【課題を解決するための手段】
【0015】
驚くべきことに、所定のプロピレングリコール/エチレングリコール(PG/EG)比を有する以下のスルホ基含有ポリエステルが、本発明の課題を解決することが見出された。
【0016】
本発明は、12〜60%、好ましくは15〜60%、特に好ましくは20〜50%、特に30〜45%のポリエステルの重量比を有する水性のポリエステル濃厚物であって、前記ポリエステルを以下:
a)1種またはそれ以上のスルホ基不含芳香族ジカルボン酸、および/またはそれらの塩、および/またはそれらの無水物、および/またはそれらのエステル、
b)場合により、1種またはそれ以上のスルホ基含有ジカルボン酸、それらの塩、および/またはそれらの無水物、および/またはそれらのエステル、
c)1,2−プロピレングリコール、
d)エチレングリコール、
e)式(1)
R
1O(CHR
2CHR
3O)
nH (1)
[式中、
R
1は、1〜22個のC原子を有する直鎖状または分岐状の飽和または不飽和アルキル基、好ましくはC
1−C
4−アルキル、特にメチルであり、
R
2およびR
3は、互いに独立して、水素、または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは水素および/またはメチルであり、そして
nは1〜50の数、好ましくは2〜10である]
で表される1種またはそれ以上の化合物、
f)場合により、式(2)
H−(OCH
2CH
2)
m−SO
3X (2)
[式中、
mは1〜10の数であり、そして
Xは、水素またはアルカリ金属イオンである]
で表される1種またはそれ以上の化合物、および
g)場合により、1種またはそれ以上の架橋性多官能化合物、
から選択される成分の重合により得ることができ、ここで、成分b)またはf)の少なくとも1つが存在することを条件とし、そして、成分c)の1,2−プロピレングリコールとd)エチレングリコールとのモル比が、1.60以上であることを条件とする、ポリエステル濃厚物に関する。
【0017】
好都合には、1,2−プロピレングリコール(PG):エチレングリコール(EG)のモル比は、1.60〜20.0、好ましくは1.7〜10.0、特に2.0〜8.0、特に好ましくは2.5〜7.0、一層特に好ましくは2.7〜5.0である。
【0018】
上述の条件下で、1モルの成分a)を基準として以下のモル比にある成分a)〜g)の重合により得ることができるポリエステルが好ましい:
0〜4モル、好ましくは0.1〜2モル、特に0.2〜1.5モル、一層特に好ましくは0.3〜1.1モルの成分b)、
0.1〜4モル、好ましくは0.5〜3モル、特に0.6〜2.5モル、一層特に好ましくは0.8〜1.5モルのジオール成分c)+d)、
0.1〜4モル、好ましくは0.2〜2モル、特に0.3〜1.0モル、一層特に好ましくは0.3〜0.8モルの成分e)、
0〜4モル、好ましくは0.1〜2モル、特に0.2〜1.0モル、一層特に好ましくは0.3〜0.8モルの成分f)、
0〜0.2モル、好ましくは0〜0.1モル、特に0モルの成分g)。
【0019】
上述の条件下で、1モルの成分a)を基準として以下のモル比にある成分a)〜g)の重合により得ることができるポリエステルがさらに好ましい:
0.1〜2モル、特に0.2〜1.5モル、一層特に好ましくは0.3〜1.1モルの成分b)、
0.5〜4モル、特に0.6〜3モル、一層特に好ましくは0.8〜2.5モルのジオール成分c)+d)、
0.1〜4モル、好ましくは0.2〜2モル、特に0.3〜1.0モル、一層特に好ましくは0.3〜0.8モルの成分e)、
0モルの成分f)、
0モルの成分g)。
【0020】
成分a)の好ましい化合物は、テレフタル酸、特にテレフタル酸のC
1−C
4−アルキルエステル、例えば、テレフタル酸ジメチルエステル、ならびにイソフタル酸およびイソフタル酸のC
1−C
4−アルキルエステルである。
【0021】
成分b)の好ましい化合物は、5−スルホイソフタル酸、特に5−スルホイソフタル酸ジ(C
1−C
4)アルキルエステルおよびそのアルカリ金属塩、例えば、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、および5−スルホ−イソフタル酸−ジメチルエステルナトリウム塩もしくは−リチウム塩である。
【0022】
成分e)の好ましい化合物は、一方の末端がキャップされたポリアルキレングリコール(Endstopfen)、好ましくは約200〜2000g/モルの平均分子量を有するポリ[エチレングリコール−コ−プロピレングリコール]−モノメチルエーテル、特に好ましくは式(1a)
CH
3−O−(C
2H
4O)
n−H (1a)
[n=2〜10、好ましくはn=3〜5、特にn=4]
で表されるポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0023】
成分f)の好ましい化合物は、式(2a)
H−(OCH
2CH
2)
m−SO
3X (2a)
[式中、
mは1〜4の数、特に好ましくは1および2であり、そして
Xは水素、ナトリウムまたはカリウムを表す]
で表される化合物である。
【0024】
成分g)の好ましい化合物は、エステル化反応を可能にする3〜6個の官能基、例えば酸−、アルコール−、エステル−、無水物−またはエポキシ基を有する、架橋性多官能化合物である。その際、1つの分子における異なる官能性もまた可能である。その際、好ましい例としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸および没食子酸、特に好ましくは2,2−ジヒドロキシメチルプロピオン酸を挙げることができる。
【0025】
さらに、多価アルコール、例えばペンタエリトリトール、グリセリン、ソルビトールおよびトリメチロールプロパンを使用することができる。
【0026】
多価の脂肪族および芳香族カルボン酸、例えばベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸(ヘミメリト酸)、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸(トリメリト酸)、特に好ましくはベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸(トリメシン酸)がさらに好ましい。
【0027】
成分g)の重量比は、ポリエステルの全質量を基準として、好ましくは0〜10重量%、特に好ましくは0〜5重量%、特に好ましくは0〜3重量%、極めて特に好ましくは0重量%である。
【0028】
本発明のポリエステルは、概して、700〜50000g/モル、好ましくは800〜25000g/モル、特に1000〜15000g/モル、特に好ましくは1200〜12000g/モルの範囲にある数平均分子量を有する。
【0029】
数平均分子量は、狭い分布のポリアクリル酸Na塩標準を用いる較正の使用下、水溶液におけるサイズ排除クロマトグラフィーにより決定される。本明細書における全ての分子量の記載は、数平均分子量に基づいている。
【0030】
その他に、本発明で使用されるポリエステルは、上記の成分a)〜g)に加えて、脂肪族ジカルボン酸の構造要素、好ましくは1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むことができる。
【0031】
使用される脂肪族ジカルボン酸の重量比は、使用されるモノマーの全量を基準として、1〜15%、好ましくは3〜10%、特に好ましくは5〜8%であることができる。
【0032】
本発明で使用されるポリエステルの合成は、それ自体は公知の方法に従って、成分a)〜g)の重縮合によって行われる。好適には、上記の成分を触媒の添加下で、最初に、好ましくはC
1−C
3−アルキルカルボン酸の塩、特に脱水化もしくは部分的に水和された酢酸ナトリウムCH
3COONax(H
2O)
x(式中、
xは0〜2.9の範囲の数を表す)の存在下において、不活性雰囲気の使用下、常圧において160〜約220℃の温度に加熱し、その際、この塩は、使用されるモノマーおよび使用されるカルボン酸の塩の全量を基準として、0.5%〜30%、好ましくは1%〜15%、特に好ましくは3%〜8%の重量で存在する。その後、減圧下、160〜約240℃の温度で、使用されるグリコールの化学量論を超える量を留去することにより、必要な分子量を合成する。技術水準の公知のエステル交換−および縮合触媒、例えばチタンテトライソプロポキシド、ジブチルスズオキシド、アルカリ金属−もしくはアルカリ土類金属アルコキシドまたは三酸化アンチモン/酢酸カルシウムが反応に好適である。
【0033】
本発明のポリエステルの製造のための好ましい方法は、加熱前にエステル交換−および縮合触媒を添加するワンポット法(Eintopfverfahren)において前記成分の縮合を実施することを特徴とする。
【0034】
本発明のポリエステルは、非常に良好に水溶性であって、加水分解傾向を示さず、安定な溶液を形成し、これは、厳しい外部条件下(45度での保管)でも、溶液粘度の増加を示さないか、または本質的でない増加しか示さない。
【0035】
さらに、本発明のポリエステルは、優れた分散能力を示し、従って、繊維の灰色化を阻止する。一次的な洗浄能力の増加に関する能力、ソイルリリース活性および親水性化は、固体のアニオン性タイプのものに匹敵する。
【0036】
本発明のポリエステル濃厚物溶液の製造は、適切な量のポリエステルの溶解、例えば水、または水と水混和性溶媒(例えばプロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、エチレングリコール、グリコールモノメチルエーテル、グリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(質量>120g/モル))の組み合わせへの溶解により実施される。その際、ポリエステルを、10〜70℃、好ましくは30〜60℃、特に好ましくは40〜50℃の温度で、直接または少量ずつ、溶液に入れる水に加え、撹拌により完全に溶解させる。
【0037】
ポリエステルの可溶性の改善のために、溶解工程の前または該工程の間に、低分子分散剤(ヒドロトロープ)を添加することもできる。ここで、アルキルベンゼンスルホネート、例えばクメンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウムまたはトルエンスルホン酸ナトリウムを使用するのが好ましい。このヒドロトロープを前記濃厚物の全重量を基準として0.1〜30重量%、好ましくは1〜15重量%の量で使用することが有意義であることが明らかになった。
【0038】
前記ポリエステル濃厚物は、20〜45℃での保管において、数ヶ月間にわたって安定である。本発明の濃厚物の粘度は、15〜15000mPas、好ましくは100〜8000mPasの範囲内、特に好ましくは500〜5000mPasの範囲で変動する。
【0039】
粘度の測定は、ブルックフィールド粘度計を用いて、25℃で1分あたり20回のスピンドル回転で行われる。使用されるスピンドルは、粘度範囲に応じて調節される。本発明の濃厚物は、ほぼ無色から淡黄色であり、十分に透明〜不透明であり、そして固体を含まない。
【0040】
本発明のポリエステル濃厚物は、繊維製品に非常に良好な汚れ除去特性を付与し、それらは、油状の、脂肪質のもしくは顔料の染みに対して、他の洗剤成分の汚れ除去能力を大幅に促進し、そして、洗濯液からの粒子(特に石灰石鹸および顔料汚れ)の繊維への堆積(灰色化:Vergrauung)を阻止する。
【0041】
本発明はさらに、本発明のポリエステル濃厚物の洗剤および洗浄剤における、洗濯用の後処理剤における、特に繊維柔軟剤(Weichspuelmittel)、繊維ケア剤(Textilpflegemitteln)および繊維用仕上げ剤(Mitteln zur Ausruestung von Textilien)における使用に関する。
【0042】
本発明のポリエステルを使用することができる洗剤および洗浄剤調合物は、ペースト形態、ゲル形態または液体である。液体洗剤が特に好ましい。
【0043】
その例としては、重質洗剤、軟質洗剤、カラー洗剤(Colorwaschmittel)、ウール用洗剤、カーテン用洗剤、モジュラー洗剤(Baukastenwaschmittel)が挙げられる。
【0044】
本発明のポリエステル濃厚物は驚くべきことに、特にプラスティック、セラミックおよびガラスおよび金属表面の洗浄において、優れた流出挙動が際立っている。硬質表面の洗浄において、石灰化する傾向や処理した表面の再汚染を減少させ、油および汚れの付着を防ぎ、そして表面の再洗浄を容易にする。
【0045】
本発明のポリエステル濃厚物は、家庭用洗剤、例えば、汎用洗剤、食器用洗剤、リンスエイド(Klarspuelmittel)、カーペット洗剤および含浸剤、床および他の硬質表面(例えば、プラスチック、セラミック、ガラス、石、金属からなる表面)またはナノ粒子でコーティングされた表面用の洗浄およびケア組成物に組み込むこともできる。
【0046】
工業用洗剤の例としては、プラスチック洗浄およびケア組成物(例えばハウジングおよび自動車部品用)、および塗装表面(例えば自動車車体)用の洗浄およびケア組成物が挙げられる。
【0047】
前記調合物の組成は、意図する用途に応じて、処理または洗浄される繊維の性質、または洗浄される表面の性質に適合させるべきである。
【0048】
前記の洗剤および洗浄剤調合物は、標準的な成分、例えば界面活性剤、乳化剤、ビルダー、漂白触媒および漂白活性化剤、金属イオン封鎖剤、灰色化防止剤、転染防止剤、染料色止め剤、酵素、蛍光増白剤、柔軟性付与成分を含むことができる。さらに、調合物または調合物の一部を、染料および/または香料により、選択的に染色しおよび/または芳香付けすることができる。
なお本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も含み得る。
1.12〜60%のポリエステルの重量比を有する水性のポリエステル濃厚物であって、前記ポリエステルが以下:
a)1種またはそれ以上のスルホ基不含芳香族ジカルボン酸、および/またはそれらの塩、および/またはそれらの無水物、および/またはそれらのエステル、
b)場合により、1種またはそれ以上のスルホ基含有ジカルボン酸、それらの塩、および/またはそれらの無水物、および/またはそれらのエステル、
c)1,2−プロピレングリコール、
d)エチレングリコール、
e)式(1)
R1O(CHR2CHR3O)nH (1)
[式中、
R1は、1〜22個のC原子を有する直鎖状または分岐状の飽和または不飽和アルキル基であり、
R2およびR3は、互いに独立して、水素、または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、そして
nは1〜50の数である]
で表される1種またはそれ以上の化合物、
f)場合により、式(2)
H−(OCH2CH2) m−SO3X (2)
[式中、
mは1〜10の数であり、そして
Xは、水素またはアルカリ金属イオンである]
で表される1種またはそれ以上の化合物、および
g)場合により、1種またはそれ以上の架橋性多官能化合物、
から選択される成分の重合により得ることができ、ここで、成分b)またはf)の少なくとも1つが存在することを条件とし、そして、成分c)の1,2−プロピレングリコールとd)エチレングリコールとのモル比が、1.60以上であることを条件とする、ポリエステル濃厚物。
2.1,2−プロピレングリコール:エチレングリコールのモル比が、1.60〜20.0であることを特徴とする、上記1記載のポリエステル濃厚物。
3.ポリエステルの重量比が20〜60%であることを特徴とする、上記1または2に記載のポリエステル濃厚物。
4.1モルの成分a)を基準として以下のモル比にある成分a)〜g)の重合により得ることができる、上記1〜3のいずれか1つに記載のポリエステル濃厚物:
0〜4モルの成分b)、
合計で0.1〜4モルの成分c)+d)、
0.1〜4モルの成分e)、
0〜4モルの成分f)、
0〜0.2モルの成分g)。
5.1モルの成分a)を基準として以下のモル比にある成分a)〜g)の重合により得ることができる、上記1〜3のいずれか1つに記載のポリエステル濃厚物:
0.1〜2モルの成分b)、
合計で0.5〜4モルの成分c)+d)、
0.1〜4モルの成分e)、
0モルの成分f)、
0モルの成分g)。
6.成分a)が、テレフタル酸、テレフタル酸のC1−C4−アルキルエステル、イソフタル酸およびイソフタル酸のC1−C4−アルキルエステルの群からの化合物であることを特徴とする、上記1〜5のいずれか1つに記載のポリエステル濃厚物。
7.成分b)が、5−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、5−スルホイソフタル酸ジ(C1−C4)アルキルエステルおよび5−スルホイソフタル酸ジ(C1−C4)アルキルエステルのアルカリ金属塩の群からの化合物であることを特徴とする、上記1〜6のいずれか1つに記載のポリエステル濃厚物。
8.成分e)が、式(1a)
CH3−O−(C2H4O)n−H (1a)
[式中、n=2〜10である]
で表されるポリエチレングリコールモノメチルエーテルであることを特徴とする、上記1〜7のいずれか1つに記載のポリエステル濃厚物。
9.前記ポリエステルを水、または水と水混和性溶媒の組み合わせへ溶解することにより、上記1〜8のいずれか1つに記載のポリエステル濃厚物を製造する方法。
10.洗剤および洗浄剤における、繊維柔軟剤における、繊維ケア剤および繊維用仕上げ剤における、上記1〜8のいずれか1つに記載のポリエステル濃厚物の使用。