(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721827
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】真空コーティング装置および真空コーティング方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
C23C14/24 J
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-521007(P2013-521007)
(86)(22)【出願日】2011年7月22日
(65)【公表番号】特表2013-535576(P2013-535576A)
(43)【公表日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】EP2011003679
(87)【国際公開番号】WO2012010318
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2013年7月11日
(31)【優先権主張番号】102010032591.0
(32)【優先日】2010年7月28日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010032152.4
(32)【優先日】2010年7月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502239900
【氏名又は名称】ライボルト オプティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leybold Optics GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トアステン シュマウダー
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ケアン
【審査官】
浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−140967(JP,U)
【文献】
特開平01−263266(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/084408(WO,A1)
【文献】
特開2004−156139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00〜14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びる長手方向軸線(40)に沿って配置された複数の蒸発器エレメント(10a,210a)を有する長く延びる蒸発器ベンチ(10,110,110a)と、
該蒸発器ベンチ(10,110,110a)に対応配置された第1の基板支持装置(21,121,221)と
を備える、基板を真空チャンバ(175)内で真空コーティングする装置であって、
前記第1の基板支持装置(21,121,221)は、基板用の保持手段を有する、第1の回転軸線(41,241)を中心として回転可能な第1の円柱状のフレーム構造体を備え、
長手方向軸線(40)と、第1の回転軸線(41,241)との間に、10°よりも小さな角度のずれがある、基板を真空チャンバ(175)内で真空コーティングする装置において、
前記蒸発器ベンチ(10,110,110a)に対応配置された少なくとも1つの第2の基板支持装置(22,122,222)が設けられており、該第2の基板支持装置(22,122,222)は、基板用の保持手段を有する、第2の回転軸線(42,242)を中心として回転可能な第2の円柱状のフレーム構造体を備え、
前記第1および第2の円柱状のフレーム構造体の軸線が、前記蒸発器ベンチ(10,110,110a)の前記長手方向軸線(40)に対して相対的に固定的に形成されており、
前記蒸発器ベンチ(10,110,110a)は、該蒸発器ベンチ(10,110,110a)の長手方向軸線を中心とした回転をせず、かつ基板支持装置(21,121,221,22,122,222)は、前記蒸発器ベンチ(10,110,110a)を中心とした回転をせず、
長手方向軸線(40)と第2の回転軸線(42,242)との間に、10°よりも小さな角度のずれがある
ことを特徴とする、基板を真空チャンバ内で真空コーティングする装置。
【請求項2】
前記蒸発器ベンチ(10)は、少なくとも1つの蒸発器エレメント(10a,110,110a)を有しており、該蒸発器エレメント(10a,110,110a)は、水平方向の縦延長線(250)と、該縦延長線(250)および前記長手方向軸線(40)により展開された平面に対して鏡像対称的な放射特性とを有している、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記第1の基板支持装置(21,121,221)に、または場合によっては別の基板支持装置(22,122,222,223,224)に対応配置された少なくとも1つの処理源(31,32)が設けられている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記真空チャンバ(175)は、
該真空チャンバ(175)の壁部(185)の開口を備えた第1の部分チャンバ(175a)と、
前記開口を真空密に閉鎖可能な、前記第1の部分チャンバにドア状に対応配置された少なくとも1つの第2の部分チャンバ(180,180a)とを有し、
前記蒸発器ベンチ(110)と、第1の基板支持装置(121)および少なくとも第2の基板支持装置(122)と、前記1つまたは複数の処理源(31,32)とが、少なくとも第2の部分チャンバ内に収容可能であるか、または収容されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記第2の部分チャンバ(180)は、旋回装置によって、またはスライド装置によって、前記第1の部分チャンバ(175a)に対して相対的に位置決め可能である、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記真空チャンバ(175)は、第2の部分チャンバ(180)と同様に形成され、前記第1の部分チャンバにドア状に対応配置された別の部分チャンバ(180a)を有しており、該別の部分チャンバ(180a)により、前記第1の部分チャンバ(175a)の前記開口は真空密に閉鎖可能である、請求項4または5のいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
少なくとも1つの処理源(31,32)は、少なくとも1つの電極対(31a/b,32a/b,130/131,130/131a,130’/132,130’/132a)を備えたプラズマ源として、有利には少なくとも1つのプレート状の電極を含んで、形成されている、請求項4から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つの電極対の少なくとも1つの電極(130,130’)は、前記第1の部分チャンバ内に配置されていて、前記少なくとも1つの電極対の対応配置された少なくとも1つの対向電極(131,131a,132,132a)は、前記第2の部分チャンバ(180,180a)内に配置されていて、前記対向電極(131,131a,132,132a)は、前記第2の部分チャンバ(180,180a)と共に、第1の部分チャンバ(175a)に対して相対的に位置決め可能である、請求項7記載の装置。
【請求項9】
蒸発器ベンチ(10)ならびに場合によっては処理源(31,32)の寸法設計は、空間的な端部効果を補償するために、蒸発器ベンチ(10)ならびに場合によっては処理源(31,32)が、前記基板支持装置(21,22)の端部領域を超える突出部を有するようになっている、請求項3から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記蒸発器エレメント(10a)の互いに対する間隔は、蒸発器ベンチ(10,110,110a)または基板支持装置(21,22)の端部領域におけるコーティング速度の低下を補償するように、調節可能である、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
真空コーティングを、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置を用いて行うことを特徴とする、基板を真空コーティングする方法。
【請求項12】
前記蒸発器ベンチ(10,110,110a)を用いて、アルミニウム、銅、錫、クロム、チタン、タンタル、金、銀、ロジウム、パラジウムまたはニッケルから成る群より選択される少なくとも1種から成る金属製の材料の熱蒸発を行う、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の装置、すなわち、鉛直方向に延びる長手方向軸線に沿って配置された複数の蒸発器エレメントを有する長く延びる蒸発器ベンチと、該蒸発器ベンチに対応配置された第1の基板支持装置とを備える、基板を真空チャンバ内で真空コーティングする装置であって、前記第1の基板支持装置は、基板用の保持手段を有する、第1の回転軸線を中心として回転可能な第1のパイロンを備え、長手方向軸線と、第1の回転軸線との間に、10°よりも小さな角度のずれがある、基板を真空チャンバ内で真空コーティングする装置に関する。本発明はさらに、請求項11に記載の方法に関する。
【0002】
バッチ式運転で基板を真空コーティングするシステムが公知である。たとえば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3731688号明細書または欧州特許出願第1947211号明細書は、真空チャンバを備えた、基板をメタライゼーションする装置をそれぞれ記載している。真空チャンバ内には、少なくとも1つの蒸発器源と、上記両特許明細書においてそれぞれ異なって形成されている、プラズマ重合された保護膜を被着させる装置と、1つの中心軸線を中心として回転する複数の遊星型基板保持体とが配置されている。これら公知のシステムでは、上記基板保持体の高い空間需要に基づいて、10分よりも長い範囲にある比較的に長い装入(チャージ)時間しか達成することができない。
【0003】
本出願人のPylonMet型のスパッタリング装置において約4〜5分である装入時間のように、明らかに短い装入時間を有するバッチ式装置も公知である。この場合の欠点は、スパッタ源を装備するための極めて大きな技術的な手間である。
【0004】
本発明の課題は、小さな手間をかけるだけで、高い品質と、短い装入時間と、高い生産性とを以て、金属製の膜を基板上に被着させることができる装置および方法を提供することである。
【0005】
上記課題は、請求項1に記載の装置および請求項11に記載の方法により解決される。有利な態様は請求項2以下に記載されている。
【0006】
鉛直方向の長手方向軸線に沿って配置された多数の熱式蒸発器エレメントを備えた長く延びる蒸発器ベンチと、該蒸発器ベンチに対応配置された第1の基板支持装置とを備えた真空チャンバ内において基板を真空コーティングする装置であって、第1の基板支持装置は、基板用の保持手段を有する、第1の軸線を中心として回転可能な第1のパイロンを備え、長手方向軸線と、第1の回転軸線との間に10°よりも小さな角度のずれがある、真空チャンバ内において基板を真空コーティングする本発明に係る装置は、前記蒸発器ベンチに対応配置された少なくとも1つの第2の基板支持装置が設けられており、第2の基板支持装置は、基板用の保持手段を有する、第2の回転軸線を中心として回転可能な第2のパイロンを備え、パイロンの中心軸線は、蒸発器ベンチの長手方向軸線に対して相対的に固定されており、蒸発器ベンチならびに第1の基板支持装置および少なくとも第2の基板支持装置の幾何学的な配置構成は、蒸発器ベンチを用いて行われる、第1の基板支持装置および少なくとも第2の基板支持装置の複数の基板のコーティングが、同一の品質で行われ得るように、設けられていることにより傑出している。用語「鉛直方向」は、基準システムとしての真空チャンバに関する。用語「品質」は、コーティングの特性のパラメータ、特に膜厚、反射率および/または色印象に関する。パイロンの回転軸線に対して相対的な、蒸発器エレメントの空間的な配向は、固定されている。蒸発器ベンチは、当該蒸発器ベンチの長手方向軸線を中心として回転しない。同様に、基板支持装置も、蒸発器ベンチを中心として回転しない。蒸発器ベンチの長手方向軸線と、回転軸線との間で、その都度10°よりも小さな角度のずれがある場合、簡単な形式で装置の同一の幾何学的な配置構成を達成することができるので、蒸発器ベンチを用いて行われる複数の基板のコーティングは、同一の、または少なくとも近似した品質で行われる。このためには、第1の基板支持装置および少なくとも第2の基板支持装置は、個別の蒸発器エレメントならびに蒸発器ベンチの空間的な放射特性を考慮して、全体として、蒸発器ベンチに対して相対的に幾何学的に対等な位置に配置されている。「蒸発器エレメントの放射特性」とは、本明細書では、蒸発器ベンチに組み込まれた1つの蒸発器の蒸発させられた材料の流れ密度であると理解される。
【0007】
基板を真空コーティングする本発明による装置は、装置の特にコンパクトな形成と、蒸発器ベンチを用いて発生させられたコーティング蒸気の完全な利用とを可能にする。なぜならば、少なくとも2つの基板支持装置が、定置の軸線を備えたパイロンを有しているからである。本発明は、2つよりも多いパイロンが設けられる場合を含む。蒸発器ベンチの長手方向軸線と、回転軸線との間に、それぞれ10°よりも小さな角度のずれが存在する場合、簡単な方法で、装置の同一の幾何学的な配置構成を達成することができるので、蒸発器ベンチを用いて行われる複数の基板のコーティングが、同一の、または少なくとも近似した品質で行われる。特に、真空チャンバ、蒸発器ベンチおよび対応配置された基板支持装置は、4分〜8分の範囲である短い装入時間が達成されるように設計されている。特に基板は、たとえば自動車分野、コンピュータ、通信または消費電子機器における使用のために、特にプラスチック材料、または金属材料またはガラスから成る三次元の基板であり、これらの基板は、部分的に比較的に小さなチャージで注文され得る。
【0008】
本発明によれば、比較的に小さなチャージ、つまり同時にコーティングされるべきワークの数が少ないにも拘わらず、コーティングプロセスの高い生産性が達成される。
【0009】
本発明の別の態様は、蒸発器ベンチが、少なくとも1つの蒸発器エレメントを有している。この蒸発器エレメントは、水平方向に延びる縦延長線と、当該縦延長線と長手方向軸線とにより展開された平面に対して鏡像対称的な放射特性とを有している。この場合、用語「水平方向」は、基準システムとしての真空チャンバに関連する。最も簡単な場合、蒸発器エレメントは、蒸発器保持体同士の間に張られた蒸発器エレメント、たとえば金属製フィラメントまたは金属製コイルにより形成することができる。第1の蒸発器保持体は、蒸発器エレメントを一方の端部側の領域で保持し、第2の蒸発器保持体は、蒸発器エレメントを第2の端部側の領域で保持する。第1の保持体もしくは第2の保持体における第1の端部側および第2の端部側の取付けは、幾何学的に同様であるので、放射特性は、蒸発器エレメントの縦延長線を通って延びる1つの軸線に対して対称的である。
【0010】
通常、複数の蒸発器エレメントが、上述の鏡像対称的な放射特性を有していることは自明である。第1の基板支持装置および第2の基板支持装置が設けられている場合、蒸発器エレメントが、互いに向かい合って位置する基板支持装置の間に配置されていると有利である。4つの基板支持装置が設けられている場合、蒸発器エレメントは、正方形の形態で配置されていると有利である。
【0011】
本発明の別の態様は、第1の基板支持装置に、または場合によっては別の基板支持装置に対応配置された少なくとも1つの処理源が設けられていることにより傑出している。処理源が、蒸発器ベンチを含んでいる場合、装置の生産性は、熱蒸発を用いた真空コーティングに関して増大される。処理源が、蒸発器ベンチとは異なる源である場合、簡単な形式で基板のハイブリッド式の真空コーティングが行われ得る。
【0012】
特に、蒸発器エレメントは、鉛直方向に延びる長手方向軸線に沿って配置されていて、第1の基板支持装置に対応配置されたプラズマ源が設けられている。このプラズマ源は、プラズマ処理が第1の基板支持装置に向けられているように、配置されている。さらに、蒸発器ベンチの、第1の基板支持装置とは反対の側には、第2の基板支持装置と、第2の基板支持装置に対応配置された第2のプラズマ源とが設けられていることが規定され得る。第2の基板支持装置は、基板用の保持手段を備えた、第2の軸線を中心として回動可能な第2のパイロンを有しており、第2のプラズマ源は、第1の基板支持装置が第1のプラズマ源により処理されるのと同等に、第2の基板支持装置が第2のプラズマ源によって処理されるように、配置されている。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、真空チャンバが、当該真空チャンバの壁部の開口を有する第1の部分チャンバと、該第1の部分チャンバにドア状に対応配置された第2の部分チャンバとを有していて、第2の部分チャンバにより、開口は真空密に閉鎖可能であり、蒸発器ベンチ、第1の基板支持装置および少なくとも第2の基板支持装置、ならびに場合によっては1つまたは複数の処理源の有利には少なくとも複数の構成部分が、第2の部分チャンバ内に収容可能であるか、または収容されていることにより傑出している。第2の部分チャンバは、第1の部分チャンバに対して相対的に位置決め可能であるので、蒸発器ベンチと、第1の基板支持装置および少なくとも第2の基板支持装置とには容易にアクセス可能であり、したがって、取り扱い、特に蒸発器エレメントへの蒸発材料の装着および基板支持装置への基板の装着が容易にされている。有利には、第2の部分チャンバは、旋回装置によって、第1の部分チャンバに対して相対的に位置決め可能であるか、または第2の部分チャンバが、スライド装置により、第1の部分チャンバに対して相対的に位置決め可能である。これにより、真空コーティングのための本発明による装置の設置の空間的な条件への適合が可能である。
【0014】
本発明の別の態様は、真空チャンバが、別の部分チャンバを有していて、該別の部分チャンバは、第2の部分チャンバと同様に形成され、第1の部分チャンバにドア状に対応配置されていて、この別の部分チャンバにより、第1の部分チャンバの開口は真空密に閉鎖可能であり、これにより、第2の部分チャンバおよび別の部分チャンバを有する装置の択一的な運転が可能であることにより傑出している。この択一的な運転では、部分チャンバのうちその都度一方の部分チャンバが、開口を真空密に閉じているように位置決めされているのに対して、その都度他方の部分チャンバは、該他方の部分チャンバ内に収容された蒸発器ベンチおよび基板支持装置にアクセス可能であるように位置決めされている。第1の部分チャンバの開口を真空密に閉じる部分チャンバによって、真空チャンバ内で基板の真空コーティングが行われ得るのに対して、別の部分チャンバは開放されて位置決めされており、たとえば蒸発器ベンチまたは基板支持装置の取扱いのために自由に使用することができる。
【0015】
基板を真空コーティングする本発明による方法は、真空コーティングを本発明による装置を用いて行うことにより傑出している。
【0016】
本発明による方法の1態様は、蒸発器ベンチを用いて、金属製の材料、特にアルミニウム、銅、錫、亜鉛、クロム、チタン、タンタル、銀、金、ロジウム、パラジウムまたはニッケルから成る群より選択される少なくとも一種から成る材料の熱蒸発を行い、これにより、特に三次元の基板の廉価なメタライジング(金属被覆)が実施され得ることにより傑出している。
【0017】
本発明の別の態様は、本発明が、処理源のうちの少なくとも1つを用いて、基板の処理をグロー放電によって行い、グロー放電により特に基板の前処理をコーティングの前に行うことができることにより傑出している。
【0018】
本発明による方法の別の態様は、処理源を用いて、基板の処理を、特にメタライジングされた基板表面にトップコート膜を被着させるために、プラズマCVDプロセスにより行うことにより傑出している。
【0019】
以下に、本発明を例示的な実施の形態および図面につき詳しく説明する。以下の説明から、特許請求の範囲における纏まりとは関係なく、本発明の別の態様および利点が読み取れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】蒸発器ベンチと、2つの基板支持装置と、2つのプラズマ源とを備えた、基板を真空コーティングする本発明による装置を示す図である。
【
図1a】蒸発器ベンチと、2つの基板支持装置と、緊張保持体に張られた蒸発器コイルとを備えた、基板を真空コーティングする本発明による装置を示す図である。
【
図1b】蒸発器ベンチと、4つの基板支持装置と、緊張保持体に張られた蒸発器コイルとを有する、基板を真空コーティングする本発明による装置を示す図である。
【
図2】第1の部分チャンバと、該第1の部分チャンバに対応配置された別の2つの部分チャンバと、緊張保持体に張られた蒸発器コイルとを備えた本発明による装置の断面図である。
【0021】
図1には、基板、たとえば自動車分野、コンピュータ、通信または消費電子機器等で使用する有利には三次元の基板を真空チャンバ内において真空コーティング(蒸着)する装置1が概略図で示されている。基板は、プラスチック材料から成っていると有利であるが、別の材料も考えられる。装置1は、特にポンプへの接続部およびプロセスガスの供給装置のような図示されていない構成部材の他に、長く延びる蒸発器ベンチ10を有している。この蒸発器ベンチ10は、長手方向軸線40に沿って連なって配置された複数の蒸発器エレメント10aを備えており、これらの蒸発器エレメント10aは、たとえば長く延びる支持エレメント10b、10cを備えたフレーム状の構造体内にハープのように配置されている。複数の蒸発器エレメント10aは、たとえば150cmから200cmの長さにわたって配置されていてよく、支持エレメント10bおよび10cの間には、たとえば20cmから30cmの間隔が設けられていてよい。蒸発器エレメント10aは、たとえば熱蒸発のために設計されていてよく、特に支持エレメント10b、10cの間に適当に張られた金属製フィラメントまたは水平方向の対称軸線を有する金属製コイルとして形成されていてよい。蒸発器エレメントにアルミニウムワイヤが充填されていると有利である。たとえば通電の結果としての加熱時に金属が蒸発し、これにより蒸発器ベンチの領域から金属蒸気が発生して、周辺空間に拡散して、ワーク上に堆積する。
【0022】
さらに装置1は、第1の基板支持装置21を有している。この第1の基板支持装置21は、駆動可能な回転軸41を中心として回転可能であり、パイロン(Pylon)として、つまり円柱状のフレーム構造体として形成されている。
図1には、見易くするために、基板支持装置21の細部ならびに基板支持装置21により収容された基板は図示されていない。回転軸線41は、有利には長手方向軸線40に対して平行に配向されているが、この場合、たとえば10°よりも少ない小さな角度のずれを有する回転軸線41と長手方向軸線40との配向も、本発明に含まれていることは自明である。
【0023】
さらに、装置1は、回転軸線42を備えた第2の基板支持装置22を有している。この第2の基板支持装置22は、第1の基板支持装置21と同様に形成されている。回転軸線42は、回転軸線41と同様に、長手方向軸線40に対して平行であるか、10°よりも少ない小さな角度のずれを有して配向されている。回転軸線41,42は、長手方向軸線40に対して相対的に固定されている。
【0024】
本発明が、それぞれ基板用の保持手段を備えたパイロンを備えた2つよりも多い基板支持装置を備えた装置をも含み、この場合、蒸発器ベンチの長手方向軸線と、パイロンの回転軸線との間には10°よりも小さな角度のずれが設けられていることは自明である。
【0025】
さらに、本発明は、基板用の遊星形保持手段を有する複数の基板支持装置を含む。遊星形保持手段は、パイロンが回転可能である回転軸線とは異なる回転軸線を中心として回転可能である。
【0026】
装置1は、さらにプラズマ源31,32として形成された基板用の処理源を有している。プラズマ源31,32は、プラズマ放電を励起する手段を、基板支持装置21,22が配置されている領域内に有している。これによって、基板のプラズマ処理を可能にすることができる。処理源、特にプラズマ源は、基板表面の前処理のために、かつ/または特にプラズマCVD法によるプラズマコーティングのために形成されていてよい。特に、反応ガスの流入部がさらに設けられていてよい。
【0027】
図1に示された実施の形態では、プラズマ源31は、1つまたは複数の基板の処理されるべき表面を処理するためのプラズマ、特にグロー放電を発生させるために、電極31aおよび対向電極31bならびに接地された真空容器(図示せず)を有している。電極31a,31bは、プレート状に、回転軸線41に対してほぼ平行に長く延びる幾何学形状を有して設計されている。さらに
図1は、基板支持装置22に対応配置されたプラズマ源32の同様の電極32aおよび対向電極32bを示している。有利には、プラズマ源31,32は、交流電圧で作動され、特に1Hz〜350MHz、有利には40kHzの周波数で作動される。
【0028】
本発明が、処理源、特にプラズマCVDプロセスを実施するために形成されたプラズマ源の別の形態ならびに別の個数を含むことは自明であり、これらのプラズマ源により、たとえばトップコートを金属製の層に被着させることができる。さらに、本発明が、基板の特定の処理のために設けられた、別個のプラズマ源を含むことも自明である。さらに、処理源のうちの1つが、1つよりも多くの処理プロセス、たとえばグロー放電およびPECVDのために設けられていてもよい。
【0029】
蒸発器ベンチ10および処理源31,32の、回転軸41,42の方向の寸法設計は、空間的な端部効果を補償するように適合されている、つまりこの場合、基板支持装置21,22の端部領域を超えた、蒸発器ベンチ10もしくは処理源31,32のある程度の突出部により適合されている。さらに、たとえば蒸発器ベンチ10もしくは基板支持装置21,22の端部領域におけるコーティング速度の低下は、複数の蒸発器エレメント10aの、長手方向軸線40に沿った互いに対する間隔を相応に調整することによって補償され得る。しかし、空間的な端部効果を補償するための別の手段、たとえば2つの端部領域の間の中間領域における遮蔽板が設けられていてもよい。
【0030】
図1aは、本発明の実施の形態の断面を簡略的に示している。この実施の形態は、1つの蒸発器ベンチと、蒸発器エレメント210aの縦延長線250に対して鏡像対称的に配置された2つの基板支持装置221,222とを備え、2つの基板支持装置221,222は、それぞれその長手方向軸線241,242を中心として回転する。蒸発器ベンチは2つの支持エレメント210b,210cから成っている。これらの支持エレメント210b,210cには、少なくとも1つの蒸発器保持体211b,211cがそれぞれ取り付けられている。これらの蒸発器保持体211b,211cは、蒸発器エレメント210aを保持している。蒸発器エレメント210aの、水平方向に延びる縦延長線250は、蒸発器ベンチ10の水平方向に延びる縦延長線に一致する。
【0031】
図1bは、本発明による実施の形態の断面を簡略的に示している。この実施の形態は、蒸発器エレメント210aの縦延長線250に対して鏡像対称的に、もしくは蒸発器エレメント210aの中心点に対して点対称的に配置された4つの基板支持装置221,222,223,224を備えている。これらの基板支持装置221,222,223,224は、それぞれその長手方向軸線241,242,243,244を中心として回転する。
【0032】
図2は、本発明の別の実施の形態の断面を簡略的に示している。この実施の形態は、第1の部分チャンバ175aと、第2の部分チャンバ180と、別の部分チャンバ180aを有する真空チャンバ175を含む装置2を備えている。部分チャンバ175aは、壁部185の開口を有している。この開口は、第2の部分チャンバ180により真空密に閉鎖可能である。別の部分チャンバ180aは、同様に開口を真空密に閉鎖することができる。部分チャンバ180および180aは、ドア状に形成されている。旋回装置を介して、部分チャンバ180ならびに部分チャンバ180aは、部分チャンバ175aに対して相対的に位置決めされ得る。部分チャンバ180aに対して、
図2では、旋回軸線181が示されている。この旋回軸線181を中心として、部分チャンバ180aは開口を開放するために旋回可能である。相応する旋回軸線が、部分チャンバ180のために設けられている。部分チャンバ180および180aは交互に開放しかつ閉鎖されてよく、相応するドアストッパが互いに反対の方向に向けられていてよいことは自明である。
【0033】
部分チャンバ180は、
図1に示されているのと同様に、蒸発器ベンチ110ならびに基板支持装置121,122を有している。さらに、部分チャンバ180は、電極131,132を有している。これらの電極131,132は、基板支持装置121もしくは122にそれぞれ対応配置されていて、部分チャンバ180と一緒に旋回可能である。別の電極130もしくは130’は、第1の部分チャンバ175a内に配置されているので、電極130,131もしくは130’132は、それぞれ1つの電極対を形成する。閉じられた状態では、電極130,131もしくは130’132はプラズマの形成を可能にする。このプラズマにより、基板支持装置121,122内に配置された複数の基板の処理を行うことができる。
【0034】
さらに
図2は、旋回された部分チャンバ180aを示している。この部分チャンバ180aは、基板支持装置121a,122aならびに電極131a,132aを有している。基板支持体121a,122aの間には、部分チャンバ180a内に蒸発器ベンチ110aが配置されている。部分チャンバ180aは、旋回軸線181を中心として旋回され得る。これによって、部分チャンバ175aの壁部185の開口を閉じることができ、この場合、部分チャンバ180が、壁部185の開口を開放するために、予め相応に位置決めされていることは自明である。部分チャンバ180aが旋回して閉じられた状態では、壁部185aおよび壁部185によって一貫した、特に真空密の壁部が実現可能である。
【0035】
ドアを唯1つの作業ステップにおいて開放するか、もしくは閉じることができ、場合によって保守されるか、または交換されるべき全ての構成要素(支持エレメント10a,10b,10c,基板)がドア内に配置されていることによって、処理源31,32を2つに分割したことにより、複数のコーティングプロセスの間の保守時間は明らかに短縮される。
【0036】
さらに、ガス発生を伴うプロセスに用いられるプロセスポンプの接続部150が設けられていて、該接続部150が基板支持装置121,122に関して対称的に配置されていると有利である。これによって、基板支持装置121,122の領域における同一の真空状態を保証することができる。接続部150の非対称的な配置も本発明に含まれることは自明である。
【0037】
装置2は、部分チャンバ175aの領域に、少なくとも1つの高真空ポンプ、特に拡散ポンプ、有利には油拡散ポンプのための接続部ならびに水蒸気除去装置、有利には水を圧送する冷却トラップを有している。部分チャンバ175aは、構成部材160,170の他に別の制御手段(図示せず)を有していてよい。
【符号の説明】
【0038】
1 装置
2 装置
10 蒸発器ベンチ
10a 蒸発器エレメント
10b 支持エレメント
10c 支持エレメント
21 基板支持装置
22 基板支持装置
31 処理源
31a 電極
31b 対向電極
32 処理源
32a 電極
32b 対向電極
40 長手方向軸線
41 基板支持装置の長手方向軸線
42 基板支持装置の長手方向軸線
110 蒸発器ベンチ
110a 蒸発器ベンチ
121 基板保持装置
121a 基板保持装置
122 基板保持装置
122a 基板保持装置
130 電極
130’ 電極
131 対向電極
131a 対向電極
132 対向電極
132a 対向電極
150 接続部
160 制御手段
170 制御手段
175 真空チャンバ
175a 第1の部分チャンバ
180 第2の部分チャンバ
180a 別の部分チャンバ
181 旋回軸線
185 壁部
185a 壁部
210a 蒸発器エレメント
210b 支持エレメント
210c 支持エレメント
211a 蒸発器保持体
211b 蒸発器保持体
221 基板支持装置
222 基板支持装置
223 基板支持装置
224 基板支持装置
241 基板支持装置の長手方向軸線
242 基板支持装置の長手方向軸線
243 基板支持装置の長手方向軸線
244 基板支持装置の長手方向軸線
250 水平方向に延びる縦延長線