特許第5721735号(P5721735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721735
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】波から電力を取り出す装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/16 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
   F03B13/16
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-539415(P2012-539415)
(86)(22)【出願日】2010年11月22日
(65)【公表番号】特表2013-511648(P2013-511648A)
(43)【公表日】2013年4月4日
(86)【国際出願番号】GB2010051934
(87)【国際公開番号】WO2011061546
(87)【国際公開日】20110526
【審査請求日】2013年11月18日
(31)【優先権主張番号】0920310.0
(32)【優先日】2009年11月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511001781
【氏名又は名称】ペラミス ウェーブ パワー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PELAMIS WAVE POWER LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100160772
【弁理士】
【氏名又は名称】大串 賢
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ウィリアム イェム
(72)【発明者】
【氏名】ロス マッケイ ヘンダーソン
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−525489(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/112597(WO,A1)
【文献】 英国特許出願公開第2433553(GB,A)
【文献】 英国特許出願公開第2363431(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波から電力を取り出す装置であって、
少なくとも一の浮遊式ボディ部材であって、第1および第2の非平行な回転軸線の周りでの、該ボディ部材間の相対回転を可能にする連結器によって相互に連結されたボディ部材と、
第1のボディ部材に連結された第1端部と、第2のボディ部材に連結された第2端部とを有し、前記ボディ部材間の相対回転に抵抗して、該相対回転から電力を取り出す第1および第2の電力取り出し構成要素対を有する電力取り出しシステムと
を備え、
前記第1および第2の電力取り出し構成要素対は、それぞれ前記第1回転軸線のいずれか一方側に配置されるとともに、前記第2回転軸に対して対称であり、前記第1の電力取り出し構成要素対の間の横方向距離は、前記第2の電力取り出し構成要素対の間の横方向距離よりも小さい装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、各電力取り出し構成要素が、ピストンロッドおよびシリンダを有する油圧ラムアセンブリを備え、前記シリンダが前記第1ボディ部材に連結され、前記ピストンロッドが前記第2ボディ部材に連結される装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、各ボディ部材が長手方向の軸線を有し、前記シリンダおよび前記ピストンロッドが、それらのそれぞれのボディ部材に連結されて、前記シリンダと前記第1ボディ部材との間および、前記ピストンロッドと前記第2ボディ部材との間の相対的な軸線方向の運動が防止される装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置であって、
複数のボディ部材であって、隣接して対をなすボディ部材のそれぞれが、2つの非平行な回転軸線の周りでの、該ボディ部材の間の相対回転を可能にする連結器によって相互に連結されるボディ部材と、
各連結器のための電力取り出しシステムと
をさらに備える装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、連結されて対をなす前記ボディ部材がそれぞれ、前部ボディ部材および後部ボディ部材を備え、前記電力取り出しシステムが、連結されて対をなす前記前部ボディ部材のそれぞれに設置される装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置であって、前記連結器が、一対のボディ部材の間に配置されたプレート部材を備え、該プレート部材が、前記第1回転軸線の周りで回転可能に前記第1ボディ部材に連結されるとともに、前記第1回転軸線に対してほぼ垂直な前記第2回転軸線の周りで回転可能に前記第2ボディ部材に連結される装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であって、前記プレート部材が開口部を含み、前記装置は、該開口部を通って前記ボディ部材に連結する少なくとも一つのケーブル導管をさらに備える装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、前記開口部が、前記装置の長手方向の軸線と同軸である装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置であって、前記取出し構成要素または各取り出し構成要素の前記第1および第2端部の各々が、その個々のボディ部材に連結され、前記第1および第2端部の各々が、第3および第4回転軸線の周りで、それらの個々のボディ部材に対して回転することができる装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置であって、前記第3回転軸線が、前記第2回転軸線にほぼ直交しており、前記電力取り出し構成要素の各々の前記第2端部が、前記第3回転軸線の周りで、前記第2ボディ部材に枢動可能に連結される装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波から電力を取り出すための改良された装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海洋波は重大なエネルギー資源である。これらの波からエネルギーを取り出すために、海波エネルギー変換装置などの装置を使うことが知られている。同出願人による特許文献1では、海洋波から電力を取り出す装置および方法について記載されている。この設計では、装置が多数の浮遊式円筒ボディ部材を備え、これらの部材が各々の端部で連結されて、連接鎖状構造を形成している。隣接する、対をなす円筒部材のそれぞれは連結部材によって直接連結されており、それにより、単一の回転軸線または、相互に直交する2つの回転軸線のいずれかの周りでの、円筒部材の相対回転を可能にする。
【0003】
同出願人による特許文献2にも、 対をなすボディ部材のそれぞれの間での連結をもたらす別個のリンクユニットを有する波エネルギー変換装置について記載されている。このリンクユニットによって、該ユニット内に電力取り出し手段を収納した状態で、該ユニットのいずれかの端部における相対回転が可能となる。リンクユニットは、該ユニットと第1ボディ部材との間の第1回転軸線の周りでの相対回転および、該ユニットと第2ボディ部材との間の第2回転軸線の周りでの相対回転が可能となるように配置されている。第1軸線と第2軸線は直交している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/17519号
【特許文献2】国際公開第2004/088129号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの従来のいずれの提案においても、使用される電力取り出し手段は、複数の油圧ラムアセンブリおよび油圧回路を備える。連結部材またはリンクユニットにより2つの自由度(すなわち、2つの相互に直交する回転軸線)を有する接合部を与える実施形態では、各ラムの一端部が電力回路に連結され、他端部が連結部材またはリンクユニットに連結されている。従って、各ラムは、接合部で単一の回転軸線だけを横切っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、波から電力を取り出す装置が提供される該装置は、
少なくとも一対の浮遊式ボディ部材であって、該ボディ部材間の第1および第2の非平行な回転軸線の周りでの相対回転を可能にする連結器によって相互に連結されたボディ部材と、
第1のボディ部材に連結された第1端部、および、第2のボディ部材に連結された第2端部を有し、前記ボディ部材間の相対回転に抵抗して、該相対回転から電力を取り出す第1および第2の電力取り出し構成要素対有する電力取り出しシステムとを備え
前記第1および第2の電力取り出し構成要素対は、それぞれ前記第1回転軸線のいずれか一方側に配置されるとともに、前記第2回転軸線に対して対称であり、前記第1の電力取り出し構成要素対の間の横方向距離は、前記第2の電力取り出し構成要素対の間の横方向距離よりも小さい
【0007】
電力取り出し構成要素は、ピストンロッドおよびシリンダを有する油圧ラムアセンブリを備えることができ、この場合、シリンダは第1ボディ部材に連結され、ピストンロッドは第2ボディ部材に連結される。各ボディ部材は長手方向の軸線を有し、また、シリンダおよびピストンロッドはそれぞれのボディ部材に連結され、それにより、シリンダと第1ボディ部材との間および、ピストンロッドと第2ボディ部材との間の相対的な軸線方向の運動が防止されてもよい
【0008】
あるいは、電力取り出し構成要素をリニアモータとすることもできる。
【0009】
電力取り出しシステムは複数の電力取り出し構成要素を備えることができ、ここでは、各構成要素が、 第1ボディ部材に連結された第1端部と、第2ボディ部材に連結された第2端部とを有する。
【0011】
装置は、複数のボディ部材であって、隣接して対をなすボディ部材のそれぞれが、ボディ部材間の2つの非平行な回転軸線の周りでの相対回転を可能にする連結器によって相互に連結された複数のボディ部材と、各連結器用の電力取り出しシステムとをさらに備えることができる。
【0012】
連結された対をなすボディ部材のそれぞれは、前部ボディ部材と後部ボディ部材とを備え、電力取り出しシステムは、連結された対のうちの前部ボディ部材の各々に設置することができる。
【0013】
連結器は一対のボディ部材の間に設置されるプレート部材を備えることができ、該プレート部材は、第1回転軸線の周りで回転可能に第1ボディ部材に連結されるとともに、第1回転軸線に対してほぼ垂直な第2回転軸線の周りで回転可能に第2ボディ部材に連結されている。
【0014】
プレート部材は開口部を含むことができ、そして装置は、該開口部を通ってボディ部材を連結する少なくとも一つのケーブル導管をさらに備えることができる。開口部は、装置の長手方向の軸線と同軸とすることができる。
【0015】
プレート部材は、個々の回転軸線上に配置する一つまたは複数のピボットピンによって、それぞれの対をなすボディ部材に連結することができる。
【0016】
該取り出し構成要素または各取り出し構成要素の第1端部および第2端部の各々は、それぞれのボディ部材に連結することができ、それにより、第1および第2端部の各々が、第3および第4回転軸線のそれぞれの周りで各ボディ部材に対して回転することができる。
【0017】
第3回転軸線は、第2回転軸線に対して実質的に直交するものとすることができ、該電力取り出し構成要素または各々の電力取り出し構成要素の第2端部は、第3回転軸線の周りで第2ボディ部材に枢動可能に連結することができる。
【0018】
個々のボディ部材と連結器との間の連結器は、保護ベローズによって被覆することができる。
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を、単に例示を目的として、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】波から電力を取り出す装置の側面図である。
図2図1の装置の2つのボディ部材間の接合部の斜視図である。
図3図2に示す接合部の拡大図である。
図4図2に示す接合部の拡大図である。
図5】ボディ部材のうちの一つの端面図である。
図6】(a)および(b)はそれぞれ、先行技術の装置と本発明との対比における電力取り出し構成要素の相対位置、および、その結果として各装置で利用可能なモーメント包絡線にもたらされる変化を示す。
図7】(a)および(b)はそれぞれ、先行技術の装置と本発明との対比における電力取り出し構成要素の相対位置、および、その結果として各装置で利用可能なモーメント包絡線にもたらされる変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照すると、波から電力を取り出す装置が示されている。一般に10で表される装置は、2つ以上の浮遊式ボディ部材12A〜Eを備え、これらは2つの自由度を有する連結器14によって相互に連結されている。すなわち、各連結器14は、隣接する一対のボディ部材12A〜Eの、二本の回転軸線の周りでの相対回転を可能にするものであり、それらの回転軸線は、非平行で、好適にはほぼ直交する。少なくとも一つの電力取り出し構成要素16は、隣接する一対のボディ部材12A〜E間の各連結器14を横切って連結されている。電力取り出し構成要素16は、ボディ部材12A〜E間の相対運動に抵抗し、そこから電力を取り出す。以下に詳細をさらに説明する。
【0022】
ボディ部材12A〜Eは、装置の流体力学的特性に影響を与えるために、特定の方法で形成することができる。例えば、各ボディ部材12A〜Eは、装置10の長手方向の軸線に沿う方向の減衰を増大させるために、長手方向に突出した後面13を有することができ、この一方で、前部ボディ部材12Aは、危険な海の抗力を最小限にするために、円錐状のノーズ11を有するものとすることができる。
【0023】
図2に、隣接するボディ部材12Aと12Bとの間の接合部をより詳細に示す。連結器14は、2つのボディ部材12Aと12Bとの間に設置され、対をなす第1および第2の連結部22,24によってボディ部材12A,12Bに回転可能に連結されたプレート部材20を備える。第1および第2の連結部22,24は、第1および第2の回転軸線A,Bに沿う、プレート20とボディ部材12A,12Bとの間の相対回転をそれぞれ可能にするものである。回転軸線A,Bは、好ましくは直交するものとする。各連結部22,24は、保護ベローズ40によって覆われている。
【0024】
図2には、より詳細な電力取り出し構成要素16をも示されている。これらの構成要素16は、好ましくは、図示のような油圧ラムである。ラムシリンダ17を組み込んだラムの第1端部は、第1ボディ部材12Aの後部に取り付けられており、第1ボディ部材12A内に収納された電力取り出しシステムまたは回路(図示せず)に連結されている。ラムシリンダ17は、ボディ部材12Aの長手方向の軸線の2つの平行線の間での軸線方向の相対運動が生じないように、第1ボディ部材12Aに連結されている。ラムピストンロッド18を組み込んだラムの、反対側の第2端部は、第2ボディ部材12Bの前部に取り付けられている。ピストンロッド18は、ボディ部材12Bの長手方向の軸線の2つの平行線の間での軸線方向の相対運動が生じないように、第2ボディ部材12Bに連結されている。それにより、第1および第2のボディ部材12A,12B間の相対回転によってピストンロッド18および関連するピストン(図示せず)がラムシリンダ17内でスライドし、このことが、取り出しシステムとシリンダ17との間での油圧油の流動を引き起こす。図示の好適な実施形態では、4つの取り出し構成要素16が2つのボディ部材12Aと12Bとの間に連結されている。もっとも図2では、そのうちの1つは隠れている。図2では、ラム連結部およびピストンは保護ベローズによって覆われていることに留意されたい。
【0025】
ここでは、第1ボディ部材12Aに収納されている電力取り出しシステムについての、より詳細な説明はしないが、本発明での使用に適したシステムは、同出願人によるWO00/17519およびWO2004/088129に記載されている。
【0026】
図3に、説明のために油圧ラムを取り除いた連結器14をより詳細に示す。ここでは、プレート20を貫通して延びる開口部30を見ることができる。この開口部30は、好適にはボディ部材12Aおよび12Bの長手方向の軸線と同軸で、第1ボディ部材12Aから第2ボディ部材12Bへのケーブルおよび連結部を支持する一つまたは複数の導管(図示せず)を支えるように適合されている。ボディ部材12Aおよび12Bの長手方向の軸線と同軸である場合、開口部30により、開口部に収納されている導管およびケーブルに加えられる応力および歪みの量が低減される。というのも、導管およびケーブルは、相対運動が最小限に抑えられる、装置の中立軸線上に位置するからである。
【0027】
また図3では、連結部22をより詳細に示すため、保護ベローズ40のうちの一つを第1連結部22から取り除いている。連結部22は、第1ボディ部材12Aの後部から装置の長手方向の軸線にほぼ平行に突出する突起50を備える。突起50の反対側から半径方向に外側に延びているのは一対のピボットピン52であり、これは、上述したような第1回転軸線Aを画定する。連結部22はまた、内部にピボットピン52が位置するプレート20内に収納されたベアリングアセンブリ(図示せず)も備える。それ故に、対をなす第1接続部22により、ボディ部材12Aおよびプレート20は、軸線Aの周りで相互に旋回することができる。対をなす第2連結部24は、実質的に同様に形成されているが、この場合、突起は第2ボディ部材12Bの前部から突出している。しかしながら、第2連結部24のピボットピンは、それの突起から半径方向に突出しており、好ましくは、第2連結部24のピボットピンを、第1連結部22のピンのそれに対して垂直な方向に突出させる。それ故に、第2ボディ部材12Bから延びるピンは第2回転軸線Bを画定し、好ましくは、第2回転軸線Bは、第1回転軸線Aに対してほぼ垂直である。対をなす第2連結部24により、ボディ部材12Bおよびプレート20は、軸線Bの周りで相互に旋回することが可能になる。
【0028】
図4では油圧ラムを再度示し、油圧ラムが第2ボディ部材12Bにどのように取り付けられているのかについて示している。ここでもまた、保護ベローズ60は一般には取り付け具の上に位置しているが、図4では、そのうちの一つを説明のために取り除いている。ピストンロッド18の自由端に固定されているのはクレビスフォーク65であり、これはロッド18から長手方向に延びるほぼ平行な2つのフランジ70、72を有する。各フランジ70、72は、ピボットリンク部材を支えるように適合された開口部を含む。ピボットリンク部材は、一体形成されて実質的に垂直な2つのピボットピンからなる略十字形の部材である。参照しやすいように、本明細書では、リンクのピンを「垂直な」および「水平な」ピンと呼ぶが、ピンそれ自体は、装置の使用時に必ずしも垂直および水平に配向されていないことに留意されたい。
【0029】
リンク部材の垂直ピンの端部は、フォーク65のフランジ70または72のいずれかの開口部に位置する。これらは、ベアリングアセンブリ74(図4では上部アセンブリのみが見える)によって回転可能に支持される。リンク部材の水平ピンの端部は、第2ボディ部材12Bに連結され、対をなす第2ベアリングアセンブリ76によって回転可能に支持されている。それにより、ピストンロッド18の自由端は、上述したように、第2ボディ部材12Bに対して軸線方向に固定されているが、リンク部材の垂直ピンおよび水平ピンによって画定される2つの回転軸線C,Dの周りの、第2ボディ部材12Bに対する回転を受けることができる。図示していないが、各ラムアセンブリのシリンダ17は、ボールジョイントによって第1ボディ部材12Aに取り付けられている。このボールジョイントは、シリンダ17を第1ボディ部材12Aに対して軸線方向に固定するが、この一方で、ピストンロッド18の端部で、リンク部材のピンによって画定された軸線C、Dに平行な軸線の周りの、シリンダ17と第1ボディ部材12Aとの間の相対回転を可能にする。横揺れ(roll)を防ぐために、ボールジョイントは、シリンダ17および第1ボディ部材12Aが可能な、ラムの長手方向の軸線の周りでの相対回転運動を制限されている。
【0030】
図2および図4の両方を参照すると、第2ボディ部材12Bは、回転軸線BおよびDのそれぞれの周りで、プレート20およびピストンロッド18に対して回転可能であることが解かる。軸線CおよびDは軸線BおよびAに対してそれぞれほぼ平行であり、それ故、軸線BとDは直交する。第2ボディ部材12Bとピストンロッド18とを、軸線Bに直交する軸線Dの周りで連結することは、連結器14の結合角度によって生じる、隣接するボディ部材12間の相対的なねじれが大幅に低減されることを意味する。クレビスフォーク装置65によってピストンロッド18の端部にもたらされる相対的な捩れは、第2ボディ部材12Bとプレート20との間の連結部24に特定の角度結合によってもたらされる捩れとは反対方向である。よって各ラムのシリンダ17とピストンロッド18との間の相対的な捩れは大幅に低減され、結果的に取り出し構成要素16の保護ベローズの疲労が低減される。
【0031】
図5は、プレート20および連結部22、24が所定の位置にある第1ボディ部材12Aの後部の端面図である。ラムは、ここでも説明のために取り除いてある。図5に、上述のほぼ垂直な第1および第2回転軸線A,Bおよび、垂直線Vに対して各ボディ部材12A〜Eに適用されるロールバイアス角度を示す。ロールバイアス角度φは、装置を係留(mooring)またはバラストする(ballasting)ことによって達成され、装置が波力に応じて受けるうねりおよび揺れ運動間の結合を生じさせるために利用される。該装置には、ロールバイアス角度φを必要に応じて変化させることが可能な、能動的または受動的なバラストシステムを任意選択で設けることができる。本明細書では、このようなバラストシステムについて詳細には説明しないが、本発明の装置に組み入れることのできるシステムは、WO00/17519に開示されている。
【0032】
ロールバイアス角度の変化は、連動する自励応答(the coupled, self excited response)の強さに影響を与える。それ故、バラストシステムは、係留システムとともに使用することで、全体的なロールバイアス角度を変えることができる。ロールバイアス角度は、対象周波数の近傍でのコンバータの最大連動応答を実現するように選択される。ロールバイアス角度の選択に影響を与える基準には、装置の長さおよび直径、装置が配置される場所での平均波周期ならびに、接合部に適用される電力取り出し構成要素の特性が含まれる。
【0033】
図5はまた、第1ボディ部材12Aのラム取り付け部80の位置による、電力取り出し構成要素の好適な位置を示している。取り出し構成要素は、第1回転軸線Aの上方に配置されて、取り付け部80aおよび80bの位置で示される第1すなわち「上部」の一対の構成要素を含む複数の対(ペア)に分けられる。第2、すなわち「下部」の一対の構成要素は、取り付け部80cおよび80dの位置で示されているように、第1回転軸線Aの下方に位置する。取り付け部80の位置からわかるように、それぞれの取り出し構成要素対は、第2回転軸線Bに対して対称である。言い換えれば、取り付け部80a,80cの位置とそれらの関連構成要素とは、軸線Bの反対側の取り付け部80bおよび80dならびにそれらの関連構成要素とミラー配置されている。上部の取り出し構成要素対は、下部の構成要素対よりも互いに接近して配置されている。このことは、図5に、第1回転軸線Aに平行な線に沿う、上部取り付け部80a,80bのそれぞれの中心点間の横方向距離d1を、第1回転軸線Aに平行な線に沿う、下部取り付け部80c,80dのそれぞれの中心点間の横方向距離d2よりも小さくすることにより示されている。
【0034】
電力の最適な回収のため、電力取り出しシステムは、連結された対をなすボディ部材のそれぞれからの波ごとの入力電力における適切な平滑化をもたらすようなサイズの油圧アキュムレータを含むことが好ましい。取り出し構成要素は、パイロットアウトレットバルブを介して油圧アキュムレータに高圧油を直接送り込む。高圧油はその後、パイロットバルブを介して可変排気量油圧モータに流出される。この可変排気量油圧モータは、グリッドに直接連結される発電機を駆動するものである。それにより、隣接するボディ部材の相対運動を電気に変換することで、電力は装置から直接取り出される。
【0035】
従って、隣接する接合部に与えられる相対減衰は、ロールバイアス角度(φ)の選択とともに、ある海の状態からの最大電力の吸収を可能にする同調可能な擬似共振応答(tunable pseudo-resonant response)をモデル化することがわかる。差動抑制(differential restraint)の強さを制御することによって利得制御を与え、この利得制御は、小さな波では、変換装置の効率および変換装置によって取り出される電力を最大限にするとともに、大きな波では、応答を制限することによって変換装置の生存性(survivability)を向上させるように設定することができる。
【0036】
取り出し構成要素によって接合部の周りに与えることのできる最大モーメントは、与えられるモーメントの方向によって変化する。最大モーメントを方向関数として描くと、接合部における2つの自由角度に関するモーメント包絡線となる。図6(b)は、当該技術分野において既知で図6(a)に概略的に示されるように、第1取り出し構成要素対16a,16bと、第2取り出し構成要素対16c,16dとを直交軸線上に配置することによって得られるモーメント包絡線の通常の形状を示している。原点は、静止時における装置の長手方向の軸線を表す。ロールバイアス角度φが示されている。結果は図6(b)に示すような長方形のモーメント包絡線となり、このような結果は、複数のアクチュエータが力の範囲内で等しく、かつ、長手方向の軸線から半径方向に等距離で設置されている場合には正方形となる。
【0037】
図7(a)および7(b)は、本発明が、応用するためにより適したモーメント包絡線をどのようにして作成することができるのかを示している。第2構成要素対16c,16dに対する第1構成要素対16a,16bの好適な位置を再度、図7(a)に概略的に示す。図7(b)に示す結果的なモーメント包絡線は、アクチュエータが完全に同じであるにもかかわらず、ある方向において、装置は、他の方向よりもモーメントの大きな範囲をもたらすことができることを示している。
【0038】
図6(a)および6(b)に示す既知の装置において、図7(b)に示す修正モーメント包絡線を得るには、取り出し構成要素のうちの少なくともいくつかを、異なるサイズのものに置き換える必要がある。あるいは、構成要素のうちの一個または複数個を再配置して、修正されたモーメント包絡線を実現してもよい。しかしながら、図6(a)に示す既知の装置における各構成要素は、本発明における第1ボディ部材と第2ボディ部材との間に直接連結されているのではなく、ボディ部材と連結器との間に連結されている。このことは、既知の装置では、各組の構成要素を周方向に再配置することができないことを意味する。というのも、それらは、図6(a)に示すように、直交して配置された状態を維持されなければならないからである。よって、唯一の選択肢は、取り出し構成要素のうちのいくつかを、装置の長手方向の軸線に対してより近い半径方向距離で再配置することである。しかしながら、いくつかの構成要素をこのように再配置すると、装置の構造的な効率を下げることになる。というのも、取り出し構成要素の移動範囲を最大限にするために、理想的には、構成要素が長手方向の軸線に対して最も遠い半径方向の位置に残存していなければならないからである。
【0039】
本発明の装置は、隣接するボディ部材間の、2つの自由度を有する連結器と、該連結器を横切って、隣接するボディ部材に直接連結される電力取り出し構成要素とを提供する。その結果、取り出し構成要素は、装置の長手方向の軸線の周りにおける任意の周方向位置に配置することができる。それにより、異なるサイズの取り出し構成要素を用いる必要なしに、また、結果として生じる効率の低下に伴う、長手方向の軸線に対する特定の取り出し構成要素の半径方向距離の減少なしに、取り出し構成要素を、接合部の運動のある方向において、より大きな結合モーメントアプリケーションがもたらされるように配置することができる。同じサイズの取り出し構成要素を使用することは、時間と製造費の双方に利点がある。というのも、それぞれの取り出し構成要素で工具が同じになるからである。上述したように、構成要素が、装置の長手方向の軸線または中立軸線からできるだけ離れた半径方向距離を保つことを可能にすることにより、装置の構造的な効率の低下がないことが保証される。
【0040】
各構成要素の第1および第2端部を、中間連結器に連結せずに、各接合部を横切るように個々のボディ部材に直接連結することにより、本発明の装置が、各接合部の片側に、電力取り出しシステムの構成部品の全てを備えるものとすることができる。これはすなわち、それらを相互に極めて近接して設置することができるため、取り出し構成要素から取り出しシステムへのエネルギーロスをより小さくできることを意味する。またこのことは、取り出しシステムの構成部品を、各結合器のいずれかの側面に位置させるのではなく、各ボディ部材にモジュールとして組み付けたり、据え付けたりすることができることを意味する。
【0041】
好適な電力取り出しシステムは、取り出し構成要素として油圧ラムを使用した油圧システムであるが、本発明はこの特定の構成に限定されるものではない。例えば、取り出し構成要素を代替的にリニアモータとし、そのような取り出しシステムが、前記リニアモータに直接連結される一つまたは複数の発電機を備えるものとすることができる。
【0042】
それぞれの対をなすボディ部材間の連結器は、好適には上述の好適な実施形態に記載されたプレート装置を備えているが、本発明はこの特定の構成に限定されるものではない。第1および第2回転軸線の周りでの、一対のボディ部材の相互の回転を許容する任意の連結器を使用することができる。例えば、ボールジョイントを連結器として採用し、接合部に制限を与えることで長手方向の軸線の周りのボディ部材の相対回転を防止することができる。
【0043】
好ましくは、取り出し構成要素を、第3回転軸線の周りで各組の第2ボディ部材に連結させる。第2軸線に直交するこの第3回転軸線は、それの周りで第2ボディ部材および連結器が相互に回転することができる。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではないことに留意されたい。例えば、第3軸線は第2軸線に平行なものとすることができる。
【0044】
これらの変更および改良ならびに、その他の変更および改良は、本発明の範囲から逸脱することなく、組み込むことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図7(a)】
図7(b)】