(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術において、以下の課題が残されている。
すなわち、従来のローラ式ピッチングマシンでは、ローラに挟まれたボールがローラに押し出されて射出されるために、コントロール性が低く、特に無回転のボールが発生して不安定な変化球となってしまうという問題があった。このため、不安定なコントロールや予測不能な変化によってデッドボールとなる恐れも高くなり、安全性を考慮して投球速度を遅くするなどの対応が必要になってしまう。したがって、高速球の練習等が困難であった。また、回転する複数のローラにボールを挟ませるために、高い応力がボールに加わることで、ボールが変形したり糸が切れたりする等、ボールに対する負荷も高くなるという不都合があった。このため、ピッチングマシン専用のボールを使用することが多くなり、試合に用いるボールとの違いとして、打感や目の感覚に狂いが生じやすいデメリットがあった。
一方、アーム式ピッチングマシンでは、ボールをリリースする制御を行わない場合、各種の変化球を再現する実戦的練習には不十分であった。また、ボールをリリースする制御を行うボール把持機構を設けた場合、装置が複雑になると共に非常に高価になり、量産化が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、ボールに応力が加わらず、安定したコントロール性が得られると共に、比較的簡易な構成で変化球投球も可能な投球装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る投球装置は、ボールを内部に投入可能な投入口と内部の前記ボールを外部に放出する放出口とを周面に有した外筒部材と、前記外筒部材の内部に同軸に回転可能に取り付けられ前記外筒部材との間に少なくとも前記ボールの直径と同じ隙間を設けた内筒部材と、前記内筒部材を回転駆動する回転機構と、前記内筒部材の外周面に互いに平行に前記内筒部材の軸方向に沿って延在していると共にそれぞれ回転可能に支持され、前記投入口から投入された前記ボールを前記内筒部材の回転方向前後で支持する一対のローラとを備え、前記外筒部材の内周面に、前記投入口から投入され前記一対のローラの間に支持された前記ボールを、前記内筒部材の回転時に前記外筒部材の内周面に沿って回転させながら前記投入口から前記放出口へ導く螺旋ガイド溝が形成されていることを特徴とする。
【0008】
この投球装置では、外筒部材の内周面に、投入口から投入され一対のローラの間に支持されたボールを、内筒部材の回転時に外筒部材の内周面に沿って回転させながら投入口から放出口へ導く螺旋ガイド溝が形成されているので、内筒部材の遠心力によってボールが外筒部材の内周面を螺旋ガイド溝に沿って回転し、放出口から射出される。すなわち、内筒部材の遠心力でボールに回転と速度とが与えられるため、ボールに応力が加わらず、安定したコントロール性が得られる。また、外筒部材の内周面を螺旋ガイド溝に沿って回転移動するボールは回転状態で放出口から高速発射されるため、投球方向(放出方向)と回転方向とを設定することで、各種の変化球を設定することも可能である。なお、複雑なボール把持機構等のリリース機構が不要であるため、安価に作製することが可能である。
【0009】
第2の発明に係る投球装置は、第1の発明において、前記外筒部材を支持する部材支持部を備え、前記部材支持部が、前記外筒部材の中心軸に対して直交すると共に前記ボールの放出方向に平行な軸線を中心に前記外筒部材を回動可能に支持していることを特徴とする。
すなわち、この投球装置では、部材支持部が、外筒部材の中心軸に対して直交すると共にボールの放出方向に水平な軸線を中心に外筒部材を回動可能に支持しているので、外筒部材を回動させて内筒部材の回転軸を横、縦等に変更可能であると共に放出口の位置を下側、上側、左側、右側等に切り換えることで、多様な球種に設定可能である。したがって、投球方向と回転方向とを別々に設定することが可能になるので、実際に人間のピッチャーが投げるボールに近い種々の変化球を投球することが可能になる。
【0010】
第3の発明に係る投球装置は、第1又は第2の発明において、前記投入口に設置され前記投入口を通過する前記ボールを感知する投入確認センサと、前記放出口に設置され前記放出口を通過する前記ボールを感知する放出確認センサとを備えていることを特徴とする。
この投球装置では、投入口に設置され投入口を通過するボールを感知する投入確認センサと、放出口に設置され放出口を通過するボールを感知する放出確認センサとを備えているので、投入口にボールを投入するだけで投球を迅速に自動で行うことが可能になる。すなわち、投入確認センサによってボールの投入を確認してから回転機構により内筒部材を回転させ、放出確認センサによってボールの射出を確認した後に回転機構により内筒部材の回転を停止すると共に、一対のローラを投入口に対応する位置に戻す制御が可能になる。したがって、投入口にボールを投入すると自動でボールの回転が始まり、ボールを射出すると再びボールを投入可能な状態に自動で準備可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明の投球装置によれば、外筒部材の内周面に、投入口から投入され一対のローラの間に支持されたボールを、内筒部材の回転時に外筒部材の内周面に沿って回転させながら投入口から放出口へ導く螺旋ガイド溝が形成されているので、ボールに応力が加わらず、安定したコントロール性が得られる。また、投球方向(放出方向)と回転方向とを設定することで、各種の変化球を設定することが可能であると共に、複雑なリリース機構が不要であり、安価に作製することが可能である。
したがって、本発明の投球装置では、デッドボールを減少させることできると共に、無回転又はボー球ではなく、人間が投げる実際の投球に近い回転を伴った生きたボールを投球できるため、より実戦に近い種々の球種による投球でのバッティング練習が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る投球装置の一実施形態において、装置本体を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態において、装置本体を示す分解斜視図である。
【
図3】本実施形態において、装置本体を示す正面図である。
【
図4】本実施形態において、装置本体を示す右側面図である。
【
図5】本実施形態において、投球装置を示す全体斜視図である。
【
図6】本実施形態において、投球装置を示す全体右側面図である。
【
図7】本実施形態において、投球装置を示す全体正面図である。
【
図8】本実施形態において、フォーク(a)の投球とストレート(b)の投球との場合の装置本体及び放出口の向きを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明における投球装置の一実施形態を、
図1から
図8に基づいて説明する。
【0014】
本実施形態における投球装置1は、
図1から
図4に示す装置本体2を備え、装置本体2は、ボールBを内部に投入可能な投入口3aと内部のボールBを外部に放出する放出口3bとを周面に有した外筒部材3と、外筒部材3の内部に同軸に回転可能に取り付けられ外筒部材3との間に少なくともボールBの直径と同じ隙間を設けた内筒部材4と、内筒部材4を回転駆動する回転機構5と、内筒部材4の外周面に互いに平行に内筒部材4の軸方向に沿って延在していると共にそれぞれ回転可能に支持され、投入口3aから投入されたボールBを内筒部材4の回転方向前後で支持する一対のローラ6とを備えている。
【0015】
上記外筒部材3は、外側筒部3dと、外側筒部3dの両端を塞いで固定された一対の側面板3cとを有している。
上記内筒部材4は、内側筒部4bと、内側筒部4bの両端に固定された一対の側面部材4aとを有している。
【0016】
また、外筒部材3の内周面には、投入口3aから投入され一対のローラ6の間に支持されたボールBを、内筒部材4の回転時に外筒部材3の内周面に沿って回転させながら投入口3aから放出口3bへ導く螺旋ガイド溝7が形成されている。
上記投入口3aは、外筒部材3の一方の端部近傍に設けられていると共に、放出口3bは、他方の端部近傍に設けられている。また、螺旋ガイド溝7は、外筒部材3と同軸であると共に、投入口3aの近傍から放出口3bの近傍まで形成されている。
【0017】
さらに、装置本体2は、投入口3aに設置され投入口3aを通過するボールBを感知する投入確認センサS1と、放出口3bに設置され放出口3bを通過するボールBを感知する放出確認センサS2とを備えている。なお、装置本体2は、投入前に一対のローラ6が投入口3aに対向した位置にあることを感知するローラ位置確認センサS3が外筒部材3の側面板3c内側に設置されている。
これらセンサは、いずれも回転機構5に電気的に接続されている。回転機構5は、これらセンサからの信号に基づいて、内筒部材4の回転及びローラ6の位置を制御する回路等の制御部(図示略)を有している。
【0018】
上記回転機構5は、外筒部材3の側面板3cに取付部材5aを介して取り付けられたDCモータMを備えている。DCモータMは、外筒部材3の両方の側面板3cに回転可能に軸支された内筒部材4の中心軸の一端(内筒部材5の側面部材4aの中心)に連結されている。なお、回転機構5のDCモータMは、ギヤやプーリーを介して内筒部材4の回転軸に接続しても構わない。
上記螺旋ガイド溝7は、断面山型のアルミニウム板を螺旋状に加工した溝部材7aを外筒部材3の内周面に外筒部材3の同軸でネジ止めすることで形成されている。この螺旋ガイド溝7の一端は、投入口3a近傍に設置され、他端は放出口3b近傍に設置されている。
【0019】
上記一対のローラ6は、両側の側面部材4aに固定されたローラ支持部材8によってそれぞれ軸線を中心に回転自在に軸支されている。これら一対のローラ6の間隔は、ボールBの直径よりも小さく設定されている。
上記放出口3bには、ボールBの放出方向に突出した放出筒部9が固定されており、この放出筒部9の内側に放出確認センサS2が取り付けられている。この放出筒部9の軸線方向がボールBの放出方向となる。
なお、上記外筒部材3及び内筒部材4は、アルミニウム等の軽量材料で形成されており、軽量化が図られている。
【0020】
本実施形態の投球装置1は、
図5から
図7に示すように、外筒部材3を支持する部材支持部10を備えている。
上記部材支持部10は、外筒部材3の中心軸に対して直交すると共にボールBの放出方向に平行な軸線を中心に外筒部材3を回動可能に支持している。すなわち、外筒部材3を囲んで配されていると共に両方の側面板3cに固定された枠状部材11と、枠状部材11を外筒部材3の中心軸に直交する方向に回動可能に支持する前側支持部材12及び後側支持部材13と、装置本体2を枠状部材11及び後側支持部材13と共に傾斜可能な傾斜機構14と、後側支持部材13を上部に固定した柱部材15と、柱部材15を軸線を中心に回動可能に設置した台車部16とを備えている。
【0021】
上記後側支持部材13は、枠状部材11の背面側中心をベアリング部13aを介して支持しており、枠状部材11と共に装置本体2が回動可能に支持している。
上記前側支持部材12は、枠状部材11の前面側中心を回動可能に支持している。すなわち、枠状部材11は、前側支持部材12及び後側支持部材13により前後で回動可能に支持されている。したがって、枠状部材11と共に装置本体2を回動させることで、内筒部材4の回転軸の傾き及び放出口3bの位置を変えることができる。
【0022】
上記傾斜機構14は、柱部材15の基端側に下端が水平軸に対して回動可能に支持されていると共に上端が後側支持部材13の下部に水平軸に対して回動可能に支持された伸縮可能なロッド部材14aを備えている。このロッド部材14aは、伸縮用ハンドル14bを回すことでロッド部材14aの先端側を伸縮可能であり、後側支持部材13、枠状部材11及び装置本体2を傾斜可能になっている。すなわち、装置本体2を傾斜させることで、放出口3bの水平面に対する角度を変えることができる。
【0023】
上記柱部材15は、下端部に歯車15aが設けられており、この歯車15aに螺合したギアに連結された回動用ハンドル17を回動させることで、回動可能になっている。すなわち、柱部材15を回動させることで、上部の装置本体2を回動させることができ、放出口3bの向きを変えることができる。
【0024】
上記台車部16は、下部のキャスター支持部18にキャスター18aが4つ設けられており、全体を容易に移動可能にしている。台車部16の上板部19には、柱部材15と前側支持部材12とが支持されている。なお、前側支持部材12は、傾斜時に追従できるように水平軸に対して下部が回動可能に設置されている。また、上板部19はキャスター支持部18上にリンク構造によって上下可能に設置されており、装置本体2の高さ位置を調整可能になっている。
【0025】
次に、本実施形態の投球装置1によるボールBの投球方法について説明する。
まず、ボールBの投球前に回転機構5のモータMにより内筒部材4を回動させ、一対のローラ6を投入口3aに対向する位置に予め配置する。このとき、ロール位置確認センサS3がローラ6を検出することで、ローラ6が所定の位置に達したことが判断され、回転機構5による回転が停止される。
【0026】
次に、ボールBを投入口3aから外筒部材3内に投入すると、投入確認センサS1がボールBの投入を検出し、回転機構5の制御部がモータMが内筒部材4を高速で回転させる。このとき、投入されたボールBは、一対のローラ6に回転方向前後を支持されるため、内筒部材4の回転に伴って外筒部材3の内周面に沿って回転を始める。さらに、螺旋ガイド溝7が外筒部材3の内周面に形成されているため、内周面に沿って回転しながら螺旋ガイド溝7に沿って内筒部材4の軸線方向にも移動する。
【0027】
内筒部材4の遠心力によって外筒部材3の内周面に沿って回転するボールBは、螺旋ガイド溝7によって放出口3bまで高速移動し、最終的に放出口3bから射出される。このとき、ボールBは、外筒部材3の内周面との間の摩擦によって自転しながら出射されるため、回転状態で投球される。
【0028】
このように本実施形態の投球装置1では、外筒部材3の内周面に、投入口3aから投入され一対のローラ6の間に支持されたボールBを、内筒部材4の回転時に外筒部材3の内周面に沿って回転させながら投入口3aから放出口3bへ導く螺旋ガイド溝7が形成されているので、内筒部材4の遠心力によってボールBが外筒部材3の内周面を螺旋ガイド溝7に沿って回転し、放出口3bから射出される。
【0029】
すなわち、内筒部材4の遠心力でボールBに回転と速度とが与えられるため、ボールBに応力が加わらず、安定したコントロール性が得られる。また、外筒部材3の内周面を螺旋ガイド溝7に沿って回転移動するボールBは回転状態で放出口3bから高速発射されるため、投球方向(放出方向)と回転方向とを設定することで、各種の変化球を設定することも可能である。なお、複雑なリリース機構が不要であるため、安価に作製することが可能である。
【0030】
また、部材支持部10が、外筒部材3の中心軸に対して直交すると共にボールBの放出方向に平行な軸線を中心に外筒部材3を回動可能に支持しているので、外筒部材3を回動させて内筒部材4の回転軸を横、縦等に変更可能であると共に放出口3bの位置を下側、上側、左側、右側等に切り換えることで、多様な球種に設定可能である。したがって、投球方向と回転方向とを別々に設定することが可能になるので、実際に人間のピッチャーが投げるボールに近い種々の変化球を投球することが可能になる。
【0031】
例えば、
図8の(a)に示すように、放出口3bを下部に配置すると、内筒部材4の回転によってボールBが、
図8における時計回りに外筒部材3の内周面に沿って高速で回ると共に、反時計回りに自転することで、放出口3bから出射された際に回転によって下向きに変化するフォークボールを投球することができる。
また、
図8の(b)に示すように、放出口3bを上部に配置すると、内筒部材4の回転によってボールBが、
図8における反時計回りに外筒部材3の内周面に沿って高速で回ると共に、時計回りに自転することで、放出口3bから出射された際に回転によって重力に抗する上向きの力が加わってストレートボールを投球することができる。
なお、内筒部材4の回転軸を垂直に設置して放出口3bを回転軸の左右のいずれかに設定することで、左右に変化するカーブやスライダーを投球することが可能である。
【0032】
さらに、投入口3aに設置され投入口3aを通過するボールBを感知する投入確認センサS1と、放出口3bに設置され放出口3bを通過するボールを感知する放出確認センサS2とを備えているので、投入口3aにボールBを投入するだけで投球を迅速に自動で行うことが可能になる。すなわち、投入確認センサS1によってボールBの投入を確認してから回転機構5により内筒部材4を回転させ、放出確認センサS2によってボールBの射出を確認した後に回転機構5により内筒部材4の回転を停止すると共に、一対のローラ6を投入口に対応する位置に戻す制御が可能になる。したがって、投入口3aにボールBを投入すると自動でボールBの回転が始まり、ボールBを射出すると再びボールBを投入可能な状態に自動で準備可能になる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態のように各センサを取り付けて制御することが好ましいが、センサを取り付けず手動で内筒部材の回転やローラの位置を制御しても構わない。
また、ボールの速度や方向などの設定を予めIC等の回路に記憶させておき、任意に選択可能にしても構わない。
また、種々の部材を軽量化のためにアルミニウム等の金属で形成しているが、十分な剛性が得られれば樹脂等で形成しても構わない。
また、投入口へのボールの投入は手動で行っているが、自動でボールを供給する機構を設けても構わない。
また、台車部のリンク機構(リフター)による上下動については、電動ネジを用いて自動で行うようにしても構わない。
また、螺旋ガイド溝を有する外筒部材の向き設定や回動についても、モータ等を用いて電動にて自動で行うようにしても構わない。