特許第5721728号(P5721728)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5721728電磁波を送受信するためのデバイス、そのデバイスを備えたシステム、及びそのようなデバイスの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721728
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】電磁波を送受信するためのデバイス、そのデバイスを備えたシステム、及びそのようなデバイスの使用
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/00 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
   H01Q15/00
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-537419(P2012-537419)
(86)(22)【出願日】2010年11月9日
(65)【公表番号】特表2013-510486(P2013-510486A)
(43)【公表日】2013年3月21日
(86)【国際出願番号】EP2010067104
(87)【国際公開番号】WO2011054963
(87)【国際公開日】20110512
【審査請求日】2012年10月17日
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2009/056039
(32)【優先日】2009年11月9日
(33)【優先権主張国】IB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512118716
【氏名又は名称】タイム・リバーサル・コミュニケーションズ
(73)【特許権者】
【識別番号】506128396
【氏名又は名称】サントル ナスィオナル ド ラ ルシェルシュ スィアンティフィク(セ.エン.エル.エス.)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ドゥ・ロニー
(72)【発明者】
【氏名】ジェオフロイ・ルロシー
(72)【発明者】
【氏名】アーナウ・トゥーリン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・フィンク
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス・ルモールト
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−221523(JP,A)
【文献】 特開2001−345633(JP,A)
【文献】 特開2001−358518(JP,A)
【文献】 特開2001−189620(JP,A)
【文献】 国際公開第01/031746(WO,A1)
【文献】 特開2005−160011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/44
H01Q 15/00
H01Q 19/32
H01Q 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1mmと1mとの間の自由空間波長λを有する電磁波を送受信するためのデバイスであって、
実質的に平坦な第一の表面(S1)を少なくとも有する固体誘電体の媒体(11)であって、前記自由空間波長λが該媒体(11)内部の波長λに対応する、媒体(11)と、
前記媒体内部に組み込まれた複数の導体素子(12)であって、各導体素子が、前記第一の表面に近接する第一の端部(12a)と前記第一の表面から離れた第二の端部(12b)との間において前記第一の表面(S1)と交差する方向(D)に沿って延伸する所定の長さのワイヤであり、二つの隣接する導体素子(12)がλ/10未満の距離で互いに間隔が空けられている、複数の導体素子(12)と、
電気信号(S)を送受信するために電子デバイス(14)に接続される少なくとも一つのアンテナ素子(13)とを備え、
前記ワイヤの前記第二の端部が、λ/10よりも大きな末端間距離で前記ワイヤの前記第一の端部から離れていて、
前記複数の導体素子のうち少なくとも一つの同調導体素子が、前記アンテナ素子(13)からλ/10未満の距離において第一の端部を有し、前記同調導体素子が、前記波長λに対応する前記同調導体素子に沿った電磁共鳴を発生させるように構成された長さHwireを有し、
各導体素子が、
曲線部分を含み、且つ、
λ/4よりも大きな前記曲線部分に沿った曲線距離で互いに離れている第一の点及び第二の点を備え、
前記第一の点及び前記第二の点が、λ/10よりも大きな曲線距離でも互いに離れている、デバイス。
【請求項2】
前記第一の表面(S1)に沿って延伸する電気ベクトル及び磁気ベクトルを有し、且つ、前記方向(D)に沿って延伸する伝播ベクトルを有する前記媒体内部の複数の横電磁モード(TEM)を有し、前記複数の横電磁モードが、前記波長λに対応する媒体の共鳴周波数を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記アンテナ素子(13)が、前記媒体(11)の横電磁モード(TEM)の少なくとも一つの腹に近接して配置されている、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
他の電気信号を送受信するために前記電子デバイスに接続される他のアンテナ素子(13)を更に備え、前記他のアンテナ素子が前記アンテナ素子と異なり、前記他の電気信号が前記電気信号と異なり、前記同調導体素子が前記他のアンテナ素子からλ/10未満の距離において第一の端部(12a)を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記アンテナ素子(13)が前記複数の導体素子(12)のうちの一つである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記アンテナ素子(13)が、前記第一の表面に実質的に近接する電子ボードの導体である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記長さHwireが、0.7・N・λ/2とN・λ/2との間であり、Nが自然数である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記長さHwireが実質的にN・λ/2に等しく、Nが自然数である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記複数の導体素子のうちの他の同調導体素子を更に備え、前記他の同調導体素子が前記同調導体素子と異なり、前記他の同調導体素子が、前記アンテナ素子からλ/10未満の距離において第一の端部を有し、前記他の同調導体素子が、他の波長λに対応する前記他の同調導体素子に沿った電磁共鳴を発生させるように構成された他の長さHwireを有し、前記他の波長λが前記波長λと異なり、前記アンテナ素子が、前記波長λの電磁波及び前記他の波長λの電磁波を同時に送受信することができる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記方向が直線であり、アクティブな導体素子が前記方向(D)に沿って延伸する線形ワイヤである、請求項1からのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記媒体が第二の表面(S2)を有し、前記第二の表面が実質的に平坦であり、前記方向と交差し、前記第一の表面に平行ではなく、前記媒体が傾斜形状を有し、前記媒体内部に組み込まれた複数の導体素子が波長範囲に適合した複数の長さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記方向が、前記第一の表面と前記第二の表面との間のアーチ状方向であり、円弧の中心を有し、前記円弧の中心近くの導体素子が他の導体素子よりも短い長さを有する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記複数の導体素子のうちの他の同調導体素子を更に備え、前記他の同調導体素子が前記同調導体素子と異なり、前記他の同調導体素子が前記アンテナ素子からλ/10未満の距離において第一の端部を有し、前記他の同調導体素子が、他の波長λに対応する前記他の同調導体素子に沿った電磁共鳴を発生させるように構成された前記他の同調導体素子を覆う誘電体層を備え、前記他の波長λが前記波長λと異なり、前記アンテナ素子が、前記波長λの電磁波及び前記波長λの電磁波を同時に送受信することができる、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記媒体が、前記媒体の屈折率を変更する孔を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記導体素子の前記第一の端部が前記第一の表面内において規則的に間隔が空けられていて、前記第一の表面(S1)内に周期パターンを形成している、請求項1から14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記媒体が、前記第一の表面から実質的に前記方向に沿って前記媒体周囲に延伸する側面を更に備え、前記側面が導体で覆われている、請求項1から15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記導体素子の各第一の端部が、電気質量、定電位、パッシブインピーダンス、抵抗インピーダンス、キャパシタインピーダンス、及びインダクタインピーダンスから成る群から選択された電荷に接続される、請求項1から16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記曲線距離がλ/2よりも大きい、請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記請求項1から18のいずれか一項に記載の電磁波を送受信するためのデバイスを備えたシステムであって、前記アンテナ素子(13)が、前記電磁波を表す電気信号を送受信するために電子デバイスに接続されている、システム。
【請求項20】
1mmから1mの間、好ましくは10cmから40cmの間の自由空間波長λを有する電磁波を送受信するための請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を送受信するためのデバイス、そのデバイスを備えたシステム、及びそのようなデバイスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人自身の特許文献1から、複数の金属拡散器に取り囲まれた反応型アンテナ素子を有するデバイスが知られている。この構成によって、電磁波は、サブ波長距離においてアンテナ素子付近の点iに集束される。
【0003】
このデバイスは十分なものではあるが、依然として改善の必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/007024号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一課題は、電磁波を送受信するための改善されたデバイスを提供することである。
【0006】
このため、本デバイスは、1mmから1mの間の自由空間波長λを有する電磁波を送受信するためのデバイスを提案し、そのデバイスは:
‐ 実質的に平坦な第一の表面を少なくとも有する固体誘電体の媒体(自由空間波長λは媒体(11)内部の波長λに対応する)と、
‐ 媒体内部に組み込まれた複数の導体素子(各導体素子は、第一の表面に近接する第一の端部と第一の表面から離れた第二の端部との間において第一の表面と交差する方向に沿って延伸する所定の長さのワイヤであり、二つの隣接する導体素子はλ/10未満の距離で互いに間隔が空けられていて、第二の端部は第一の端部からλ/10よりも大きな末端間距離で離れていて、導体素子は、λ/4よりも大きな導体素子に沿った曲線距離で互いに離れている第一の点及び第二の点を有し、第一の点及び第二の点は、λ/10よりも大きな直線距離においても互いに離れている)と、
‐ 電磁波を表す電気信号を送受信するために電子デバイスに接続される少なくとも一つのアンテナ素子とを備え、
複数の導体素子のうちの少なくとも一つの同調導体素子は、アンテナ素子からλ/10未満の距離において第一の端部を有し、その同調導体素子は、波長λに対応する同調導体素子に沿った電磁共鳴を発生させるように構成された長さHwireを有する。
【0007】
これらの特徴によって、本デバイスは、導体素子を含む媒体(ワイヤ媒体)の横電磁モード(TEM)と一致する電磁共鳴を有する同調導体素子を備える。従って、本デバイスは、電磁波を効率的に送受信することができ、このようなデバイスはサイズが非常に小型であり、方向Dに垂直な横方向X、Yに沿ったサイズが小型である。
【0008】
本デバイスの多様な実施形態においては、以下の特徴のうち一つ以上が任意で組み込まれ得る:
‐ 媒体内部の複数の横電磁モードは、第一の表面に沿って延伸する電気ベクトル及び磁気ベクトルを有し、且つ、前記方向に沿って延伸する伝播ベクトルを有し、複数の横電磁モードは、波長λに対応する媒体の共鳴周波数を有する;
‐ アンテナ素子は、媒体の横電磁モードの少なくとも一つの腹に近接して配置される;
‐ 本デバイスは、他の電気信号を送受信するために電子デバイスに接続される他のアンテナ素子を備え、他のアンテナ素子は前記アンテナ素子と異なり、他の電気信号は前記電気信号と異なり、同調導体素子は、他のアンテナ素子からλ/10未満の距離において第一の端部を有する;
‐ アンテナ素子は、媒体の横電磁モードの少なくとも一つの腹に近接して配置され、他のアンテナ素子は、媒体の横電磁モードの少なくとも一つの他の腹に近接して配置され、腹及び他の腹は横電磁モードの異なるモードに属する;
‐ アンテナ素子は複数の導体素子のうちの一つである;
‐ アンテナ素子は第一の表面に実質的に近接した電子ボードの導体である;
‐ 長さHwireは0.7・N・λ/2とN・λ/2との間であり、Nは自然数である;
‐ 長さHwireはN・λ/2に実質的に等しく、Nは自然数である;
‐ 本デバイスは、複数の導体素子のうちの他の同調導体素子を更に備え、他の同調導体素子は前記同調導体素子と異なり、他の同調導体素子は、アンテナ素子からλ/10未満の距離において第一の端部を有し、他の同調導体素子は、他の波長λに対応する他の同調導体素子に沿った電磁共鳴を発生させるように構成された他の長さHwireを有し、他の波長λは波長λと異なり、前記アンテナ素子が、波長λの電磁波及び他の波長λの電磁波を同時に送受信できるようになっている;
‐ 前記方向は直線であり、アクティブな導体素子が前記方向に沿って延伸する線形ワイヤとなっている;
‐ 媒体が第二の表面を有し、その第二の表面が実質的に平坦で、前記方向と交差し、第一の表面と平行ではなく、媒体が傾斜形状を有し、媒体内部に組み込まれた導体素子が波長範囲に適合した複数の長さを有するようになっている;
‐ 前記方向が、第一の表面と第二の表面との間のアーチ状方向であり、円弧の中心を有し、その円弧の中心近くの導体素子が、他の導体素子よりも短い長さを有するようになっている;
‐ 本デバイスは、複数の導体素子のうちの他の同調導体素子を更に備え、他の同調導体素子は前記同調導体素子と異なり、他の同調導体素子は、アンテナ素子からλ/10未満の距離において第一の端部を有し、他の同調導体素子は、他の波長λに対応する他の同調導体素子に沿った電磁共鳴を発生させるように構成された他の同調導体素子を覆う誘電体層を備え、他の波長λは波長λと異なり、アンテナ素子が、波長λの電磁波及び他の波長λの電磁波を同時に送受信できるようになっている;
‐ 媒体が、媒体の屈折率を変更する孔を備える;
‐ 導体素子の第一の端部が第一の表面内において規則的に間隔が空けられて、第一の表面内に周期パターンを形成する;
‐ 媒体が、第一の表面から実質的に前記方向に沿って媒体周囲に延伸する側面を更に備え、その側面が導体で覆われる;
‐ 導体素子の各第一の端部が、電気質量、定電位、パッシブインピーダンス、抵抗インピーダンス、キャパシタインピーダンス、及びインダクタインピーダンスから成る群から選択された電荷に接続される;
‐ 曲線距離がλ/2よりも大きい。
【0009】
本発明の他の課題は、電磁波を送受信するためのデバイスを備えたシステムを提供することであり、アンテナ素子は前記電磁波を表す電気信号を送受信するために電子デバイスに接続される。
【0010】
本発明の他の課題は、1mmと1mの間、好ましくは10cmと40cmとの間の自由空間波長λを有する電磁波を送受信するためのデバイスの使用である。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照する以下の非限定的な例として与えられる六実施形態の詳細な説明から明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の係る電磁波を送受信するためのデバイスの斜視図である。
図2図1のデバイス内部の三つの横電磁モードの三つの図である。
図3】傾斜形状を有する媒体を備えた本発明の第二の実施形態である。
図4】アーチ形状を有する媒体を備えた本発明の第三の実施形態である。
図5】デバイスのいくつかの導体素子を取り囲む誘電体層を備えた本発明の第四の実施形態である。
図6】デバイスの媒体内部に孔を備えた本発明の第五の実施形態である。
図7】非平行な導体素子を有する本発明の第六の実施形態である。
図8】いずれか一つの実施形態によるデバイスに属する導体素子の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
多様な図面において、同じ参照番号は、同一又は同様の要素を示す。方向Zは垂直方向である。方向X又はYは水平方向である。
【0014】
図1は、空間において電磁波を送受信するためのデバイス10の第一の実施形態を示し、その電磁波は、1mmから1mの間、好ましくは10cmから40cmの間の自由空間波長λを有する。
【0015】
本デバイスは:
‐ 固体誘電体の媒体11と、
‐ その媒体11内部に組み込まれたワイヤである複数の導体素子12と、
‐ 電磁波Wを表す電気信号Sを送受信するための電子デバイス14に接続されるアンテナ素子13とを備える。
【0016】
媒体は屈折率nを有する。
【0017】
空間は空気であるか、又は1に等しい屈折率を有するものとされる。
【0018】
自由空間波長λは、以下の関係式で媒体11内部の波長λに対応する:
・λ=λ
【0019】
媒体11は、平行六面体形状を有し、第一の表面S1と、垂直方向Zに沿って第一の表面に対向する第二の表面S2とを備える。第一及び第二の表面S1、S2は実質的に平行な面である。方向Dはこれら表面に垂直で且つ垂直方向Zに平行な実質的な直線である。第一及び第二の表面S1、S2は高さHで離れている。
【0020】
媒体はεの誘電率を有する。
【0021】
導体素子12は或る直径の円形ワイヤであり、方向Dに沿って延伸している。これら導体素子12は、第一の表面S1上の第一の端部12aと、第二の表面S2上の第二の端部12bとを有する。各導体素子12は同じ値Hの長さを有する。本第一の実施形態では、導体素子12は、第一の表面S1上に、又は垂直方向Zに垂直なあらゆる平面XY上に、規則的な間隔の正方形グリッドを形成する。導体素子12は垂直方向Zに沿って互いに平行であり、λ/10未満の距離dで方向X又はYに沿って互いに間隔が空けられる。このサブ波長距離dは、グリッドのステップである。従って、導体素子12はワイヤの規則的格子を形成する。
【0022】
一又は複数のアンテナ素子13は、第一の表面S1、第二の表面S2、又はこれら両方の上に設置される。アンテナ素子13には、単一の電磁波Wを送受信するように単一の電気信号Sが供給されるか、又は、複数の電磁波を同時に送受信するために複数の電気信号が供給され得る。
【0023】
媒体11内部に埋め込まれたワイヤ導体素子12を備えたこのようなワイヤ媒体において、磁場ベクトルB及び電場ベクトルEは方向Dに垂直であり、伝播波ベクトルKは、その方向Dと共線的な伝播ベクトルである。電磁波Wは、方向Dに沿って媒体11内部を伝播する平面波である。
【0024】
磁場ベクトルB及び電場ベクトルEは、節及び腹を備えた媒体11内部の横電磁モードTEMを有する。TEMモードは、方向X及びYに沿ったサブ波長の変動を有する。図2a、2b及び2cは、三つの異なるモードによる媒体11内部の電場ベクトルEの振幅の変動を示し、媒体11は7×7の導体素子12を含む。各モードは、媒体11内部に異なるパターンを有し、他のモードと直交する。このダイバーシティの物理的性質によって、媒体11の境界における複数のアンテナ素子13の電気信号が互いに無相関となる。これらアンテナ素子13は、互いに独立的に使用可能であり、又はMIMO(multi−input multi−output)構成で使用可能である。更に、この複数又はアレイのアンテナは、サイズが非常に小型のデバイスである。
【0025】
ワイヤ媒体は非分散性媒体であり、その分散関係は:
ω=k・c/n
であり、
は伝播波ベクトルKのZ成分の値、
cは真空中の電磁波の速さ、
は媒体の物質の屈折率である。
【0026】
例えば、空気の屈折率は1であり、エポキシの屈折率は略2である。
【0027】
従って、媒体11は、異方性媒体である。各TEMモードは、同じ伝播速度と、同じ共鳴周波数fとを有し、f=ω/(2π)である。
【0028】
媒体11の全ての又は一部の導体素子12はこの共鳴周波数fに同調可能である。導体素子12は、0.7・N・λ/2からN・λ/2の間の特定長さHwireを有し得て、
‐ Nは自然数であり、
‐ λは媒体内部の波長である。
【0029】
より正確には、導体素子12は、以下の特定長さHwireを有し得る:
wire=N・λ/2
【0030】
従って、同調導体素子12は、TEMモードの共鳴周波数と一致する共鳴周波数を有する。
【0031】
この同調によって、TEMモードが励起し得るか、又は媒体11内部に組み込まれた大抵の導体素子12によって励起され得る。
【0032】
有利には、アンテナ素子13は、媒体11の横電磁モードの少なくとも一つの腹に近接して配置され得る。これは、電磁波を送受信するデバイスの感度を改善し得る。
【0033】
複数のアンテナ素子13がデバイス内部に組み込まれ得る。これら複数のものの各アンテナ素子13は、横電磁モードTEMの異なる腹に近接して配置され得る。そして、各アンテナ素子13に、単一の電気信号Sが供給される。そして、TEMモードに属する複数のモードが励起されて、より多くの導体素子12が、電磁波Wの送受信に寄与する。このようにして、デバイスの放射ダイアグラムが影響を受け得る。
【0034】
複数のアンテナ素子13がデバイス内部に組み込まれ得る。これら複数のものの各アンテナ素子13は、横電磁モードTEMの異なる腹に近接して配置され得る。各アンテナ素子13には、異なる電気信号Sが供給され得る。このようにして、本デバイスが、異なる独立的な電磁波Wを同時に送受信することができる。
【0035】
第一の変形例では、アンテナ素子13が、単純に、電子デバイス14に接続されたワイヤ媒体の導電素子12のうちの一つであり得る。
【0036】
第二の変形例では、アンテナ素子13は、電子ボード上方の導体のパッチ又はワイヤであり、その電子ボードは、媒体11の第一の表面S1及び/又は第二の表面に近接している。
【0037】
多様な実施形態において、異なる共鳴周波数のTEMモードを媒体内部に発生させることができる。
【0038】
図3に示される第二の実施形態では、上述のワイヤ媒体が、第一の表面S1に平行ではない面に沿って切断され、傾斜形状が形成される。このような媒体に組み込まれた導体素子12は、Hwire,minとHwire,maxとの間の複数の長さを有し、Hwire,minは媒体の最下部の高さに相当し、Hwire,maxは、媒体の最高部の高さに相当する。そして、本デバイスは、この高さ範囲に対応する所定の波長範囲に適合される。
【0039】
図4に示される第三の実施形態では、方向Dは、第一の表面S1と第二の表面S2との間のアーチ状方向である。例えば、媒体は、その各々の上に導体ストリップを有する複数のフレキシブルシート製であり、それらのシートがアーチ状にされ互いに積層される。円弧の中心近くの又は半径の短い導体ストリップ(導体素子)12は、半径の長い導体ストリップよりも短い。
【0040】
図5に示される第四の実施形態では、いくつかの導体素子12が、導体素子を覆う誘電体層15を有する。誘電体層15は、媒体11の誘電率εとは異なる誘電率εlayerを有する。誘電体層15で覆われた導体素子12の共鳴周波数は、層15の無い導体素子12の共鳴周波数と異なる。
【0041】
図6に示される第五の実施形態では、媒体11に孔が開けられて、孔16が形成される。孔は、所定の導体素子12近くの媒体11の屈折率nを変更する。
【0042】
図7に示される第六の実施形態では、導体素子12は互いに平行ではない。導体素子12の長さは媒体11内部で異なる。
【0043】
更に、上述の実施形態とは対照的に、導体素子12は第一の表面S1に沿った周期パターンを形成していない。
【0044】
これまでの五つの異なる実施形態によって、媒体11が複数の共鳴周波数を有し、電磁波を送受信するためのデバイスが拡大された帯域幅を有し得る。
【0045】
更に、追加の変形例によると:
‐ 媒体の側面LSが導体で覆われ得て、
‐ 第一の表面が接地板を有し得て、
‐ 導体素子12がループ形状又は曲線形状を形成し得て、
‐ アンテナ素子13が単極子又は双極子であり得て、
‐ アンテナ素子13が波長よりも短い又は波長よりも長いワイヤであり得て、
‐ アンテナ素子13が、媒体11内部に、第一の表面S1に沿って、又は第一及び第二の表面S1、S2に沿って組み込まれ得る。
【0046】
本発明のデバイス10は既知の方法で製造可能である。例えば、エポキシ材料上の多層銅のエッチングが使用可能であり、その各層は、層の面内部に複数の導体素子を備える。
【0047】
図1から図7に示される本発明の全ての実施形態において、導体素子12はループを形成しない。
【0048】
ループ状導体素子は電気インダクタンスである。
【0049】
このようなループ状導体素子は、磁場を送受信する電気LC共振器として機能する容量性素子に付随し得る。
【0050】
このような場合、導体素子12に属する第一及び第二の端部間の末端間距離はλ/10未満である。
【0051】
このようなループを形成する導体素子12は、スプリットリング素子、容量負荷ループ、又は人工磁気導体と称されることが多い。
【0052】
このような電気ループを用いた電磁波を送受信するためのデバイスは一般的に平坦であり、一般的には横方向X、Y内に大きなサイズを有する。
【0053】
本願の導体素子12は、このような全体的な電気挙動を有さない。導体素子12は、アーチ状であり得る主に線形ワイヤであり、電場を送受信する長さ方向に沿った電磁共鳴を有する。
【0054】
導体素子12は、波長λにおいて振動する磁場を発生させるように構成されたループを形成していない。
【0055】
図8に示されるように、各導体素子12に属する第一の端部12a及び第二の端部12bは、サブ波長λ/10よりも大きな末端間距離で互いに離れている。波長λは、媒体11の誘電体内部の波長である。
【0056】
第一及び第二の端部は離れている。ループ状導体とは対照的に、導体素子12は、顕著な電気容量効果を生じさせない。
【0057】
導体素子12は、その導体素子12に属する第一及び第二の点P1、P2が、λ/2よりも大きな導体素子12に沿った曲線距離、又はλ/10よりも大きな第一及び第二の点の間の直線距離で互いに離れるような形状を有する。
【0058】
第一及び第二の点P1、P2の間の導体素子12の部分はループを形成しない。ループ状導体とは対照的に、導体素子12は顕著な電気誘導効果を生じさせない。
【0059】
導体素子12は、電磁波の波長λに対応する共鳴周波数を有する電気LC共振器として機能しない。
【0060】
実質的に線形又はアーチ状ワイヤの導体素子12の形状によって、電磁波を送受信するための本デバイスは、方向Dに垂直な横方向X、Yに沿ってサイズが小型である。
【0061】
導体素子12は横方向X、Yにおいて互いに近接していて、二つの隣接する導体素子は、λ/2未満の距離で互いに間隔が空けられている。各導体素子12の電磁場及び共鳴は、隣接する導体素子の電磁波及び共鳴に結合されるので、複合TEMモードが提供される。
【符号の説明】
【0062】
11 媒体
12 導体素子
13 アンテナ素子
14 電子デバイス
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
図8