特許第5721646号(P5721646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721646
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】着色剤−ポリエステルを含むトナー粒子
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20150430BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20150430BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   G03G9/08 331
   G03G9/08 361
   G03G9/08 365
   G03G9/08 381
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-31746(P2012-31746)
(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公開番号】特開2012-189998(P2012-189998A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2015年2月10日
(31)【優先権主張番号】13/043,838
(32)【優先日】2011年3月9日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンティアゴ・フォーシェ
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー・ディー・ノセッラ
(72)【発明者】
【氏名】シガン・エス・チウ
【審査官】 高松 大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−055310(JP,A)
【文献】 特開2009−270106(JP,A)
【文献】 特開2005−325268(JP,A)
【文献】 特開2005−325267(JP,A)
【文献】 特開2010−066763(JP,A)
【文献】 特開2010−059421(JP,A)
【文献】 特開平06−175387(JP,A)
【文献】 特開昭63−317526(JP,A)
【文献】 特開昭59−155418(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0065359(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0055750(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0280429(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/087
G03G 9/08
G03G 9/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの着色剤および少なくとも1つのポリエステル樹脂を含む着色剤−ポリエステルポリマーと、
任意要素の着色剤非含有ポリエステルと、
任意要素のさらなる着色剤と、
任意要素のワックスと、
任意要素の添加剤とを含み、
前記着色剤−ポリエステルポリマー中の前記着色剤が、ポリエステル樹脂に共有結合しており、
前記着色剤は蛍光染料又はローダミンを除く蛍光顔料であり、
前記着色剤−ポリエステルポリマーは、前記着色剤、ラクトン、及び酵素触媒を含む反応溶液から得られ、
前記着色剤−ポリエステルポリマーは、トナー組成物中に、前記トナー組成物の0.01〜15重量%の量で含まれる、トナー組成物。
【請求項2】
前記着色剤が、前記ポリエステル樹脂にα位で共有結合している、請求項1に記載のトナー組成物。
【請求項3】
前記着色剤が、カルボン酸−インデノフルオレノン、2−(5−ヒドロキシルペンチル)−1H−チオキサンテノ[2,1,9−def]イソキノリン−1,3(2H)−ジオン、ペリレン、ペリノン、スクアライン、BONA顔料、4,4’−ビス(スチリル)ビフェニル、2−(4−フェニルスチルベン−4−イル)−6−ブチルベンゾオキサゾール、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾール、β−メチルウンベリフェロン、4,−メチル−7−ジメチルアミノクマリン、4−メチル−7−アミノクマリン、N−メチル−4−メトキシ−1,8−ナフタルイミド、9,10−ビス(フェネチニル)アントラセン、5,12−ビス(フェネチニル)ナフタセン、9,10−ジフェニルアントラセン、N−サリチリデン−4−ジメチルアミノアニリン、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズイミダゾール、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、これらの組み合わせからなる群から選択される蛍光染料または蛍光顔料である、請求項1に記載のトナー組成物。
【請求項4】
前記ラクトンが、オキサシクロヘプタデカ−10−エン−2−オン、ペンタデカラクトン、ペンタデセンラクトン、ヘキサデセンラクトン、ω−ペンタデカラクトン、カプロラクトン、プロピルマロラクトネート、2−メチレン−4−オキサ−12−ドデカノリド、ポリ(ブタジエン−b−ペンタデカラクトン、ポリ(ブタジエン−b−ε−CL)、(R)体および(S)体の3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノリド、3(S)−イソプロピルモルホリン−2,5−ジオン、モルホリン−2,5−ジオン誘導体、1−メチルトリメチレンカーボネート、8−オクタノリド、δ−デカラクトン、12−ドデカノリド、α−メチレンマクロライド、α−メチレン−δ−バレロラクトンからなる群から選択される1つ以上のメンバーである、請求項1に記載のトナー組成物。
【請求項5】
前記酵素触媒が、リパーゼPA、リパーゼPC、リパーゼPF、リパーゼA、リパーゼCA、リパーゼB、リパーゼCC、リパーゼK、リパーゼMM、クチナーゼ、ブタリパーゼからなる群から選択される1つ以上のメンバーである、請求項1に記載のトナー組成物。
【請求項6】
前記酵素触媒が、candita antarticaリパーゼBである、請求項1に記載のトナー組成物。
【請求項7】
トナー組成物を調製する方法であって、この方法が、
エステルモノマーと、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するか、または少なくとも1個のヒドロキシ基を有するように官能基化された着色剤と、酵素触媒とを含む反応溶液を準備することと;
エステルモノマーと着色剤とを酵素触媒を用いて反応させ、着色剤−ポリエステルポリマーを含むポリマー生成物を製造することと;
反応溶液からポリマー生成物を分離することと;
ポリマー生成物からラテックスを作成することと;
乳化凝集プロセスで得られたポリマー生成物のエマルションを用い、トナー組成物を製造することとを含み、
前記着色剤−ポリエステルポリマーは、少なくとも1つの着色剤と、少なくとも1つのポリエステル樹脂とを含み、前記着色剤は、蛍光染料又はローダミンを除く蛍光顔料であり、ポリエステル樹脂に共有結合しており、前記ポリエステル樹脂が、酵素触媒を用い、ラクトンを重合させることによって得られ、前記着色剤−ポリエステルポリマーは、トナー組成物中に、前記トナー組成物の0.01〜15重量%の量で含まれる、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本開示のトナー組成物は、少なくとも1つの着色剤および少なくとも1つのポリエステル樹脂を含む着色剤−ポリエステルポリマーと、任意要素の着色剤非含有ポリエステルと、任意要素のさらなる着色剤と、任意要素のワックスと、任意要素の添加剤とを含み、着色剤が、ポリエステル樹脂のいくつかまたはすべてに共有結合しており、ポリエステル樹脂が、酵素触媒を用い、ラクトンを重合させることによって得られる。
【0002】
本開示のトナー組成物を調製する別の方法は、エステルモノマーと、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するか、または少なくとも1個のヒドロキシ基を有するように官能基化された着色剤と、酵素触媒とを含む反応溶液を準備することと;エステルモノマーと着色剤とを酵素触媒を用いて反応させ、着色剤−ポリエステルポリマーを含むポリマー生成物を製造することと;反応溶液からポリマー生成物を分離することと;ポリマー生成物からラテックスを作成することと;乳化凝集プロセスで得られたポリマー生成物のエマルションを用い、トナー組成物を製造することとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0003】
着色剤−ポリエステルポリマーは、酵素による重合プロセスによって製造されてもよく、このプロセスは、着色剤と、エステルモノマーと、酵素触媒とを含む反応溶液を準備することによって行われる。酵素による重合反応は、水をさらに含んでいてもよい。この重合は、反応媒体中に存在する水、または着色剤に存在するヒドロキシル基、またはこれら両者によって開始されてもよい。したがって、乾燥溶媒およびモノマーが存在しない状態で、この機構によって2種類のポリエステルの集合を作成することができ、片方のポリエステル集合は、着色剤がポリエステルに結合しており、他方のポリエステル集合は、α−ヒドロキシル基を有しており、ポリエステルに着色剤が結合していない。α−ヒドロキシル基を有するポリエステルは、着色していない。水の量および出発物質の濃度を調節することによって、着色している着色剤−ポリエステルと着色していないポリエステルとの比率を変えることができる。
【0004】
適切な着色剤は、染料、または顔料、または染料混合物、または顔料と染料の混合物などであってもよい。
【0005】
着色剤は、酵素触媒を介し、反応溶液中に存在するエステルモノマーと反応性である。反応性末端基を有する着色剤を用いれば、この状況を達成することができる。着色剤の反応性基の一例は、反応性ヒドロキシル基である。
【0006】
また、着色剤は、着色剤がエステルモノマーと反応性になるように、反応性末端基を有するように官能基化されていてもよい。着色剤を、反応性末端基を有するように官能基化することによって、この状況を達成することができる。
【0007】
溶剤染料を用いてもよい。溶剤染料の例としては、可溶性のスピリット染料が挙げられる。
【0008】
着色剤は、蛍光着色剤であってもよい。酵素による重合中にポリエステルに化学結合させることが可能な任意の蛍光着色剤を用いてもよい。本明細書で製造される蛍光着色剤は、本質的に無色である。すなわち、適切に選択された紙基材の上に、蛍光着色剤と蛍光トナーをブレンドして作られる印刷物は、通常の目視条件では、見ることができない。しかし、これらの蛍光着色剤は、適切な波長の光(例えば、所定の波長を有する紫外(UV)光)をあてると、目視が可能になるだろう。この可視性は、トナーに蛍光着色剤を加えることによって付与されてもよく、この蛍光着色剤は、UV光をあてたときだけ見ることができる物質であってもよい。蛍光着色剤は、発光要素であってもよく、約10nm〜約400nm、例えば、約60〜約350nm、または約110〜約300nmのUVスペクトル領域の波長を有するUV光をあてると蛍光を発する要素であってもよい。
【0009】
適切な蛍光着色剤としては、4,4’−ビス(スチリル)ビフェニル、2−(4−フェニルスチルベン−4−イル)−6−ブチルベンゾオキサゾール、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾール、β−メチルウンベリフェロン、4,−メチル−7−ジメチルアミノクマリン、4−メチル−7−アミノクマリン、N−メチル−4−メトキシ−1,8−ナフタルイミド、9,10−ビス(フェネチニル)アントラセン、5,12−ビス(フェネチニル)ナフタセン、DAYGLO INVISIBLE BLUETM A−594−5、これらの組み合わせなどが挙げられる。他の適切な蛍光剤としては、例えば、9,10−ジフェニルアントラセンおよびその誘導体、N−サリチリデン−4−ジメチルアミノアニリン、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズイミダゾール、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0010】
他の例示的な蛍光着色剤としては、蛍光顔料が挙げられ、蛍光顔料としては、カルボン酸−インデノフルオレノン、例えば、モノカルボン酸−インデノフルオレノン、ジカルボン酸−インデノフルオレノン、2−(5−ヒドロキシルペンチル)−1H−チオキサンテノ[2,1,9−def]イソキノリン−1,3(2H)−ジオンが挙げられる。また、蛍光顔料としては、誘導体化された類似体、例えば、ローダミン、C.I.Pigment Orange 43およびC.I.Pigment Red 194を含むペリレン、ペリノン、スクアライン、BONA顔料、例えば、C.I.Pigment Red 57およびC.I.Pigment Red 48が挙げられる。
【0011】
反応溶液は、エステルモノマーを含む。エステルモノマーは、環状エステルモノマーであってもよい。酵素による重合に、任意の適切な環状エステルモノマー、例えば、炭素原子を5〜16個、例えば、6〜15個、7〜12個、または8〜10個含む環状エステルを用いてもよい。環状エステルモノマーは、ラクトン、ラクチド、マクロライド、環状炭酸エステル、環状リン酸エステル、環状デプシペプチドまたはオキシランであってもよい。適切な環状エステルモノマーの具体例としては、ラクトン、例えば、オキサシクロヘプタデカ−10−エン−2−オン(AMBRETTOLIDEとしてPenta Manufacturing Co.から入手可能)、ω−ペンタデカラクトン(EXALTOLIDEとしてPenta Manufacturing Co.から入手可能)、ペンタデカラクトン、11/12−ペンタデセン−15−オリド(ペンタデセンラクトンとしても知られる)、ヘキサデセンラクトン、カプロラクトンが挙げられる。他の適切なエステルモノマーとしては、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、プロピルマロラクトネート、2−メチレン−4−オキサ−12−ドデカノリド、ポリ(ブタジエン−b−ペンタデカラクトン、ポリ(ブタジエン−b−ε−CL)、ε−カプロラクトン、(R)および(S)体の3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノリド、1,3−ジオキサン−2−オン、1,4−ジオキサン−2−オン、3(S)−イソプロピルモルホリン−2,5−ジオン、モルホリン−2,5−ジオン誘導体、トリメチレンカーボネート、1−メチルトリメチレンカーボネート、8−オクタノリド、δ−デカラクトン、12−ドデカノリド、α−メチレンマクロライド、α−メチレン−δ−バレロラクトンが挙げられる。
【0012】
反応溶液は、非環状エステルモノマーを含んでいてもよい。例示的な非環状エステルモノマーとしては、二酸、ヒドロキシ酸、ジエステルが挙げられる。例えば、適切な非環状エステルモノマーとしては、10−ヒドロキシデカン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、10−ヒドロキシヘキサデカン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、3−ヒドロキシ酪酸、ジビニルジカルボキシレート、例えば、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、2,2,2−トリクロロエチルエステル、2,2,2−トリフルオロエチルエステル、活性化していない二酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸)、6−6’−O−ジビニルアジペート、α−ω−ジオキサカルボン酸メチルエステル、ビス(ヒドロキシルメチル)酪酸、ω−フルオロ−(ω−1)ヒドロキシルアルカン酸が挙げられる。
【0013】
エステルモノマーは、独立して反応溶液に与えられてもよく、または、エステルモノマーを含む有機溶液の形態で与えられてもよい。
【0014】
反応溶液中の着色剤とエステルモノマーとのモル比は、任意の有効な比率であってもよく、例えば、約1:1〜約1:50、約1:5〜約1:45、約1:10〜約1:40、または約1:15〜約1:35であってもよい。エステルモノマーに対する着色剤の濃度を変えることによって、ポリマー生成物の分子量を制御することができる。
【0015】
反応溶液は、1つ以上の適切な酵素をさらに含む。1つ以上の酵素は、着色剤とエステルモノマーとの反応を触媒し、低温で重合を引き起こすことができる。使用可能な酵素の具体例は、リパーゼ(例えば、リパーゼPA、リパーゼPC、リパーゼPF、リパーゼA、リパーゼCA、リパーゼB(例えば、candita antartica リパーゼB)、リパーゼCC、リパーゼK、リパーゼMM、クチナーゼまたはブタリパーゼである。
【0016】
酵素は、反応溶液中に、固定された状態または担持された状態で存在していてもよく(共有結合していない酵素、例えば、吸着した酵素、または他の酵素に結合している酵素)、または固定された形態、担持された形態または遊離形態の両方で存在していてもよい。
【0017】
1つ以上の酵素は、反応溶液中に任意の有効な濃度で存在していてもよく、例えば、約0.001g/cm〜約0.060g/cm、約0.004g/cm〜約0.040g/cm、約0.006 g/cm〜約0.020g/cm、または約0.01g/cm〜約0.050g/cmの濃度で存在していてもよい。反応溶液中の1つ以上の酵素の濃度は、架橋したポリマー網目構造、架橋したポリマービーズ、ポリマー包装物、膜、シリカゲル、シリカビーズ、砂およびゼオライトのうち1つ以上について、酵素の質量と固定剤の質量との比率を変えることによって制御してもよい。
【0018】
モノマーは、独立して反応溶液に与えられてもよく、または、モノマーと溶媒とを含むモノマー溶液の形態で与えられてもよい。反応媒体の粘度低下を促進し、反応溶液の撹拌または圧送をもっと容易にするために、溶媒を反応物に加えてもよい。
【0019】
このように、反応溶液は、1つ以上の適切な溶媒、例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサンおよびその類似体(例えば、ヘプタン)、テトラヒドロフランおよびその類似体(例えば、2−メチルテトラヒドロフラン)、メチルエチルケトンおよびその類似体を含んでいてもよい。
【0020】
モノマーを反応溶液に加える前、または加えた後に、溶媒をモノマーと混合してもよい。溶媒が存在する場合、溶媒は、モノマー含有量に対し、任意の適切な濃度範囲で含まれていてもよい。例えば、溶媒は、溶媒および環状モノマーを合わせた合計重量の1%〜約99%、例えば、約10%〜約90%、例えば、約25%〜約75%、例えば、約40%〜約60%、または例えば、約50%含まれていてもよい。
【0021】
酵素による重合は、約50℃〜約90℃、例えば、約55℃〜約85℃、約60℃〜約80℃、または約65℃〜約75℃の温度で行われてもよい。
【0022】
この方法は、任意の適切な酵素による重合技術によって行われてもよい。この方法は、バッチ反応器または連続式反応器のいずれかの形状で、塊重合または溶液重合を含んでいてもよい。後者の場合には、触媒は、塔型反応器に封入されており、エステルモノマーが圧送されて触媒を通り、連続的にポリマーが生成する。前者の場合には、ケトルに触媒を加え、添加されたエステルモノマーとともに撹拌する。両方の場合で、着色剤は、酵素による重合のためのヒドロキシル開始部位として加えられる。着色剤とエステルモノマーとの比率を用い、ポリマーの分子量をある程度まで制御することができる。
【0023】
連続式充填床反応器中で、固定された酵素触媒を用いたポリエステルの塊重合は、米国特許出願第12/240,421号にさらに開示されている。
【0024】
酵素による重合反応によって、ポリマー混合物を含む反応生成物(ポリマー生成物)が得られる。この反応生成物は、着色剤−ポリエステルポリマーと、共有結合した着色剤を含まないように作られたポリエステルポリマー(以下、「着色剤非含有ポリエステル」)の両方を含んでいてもよい。着色剤−ポリエステルポリマーは、少なくとも1つの着色剤と、少なくとも1つのポリエステル樹脂とを含み、ここで、着色剤は、ポリエステル樹脂に共有結合している。着色剤は、ポリエステル樹脂にα位で共有結合していてもよい。
【0025】
ポリエステル樹脂(着色剤−ポリエステルの一部として、または、共有結合した着色剤を含まないように作られたポリエステルポリマーの一部として)は、エステルモノマーを重合させることによって作られる。作られたポリエステルの構造は、反応で用いられるモノマーに依存している。ポリエステル樹脂の例示的な構造は、以下の反応構造モデルによってあらわされ、
【化1】
式中、Rは、着色剤であってもよく、mは、4〜15であってもよい。他の構造は、上述のいずれかのエステルモノマーを用いることによって可能である。
【0026】
物理的性質、機械的性質、流動性、および/または熱特性のために、着色剤非含有ポリエステルポリマーを用いてもよい。着色剤非含有ポリエステルポリマーは、例えば、特定の用途に望ましい物理的性質を有していてもよく、同時に、着色剤−ポリエステルポリマーの着色剤(マトリックス)として役立ってもよい。したがって、着色剤非含有ポリエステルポリマーは、例えば、材料の他の望ましい性質に影響を与えることなく、最終生成物中の着色剤−ポリエステルポリマーの濃度を、特定の用途にとって望ましい濃度まで減らすのに役立ってもよい。
【0027】
反応生成物は、異なる着色剤が異なるポリエステル分子に結合した、異なる着色剤−ポリエステルポリマーを含んでいてもよい。
【0028】
着色剤−ポリエステルポリマーは、示差走査熱分析(DSC)によって測定した場合、任意の適切な重量平均分子量(M)、例えば、約1,000g/mol〜約50,000g/mol、約2,000g/mol〜約25,000g/mol、約5,000g/mol〜約20,000g/mol、または約5,000g/mol〜約10,000g/molを有していてもよい。
【0029】
着色剤−ポリエステルポリマーは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定した場合、任意の適切な数平均分子量(M)、例えば、約1,000g/mol〜約50,000g/mol、約2,000g/mol〜約25,000g/mol、5,000g/mol〜約20,000g/mol、または約5,000g/mol〜約10,000g/molを有していてもよい。
【0030】
着色剤−ポリエステルポリマーは、任意の適切な多分散指数(M/M)(PDI)、例えば、約1.00〜約2.50、約1.25〜約2.00、約1.50〜約1.75、または約1.40〜約1.60を有していてもよい。
【0031】
着色剤−ポリエステルポリマーは、任意の構造形態であってもよく、例えば、ポリエステルを製造するのに用いたモノマーの種類によって、アモルファスまたは結晶性であってもよい。
【0032】
酵素による重合によって蛍光着色剤を用いて合成した着色剤−ポリエステルポリマーは、目で見てわかるように蛍光挙動を維持しており、種々の用途で着色剤として用いることができる。
【0033】
着色剤−ポリエステルポリマーと着色剤非含有ポリエステルポリマーの混合物のラテックスエマルションを、転相乳化法によって作成してもよい。この方法を利用すると、着色剤−ポリエステルポリマーが、着色剤−ポリエステルポリマーエマルション中に存在してもよく、次いで、これを他の要素および添加剤と合わせ、本開示のトナーを作成してもよい。
【0034】
(トナー)
本明細書で記載した着色剤−ポリエステルポリマーをトナーに利用してもよい。トナーは、場合により、1つ以上の他の着色剤とともに、場合により、1つ以上のトナー添加剤とともに、トナー媒剤に着色剤−ポリエステルポリマーを含む。本明細書で記載した着色剤−ポリエステルポリマーを、化学合成法によって製造した、乳化凝集トナーを含むトナーとともに、化学粉砕によって懸濁物として製造したトナーとともに、およびこれらの組み合わせとともに利用してもよい。トナーは、例えば、樹脂が顔料とともに溶融混練されるか、または押出成形され、微粉化され、粉砕されてトナー粒子が得られる従来のプロセスによって得られてもよい。このようなプロセスは、米国特許第5,364,729号および第5,403,693号に記載されている。
【0035】
着色剤−ポリエステルは、トナー中に、例えば、トナーの約0.01〜約15重量%、例えば、約0.1〜約6重量%、または約0.1〜約3重量%の量で含まれていてもよい。
【0036】
ラテックスエマルションを、適切なプロセスによって、いくつかの実施形態では、乳化凝集および融着プロセスによって、着色剤(場合により、分散物の状態で)、消泡剤、トナーを作成するための他の添加剤と接触させてもよい。
【0037】
着色剤、ワックスおよび他の添加剤を含む、トナー組成物の任意要素のさらなる成分を、樹脂を溶融混合してラテックスを作成する前、作成している間、または作成した後に加えてもよい。さらなる成分を、ラテックスエマルションを作成し、中和した樹脂を水と接触させる前、作成している間、または作成した後に加えてもよい。さらなる実施形態では、界面活性剤を加える前に、着色剤を加えてもよい。
【0038】
着色剤−ポリエステルポリマー、さらなる着色剤、ワックス、トナー組成物を作成するために利用される他の添加剤は、界面活性剤を含む分散物の状態であってもよい。さらに、トナー粒子は、樹脂およびトナーの他の要素を、1つ以上の界面活性剤が存在する状態におき、エマルションを生成させ、トナー粒子が凝集し、融着し、場合により、これを洗浄し、乾燥させ、回収するような乳化凝集方法によって作られてもよい。
【0039】
1種類、2種類またはそれ以上の界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤は、イオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤から選択されてもよい。アニオン系界面活性剤およびカチオン系界面活性剤は、用語「イオン系界面活性剤」に包含される。いくつかの実施形態では、界面活性剤を固体として、または約10重量%〜約100重量%(純粋な界面活性剤)、いくつかの実施形態では、約15重量%〜約75重量%の高濃度溶液として加えてもよい。
【0040】
トナー組成物の約0.01重量%〜約5重量%、例えば、約0.75重量%〜約4重量%、いくつかの実施形態では、約1重量%〜約3重量%の量で存在するように、界面活性剤を利用してもよい。
【0041】
着色剤−ポリエステルポリマー中に存在する着色剤に加えて、トナー組成物は、さらなる着色剤(例えば、染料、顔料、染料混合物、顔料混合物、染料と顔料の混合物など)を含んでいてもよい。さらなる着色剤は、トナー中に、トナーの約0.1〜約35重量%、または約1〜約15重量%、または約1〜約10重量%の量で含まれていてもよい。
【0042】
着色剤は、顔料、染料、これらの組み合わせ、カーボンブラック、マグネタイト、黒色、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブルー、ブラウン、これらの組み合わせを、トナーに望ましい色を付与するのに十分な量で含んでいてもよい。
【0043】
また、トナー粒子を作成する際に、ワックスを、着色剤−ポリエステルポリマーと合わせてもよい。ワックスは、ワックス分散物の形態で与えられてもよく、1種類のワックスを含んでいてもよく、2種類以上の異なるワックスの混合物を含んでいてもよい。例えば、特定のトナーの性質(例えば、トナー粒子の形状、トナー粒子表面のワックスの有無およびワックスの量、帯電特性および/または融合特性、光沢、剥離、オフセット性など)を高めるために、トナー配合物に1種類のワックスを加えてもよい。または、トナー組成物に複数の性質を与えるために、ワックスの組み合わせを加えてもよい。
【0044】
ワックスが含まれる場合、ワックスは、例えば、トナー粒子の約1重量%〜約25重量%、いくつかの実施形態では、約5重量%〜約20重量%の量で存在していてもよい。
【0045】
ワックス分散物が用いられる場合、ワックス分散物は、乳化凝集トナー組成物で従来から用いられる任意の種々のワックスを含んでいてもよい。選択可能なワックスとしては、例えば、GPCによって測定した場合、Mが500g/mol〜約20,000g/mol、例えば、約1,000g/mol〜約10,000g/mol、または約1,500g/mol〜約5,000g/molのワックスが挙げられる。
【0046】
ワックスは、水中に固体を含む1つ以上の水系エマルションまたは分散物の形態でトナーに組み込まれてもよく、固体ワックスの粒径は、約100nm〜約300nmであってもよい。
【0047】
トナー粒子は、当業者の技術常識の範囲内にある任意の方法によって調製されてもよい。トナー組成物およびトナー粒子は、粒径の小さな樹脂粒子が適切なトナー粒径になるまで凝集させ、次いで、最終的なトナー粒子の形状および形態を得るまで融着させる、凝集融着プロセスによって調製することができる。
【0048】
トナー組成物は、任意要素の着色剤と、任意要素のワックスと、任意の他の望ましい添加剤または必要な添加剤と、上述の着色剤−ポリエステルポリマーを含むエマルションとの混合物を凝集させ(場合により、上述のような界面活性剤中で)、次いで、この凝集した混合物を融着させるような乳化凝集プロセスによって調製されてもよい。混合物は、任意要素の着色剤と、任意要素のワックスまたは他の物質とを(場合により、界面活性剤を含む分散物の状態であってもよい)、着色剤−ポリエステルエマルション(樹脂を含む2つ以上のエマルションの混合物であってもよい)に加えることによって調製してもよい。得られた混合物のpHを、例えば、酢酸、硝酸などのような酸によって調節してもよい。混合物のpHを、約2〜約5に調節してもよい。さらに、この混合物を均質化してもよい。混合物を均質化する場合、毎分約600回転〜約6,000回転の速度で混合することによって均質化してもよい。均質化は、任意の適切な手段によって、例えば、IKA ULTRA TURRAX T50プローブホモジナイザーによって行われてもよい。
【0049】
上の混合物を調製した後、凝集剤を混合物に加えてもよい。任意の適切な凝集剤を利用してトナーを作成してもよい。
【0050】
凝集剤を、トナーを作成するために利用される混合物に、例えば、混合物中の樹脂の約0重量%〜約10重量%、いくつかの実施形態では、約0.2重量%〜約8重量%、他の実施形態では、約0.5重量%〜約5重量%の量で加えてもよいが、凝集剤の量は、これらの範囲から外れていてもよい。これにより、凝集させるのに十分な量が得られるはずである。
【0051】
所定の望ましい粒径が得られるまで、粒子を凝集させてもよい。所定の望ましい粒径とは、作成する前に決定されているような、得られるべき望ましい粒径を指し、そのような粒径に達するまで、成長プロセス中に粒径が監視される。成長プロセス中にサンプルを採取し、例えば、平均粒径ならばCoulter Counterを用いて分析してもよい。したがって、凝集した粒子を得るために、撹拌を維持しつつ、高温に維持することによって、または、例えば、約40℃〜約100℃の温度までゆっくりと上げ、混合物をこの温度に約0.5時間〜約6時間、いくつかの実施形態では約1〜約5時間維持することによって、凝集を進めてもよい。所定の望ましい粒径に到達したら、成長プロセスを止める。
【0052】
凝集剤を加えた後に、粒子の成長および成形は、任意の適切な条件下で行われてもよい。例えば、成長および成形は、凝集が融着とは別に起こるような条件で行われてもよい。別個の凝集段階および融着段階では、凝集プロセスは、剪断条件下、高温、例えば、約40℃〜約90℃、いくつかの実施形態では約45℃〜約80℃で行われてもよく、この温度は、上述のような着色剤−ポリエステルのガラス転移点よりも低い温度であってもよい。
【0053】
トナー粒子の望ましい最終粒径に到達したら、塩基を用いて混合物のpHを約3〜約10、いくつかの実施形態では、約5〜約9の値になるまで調節してもよい。pHを調節することによって、トナーの成長を凍結させ(すなわち、止め)てもよい。トナーの成長を止めるために利用される塩基としては、任意の適切な塩基を挙げることができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、これらの組み合わせなどのようなアルカリ金属水酸化物が挙げられる。いくつかの実施形態では、pHを上述の望ましい値に調節しやすくするために、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を加えてもよい。
【0054】
凝集した後で融着する前に、樹脂コーティングを凝集粒子に塗布し、粒子の上にシェルを作成してもよい。コア樹脂を作成するのに適した、上述の着色剤−ポリエステルポリマーを含む任意の樹脂を、シェルとして利用してもよい。
【0055】
シェルを作成するために利用可能な樹脂としては、限定されないが、例えば、転相乳化プロセスによって作られてもよい、結晶性樹脂ラテックス、および/またはアモルファス樹脂が挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示にしたがってシェルを作成するために利用可能なアモルファス樹脂としては、場合により、結晶性ポリエステル樹脂ラテックスと組み合わせた、アモルファスポリエステルが挙げられる。複数の樹脂を任意の適切な量で利用してもよい。第1の樹脂は、シェル樹脂合計の約20重量%〜約100重量%、いくつかの実施形態では、約30重量%〜約90重量%の量で存在していてもよい。したがって、第2の樹脂は、シェル樹脂中に、シェル樹脂合計の約0重量%〜約80重量%、例えば、約10重量%〜約70重量%の量で存在していてもよい。
【0056】
シェルを作成するために利用される樹脂は、上述の任意の界面活性剤を含むエマルションの状態であってもよい。樹脂を含むエマルションを、シェルが凝集粒子の上に形成されるように、上述の凝集粒子と合わせてもよい。
【0057】
凝集粒子の上にシェルを形成することは、約30℃〜約80℃、いくつかの実施形態では約35℃〜約70℃の温度まで加熱しながら行ってもよい。シェルの形成は、約5分間〜約10時間、例えば約10分間〜約5時間行われてもよい。
【0058】
望ましい粒径になるまで凝集させ、任意要素の任意のシェルを塗布した後、次いで、粒子を望ましい最終形状になるまで融着させてもよく、融着は、混合物を、約45℃〜約100℃、例えば約55℃〜約99℃の温度(この温度は、トナー粒子を作成するために利用される樹脂のガラス転移点であってもよく、ガラス転移点より高い温度であってもよい)まで加熱し、および/または撹拌を例えば約100rpm〜約1000rpm、例えば約200rpm〜約800rpmまで遅くすることによって達成されてもよい。融着は、約0.01〜約9時間、いくつかの実施形態では、約0.1〜約4時間かけて行ってもよい。
【0059】
凝集および/または融着の後、混合物を、室温(例えば、約20℃〜約25℃)まで冷却してもよい。冷却は、所望な場合、すばやく行ってもよいし、ゆっくり行ってもよい。適切な冷却方法としては、反応器の周囲にあるジャケットに冷水を導入することが挙げられる。冷却した後、トナー粒子を、場合により、水で洗浄し、次いで乾燥させてもよい。乾燥は、任意の適切な乾燥方法(例えば、凍結乾燥)によって行われてもよい。
【0060】
また、トナー粒子は、他の任意要素の添加剤も含んでいてもよい。例えば、トナーは、正電荷または負電荷の制御剤を、例えば、トナーの約0.1〜約10重量%、いくつかの実施形態では、約1〜約3重量%の量で含んでいてもよい。
【0061】
また、流動補助添加剤を含む配合の後に、トナー粒子に外部添加剤粒子をブレンドしてもよく、この場合、添加剤は、トナー粒子表面に存在していてもよい。
【0062】
一般的に、トナーの流動性、摩擦帯電性の向上、混合制御、現像および転写の安定性向上、トナーブロッキング温度を高くするために、トナー表面にシリカを塗布してもよい。相対湿度(RH)安定性、摩擦帯電性の制御、現像および転写の安定性向上のために、TiOを塗布してもよい。ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、および/またはステアリン酸マグネシウムは、場合により、潤滑特性、現像剤の導電性、摩擦帯電性の向上、トナーとキャリア粒子との接触数を増やすことによってトナーの電荷を多くし、電荷の安定性を高めるために、外部添加剤として用いられてもよい。
【0063】
これらの外部添加剤は、それぞれ、トナーの約0.1重量%〜約5重量%、いくつかの実施形態では、約0.25重量%〜約3重量%の量で存在していてもよいが、添加剤の量は、これらの範囲から外れていてもよい。トナーは、約0.1重量%〜約5重量%のチタニア、約0.1重量%〜約8重量%のシリカ、約0.1重量%〜約4重量%のステアリン酸亜鉛を含んでいてもよい。
【0064】
本開示のトナーは、以下の特性を有していてもよい。
【0065】
(1)体積平均直径(「体積平均粒子径」とも呼ばれる)が、約3〜約25μm、または約4〜約15μm、または約4.5〜約10μm。
【0066】
(2)数平均幾何標準偏差(GSDn)および/または体積平均幾何標準偏差(GSDv)が、約1.05〜約1.55、例えば、約1.1〜約1.4、約1.15〜約1.35、または約1.20〜約1.30。
【0067】
(3)真円度が、約0.93〜約1、例えば、約0.94〜約0.99、約0.95〜約0.98、または約0.96〜約0.97。
【0068】
(4)粗粒子の含有量が、約0.01%〜約10%、例えば、約0.1%〜約5%、約0.3%〜約3%、または約0.5%〜約2%。
【0069】
体積平均粒子径D50v、GSDv、GSDnは、Beckman Coulter Multisizer 3のような測定装置を用い、製造業者の指示にしたがって操作して測定されてもよい。GSDvは、体積(粗粒子の量)による、上側の幾何標準偏差(GSDv)を指す(D84/D50)。GSDnは、数(微粒子の量)による、幾何標準偏差(GSDn)を指す(D50/D16)。全トナー粒子の累積パーセントが50%になる粒径は、体積D50と定義され、累積パーセントが84%になる粒径は、体積D84と定義される。これらの上述の体積平均粒径分布指数GSDvは、累積分布でD50およびD84を用いることによってあらわされてもよく、ここで、体積平均粒径分布指数GSDvは、(体積D84/体積D50)としてあらわされる。これらの上述の数平均粒径分布指数GSDnは、累積分布でD50およびD16を用いることによってあらわされてもよく、ここで、数平均粒径分布指数GSDnは、(数D50/数D16)としてあらわされる。GSD値が1.0に近くなるほど、粒子が存在する分散物の粒径が小さくなる。トナー粒子の上述のGSD値は、トナー粒子が、狭い粒径分布を有するように製造されていることを示している。トナー粒子の真円度は、任意の適切な技術および装置によって決定されてもよい。真円度は、粒子が完全な球体にどれほど近いかの指標である。真円度1.000は、完全な円形の形状を有する粒子を特定する。体積平均真円度は、Flow Particle Image Analysis(FPIA)、例えば、Sysmex(登録商標)Flow Particle Image Analyzer(Sysmex Corporationから市販)のような測定装置を、製造業者の指示にしたがって操作することによって測定してもよい。
【0070】
着色剤ポリエステルポリマーおよび/または着色剤非含有ポリエステルポリマー混合物の上述のラテックスエマルションを用い、粉末コーティング組成物を作成してもよい。粉末コーティング材料は、一般的に、粉末コーティング粒子が、噴霧銃によって静電的に帯電され、基材(通常は金属)が接地される静電噴霧プロセスによって塗布される固体組成物である。粉末コーティング粒子上の電荷は、通常は、粒子とイオン化した空気との相互作用によって塗布され(コロナ帯電)、または、摩擦によって塗布される(摩擦静電または「摩擦」帯電)。帯電した粒子は、基材に向かって空気中を移動し、最終的な堆積は、特に、噴霧銃と作業片との間に作られる電気力線および帯電した粉末雲から生じる空間電場によって影響を受ける。
【0071】
粉末コーティング組成物は、上述の着色剤−ポリエステルポリマーと、1つ以上の着色剤(例えば、顔料)と、1つ以上の添加剤(例えば、マグネタイト、フィラー、フロック形成剤、硬化剤、レベリング剤、電荷添加剤、流動性促進剤、流動性制御剤、可塑剤、安定化剤、気体発生防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤、光安定化剤、ワックス)とを含んでいてもよい。
【0072】
熱可塑性樹脂は、ある種の粉末コーティング用途にも適しており、一般的に、高い分子量を有し、コーティング中に溶融させ、流動させるのに、比較的高い温度を必要とする。しかし、分子量および溶融粘度は、コーティング手順の間、一定に維持され、ポリマーを簡単に修復し、接触させるために簡単に再溶融させることができる。また、硬化性樹脂を用いてもよい。
【0073】
粉末コーティング組成物は、任意の適切な熱硬化性ポリマー樹脂を用いて調製される。
【0074】
商業的に得ることができる、熱によって架橋可能な樹脂(例えば、カルボキシル官能基化されているか、ヒドロキシル官能基化されているポリエステル樹脂およびアクリル樹脂、エポキシ樹脂およびエポキシ官能基化されたアクリル樹脂、保護されたイソシアネート、ヒドロキシル官能基化されたポリエステルまたはアクリル、ポリカルボン酸架橋剤、大環状エステル、カーボネート、アミドまたはイミド、多官能エポキシ樹脂が用いられる。市販の多官能アミン触媒を用いてもよい。
【0075】
粉末コーティング組成物は、ポリエポキシド硬化剤とともに用いられる、カルボキシ官能基化ポリエステル膜形成樹脂を含む固体ポリマーバインダーに由来していてもよい。
【0076】
また、エポキシ樹脂を、ジシアンジアミドのようなアミン官能性硬化剤とともに用いてもよい。エポキシ樹脂のためのアミン官能性硬化剤の代わりに、フェノール系材料、例えば、エピクロロヒドリンと、過剰量のビスフェノールAとの反応によって作られる材料(すなわち、ビスフェノールAとエポキシ樹脂とを付加させることによって作られるポリフェノール)を用いてもよい。官能性アクリル樹脂、例えば、カルボキシ官能性樹脂、ヒドロキシ官能性樹脂またはエポキシ官能性樹脂を、適切な硬化剤とともに用いてもよい。バインダーの混合物を用いてもよく、例えば、カルボキシ官能性ポリエステルを、カルボキシ官能性アクリル樹脂と、両ポリマーを硬化させるのに役立つ硬化剤、例えば、ビス−(β−ヒドロキシアルキルアミド)とともに用いてもよい。さらなる可能性として、混合したバインダー系の場合、カルボキシ官能性アクリル樹脂、ヒドロキシ官能性アクリル樹脂、またはエポキシ官能性アクリル樹脂を、エポキシ樹脂またはポリエステル樹脂(カルボキシ官能性またはヒドロキシ官能性)とともに用いてもよい。共に硬化させるように、このような樹脂の組み合わせを選択してもよい(例えば、エポキシ樹脂と共に硬化させるカルボキシ官能性アクリル樹脂、またはグリシジル官能性アクリル樹脂と共に硬化させるカルボキシ官能性ポリエステル)。例えば、このような混合したバインダー系は、1種類の硬化剤を用いて硬化されるように配合される(例えば、ヒドロキシ官能性アクリル樹脂とヒドロキシ官能性ポリエステルを硬化させるための、保護されたイソシアネートの使用)。別の配合物は、2種類のポリマーバインダーの混合物(例えば、アミンで硬化したエポキシ樹脂を、保護したイソシアネートで硬化したヒドロキシ官能性アクリル樹脂と組み合わせて使用)のそれぞれのバインダーについて、異なる硬化剤を使用することを含む。
【0077】
樹脂のラテックスエマルションは、水中で少なくとも1つの樹脂のラテックスを作成することによって作られてもよい。樹脂は、塊重合または重縮合プロセスによって調製されてもよく、この樹脂は、例えば、上述の米国特許第5,593,807号および第5,945,245号に開示されるように、アルカリスルホン酸化モノマーを組み込むことによって親水性にされ、選択される樹脂は、好ましくは、樹脂を放散性にする官能基を含み、すなわち、特に、樹脂のガラス転移温度Tgよりも高い温度で、有機溶媒を用いることなく、水中で自然にエマルションを形成する。選択される樹脂は、水と混和性の有機溶媒を使用した後、水中での乳化プロセス、次いで、水から溶媒を除去して水系樹脂分散物を作成することを必要とする場合がある。懸濁した樹脂粒子のラテックスは、NiCOMP(登録商標)粒径測定器のような任意の適切なデバイスによって測定した場合、平均粒径が体積平均径で約5〜約500nm、もっと好ましくは、約10〜約250nmの粒子で構成されていてもよい。粒子は、好ましくは、例えば、ラテックスエマルションの約5〜約40重量%含まれていてもよい。
【0078】
以下に記載の制御された低温の酵素による重合を経て合成された着色剤−ポリエステルポリマーを用い、乳化重合トナー組成物を製造した。転相プロセスを用い、着色剤−ポリエステルの一部を結晶性樹脂とともに乳化させ、着色剤−ポリエステルポリマーの安定なエマルションを得た。次いで、このエマルションを、標準的な結晶性エマルションと置き換えて、乳化凝集プロセスで使用した。製造したトナー粒子は、仕様の範囲内であり、蛍光色であった。
【0079】
酵素による重合反応の具体例を反応図IおよびIIに示す。着色剤は、酵素による重合方法によってエステルモノマーに結合し、着色剤−ポリエステルポリマーを生成してもよい。使用する酵素は、Novozyne 435(Novo Nordiskから入手可能)であってもよい。(反応図I
【化2】
【化3】
【0080】
また、エステルモノマーを、水(場合により、反応系中に存在する)によって開始する、酵素による重合方法によって重合させ、ポリエステルを作成してもよい。(反応図II
【化4】
【化5】
【0081】
結晶性ポリエステル樹脂(ポリ(ノニレン−デカノエート)、78グラム)、2010年9月10日出願の米国特許出願第12/879,587号で製造された蛍光樹脂(22グラム)、メチルエチルケトン(60グラム)、イソプロパノール(10グラム)を測り取り、1リットルのガラス製Buchi反応器に入れた。アンカーブレードインペラを用いて混合物を約100rpmで混合し、約76℃まで加熱し、溶媒混合物に樹脂を溶解させた。ホットプレート上で、脱イオン水(DIW)(200グラム)を96℃まで加熱した。反応器の温度が71.5℃に達したら、樹脂が溶融/溶解し始めた。樹脂混合物が溶解したら、反応器の温度を72℃に設定した。27分間経過した後、使い捨てピペットを用い、2分間かけて10% NH溶液(5.4グラム)を混合物に滴下した。混合物を10分間撹拌し続けた。あらかじめ加熱しておいたDIW(200グラム)を流速3.3g/分で60分間かけて反応器に圧送した。得られたエマルションは、Nanotrac粒径分析器を用いて測定した場合、粒径が193nmであった。この混合物をガラス製の皿に注ぎ、この皿を換気フード内に置き、磁気攪拌棒で撹拌して溶媒を蒸発させた。得られた最終的なラテックスは、固体が29.6%、残存MEK/IPAが5/30ppm、pHが7.68であった。
【0082】
2Lベンチスケール(理論的な乾燥トナー165g)で、ポリエステルEAトナーを調製した。2種類のアモルファスエマルション(37重量%のポリ(プロポキシル化ビスフェノール−A コ−フマレート コ−テレフタル酸 コ−無水ドデセニルコハク酸127グラム)、132グラムの35重量%ポリ(プロポキシル化ビスフェノール−A コ−エトキシル化ビスフェノール−A コ−テレフタル酸 コ−無水ドデセニルコハク酸))、ポリエステル−蛍光染料を含む結晶性エマルション54グラム(固体29.6%、ポリエステル−蛍光染料の含有量が28.2%、粒径193nm)、4.4グラムの界面活性剤(Dowfax)、51グラムのワックス(IGI)を混合し、0.3M硝酸を用い、pHを4.2に調節した。次いで、凝固剤である2.96グラムの硫酸アルミニウムサルフェートを36.5グラムのDI水と混合し、これにスラリーを加えつつ、3000〜4000rpmで合計5分間かけて均質化した。次いで、このスラリーを2LのBuchiに移し、混合を460rpmに設定した。次いで、スラリーをバッチ温度42℃で凝集させた。凝集させている間、コアと同じアモルファスエマルションを含むシェルラテックス131グラムを加え、次いで、このバッチを保持し、目的の粒径を得た。目的の粒径になったら、水酸化ナトリウム(NaOH)および6.35グラムのキレート化剤(Versene 100)を用いてpHを調節することによって、凝集工程を凍結させた。反応器の温度(Tr)を85℃まで上げていき、プロセスを進め、所望の温度で、pH5.7の酢酸ナトリウム/酢酸バッファを用い、pHを7に調節すると、粒子が融着し始める。約1時間後、粒子の真円度が>0.965になり、クエンチして冷却した。最終的なトナー粒子の粒径、GSDvおよびGSDnは、それぞれ5.83/1.18/1.19であった。微粒子(1.3〜3.2ミクロン)、粗粒子(>16ミクロン)、真円度は、0.41%、0.85%、0.982であった。