52Lに仮置きすると、全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種PA〜PDの部品を実装でき(実装可能であり)、図6の5行目以下の演算処理過程が実施されて所要時間T=T1が求められる。次のケースC2で、最前段の部品実装機21の汎用ヘッド52Lを高速ヘッド52Hに取り替えると、実装可能であり、所要時間T=T2が求められる。次のケースC3〜C5で、二段目から四段目までの部品実装機22〜24の汎用ヘッド52Lを順番に高速ヘッド52Hに取り替えると、それぞれ実装可能であり、所要時間T=T3、T4、T5が求められる。
【0055】
次のケースC6で、五段目の部品実装機25の汎用ヘッド52Lを高速ヘッド52Hに取り替えると、全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種の部品を実装できなくなる。この状況は、例えば、全部品種PA〜PDのうちの大形部品の数量に対して、これを実装できない高速ヘッド52Hの数量が増加し過ぎ、これを実装できる中速ヘッド52Mおよび汎用ヘッド52Lが不足する場合に発生する。そこで、次のケースC7では、五段目の部品実装機25の高速ヘッド52Hを中速ヘッドに取り替えると、実装可能となり、所要時間T=T7が求められる。
【0056】
さらに、次のケースC8で、六段目の部品実装機26の汎用ヘッド52Lを高速ヘッド52Hに取り替えても実装できなくなるのは明らかであるので、汎用ヘッド52Lを中速ヘッド52Mに取り替えると、実装可能であり、所要時間T=T8が求められる。次のケースC9で、七段目の部品実装機27の汎用ヘッド52Lを中速ヘッド52Mに取り替えると、実装できなくなる。ここで、全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種PA〜PDの部品を実装できる見込みがなくなるので、装着ヘッド52の取り替えを打ち切る。そして、これまでに得られた所要時間T=(T1〜T5、T7、T8)のうちの最小値が自動的に更新保持されており、当該の装着ヘッド52の種類の組み合わせを採用することができる。
【0057】
第1実施形態の部品実装ライン1によれば、部品実装動作に先立ち、複数の基板種A〜Dに対して装着ヘッド52を取り替えない条件下で実装に要すると推定される所要時間Tを短縮するように各部品実装機21〜28の装着ヘッド52の種類を決定し、かつ各部品実装機21〜28の部品種の配分を決定する。したがって、複数の基板種A〜Dを生産する期間を通してオペレータが装着ヘッド52を交換する段取り替え作業が不要となり、かつ所要時間Tを短縮できるので、生産効率が向上する。
【0058】
また、或る基板種Aについて各部品実装機21〜の個別サイクルタイムt1A〜t8Aをできるだけ均等化して、その最大値を基板種サイクルタイムtAとするので、部品実装ライン1内で隘路が生じなくなり、基板種サイクルタイムtAが短縮される。また、生産計画などを考慮して、各基板種A〜Dの基板をそれぞれ1枚生産するのに要する所要時間TS、各基板種A〜Dをそれぞれの生産枚数NA〜NDだけ生産するのに要する全数生産時間に相当する所要時間TN、および各基板種A〜Dの優先度KA〜KDを考慮した生産効率の尺度を意味する所要時間TKを適宜択一できる。そして、この所要時間T(TSまたはTNまたはTK)を短縮するように装着ヘッド52の組み合わせを決定でき、生産効率が向上する。
【0059】
さらに、全ての部品実装機21〜28を汎用ヘッド52Lに仮置きし、次いで汎用ヘッド52Lを高速および中速ヘッド52H、52Mへと順次取り替えてそれぞれ所要時間Tを計算するので、装着ヘッド52の組み合わせの全部で所要時間Tを計算する手間を省略できる。例えば、第1実施形態の装置構成で装着ヘッド52の全組み合わせ数は3種類の8乗で6561通りあり、図7の例では9通りの組み合わせで所要時間Tを計算するだけで済む。また、前段側に高速ヘッド52H、後段側に汎用ヘッド52Lが優先的に配置されるので、部品種の装着順序が自動的に最適化される。すなわち、まず前段側の高速ヘッド52Hでチップ抵抗やチップコンデンサなどの小形部品が装着され、その後に後段側の汎用ヘッド52LでIC素子やLSI素子などの大形部品が装着されるので、装着済みの小形部品は大形部品を装着するときの邪魔にならない。仮に、前段側に汎用ヘッド52Lが配置されて大形部品が先に装着されると、後段側の高速ヘッド52Hで小形部品を装着する際に装着済みの大形部品が邪魔になることがある。
【0060】
加えて、動作条件決定手段は、基板種A〜Dごとに各部品実装機21〜28それぞれの個別サイクルタイムt1A〜t8Dを最小化する最適な部品種の配列順序を決定するので、基板種サイクルタイムtA〜tDおよび所要時間Tも最小化されて、生産効率が格段に向上する。
【0061】
次に、動作条件決定手段の演算処理の内容が異なる第2実施形態の部品実装ラインについて、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態の部品実装ラインの全体構成および各部品実装機の装置構成は、図1図4に示される第1実施形態と同じである。図8は、第2実施形態で動作条件決定手段が行う演算処理の内容を示す演算処理フローの図である。第2実施形態の動作条件決定手段は、装着ヘッド52の組み合わせを決定するときに、装着ヘッド52の仮置きの方法および取り替えの手順が異なる。
【0062】
第2実施形態の動作条件決定手段は、図8のステップS21で、第1実施形態と同様に前提条件を把握する。次にステップS22で、全ての部品実装機21〜28の部品移載装置5の装着ヘッド52の種類を高速ヘッド52Hに仮置きする。次にステップS23で、全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種PA〜PDの部品を実装できるか調査し、できるときに各基板種A〜Dにおける各部品実装機21〜28への部品種PA〜PDの配分を最適化する。必要に応じ試行錯誤を繰り返して配分を最適化した結果、各基板種A〜Dにおける各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムt1A〜t8Dが得られる。次にステップS24で、各基板種A〜Dの基板種サイクルタイムtA〜tDを求める。次にステップS25で、3つの所要時間TS、TN、TKのいずれかを演算する。
【0063】
次にステップS26で、所要時間T(TSまたはTNまたはTK)が短縮されたか否か調査し、短縮されたときにステップS27に進み、そうでないときにステップS28に進む。なお、全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種PA〜PDの部品を実装できる条件が成立した初回には、無条件でステップS27に進む。ステップS27では、短縮された所要時間Tを得ることができた装着ヘッド52の組み合わせ(ステップS29で設定される)および部品種の配分(ステップS23で設定される)を更新保持する。
【0064】
ステップS27の後ステップS28に合流し、所要時間Tが過大か否かを調査し、まだ1つの所要時間Tも得られていないときおよび所要時間Tが過大でないときにステップS29に進む。ステップS29で、後段側の部品実装機から順番に、高速ヘッド52Hを低速ヘッド52Lまたは中速ヘッド52Mに取り替える。例えば、初回のステップS9では、最後段の部品実装機28の高速ヘッド52Hを低速ヘッド52Lに取り替える。この後ステップS23に戻る。
【0065】
2度目以降のステップS23〜S26では、設定された新しい装着ヘッド52の組み合わせに対してそれぞれ所要時間Tを求め、所要時間Tが短縮されたか否かを調査する。そして、所要時間Tが短縮されたときには好ましい演算結果であるので、ステップS27で、装着ヘッド52の組み合わせおよび部品種の配分を更新保持する。また、所要時間Tが短縮されなかったときには好ましい演算結果ではないので、更新保持を行わずにステップS28に進む。
【0066】
2度目以降のステップS28では、所要時間Tが過大か否かを調査し、過大でない間ステップS29からステップS23に戻る演算処理を繰り返す。そして、所要時間Tが過大になった時点で装着ヘッド52の取り替えを打ち切り、ステップS30に進む。ステップS30では、保持している装着ヘッド52の組み合わせおよび部品種の配分を採用して、演算処理フローを終了する。採用した演算結果は、最終的に所要時間Tが最も短縮された好ましいものである。
【0067】
この後、動作条件決定手段は、採用した部品種の配分を基にして、基板種A〜Dごとに各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムt1A〜t8Dを最小化する最適な部品種の配列順序を決定する。つまり、各部品実装機21〜28の部品供給装置4のカセット式フィーダ41の配列順序を決定する。
【0068】
次に、第2実施形態の部品実装ライン1の動作について例示説明する。図9は、第2実施形態の部品実装ラインで、動作条件決定手段が装着ヘッド52の組み合わせを決定する動作を例示説明する図である。図9において、基板種A〜Dなどの前提条件は第1実施形態と同じであり、表中の表記形式も第1実施形態の図7と同様である。図9のケースC21で、全ての部品実装機21〜28を高速ヘッド52Hに仮置きしたとき、全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種PA〜PDの部品を実装できない。次のケースC21およびC22で、最後段および七段目の部品実装機28、27の高速ヘッド52Hを順番に低速ヘッド52Lに取り替えても、やはり全部品種PA〜PDの部品を実装できない。
【0069】
次のケースC24で、六段目の部品実装機26の高速ヘッド52Hを汎用ヘッド52Lに取り替えると、全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種PA〜PDの部品を実装できる(実装可能)ようになり、所要時間T=T24が求められる。この状況は、例えば、全部品種PA〜PDのうちの大形部品の数量に対して、これを実装できる汎用ヘッド52Lが足りる場合に発生する。そこで、次のケースC25では、六段目の部品実装機25の汎用ヘッド52Lを中速ヘッド52Mに取り替えると、実装可能であり、所要時間T=T25が求められる。
【0070】
さらに、次のケースC26で、五段目の部品実装機25の高速ヘッド52Hを低速ヘッド52Lに取り替えても所要時間Tが過大になるのは明らかであるので、高速ヘッド52Hを中速ヘッド52Mに取り替えると、実装可能であり、所要時間T=T26求められる。次のケースC27で、四段目の部品実装機24の高速ヘッド52Hを中速ヘッド52Mに取り替えると、実装可能であり、所要時間T=T27求められる。ここで、所要時間T=T27が過大になったので、装着ヘッド52の取り替えを打ち切る。そして、これまでに得られた所要時間T(=T24〜T26)のうちの最小値が自動的に更新保持されており、当該の装着ヘッド52の組み合わせを採用することができる。
【0071】
第2実施形態の部品実装ラインによれば、全ての部品実装機21〜28を高速ヘッド52Hに仮置きし、次いで高速ヘッド52Hを低速および中速ヘッド52L、52Mへと順次取り替えてそれぞれ所要時間Tを計算するので、装着ヘッド52の組み合わせの全部で所要時間Tを計算する手間を省略できる。また、生産効率が向上する効果は、第1実施形態と同様であるので詳述を略する。
【0072】
なお、本発明は、直列に配置された複数の部品実装機21〜28の一部のみで装着ヘッド52を取り替える場合にも実施可能である。例えば、一般的な基板では或る程度の数量の小形部品を実装するのが一般的であるので、三段目までの部品実装機21〜23を高速ヘッド52Hに固定して小形部品の実装を優先的に行い、四段目以降の部品実装機24〜28で装着ヘッド52を取り替えるようにしてもよい。また、高速ヘッド52H、中速ヘッド52M、および汎用ヘッド52Lの構造も実施形態に限定されない。本発明は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1:部品実装ライン 11:システムベース
21〜28:部品実装機
3:基板搬送装置 31:第1搬送装置 32:第2搬送装置
4:部品供給装置 41:カセット式フィーダ
5:部品移載装置 51:ヘッド駆動機構 52:装着ヘッド
52H:高速ヘッド 53H:ヘッド本体 54H:ホルダ保持体
55H:ノズルホルダ 56H:吸着ノズル
52M:中速ヘッド 53M:ヘッド本体
55M、57M:ノズルホルダ
56M、58M、58M1:吸着ノズル
52L:汎用ヘッド 53H:ヘッド本体
55L:ノズルホルダ 56L:吸着ノズル
6:部品カメラ
7:制御コンピュータ
8:ノズル収容装置
9:基台 91:カバー
A、B、C、D:基板種 PA、PB、PC、PD:部品種
N、NA、NB、NC、ND:生産枚数
K、KA、KB、KC、KD:優先度係数
t、tA、tB、tC、tD:基板種サイクルタイム
T、TS、TN、TK:所要時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9