【実施例】
【0023】
下記の実施例
2、4、5、6、7、8、参考実施例1、3、9及び比較例1〜5について、次に示す特性試験を実施した。
特性試験項目としては、表面保護フィルムに使用するポリエチレン樹脂の融点(MP)、樹脂シートのゴム成分を把握するためのアセトン不溶部、光学特性(全光線透過率)、シート表面硬さ(鉛筆硬度)、フィルム厚み(表面保護フィルムの基材層と粘着層との合計厚み)、フィルム粘着強さ(表面保護フィルムと透明樹脂シートとの粘着強さ)、切削加工性〔フィルム捲れ、フィルム毛羽(屑)、バリ、カケ等の発生〕、作業性(キズ発生、フィルムの破れ及びフィルム剥離)および釘打ち後(白化発生の有無、クラック発生の有無)について比較評価を実施した。
(1)表面保護フィルムの融点(mp)
各々フィルム素材の融点(mp)を株式会社パーキンエルマージャパン製 機種:Pyris1を使用し、サンプル量:約0.5mgを用い、DSC(示差走査熱量測定 昇温速度:20℃/mim)にて求めた。融点(mp)℃は、チャートに描かれたピーク温度と採用した。
【0024】
(2)アセトン不溶部
表面保護フィルムを剥がした透明樹脂シートを一昼夜(約80℃、約12時間以上)乾燥後、透明樹脂シートの一部を切出し約1.00g精秤後(W1)、遠沈管(金属製チュ
ーブ)に試料を入れた後にアセトン20mlを加え室温で約1日静置後、振とう機にて2時間振とうする。次に日立工機(株)製 真空式高速冷却遠心機 機種:CR26Hを使用し、5℃、24000rpmに条件設定し、1時間遠心分離する。
振とう後、上澄み液をデカンテーションして除いた後、新たにアセトン20mlを加え室温で1時間振とうする。振とう後、5℃、24000rpmの条件にて1時間遠心分離する。再度、同一方法及び条件で繰り返し合計3回行った。上澄み液をデカンテーションして除き、一晩風乾する。
真空乾燥機を100℃に設定し、一昼夜(約12時間以上)真空乾燥後に取出し、デシケーター内で室温まで冷却後、残留物の重量を秤量した(W2)。
次式により、アセトン不溶部(重量%)を算出する(X)。
アセトン不溶部(X)=
(W2/W1
)×100
【0025】
(3)光学特性(全光線透過率)
JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」の規定方法に準じ、表面保護フィルムを剥がした透明樹脂シートを50×50mmの試料サイズに切り出し後、日本電色工業(株)製 濁度計型式:1001DPを使用して測定した。
(4)鉛筆硬度
JIS K 5400「塗料一般試験法」の規定方法に準じ、表面保護フィルムを剥がした透明樹脂シートを100×150mmの試料サイズに切り出し後、約80℃の乾燥機の中に12時間以上放置し取出後、デシケーター中にて自然冷却させた。(株)東洋精機製作所製 鉛筆引掻き硬さ試験機を使用し、引掻き角度:45度 荷重(重り):1kgの条件下にて測定した。
【0026】
(5)表面保護フィルム厚み
表面保護フィルムと粘着層との合計厚みをマイクロメーターにてフィルム厚みを測定した。
(6)接着性(フィルム粘着強さ)
表面保護フィルムを貼り合せた透明樹脂シートを幅60mm、長さ150mmに切断後、幅方向の両端5mmにカッターナイフにてカットし幅50mmの試料を得た。
その後、インストロン社製型式5582(床置きモデル)試験機を用い、180度剥離した表面保護フィルムをチャックに固定し、もう一方の透明樹脂シートも別なチャックに固定した。毎分300mm/minの引張速度でフィルムを剥離させ、剥離後の10mmから30mmの平均の荷重を求め、フィルムの180度剥離時の粘着強さとした。
【0027】
(7)切削加工性
NC加工機、ルーター加工機を使用し一般的な木工用(ベニア合板)の条件に設定後、シートに表面保護フィルムを付けたまま毎葉にて切削加工を行い、問題が無くほぼ良好に加工が出来た場合を○、カケ(バリ)或いはフィルムの剥がれが僅かに認められる場合を△とし、明らかにカケ(バリ)或いはフィルムが剥がれた場合を×とする相対比較をした。
(8)作業性(表面保護フィルムの破れ、透明樹脂シート表面のキズ発生の有無及びフィルムの剥離)
透明樹脂シートサイズ:板厚10mmの500×500mmの両面に表面保護フィルムを貼付けた試料を2枚準備後、積層させシートとシートの間にシートの切粉(切削屑)を約10個敷き、左右前後にシートをずらし、表面保護フィルムの破れ及び透明樹脂シート表面へのキズ発生有無を調べた。
問題が無い場合を○、表面保護フィルムの破れが一部に認められ場合を△とし、破れ及び透明樹脂シート表面にキズ発生等がある場合に×とした。
上記試料を使用しコーナー部の一部を捲り、手で表面保護フィルムの剥離作業を実施した。
何ら問題無くスムーズに剥離が可能な場合を○とし、粘着が強く剥離作業が困難な場合は、△、表面保護フィルム剥離の途中にフィルムが破れたもの或いは剥離が困難な場合を×とした。
【0028】
(9)釘打ち後(白化発生の有無、クラック発生の有無)
透明樹脂シートサイズ50×150mmを準備し、ストレートシャンクドリルφ1.73mmを使用しボール盤で貫通させた穴を10箇所以上あけ、真鍮製釘φ1.83mm全長33.3mm、頭部分引いた長さ31.2mm、テーパー部分3mm、φ1.83mmの真鍮製パチンコ釘(捻子無し)を穴の中央に釘をセット後、インストロンジャパン社製型式5582(床置きモデル)の試験機を用い、毎分50mmの速度で釘を打ち、シート厚みに対し釘の平行部分を貫通後(透明樹脂シート厚み10mmの場合は13mm)、釘周辺の白化発生の有無及びクラック発生の有無を評価した。ベニア合板については合板の板厚19mmを使用し表面に直接、全長16.5mmの真鍮釘を釘打ちした。
次に、アクリル系ゴム粒子の製造例1〜2を示すと共に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。
【0029】
〈製造例1〉
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水6860ml、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム13.7gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。
MMA907g、BA33g、HMBT0.28g及びALMA0.93gからなる混合物(I−1)のうち222gを一括添し、5分後に過硫酸アンモニウム0.22gを添加した。その40分後から(I−1)の残りの719gを20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに60分間保持した。次に、過硫酸アンモニウム1.01gを添加した後BA1067g、St219g、HMBT0.39g、ALMA27.3gからなる混合物(I−2)を140分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに180分間保持した。
【0030】
次に、過硫酸アンモニウム0.30gを添加した後MMA730g、BA26.5g、HMBT0.22g、n−OM0.76gからなる混合物(I−3)を40分間かけて連続的に添加し、添加終了後95℃に昇温し30分間保持した。
得られたラテックスを3重量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩拆・凝固させ、次いで、脱水・洗浄を繰り返したのち乾燥し、多層構造アクリル系重合体(I)を得た。
尚、上記略号は以下の化合物を示す。
MMA;メチルメタクリレート、BA;n−ブチルアクリレート、St;スチレン、MA;メチルアクリレート、ALMA;アリルメタクリレート、PEGDA;ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量200又は600)、n−OM;n−オクチルメルカプタン、HMBT;2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
【0031】
〈製造例2〉
かきまぜ機、コンデンサーを備えた10Lビーカーに蒸留水5.7L、乳化剤としてジオクチルスルホコハク酸ソーダ20g、還元剤としてロンガリットl.2gを加え均一に溶解する。第一層としてメチルメタクリレート(以下MMAと略す)220g、n−ブチルアクリレート(以下BAと略す)30g、アリルメタクリレート(以下ALMAと略す)0.8g、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド(以下PBPと略す)0.2gの均一溶液を加え80℃で重合した。約15分で反応は完了した。
得られた重合体はTgは108℃であった。次いで第二層としてBA1270g、スチレン(以下stと略す)320g、ジエチレングリコールジアクリレート(以下DEGA
と略す)20g、ALMA13.0g、PBP1.6gの均一温度を1時間にわたって滴下した。滴下終了後40分で反応は完了した。このものを単独で重合して得られた重合体のTgは−38℃であった。
【0032】
次に、第三層1段としてMMA340gへ、BA2.0g、PBP0.3g、n−オクチルメルカプタン(以下OMと略す)0.1gの均一溶液を加えた、このものを単独で重合させて得た重合体の分子量は、1,220,000、Tgは109℃であった。この段階の反応は約15分で完了した。
次に、第三層2段としてOMの量を1.0gにした他は第三層1段と同じ組成の溶液を加えた。このものを単独で重合させて得た重合体の分子量は、117,000、Tgは108℃であった。この段階は約15分で反応が完了した。次いで温度を95℃に上げ、1時間保持した。得られたラテックスを0.5%塩化アルミニウム水溶液中に投入して重合体を凝集させ、温水で5回洗浄後、乾燥して白色フロック状の成形材料を得た。
【0033】
[
参考実施例1]
メタクリル樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製 商品名「デルパウダ:70Hビーズ」)80重量%と上記製造例1のアクリル系ゴム粒子20重量%になるように重量調整を行いホッパー投入後、均一分散になるように混合した。
次に、この樹脂混合物を150φ、L/D=34の押出機に供給し、厚み10mm、幅1000mmのシートに押出した。
押出機の温度は約280℃、ダイの温度は約260℃、ポリッシングロール温度は約80℃であった。得られた押出シートに大王加工紙工業株式会社製 表面保護フィルム「FM−840(実測値:110μm)、基材:ポリエチレン、粘着剤:アクリル酸エステル共重合体」をインライン工程内にて両面に貼り付け(貼付時の圧力:2kg/cm
2 テンション:約6kg)後、工程内にてシートを一定寸法に切断した。
表面保護フィルム貼付け後のシートを丸鋸にて上記特性試験項目用サンプルを切り出し、各評価項目に従って測定した。
【0034】
[実施例2]
メタクリル樹脂70重量%に対しアクリル系ゴム粒子30重量%を配合した以外は、
参考実施例1と同一方法にて評価用サンプルを得、各評価項目に従って測定した。
[
参考実施例3]
メタクリル樹脂50重量%に対しアクリル系ゴム粒子50重量%を配合した以外は、
参考実施例1と同一方法にて評価用サンプルを得、各評価項目に従って測定した。
[実施例4]
上記製造例2のアクリル系ゴム粒子を用いた以外は、実施例2と同一方法にて評価用サンプルを得、各評価項目に従って測定した。
【0035】
[実施例5]
アクリル系ゴム粒子として、三菱レイヨン株式会社製 製品名(商品名)IR441(フレーク状アクリルゴムの多層構造粒子)を用いる以外は、実施例2と同一方法にて評価用サンプルを得、各評価項目に従って測定した。
[実施例6]
表面保護フィルムとして、大王加工紙工業株式会社製 表面保護フィルム「FM−830(実測値:105μm)、基材:ポリエチレン、粘着剤:アクリル酸エステル共重合体」を使用した以外は、実施例2と同一方法にて評価用サンプルを得、各評価項目に従って測定した。
【0036】
[実施例7]
表面保護フィルムとして、大王加工紙工業株式会社製 表面保護フィルム「FM−83
5(実測値:104μm)、基材:ポリエチレン、粘着剤:アクリル酸エステル共重合体」を使用した以外は、実施例2と同一方法にて評価用サンプルを得、各評価項目に従って測定した。
[実施例8]
表面保護フィルムとして、株式会社サンエー化研 表面保護フィルム「サニテクト Y06F(実測値:62μm)、基材:ポリエチレン、粘着剤:アクリル酸エステル共重合体」を使用した以外は、実施例2と同一方法にて評価用サンプルを得、各評価項目に従って測定した。
【0037】
[
参考実施例9]
表面保護フィルムとして、株式会社スミロン製「EC−6220(実測値:89μm)、基材:ポリエチレン、粘着剤:アクリル酸エステル共重合体」をインライン工程内にてシートの両面に貼り付けた以外は、実施例2と同一方法にて評価用サンプルを得、各評価項目に従って測定した。
[比較例1]
アクリル系ゴム粒子を配合しない以外は、
参考実施例1と同一方法にて評価用サンプルを得、各評価項目に従って測定した。
【0038】
[比較例2]
表面保護フィルムとして、大王加工紙工業株式会社製 表面保護フィルム「自己粘着タイプ FM−4090S(実測値:89μm)、基材層:高密度ポリエチレン、粘着層:EVA系(エチレン−酢酸ビニルコポリマー共重合体)」をインライン工程内にてシートの両面に貼り付けた以外は、実施例2と同一方法にて評価用サンプルを得、各評価項目に従って測定した。
[比較例3]
表面保護フィルムとして、エンシュー化成工業製 表面保護フィルム「自己粘着タイプ
PEマスキングフィルム(実測値:62μm)、基材層:低密度ポリエチレンベースの混合物、粘着層:EVA系(エチレン−酢酸ビニルコポリマー共重合体)」を貼り付けた以外は、実施例2と同一方法にて評価用サンプルを得、各評価項目に従って測定した。
【0039】
[比較例4]
メタクリル樹脂シートに代えて、市販品の透明ポリカーボネート樹脂シート(旭ガラス株式会社製 商品名:レキサン、板厚10mm)を入手し、透明ポリカーボネート樹脂シートに貼り付けていたフィルムを剥がし、
参考実施例1で使用した大王加工紙工業株式会社製
表面保護フィルム「FM−840(実測値:110μm)、基材:ポリエチレン、粘着剤:アクリル酸エステル共重合体」を使用し、大成ラミネーター株式会社製のラミネーター機にて幅500mm、長さ1000mmの寸法にカットした原板に貼付け評価用サンプルを得、各評価項目に従って測定した。
[比較例5]
現行使用の板厚19mmベニア合板(ラワン)のみを用いて各評価項目に従って測定した。但し、ベニア合板の場合は、ボール盤で穴あけ加工せず合板表面に直接、16.5mmを釘打ちした。
次に、実施例
2、4、5、6、7、8、参考実施例1、3、9及び比較例1〜5の結果を表1に示す。
【0040】
【表1】