(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721798
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】水平偏波無指向性アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/00 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
H01Q7/00
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-199394(P2013-199394)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-65619(P2015-65619A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2013年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000217653
【氏名又は名称】電気興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】天川 英二
(72)【発明者】
【氏名】牧山 真之
【審査官】
富澤 哲生
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−010009(JP,A)
【文献】
特開2005−210448(JP,A)
【文献】
特許第3797267(JP,B2)
【文献】
特開2011−217109(JP,A)
【文献】
特開2012−253547(JP,A)
【文献】
特開2010−161495(JP,A)
【文献】
松野宏己 他,寄生素子付Haloアンテナ,電子情報通信学会論文誌 B,2009年 9月 1日,Vol.J92-B, No.9,pp.1431-1439
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/00
H01Q 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面を中心として対称に配置された第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子と、
前記第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子を接続する平行線路と、を備え、
前記第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子の一方もしくは双方における上ループ部と下ループ部間に無給電素子を配設し、
前記平行線路の中央部において給電するようにしたことを特徴とする水平偏波無指向性アンテナ。
【請求項2】
前記無給電素子の長さは、前記第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子の各ループ部のそれよりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の水平偏波無指向性アンテナ。
【請求項3】
水平面を中心として対称に配置された第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子と、
前記第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子を接続する平行線路と、を備え、
上段に位置する前記第1の2巻先端開放型ループアンテナ素子の上ループ部と下段に位置する前記第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子の下ループ部の一方もしくは双方を、水平面内で並行する2つのループ線路によって二重に形成し、
前記平行線路の中央部において給電するようにしたことを特徴とする水平偏波無指向性アンテナ。
【請求項4】
前記並行する2つのループ線路の内の外側に位置するループ線路の長さは、前記第1の2巻先端開放型ループアンテナ素子の下ループ部及び前記第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子の上ループ部のそれと等しくなるように設定されていることを特徴とする請求項3に記載の水平偏波無指向性アンテナ。
【請求項5】
前記第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子の一方もしくは双方における上ループ部と下ループ部間に無給電素子を配設したことを特徴とする請求項3に記載の水平偏波無指向性アンテナ。
【請求項6】
前記並行する2つのループ線路の内の外側に位置するループ線路の長さは、前記第1の2巻先端開放型ループアンテナ素子の下ループ部及び前記第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子の上ループ部のそれと等しくなるように設定され、
前記無給電素子の長さは、前記外側に位置するループ線路のそれよりも小さく設定されていることを特徴とする請求項5に記載の水平偏波無指向性アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムの基地局用アンテナとして好適に使用することができる水平偏波無指向性アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムでは、比較的加入者容量の少ない場所で使用する基地局用アンテナとして、あるいは、セル半径が非常に小さいときに使用する基地局用アンテナとして、水平面内無指向性アンテナが適用される。
この水平面内無指向性アンテナは、基地局設置コストの低減や、受風荷重軽減のために可能な限り細径化することが望ましい。そこで、このような要望を満たすための水平偏波無指向性アンテナが特許文献1によって提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−49864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動通信システムの基地局用アンテナでは、設置場所の制限等の理由により、複数の周波数を共用する機能を要求されることが多い。そして、この周波数を共用する基地局アンテナにおいては、それに見合う比帯域を必要とする。
しかし、特許文献1に記載の水平偏波無指向性アンテナは、細径化は可能であるものの、周波数を共用する場合に必要とする広い比帯域を実現することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、細径な構成と広帯域特性の双方を実現することができる水平偏波無指向性アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る水平偏波無指向性アンテナは、上記目的を達成するため、水平面を中心として対称に配置された第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子と、前記第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子を接続する平行線路と、を備え、
前記第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子の一方もしくは双方における上ループ部と下ループ部間に無給電素子を配設し、前記平行線路の中央部において給電するように構成されている。
【0007】
この第1の発明
において、前記無給電素子の長さは、前記第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子の各ループ部のそれよりも小さく設定することが望ましい。
【0008】
第2の発明に係る水平偏波無指向性アンテナは、水平面を中心として対称に配置された第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子と、前記第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子を接続する平行線路と、を備え、上段に位置する前記第1の2巻先端開放型ループアンテナ素子の上ループ部と下段に位置する前記第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子の下ループ部の一方もしくは双方を、水平面内で並行する2つのループ線路によって二重に形成し、前記平行線路の中央部において給電するように構成されている。
【0009】
この第2の発明の一態様では、前記並行する2つのループ線路の内の外側に位置するループ線路の長さが、前記第1の2巻先端開放型ループアンテナ素子の下ループ部及び前記第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子の上ループ部のそれと等しくなるように設定され。
また、この第2の発明の別の態様では、前記第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子の一方もしくは双方における上ループ部と下ループ部間に無給電素子が配設される。
前記のように、並行する2つのループ線路の内の外側に位置するループ線路の長さが、前記第1の2巻先端開放型ループアンテナ素子の下ループ部及び前記第2の2巻先端開放型ループアンテナ素子の上ループ部のそれと等しくなるように設定される場合、前記無給電素子の長さは、前記外側に位置するループ線路のそれよりも小さく設定することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナが水平面を中心として対称に配置されるので、細径に構成することができる。また、第1、第2の2巻先端開放型ループアンテナが平行線路を介して合成されるので、インピーダンス整合の自由度が向上され、その結果、使用周波数帯域の中心周波数の波長に比して非常に小さい径寸法を持つように構成する場合においても、容易にインピーダンス整合をとることができる。そして、この整合性の向上は、広帯域化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る水平偏波無指向性アンテナの第1の実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る水平偏波無指向性アンテナの第2の実施形態を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る水平偏波無指向性アンテナの第3の実施形態を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る水平偏波無指向性アンテナの第4の実施形態を示す斜視図である。
【
図5】実施例に係る水平偏波無指向性アンテナのVSWR特性を示すグラフである。
【
図6】実施例に係る水平偏波無指向性アンテナの周波数718MHzについての水平面内指向性を示すグラフである。
【
図7】実施例に係る水平偏波無指向性アンテナの周波数890MHzについての水平面内指向性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係る水平偏波無指向性アンテナの第1の実施形態を示す斜視図である。このアンテナは、垂直方向に所定の間隔をおいて配置された2つの2巻先端開放型ループアンテナ素子1,2と、これらの2巻先端開放型ループアンテナ素子1,2を接続する平行線路3とを備えている。
【0013】
2巻先端開放型ループアンテナ素子1,2は、水平面を中心として対称に配置されている。従って、上段の2巻先端開放型ループアンテナ素子1の上ループ部4及び下ループ部5は、それぞれ下段の2巻先端開放型ループアンテナ素子3の下ループ部7及び上ループ部6に対応している。
平行線路3は、2巻先端開放型ループアンテナ素子1,2の給電部間に介在されるように垂直に設けられている。そして、本実施形態の水平偏波無指向性アンテナは、この平行線路3の中央部において給電される。
【0014】
水平に配置された上記各ループ部4〜7の長さは、それぞれ使用周波数帯域の中心周波数の波長の約1/2に設定されている。従って、本実施形態に係るアンテナは、使用周波数帯域の水平偏波を送受信する無指向性アンテナとしての機能を有する。
また、本実施形態に係るアンテナは、2巻先端開放型ループアンテナ素子1,2を垂直方向に同軸配置した構成を有するので、細径に構成することができる。更に、2巻先端開放型ループアンテナ素子1,2が平行線路3を介して合成されることから、インピーダンス整合の自由度が向上され、その結果、使用周波数帯域の中心周波数の波長に比して非常に小さい径寸法を持つように構成する場合においても、容易にインピーダンス整合をとることができる。そして、この整合性の向上は、広帯域化に寄与する。
【0015】
図2に本発明に係る水平偏波無指向性アンテナの第2の実施形態を示す。本実施形態のアンテナは、2巻先端開放型ループアンテナ素子1,2のそれぞれに無給電素子8,9を配置した点において
図1に示すアンテナと相違する。無給電素子8は、上段の2巻先端開放型ループアンテナ素子1の各ループ部4,5の中間に水平配置され、同様に、無給電素子9は、下段の2巻先端開放型ループアンテナ素子2の各ループ部6,7の中間に水平配置されている。無給電素子8,9は、ループ部4〜7と相似な形状を有している。
本実施形態に係るアンテナによれば、無給電素子8,9がその長さに応じた周波数で共振することになるので、その長さを適宜設定することにより、
図1のアンテナよりも広帯域な特性を得ることができる。なお、本実施形態では、無給電素子8,9の長さをループ部4〜7の長さよりも短く設定している。
【0016】
図3に本発明に係る水平偏波無指向性アンテナの第3の実施形態を示す。本実施形態に係るアンテナは、
図1のアンテナの2巻先端開放型ループアンテナ素子1、2及び平行線路3に対応する2巻先端開放型ループアンテナ素子10、20及び平行線路30をそれぞれ備えている。
上段の2巻先端開放型ループアンテナ素子10の上ループ部40は、水平面内で並行する2つのループ線路40a,40bによって二重に形成され、同様に、下段の2巻先端開放型ループアンテナ素子20の下ループ部70も、水平面内で並行する2つのループ線路70a,70bによって二重に形成されている。
【0017】
上記ループ線路40a,70aは、ループ部50,60と同じ長さを有している。そして、ループ線路40a,70aの内側に位置したループ線路40b,70bは、ループ線路40a,70aよりも長さが短い。このことは、ループ線路40b,70bがループ線路40a,70aの共振周波数よりも高い周波数に対して共振することを意味している。この結果、本実施形態のアンテナによれば、
図1のアンテナよりも広帯域な特性を得ることができる。
【0018】
図4に本発明に係る水平偏波無指向性アンテナの第4の実施形態を示す。本実施形態に係るアンテナは、
図3の2巻先端開放型ループアンテナ素子10,20に無給電素子80,90をそれぞれ付加した点においてこの
図3に示すアンテナと構成が相違する。
無給電素子80,90は、
図2に示す無給電素子8,9に対応するものであるから、その形状及び配置形態等についての説明を省略する。
本実施形態に係る水平偏波アンテナも、無給電素子80,90がその長さに応じた周波数で共振することになるので、この無給電素子80,90の長さを適宜設定することにより、
図3のアンテナよりも広帯域な特性を得ることができる。
なお、本実施形態では、無給電素子80の長さがループ線路40a、40bの各長さの間の長さ、あるいは、ループ線路40bの長さよりも短い長さに設定されている。無給電素子90も上記に準じた長さに設定されている。
【0019】
次に、
図4に係るアンテナの具体的な実施例を以下に示す。
[実施例]
ループ線路40a,70a、ループ部50,60の各長さを700MHz帯の中心周波数の波長の約1/2に設定する。
ループ線路40b,70bの各長さを800MHz帯の中心周波数の波長の約1/2に設定する。
無給電素子80,90の長さを800MHz帯の中心周波数よりも高い周波数(例えば、875MHz近辺)の波長の約1/2に設定する。
【0020】
本実施例に係るアンテナによれば、
図5に示すVSWR(定在波比)特性から明らかように、700MHz帯と800MHz帯を共用する周波数帯において必要とする広い帯域特性(比帯域21%:VSWR<2)を得ることができる。また、本実施例に係るアンテナによれば、
図6、
図7に718MHz,890MHzについての水平面内指向性をそれぞれ示すように、良好な水平面内無指向性を得ることができる。
更に、本実施例に係るアンテナによれば、
図5に示す周波数範囲718MHz〜890MHzの中心周波数804MHzの波長が373.13mmであることから、0.15×373.13≒55mmの内径を有する円筒レドーム内に収納することが可能となる。
【0021】
本発明は上記実施形態の構成に限定されず、以下に例示するような変形態様をも含み得るものである。
(a)
図2に示す実施形態では、2巻先端開放型ループアンテナ素子1,2のそれぞれに無給電素子8,9を配置しているが、該2巻先端開放型ループアンテナ素子1,2の内のいずれか一方のみに無給電素子を配置するようにしてもよい。
図4に示す実施形態においても同様である。
(b)
図2に示す無給電素子8,9の長さは、ループ部4〜7のそれよりも大きく設定してもよいが、アンテナ径を抑制するという観点からすると、ループ部4〜7の長さよりも小さく設定することが望ましい。
図4に示す無給電素子80,90も同様である。
(c)
図3、
図4に示す各実施形態では、上段の2巻先端開放型ループアンテナ素子10の上ループ部40と下段の2巻先端開放型ループアンテナ素子20の下ループ部70をそれぞれ二重構造となるように形成しているが、上記上ループ部40,70の内のいずれか一方のみを二重構造に形成してもよい。
(d)
図3、
図4に示すループ線路40b、70bの長さは、ループ線路40a、70aのそれよりも大きく設定してもよいが、アンテナ径を抑制するという観点からすると、ループ線路40a、70aの長さよりも小さく設定することが望ましい。
【符号の説明】
【0022】
1,2 2巻先端開放型ループアンテナ素子
3 平行線路
4,6 上ループ部
5,7 下ループ部
8,9 無給電素子
10,20 2巻先端開放型ループアンテナ素子
30 平行線路
40,60 上ループ部
40a,40b ループ線路
50,70 下ループ部
70a,70b ループ線路
80,90 無給電素子