特許第5721722号(P5721722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5721722-オロパタジン組成物およびその使用 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721722
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】オロパタジン組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/335 20060101AFI20150430BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20150430BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20150430BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   A61K31/335
   A61K47/22
   A61K9/08
   A61P37/08
   A61P29/00
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-532346(P2012-532346)
(86)(22)【出願日】2010年10月1日
(65)【公表番号】特表2013-506692(P2013-506692A)
(43)【公表日】2013年2月28日
(86)【国際出願番号】US2010051062
(87)【国際公開番号】WO2011041640
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2013年8月16日
(31)【優先権主張番号】61/247,618
(32)【優先日】2009年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508185074
【氏名又は名称】アルコン リサーチ, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー, エル. ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ハン, ウェズリー ウェーシン
(72)【発明者】
【氏名】チョウハン, マスード エー.
【審査官】 鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/127975(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/006050(WO,A1)
【文献】 特表平09−510235(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/093924(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/335
A61K 9/08
A61K 47/22
A61P 29/00
A61P 37/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オロパタジンの溶解度を増大させるための薬学的水性液剤組成物であって、該組成物は、
水相における可溶性形態としての、治療上有効な量のオロパタジンもしくはその薬学的に受容可能な塩、
DE4インヒビター化合物しくはその薬学的に受容可能な塩であって、該PDE4インヒビター化合物は、(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルアミノ)−7−メトキシ−8−(6−(4−メチルピペラジン−1−イル)ヘキシルオキシ)キノリン−2(1H)−オンもしくは(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルアミノ)−7−メトキシ−8−(6−モルホリノヘキシルオキシ)キノリン−2(1H)−オン)である、PDE4インヒビター化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩、および
薬学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤
を含み、
ここで該液剤組成物中のオロパタジンの濃度は、少なくとも0.17% w/vである、液剤組成物。
【請求項2】
前記PDE4インヒビター化合物は、(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルアミノ)−7−メトキシ−8−(6−(4−メチルピペラジン−1−イル)ヘキシルオキシ)キノリン−2(1H)−オンである、請求項に記載の液剤組成物。
【請求項3】
前記PDE4インヒビター化合物は、(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルアミノ)−7−メトキシ−8−(6−モルホリノヘキシルオキシ)キノリン−2(1H)−オン)である、請求項に記載の液剤組成物。
【請求項4】
前記オロパタジンの濃度は、0.17〜0.62% w/vである、請求項1に記載の液剤組成物。
【請求項5】
前記オロパタジンの濃度は、0.17〜0.25% w/vである、請求項に記載の液剤組成物。
【請求項6】
前記オロパタジンの濃度は、0.18〜0.22% w/vである、請求項に記載の液剤組成物。
【請求項7】
前記DE4インヒビター化合物の濃度は、少なくとも0.05% w/vである、請求項1に記載の液剤組成物。
【請求項8】
前記DE4インヒビター化合物の濃度は、少なくとも0.1% w/vである、請求項1に記載の液剤組成物。
【請求項9】
3.0〜8.0の範囲にあるpHを有する、請求項1に記載の液剤組成物。
【請求項10】
前記pHは、5.0〜7.5の範囲にある、請求項に記載の液剤組成物。
【請求項11】
前記pHは、6.0〜7.4の範囲にある、請求項10に記載の液剤組成物。
【請求項12】
前記組成物は、眼、鼻、もしくは皮膚への送達のために処方されている、請求項1に記載の液剤組成物。
【請求項13】
前記液剤組成物は、前記皮膚への送達のために処方されており、該液剤組成物は、粘性の液剤もしくはゲルである、請求項12に記載の液剤組成物。
【請求項14】
眼、鼻、もしくは皮膚のアレルギー状態もしくは炎症状態を処置するために使用される請求項1に記載の液剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2009年10月1日に出願された米国仮特許出願第61/247,618号に対して米国特許法§119の下、優先権を主張する。この出願の全内容は本明細書において参照として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、アレルギー性疾患および炎症性疾患を処置するために使用されるオロパタジン処方物に関する。より具体的には、本発明は、オロパタジンの処方物、ならびに眼、耳、皮膚、および鼻のアレルギー性障害もしくは炎症性障害を処置および/もしくは予防するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
特許文献1および特許文献2(ともにBurroughs Wellcome Co.に譲渡)(「Burroughs Wellcome特許」))に教示されるように、ドキセピンの特定のカルボン酸誘導体(オロパタジン(化学名:Z−11−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−酢酸が挙げられる)は、抗ヒスタミン活性および抗喘息活性を有する。これら2つの特許は、上記ドキセピンのカルボン酸誘導体を、抗ヒスタミン作用を有するマスト細胞安定化剤として分類する。なぜなら、それらは、マスト細胞からのオータコイド(すなわち、ヒスタミン、セロトニンなど)の放出を阻害し、標的組織に対するヒスタミンの効果を直接阻害すると考えられているからである。上記Burroughs Wellcome特許は、上記ドキセピンのカルボン酸誘導体を含む種々の薬学的処方物(鼻用スプレーおよび眼用処方物が挙げられる)を教示する。例えば、上記特許文献1の第7欄7〜26行目、ならびに実施例8(H)および実施例8(I)を参照のこと。
【0004】
特許文献3(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd.に譲渡)(「Kyowa特許」)は、ドキセピンの酢酸誘導体、および具体的には、オロパタジンが、抗アレルギー活性および抗炎症活性を有することを教示している。上記ドキセピンの酢酸誘導体について上記Kyowa特許が教示している医薬形態は、広い範囲の受容可能なキャリアを含む;しかし、経口投与形態および注射投与形態のみが言及されている。
【0005】
特許文献4(Alcon Laboratories,Inc.およびKyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd.に譲渡)は、アレルギー性眼疾患を処置するためのオロパタジンを含む局所的眼用処方物を教示す。特許文献4によれば、上記局所的処方物は、液剤、懸濁物もしくはゲルであり得る。上記処方物は、オロパタジン、等張化剤、および「必要であれば、保存剤、緩衝化剤、安定化剤、粘性ビヒクルなど」を含む。第6欄30〜43行目を参照のことのこと。「ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸など」が、粘性ビヒクルとして言及されている。第6欄55〜57行目を参照のこと。
【0006】
ホスホジエステラーゼ タイプIV(PDE4もしくはPDE−IV)は、炎症性白血球(例えば、マスト細胞、好中球、単球およびTリンパ球)において見いだされる優勢な環式ヌクレオチド加水分解酵素である。PDE4インヒビター化合物は、抗炎症剤および抗アレルギー剤として有用であることが公知である。
【0007】
一般に、薬学的組成物において懸濁物ではなく、液剤中に活性成分が存在することは、より望ましいことであり得る。例えば、液剤は、製造がより容易であり、より取り扱いやすく、標的作用部位へより良好な浸透を提供し、より良好な用量一貫性を提供する。
【0008】
オロパタジンおよびPDE4インヒビター化合物の両方を含む処方物が望ましい。なぜなら、上記組み合わせは、上記アレルギー応答の初期および後期の相に対処するからである。さらに、オロパタジンの溶解度を増強する化合物を含む処方物が望ましい。なぜなら、このことは、上記オロパタジンが所望の貯蔵寿命の間に沈澱せず、溶解したオロパタジンの増大した濃度を可能にすることを確実にするからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,871,865号明細書
【特許文献2】米国特許第4,923,892号明細書
【特許文献3】米国特許第5,116,863号明細書
【特許文献4】米国特許第5,641,805号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、本明細書中に提供されるように、オロパタジンおよび式IのPDE4インヒビター化合物を含む薬学的水性液剤組成物を提供する。本発明はまた、眼、耳、皮膚、および鼻のアレルギー状態および炎症状態を処置する方法を提供する。一局面において、上記オロパタジンの濃度は、少なくとも0.17% w/vであり、上記式IのPDE4インヒビター化合物の濃度は、上記液剤組成物中、少なくとも0.05% w/vである。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
薬学的水性液剤組成物であって、該組成物は、
水相における可溶性形態としての、治療上有効な量のオロパタジンもしくはその薬学的に受容可能な塩、
式IのPDE4インヒビター化合物:
【化4】


もしくはその薬学的に受容可能な塩;および
薬学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤
を含み、ここで:
およびRは、−(CH、アシル、アシルアルキル、カルボキシアルキル、シアノアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アミドアルキル、アミノ、アルキル、アルキルアルコキシ、アミノアルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、カルボキシアルキル、エーテル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、グアニジン、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、およびヒドロキシアルキルからなる群より独立して選択され、これらのうちのいずれも、必要に応じて置換され得;
sは、1〜8であり;
は、アルコキシ、アミノ、アミド、カルボニル、ヒドロキシ、エーテル、アミノ酸、および非存在からなる群より選択され;
は、アルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ハロ、ハロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、カルボキシルアルキルアミノ、グアニジン、アミノ酸、および非存在からなる群より選択され、これらのうちのいずれも、必要に応じて置換され得;
は、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、エーテル、カルボキシル、ヒドロキサム酸、アミノ酸、ホスホネート、ホスホアミド、および非存在からなる群より選択され、これらのうちのいずれも、必要に応じて置換され得;
は、−(CRW(CR1011−および−(CR1213−からなる群より選択され;
Wは、O、N(R)、C(O)N(R)、およびSOからなる群より選択され;
m、n、およびqは、独立して、0、1もしくは2であり;
pは、1もしくは2であり;
は、カルボキシル、アルキルカルボキシ、アミド、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルキル、ヘテロアルキル、アシル、およびヒドロキサム酸からなる群より選択され、これらのうちのいずれも、必要に応じて置換され得;
およびR14は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、低級アルキル、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、およびアミノアルキルからなる群より独立して選択され;
、R、R10、R11、R12およびR13は、水素および必要に応じて置換された低級アルキルからなる群より独立して選択され;そして
19は、水素、ハロゲン、低級アルキルおよびハロアルキルからなる群より選択され;
ここで該液剤組成物中のオロパタジンの濃度は、少なくとも0.17% w/vである、液剤組成物。
(項目2)
前記PDE4インヒビター化合物は、(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルアミノ)−7−メトキシ−8−(6−(4−メチルピペラジン−1−イル)ヘキシルオキシ)キノリン−2(1H)−オンもしくは(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルアミノ)−7−メトキシ−8−(6−モルホリノヘキシルオキシ)キノリン−2(1H)−オン)である、項目1に記載の液剤組成物。
(項目3)
前記PDE4インヒビター化合物は、(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルアミノ)−7−メトキシ−8−(6−(4−メチルピペラジン−1−イル)ヘキシルオキシ)キノリン−2(1H)−オンである、項目2に記載の液剤組成物。
(項目4)
前記PDE4インヒビター化合物は、(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルアミノ)−7−メトキシ−8−(6−モルホリノヘキシルオキシ)キノリン−2(1H)−オン)である、項目2に記載の液剤組成物。
(項目5)
前記オロパタジンの濃度は、0.17〜0.62% w/vである、項目1に記載の液剤組成物。
(項目6)
前記オロパタジンの濃度は、0.17〜0.25% w/vである、項目5に記載の液剤組成物。
(項目7)
前記オロパタジンの濃度は、0.18〜0.22% w/vである、項目6に記載の液剤組成物。
(項目8)
前記式IのPDE4インヒビター化合物の濃度は、少なくとも0.05% w/vである、項目1に記載の液剤組成物。
(項目9)
前記式IのPDE4インヒビター化合物の濃度は、少なくとも0.1% w/vである、項目1に記載の液剤組成物。
(項目10)
3.0〜8.0の範囲にあるpHを有する、項目1に記載の液剤組成物。
(項目11)
前記pHは、5.0〜7.5の範囲にある、項目10に記載の液剤組成物。
(項目12)
前記pHは、6.0〜7.4の範囲にある、項目11に記載の液剤組成物。
(項目13)
前記組成物は、眼、鼻、もしくは皮膚への送達のために処方される、項目1に記載の液剤組成物。
(項目14)
前記液剤組成物は、前記皮膚への送達のために処方され、該液剤組成物は、粘性の液剤もしくはゲルである、項目13に記載の液剤組成物。
(項目15)
眼、鼻、もしくは皮膚のアレルギー状態もしくは炎症状態を処置する方法であって、該方法は、薬学的に有効な量の項目1に記載の液剤組成物を、それを必要な被験体に投与する工程を包含する、方法。
【0011】
本発明の具体的な好ましい実施形態が、以下の特定の好ましい実施形態の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、PDE4インヒビター濃度(% w/v)に対するオロパタジン遊離塩基溶解度を示すグラフである。
図2図2は、PDE4インヒビター濃度(ミリモル濃度)に対するオロパタジン遊離塩基溶解度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本明細書中に示される詳細は、例示でありかつ本発明の好ましい実施形態の例示的考察が目的であるに過ぎず、本発明の種々の実施形態の原理および概念的な局面の最も有用で容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために、示される。この点に関して、この説明を、本発明のいくつかの形態をどのように実際に具現化し得るかを当業者に明らかにする図面および/もしくは実施例とともに解釈すれば、本発明の基本的理解に必要であるよりも詳細に本発明の構造的詳細を示そういうは試みはなされない。
【0014】
本明細書中で使用される場合および別段示されなければ、用語「ある、1つの(a)」および「ある、1つの(an)」は、「1つの(one)」、「少なくとも1つの」もしくは「1つ以上」を意味すると解釈される。文脈によって別のことが必要とされるのでなければ、本明細書中で使用される単数形は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。
【0015】
別段示されなければ、本明細書中で提供される全ての成分の量は、%(w/v)ベースで示され、オロパタジンに対する全ての言及は、オロパタジン遊離塩基に対するものである。
【0016】
特定の実施形態において、本発明は、治療上有効な量のオロパタジンおよび約0.2〜0.6% オロパタジンの水への溶解度を増強する式IのPDE4インヒビター化合物を含む液剤組成物を提供する。
【0017】
用語「治療上有効な量」とは、哺乳動物において治療応答を生じると決定された本発明の液剤組成物、オロパタジン、もしくは式IのPDE4インヒビター化合物の量に言及する。このような治療上有効な量は、当業者によって、および本明細書中に記載される方法を使用して、容易に確認される。
【0018】
用語「薬学的水性液剤組成物」および「液剤組成物」は、本明細書中で使用される場合、患者に適切に投与された場合に、所望の治療効果(例えば、アレルギーまたはアレルギー症状または炎症を低下、予防、および/もしくは除去すること)を誘導し得る、本明細書に記載される、オロパタジンもしくはその薬学的に受容可能な塩、式IのPDE4インヒビター化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩、および薬学的に受容可能なキャリア(例えば、眼科学的もしくは鼻用のもしくは耳用のキャリア、または皮膚への送達に適したキャリア)、賦形剤、または希釈剤を含む組成物に言及する。本明細書中で使用される場合、用語「薬学的水性液剤組成物」および「液剤組成物」は、オロパタジン(もしくはその薬学的に受容可能な塩)および式IのPDE4インヒビター化合物(もしくは薬学的に受容可能な塩)が液剤中に存在し、組成物全体が、上記組成物中の任意の賦形剤の存在もしくは非存在に依存して、液剤、懸濁物、もしくは半固体(例えば、クリーム剤、ゲル剤、もしくはエマルジョン)である組成物を含む。
【0019】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能な眼科的もしくは鼻用のもしくは耳用のキャリア」とは、眼、耳、もしくは鼻の刺激をせいぜい、ほとんどから全く引き起こさず、必要であれば、適切な保存を提供し、オロパタジンおよび式Iの化合物を均質な投与量において送達するキャリアに言及する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「患者」とは、ヒトおよび動物の被験体を含む。
【0021】
一実施形態において、本発明の液剤組成物は、式Iの構造を有するPDE4インヒビター化合物:
【0022】
【化1】
【0023】
および薬学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤を含む。
【0024】
特定の実施形態において:
およびRは、−(CH、アシル、アシルアルキル、カルボキシアルキル、シアノアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アミドアルキル、アミノ、アルキル、アルキルアルコキシ、アミノアルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、カルボキシアルキル、エーテル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、グアニジン、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、およびヒドロキシアルキルからなる群より独立して選択され、上記のうちのいずれも、必要に応じて置換され得;
sは、1〜8であり;
は、アルコキシ、アミノ、アミド、カルボニル、ヒドロキシ、エーテル、アミノ酸、および非存在(null)からなる群より選択され;
は、アルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ハロ、ハロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、カルボキシルアルキルアミノ、グアニジン、アミノ酸、および非存在からなる群より選択され、上記のうちのいずれも、必要に応じて置換され得;
は、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、エーテル、カルボキシル、ヒドロキサム酸、アミノ酸、ホスホネート、ホスホアミド、および非存在からなる群より選択され、上記のうちのいずれも、必要に応じて置換され得;
は、−(CRW(CR1011−および−(CR1213−からなる群より選択され;
Wは、O、N(R)、C(O)N(R)、およびSOからなる群より選択され;
m、n、およびqは、独立して、0、1もしくは2であり;
pは、1もしくは2であり;
は、カルボキシル、アルキルカルボキシ、アミド、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルキル、ヘテロアルキル、アシル、およびヒドロキサム酸からなる群より選択され、上記のうちのいずれも、必要に応じて置換され得;
およびR14は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、低級アルキル、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、およびアミノアルキルからなる群より独立して選択され;
、R、R10、R11、R12およびR13は、水素および必要に応じて置換された低級アルキルからなる群より独立して選択され;そして
19は、水素、ハロゲン、低級アルキルおよびハロアルキルからなる群より選択される。
【0025】
一実施形態において、上記式IのPDE4インヒビター化合物は、(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルアミノ)−7−メトキシ−8−(6−(4−メチルピペラジン−1−イル)ヘキシルオキシ)キノリン−2(1H)−オン):
【0026】
【化2】
【0027】
である。
【0028】
別の実施形態において、上記式Iの化合物は、(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルアミノ)−7−メトキシ−8−(6−モルホリノヘキシルオキシ)キノリン−2(1H)−オン):
【0029】
【化3】
【0030】
である。
【0031】
これら化合物、および式Iの他のPDE4インヒビター化合物は、PDEIVインヒビターであり、同時係属中の米国特許出願第11/774,053号(2007年7月6日出願)および米国特許出願第12/544,185号(2009年8月19日出願)(これらの開示は、その全体が参考として援用される)に詳細に記載されている。
【0032】
オロパタジンは、米国特許第5,116,863号(その内容全体は、本明細書中に参考として援用される)に開示される方法によって得られ得る公知の化合物である。
【0033】
一般に、オロパタジンは、薬学的に受容可能な塩の形態において添加される。オロパタジンの薬学的に受容可能な塩の例としては、無機酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩およびリン酸塩);有機酸塩(例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩およびクエン酸塩);アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩);アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩およびカルシウム塩);金属塩(例えば、アルミニウム塩および亜鉛塩);および有機アミン付加塩(例えば、トリエチルアミン付加塩(トロメタミンとして公知)、モルホリン付加塩およびピペラジン付加塩)が挙げられる。本発明の液剤組成物における使用に最も好ましいオロパタジンの形態は、(Z)−11−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロベンゾ−[b,e]オキセピン−2−酢酸の塩酸塩である。オロパタジンが、この塩形態において本発明の組成物に添加される場合、0.222% オロパタジン塩酸塩が、0.2% オロパタジン遊離塩基に等しく、0.443% オロパタジン塩酸塩が、0.4% オロパタジン遊離塩基に等しく、そして0.665% オロパタジン塩酸塩が、0.6% オロパタジン遊離塩基に等しい。本明細書中で使用される場合、オロパタジン濃度への言及は、別段特定されなければ、オロパタジン遊離塩基濃度に言及する。
【0034】
上記式IのPDE4インヒビター化合物は、オロパタジンの溶解度を増大させることが予測外に見いだされた。従って、本発明の水性液剤組成物は、いかなる他の溶解度増強成分も必要とすることなく、調製され得る。
【0035】
本発明に従って投与される組成物はまた、種々の他の成分(界面活性剤、等張化剤、緩衝化剤、保存剤、および増粘剤(viscosity building agent)が挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。
【0036】
適切な緩衝系(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムもしくはホウ酸)が、貯蔵条件下でのpH変化を防止するために、上記組成物に添加され得る。その特定の濃度は、使用される剤に依存して変化する。しかし、好ましくは、上記緩衝剤は、pH6.0〜7.5の範囲内に標的pHを維持するように選択される。
【0037】
特定の実施形態において、本発明の液剤組成物中の上記オロパタジンの濃度は、少なくとも0.05% w/vである。例えば、上記オロパタジンの濃度は、約0.05%、0.075%、0.10%、0.15%、0.20%、0.25%、0.30%、0.35%、0.40%、0.45%、0.50%、0.55%、もしくは0.60% w/v、またはこれより高くであり得る。特定の実施形態において、本発明の液剤組成物は、少なくとも0.05% w/v オロパタジンを含む液剤処方物である。特定の実施形態において、本発明の液剤処方物は、0.17〜0.62% w/v オロパタジンを含む。特定の実施形態において、眼における使用が意図された液剤処方物は、0.17〜0.25% オロパタジン、および好ましくは、0.18〜0.22% w/v オロパタジンを含む。特定の実施形態において、鼻における使用が意図された液剤処方物は、0.38〜0.62% w/v オロパタジンを含む。
【0038】
特定の実施形態において、本発明の液剤組成物中の上記式IのPDE4インヒビター化合物の濃度は、少なくとも0.05% w/vである。例えば、上記式IのPDE4インヒビター化合物の濃度は、約0.05%、0.10%、0.15%、0.20%、0.25%、0.30%、0.35%、0.40%、0.45%、0.50%、0.55%、もしくは0.60% w/v、またはこれより高くであり得る。
【0039】
特定の実施形態において、本発明の液剤組成物は、アレルギー性障害もしくは炎症性障害(眼、鼻、皮膚、および耳のアレルギー性障害もしくは炎症性障害が挙げられる)を処置するために有用である。
【0040】
特定の実施形態において、眼用処方物は、眼障害を処置するために、それを必要な患者の目に投与される。用語「眼障害」とは、本明細書中で使用される場合、眼のアレルギー状態および/もしくは炎症状態(例えば、アレルギー性眼障害(アレルギー性結膜炎、春季結膜炎、春季カタル、および巨大乳頭結膜炎が挙げられる)、ドライアイ、緑内障、角膜血管新生、視神経炎、シェーグレン症候群、網膜神経節変性(retinal ganglion degeneration)、眼の虚血、網膜炎、網膜症、ぶどう膜炎、羞明、ならびに眼の組織への急性傷害と関連した炎症および疼痛が挙げられる。具体的には、上記化合物は、緑内障性網膜症および/もしくは糖尿病性網膜症を処置するために使用され得る。上記化合物はまた、眼の外科手術(例えば、白内障手術および屈折矯正手術)に由来するような術後炎症もしくは疼痛を処置するために使用され得る。特定の実施形態において、本発明の化合物は、アレルギー性結膜炎;春季結膜炎;春季カタル;および巨大乳頭結膜炎からなる群より選択されるアレルギー性眼疾患を処置するために使用される。アレルギー性結膜炎。
【0041】
一実施形態において、本発明の液剤組成物は、眼へ送達するための眼用処方物(例えば、局所的眼用処方物)である。上記液剤組成物は、水性の、滅菌された眼用液剤、懸濁物、もしくはエマルジョンを形成するために、眼科的に受容可能な保存剤、界面活性剤、増粘剤(viscosity enhancer)、浸透増強剤、緩衝化剤、等張化剤、および水を含み得る。ゲル化剤も使用され得、これらとしては、ゲランガムおよびキサンタンガムが挙げられるが、これらに限定されない。滅菌眼用軟膏処方物を調製するために、オロパタジンおよび式IのPDE4インヒビター化合物は、適切なビヒクル中で、保存剤と合わされる。滅菌眼用ゲル処方物は、類似の眼用調製物について発表されている処方に従って、オロパタジンおよび式IのPDE4インヒビター化合物を、例えば、CARBOPOL(登録商標)−974、CARBOPOL(登録商標)−940(BF Goodrich,Charlotte,NC)などの組み合わせから調製される親水性基剤中で懸濁することによって調製され得る;保存剤および等張化剤が、組み込まれ得る。
【0042】
本発明の液剤組成物は、眼に、例えば、アレルギー性結膜炎および/もしくは眼の炎症を処置するために局所投与され得る。一般に、上記目的に使用される用量は変動するが、アレルギー性結膜炎および/もしくは眼の炎症を低下もしくは除去するために有効な量にある。一般に、このような組成物の1〜2滴が、1日に1回以上投与される。例えば、上記組成物は、1日に 2〜3回、またはアイケアの提供者によって指示されるように投与され得る。
【0043】
局所的眼用生成物はまた、複数用量形態でパッケージされ得る。従って、保存剤は、使用の間の微生物汚染を防ぐために必要とされ得る。適切な保存剤としては、以下が挙げられる:塩化ベンザルコニウム、ベンゾドデシニウムブロミド、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、ポリクオタニウム−1、もしくは当業者に公知の他の剤。このような保存剤は、代表的には、0.001〜5.0% w/vのレベルで使用される。本発明の単位用量組成物は、滅菌されているが、代表的には、保存剤が入っていない(unpreserved)。従って、このような組成物は、一般に、保存剤を含まない。本発明の眼用組成物はまた、保存剤を含まずに提供され得、単位用量形態においてパッケージされる。
【0044】
本発明の組成物は、必要に応じて、1種以上の賦形剤を含む。眼もしくは鼻への局所適用が意図された液剤組成物(例えば、液剤もしくはスプレー)に一般に使用される賦形剤としては、等張化剤、保存剤、キレート化剤、緩衝化剤、界面活性剤および抗酸化剤が挙げられるが、これらに限定されない。適切な張度調節剤としては、マンニトール、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトールなどが挙げられる。適切な保存剤としては、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、ベンゾドデシニウムブロミド、ポリクオタニウム−1などが挙げられる。適切なキレート化剤としては、エデト酸ナトリウムなどが挙げられる。適切な緩衝化剤としては、ホスフェート、ボレート、シトレート、アセテート、トロメタミンなどが挙げられる。適切な界面活性剤としては、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が挙げられるが、非イオン性界面活性剤が好ましい(例えば、ポリソルベート、ポリエトキシル化ひまし油誘導体、ポリエトキシル化脂肪酸、ポリエトキシル化アルコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、およびオキシエチル化三級オクチルフェノールホルムアルデヒドポリマー(チロキサポール))。適切な抗酸化剤としては、スルファイト、チオスルフェート、アスコルベート、BHA、BHT、トコフェロールなどが挙げられる。本発明の組成物は、必要に応じて、さらなる活性剤を含む。本発明の組成物は、1種以上の非イオン性、アニオン性、もしくはカチオン性のポリマーを、滑沢剤もしくは粘性剤(viscosity agent)として含み得、これらとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエトレングリコール(PEG)、ポロキサマー、ポリプロピレングリコール、キサンタンガム、グアールガム、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アルギン酸および塩、ゲランガム、カラギーナン、およびキトサンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
種々の等張化剤は、上記組成物の張度を、好ましくは、眼用組成物に関しては、天然の涙液の張度へと調節するために使用され得る。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、プロピレングリコール、もしくはグリセロールは、生理学的張度に近づくように、上記組成物に添加され得る。このような等張化剤の量は、添加されるべき特定の剤に依存して変動する。しかし、一般に、上記組成物は、最終組成物が眼に受容可能な重量オスモル濃度(一般に、約150〜450mOsm、好ましくは、250〜350mOsm)を有するようにするために十分な量で、等張化剤を有する。
【0046】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、pH約3.0〜約8.5を有する。一実施形態において、本発明の眼用組成物は、pH4.0〜8.0、好ましくは、pH5.0〜7.5、および最も好ましくは、pH6.0〜7.4を有する。鼻における使用が意図された本発明の組成物は、好ましくは、pH3.0〜8.0および最も好ましくは、pH5.0〜7.5を有する。
【0047】
特定の実施形態において、本発明の液剤組成物は、鼻適用のために処方され得、鼻の障害を処置するために使用され得る。従って、特定の実施形態において、本発明は、鼻の障害を処置する方法を提供し、上記方法は、本発明の液剤組成物を、それを必要な患者の鼻に投与する工程を包含する。用語「鼻の障害」とは、本明細書中で使用される場合、鼻のアレルギー状態および/もしくは炎症状態を含む。
【0048】
さらなる実施形態において、本発明の鼻用液剤組成物は、治療上有効な鼻内濃度を提供するように処方される。例えば、本発明の鼻用液剤組成物は、約0.1〜1000nMもしくは1〜100nMの鼻内濃度を有し得る。鼻内組成物は、熟練した臨床医の慣用的な裁量に従って、1日に1〜4回鼻粘膜へと送達される。上記処方物のpHは、3〜8の範囲もしくは好ましくは、5〜7.5の範囲にあるべきである。鼻内挿入物もしくは移植物デバイスまたは液剤薬物送達スポンジ(GELFOAM(登録商標),Pharmacia & Upjohn,Kalamazoo,MI)を介した鼻粘膜への直接局所投与は、オロパタジンおよび式IのPDE4インヒビター化合物を、上記デバイスの設計、その薬物放出特徴、および熟練した臨床医の裁量に従って、数週間に亘って、1〜2μl/時間(例えば、0.0001〜10mg/日)の速度で送達し得る。
【0049】
正確なレジメンは、医師の裁量に預けられるが、得られた液剤は、好ましくは、本明細書中で記載されるように、1日に1〜4回、もしくは医師によって指示されるように、鼻内に投与される。
【0050】
鼻に受容可能なキャリアとは、鼻の刺激をせいぜい、ほとんどから全く引き起こさず、必要であれば、適切な保存を提供し、均質な投与量で本発明の液剤組成物を送達するキャリアに言及する。鼻送達に関しては、本発明の液剤組成物は、水性の、滅菌懸濁物、液剤、エマルジョン、または粘性の、半粘性の、もしくは半固体のゲルを形成するために、鼻に受容可能な保存剤、共溶媒、界面活性剤、増粘剤、浸透増強剤、緩衝化剤、等張化剤、および水とあわされ得る。鼻用液剤処方物は、生理学的に受容可能な等張性水性緩衝液中に上記剤を溶解することによって調製され得る。さらに、上記鼻用液剤は、鼻に受容可能な界面活性剤を含み得る。増粘性化合物(viscosity building compound)(例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、もしくはカルボマー)は、例えば、上記化合物の保持を改善するために、本発明の組成物に添加され得る。
【0051】
滅菌した鼻用軟膏処方物を調製するために、本発明の液剤組成物は、適切なビヒクル中に保存剤を含みうる。滅菌した鼻用ゲル処方物は、オロパタジンおよび/もしくは上記式IのPDE4インヒビター化合物を、例えば、CARBOPOL(登録商標)−974、CARBOPOL(登録商標)−940(BF Goodrich,Charlotte,NC)などから、他の適切な鼻用処方物に関して当該分野で公知の方法に従って調製される親水性塩基中に懸濁することによって、調製されうる。VISCOAT(登録商標)(Alcon Laboratories,Inc.,Fort Worth,TX)は、例えば、鼻内注射のために使用されうる。本発明の他の組成物は、浸透増強物質(例えば、CREMOPHOR(登録商標)(ポリオキシエチレンひまし油)およびTWEEN(登録商標) 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート))を含みうる。
【0052】
本発明の組成物は、当業者に公知であるように、鼻スプレーの形態で鼻内に投与されうる。
【0053】
鼻送達は、オロパタジンおよび上記式IのPDE4インヒビター化合物を、生体接着性の粒状キャリア(<200μm)(例えば、セルロース、ポリアクリレートもしくはポリカルボフィルを含むもの)の中に、適切な吸収増強剤(例えば、リン脂質もしくはアシルカルニチン)とともに組み込むことによって達成されうる。入手可能なシステムとしては、DanBiosystおよびSciosによって開発されたものが挙げられる。上記処方物は、ValoisもしくはPfeifferのような会社から入手可能な単純な鼻スプレーデバイスを使用して投与されうる。
【0054】
特定の実施形態において、オロパタジンおよび式IのPDE4インヒビター化合物を含む液剤組成物は、皮膚への送達のために処方される。特に、皮膚への投与が意図された組成物は、液剤、懸濁物、もしくは半固体であり得る。しかし、上記投与形態で提示される上記オロパタジン(もしくはその薬学的に受容可能な塩)およびPDE4インヒビター化合物(もしくはその薬学的に受容可能な塩)は、液剤として全て分子的に溶解されるはずである。上記投与形態で提示される賦形剤は、例えば、懸濁物として固体であってもよいし、もしくはクリーム剤として半固体であってもよい。上記組成物の粘性は、上記皮膚化学的製品の必要性に依存して、1〜100,000cpもしくはこれより大きいなどさまざまであり得る。
【0055】
さらなる実施形態において、オロパタジンおよび式IのPDE4インヒビター化合物を含む耳用組成物は、薬理学的に有効な耳内濃度を提供するように処方される。局所的耳用組成物は、熟練した臨床医の慣用的な裁量に従って、1日あたり1〜4回もしくはこれより多くの回数、耳に送達されうる。上記処方物のpHは、4.0〜9.0、もしくは4.5〜7.4の範囲に及ぶはずである。耳の神経(聴神経および前庭神経)へ直接および/あるいは耳内挿入物もしくは移植物デバイスまたは液剤薬物送達スポンジ(GELFOAM(登録商標),Pharmacia & Upjohn,Kalamazoo,MI)を介して耳の神経乳頭(otic nerve−heads)への局所的な投与は、デバイス設計、その薬物放出特徴、および熟練した臨床医の裁量に従って、数週間にわたって1〜2μl/時間(例えば、0.0001〜10mg/日)の速度で本発明の液剤組成物を送達し得る。
【0056】
耳への送達に関しては、本発明の液剤組成物は、水性の滅菌した懸濁物、液剤、または粘性の、半粘性の、もしくは半固体のゲルを形成するために、耳に受容可能な保存剤、共溶媒、界面活性剤、増粘剤、浸透増強剤、緩衝化剤、等張化剤、もしくは水と合わせられ得る。
【0057】
本発明の液剤組成物は、耳に直接(例えば:局所的点耳剤もしくは軟膏剤;耳中のもしくは耳に隣接して移植された遅延放出デバイス)投与されうる。局所投与としては、耳の筋肉内、鼓室内腔(intratympanic cavity)および蝸牛内注射の投与経路が挙げられる。さらに、本発明の液剤組成物は、熟練した臨床医により果たされる裁量および用心をもって、中耳/内耳の窓膜(window membrane)もしくは隣接する構造に対して、本発明の液剤組成物を浸漬したジェルフォーム(gelfoam)、もしくは類似の吸収製品および接着製品を配置することによって、内耳に投与されうる。
【0058】
本発明の組成物は、好ましくは、不透明なプラスチック容器中にパッケージされる。眼用製品のための好ましい容器は、ガンマ線照射の代わりにエチレンオキシドを使用して滅菌した低密度ポリエチレン容器である。鼻用製品のために好ましい容器は、鼻スプレーポンプを備えた高密度ポリエチレン容器である。
【0059】
本明細書中で引用される参考文献は、これらが本明細書中に記載されるものを捕捉する例示的手順もしくは他の詳細を提供する程度まで、具体的に参考として援用される。
【0060】
文脈によって別のことが必要とされるのでなければ、本明細書中で使用される単数形は、複数形を含むものとし、複数形は、単数形を含むものとする。
【実施例】
【0061】
以下の実施例(行われた実験および達成された結果を含む)は、例示目的で提供されるに過ぎず、本発明を限定するとは解釈されるべきでない。
【0062】
(実施例1:オロパタジン−PDE4インヒビター溶解度研究)
以下の実験を、オロパタジンの水への溶解度に対する式Iの化合物の効果を決定するために行った。
【0063】
表1に示される組成を有する処方物を、以下のとおり、オロパタジン溶解度試験のために調製した:0%、0.1%、0.3%、もしくは1%の、以下のうちのいずれか:化合物1(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルアミノ)−7−メトキシ−8−(6−(4−メチルピペラジン−1−イル)ヘキシルオキシ)キノリン−2(1H)−オン)もしくは化合物2(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルアミノ)−7−メトキシ−8−(6−モルホリノヘキシルオキシ)キノリン−2(1H)−オン)と、少なくとも1% オロパタジン塩酸塩とを含む処方物の10ml サンプルを表2に示されるように調製し、標的pHに調節した。化合物2は、pH7.4において試験しなかった。なぜなら、そのpHでは十分に可溶性でなかったからである。上記サンプルを振盪機上で混合し、上記pHを、1日間および6日間混合した後に、その標的pHに再度調節した。7日目に、上記サンプルを、Acrodisc 25mm GXF/GHP 0.2ミクロンフィルタを通して濾過した。濾液の最初の3mlを、最終pH測定のために集め、濾液の次の3mlを、以下に示すオロパタジンアッセイ(遊離塩基として)のために、2本の1.5mL HPLCバイアルへと充填した。化合物1は、サンプルA〜サンプルHにおいてアッセイしなかった。なぜなら、アッセイ法が、利用可能でなかったからである。上記オロパタジンアッセイのための二連の化合物1/オロパタジンサンプルを、HPLCへとそのまま注入した。化合物2およびオロパタジンを、サンプルI、J、およびKにおいてアッセイした。単一化合物2/オロパタジンサンプルを、50/50 アセトニトリル/水で1/10希釈し、上記UPLCへと注入した。
【0064】
【表1】
【0065】
上記濾過したサンプルの最終pHを、Ross Semimicro組み合わせpH電極および自動温度プローブを使用して、Orion 525A+ pHメーターで測定した。
【0066】
上記化合物1およびオロパタジンHPLCアッセイを、以下の条件を使用して行った:
機器: Waters 2695 Separation ModuleおよびEmpower Softwareを備えたWaters 2487 Variable Wavelength Ultraviolet−Visible Detector
カラム: Phenomenex Ultracarb C8,5ミクロン,150×4.6mm
移動相:
溶媒A=アセトニトリル
溶媒B=NaOH/HClでpH3.0へと調節した、100mM リン酸カリウムと0.1% トリエチルアミン
流速=1ml/分
勾配:
時間(分) %A %B
0 28 72
11 50 50
22 50 50
23 28 72
30 28 72 注入−運転の終了
検出: 299nm紫外線吸光度
注入体積: 20μl
オロパタジン保持時間: 約6.2分。
【0067】
上記化合物2およびオロパタジンUPLCアッセイを、以下の条件を使用して行った:
機器: TUV DetectorおよびEmpower Softwareを備えたWaters ACQUITY UPLC System
カラム: Acquity UPLC BEH Shield C18,1.7ミクロン,100×2.1mm
移動相:
溶媒A=NaOH/HClでpH3.0に調節した0.1% リン酸
溶媒B=アセトニトリル
流速=0.3ml/分
勾配:
時間(分) %A %B
0 75 25
8.5 20 80
9 75 25
14 75 25 注入−運転の終了
検出: 285nm紫外線吸光度
注入体積: 3μl
AL−53817保持時間: 約4.1分
オロパタジン保持時間: 約4.5分
上記サンプルについての上記最終濾液pH、オロパタジンおよび化合物2 HPLCアッセイの結果、および標的化合物1濃度を、表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
サンプルE〜サンプルKまでの標的pHは、5.2であり、上記懸濁物のpH読み取り値は、濾過前のこの値に近かった。しかし、濾過後、上記液剤のpHは、概して、上記懸濁物pHより約0.2pHユニット高かった。このpHシフトは、一般に、液剤に対して懸濁物のpHを測定する場合に認められる。A〜Hまでの二連のサンプルをアッセイし、その二連の値を平均した。
【0070】
そのミリモル濃度(mM)を、その% w/v濃度をその分子量で割り算して10000を掛け算することによって、計算した。
【0071】
上記分子量は、以下のとおりであった:
オロパタジン(遊離塩基として)=337.4g/モル;
化合物1=534.5g/モル;
化合物2=521.4g/モル。
【0072】
上記化合物1および化合物2の濃度を、% w/vおよびミリモル濃度(mM)として、得られたオロパタジン遊離塩基溶解度に対してプロットし、直線方程式を上記データに合わせた(図1および図2)。
【0073】
化合物1および化合物2はともに、線形的な濃度依存様式において、オロパタジンの水への溶解度を増大させた。溶解度増強の比は、上記化合物約2分子 対 オロパタジン1分子であった。
【0074】
前述の開示は、本発明の特定の具体的実施形態を強調し、これらに等しい全ての改変もしくは変更が、添付の特許請求の範囲に記載されるように、本発明の趣旨および範囲内にあることが理解されるべきである。
図1
図2