(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1溶液は、Y、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つのランタノイド系前駆体をさらに含むものである、請求項7又は8に記載のナノ蛍光体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、NaYF
4は、立方晶構造のα(アルファ)相と六方晶構造のβ(ベータ)相との同質異像(polymorphism)を示し、β相の方がα相よりも優れたアップコンバージョン発光を示す特性を有する。ここで、β相を得るためには非常に高い合成温度が必要であり、これは、合成される粒子の粒径を大きくし、粒子同士の凝集を誘発するため、バイオ応用に適していないという問題があった[非特許文献3]。また、このような問題を解決するために、合成条件を調整して粒子の粒径を小さくした場合は、表面欠陥が増加し、発光強度が急激に弱くなるという問題が生じる。
【0010】
よって、強いアップコンバージョン発光を示すと共に粒径が小さいナノ粒子の開発や、アップコンバージョン発光を示すと共に他の信号を出すことができる多機能性ナノ粒子の開発が切実に要求されている。
【0011】
さらに、ナノ蛍光体からアップコンバージョン発光に加えてダウンコンバージョン発光や磁性などの様々な信号を得られれば、造影剤としての特性を大きく向上させることができる。
【0012】
本発明の目的は、赤外線及び紫外線により励起されて可視光を発光し、磁気的特性を有する、フッ化物系二重発光ナノ蛍光体及びその製造方法を提供することにある。前記ナノ蛍光体は、磁気共鳴画像造影剤又は蛍光造影剤に適用することもでき、磁性、アップコンバージョン発光特性及びダウンコンバージョン発光特性を同時に有する多機能性素材として、センサ、偽造防止コード、太陽電池などに応用することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態によるナノ蛍光体は、下記化学式1で表されるCe
3+とTb
3+が共添加されたフッ化物系第1化合物を含む。
[化1]
NaGd
1−p−q−rM
rF
4:Ce
3+p,Tb
3+q
上記化学式1において、前記pは0.01≦p≦0.5の実数であり、前記qは0.001≦q≦0.35の実数であり、前記rは0≦r<1の実数であり、0.011≦p+q+r<1であり、前記MはY、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つである。
【0014】
前記ナノ蛍光体は、下記化学式2で表されるYb
3+とEr
3+が共添加されたフッ化物系第2化合物を含有するナノ粒子を含むコアと、前記コアを囲み、前記第1化合物を含むシェルとを含むものであってもよい。
[化2]
NaY
1−w−z−x−yGd
wL
zF
4:Yb
3+x,Er
3+y
上記化学式2において、前記xは0.1≦x≦0.9の実数であり、前記yは0<y≦0.1の実数であり、0.1<x+y≦1であり、前記wは0≦w≦1の実数であり、前記zは0≦z≦1の実数であり、0.1<x+y+w+z≦1であり、前記Lはランタノイド系元素及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0015】
前記ナノ蛍光体の大きさは、1nm〜50nmであってもよい。
【0016】
前記コアに含まれるナノ粒子は、六方晶構造を含むものであってもよい。
【0017】
前記シェルに含まれる第1化合物は、結晶質を含むものであってもよい。
【0018】
前記コアの大きさは、1nm〜30nmであってもよい。
【0019】
前記ナノ蛍光体は、ダウンコンバージョン発光特性及びアップコンバージョン発光特性を有するものであってもよい。
【0020】
本発明の他の一実施形態によるナノ蛍光体の製造方法は、ガドリニウム前駆体、セリウム前駆体、テルビウム前駆体及びオレイン酸塩を含む第1溶液を製造する第1溶液製造段階と、前記第1溶液を熱処理してランタノイド系錯体を含む第2溶液を製造する錯体形成段階と、前記第2溶液を含む混合物とオレイン酸及び1−オクタデセンを含む第3溶液を混合して第4溶液を製造し、前記第4溶液にナトリウム前駆体及びフッ素前駆体を混合して第1反応溶液を製造する第1反応溶液製造段階と、前記第1反応溶液を熱処理して下記化学式1で表される第1化合物を含むナノ蛍光体を製造するナノ蛍光体製造段階とを含む。
[化1]
NaGd
1−p−q−rM
rF
4:Ce
3+p,Tb
3+q
上記化学式1において、前記pは0.01≦p≦0.5の実数であり、前記qは0.001≦q≦0.35の実数であり、前記rは0≦r<1の実数であり、0.011≦p+q+r<1であり、前記MはY、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つである。
【0021】
前記第1反応溶液製造段階において、前記第4溶液は、コアに含まれるナノ粒子をさらに含み、前記ナノ蛍光体製造段階において、前記ナノ粒子を含むコアは、前記第1化合物により囲まれて前記ナノ蛍光体に含まれるようにしてもよい。
【0022】
前記ナノ粒子は、下記化学式2で表される第2化合物を含むものであり、前記ナノ粒子は、イットリウム前駆体、イッテルビウム前駆体、エルビウム前駆体、オレイン酸及び1−オクタデセンを含む第5溶液を製造する第5溶液製造段階と、前記第5溶液を加熱してランタノイド系錯体を含む第6溶液を形成する錯体形成段階と、前記第6溶液とナトリウム前駆体及びフッ素前駆体を含む第7混合溶液を混合して第2反応溶液を製造する第2反応溶液製造段階と、前記第2反応溶液を熱処理して下記化学式2で表されるYb
3+とEr
3+が共添加されたフッ化物系第2化合物のナノ粒子を形成するナノ粒子形成段階とを含むナノ粒子の製造方法により製造されたものであってもよい。
[化2]
NaY
1−w−z−x−yGd
wL
zF
4:Yb
3+x,Er
3+y
上記化学式2において、前記xは0.1≦x≦0.9の実数であり、前記yは0<y≦0.1の実数であり、0.1<x+y≦1であり、前記wは0≦w≦1の実数であり、前記zは0≦z≦1の実数であり、0.1<x+y+w+z≦1であり、前記Lはランタノイド系元素及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0023】
前記ナノ蛍光体製造段階の熱処理は、200℃〜370℃で行われてもよい。
【0024】
前記ガドリニウム前駆体は、ガドリニウムアセテート(Gd(CH
3COO)
3)、塩化ガドリニウム(GdCl
3)、塩化ガドリニウム水和物(GdCl
3.6H
2O)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0025】
前記セリウム前駆体は、セリウムアセテート(Ce(CH
3COO)
3)、塩化セリウム(CeCl
3)、塩化セリウム水和物(CeCl
3.7H
2O)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0026】
前記テルビウム前駆体は、テルビウムアセテート(Tb(CH
3COO)
3)、テルビウムアセテート水和物(Tb(CH
3COO)
3.4H
2O)、塩化テルビウム(TbCl
3)、塩化テルビウム水和物(TbCl
3.6H
2O)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0027】
前記第1溶液は、Y、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つのランタノイド系前駆体をさらに含むものであってもよい。
【0028】
本発明のさらに他の一実施形態による造影剤は、前記ナノ蛍光体を含む。前記造影剤は、蛍光造影剤又は磁気共鳴画像造影剤であってもよい。
【0029】
本発明のさらに他の一実施形態による赤外線センサは、前記ナノ蛍光体を含む。
【0030】
本発明のさらに他の一実施形態による偽造防止コードは、前記ナノ蛍光体を含む。
【0031】
本発明のさらに他の一実施形態による太陽電池は、前記ナノ蛍光体を含む。
【発明の効果】
【0032】
本発明のナノ蛍光体は、発光強度に優れ、赤外線により励起されて可視光を発光するアップコンバージョン特性と紫外線により励起されて可視光を発光するダウンコンバージョン特性を同時に有し、磁性も有することから、造影剤として適用するとさらに強い画像信号を高精度に得ることができる。また、赤外線センサ又は紫外線センサに適用することもでき、高いレベルのセキュリティコードに応用することもできる。さらに、太陽電池に含まれて太陽電池の効率を向上させることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明において特に断らない限り、ランタノイド系元素とは、周期表上でランタノイド系に分類される元素を意味し、具体的には、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)からなる群から選択されるいずれか1つを意味する。
【0035】
本発明で使用される第1、第2などのように序数を含む用語は様々な構成要素を説明するために使用されるが、前記構成要素は前記用語により限定されるものではない。前記用語は1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的でのみ使用される。
【0037】
本発明の一実施形態によるナノ蛍光体は、下記化学式1で表されるCe
3+とTb
3+が共添加されたフッ化物系第1化合物を含む。
[化1]
NaGd
1−p−q−rM
rF
4:Ce
3+p,Tb
3+q
上記化学式1において、前記pは0.01≦p≦0.5の実数であり、前記qは0.001≦q≦0.35の実数であり、前記rは0≦r<1の実数であり、0.011≦p+q+r<1であり、前記MはY、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つである。
【0038】
前記qはTbの量を示すものであって、前記qが0.001未満では強い緑色発光を得ることが難しく、前記qが0.35を超えると濃度消光により強い発光を実現できなくなる。前記pは共添加剤であるCeの量を示すものであって、前記pが0.01未満では励起光の吸収が十分でなく、前記pが0.5を超えると濃度消光によりエネルギー伝達効率が低くなる。
【0039】
前記pは前記qと等しいかそれより大きい値であってもよい。前記pが前記qと等しいかそれより大きいということは、CeがTbよりも多量に含まれることを意味し、この場合、共添加剤により励起光をナノ蛍光体に十分に吸収させることができる。
【0040】
上記化学式1において、前記pは0.01≦p≦0.35の実数であってもよく、前記qは0.001≦q≦0.3の実数であってもよい。前記p及びqを上記範囲とする場合、濃度消光効果による発光の低下を最小限に抑え、CeからTbへのエネルギー伝達効率を向上させることにより、強い発光を得ることができる。
【0041】
前記ナノ蛍光体は、コアと前記コアを囲むシェルとを含むコア/シェル構造であってもよい。
図1は本発明の一実施形態であるコア/シェル構造のナノ蛍光体の断面を示す概念図である。
図1に示すように、前記ナノ蛍光体は、コアと前記コアを囲むシェルとから構成されてもよい。
【0042】
前記ナノ蛍光体がコア/シェル構造からなる場合、コア自体も発光特性を有するナノ粒子を含んで発光特性を有するようにすることができ、コアからシェルが成長し、シェルのナノ結晶の成長を容易にすることができる。
【0043】
前記シェルは、前記第1化合物を含むものであってもよく、前記コアは、下記化学式2で表されるYb
3+とEr
3+が共添加されたフッ化物系第2化合物を含有するナノ粒子を含むものであってもよい。
[化2]
NaY
1−w−z−x−yGd
wL
zF
4:Yb
3+x,Er
3+y
上記化学式2において、前記xは0.1≦x≦0.9の実数であり、前記yは0<y≦0.1の実数であり、0.1<x+y≦1であり、前記wは0≦w≦1の実数であり、前記zは0≦z≦1の実数であり、0.1<x+y+w+z≦1であり、前記Lはランタノイド系元素及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0044】
上記化学式2において、前記wは0<w≦1の実数であってもよく、前記zは0<z≦1の実数であってもよく、0<w+z≦1であってもよい。
【0045】
上記化学式2において、前記ランタノイド系元素は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Tm及びLuからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0046】
上記化学式2において、前記xは0.1≦x≦0.4の実数であってもよく、前記yは0.001≦y≦0.05の実数であってもよく、0.101≦x+y≦0.45であってもよく、この場合、前記ナノ蛍光体から得られる光の赤色発光ピークに対する緑色発光ピークの比率を高めることができ、優れた緑色発光を得ることができる。
【0047】
前記ナノ粒子の粒径は、30nm以下であってもよく、1nm〜30nmであってもよい。
【0048】
前記ナノ粒子は、六方晶構造を有するものであってもよい。上記化学式2で表されるYb
3+とEr
3+が共添加されたフッ化物系ナノ粒子が六方晶構造を有する場合、強い発光強度を有するナノ蛍光体を得ることができる。
【0049】
前記ナノ蛍光体は、上記化学式2で表される第2化合物を含有するナノ粒子を含むコアと、上記化学式1で表される第1化合物を含むシェルとを含む、コア/シェル構造であってもよい。この場合、前記ナノ蛍光体のアップコンバージョン発光強度が高くなり、紫外線の励起によりダウンコンバージョン緑色発光を得ることができ、それと同時に磁性も有する。
【0050】
特に、前記ナノ蛍光体は、赤外線を用いたアップコンバージョン発光信号に加えて、紫外線を用いたダウンコンバージョン発光信号をさらに得ることができ、2つのモードの蛍光によるバイオ画像を可能にするため、造影剤として用いる場合、精度をより向上させることができる。また、磁性を有するため、磁気共鳴画像造影剤として用いる場合、画像のコントラストをより明確にすることができ、より強く正確な画像信号を得ることができる。さらに、生体組織に適用する場合、必要に応じて赤外線及び紫外線を選択的に又は同時に用いることができ、生体組織の奥深くの画像までも得ることができる。
【0051】
前記ナノ蛍光体の大きさは、50nm以下であってもよく、1nm〜50nmであってもよい。前記ナノ蛍光体の大きさを上記範囲とする場合、粒径のばらつきによる輝度低下を防止することができる。
【0052】
前記シェルに含まれる第1化合物は、結晶質を含むものであってもよい。前記シェルに含まれる第1化合物が結晶質である場合、アップコンバージョン発光を強くすることができる。
【0053】
前記ナノ蛍光体は、コア/シェル構造であるにもかかわらず、非常に小さいサイズで実現することができ、小さいサイズにもかかわらず、強い発光を示し、造影剤として細胞実験などの生体外(インビトロ)で適用できるだけでなく、生体内(インビボ)でも適用できる。
【0054】
また、赤外線センサ又は紫外線センサに含まれて敏感なセンサを提供することもでき、偽造防止コードに応用することもでき、太陽電池に含まれて太陽電池の効率を向上させることもできる。
【0055】
本発明の他の一実施形態によるナノ蛍光体の製造方法は、下記化学式1で表されるCe
3+とTb
3+が共添加されたフッ化物系第1化合物を含むナノ蛍光体を製造する方法であって、第1溶液製造段階と、錯体形成段階と、第1反応溶液製造段階と、ナノ蛍光体製造段階とを含む。
[化1]
NaGd
1−p−q−rM
rF
4:Ce
3+p,Tb
3+q
上記化学式1において、前記p、q、r及びMについては、前述した本発明の一実施形態であるナノ蛍光体での説明と重複するので、その説明を省略する。
【0056】
前記第1溶液製造段階は、ガドリニウム前駆体、セリウム前駆体、テルビウム前駆体及びオレイン酸塩を含む第1溶液を製造する過程を含む。
【0057】
前記第1溶液は、Y、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つのランタノイド系前駆体をさらに含むものであってもよい。
【0058】
前記ガドリニウム前駆体は、ガドリニウムアセテート(Gd(CH
3COO)
3)、塩化ガドリニウム(GdCl
3)、塩化ガドリニウム水和物(GdCl
3.6H
2O)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0059】
前記セリウム前駆体は、セリウムアセテート(Ce(CH
3COO)
3)、塩化セリウム(CeCl
3)、塩化セリウム水和物(CeCl
3.7H
2O)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0060】
前記テルビウム前駆体は、テルビウムアセテート(Tb(CH
3COO)
3)、テルビウムアセテート水和物(Tb(CH
3COO)
3.4H
2O)、塩化テルビウム(TbCl
3)、塩化テルビウム水和物(TbCl
3.6H
2O)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0061】
前記オレイン酸塩は、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよく、前記ランタノイド系前駆体と反応して錯体を形成するものであれば適用可能であるが、前記オレイン酸塩は、オレイン酸ナトリウムであることが好ましい。
【0062】
前記錯体形成段階は、前記第1溶液を熱処理してランタノイド系錯体を含む第2溶液を製造する過程を含む。前記ランタノイド系錯体は、前記ガドリニウム前駆体と前記オレイン酸塩が反応して形成されるオレイン酸ガドリニウム、前記セリウム前駆体と前記オレイン酸塩が反応して形成されるオレイン酸セリウム、及び前記テルビウム前駆体と前記オレイン酸塩が反応して形成されるオレイン酸テルビウムを含む。
【0063】
前記第1反応溶液製造段階は、前記第2溶液を含む混合物とオレイン酸及び1−オクタデセンを含む第3溶液を混合して第4溶液を製造し、前記第4溶液とナトリウム前駆体及びフッ素前駆体を含む溶液を混合して第1反応溶液を製造する過程を含む。
【0064】
前記ナトリウム前駆体は、水酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよく、前記フッ素前駆体は、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0065】
前記第4溶液は、アルコールをさらに含んでもよく、前記アルコールは、炭素数1〜6の低級アルコールであってもよく、メタノールであってもよい。
【0066】
前記ナノ蛍光体製造段階は、前記第1反応溶液を熱処理してナノ蛍光体を製造する過程を含む。前記熱処理は、非活性ガス雰囲気下で行われてもよい。
【0067】
前記ナノ蛍光体製造段階において、前記第1反応溶液を熱処理してナノ蛍光体を製造する過程の熱処理の温度は、200℃〜370℃であってもよい。
【0068】
前記熱処理の温度が200℃未満では、β相のナノ結晶が完全に形成されず、それにより、アップコンバージョン発光強度が低くなる。前記熱処理の温度が370℃を超えると、形成されるナノ蛍光体同士の凝集が起こり、ナノ蛍光体が大きくなり、サイズにばらつきが生じることがある。
【0069】
前記熱処理の時間は、30分〜4時間であってもよい。前記熱処理の時間が30分未満では、ナノ蛍光体中の結晶形成が僅かであり、前記熱処理の時間が4時間を超えると、凝集現象などによりナノ蛍光体が大きくなる。
【0070】
前記第4溶液がアルコールをさらに含む場合、前記ナノ蛍光体製造段階は、前記第1反応溶液を熱処理する前に、前記アルコールを除去する過程をさらに含んでもよい。
【0071】
前記第1反応溶液製造段階において、前記第4溶液は、コアに含まれるナノ粒子をさらに含んでもよい。前記第4溶液が前記ナノ粒子をさらに含む場合、前記ナノ粒子を含むコアが前記第1化合物により囲まれて前記ナノ蛍光体に含まれ、前記ナノ蛍光体がコア/シェル構造を有する。
【0072】
前記ナノ粒子は、下記化学式2で表されるYb
3+とEr
3+が共添加されたフッ化物系第2化合物を含有するものであってもよい。
[化2]
NaY
1−w−z−x−yGd
wL
zF
4:Yb
3+x,Er
3+y
上記化学式2において、前記x、y、w、z及びLについては、前述した本発明の一実施形態であるナノ蛍光体での説明と重複するので、その説明を省略する。
【0073】
前記第4溶液が前記ナノ粒子をさらに含む場合、前記第1化合物が、前記第2化合物を含有するナノ粒子を含むコアを囲むシェルを形成し、コア/シェル構造のナノ蛍光体を製造することができる。
【0074】
前記第2化合物を含有するナノ粒子は、ナノ粒子の製造方法により製造することができ、前記ナノ粒子の製造方法は、第5溶液製造段階と、錯体形成段階と、第2反応溶液製造段階と、ナノ粒子形成段階とを含む。
【0075】
前記第5溶液製造段階は、イットリウム前駆体、イッテルビウム前駆体、エルビウム前駆体、オレイン酸及び1−オクタデセンを含む第5溶液を製造する過程を含んでもよい。
【0076】
前記第5溶液は、ガドリニウム前駆体をさらに含むものであってもよい。
【0077】
前記イットリウム前駆体は、イットリウムアセテート(Y(CH
3COO)
3)、塩化イットリウム(YCl
3)、塩化イットリウム水和物(YCl
3.6H
2O)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよく、前記イッテルビウム前駆体は、イッテルビウムアセテート(Yb(CH
3COO)
3)、塩化イッテルビウム(YbCl
3)、塩化イッテルビウム水和物(YbCl
3.6H
2O)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよく、前記エルビウム前駆体は、エルビウムアセテート(Er(CH
3COO)
3)、塩化エルビウム(ErCl
3)、塩化エルビウム水和物(ErCl
3.6H
2O)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよく、前記ガドリニウム前駆体は、ガドリニウムアセテート(Gd(CH
3COO)
3)、塩化ガドリニウム(GdCl
3)、塩化ガドリニウム水和物(GdCl
3.6H
2O)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0078】
前記錯体形成段階は、前記第5溶液を加熱してランタノイド系錯体を含む第6溶液を形成する過程を含んでもよい。
【0079】
前記第5溶液の加熱は、100℃〜200℃で行われるようにしてもよく、130℃〜180℃で行われるようにしてもよい。前記第5溶液の加熱が上記温度範囲で行われる場合、オレイン酸イットリウム、オレイン酸イッテルビウム、オレイン酸エルビウム、オレイン酸ガドリニウムなどの前記錯体がオレイン酸及び1−オクタデセンに溶解しやすくなる。
【0080】
前記第2反応溶液製造段階は、前記第6溶液とナトリウム前駆体及びフッ素前駆体を含む第7混合溶液とを含む第2反応溶液を製造する過程を含んでもよい。
【0081】
前記ナトリウム前駆体は、水酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。前記フッ素前駆体は、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。前記フッ化ナトリウムは、前記ナトリウム前駆体と前記フッ素前駆体の両方として作用する。
【0082】
前記第7混合溶液は、アルコールをさらに含んでもよく、前記アルコールは、炭素数1〜6の低級アルコールであってもよく、メタノールであってもよい。
【0083】
前記ナノ粒子形成段階は、前記第2反応溶液を熱処理してナノ粒子を形成する過程を含んでもよい。
【0084】
前記第7混合溶液がアルコールをさらに含む場合、前記ナノ粒子形成段階は、前記第2反応溶液を熱処理する前に、前記アルコールを除去する過程をさらに含んでもよい。
【0085】
前記ナノ粒子形成段階において、前記熱処理は、非活性ガス雰囲気下で行われてもよい。前記熱処理は、200℃〜370℃の温度で行われるようにしてもよく、30分〜4時間行われるようにしてもよい。前記熱処理が前記温度範囲及び時間範囲で行われる場合、適切な発光強度による優れたアップコンバージョン発光効果を有し、粒径が小さく、かつ粒子同士の凝集が少ない、β相の結晶性ナノ粒子が得られる。
【0086】
前記ナノ粒子は、常温への冷却、洗浄過程を経て、無極性溶媒に分散させて保管してもよい。前記無極性溶媒としては、ヘキサン、トルエン、クロロホルムなどを用いてもよいが、これに限定されるものではない。
【0087】
前記ナノ粒子は、前記ナノ粒子の製造方法により製造し、前記無極性溶媒に分散させて保管してもよく、前記無極性溶媒に分散させた状態で前記第4溶液に含ませてもよい。
【0088】
前記ナノ粒子を含む第4溶液を用いて前記ナノ蛍光体を製造する場合、前記ナノ粒子を含むようにコアを形成し、前記ナノ粒子を含むコアを囲むように前記コアの表面にシェルを形成してもよい。
【0089】
この場合、前記ナノ蛍光体製造段階の熱処理の温度を200℃〜370℃とすると、コアの表面にβ相のシェルがエピタキシャルに成長し、粒子の粒径が小さいにもかかわらず、コアよりも優れたアップコンバージョン発光を示すことができ、ダウンコンバージョン発光特性及び磁性を共に有する。また、前記熱処理の温度が370℃を超えると、シェルがコアを囲むように形成される際に、シェル前駆体がシェルだけでなくコアも形成するため、シェルが効果的に形成されなくなる。
【0090】
本発明のナノ蛍光体の製造方法によれば、蛍光体をより小さくしながらも、赤外線(近赤外線を含む)により励起されて可視光線を発する強いアップコンバージョン発光特性、及び紫外線(近紫外線を含む)により励起されて可視光線を発するダウンコンバージョン発光特性を同時に有し、磁性も有する、ナノ蛍光体を簡単に製造することができる。
【0091】
本発明のさらに他の一実施形態による造影剤は、前記ナノ蛍光体を含む。前記造影剤は、蛍光造影剤又は磁気共鳴画像造影剤であってもよい。これについては、前述した本発明の一実施形態であるナノ蛍光体での説明と重複するので、具体的な説明は省略する。
【0092】
前記造影剤は、前記ナノ蛍光体の粒径が小さいにもかかわらず、赤外線及び紫外線により励起され、生体内に適用できる程度に十分な発光を示す二重発光特性を示すことから、従来の造影剤よりも生体の画像のコントラストを大きくすることができ、画像造影剤の精度を向上させることができる。また、生体組織の奥深くの画像までも得ることができる。前記ナノ蛍光体の磁性により、蛍光造影剤としてだけでなく、磁気共鳴画像造影剤としても活用することができる。
【0093】
本発明のさらに他の一実施形態による赤外線センサは、前記ナノ蛍光体を含む。前記ナノ蛍光体については、前述した通りであるので具体的な説明は省略する。前記赤外線センサは、赤外線により励起されて発光する前記ナノ蛍光体を含むことにより、優れた感度を有する。
【0094】
本発明のさらに他の一実施形態による偽造防止コードは、前記ナノ蛍光体を含む。前記ナノ蛍光体については、前述した通りであるので具体的な説明は省略する。前記偽造防止コードは、目に見えない赤外線及び紫外線の下で同時に発光する特性を有し、磁性も有するので、セキュリティ性をより高め、高いレベルのセキュリティコードに応用することができる。また、前記ナノ蛍光体は、粒径がナノ単位であって非常に微細であり、一般的な方法では容易に検出できないため、紙幣偽造防止コードなどの偽造防止コードとして活用することができる。
【0095】
本発明のさらに他の一実施形態による太陽電池は、前記ナノ蛍光体を含む。前記ナノ蛍光体については、前述した通りであるので具体的な説明は省略する。前記太陽電池は、太陽電池では活用できない赤外線及び紫外線を太陽電池で活用できる可視光に変換することのできる前記ナノ蛍光体を含むことにより、高い電池効率を有する。
【実施例】
【0096】
以下、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるように、本発明の実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0097】
〔製造例:β−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02/β−NaGd
0.8F
4:Ce
3+0.15,Tb
3+0.05構造(コア/シェル構造)のナノ蛍光体の製造〕
(1.Yb
3+とEr
3+が共添加されたフッ化物系ナノ粒子(コア)の製造)
0.2mmolの塩化イットリウム水和物(YCl
3.6H
2O)、0.6mmolの塩化ガドリニウム水和物(GdCl
3.6H
2O)、0.18mmolの塩化イッテルビウム水和物(YbCl
3.6H
2O)、及び0.02mmolの塩化エルビウム水和物(ErCl
3.6H
2O)と、溶媒である6mlのオレイン酸及び15mlの1−オクタデセンを混合し、混合溶液を製造した(第5溶液製造段階)。
【0098】
前記混合溶液を150℃に加熱し、前記ランタノイド系化合物が前記溶媒に溶解した透明な溶液、すなわちランタノイド系錯体を含む溶液を形成した(錯体形成段階)。
【0099】
前記ランタノイド系錯体を含む溶液に、2.5mmolの水酸化ナトリウム及び4mmolのフッ化アンモニウムとメタノールを混合した混合溶液を加え、マグネチックスターラーを用いて混合し、反応溶液を製造した(第2反応溶液製造段階)。
【0100】
前記反応溶液からメタノールを除去し、アルゴンガス雰囲気下で、前記メタノールが除去された反応溶液を300℃で90分間熱処理した。前記熱処理が施されている間にβ−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02ナノ粒子が形成された(ナノ粒子形成段階)。
【0101】
前記形成されたナノ粒子をエタノールで洗浄し、ヘキサンに分散させて保管した。
【0102】
(2.Ce
3+とTb
3+が共添加されたフッ化物でシェルを形成することによるコア/シェル構造のナノ蛍光体の製造)
前記1.で製造されたβ−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02ナノ粒子をコアとし、Ce
3+とTb
3+が共添加されたフッ化物系第1化合物を含むナノ蛍光体を製造した。
【0103】
0.8mmolの塩化ガドリニウム水和物(GdCl
3.6H
2O)、0.15mmolの塩化セリウム水和物(CeCl
3.7H
2O)、0.05mmolの塩化テルビウム水和物(TbCl
3.6H
2O)、及び3.1mmolのオレイン酸ナトリウム(NaC
18H
33O
2)と、水、エタノール、ヘキサンの混合溶媒を混合し、第1溶液を製造した(第1溶液製造段階)。
【0104】
前記第1溶液を60℃で4時間熱処理し、オレイン酸ガドリニウムを含むオレイン酸錯体を含む第2溶液を製造した(錯体形成段階)。
【0105】
前記第2溶液とオレイン酸及び1−オクタデセンを含む第3溶液を混合し、前記オレイン酸ガドリニウムを含む溶液に前記1.で製造されたβ−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02ナノ粒子を加え、マグネチックスターラーを用いて混合し、第4溶液を製造した。
【0106】
前記第4溶液に、2.5mmolの水酸化ナトリウム及び4mmolのフッ化アンモニウムを含むメタノール溶液10mlを加え、マグネチックスターラーを用いて混合し、第1反応溶液を製造した(第1反応溶液製造段階)。
【0107】
前記第1反応溶液からメタノールを除去し、アルゴンガス雰囲気下で、前記メタノールが除去された反応溶液を300℃で90分間熱処理した。前記熱処理が施されている間にβ−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02/β−NaGd
0.8F
4:Ce
3+0.15,Tb
3+0.05で表されるコア/シェル構造のナノ蛍光体が得られた(ナノ蛍光体製造段階)。
【0108】
前記コア/シェル構造のナノ蛍光体をエタノールで洗浄し、ヘキサンに分散させて保管した。
【0109】
〔測定例:比較例1(ナノ粒子)及び実施例1(ナノ蛍光体)の物性測定〕
前記製造例の1.により製造されたβ−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02ナノ粒子を比較例1とし、前記製造例の2.により製造されたβ−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02/β−NaGd
0.8F
4:Ce
3+0.15,Tb
3+0.05で表されるコア/シェル構造のナノ蛍光体を実施例1とし、以下の物性を測定した。
【0110】
(測定例1:比較例1及び実施例1の粒径及び結晶性の評価)
比較例1(β−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02ナノ粒子)と実施例1(β−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02/β−NaGd
0.8F
4:Ce
3+0.15,Tb
3+0.05で表されるコア/シェル構造のナノ蛍光体)をサンプルとし、それらの透過電子顕微鏡写真及び高分解能透過電子顕微鏡写真により結晶性を評価した。前記透過電子顕微鏡写真及び高分解能透過電子顕微鏡写真は、どちらもFEI社のTECNAI G2モデルを用いて撮影した。
【0111】
図2は比較例1(β−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02ナノ粒子)の透過電子顕微鏡写真及び高分解能透過電子顕微鏡写真(右上)である。
図2を参照すると、比較例1のナノ粒子は、粒径が約8.3nmであり、明確な格子パターンを有することを確認することができる。このように明確な格子パターンを有することは、ナノ粒子が非常に高い結晶性を有することを意味する。
【0112】
図3は実施例1(β−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02/β−NaGd
0.8F
4:Ce
3+0.15,Tb
3+0.05で表されるコア/シェル構造のナノ蛍光体)の透過電子顕微鏡写真及び高分解能透過電子顕微鏡写真(右上)である。
図3を参照すると、ナノ粒子であるコアの周囲にシェルが形成されている実施例1のナノ蛍光体は、大きさが約18.9〜27.2nmであり、シェルが形成されていない比較例1のナノ粒子の粒径よりも大きくなったことを確認することができる。また、実施例1のナノ蛍光体は、明確な格子パターンを有し、非常に高い結晶性を有することを確認することができる。
【0113】
一般に、蛍光体は母体の結晶性が高いほど強い発光特性を示す。従って、比較例1のナノ粒子及び実施例1のナノ蛍光体は、どちらも高い結晶性を有することから非常に優れた発光特性を有することが分かる。
【0114】
(測定例2:比較例1及び実施例1の近赤外線及び紫外線の発光スペクトル)
比較例1(β−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02ナノ粒子)と実施例1(β−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02/β−NaGd
0.8F
4:Ce
3+0.15,Tb
3+0.05で表されるコア/シェル構造のナノ蛍光体)をサンプルとし、近赤外線及び紫外線の発光スペクトルを測定した。前記発光スペクトルは、どちらもHitachi F7000を用いて測定した。
【0115】
図4は励起源として近赤外線を用いて測定した比較例1(点線)及び実施例1(実線)の発光スペクトルを示すグラフである。
【0116】
図4を参照すると、実施例1の方が比較例1よりも約10倍以上強い発光強度を示すことを確認することができる。これは、Ce
3+とTb
3+が共添加されたフッ化物系化合物をシェルとしてさらに含むナノ蛍光体(実施例1)の方が、Ce
3+とTb
3+が共添加されたフッ化物系化合物を含まないナノ粒子(比較例1)に比べて、近赤外線を励起源とした発光スペクトルにおいて格段に優れた発光強度を有することを意味する。
【0117】
図5は励起源として紫外線を用いて測定した比較例1(点線)及び実施例1(実線)の発光スペクトルを示すグラフである。
【0118】
図5を参照すると、実施例1は緑色領域の発光ピークを示すのに対して、比較例1は発光ピークを示さず、実施例1のみアップコンバージョン発光特性及びダウンコンバージョン発光特性を同時に有することを確認することができる。
【0119】
(測定例3:実施例1の近赤外線及び紫外線での発光評価)
実施例1(β−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02/β−NaGd
0.8F
4:Ce
3+0.15,Tb
3+0.05で表されるコア/シェル構造のナノ蛍光体)をサンプルとし、近赤外線及び紫外線を励起源とした発光の程度を肉眼で評価した。
【0120】
図6において、(a)は実施例1のナノ蛍光体が分散した溶液を示す写真であり、(b)は近赤外線を励起源とした発光写真であり、(c)は紫外線を励起源とした発光写真である。
図6を参照すると、実施例1のナノ蛍光体が分散した溶液は非常に透明な溶液であり、近赤外線及び紫外線の励起により鮮明な緑色発光特性を示すことを確認することができる。
【0121】
(測定例4:実施例1の磁気ヒステリシス実験)
実施例1(β−NaY
0.2Gd
0.6F
4:Yb
3+0.18,Er
3+0.02/β−NaGd
0.8F
4:Ce
3+0.15,Tb
3+0.05で表されるコア/シェル構造のナノ蛍光体)をサンプルとし、磁気ヒステリシス曲線を測定して
図7に示した。前記磁気ヒステリシス曲線は、Princeton社のMicro Mag 2900モデルを用いて測定した。
図7を参照すると、実施例1のナノ蛍光体は常磁性を示すことを確認することができる。
【0122】
図8は永久磁石が存在する場合の実施例1のナノ蛍光体の発光写真である。
図8を参照すると、磁性により実施例1のナノ蛍光体が永久磁石の周囲に移動し、永久磁石周囲の粒子が集まった部分でのみ発光が現れることを確認することができる。
【0123】
上記測定例から分かるように、本発明のナノ蛍光体は、近赤外線及び紫外線を励起源として優れた発光特性を示すと共に、優れた常磁性を有するので、測定時にコントラストと精度に優れた造影剤として用いることができる。さらに、このような特性を用いて、本発明のナノ蛍光体は、紫外線センサ、赤外線センサ、偽造防止コード、太陽電池などに応用することもできる。
【0124】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義される本発明の様々な変形や改良形態も本発明に含まれる。