(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る水栓装置2の斜視図であり、
図2は水栓装置2の側面図である。水栓装置2は、流し台(図示されず)に取り付けられている。
図1及び
図2では、視認されない部分、すなわち、流し台の内部にある部分の記載は省略されている。なお、水栓装置2の設置場所として、流し台の他、洗面台及び浴室が例示される。
【0020】
図示しないが、水栓装置2を有する水栓器具は、湯導入管及び水導入管を有する。湯導入管は、例えば、給湯器から延びる配管に接続される。水導入管は、例えば、給湯器を経ることなく、上水道の配管に接続される。
【0021】
水栓装置2は、本体部4、レバーハンドル6及び吐出部8を有する。水栓装置2は、いわゆるシングルレバー式水栓である。レバーハンドル6の左右回動により吐水の温度が調節されうる。レバーハンドル6の上下回動により吐水量が調節されうる。本体部4の内部には、温度調節及び吐水量の調節を可能とする弁機構が内蔵されている。
【0022】
水栓装置2では、吐出部8が本体部4に固定されているが、他の形態も可能である。例えば、吐出部8が本体部4に対して着脱可能なシャワーヘッドであってもよい。
【0023】
図示されないが、上記湯導入管には、加熱された湯が導入される。加熱は、給湯器によりなされる。上記水導入管には、加熱されていない水が導入される。上記弁機構により、湯と水との混合比率が調整される。この混合比率により、吐水の温度調節が達成される。なお以下では、加熱された湯、加熱されていない水及びこれらの混合液体が、単に「水」とも称される。
【0024】
吐出部8は、導水部10、切替部12、操作部14、水形調整部16及び吐出口18を有する。本実施形態では、操作部14は、押しボタンである。以下では、操作部14が、操作ボタンとも称される。
【0025】
吐出部8は、2つの流路を有している。これら2つの流路の区別を明確とする観点から、本願では、流路A及び流路Bとの称呼が用いられる。水栓装置2では、流路Aは原水流路であり、流路Bは浄水流路である。ただし、各流路の役割は限定されない。例えば、流路Aは浄水流路であり、流路Bは原水流路であってもよい。また、例えば、2つの流路により温水と冷水とが切り替えられても良い。また、吐出部8は、3つ以上の流路を有していても良い。
【0026】
吐水の区別を明確とする観点から、本願では、吐水Wa及び吐水Wbとの称呼が用いられる。吐水Waは、流路Aからの水である。吐水Wbは、流路Bからの水である。水栓装置2では、吐水Waは原水であり、吐水Wbは浄水である。
【0027】
切替部12は、カバー部材20と切替機構100(
図9から
図13)とを有している。カバー部材20は、切替機構100の少なくとも一部を覆っている。切替機構100の詳細については、後述される。
【0028】
図3は、操作部14及びカバー部材20の斜視図である。操作部14は、押圧面22と側面24とを有する、有底円筒状の部材である。押圧面22は平面である。押圧面22は円形である。押圧面22の形状は限定されない。カバー部材20は、側面24の少なくとも一部を覆っている。なおカバー部材20は、第二のカバー部材21(後述)と組み合わされている。
【0029】
図4に示されるように、操作部14の内部には、互いに離間し且つ平行な一対のリブ15が形成されている。このリブ15の先端が、後述する切替軸部材42に当接しうる。操作部14の底面、すなわち上記押圧面22の内面には、ばね座17が形成されている。このばね座17は、円形の凹所から構成されている。このばね座17には、第二付勢部材としての円錐コイルばね19が着座しうる。
【0030】
図5には、上記円錐コイルばね19が示されている。図示のごとく、この円錐コイルばね19には、円形断面の素線ではなく、矩形断面の板材が用いられている。板材が用いられることにより、バネの中心軸に対して垂直な方向への変位が抑制される。この円錐コイルばね19は、後述する第一コイルばねより、ばね定数及び初期設定ばね荷重が小さい。リブ15及び円錐コイルばね19の働きは後述する。
【0031】
操作部14は、切替ボタンとして機能する。流路を切り替える際には、押圧面22が押圧される。操作部14を押圧するごとに、流路Aと流路Bとの間の切替がなされる。後述するように、上記切替機構100は、オルタネイト動作方式の操作ボタン機構34(
図9から
図13)を有している。この操作ボタン機構34は、押しボタン機構である。この操作ボタン機構34により、操作部14の押しボタン動作が実現されている。押圧操作するごとに、操作ボタン14は第一位置P1(
図11)と第二位置P2(
図12)とに相互移行する。
【0032】
水形調整部16は、吐出される水の形状を変化させうる。水形調整部16は、調節環26を有する。調節環26をもって水形調整部16を回転操作することで、水形が変化しうる。調節環26の操作により、シャワー水形、ストレート水形及びそれらの中間的な水形が選択されうる。環26に代えて、レバー、摘み等を採用してもよい。
【0033】
図3が示すように、カバー部材20は、前方部30を有する。前方部30に、操作部14が挿入されている。前方部30の内部で、操作部14が移動しうる。前方部30は、円筒状である。前方部30の内面形状は、側面24の形状に対応している。側面24と前方部30との隙間は小さいため、水等の侵入が抑制されている。
【0034】
図6は吐出部8の側面図である。
図7は、吐出部8の上面図である。
図8は、吐出部8の横断面図である。
図9は、吐出部8の組立前斜視図である。
図9では、水形調整部16の記載が省略されている。
図10は、
図9の一部が拡大された組立前斜視図である。
【0035】
ここでは、「前方」及び「後方」との文言が用いられる。「前方」及び「後方」は、上記方向Xに沿った方向である。「後方」とは、上記方向Xにおいて奥側に向かう方向である。従って、上記実施形態では、押圧面22に垂直な押圧力は後方に向かっている。前方とは、後方と逆の方向である。
【0036】
図9に示されるように、吐出部8は、カバー部材20、第二のカバー部材21、操作ボタン機構34及びケース35を備えている。
【0037】
操作ボタン機構34は、操作部14、円錐コイルばね19、第一切替部材36、第二切替部材38、切替リング40、切替軸部材42、第一付勢部材としての第一コイルばね44、切替カバー46及びOリング48を有する。切替軸部材42は、プッシュロッド50と、ボタン保持部52とを有する。プッシュロッド50とボタン保持部52とは、一体に形成されている。切替カバー46は、奥側底部56と、スリット58とを有する。切替リング40は、切替カバー46の手前側に固定されている。切替軸部材42は、スリット58にガイドされて所定方向に出退移動する。この移動方向が、本願において方向Xとも称される。第一コイルばね44には、プッシュロッド50が挿通されている。第一コイルばね44は、切替カバー46の奥側底部56と切替軸部材42の基部との間に位置し、これらを互いに離間する方向に付勢している。第一コイルばね44は、切替軸部材42及び操作部14と同軸状に装着されている。第一コイルばね44は、第一付勢部材として、切替軸部材42を介して操作部14を前方に押している。第一コイルばね44は、操作部14の押圧操作に抗するバネ力を発揮する。
【0038】
操作部14には、係合孔14aが形成されている(
図3、
図8)。この係合孔14aに、切替軸部材42のボタン保持部52の係止爪52aが係止している(
図8)。これにより、操作部14と切替軸部材42とが連結されている。また、前述のとおり、操作部14のリブ15が切替軸部材42に当接している。従って、操作部14の押圧操作により、切替軸部材42が操作部14と一体で方向Xに出退移動(往復移動)させられる。操作部14と切替軸部材42との間には、他の部材が介装されてもよい。切替軸部材42は、後述するように、切替機構100の第一バルブ101に連結されている。従って、操作部14が、第一コイルばね44のバネ力に抗して押圧操作されることにより、切替機構100による流路切り替えがなされる。また、第一切替部材36は、操作ボタン14の押圧操作毎に回転し、異なる2つの位置で保持されうる。操作ボタン機構34は、後述するオルタネイト動作を実現する。
【0039】
この操作ボタン機構34には、スラストロック機構が用いられている。このスラストロック機構は、ボタン機構として広く用いられている。スラストロック機構は、例えば、ボールペンにも採用されており、ボールペンの芯の出し入れを可能としている。しかし、本実施形態における操作ボタン機構34は、スラストロック機構の動作に伴う衝撃力が大幅に低減された構成を有している。
【0040】
一般に、いわゆるオルタネイト動作方式の操作ボタン機構として、ハート状カム機構、回転カム機構、ラチェットカム機構等が知られている。操作ボタン機構34として、これらの機構のいずれかが採用されうる。オルタネイト動作方式を可能とするあらゆるボタン機構が採用されうる。
【0041】
操作ボタン機構34のオルタネイト動作は、以下の通りである。第一位置P1にある操作部14を押圧操作すると、操作部14は、後述の第三位置P3を経由して第二位置P2に移動する。押圧力を再度加えない限り、第二位置P2が維持される。次に、第二位置P2にある操作部14を押圧操作すると、操作部14は、第三位置P3を経由して第一位置P1に戻る。押圧力を再度加えない限り、第一位置P1が維持される。押圧操作ごとに、第一位置P1と第二位置P2とが第三位置P3を経由して切り替えられる。第一位置P1と第二位置P2と第三位置P3とは、上記方向Xにおける位置が相違する。
【0042】
本実施形態では、第一位置P1は突出位置とも称される。この突出位置では、操作部14が、第二位置P2よりも手前側(前側)に位置する。本実施形態では、第二位置P2は退行位置とも称される。この退行位置では、操作部14が、第一位置P1よりも後方に位置する。
図1、
図6、
図7及び
図8は、突出位置(前方位置)にある操作部14を示している。一方、
図2は、退行位置(後方位置)にある操作部14を示している。
図11から
図13は、吐出部8の操作ボタン機構34及び切替機構100近傍の断面図である。
図11には、操作部14が第一位置P1にある操作ボタン機構34が示され、
図12には、操作部14が第二位置P2にある操作ボタン機構34が示され、
図13には、操作部14が第三位置P3にある操作ボタン機構34が示されている。
【0043】
図14から
図17には、操作ボタン機構34の一部を構成する部材が示されている。
図14には第二切替部材38が示されている。第二切替部材38は、円筒状の本体39、及び、この本体39の後端(図中の下端)側の外周に形成された押圧突起39aを有している。押圧突起39aは、等間隔を置いて複数個形成され、放射方向に突出している。本実施形態では、押圧突起39aは6個形成されているが、かかる個数には限定されない。本体39の形状も円筒形には限定されない。押圧突起39aの後端(図中の下端)には、第二切替部材38の中心軸方向から横断面の周方向に傾斜した斜面39bが形成されている。この斜面39bは、後述の第一切替部材36の係止突起37bの斜面37cに当接しうる。
【0044】
図15には切替リング40が示されている。この切替リング40は、円筒状の本体41、及び、この本体41の後端(図中の下端)側に形成された深溝41a及び浅溝41bを有している。深溝41aと浅溝41bとは、本体41の周方向に等間隔を置いて交互にそれぞれ同数形成されている。本実施形態では3個ずつ形成されている。深溝41aは、方向X前方に直線状に延びている。浅溝41bは、方向Xから横断面の周方向に傾斜した斜面41dを有している。この本体41の内側には、上記第二切替部材38が挿通される。本体41の内周面には、第二切替部材38の押圧突起39aの軸方向移動を案内する6本の案内溝41cが形成されている。深溝41a及び浅溝41bの個数は、それぞれ3個には限定されないが、上記第二切替部材38の押圧突起39aの1/2にされている。
【0045】
図16には第一切替部材36が示されている。第一切替部材36は、円筒状の本体37、この本体37の前端(図中の上端)に同軸状に突設された凸部37a、及び、本体37の上端近傍の外周に形成された係止突起37bを有している。円筒状の本体37の内側には、切替軸部材42の前端の凸部43が挿入される。係止突起37bは、等間隔を置いて複数個形成され、放射方向に突出している。本実施形態では、係止突起37bは3個形成されているが、かかる個数には限定されない。係止突起37bは、上記切替リング40の深溝41aの個数及び浅溝41bの個数と同数形成される。係止突起37bの前端(図中の上端)には、第一切替部材36の中心軸方向から横断面の周方向に傾斜した斜面37cが形成されている。この斜面37cは、前述の第二切替部材38の押圧突起39aの斜面39bに当接しうる。これら斜面37c、39bが、後述するオルタネイト動作方式におけるカム作用を奏する。すなわち、第一切替部材36と第二切替部材38とが、カム機構を構成している。係止突起37bは、深溝41a及び浅溝41bに挿通されうる。上記オルタネイト動作において、係止突起37bは、深溝41a及び浅溝41bに交互に挿通される。
【0046】
図17は第二切替部材38、切替リング40及び第一切替部材36の組み立て前の状態を示している。第二切替部材38が、切替リング40の本体41の内側に挿通される。このとき、第二切替部材38の押圧突起39aが、切替リング40の案内溝41cに挿通される。第一切替部材36が、切替リング40の本体41の内側に、下方から挿通される。このとき、第一切替部材36の係止突起37bが、切替リング40の深溝41a又は浅溝41bに挿通される。同時に、第一切替部材36の凸部37aが、第二切替部材38の本体39の内側に挿入される。
【0047】
図11から
図13、及び、
図18をも併せて参照しつつ、上記操作ボタン機構34によるオルタネイト動作が説明される。
図18は、第二切替部材38、切替リング40及び第一切替部材36の組み立て後の状態(組立体)を示している。
図18は、オルタネイト動作に伴う、切替リング40に対する第二切替部材38及び第一切替部材36の位置関係を示している。前述したように、切替リング40は、切替カバー46に固定されているので移動しない。
図18において、(a)は組立体の第一位置P1を示し、(b)は第一位置P1から第三位置P3への移動過程を示し、(c)は第三位置P3を示し、(d)は第三位置P3から第二位置P2への移動過程を示し、(e)は第二位置P2を示す。
【0048】
図11及び
図18(a)に示された第一位置P1において、操作部14が、第二位置P2よりも手前側(前側)に位置する。
図11に示されるように、操作部14は、第一コイルばね44のばね力(復元力)により、切替軸部材42およびリブ15を介して方向X前方へ押し出されている。後述するボール保持体101cの前方接続部j1が、ケース35の前端の内面に当接することにより、切替軸部材42の位置決めがなされている(
図11)。前述のとおり、操作部14と切替軸部材42とは連結されている。操作部14と切替軸部材42との方向Xにおける位置関係は殆ど変化しない。この第一位置P1では、第一切替部材36の係止突起37bは、上記押圧突起39aからの作用も受けず、フリーの状態にある(
図18(a))。本実施形態では、リブ15が切替軸部材42に当接している状態において、第二切替部材38の前端と操作部14の押圧面22の内面との間に、方向X沿ってわずかな隙間が生じるように構成されている。本実施形態では、この隙間は約4mmである。もちろん、この寸法には限定されない。従って、第一コイルばね44のばね力は、第一切替部材36及び第二切替部材38には作用していない。この隙間を埋めるように、前述した第二付勢部材としての円錐コイルばね19が圧縮状態で装着されている(
図11)。円錐コイルばね19が、第二切替部材38を介して、第一切替部材36を、切替軸部材42に対して常に押圧している。第二切替部材38と第一切替部材36とは、常時当接し合っている。この円錐コイルばね19は、操作部14、第二切替部材38及び第一切替部材36と同軸状に装着されている。従って、操作部14に対する操作力が、効率的且つ円滑に、第二切替部材38及び第一切替部材36に伝達される。
【0049】
この第一位置P1にある操作部14が方向X後方に向けて押圧操作されると、操作部14のリブ15が、第一コイルばね44のばね力に抗して切替軸部材42を方向X後方に押す。この動作中も、前述のとおり、円錐コイルばね19が、第二切替部材38及び第一切替部材36を方向X後方に押している。第二切替部材38の押圧突起39aは、第一切替部材36の係止突起37bを方向X後方に押している(
図18(b))。押圧突起39aの斜面39bが、係止突起37bの斜面37cを押している。その結果、押圧突起39aが第一切替部材36を回転させようとする。これが上記カム機構の作用である。係止突起37bが深溝41a内にあるときは、第一切替部材36の中心軸回りの回転は、深溝41aの内壁面によって規制される。第一位置P1は第一切替部材36の回転不能領域である。係止突起37bが、深溝41aから押し出された位置が第三位置P3となる(
図13、
図18(c))。第三位置P3では、第一切替部材36の上記回転は規制されない。第三位置P3は第一切替部材36の回転可能領域である。押圧突起39aの斜面39bが係止突起37bの斜面37cを押すので、第一切替部材36は、切替軸部材42からの方向X前方への反力により、中心軸回りに回転させられる(
図18(c))。この回転力は、円錐コイルばね19のばね力によるものである。その結果、係止突起37bは上記浅溝41bの斜面41dに沿って回転移動する(
図18(d))。これも上記カム機構の一作用であるといえる。最終的に、係止突起37bは上記浅溝41bの前端(図中の上端)に係止し、操作部14、第一切替部材36等が第二位置P2に至る(
図12、
図18(e))。係止突起37bが浅溝41b内にあるときは、第一切替部材36の中心軸回りの回転は、浅溝41bの内壁面によって規制される。第二位置P2は第一切替部材36の回転不能領域である。
【0050】
前述したように、上記円錐コイルばね19は、上記第一コイルばね44より、初期設定ばね荷重及びばね定数が小さい。カム作用を介して第一切替部材36を回転させるためだけであるから、大きい力は不要である。初期設定ばね荷重とは、各ばね19、44の第一位置P1における撓み時の荷重である。
【0051】
円錐コイルばね19の初期設定ばね荷重は、0.5N以上1.0N以下の範囲で設定されるのが好ましい。この荷重が0.5N未満であると、カムの動作不良を引き起こすおそれがあり、1.0Nを超えると、切替音、衝撃及び振動の抑制効果が低減するおそれがあるからである。かかる観点からすれば、上記初期設定ばね荷重は、0.6N以上0.9N以下であるのがさらに好ましい。また、この荷重が、0.7N以上0.8N以下であるのが特に好ましい。
【0052】
上記第一コイルばね44の初期設定ばね荷重に対する、円錐コイルばね19の初期設定ばね荷重の比は、1/20以上1/10以下が好ましい。上記比が1/20未満であると、内部ユニットの動作不良を引き起こすおそれがあり、1/10を超えると、切替音、衝撃及び振動の抑制効果が低減するおそれがあるからである。かかる観点からすれば、上記初期設定ばね荷重の比は、1/18以上1/15以下であるのがさらに好ましい。また、この比が、1/17以上1/16以下であるのが特に好ましい。
【0053】
円錐コイルばね19のばね定数は、0.15N/mm以上0.6N/mm以下の範囲で設定されるのが好ましい。このばね定数が0.15N/mm未満であると、カムの動作不良を引き起こすおそれがあり、0.6N/mmを超えると、切替音、衝撃及び振動の抑制効果が低減するおそれがあるからである。かかる観点からすれば、上記ばね定数は、0.2N/mm以上、0.8N/mm以下であるのがさらに好ましい。また、このばね定数が、0.3N/mm以上、0.4N/mm以下であるのが特に好ましい。
【0054】
上記第一コイルばね44のばね定数に対する、円錐コイルばね19のばね定数の比は、0.19以上0.76以下が好ましい。この比が0.19未満であると、切替音、衝撃及び振動の抑制効果が低減するおそれがあり、0.76を超えると、内部ユニットの動作不良を引き起こすおそれがあるからである。かかる観点からすれば、上記ばね定数の比は、0.3以上0.6以下であるのがさらに好ましい。また、この比が、0.4以上0.5以下であるのが特に好ましい。
【0055】
前述の通り、操作部14の押圧操作により、操作部14、円錐コイルばね19、切替軸部材42、第一切替部材36及び第二切替部材38は、方向Xに往復移動しようとする。しかし、第一切替部材36及び第二切替部材38が、切替リング40の内側に挿通されるときに、カム作用により、第一切替部材36が中心軸回りに回転させられる。係止突起37bが、深溝41a及び浅溝37bに交互に係止する。これにより、操作部14、第一切替部材36等は、第一位置P1と第二位置P2とに位置変更させられる。
【0056】
第二位置P2から第一位置P1への切り替えも、操作部14が押圧操作されて、第三位置P3を経由することにより可能となる。第一位置P1及び第二位置P2においては、操作部14、第一切替部材36等は安定的にその位置が保持される。第三位置P3においては、操作部14、第一切替部材36等は外力による保持作用がない限り、その位置に保持され得ない。位置の切替の都度、第一切替部材36が、第二切替部材38の押圧突起39aに衝突する。第一切替部材36は、切替リング40の深溝41a及び浅溝41bにも衝突する。このときの衝撃及び振動は第二切替部材38にも伝達される。しかし、上記衝突は全て、ばね定数の小さい円錐コイルばね19のばね力によるものである。従って、上記衝撃、振動及び作動音は小さい。また、この衝撃及び振動は、操作部14に直接には伝わらず、円錐コイルばね19を介して伝わる。このため、操作部14を押圧操作している使用者の手指には、大きな衝撃や振動は加わらない。このように、この操作ボタン機構34(スラストロック機構)は、オルタネイト動作に伴う衝撃、振動及び作動音が大幅に緩和されている。
【0057】
本実施形態では、第二付勢部材として円錐コイルばね19が用いられているが、かかる構成には限定されない。円筒状のコイルばねも採用されうる。しかし、第二付勢部材の横方向変位の抑制の観点から、円錐コイルばねが好ましい。コイルばねに代えて、板バネを採用してもよい。例えば、板バネを、片持ち梁状に、操作部14の底面に取り付けてもよい。そして、この板バネの自由端近傍に、第二切替部材38の本体39の前端が当接するようにしてもよい。第二付勢部材取付の省スペース化の観点からは、板バネが好ましい。コイルばね、板バネ等のばね材質としては、ポリオキシメチレン(POM)、シリコーン等の樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、フッ素ゴム等のゴム、ステンレス鋼等の金属が採用可能である。耐久性の観点からは、POM及びステンレス鋼が好ましい。この中では、省スペース化の観点から、ステンレス鋼が好ましい。
【0058】
第二付勢部材として、ゴム等の柔軟な弾性物質を採用することも可能である。この柔軟な弾性物質からなる第二付勢部材とは、ばねとしての形状を呈しておらず、その物質特有の弾性的復元力を発揮しうる部材である。これを弾性部材と呼ぶ。弾性部材として、例えば、円柱状等の柔軟な弾性物質を、操作部14の底面に取り付けてもよい。そして、この円柱状等の弾性物質の前端面に、第二切替部材38の本体39の前端が当接するようにしてもよい。ゴムとしては、EPDM、NBR、フッ素ゴム等が採用可能である。樹脂としては、シリコーン、エラストマー等が採用可能である。これらの第二付勢部材は、第二切替部材38及び第一切替部材36を方向X後方にわずかに付勢するだけのものである。従って、そのばね定数及び弾性係数は、前述のとおり小さいものでよい。使用者は、異なるばね定数及び弾性係数を有する第二付勢部材に取り替えることができる。使用者は、第二付勢部材の第一位置P1における撓み(初期設定ばね荷重)を変更することができる。これらにより、操作時の衝撃、振動及び作動音を調節することができる。
【0059】
以下に、水の流路が説明される。
図9が示すように、導水部10は、外カバー60と、内筒62とを有する。内筒62は導水口64とジョイント部66とを有する。ジョイント部66はケース35と水密に接合されている。
【0060】
図8に示されるように、導水部10は、浄水部68を有する。本実施形態の浄水部68は、交換可能な浄水カートリッジである。この浄水カートリッジ68は、浄水流路70Bと、水質浄化部72と、上流側及び下流側の端部にそれぞれ配置されたキャップ74とを有する。水質浄化部72は、水質浄化材72aと外側ろ過層72bと内側ろ過層72cとを有する。水質浄化材72aは、活性炭を主成分とする。外側ろ過層72b及び内側ろ過層72cには、例えば不織布が用いられる。外側ろ過層72b及び/又は内側ろ過層72cに、滅菌作用を有するセラミックが採用されてもよい。外側ろ過層72b及び/又は内側ろ過層72cに、イオン交換体が採用されてもよい。外側ろ過層72bは複数層であってもよい。内側ろ過層72cは複数層であってもよい。浄水流路70Bは、流路Bの一例である。なお
図9では、浄水カートリッジ68の記載が省略されている。
【0061】
浄水カートリッジ68の外側には、原水流路76Aが形成されている。原水流路76Aは、流路Aの一例である。
【0062】
原水吐出状態にあるとき、原水流路76Aを通過した原水が、切替機構を経由して、吐出口18から排出される。一方、浄水吐出状態にあるとき、浄水流路70Bを通過した浄水はフィルター78を透過して切替機構に至り、この切替機構を経由して吐出口18から排出される。
【0063】
浄水吐出状態にあるとき、導水口64から導入された原水は、水質浄化部72を透過して浄水流路70Bに至り、浄水となる。より詳細には、原水は、外側ろ過層72b、水質浄化材72a及び内側ろ過層72cを透過して、浄水流路70Bに至る。
【0064】
浄水吐出状態において、外側ろ過層72bに異物等が付着する。しかしこの異物等は、原水吐出状態において原水とともに排出されうる。よって、浄水カートリッジ68の目詰まりが抑制され、浄水カートリッジ68の浄水性能が長期間維持される。
【0065】
図11から
図13及び
図18を参照しつつ前述した通り、操作ボタン機構34によって、操作ボタン14は、押圧操作ごとに、第一位置P1(
図11)と第二位置P2(
図12)とに交互に切り替わる。第三位置P3(
図13)は、第二位置P2よりも後方である。第三位置P3は、操作ボタン14が最も押し込まれた位置であり、操作中にのみ生じうる。第一位置P1と第二位置P2との相互移行において、第三位置P3が経由される。ただし、操作ボタン機構34により保持される位置は、第一位置P1及び第二位置P2のみである。
【0066】
吐出部8は、流路Aからの吐水Waと流路Bからの吐水Wbとを切り替えうる切替機構100を有する。切替機構100による吐水の切り替えは、択一的である。切替機構100は、前述した操作ボタン14と、第一バルブ101、第二バルブ102及び第三バルブ103を含んでいる。3つのバルブの開閉によって、吐水が切り替えられる。バルブは、2つ以下であってもよい。吐水の多様性の観点から、バルブの数は3以上が好ましい。小型化及びコストも考慮すると、バルブの数は2又は3が好ましく、3が最も好ましい。
【0067】
本実施形態において、第一バルブ101は、弁座101aと第一弁体101bとを有する(
図10参照)。第一バルブ101は、ボール弁である。第一弁体101bは、ボールである。弁座101aは、環状の部材である。弁座101aは、貫通孔h1を有する(
図11参照)。弁座101aは、弾性材よりなる。弁座101aは、弁座装着部106の貫通孔108に装着されている。ボール101bは、ボール保持体101cに保持されている。ボール保持体101cは、下方に開放されている。ボール保持体101cの上部と第一弁体101bとの間に弾性体101dが配置されている。この弾性体101dはコイルばねである。弾性体101dによって、第一弁体101bは常に弁座101a側に付勢されている。ケース35の内部には、ボール保持体101cの方向Xにおける移動を許容する空間が確保されている。
【0068】
プッシュロッド50の後方には、接続部50jが設けられている。この接続部50jは、ボール保持体101cの前方接続部j1(
図8及び
図10参照)に接続されている。よって、ボール保持体101cは、プッシュロッド50に連動して、方向Xに移動する。すなわち、ボール保持体101cは、操作ボタン14に連動して方向Xに移動する。ボール保持体101cの移動とともに、第一弁体101b(ボール)も方向Xに移動する。
【0069】
操作ボタン14が第二位置P2にあるとき、ボール101bの中心が、弁座101aの貫通孔h1の中心軸上に位置する。このため、ボール101bは、弾性体101dに付勢力及び重力によって、方向Y(
図12)に移動し、貫通孔h1にはまり込む(
図12参照)。なお貫通孔h1の内径は、ボール101bの直径よりも小さい。このはまり込みによって、貫通孔h1がボール101bによって塞がれ、第一バルブ101が閉じられる。一方、操作ボタン14が第一位置P1にあるとき、ボール101bの中心が、貫通孔h1の中心軸からズレている。このため、ボール101bは、貫通孔h1にはまり込むことができない。よって貫通孔h1が閉塞されない。このように、操作ボタン14が第一位置P1にあるとき、第一バルブ101は開いている(
図11参照)。なお、方向Yは、方向Xに対して直角である。なお、弾性体101dを用いることなく、重力のみによってボール101bが貫通孔h1を塞ぐ構成が採用されてもよい。
【0070】
ケース35は、第二弁体用弁孔h2と第三弁体用弁孔h3とを有している。ケース35の内部において、後述する軸部材110が、中心線Z1に沿って移動する。この軸部材110の移動により、第二バルブ102が開閉する。同時に、軸部材110の移動により、第三バルブ103が開閉する。第二バルブ102が閉じているとき、第三バルブ103は開いている。
【0071】
操作ボタン14が第三位置P3にあるとき、第一バルブ101は開いており、第二バルブ102も開いており、第三バルブ103は閉じている。操作ボタン14が第二位置P2から第三位置P3までのいずれの位置にあっても、第三バルブ103は閉じている。よって、浄水(吐水Wb)の無駄な排出が防止される効果(効果Aともいう)が生じうる。通常の押圧操作では、操作ボタン14が第三位置P3にある時間は短時間である。ただし、操作ボタン14の押圧操作の度に第三位置P3が生じることを考慮すると、上記効果Aには意義がある。また、操作ボタン14が第二位置P2から第三位置P3までのいずれの位置にあっても、第三バルブ103は閉じているので、浄水と原水との混合が抑制される。
【0072】
切替機構100は、軸部材110を有している。
図10が示すように、軸部材110は、第二弁体装着部110a、斜面部110b、細径部110c、第三弁体装着部110d、後端部110e及び接続部110jを有する。
【0073】
軸部材110は、第二切替部材38と同軸状で配置されている。軸部材110は、プッシュロッド50と同軸状で配置されている。接続部110jは、ボール保持体101cの後方接続部j2(
図8及び
図10参照)に接続されている。よって軸部材110は、ボール保持体101cと連動して方向Xに移動する。軸部材110は、操作ボタン14に連動して方向Xに移動しうる。
【0074】
切替機構100は、第二弁体112を有している。
図10が示すように、本実施形態において、第二弁体112は、Oリングである。この第二弁体112が、第二弁体装着部110aに嵌め込まれている。第二弁体装着部110aは周溝を形成しており、この周溝に第二弁体112が嵌め込まれている。
【0075】
切替機構100は、第三弁体113を有している。
図10が示すように、本実施形態において、第三弁体113は、Uパッキンである。この第三弁体113が、第三弁体装着部110dに嵌め込まれている。第三弁体装着部110dは周溝を形成しており、この周溝に第三弁体113が嵌め込まれている。
【0076】
図11が示すように、第二弁体用弁孔h2は、第二弁体112と当接しうる当接面h21を有する。この当接面h21は斜面である。この当接面h21は円錐凹面である。軸部材110の後端部110eは、この第二弁体用弁孔h2を通過することはできない。よってこの軸部材110は、軸部材110が所定位置以上に前方に移動することを防止する抜け止め効果を奏している。各バルブ101、102及び103は、この軸部材110に連動して開閉する。上記抜け止め効果は、各バルブの安定的な作動に寄与している。
【0077】
図11が示すように、ケース35は、第三弁体用弁孔h3を有する。この第三弁体用弁孔h3は、第三弁体113と当接しうる当接面h31を有する。第三弁体用弁孔h3は、断面が円形で且つ内径が一定の貫通孔である。第三弁体用弁孔h3は、軸部材110と同軸状である。
【0078】
図11が示すように、操作ボタン14が第一位置P1(突出位置)にあるとき、第二弁体112が当接面h21に当接する。この当接により、第二バルブ102が閉じられる。一方、操作ボタン14が第一位置P1にあるとき、第三弁体113は当接面h31に当接せず、水は第三弁体用弁孔h3を流通しうる。すなわち、操作ボタン14が第一位置P1にあるとき、第三バルブ103は開いている。
【0079】
図12が示すように、操作ボタン14が第二位置P2(退行位置)にあるとき、第三弁体113が当接面h31に当接する。この当接により、第三バルブ103が閉じられる。一方、操作ボタン14が第二位置P2にあるとき、第二弁体112は当接面h21に当接せず、水は第二弁体用弁孔h2を流通しうる。すなわち、操作ボタン14が第二位置P2にあるとき、第二バルブ102は開いている。
【0080】
本実施形態では、複数のバルブはそれぞれ異なるタイプである。第一バルブ101は、ボール弁である。第二バルブ102は、円錐凹面である斜面と、円錐凸面に取り付けられた環状パッキン(Oリング)との組み合わせである。第三バルブ103は、貫通孔の内面と、この貫通孔の内面に当接するように縮径しうるパッキン(Uパッキン)との組み合わせである。
【0081】
本実施形態では、第一バルブ101が操作ボタン14の後方に位置している。また、第二バルブ102は第一バルブ101の後方に位置している。この縦列的な配置により、操作力の向きを変換する機構が不要とされる。また、操作力が円滑に伝達される。よって、信頼性の高い切替機構100が実現されている。また、この縦列的な配置により、切替部12を小型化(スリム化)することができる。よって、切替部12の設計自由度が高まる。水栓装置2は、機能性及びデザイン性に優れる。
【0082】
第三バルブ103は第一バルブ101の後方に位置している。第三バルブ103は第二バルブ102の前方に位置している。第三バルブ103は、第一バルブ101と第二バルブ102との間に位置している。この縦列的な配置により、操作力の向きを変換する機構が不要とされる。また、操作力が円滑に伝達される。更に、各バルブ同士が安定的に連動しうる。よって、信頼性の高い切替機構100が実現されている。また、この縦列的な配置により、切替部12を小型化(スリム化)することができる。
【0083】
本実施形態では、第一弁体101bが操作ボタン14の後方に位置している。また、第二弁体112は第一弁体101bの後方に位置している。この縦列的な配置により、操作力の向きを変換する機構が不要とされる。また、操作力が円滑に伝達される。更に、各弁体同士が安定的に連動しうる。よって、信頼性の高い切替機構100が実現されている。また、この縦列的な配置により、切替部12を小型化(スリム化)することができる。
【0084】
第三弁体113は第一弁体101bの後方に位置している。第三弁体113は第二弁体112の前方に位置している。第三弁体113は、第一弁体101bと第二弁体112との間に位置している。この縦列的な配置により、操作力の向きを変換する機構が不要とされる。また、操作力が円滑に伝達される。更に、各弁体同士が安定的に連動しうる。よって、信頼性の高い切替機構100が実現されている。また、この縦列的な配置により、切替部12を小型化(スリム化)することができる。
【0085】
吐出部8では、操作部14と、プッシュロッド50と、第一弁体101bと、軸部材110とが直列で並んでいる。この直列方向は、上記方向Xに対して平行である。そしてこの軸部材110に、第二弁体112及び第三弁体113が装着されている。よって、押圧力の伝達が円滑であり、これらの部材の連動が確実に達成される。
【0086】
前述の通り、操作ボタン機構34は、プッシュロッド50を有している。操作ボタン14の後方にプッシュロッド50が位置する。プッシュロッド50の後方に第一弁体101bが位置する。第一弁体101bの後方に軸部材110が位置する。よって、操作ボタン14の押圧力がプッシュロッド50を介して第一弁体101b及び軸部材110に円滑に伝達される。操作力の向きを変換する機構は不要とされている。
【0087】
切替機構100では、操作ボタン14の後方に第一バルブ101が位置する。第一バルブ101の後方に第三バルブ103が位置する。第三バルブ103の後方に第二バルブ102が位置する。この縦列的な配列により、吐出部8の小型化及びスリム化が達成されうる。この縦列的な配列により、操作力が各バルブに円滑に伝達される。各バルブの開閉動作は安定している。
【0088】
軸部材110の中心線Z1は、方向Xに平行である。プッシュロッド50の中心線は、方向Xに平行である。更に、操作ボタン14の後方にプッシュロッド50が位置し、プッシュロッド50の後方に軸部材110が位置する。よって、方向Xに付与された押圧力が効率良く各バルブに伝達されうる。また、操作力の向きを変換する機構が不要とされうる。
【0089】
軸部材110の中心線Z1は、プッシュロッド50の中心線に一致している。また、軸部材110の中心線Z1は、操作部14の中心線に一致している。操作部14とプッシュロッド50とは同軸状である。更に、操作部14と、円錐コイルばね19と、第一コイルばね44と、軸部材110とは同軸状である。よって、操作部14に付与された操作力は、効率的且つ円滑に、プッシュロッド50及び軸部材110に伝達される。
【0090】
プッシュロッド50、第一コイルばね44及び軸部材110は同軸状で配置されている。そして、軸部材110と第二弁体112とは同軸状である。更に、軸部材110と第三弁体113とは同軸状である。また、第一バルブ101が閉じた状態を除き、第一弁体101b(ボール)も、軸部材110等と同軸状で配置されている。よって、操作力の伝達が直接的且つ円滑になされうる。また、単純な機構で信頼性の高い切替機構100が実現されている。
【0091】
前述の通り、操作ボタン14の位置によって各バルブの開閉状態が相違する。この開閉状態として、本願では、開閉状態V1及び開閉状態V2が定義される。
【0092】
本願において、第一バルブ101が開いており且つ第二バルブ102が閉じている状態が、開閉状態V1と称される。
図11は、開閉状態V1を示している。この開閉状態V1では、原水(吐水Wa)が吐出口18から排出される。このように、操作ボタン14が第一位置P1にあるとき、切替機構100が開閉状態V1にあり、この開閉状態V1では原水が吐出口18から排出される。
【0093】
図11において一点鎖線の矢印で示されるのは、原水(吐水Wa)の流路である。前述した原水流路76Aからの原水は、第一バルブ101(貫通孔h1)を通過して、吐出口18に至る。原水流路76Aから第一バルブ101を通過して吐出口18に至る流路は、本願における流路Aの一例である。
【0094】
図11が示すように、流路Aは、第三バルブ103を通過する分岐流路A1を有する。分岐流路A1を通った水は、第一バルブ101を通過した水と合流して、吐出口18から排出される。本実施形態では、分岐流路A1は原水流路である。
【0095】
一方、本願において、第一バルブ101が閉じており且つ第二バルブ102が開いている状態が、開閉状態V2と称される。
図12は、開閉状態V2を示している。この開閉状態V2では、浄水(吐水Wb)が吐出口18から排出される。このように、操作ボタン14が第二位置P2にあるとき、切替機構100が開閉状態V2にあり、この開閉状態V2では浄水が吐出口18から排出される。
【0096】
図12において細実線の矢印で示されるのは、浄水(吐水Wb)の流路である。前述した浄水流路70Bからの浄水は、第二バルブ102(第二弁体用弁孔h2)を通過して、吐出口18に至る。浄水流路70Bから第二バルブ102を通過して吐出口18に至る流路は、本願における流路Bの一例である。
【0097】
なお、吐出部8は、流路Aと流路Bとが共通する共通流路Cを有する。共通流路Cは、
図11において、符号120Cで示されている。共通流路Cは、切替機構100よりも下流側に位置する。この共通流路Cは、吐出部8の小型化に寄与する。
【0098】
前述の通り、第三バルブ103が開くことにより、上記流路Aから分岐した分岐流路A1が形成される。本願では、第一バルブ101が開いており、第二バルブ102が閉じており且つ第三バルブ103が開いている状態が、開閉状態V10とも称される。操作ボタン14が第一位置P1にあるとき、切替機構100は開閉状態V10にある。この開閉状態V10では、原水(吐水Wa)が吐出口18から排出される。開閉状態V10は、開閉状態V1の一例である。
【0099】
本願では、第一バルブ101が閉じており、第二バルブ102が開いており且つ第三バルブ103が閉じている状態が、開閉状態V20とも称される。操作ボタン14が第二位置P2にあるとき、切替機構100は開閉状態V20にある。この開閉状態V20では、浄水(吐水Wb)が吐出口18から排出される。開閉状態V20は、開閉状態V2の一例である。
【0100】
以上より、切替機構100による切り替えの仕様は、次の通りである。
【0101】
[第一位置P1:
図11参照]
操作ボタン14が第一位置P1にあるときの仕様は次の(a1)から(i1)である。
(a1)流路Aが選択される。
(b1)原水(吐水Wa)が排出される。
(c1)切替機構100は開閉状態V1にある。
(d1)切替機構100は開閉状態V10にある。
(e1)第一バルブ101は開いている。
(f1)第二バルブ102は閉じている。
(g1)第三バルブ103は開いている。
(h1)操作ボタン14は突出位置にある。
(i1)分岐流路A1が形成される。
【0102】
[第二位置P2:
図12参照]
操作ボタン14が第二位置P2にあるときの仕様は次の(a2)から(h2)である。
(a2)流路Bが選択される。
(b2)浄水(吐水Wb)が排出される。
(c2)切替機構100は開閉状態V2にある。
(d2)切替機構100は開閉状態V20にある。
(e2)第一バルブ101は閉じている。
(f2)第二バルブ102は開いている。
(g2)第三バルブ103は閉じている。
(h2)操作ボタン14は退行位置にある。
【0103】
本実施形態では、第一弁体101b(ボール)及び第二弁体112(Oリング)が、上記方向Xに対して平行な単一直線L1上に位置している。すなわち、この単一直線L1は、第一弁体101b及び第二弁体112を横断している。ここで、「弁体を横断している」とは、弁体内側の空間(Oリングの内側の空洞等)を通過する場合を含む。また単一直線L1は任意に選択されうる。
図12では、軸部材110の中心線Z1が単一直線L1として選択されている。しかし、この直線L1は、方向Xと平行である限り、限定されない。単一直線L1は、中心線Z1であってもよいし、中心線Z1以外の線であってもよい。操作力の伝達効率の観点から、好ましくは、単一直線L1は中心線Z1とされる。
【0104】
前述の通り、本実施形態では、第二弁体112が軸部材110に装着されている。そして、軸部材110の中心線Z1(
図12参照)が、あらゆる可動位置における第一弁体101b(ボール)と、あらゆる可動位置における操作部14(ボタン)とを通過している。すなわち、可動範囲のどの位置にあっても、中心線Z1は、ボール101b及び操作ボタン14を通過している。「通過」とは、交わる場合の他、内側の空間(環状体の内側等)を通る場合を含む。
【0105】
前述の通り、本実施形態では、第二弁体112及び第三弁体113が共通の軸部材110に装着されている。本実施形態では、第二バルブ102が軸弁であり、第三バルブ103が軸弁である。なお軸弁とは、軸部材の移動により開閉する弁である。好ましい軸弁は、以下の要件(1)から(4)を満たす。
(1)弁体が軸部材に装着されている。
(2)この軸部材が孔に挿通されている。
(3)上記軸部材の移動によって上記弁体と上記孔の内面との離接が生じる。
(4)この離接により弁の開閉が達成される。
【0106】
水栓装置2では、第一弁体101bと第二弁体112とが単一直線L1上に位置しているため、切替部12を小型化することができる。更に水栓装置2では、軸部材110の中心線Z1が、あらゆる位置における第一弁体101bと、あらゆる位置における操作部14とに交わっている。この配置によって、操作部14近傍及び切替部12が更に小型化されうる。
【0107】
水栓装置2では、操作部14、第一弁体101b及び第二弁体112が単一直線L1上に位置している。また、この単一直線L1は操作部14の移動方向に対して平行である。すなわちこの単一直線L1は、押圧方向に対して平行である。よって、操作部14に付与された操作力が、第一弁体101b及び第二弁体112に円滑に伝達される。操作部14と第一弁体101bとの連動が円滑であり、操作部14と第二弁体112との連動も円滑である。これらの連動機構は、操作力の向きを変換する機構を含まない。よって、単純な機構で、これらの連動が達成されうる。機構の単純化により、高い耐久性が達成され、操作性及び信頼性が高まる。
【0108】
更に、第三弁体113も、上記単一直線L1上に位置している。よって、操作部14に付与された操作力は、第三弁体113にも円滑に伝達される。よって、3つの弁を有する切替機構100では、機構の単純化が達成され、耐久性、操作性及び信頼性に優れる。
【0109】
第一コイルばね44は、単一直線L1上に位置している。すなわち単一直線L1は、第一コイルばね44又はその内部を通過している。更に第一コイルばね44は、軸線Z1と同軸状である。また、第一コイルばね44の伸縮方向は、方向Xに一致している。よって操作力が効率良く第一コイルばね44に伝達され、伝達ロスが少ない。
【0110】
第二弁体112と第三弁体113とが共通の軸部材110に配置されている。よって、2箇所の弁をコンパクトに形成することができる。また、共通の軸部材110が用いられているため、第二弁体112の移動と第三弁体113の移動との連動は確実である。よって第二バルブ102の開閉と第三バルブ103との開閉との連動は確実である。このため、信頼性の高い切替機構100が実現しうる。更に、2箇所の弁体を共通の軸部材110に装着することで、部品点数が減少し、組み立ての効率が高まり、生産性が向上する。
【0111】
ボール保持体101cは、第一弁体101bを移動させる。よってボール保持体101cは第一弁体駆動部材である。軸部材110は、第二弁体112を移動させる。よって軸部材110は第二弁体駆動部材である。本実施形態では、第一弁体駆動部材と第二弁体駆動部材とが上記直線L1上に位置している。よって操作力が各駆動部材に効率的に伝達される。また、操作力の向きを変換する機構が不要とされている。更に軸部材110は、第三弁体113を移動させる第三弁体駆動部材でもある。第二弁体駆動部材と第三弁体駆動部材とを共通化することで、駆動部材の連結が不要とされている。よって、信頼性及び生産性が向上する。
【0112】
第一弁体駆動部材(ボール保持体101c)と第二弁体駆動部材(軸部材110)とは直接的に連結している。よって、操作力が効率的且つ確実に伝達され、連動の信頼性が高まる。また連結構造が単純化され、信頼性及び生産性が向上する。
【0113】
前述したような、各部材の縦列的な配置に加えて、本実施形態では、操作ボタン14、切替部12、カバー部材20及び導水部10が縦列的に配置されている。よって、操作ボタン14を押圧したとき、各部材に作用する応力のほとんどは、縦列的な配置の方向、すなわちX方向となり、Y方向には応力がほとんど作用しない。Y方向の力は、各部材を折り曲げる方向の力となりうるが、前述の縦列的な配置により、かかる折り曲げ方向の力はほとんど作用しない。その結果、各部材の耐久性が向上する。また各部材の肉厚を抑制することが可能となり、小型化及び軽量化が可能となる。
【0114】
図2が示すように、本体部4は、本体基軸部4aと、本体分岐部4bとを有する。本体分岐部4bは、本体基軸部4aから導水部10に向けて延在している。本体分岐部4bの延在方向は、前述した縦列的な配置の方向と一致している。本体分岐部4bの長手方向は方向Xである。この構成により、方向Yの力が作用しにくい。この構成により、操作ボタン14を押し込んだときの応力に対する、水栓装置全体の耐久性が向上している。なお、操作ボタン14を押し込んだときの応力に対する耐久性を高める観点から、本体部4は金属製とされるのが好ましく、本体基軸部4aと本体分岐部4bとが金属による一体成形体とされるのがより好ましい。
【0115】
図2において符号4a1示されるのは、本体基軸部4aの延在方向(長手方向)である。
図2において符号4b1で示されるのは、本体分岐部4bの延在方向(長手方向)である。
図2において両矢印αで示されるのは、方向4a1と方向4b1との成す角度である。本体分岐部4bは、本体分岐部4bの延在方向4a1に対して角度αの方向に、下方から上方に向かって傾斜して延在している。
【0116】
操作ボタン14を押し込んだときの耐久性を高める観点から、角度αは、30度以上が好ましく、45度以上がより好ましい。水栓装置2の使い勝手を向上させる観点から、角度αは、90度以下が好ましく、80度以下がより好ましく、70度以下が更に好ましい。本体基軸部4aの延在方向4a1は、水平方向に対して、80度以上が好ましく、85度以上がより好ましく、90度が特に好ましい。
【0117】
前述の通り、第一位置P1では、吐水Waが、2つのバルブ(第一バルブ101及び第三バルブ103)を通過している。また、第一位置P1では、分岐流路A1が形成される。このため、装置を大型化することなく、吐水Waの流量を大きくすることができる。上記実施形態の如く吐水Waが原水とされた場合、原水の流量を大きくすることができる。よって例えば、原水が用いられる用途(食器洗い等の洗浄用途など)において、十分な流量が確保されうる。本実施形態では、吐水Waの流量が吐水Wbの流量よりも大きくされうる。よって、吐水の多様性が高まり、利便性に優れた水栓装置2が実現されうる。
【0118】
図12において両矢印θ1で示されているのは、中心線Z1に対する斜面部110bの角度である。第二バルブ102の流路面積を広げる観点から、角度θ1は、30度以上が好ましく、45度以上がより好ましい。圧力損失を抑制する観点から、角度θ1は、60度以下が好ましい。上記実施形態では、θ1は45度とされた。
【0119】
図12において両矢印θ2で示されているのは、中心線Z1に対する当接面h21の傾斜角度である。第二バルブ102の流路面積を広げる観点から、角度θ2は、30度以上が好ましく、45度以上がより好ましい。圧力損失を抑制する観点から、角度θ2は、60度以下が好ましい。上記実施形態では、θ2は45度とされた。第二バルブ102が閉じているとき、当接面h21と斜面部110bとは互いに対向する。
【0120】
第二弁体112と当接面h21との当接を確実とする観点から、差(θ1−θ2)の絶対値は、10度以下が好ましく、5度以下がより好ましく、0度がより好ましい。条規実施形態では、差(θ1−θ2)の絶対値は0度とされた。
【0121】
めくれ等の不具合を抑制するため、第二弁体112(Oリング)には、通常、グリス等の潤滑剤が塗られている。この潤滑剤は水栓装置2の使用により徐々に流出していく。潤滑剤が流出すると、第二弁体112(Oリング)は第二弁体装着部110aに固着する。この固着により、めくれ等の不具合が生じ、シール性が減退しうる。
【0122】
図12が示すように、操作部14が第二位置P2にあるとき、第二弁体112は第二弁体用弁孔h2から離れている。この状態では、第二弁体112の周囲には水が流通しうる。周囲に流通する水が潤滑剤の役割を果たし、第二弁体112の固着が抑制される。よって、第二弁体112のシール性が長期間維持されうる。
【0123】
めくれ等の不具合を抑制するため、第三弁体113(Uパッキン)には、通常、グリス等の潤滑剤が塗られている。この潤滑剤は水栓装置2の使用により徐々に流出していく。潤滑剤が流出すると、第三弁体113(Uパッキン)は第三弁体装着部110dに固着する。この固着により、めくれ等の不具合が生じ、シール性が減退しうる。
【0124】
図11が示すように、操作部14が第一位置P1にあるとき、第三弁体113は第三弁体用弁孔h3から離れている。この状態では、第三弁体113の周囲には水が流通しうる。周囲に流通する水が潤滑剤の役割を果たし、第三弁体113の固着が抑制される。よって、第三弁体113のシール性が長期間維持されうる。
【0125】
切替軸部材42の材質として、樹脂が好ましい。好ましい樹脂として、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)及びポリプロピレン(PP)が例示される。耐熱性の観点から、ポリオキシメチレン(POM)及びポリフェニレンサルファイド(PPS)がより好ましい。また、第一弁体101b(ボール)等の位置精度を高める観点から、切替軸部材42は高弾性であるのが好ましい。この観点から、切替軸部材42の材質として、ポリオキシメチレン(POM)がより好ましい。上記実施形態では、ポリオキシメチレン(POM)が用いられた。
【0126】
ボール(第一弁体101b)の材質として、ステンレス鋼、ポリカーボネート樹脂(PC)及び真鍮が例示される。第一バルブ101を確実に閉じるためには、ボールの重量が大きいほうがよい。この観点から、ステンレス鋼又は真鍮が好ましく、耐食性をも考慮すると、ステンレス鋼がより好ましい。
【0127】
上記Uパッキンとは、断面が略U字形の部分を有するリップパッキンである。Uパッキンは、シール性が良く、摺動抵抗が少ない。上記Uパッキンの材質として、ゴム及びエラストマーが例示される。このゴムとして、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、フッ素ゴム及びシリコンゴムが例示される。コスト及び耐塩素性の観点、及び、圧縮永久歪みが小さいとの観点から、EPDM及びフッ素ゴムが好ましく、特にコストを考慮するとEPDMがより好ましい。
【0128】
上記Oリングの材質として、ゴム及びエラストマーが例示される。好ましいゴムとして、NBR、EPDM、フッ素ゴム及びシリコンゴムが例示される。コスト及び耐塩素性の観点、及び、圧縮永久歪みが小さいとの観点から、EPDM及びフッ素ゴムがより好ましく、特にコストを考慮するとEPDMが更に好ましい。
【0129】
図19には、以上説明された実施形態における操作ボタン機構34とは異なる操作ボタン機構134が装備された吐出部9が示されている。この操作ボタン機構134には、前述の円錐コイルばね19とは異なる第二付勢部材が採用されている。
図19の操作ボタン機構134は、第三位置P3にある。この操作ボタン機構134では、上記円錐コイルばね19は装着されていない。この操作ボタン機構134は、第二付勢部材として、他のコイルばね119を備えている。これを第二コイルばね119と呼ぶ。この第二コイルばね119は、第一切替部材36と切替軸部材142との間に装着されている。操作部114の底面には、ばね座に代えて、突起135が突設されている。この突起135は、位置決めのために、第二切替部材38の本体39の内側に挿入される。操作部114は、第二付勢部材を介さずに第二切替部材38と直接当接している。これらの点が、
図19の操作ボタン機構134と、
図11から
図13に示された操作ボタン機構34との相違点である。
図19の操作ボタン機構134において、上記操作ボタン機構34と同一構成部材には同一の符号が付されることにより、その説明が省略される。
【0130】
図19に示されるように、切替軸部材142のプッシュロッド150は、有底円筒状を呈している。換言すれば、プッシュロッド150には、同軸状に円柱状の空洞151が形成されている。この円柱状空洞151の中に、上記第二コイルばね119が圧縮状態で装入されている。この第二コイルばね119は、前述した第一コイルばね44より、ばね定数及び初期設定ばね荷重が小さい。この第二コイルばね119と第一切替部材36との間には、ブッシュ152が介装されている。このブッシュ152の後端と、上記円柱状空洞151の底部がばね座を構成している。ブッシュ152を用いず、第一切替部材36の後端面をばね座としてもよい。このために、第一切替部材36の後端面を、相応しい形状に変更してもよい。
【0131】
上記第一コイルばね44のばね力により、リブ15を介して操作部114が前方に押されている。本実施形態では、第一切替部材36と切替軸部材142との間にわずかな隙間が形成されるように構成されている。従って、第一コイルばね44のばね力は、第一切替部材36及び第二切替部材38には作用していない。この隙間を埋めるように、上記第二コイルばね119が圧縮状態で介装されている。第一切替部材36を、回転させるために、第二切替部材38に対して押圧しているのは、初期設定ばね荷重及びばね定数がともに小さい上記第二コイルばね119である。従って、位置の切替の都度、第一切替部材36が、第二切替部材38の押圧突起39aに衝突する力は小さいものとなる。同時に、第一切替部材36が、切替リング40の深溝41a及び浅溝41bに衝突する力も小さいものとなる。このため、操作部114を押圧操作している使用者の手指には、大きな衝撃及び振動は加わらない。このように、この操作ボタン機構134(スラストロック機構)は、オルタネイト動作に伴う衝撃、振動及び作動音が大幅に緩和されている。
【0132】
この第二コイルばね119の、初期設定ばね荷重、ばね定数、上記第一コイルばね44に対する初期設定ばね荷重の比、及び、上記第一コイルばね44に対するばね定数の比、はそれぞれ、前述した円錐コイルばね19の、初期設定ばね荷重、ばね定数、上記第一コイルばね44に対する初期設定ばね荷重の比、及び、上記第一コイルばね44に対するばね定数の比と同等である。なお、上記第二コイルばね119に加えて、前述した円錐コイルばね19を、操作部14と第二切替部材38との間に装着してもよい。この場合、2つのばね部材19、119の付勢力が直列に第一切替部材36に作用する。
【0133】
上記実施形態では、第二付勢部材としてコイルばね119が用いられているが、かかる構成には限定されない。コイルばねに代えて、板バネを採用することもできる。例えば、板バネを、片持ち梁状に、切替軸部材142の前端面に取り付けてもよい。そして、この板バネの自由端近傍に、第一切替部材36の本体37の後端が当接するようにしてもよい。第二付勢部材として、ゴム等の柔軟な弾性物質を採用することも可能である。例えば、柔軟な弾性物質を、第一切替部材36の本体37の後端、及び/又は、切替軸部材142の前端面に取り付けてもよい。
【0134】
以上に説明されたように、前述した実施形態では、小型であり且つ簡易な構成により、操作時の衝撃、振動及び作動音が効果的に低減された切替機構が実現されている。
【0135】
本願には、請求項(独立形式請求項を含む)に係る発明に含まれない他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成等は、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
【0136】
上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成をそなえなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。