特許第5721702号(P5721702)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5721702スプレードライ染料組成物、その生産方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721702
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】スプレードライ染料組成物、その生産方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/06 20060101AFI20150430BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20150430BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20150430BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20150430BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20150430BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20150430BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20150430BHJP
   C09B 67/08 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   C09B67/06
   A61K8/25
   A61Q19/00
   A61Q1/00
   A61K8/02
   A61K9/16
   A61K9/51
   C09B67/08 C
【請求項の数】13
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-513619(P2012-513619)
(86)(22)【出願日】2010年6月2日
(65)【公表番号】特表2012-528913(P2012-528913A)
(43)【公表日】2012年11月15日
(86)【国際出願番号】EP2010057744
(87)【国際公開番号】WO2010139746
(87)【国際公開日】20101209
【審査請求日】2013年2月28日
(31)【優先権主張番号】102009026746.8
(32)【優先日】2009年6月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511292172
【氏名又は名称】ゼンジエント イミジング テクノロギス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SENSIENT IMAGING TECHNOLOGIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】リスキフシー, フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ロート, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】フェリチェッティ, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュワガー, カトリン
【審査官】 爾見 武志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/022307(WO,A2)
【文献】 国際公開第2009/022308(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/06
A61K 8/02
A61K 8/25
A61K 9/16
A61K 9/51
A61Q 1/00
A61Q 19/00
C09B 67/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシラン系二酸化ケイ素のマトリックス中に取り込まれている水溶性機能性染料であって滲み率が≦0.5%であるものからなるスプレードライ染料組成物であって、
a)pH5〜6.5の水溶性有機溶剤の混合物中で、アルコキシシランの弱酸加水分解により二酸化ケイ素ゾルを生産する工程と、
b)水溶性染料を加える工程と、
c)染色化された前記ゾルをスプレードライして、SiOxゾル粒子の縮合を起こさせ、染料分子をカプセル化する工程と、
d)引き続く温度処理を、50℃を超える温度で、少なくとも2時間の間行う工程とにより生産される、スプレードライ染料組成物。
【請求項2】
取り込まれた染料がpHの変化及び/又はアスコルビン酸に対して安定であることを特徴とする、請求項1記載の染料組成物。
【請求項3】
粒子サイズが0.01〜100μmであることを特徴とする、請求項1又は2記載の染料組成物。
【請求項4】
a)pH5〜6.5の水溶性有機溶剤の混合物中で、アルコキシシランの弱酸加水分解により二酸化ケイ素ゾルを生産する工程と、
b)水溶性染料を加える工程と、
c)前記染色化ゾルをスプレードライすることによりゲル化させる工程と、
d)少なくとも2時間、50℃を超える温度で温度処理に供する工程とを含む、請求項1〜3のいずれかに記載されるスプレードライ染料組成物の生産方法。
【請求項5】
前記温度処理を50℃〜300℃の温度で実行することを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記温度処理を70℃〜150℃の温度で実行することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記温度処理を2〜120時間の間実行することを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記温度処理を5〜48時間の間実行することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
加水分解を不均一触媒作用を用いて行うことを特徴とする、請求項4〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
加水分解を酸性イオン交換体の添加を用いて行うことを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
スプレードライプロセスに供給される混合物がさらなる添加物を含まないことを特徴とする、請求項4〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
水溶性機能性染料が、食製品、経口医薬調剤、若しくは化粧品に使用される食品用天然又は合成色素であることを特徴とする、請求項4〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の染料粒子を含有する、食製品、医薬調剤、又は化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスプレードライした、色落ちしない染料組成物(好ましくは、顔料粉末形態のもの)であって、滲み率が≦0.5%であり、水溶性機能性染料、好ましくは食品用色素からなる染料組成物に関する。そして、前記染料はオルガノシラン系シリカマトリックス中にしっかりと取り込まれる。染料滲みが低いこととは別に、これらの組成物はpH変化及び/又はアスコルビン酸に対して高い安定性を示すことに関して注目に値する。本発明は、前記染料組成物の生産とその使用をも対象としている。前記染料組成物は、好ましくは食品、化粧品、医薬品を着色することに利用されるが、他の用途にも利用される。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,074,629号又は欧州特許EP 0 581 651号は、染料を二酸化ケイ素のマトリックス中にカプセル化する方法を記載している。しかしながら、これらの方法は染料をマトリックス表面上に吸着させることに基本的に基づいている。したがって、マトリックス内部の染料濃度は極めて限定的であり、滲みが比較的に多くなっている。
【0003】
滲みを軽減する可能なやり方の一つとして、染料を保持しているマトリックス粒子を、色素不含の第二マトリックスであって、コアマトリックスと同一又は異なる素材で作製可能なものでコーティングすることがある。
【0004】
例えば、特許文献である国際公開パンフレットWO2004/081222が記載するのは、テトラエトキシシラン水溶性加水分解生成物を水と混合しない液体中で染色及び乳化(エマルジョン化)するものである顔料粒子の生産である。そのエマルジョンは、ゲル形成プロセスの開始を介して固体懸濁物に転化されて、得られた顔料を単離する。顔料粒子を、引き続く加工工程において、色素不含二酸化ケイ素の殻でコーティングする。滲みは、このやり方で有意に減少する。しかしながら、そのようにコーティングされた顔料の着色効果は、その表面で光反射と光散乱がさらに起こることにより悪影響を受ける。
【0005】
そのような染料組成物が持つ他の重要な特性は、染色しようとする基質への着色効果である。染料と顔料の染色効果の検査を色度測定法を用いて行う。その測定法について周知なことは、例えば、顔料粒子のサイズと形状が色に関するそれらのパラメータに対して重要な役割を担うことである。前記顔料粒子のサイズは、0.05〜50μmの範囲内にあるべきである。粒子が小さくなればなるほど、その着色効果は向上する。
【0006】
染色基質にクリアーで深い色合いを付与するために、顔料粒子の光散乱が可能な限り低くあることが重要である。このことは、粒子形状が可能な限り球状であることを要求する。さらにまた、粒子は透明であるべきで、その内部に光が到達できることを確実にする。それにより、全ての染料分子が光に照らされて着色に寄与することを可能にする。
【0007】
顔料を被染色基質中に取り込む間またはその後に、それ自体は水溶性の染料が放出されること(滲み)をできる限り少なくすることが極めて重要である。着色用途において様々なpH値が存在することを考慮すると、放出に対する上記抵抗が実用上生じる全てのpH値において存在しなければならない。他の基本的要件は、アスコルビン酸(ビタミンC)への高い安定性である。この物質は非常に多くの食品中に含まれていて、複雑な化学反応機構を介して染料の変色と分解とを生じる可能性がある。このことを、アスコルビン酸の影響から担体マトリックス内部の染料を保護することにより、最大限回避しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従って、水溶性染料を不溶性形態で二酸化ケイ素のマトリックス中にカプセル化することにより、染料が滲み出るのを保護し、基質成分の影響からも保護するようなやり方で前記水溶性染料を提供することである。二酸化ケイ素のマトリックス中の染料組成物は、顔料粉末を細かく粒状化した形態で得ることが可能であるべきである。顔料由来の遊離色素が放出されること(滲み)は、可能な限り少なくするべきであり、pH及びアスコルビン酸に対する安定性を実現するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、固定化剤または錯化剤等の追加的添加物を全く使用せずに、カプセル化される水溶性染料を、調製したSiOxゾル中に溶解することにより、本目的を達成する。染色化ゾルをスプレードライプロセスに供してゲル化させる。存在する可能性のある任意の溶媒残留物を、二次乾燥することにより除去する。驚くべきことに、任意ではあるが引き続いて温度処理を行うことにより、前記組成物由来の染料放出(滲み)を確実に減少させることができる。そこでは、50℃を超える温度で少なくとも2時間の間、前記温度処理を実行する。
【0010】
顔料粉末を製造するために、前記ゲルを引き続いて上手に破砕してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る方法はマトリックスへの純粋な力学的取り込みを実効化するので、比較的大きな染料分子をマトリックス中に取り込む。そして、前記染料分子がマトリックスから出るのを防止し及び/又は他の有機分子がマトリックスに進入するのを防止する。このように、アスコルビン酸による滲みおよび攻撃(化学的影響)、又はpH変化の結果としての取り込まれた染料由来の吸収は、ほとんど除外可能である。
【0012】
そのように製造された染料組成物の滲み率は、≦0.5%である。さらにまた、前記染料組成物は、pH及び/又はアスコルビン酸に安定的である。
【0013】
驚くべきことには、スプレードライした色落ちしない本発明に係る染料組成物の製造に適する最適の出発物質は、アルコキシシランのゾルである。そのゾルは、非置換の有機ケイ素化合物を加水分解、好ましくは不均一触媒作用を用いて生産される。有機アルカリシリケート水溶液の加水分解を、弱酸性pH値で行い、好ましくはpH値5.0〜6.5、特に、pH値5.5〜6.0で行う。特に好ましい方式では、酸性化の実行を注意深く酸を添加することにより行う。本発明の特に好ましい実施形態では、加水分解の実行を不均一触媒作用の形で行い、好ましくは酸性イオン交換体を加えることにより行う。
【0014】
テトラエトキシシランが、アルコキシシランゾル生産用の特に好ましい出発物質であることが判明した。
【0015】
不適なのは、他の原料又は二酸化ケイ素のマトリックスの複数の前駆体である。例えば、シリケート水溶液をイオン交換して得られ、サイズ範囲が5〜100nmの球状SiO2粒子(いわゆるナノゾル)を含み、そして、例えば、Koestrosol(oeはoウムラウト) (商標)の名で市販されている高純度ケイ酸の水分散液が挙げられる。染料組成物用シリカマトリックスとして、上記の物は滲みに関して重大な欠点を呈する。置換されていてもよいアルコキシシランをミネラル及び有機酸を用いて触媒的加水分解することにより製造されるSiO2ゾルの使用についても同様なことが当てはまる。上記の物は製造プロセスにおいて低い安定性又は所望しない変色を呈する。
【0016】
本発明に従って得られるSiOxゾルの染色を一又は複数の水溶性染料を用いて行うことができる。その後、前記染色化ゾルを慣用的スプレードライプロセスに供する。スプレードライ用の液に適する任意の装置で、スプレードライは実行可能である。例えば、好ましくは空気若しくは窒素等の乾性ガスの熱気流中で、少なくとも一つのスパイラルジェット・スプレーノズル又はスプレー用回転ディスクを有する装置を用いる。
【0017】
単一成分用、二成分用、及び多成分用ノズルと回転式噴霧器とが特許請求の範囲で記載した方法に適している。この方法は、好ましくは、並流式スプレー乾燥機を利用する。
【0018】
好ましくは、乾性ガス気流の入口温度は80℃〜250℃であり、特に110℃〜190℃である。乾燥の際形成されるガス気流の出口温度は40℃〜100℃であり、特に50℃〜90℃である。
【0019】
スプレードライ後、存在する可能性のある任意の溶媒残留物を、追加的温度処理(二次乾燥)により除去する。温度処理を、50℃を超える所定温度と少なくとも2時間の所定時間で、好ましくは実行する。処理時間を染料に依存して実現化する。二次的温度処理のさらなる結果として、SiOxマトリックスの構造はより圧縮する。このさらに構造が圧縮することにより、染料が溶媒(特に水)と接触する場合、組成物から染料が放出されるのが減少することを確実に改善する。
【0020】
0.01〜100μmの好ましい粒子サイズを有する不溶性顔料粉末を、例えば、ゲルを粉砕することにより提供可能である。
【0021】
本発明によれば、食品用天然及び合成色素であって、食製品、経口投与用薬物、化粧カラー若しくはスキンケア製品に採用されるものは、好ましくはカプセル化の想定範囲内である。それら色素は以下のグループから選択される:
ブリリアントブルー(E133;C.I.42090)、タートラジン(E102、C.I.18140)、アゾルビン(E112;C.I..14720)、EXT.D&CグリーンNo.1(C.I.10020)、EXT.D&CイエローNo.7(C.I.10316)、EXT.D&CイエローNo.1(C.I.13065)、EXT.D&CオレンジNo.3(C.I.14600)、FD&CレッドNo.4(C.I.14700)、D&CオレンジNo.4(C.I.15510)、FD&CイエローNo.6(C.I.15985)、D&CレッドNo.2(C.I.16185)、D&CレッドNo.33(C.I.17200)、EXT.D&CイエローNo.3(C.I.18820)、FD&CイエローNo.5(C.I.19140)、D&CブラウンNo.1(C.I.20170)、D&CブラックNo.1(C.I.20470)、FD&CグリーンNo.3(C.I.42053)、FD&CブルーNo.1(C.I.42090)、D&CブルーNo.4(C.I.42090)、D&CレッドNo.19(C.I.45170)、D&CレッドNo.37(C.I.45170)、EXT.D&CレッドNo.3(C.I.45190)、D&CイエローNo.8(C.I.45350)、D&CオレンジNo.5(C.I.45370)、D&CレッドNo.21(C.I.45380)、D&CレッドNo.22(C.I.45380)、D&CレッドNo.28(C.I.45410)、D&CレッドNo.27(C.I.45410)、D&CオレンジNo.10(C.I.45425)、D&CオレンジNo.11(C.I.45425)、FD&CレッドNo.3(C.I.45430)、D&CイエローNo.11(C.I.47000)、D&CイエローNo.10(C.I.47005)、D&CグリーンNo.8(C.I.59040)、EXT.D&CバイオレットNo.2(C.I.60730)、D&CグリーンNo.5(C.I.61570)並びにFD&CブルーNo.2(C.I.73015)。
【0022】
さらにまた、例えば、グレープフルーツ抽出物、染色業者用ベニバナ抽出物、コチニール、レッドビート抽出物、クルクミン、リボフラビン、キサントフィル、カロテノイド類、カルミン、カルミン酸、アントシアニン類、クロロフィル類等から選択される天然色素群から、前記色素を選択することができる。
【0023】
本発明に係る染料組成物が使用可能なのは、素材表面を着色するためのレーキ顔料としてやインジケーターストリップ及びセンサーの生産中においてである。さらにまた、前記染料組成物を、ポリマー接着剤中に分散される顔料粉末としてや、素材表面を着色するためのレーキ顔料として採用することもできる。
【0024】
好ましい用途としては、前記染料組成物を分散形態で顔料粉末として利用して、食品、化粧品若しくは医薬調剤、又はポリマー製品を染色することが可能である。
【0025】
本発明に係る染料組成物の好ましい生産方法は、以下のものである。
(1)非置換有機ケイ素化合物、好ましくはテトラエトキシシランを弱酸加水分解することにより、SiO2ナノゾルを提供し、
(2)有機染料を混合し、
(3)スプレードライし、
(4)任意ではあるが、二次乾燥して残留溶媒を除去して、破砕(例、粉砕)を行う。その二次乾燥は、さらに所定の温度処理であってもよい。この処理により、SiOxマトリックスをさらに圧縮する。
【0026】
スプレードライ後の温度処理を、数時間、少なくとも2時間、50℃〜300℃の温度、好ましくは70℃〜150℃の温度で実行する。前記温度処理の時間は、好ましくは2〜120時間、特に5〜48時間、任意ではあるが選択した水溶性染料に依存して実行する。
【0027】
そのように製造された顔料粉末の滲みは、≦0.5%である。さらにまた、それらの顔料粉末はpH安定性がある。つまり、取り込まれた染料の吸収特性は、pH変化に影響されない。好ましい態様では、それらの顔料粉末はアスコルビン酸の化学的影響に対しても安定性を示す。
【0028】
滲み試験の実施
試験される粉末化顔料を、化学天秤を使用して15mlのねじ口バイアル中に正確に100mg計量する。その上から、蒸留水中のTergitol NP9(市販の湿潤剤)の0.1%溶液を正確に10ml注入する。小型マグネチックスターラを使用して、正確に1時間室温で、この混合物を撹拌する。撹拌速度を選択することにより、粉末化物質の全てを激しく撹拌する。その後、バイアルの内容物を、10mlの(カニューレ無しの)注射器に吸い込み、0.45μmの注射器用フィルターをそこに取り付け、その内容物をフィルターを通して押し出して、第二のねじ口バイアル中へ入れる。ろ液を測光法に供する。
【0029】
限定する意図はないが、本発明を以下の実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0030】
実施例1:
染色化TEOS加水分解物をスプレードライすることによる青色顔料の生産
20gのテトラエトキシシラン(TEOS)と、50gの蒸留水、10gのエタノール、及び4.0gの氷酢酸とを混合し、マグネチックスターラを使用して室温で激しく撹拌する。液体中のTEOSは、初期には分離相(不透明なエマルジョン)を形成するが、約2時間後には透明な溶液を形成する。その形成は、TEOSが加水分解しケイ酸になり、さらに縮合してSiOxゾルを形成する結果である。0.6gのFD&Cブルー1(純粋染料)を、上記溶液に溶解する。得られた青色液体を、BUECHI(UEはUウムラウト) B290小型スプレー乾燥機(入口温度=140℃)中で粉末に加工する。その粉末からの残留溶媒の除去を、高温で二次乾燥することにより行う。滲み率が0.01%の顔料を得る。
【0031】
実施例2:
染色化TEOS加水分解物をスプレードライすることによる紫色顔料の生産
20gのテトラエトキシシラン(TEOS)と、4.5gの蒸留水、10.5gのエタノール、及び5.0gの0.001N HClとを混合し、マグネチックスターラを使用して室温で48時間激しく撹拌する。得られたゾルの染色を、3.0gの紫さつまいも粉末E-500(マルトデキストリン中で20%)を加えることで行う。その色素は、室温で少なくとも1時間撹拌することにより完全に溶解されなければならない。その染色化ゾルを、BUECHI B290小型スプレー乾燥機(入口温度=130℃)中で粉末に速やかに加工する。その粉末からの残留溶媒の除去を、高温で二次乾燥することにより行う。得られる顔料の滲み率は、おおよそ0.1%である。
【0032】
実施例3:
染色化TEOS加水分解物をスプレードライすることによる青色顔料の生産
20gのテトラエトキシシラン(TEOS)と、4.5gの蒸留水、10.5gのエタノール、及び5.0gの0.001N HClとを混合し、マグネチックスターラを使用して室温で48時間激しく撹拌する。得られたゾルの染色を、0.6gのFD&Cブルー1を撹拌しながら加えることにより行い、BUECHI B290小型スプレー乾燥機(入口温度=130℃)中で粉末に加工する。その粉末を、高温で二次乾燥に供し、それにより残留溶媒を除去する。得られる顔料の滲み率は、おおよそ0.02%である。
【0033】
実施例4:
不均一触媒作用により生じる染色化TEOS加水分解物をスプレードライすることによる青色顔料の生産
20gのテトラエトキシシラン(TEOS)と、9.5gの蒸留水、10.5gのエタノール、及び5.0gの強酸性Dowex HCR-W2イオン交換体とを混合し、マグネチックスターラを使用して室温で48時間激しく撹拌する。得られたゾルをイオン交換体から濾過して、0.6gのFD&Cブルー1を加えて混合することにより染色し、BUECHI B290小型スプレー乾燥機(入口温度=130℃)中で粉末に加工する。その粉末からの残留溶媒の除去を、高温で二次乾燥することにより行う。得られる顔料の滲み率は、おおよそ0.01%である。
【0034】
実施例5:
染色化TEOS加水分解物をスプレードライすることによる青色顔料の生産と、色素不含SiO2層でコーティングをその後行うこと
20gのテトラエトキシシラン(TEOS)と、4.5gの蒸留水、10.5gのエタノール、及び1.0gの氷酢酸とを混合し、マグネチックスターラを使用する激しい撹拌を50℃で8時間行うことで開始し、その後室温で96時間行う。得られたゾルを、0.6gのFD&Cブルー1を加えて混合することにより染色し、BUECHI B290小型スプレー乾燥機(入口温度=140℃)中で乾燥粉末に加工する。その粉末からの残留溶媒の除去を、二次乾燥することにより行う。得られる顔料の滲み率は、おおよそ0.2%である。得られた乾燥顔料の5gを、マグネチックスターラを使用して30gのテトラエトキシシラン中で撹拌し、0.3gの濃塩酸を加える。混合物を室温で24時間撹拌する。その後、顔料を濾過し、水とエタノールを用いて洗浄し、乾燥する。滲み率は、0.005%である。
【0035】
実施例6:
染色化TEOS加水分解物をスプレードライすることによる青色顔料の生産
20gのテトラエトキシシラン(TEOS)と、50gの蒸留水、10gのエタノール、及び4.0gの氷酢酸とを混合し、マグネチックスターラを使用して室温で激しく撹拌する。液体中のTEOSは、初期には分離相(不透明なエマルジョン)を形成するが、約2時間後には透明な溶液を形成する。その形成は、TEOSが加水分解しケイ酸になり、さらに縮合してSiOxゾルを形成する結果である。0.6gのFD&Cブルー1(純粋染料)を、上記溶液に溶解する。得られた青色液体を、BUECHI B290小型スプレー乾燥機(入口温度=140℃)中で粉末に加工する。粉末の加熱処理は、110℃の乾燥オーブン中で15時間の間温度処理を使用する。滲み率が0.005%の顔料を得る。
【0036】
実施例7:
染色化TEOS加水分解物をスプレードライすることによる紫色顔料の生産
20gのテトラエトキシシラン(TEOS)と、4.5gの蒸留水、10.5gのエタノール、及び5.0gの0.001N HClとを混合し、マグネチックスターラを使用して室温で48時間激しく撹拌する。得られたゾルの染色を、1.2gのエルダーベリー抽出水溶液(樹脂精製、50%の染料含有量)を加えることにより行う。その染色化ゾルを、BUECHI B290小型スプレー乾燥機(入口温度=130℃)中で粉末に速やかに加工する。粉末の加熱処理は、140℃の乾燥オーブン中で24時間の間温度処理を使用する。得られる顔料の滲み率は、おおよそ0.05%である。
【0037】
比較実施例1:
染色化Koestrosol溶液をスプレードライすることによる色顔料の生産
45gのKoestrosol 1520(商標)(20%SiO2含有水溶液、Chemiewerk Bad Koestritz(oeはoウムラウト)、ドイツより市販)と、50gの蒸留水及び0.9gのFD&Cブルー1(純粋染料)とを加える。得られた青色液体を、BUECHI B290小型スプレー乾燥機中で粉末に速やかに加工する。その粉末からの残留溶媒の除去を、高温で二次乾燥することにより行う。滲み率が7.3%の顔料を得る。
【0038】
比較実施例2:
強酸を用いて加水分解することにより得られる染色化TEOS加水分解物をスプレードライすることによる色顔料の生産
20gのテトラエトキシシラン(TEOS)と、10.5gのエタノール及び9.5gの0.1N HClとを混合し、マグネチックスターラを使用して室温で24時間激しく撹拌する。得られたゾルを、0.6gのFD&Cブルー1を加えて混合することにより染色し、BUECHI B290小型スプレー乾燥機(入口温度=130℃)中で粉末に加工する。その粉末を、高温で二次乾燥に供し、このやり方で残留溶媒フリーにする。得られる顔料の滲み率は、おおよそ0.01%である。青色の代わりに、所望により、粉末の色は緑である。