特許第5721672号(P5721672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5721672集電体、それを利用した電気化学電池用電極及び電気化学電池
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  • 特許5721672-集電体、それを利用した電気化学電池用電極及び電気化学電池 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721672
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】集電体、それを利用した電気化学電池用電極及び電気化学電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20150430BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20150430BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   H01M4/66 A
   H01M4/13
   H01M4/64 A
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-180055(P2012-180055)
(22)【出願日】2012年8月15日
(65)【公開番号】特開2013-140770(P2013-140770A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2012年8月15日
【審判番号】不服2014-7993(P2014-7993/J1)
【審判請求日】2014年4月30日
(31)【優先権主張番号】201110447347.7
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】何 向明
(72)【発明者】
【氏名】王 莉
(72)【発明者】
【氏名】李 建軍
(72)【発明者】
【氏名】郭 建偉
(72)【発明者】
【氏名】任 建国
【合議体】
【審判長】 池渕 立
【審判官】 河本 充雄
【審判官】 松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−536254(JP,A)
【文献】 特開平10−106585(JP,A)
【文献】 特開2002−352796(JP,A)
【文献】 特開2012−216515(JP,A)
【文献】 特開2013−73846(JP,A)
【文献】 特開2013−16452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔と、グラフェン構造体と、を含む集電体であって、
前記グラフェン構造体は連続した層状構造体であり、
前記金属箔の少なくとも一つの表面は、前記グラフェン構造体で被覆されており、
前記グラフェン構造体は、グラフェン粉末を揮発性の有機溶剤又は水中に分散して、グラフェン分散液を形成し、ディップ・コーティング法によって、前記金属箔を前記グラフェン分散液に完全に浸漬し、前記浸漬された金属箔を前記溶液から持ち上げ、前記グラフェン分散液を前記金属箔の表面に被覆した後、前記揮発性の有機溶剤又は水を除去することで形成され、
前記金属箔を前記溶液から持ち上げる速度は、1cm/分〜20cm/分であることを特徴とする集電体。
【請求項2】
少なくとも一つの集電体と、電極材料層と、を含む電気化学電池用電極であって、
前記集電体は、金属箔と、グラフェン構造体と、を含み、
前記グラフェン構造体は連続した層状構造体であり、
前記金属箔の少なくとも一つの表面は、前記グラフェン構造体で被覆されており、
前記グラフェン構造体は、グラフェン粉末を揮発性の有機溶剤又は水中に分散して、グラフェン分散液を形成し、ディップ・コーティング法によって、前記金属箔を前記グラフェン分散液に完全に浸漬し、前記浸漬された金属箔を前記溶液から持ち上げ、前記グラフェン分散液を前記金属箔の表面に被覆した後、前記揮発性の有機溶剤又は水を除去することで形成され、
前記金属箔を前記溶液から持ち上げる速度は、1cm/分〜20cm/分であり、
前記グラフェン構造体は、前記電極材料層に隣接することを特徴とする電気化学電池用電極。
【請求項3】
少なくとも一つの電極を含む電気化学電池であって、
前記電極は、少なくとも一つの集電体と、電極材料層と、を含み、
前記集電体は、金属箔と、グラフェン構造体と、を含み、
前記グラフェン構造体は連続した層状構造体であり、
前記金属箔の少なくとも一つの表面は、前記グラフェン構造体で被覆されており、
前記グラフェン構造体は、グラフェン粉末を揮発性の有機溶剤又は水中に分散して、グラフェン分散液を形成し、ディップ・コーティング法によって、前記金属箔を前記グラフェン分散液に完全に浸漬し、前記浸漬された金属箔を前記溶液から持ち上げ、前記グラフェン分散液を前記金属箔の表面に被覆した後、前記揮発性の有機溶剤又は水を除去することで形成され、
前記金属箔を前記溶液から持ち上げる速度は、1cm/分〜20cm/分であり、
前記グラフェン構造体は、前記電極材料層に隣接することを特徴とする電気化学電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電体、それを利用した電気化学電池用電極及び電気化学電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集電体は、電気化学電池の主な部品である。一般に、集電体は、電子移動チャネルとして、電気化学電池の電気化学反応において生成された電子を、外部電気回路に伝導して、電流を形成する。つまり、集電体の性能は、電気化学電池の性能に密接に関係する。
【0003】
従来の集電体は、アルミニウム箔又は銅箔などの導電性金属箔からなる。しかし、これらの金属箔は、容易に酸化し、且つ該金属箔の表面に不活性化膜を形成する。又は、電解質によって腐食されて、該金属箔の表面に絶縁層を形成する。前記不活性化膜又は絶縁層は、集電体と該集電体の表面に被覆された電極活性材料との接触抵抗を増加させるため、前記電気化学電池の容量及びエネルギー効率を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記課題を解決するために、集電体、それを利用した電気化学電池用電極及び電気化学電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の集電体は、金属箔と、グラフェン構造体と、を含む。前記金属片は、少なくとも一つの表面を有する。前記金属箔の少なくとも一つの表面は、前記グラフェン構造体で被覆される。
【0006】
本発明の電気化学電池用電極は、少なくとも一つの集電体と、電極材料層と、を含む。
前記集電体は、金属箔と、グラフェン構造体と、を含む。前記金属箔は、少なくとも一つの表面を有する。前記金属箔の少なくとも一つの表面は、前記グラフェン構造体で被覆される。前記グラフェン構造体は、前記電極材料層に隣接する。
【0007】
本発明の電気化学電池は、少なくとも一つの電極を含む。前記電極は、少なくとも一つの集電体と、電極材料層と、を含む。前記集電体は、金属箔と、グラフェン構造体と、を含む。前記金属箔は、少なくとも一つの表面を有する。前記金属箔の少なくとも一つの表面は、前記グラフェン構造体で被覆される。前記グラフェン構造体は、前記電極材料層に隣接する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の集電体は、少なくとも一つの表面に前記グラフェン構造体が形成されており、電解液の腐食性に対して保護効果を有するので、前記集電体及びそれを利用した前記電気化学電池を保護することができる。更に、グラフェン構造体の導電性は、金属箔の導電性より大きいので、該グラフェン構造体は、直接前記電極材料層と良く結合することができ、前記集電体と、該集電体の表面に被覆された電極材料層との接触抵抗を低下させる。従って、本発明の集電体を利用した電気化学電池の安全性及びサイクル特性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係る電気化学電池用電極の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0011】
(実施例)
図1を参照すると、本実施例は、電気化学電池用電極10を提供する。前記電気化学電池用電極10は、集電体12及び該集電体12の少なくとも一つの表面に被覆された電極材料層14を含む。
【0012】
前記集電体12は、更に、金属箔122及び該金属箔122の少なくとも一つの表面に被覆されたグラフェン構造体124を含む。前記電極材料層14は、前記グラフェン構造体124の前記金属箔122に隣接する表面とは反対の表面に設置される。
【0013】
前記金属箔122は、従来の電気化学電池の正極集電体又は負極集電体であることができる。前記金属箔122は、連続した層状構造体であることもでき、その厚さは、1μm〜200μmである。
【0014】
前記グラフェン構造体124は、連続した層状構造体であり、前記金属箔122の少なくとも一つの表面を被覆する。又は、前記グラフェン構造体124は、前記表面及び該表面と反対側の表面を全て被覆することもできる。
【0015】
更に、前記グラフィン構造体124は、少なくとも一枚のグラフェンシートからなる。前記グラフェン構造体124は、複数のグラフェンシートからなり、該複数のグラフェンシートは、並列して接続されて、大きな面積を有するグラフェン構造体124を形成することができる。又は、前記複数のグラフェンシートが重なり合って積層され、多層のグラフェン構造体124を形成することができる。単一の前記グラフェン構造体124は、1枚〜10枚のグラフェンシートからなり、その厚さは0.8nm〜5μmである。本実施例において、前記グラフェン構造体124は、1枚のグラフェンシートからなり、その厚さは0.8nmである。前記グラフェンシートは、炭素の同素体からなり、1原子の厚さのsp結合炭素原子のシートであり、炭素原子とその結合からできた蜂の巣のような六角形格子構造をとっている。また、前記グラフェンシートは、優れた導電性を有し、前記グラフェンシートにおける電子移動度と光速との比は、1:300である。且つ前記グラフェンシートは、大きな比表面積を有するので、前記金属箔122と良く結合することができる。これにより、前記金属箔122が被覆された前記グラフェン構造体124は、前記金属箔122と前記電極材料層14との接触抵抗を低下できるので、前記集電体12の導電性が向上する。
【0016】
前記グラフェン構造体124を、前記金属箔122の表面に被覆する方法は、グラフェン粉末を提供し、該グラフェン粉末を揮発性の有機溶剤又は水中に分散して、グラフェン分散液を形成する第一ステップと、前記グラフェン分散液を前記金属箔122の少なくとも一つの表面に被覆し、コーティング層を形成する第二ステップと、前記揮発性の有機溶剤又は水を除去して、グラフェン構造体124を形成する第三ステップと、を含む。
【0017】
前記第一ステップにおいて、前記グラフェン粉末は、機械的剥離法、酸化還元法、化学気相成長法などの方法によって製造する。前記揮発性の有機溶剤は、エタノール、アセトン、エーテルの少なくとも一種である。前記グラフェン粉末を、均一に前記有機溶剤に分散させるために、磁気撹拌、機械撹拌、又は超音波分散などの撹拌方法を採用することによって、該グラフェン分散液を撹拌する。前記グラフェン分散液の濃度は、0.05wt%〜0.5wt%である。前記グラフェン分散液の濃度が高いほど、生成した前記グラフェン構造体124の厚さは厚い。
【0018】
前記第二ステップにおいて、ナイフコーティング法、ブラッシング法、スプレー塗装法、静電塗装法、ロールコーティング法、シルクスクリーン印刷法及びディップ・コーティング法のいずれか一種の方法によって、前記グラフェン分散液を前記金属箔122の少なくとも一つの表面に被覆する。本実施例においては、前記ディップ・コーティング法を採用する。該ディップ・コーティング法は、前記金属箔122を前記グラフェン分散液に完全に浸漬するステップS1と、前記浸漬された金属箔122を前記溶液から持ち上げるステップS2と、を含む。
【0019】
前記ステップS1において、前記金属箔122を前記グラフェン分散液に30秒〜5分間浸漬する。本実施例において、前記金属箔122は、前記グラフェン分散液に2分間浸漬する。
【0020】
前記ステップS2において、前記金属箔122を前記溶液から持ち上げる速度は、1cm/分〜20cm/分である。本実施例において、前記速度は、10cm/分である。前記金属箔122を前記溶液から持ち上げる工程において、前記グラフェン分散液の接着力及び重力の作用によって、持ち上げられた前記金属箔122の表面には、厚さが均一なグラフェン構造体124が形成されている。
【0021】
前記グラフェン構造体124の厚さ及び均一性を調整するために、前記ステップS1及び前記ステップS2を数回繰り返すことができる。
【0022】
前記第三ステップにおいて、室温下乾燥又は加熱乾燥の方法によって、前記揮発性の有機溶剤又は水を除去する。前記揮発性の有機溶剤又は水の表面張力及び前記グラフェン構造体124の大きな比表面エネルギーの作用によって、前記連続したグラフェン構造体124は、密接に前記金属箔122の表面に接着することができる。
【0023】
前記電極材料層14は、電極活物質と、導電剤と、接着剤と、を含む。前記電極活物質は、正極活物質又は負極活物質である。前記正極活物質は、スピネル型リチウムマンガン酸化物、層状リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムイオン燐酸塩、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物及びそれらの混合物のいずれかの一種である。前記負極活物質は、チタン酸リチウム、グラファイト、アセチレンブラック、有機熱分解炭素、メソカーボンマイクロビーズ及びそれらの混合物のいずれかの一種である。前記導電剤は、グラファイト、アセチレンブラック、またはカーボンナノチューブの少なくとも一種である。前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレンまたはスチレン−ブタジエンゴムの少なくも一種である。
【0024】
本実施例において、前記電極材料層14は、前記グラフェン構造体124の、前記金属箔122に隣接する表面とは反対の一つの表面に設置される。或いは、前記電極材料層14は、前記グラフェン構造体124の、前記金属箔122に隣接する表面とは反対の二つの対向する表面に設置することもできる。
【0025】
前記電気化学電池用電極10は、電気化学電池に利用される場合、前記グラフェン構造体124が、電解液の腐食性に対して保護効果を有するので、前記金属箔122を保護することができる。更に、グラフェン構造体の導電性は、金属箔の導電性より大きいので、該グラフェン構造体は、直接前記電極材料層と良く結合することができ、前記集電体と、該集電体の表面に被覆された電極材料層との接触抵抗を低下させる。従って、本発明の集電体を利用した電気化学電池の安全性及びサイクル特性も向上する。
【符号の説明】
【0026】
10 電気化学電池用電極
12 集電体
122 金属箔
124 グラフェン構造体
14 電極材料層
図1