特許第5721746号(P5721746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5721746疎水化吸湿発熱繊維及びこれを用いた繊維構造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721746
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】疎水化吸湿発熱繊維及びこれを用いた繊維構造物
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/65 20060101AFI20150430BHJP
   D06M 15/657 20060101ALI20150430BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20150430BHJP
   D06M 15/227 20060101ALI20150430BHJP
   D06M 15/277 20060101ALI20150430BHJP
   D06M 15/256 20060101ALI20150430BHJP
   D06M 101/26 20060101ALN20150430BHJP
【FI】
   D06M15/65
   D06M15/657
   D06M15/643
   D06M15/227
   D06M15/277
   D06M15/256
   D06M101:26
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-550939(P2012-550939)
(86)(22)【出願日】2011年12月26日
(86)【国際出願番号】JP2011080091
(87)【国際公開番号】WO2012090942
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年3月17日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2011/064652
(32)【優先日】2011年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-293458(P2010-293458)
(32)【優先日】2010年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004053
【氏名又は名称】日本エクスラン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】荻野 毅
(72)【発明者】
【氏名】川中 直樹
(72)【発明者】
【氏名】住谷 龍明
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−218111(JP,A)
【文献】 特開2003−183978(JP,A)
【文献】 特開2003−003374(JP,A)
【文献】 特開平05−132858(JP,A)
【文献】 特開平09−031796(JP,A)
【文献】 特開2003−129312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00−15/715
A41D31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性基としてカルボキシル基及び/又は塩型カルボキシル基を有し、気相の水分を吸着して発熱する高架橋ポリアクリレート系繊維に、
疎水化剤が0.2omf%以上2.5omf%以下の範囲で結合しており、液相の水分に対しては疎水性であり、液相の水分と接触しても水分をはじき、気相の水分を吸着して吸湿発熱し、
温度20℃、湿度45%RHの雰囲気下にある液相水分(水)に浮べた時、21℃以上の温度に発熱している持続時間が10分以上である疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維。
【請求項2】
前記疎水性は、高架橋ポリアクリレート系繊維の表面にカチオン系フッ素含有シリコーン化合物、カチオン系フッ素含有化合物、カチオン系アミノ変性シリコーン化合物及びカチオン系炭化水素化合物から選ばれる少なくとも一つの疎水化剤がイオン吸着結合して発現している請求項1に記載の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維。
【請求項3】
前記疎水性は、高架橋ポリアクリレート系繊維の表面にフッ素及びエポキシ変性シリコーン化合物から選ばれる少なくとも一つの疎水化剤が結合して発現している請求項1に記載の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維。
【請求項4】
前記疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維を開繊し、静水に落下させたとき、10分以上水に沈まない請求項1〜3のいずれか1項に記載の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維。
【請求項5】
前記疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維は、開繊した前記繊維を静水に落下させたときの水分付着量が自重の400%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維。
【請求項6】
前記疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維は、温度20℃、湿度65%RHの雰囲気下での吸湿率が自重の21.6%以上61.8%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維が5質量%以上100質量%未満、その他の繊維が0質量%を超え95質量%以下含む繊維構造物。
【請求項8】
前記繊維構造物が、糸、織物、編物、不織布又は詰め物である請求項7に記載の繊維構造物。
【請求項9】
前記繊維構造物を温度20℃の静水に2分30秒間浸漬後のサーモグラフィ測定により、気化冷却がないか又は気化冷却時の温度が0℃未満−1.2℃以上である請求項7又は8に記載の繊維構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多量発汗や雨がかかっても水をはじき、吸湿発熱が持続する疎水化吸湿発熱繊維及びこれを用いた繊維構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水分を吸着する時に発生する熱(吸着熱)を利用した発熱性繊維は、従来繊維に比べより高い保温性を有し、主に冬物衣料や登山などのスポーツ衣料に使用される場合が多い。この吸着熱によって発熱する代表的繊維は、本発明者らの一部が提案した高架橋ポリアクリレート系繊維である(特許文献1)。この繊維は、アクリル系繊維を原料にして改質し、分子を親水化し同時に高架橋化した繊維であり、吸湿性が高く、かつ膨潤性が抑制された繊維形態をなす。発熱性繊維は、1994年ノルウェーのリレハンメルで開催された冬季オリンピックで日本チームのスキーウエアの中綿に採用されたのが最初であり、それまでの衣料分野にはなかった「発熱保温」という概念を切り開いた(非特許文献1、2)。本出願人らは商品名“ブレスサーモ”(登録商標)という繊維製品を開発し、現在においても好評を博している。一般的な高架橋ポリアクリレート系繊維は、アクリル系繊維をヒドラジン等で架橋して湿潤時の膨潤を抑制し、かつ親水性基を導入することによって得られる。親水性基は繊維が有する官能基の一部を加水分解してカルボキシル基(−COOH)及び/又はアルカリ金属塩型カルボキシル基(例えば−COONa)にすることで導入できる。
【0003】
その後も水分の吸着熱を利用した発熱性繊維の提案は続いており、肌着への適用(特許文献2)、アクリル系繊維のみならず他の繊維への応用(特許文献3)、ウールを酸処理して中空にして発熱させる提案(特許文献4)、アクリル系繊維とビスコースレーヨン繊維を混紡する提案(特許文献5)、アクリレート系繊維に多官能アミンを架橋剤として導入し、加水分解してカルボキシル基を生成し、このカルボキシル基を残すように染色後の還元処理をする提案(特許文献6)等がある。また、特許文献7には獣毛蛋白質系繊維を酸化して繊維表面をアニオン化しておき、アミノアクリル共重合樹脂、アクリル酸エステル系樹脂等の疎水性樹脂を付与することが記載されている。
【0004】
しかし、従来技術の水分吸着による発熱性繊維の特性は、大量の親水性基を導入することやセルロース系繊維の元来の水分吸着特性から生じる吸着熱を利用することから、必然的に繊維は水との親和性が高くなる。したがって、繊維は発汗時の液相(液体)の汗で濡れ易くなったり、いったん雨で濡れると発熱は起こらず、逆に親水性基が液相の水を離さない性質を有するので乾きにくく、却って冷感が増加し、着心地が悪いという問題があった。また、特許文献7で実際に実験によって確かめられている疎水性樹脂の付与量は繊維質量に対して10%であり、このような多量塗布では繊維の風合いが粗硬になる問題と、製品製造工程において前記疎水性樹脂が脱落し、工程通過性を悪化させるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−59762号公報
【特許文献2】特開2004−52187号公報
【特許文献3】特開2004−218111号公報
【特許文献4】特開2010−13791号公報
【特許文献5】特開2010−216053号公報
【特許文献6】特開2003−183978号公報
【特許文献7】特開2003−3374号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】繊維学会編「繊維便覧」第3版、464〜465頁、丸善、平成16年12月15日
【非特許文献2】繊維学会誌(Vol.57)、320〜323頁、2001年12月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、水分吸着によって発熱する高架橋ポリアクリレート系繊維を改良し、液相の水分と接触しても水をはじき、気相(蒸気)の水分を吸着して発熱が持続し、風合いは良好で紡績工程通過性も良好な疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維及びこれを用いた繊維構造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維は、親水性基としてカルボキシル基及び/又は塩型カルボキシル基を有し、気相の水分を吸着して発熱する高架橋ポリアクリレート系繊維に、疎水化剤が0.2omf%以上2.5omf%以下の範囲で結合しており、液相の水分に対しては疎水性であり、液相の水分と接触しても水分をはじき、気相の水分を吸着して吸湿発熱し、温度20℃、湿度45%RHの雰囲気下にある液相水分(水)に浮べた時、21℃以上の温度に発熱している持続時間が10分以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の繊維構造体は、前記の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維が5質量%以上100質量%未満、その他の繊維が0質量%を超え95質量%以下含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維は、気相の水分を吸着して発熱する高架橋ポリアクリレート系繊維に対して、特定量の疎水化剤を結合させたことにより、多量発汗や雨がかかる等、液相(液体)の水分と接触しても水をはじき、吸湿発熱が持続する。すなわち、本発明の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維は液相の水分に対しては疎水性であり、液相の水分と接触しても濡れないか又は濡れにくく、気相(蒸気)の水分を吸着して発熱が持続する。この結果、多量発汗や雨がかかっても冷えにくく、蒸発した水分(気相)を吸着し吸着熱に位相転換し発熱することによって、繊維は温かくなり且つ温かさをより長く持続することによって、快適な着心地となる。また、繊維に対して疎水化剤を0.2omf%以上2.5omf%以下の範囲で結合させることにより、風合いは良好に保つことができ、かつ紡績工程通過性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明の一実施例における、紡績糸を液体の水に接触させて水分の吸着による発熱を測定する部分断面説明図である。
図2図2は本発明の一実施例における、疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)断面写真(倍率8000倍)と、同時に表面から内部までの疎水化剤の分布を多点元素分析測定した断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、従来の水分を吸着して発熱する繊維を用いた衣類を着用して様々な条件の登山や発汗を伴うスポーツをした。登山においては多量の発汗をすることが多く、また雨に濡れる場合もある。多量の発汗や雨で濡れてしまうと、従来の水分を吸着する発熱繊維は冷たくなる問題があった。その理由は、従来の水分を吸着する発熱繊維は親水性基の付与やセルロース系繊維の元来の特性から生じる吸着熱を利用するため、液相の水分とも親和性が高く、液相の水分と接触すると吸水して濡れてしまい、発熱も止まってしまうばかりでなく、逆に親水性基が液相の水を離さない性質を有するので、却って冷感が増加し、着心地を害するという現象が生じた。特に高山や冬山や寒い時季には、吸水による冷感が生じにくく且つ吸湿発熱性が持続する衣類の開発が必要であった。
【0013】
そこで、気相の水分(蒸気)は吸着するが、液相(液体)の水分は吸着しない繊維材料を着想するに至った。具体的には、(1)高架橋ポリアクリレート系繊維の水分を吸着して発熱する性質に加えて、(2)疎水化剤をイオン吸着結合させて液相の水分に対しては疎水性を付与することにより、液相の水分と接触しても濡れないか又は濡れにくく、蒸気や人体からの不感蒸泄などの気相の水分から吸湿して発熱が持続する繊維である。
【0014】
水面に浮かべた時に水面浮上するレベルの疎水性を親水性繊維に付与する場合、繊維表面に疎水化剤を均一にコートすることは一般的に困難である。そのため、従来の技術(例えば特許文献7)では疎水化剤付与量を10質量%と多くすることで課題を解決してきた。しかし、付与量を多くすることは繊維のべたつき、造膜製を有する疎水化剤では繊維間接着を引き起こし、風合いが悪いだけではなく後工程における通過性や(工程)負荷を増大させる(例えば紡績性)。
【0015】
高架橋ポリアクリレート系繊維表面を疎水化する場合にも、繊維表面の親水性が高く疎水化剤が付着していない部分があると水面浮上するレベルには到達しない。したがって過剰の疎水化剤が必要であり、これがべたつき、接着などの問題を引き起こす。
【0016】
本発明者らは好適な例として、高架橋ポリアクリレート系繊維の表面に存在する塩型カルボキシル基(親水基)に対してイオン的に吸着するカチオン系疎水剤を選択すれば、前記親水基に疎水化剤分子がイオン吸着結合し、少量で均一に疎水化できることを見出した。またイオン吸着結合により疎水化剤分子が固定されているため、耐久性も高いことも見出した。
【0017】
加えて本発明者らは、高架橋ポリアクリレート系繊維に対して疎水化剤は0.2omf%以上2.5omf%以下の限定された範囲で結合させると、風合いは良好に保つことができ、かつ紡績工程通過性も良好であることを見出した。
【0018】
1.高架橋ポリアクリレート系繊維について
本発明において高架橋ポリアクリレート系繊維を選択したのは、表1(前記非特許文献1から転載)に示すとおり、他の繊維に比べて吸着熱が高いからである。
【0019】
【表1】

(備考)C80熱量計を用いて、試料を絶乾から25℃、80.5%RHの条件下で測定した値(前記非特許文献1の465頁表3・14,但しコットンについては熱量単位がcalで示されており、J/gに換算して修正した)。
【0020】
本発明に使用する高架橋ポリアクリレート系繊維は、アクリル繊維の改質により繊維を超親水化、高架橋化した繊維であり、親水性基としてカルボキシル基及び/又は塩型カルボキシル基を有する繊維である。親水性基の別の例としては、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基であっても良い。
【0021】
かかる高架橋ポリアクリレート系繊維としては、例えば東洋紡社製商品名“モイスケア”、東邦テキスタイル社製商品名“サンバーナー”などがある。
【0022】
2.疎水性について
本発明の繊維は、開繊した繊維を静水に落下させたとき、10分以上水に沈まない。すなわち、自重では10分以上、好ましくは20分以上、さらに好ましくは30分以上、とくに好ましくは60分以上水に沈まない。この疎水性の付与により、本発明の繊維は多量発汗や雨がかかっても繊維の吸湿発熱は持続し、温かく、保温性も高く、着心地は良いものとなる。
【0023】
本発明の繊維は、液相の水分に対しては水をはじき、かつ気相の水分(蒸気)は吸湿して発熱し、温度20℃、湿度45%RH(RHは相対湿度)の雰囲気で、液相の水分(水)に浮べた時、21℃以上の温度に発熱している持続時間が10分以上であることが好ましい。さらに好ましくは、21℃以上の温度に発熱している持続時間が20分以上、さらに好ましくは、30分以上、とくに好ましくは、60分以上である。
【0024】
前記高架橋ポリアクリレート系繊維を疎水化する方法について説明する。前記高架橋ポリアクリレート系繊維を疎水化するには、前記高架橋ポリアクリレート系繊維に対して疎水性物質をイオン吸着結合させる。例えば、前記高架橋ポリアクリレート系繊維の表面にフッ素ガスを接触させてフッ素を結合させる。あるいは、フッ素含有化合物、シリコーン化合物、フッ素含有シリコーン化合物又は炭化水素系化合物を含む疎水化剤を結合させることにより発現される。疎水化剤とは、相手物質を疎水化する化合物であり、例えば撥水剤のことをいう。
【0025】
本発明の繊維は、側鎖に親水性の官能基を有しており、疎水化剤はこれらの官能基と結合させるのが好ましい。洗濯を繰り返しても疎水性を低下させないためである。本発明で使用できるフッ素系疎水化剤としては、例えば市販品の“アサヒガードGS10”(商品名)(旭硝子社製、フッ素系疎水剤エマルジョン)、“NKガードFGN700T”(商品名)、“NKガードNDN7000”(商品名)(いずれも日華化学社製、フッ素系疎水剤エマルジョン)等がある。変性シリコーン系疎水化剤としては、エポキシ変性シリコーン系疎水化剤、カチオン系アミノ変性シリコーン系疎水化剤等があり、市販品としては、“X−22−9002”(商品名、側鎖両末端型エポキシ変性シリコーン)、“X−22−163A”(商品名、両末端型エポキシ変性シリコーン)“KF−8012”(商品名、カチオン系両末端アミノ変性シリコーン)、いずれも信越シリコーン社製などがある。カチオン系フッ素含有シリコーン化合物としては、市販品として日華化学社製、商品名“NKガードS−07”、“NKガードS−09”がある。カチオン系フッ素化合物としては、市販品として“AG−E061”(商品名)、“AG−E081” (商品名)、“AG−E082” (商品名)、“AG−E092” (商品名)、“AG−E500D” (商品名)(いずれも旭硝子社製、カチオン系フッ素系疎水剤エマルジョン)、“カチオン系炭化水素系化合物としては、高融点ワックスエマルジョン:日華化学社製、商品名“TH−44”がある。
【0026】
これらの中でもカチオン系フッ素含有シリコーン化合物、カチオン系フッ素含有化合物、カチオン系アミノ変性シリコーン化合物及びカチオン系炭化水素化合物から選ばれる少なくとも一つの疎水化剤が好ましい。この理由は、本発明に使用する高架橋ポリアクリレート系繊維は、前記のとおり親水性基として塩型カルボキシル基、例えば−COONa基を有する繊維であり、カチオン系疎水化剤であれば前記塩型カルボキシル基とイオン的に吸着結合し易いからである。とくにカチオン系フッ素含有シリコーン化合物は好ましい。カチオン系フッ素含有シリコーン化合物は、一例としてフロロアルキル基とシリコーン基(有機ケイ素基)と第4級アンモニウム塩などのカチオン基を含む化合物が挙げられる。他の例としては、フロロアルキル基とシリコーン基(有機ケイ素基)とを含む化合物にカチオン系界面活性剤を混合して水性エマルジョンに調製したものが挙げられる。
【0027】
これら疎水化剤は水に分散させた状態で繊維に付着させるのが好ましい。繊維を処理液に浸漬する、繊維に噴霧する、あるいはパッドする方法などにより接触させ、その後キュアセットによる熱処理により結合固定できる。
【0028】
疎水化剤の結合量は繊維に対して、0.2〜2.5質量%(質量%はomf%ともいう。omfはon the mass of fiberの略。)であり、好ましくは0.22〜2.0omf%である。前記の範囲であれば、繊維は液相の水分と接触しても水をはじき、気相(蒸気)の水分を吸着して発熱が持続し、風合いは良好で紡績工程通過性も良好である。疎水化剤の結合量が0.2質量%未満では好ましい疎水性は得難く、2.5質量%を超えると風合いも紡績工程通過性も低下する。
【0029】
本発明の疎水化剤による処理は、繊維綿状態で行っても良いが、糸の状態で行っても良いし、布帛(織物、編物、不織布)の状態で行っても良い。疎水化処理方法は、浸漬、パッド、プリント等の一般的に行われている処理方法を採用できる。
【0030】
3.吸水による質量増加率(吸水率)
本発明の疎水化吸湿発熱繊維は、開繊した前記繊維を静水に落下させたときの水分付着量が自重の400%以下であることが好ましい。従来の高架橋ポリアクリレート系繊維は水分との親和性が高いため、自重の400%を越える吸水率となるものもあるが、本発明の疎水化処理により吸水率を低くすることができる。吸水率を低くすると乾き易くなる利点がある。
【0031】
4.柔軟剤との併用
疎水剤の種類や加工条件によっては、繊維の風合いが粗硬になる場合もあるので、このような場合には柔軟剤と併用しても良い。柔軟剤は公知のいかなるものも使用できる。例えば市販品として明成化学社製、商品名“メイシリコーンSF”(アミノ変性シリコーン)がある。柔軟剤の付着量は、0.01〜2.00omf%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.0omf%である。
【0032】
5.吸湿性
本発明の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維は気体の水分を吸湿する性質が高い。すなわち、疎水加工しないものとほぼ同様に吸湿性を発揮する。一例として、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気での吸湿率が自重の21.6%以上、61.8%以下が好ましい。吸湿率が高いと、発汗時の気相の汗を吸収しやすく、着心地は良好となる。
【0033】
6.他の繊維との混合
本発明の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維が5〜100質量%、その他の繊維が0〜95質量%であってもよい。その他の繊維としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ナイロン、ポリプロピレン、レーヨン(レンチング社製、商品名“テンセル”を含む)、キュプラ、アセテート、エチレンビニルアルコール(一例としてクラレ社製、商品名“ソフィスタ”)、コットン(木綿)、麻、絹、ウール(羊毛)に代表される獣毛繊維、及び一般アクリル繊維、高架橋ポリアクリレート系繊維などいかなる繊維であっても良い。羽毛のような詰め物も含む。
【0034】
他の繊維との混合は、例えば下記の方法を採用できる。
(1)混紡:混紡は綿段階において2種以上の繊維の混合である。例えば混打綿、カード、練条、スライバーなどでの混合である。紡績糸、不織布、詰め綿の主に均一混合の場合に使用される。
(2)合糸:合糸は2種以上の糸を撚り合わせる混合である。例えば双糸の場合、本発明の繊維糸と他の繊維糸とを撚り合せる混合である。紡績糸同士、紡績糸とフィラメント糸、フィラメント糸同士の撚り合わせに使用される。
(3)混繊:混繊は、フィラメント糸同士の単繊維を混合するときに使用される。
(4)交織:交織は、織物を構成する糸を複数種類使用して織物にする場合の混合である。例えば、経糸と緯糸を別な種類の糸にするとか、経糸、緯糸をそれぞれ複数種使用することもできる。
(5)交編:交編は編物を製造する際に複数種類の糸を使用する場合の混合である。
(6)不織布製造におけるニードルパンチ、水流交絡によって、積層した複数種類の繊維層を混合する。
【0035】
7.繊維構造物
本発明の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維を含む繊維構造物について説明する。本発明の繊維構造物は、本発明の繊維を5質量%以上含むことが好ましい。他の繊維と混合するのはさらに好ましい。他の繊維は前記したとおりである。他の繊維と混合するのが好ましい理由は、多量の発汗や雨で濡れたときには他の繊維に液相の水分を保持させ、本発明の繊維の吸湿発熱を持続させるためである。このようにすると、繊維全体としては濡れた状態になるが、本発明の繊維の吸湿発熱は持続するため、繊維は温かく、保温性は高く、着心地は良好となる。
【0036】
他の繊維として例えばポリエステル繊維に吸水速乾加工したものを用いると、多量の発汗や雨による濡れに対して、ポリエステル繊維が液相の水分を吸水速乾する為、本発明繊維の吸湿発熱効果が持続しやすくなり、その結果、気化冷却も生じにくく、より温かくなる。更に相乗効果として、本発明繊維の発熱持続性により、ポリエステル繊維自体の(吸水)乾燥性も助長され、乾きが早くなり、より優れた着心地となる。
【0037】
本発明の繊維構造物としては、糸、織物、編物、不織布又は詰め物などが好ましい。詰め物の場合は羽毛と混合して使用しても良い。さらに前記繊維構造物としては、衣類、帽子、耳掛け、マフラー、手袋、靴下、寝袋、布団、枕、クッション、毛布、ひざ掛け又はカーペットや資材関連として、住宅関連のフロアー材、壁材、畳なども挙げられる。とくに寒い時期の衣類や登山、スキーなどのスポーツウエアに好適である。衣類としては、肌着、下着、シャツ、ジャンパー、セーター、パンツ、ヤッケ、ウインドブレーカー、トレーニングウエア、雨着、タイツ、腹巻、マフラー、帽子、手袋、靴下、耳あてなどがある。
【0038】
本発明の繊維構造物は、温度20℃の静水に構造物の一端を2分30秒間浸漬し、その後のサーモグラフィ測定により、気化冷却ないか又は0℃を超え−1.2℃以下であることが好ましい。このことは、濡れにくいことを示しており、着用時には冷感が少なく、快適性が得られる。
【実施例】
【0039】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0040】
<測定方法>
1.原綿の吸湿発熱テストの測定方法
(1)開繊した原綿、及び水を温度20℃、45%RHの室内環境に2時間以上放置した。これにより、測定環境下で原綿の吸湿を終了させた。水は試験中に温度が変動しないように室温に合わせておいた。
(2)直径75mmのシャーレに水16gを入れた。
(3)原綿を1g取り出した。
(4)ピンセットで原綿をつかみ、シャーレの水に載せた。
(5)サーモグラフィ(例えばNEC Avio赤外線テクノロジー社製、商品名“H2630”)で熱履歴を計測した。
(6)5秒間隔で発熱終了まで観察し、発熱をカメラで撮影しデータをパソコンに記憶させた。発熱終了はサンプルの最高温度が21℃未満とした。
(7)以上の条件下(サーモグラフィ測定結果を解析)し、温度20℃、湿度45%RHの室内環境下で発熱持続時間を計測した。
【0041】
2.質量増加率(吸水率)の測定方法
水との接触時間及び質量を一定にした試料の質量増加率(吸水率)を測定した。測定方法は次のとおりである。
(1)開繊した原綿を1g秤量した(A)。
(2)温度20℃、湿度45%RHの室内環境下で、300ccビーカーに水200gを入れ、原綿を水面に浮かべた。判定は次のとおりとした。
浮き:発熱持続時間中、浮いていたもの。
半沈み:発熱持続時間中、繊維が部分的に水中に沈むが、全体としては浮いていたもの。
沈み:発熱持続時間内に繊維全体が沈んだもの。沈むまでの時間を測定した。
(3)1分経過後、ネットに全量移し替え余剰水を除去した。
(4)1分経過後、質量測定し(B)、下記式より質量増加率(吸水率)を算出した。
質量増加率(吸水率)=(B−A)×100/A
【0042】
3.繊維の浮沈測定
前記の発熱測定(サーモグラフィ測定結果を解析)した後、サンプルの浮沈状況を観察した。
【0043】
4.紡績糸の吸湿発熱テストの測定方法
(1)図1に示す方法で測定した。紡績糸1を160本束ねて幅約100mmとし、質量を測定した(A)。両端をクリップ2,3で挟み、一方の端は棒4とともに挟み、他方の端はクリップ3を錘にして下に吊り下げた。下には水6を入れたビーカー5を置き、水6の中に紡績糸1のクリップ3側の端が1cm漬かるまで下ろした。
(2)環境条件、サーモグラフィ測定条件は、前記原綿の場合と同様である。試験終了後の試験体質量(B)を測定した。下記式より質量増加率(吸水率)を算出した。
質量増加率(吸水率)=(B−A)×100/A
更に紡績糸の場合は、気化冷却時の温度を表3に示した。この気化冷却温度は、環境温度20℃を基準にした温度である。
【0044】
5.吸湿率の測定方法
試料約5.0gを熱風乾燥器で105℃、16時間乾燥して質量を測定した(a)。次に該試料を温度20℃、45%RH,65%RHあるいは95%RHに調節した恒温恒湿器に24時間入れた。このようにして吸湿した試料の質量を測定した(b)。以上の測定結果から、次式によって算出した。
吸湿率[%]={(b−a)/a}×100
【0045】
6.平均温度の測定方法
2分30秒経過時の水面から、上部クリップ2までの試料全面の平均温度をサーモグラフィで計測した。
【0046】
7.繊維に対する疎水化剤結合量の定量試験
本実施例で使用するカチオン系疎水剤(例:カチオン系フッ素含有シリコーン化合物)は、高架橋ポリアクリレート系繊維表面の塩型カルボキシル基に選択的にイオン吸着結合するため、次式により存在量の差を算出して結合量とした。
(繊維浸漬前のエマルジョン液中の疎水剤の存在量)−(繊維浸漬後エマルジョン液中の存在量)=(繊維吸着量)
(備考:疎水剤の存在量は濃度(質量%)×液量によって算出する。前記濃度は重量分析により求めた。)
【0047】
8.風合い
官能検査により手で触って触感で評価し、柔軟か粗硬かを調べた。
【0048】
9.紡績工程通過性
原綿をカードにより開繊してウェブとし、練条、粗紡、リング精紡工程によって紡績糸を製造する際に、各工程を円滑に通過するかを判断した。工程通過性が良好でないと実用的な物つくりは困難である。評価は下記によって行った。
A 紡績工程通過性は問題ない
B 紡績工程通過性に問題があり、実生産できない。
【0049】
(実施例1)
1.高架橋ポリアクリレート系繊維
特開平5−132858に記載されている公知の方法に従い、塩型カルボキシル基量3.1mmol/g及び4.8mmol/g及び7.7mmol/gの高架橋ポリアクリレート系繊維を製造した。
2.疎水加工
疎水化剤としては下記に示すものを使用した。疎水加工も併せて記載した。
(1)実験番号1−1〜1−4、1−8〜1−9
カチオン系フッ素シリコーン疎水剤として、日華化学社製、商品名“S−09”をエマルジョン水溶液にして使用した。前記水溶液エマルジョンに浸漬後、脱水機で脱水し、105℃、30分間乾燥後、170℃で30分間キュアセットした。
(2)実験番号1−5
カチオン系アミノ変性シリコーンとして、信越シリコーン社製、商品名“KF−8012”をエマルジョン水溶液にして使用した。繊維を浸漬後、脱水機で脱水し、105℃、30分間乾燥後、170℃で30分間キュアセットした。
(3)実験番号1−6
カチオン系高融点ワックスとして、日華化学社製、商品名“TH−44”をエマルジョン水溶液にして使用した。繊維を浸漬後、脱水機で脱水し、105℃、30分間乾燥後、170℃で30分間キュアセットした。
(4)実験番号1−7
疎水化処理をしない繊維(未処理品)とした。
【0050】
以上のようにして得られた繊維を各種測定した。測定結果を下記の表2にまとめて示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2から、実験番号1−1〜1−6の繊維は、液相の水分と接触しても水をはじき、吸湿発熱が持続し、液相の水分と接触しても水分増加率は低いこと、温度20℃、湿度65%RHの雰囲気での吸湿率が自重の26.1%以上61.8%以下であることも確認できた。また、水上における発熱持続時間中の繊維は浮いており、沈まなかった。実験番号1−6は「半沈み」であるが、沈まなかった。実験番号1−1,1−2,1−5〜1−7は塩型カルボキシル基の濃度が同一で、カチオン系疎水化剤の種類と結合量は異なるが、吸湿率は未処理繊維(実験番号1−7)と大きな差はなかった。次に吸湿発熱量を測定した。測定条件は、試料を80℃、6時間真空乾燥した後、25℃、95%RH環境下に放置した際の吸湿発熱量を測定した。実験番号1−2の繊維の吸湿発熱量は2037J/g、実験番号1−7(未処理繊維)は2168J/gであり、ほぼ同一の吸湿発熱量であった。前記物性は家庭洗濯を繰り返しても変らなかった。
【0053】
図2は実験番号1−1の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維の走査電子顕微鏡(SEM)断面写真(倍率8000倍)であり、表面から内部までの疎水化剤の分布を測定するための多点元素分析を実施した時の断面説明図である。元素分析方法はSEMに付随しているエネルギー分散型X線分光法(EDX)によるものである。家庭洗濯を繰り返した後、疎水化繊維の断面方向を10等分してそれぞれの区域の元素分析を行ったところ、F元素はNo.1区域で11.89質量%、No.10区域で2.84質量%、その他の区域ではゼロ質量%であり、Si元素はNo.1区域で1.02質量%、No.10区域で0.34質量%、その他の区域ではゼロ質量%であった。このことから、繊維表面にはカチオン系フッ素含有シリコーン化合物が固定されていることが確認できた。
【0054】
(実施例2)
実施例1の全実験番号の繊維を30質量%と、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET綿,単繊維繊度:1.1dtex、繊維長:35mm)70質量%をカード装置で混紡し、通常のリング紡績装置でZ撚り(890回/m)をかけてメートル番手40番の紡績糸を製造した。実験番号1−1〜1−9の繊維に対応する実験を実験番号2−1〜2−9とする。以上のようにして得られた紡績糸の各種測定結果を下記の表3にまとめた。
【0055】
【表3】
【0056】
表3から、実験番号2−1〜2−6の紡績糸は、液相の水分と接触しても水をはじき、吸湿発熱が持続し、かつ気化冷却がないか又は−1.2℃であり、比較例品に比べて低いことが確認できた。また液相の水分と接触しても水分増加率は低いことも確認できた。これらの物性は家庭洗濯を繰り返しても変らなかった。実験番号2−8及び2−9は紡績工程において脱落物が発生し、紡績糸は得られなかった。
【0057】
(実施例3)
1.高架橋ポリアクリレート系繊維
特開平5−132858に記載されている公知の方法に従い、塩型カルボキシル基量4.8mmol/gの高架橋ポリアクリレート系繊維を製造した。
2.疎水加工
疎水化剤としては下記に示すものを使用した。疎水加工も併せて記載した。
(1)実験番号3−1
疎水化剤である側鎖両末端型エポキシ変性シリコーンとして、信越シリコーン社製、商品名“X−22−9002”をエマルジョン水溶液にして使用した。繊維を浸漬後、脱水機で脱水し、105℃、30分間乾燥後、170℃で30分間キュアセットした。
(2)実験番号3−2〜3−3
疎水化剤としてカチオン型両末端型アミノ変性シリコーンとして、信越シリコーン社製、製品名“KF−8012”を使用した以外は実験番号3−1と同様に処理した。
(3)実験番号3−4
疎水化剤として旭硝子社製、カチオン系フッ素系疎水剤のエマルジョン“アサヒガードAG−E082”(商品名)を使用した以外は実験番号3−1と同様に処理した。
(4)実験番号3−5
疎水化剤として日華化学社製、商品名“S−09”(カチオン型フッ素シリコーン疎水剤)を使用した以外は実験番号3−1と同様に処理した。
(5)実験番号3−6
疎水化処理をしない繊維(未処理品)を使用した。
【0058】
以上のようにして得られた繊維を各種測定した。測定結果を下記の表4にまとめて示す。
【0059】
【表4】
【0060】
表4から、実験番号3-1〜3-5の繊維は、液相の水分と接触しても水をはじき、吸湿発熱が持続する、液相の水分と接触しても水分増加率は低いこと、温度20℃、湿度45%RHの雰囲気での吸湿率が自重の20%以上であることも確認できた。また、水上における発熱持続時間中の繊維は浮いており、沈まなかった。実験番号3-2は「半沈み」であるが、沈まなかった。これらの物性は家庭洗濯を繰り返しても変らなかった。
【0061】
(実施例4)
実施例3の実験番号3-1〜3-6の繊維を30質量%と、ポリエチレンテレフタレート繊維(単繊維繊度:1.1dtex、繊維長:35mm)70質量%をカード装置で混紡し、通常のリング紡績装置でZ撚り(890回/m)をかけてメートル番手40番の紡績糸を製造した。実験番号3-1〜3-6の繊維に対応する実験を実験番号4-1〜4-6とする。以上のようにして得られた紡績糸の各種測定結果を下記の表5にまとめた。
【0062】
【表5】
【0063】
表5から、実験番号4-1〜4-5の紡績糸は、液相の水分と接触しても水をはじき、吸湿発熱が持続し、かつ気化冷却がないか又は−1.2℃であり、比較例品に比べて低いことが確認できた。また液相の水分と接触しても水分増加率は低いことも確認できた。これらの物性は家庭洗濯を繰り返しても変らなかった。
【符号の説明】
【0064】
1 紡績糸
2,3 クリップ
4 棒
5 ビーカー
6 水
図1
図2