【文献】
池田重之,鈴木克巳,中村正,山本薫,鹿島信義,武井貴史,大村英嗣,“透視対応大視野FPD搭載任意視野X線システムの開発”,日本放射線技術学会総会学術大会予稿集,日本,社団法人日本放射線技術学会,2005年 2月20日,第61回、563,p.263
【文献】
池田重之,中村正,鈴木克巳,竹之内忍,大村英嗣,武井貴史,山本薫,山本彩,“任意視野X線システムにおける被曝低減効果の定量化”,日本放射線技術学会雑誌学術大会プログラム,日本,社団法人日本放射線技術学会,2005年 9月20日,第61巻、第9号、第33回秋季、40,p.1222
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用する実施形態について説明する。
【0012】
本発明のX線画像診断装置は、X線の出力を規定するX線条件に従って、X線を発生するX線発生手段と、被検体を透過したX線を検出して透過X線信号を出力するX線検出手段と、前記透過X線信号に基づいて、前記被検体のX線画像を生成する画像生成手段と、を備えるX線画像診断装置において、前記X線画像の輝度値の分布を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成手段と、前記X線画像における前記被検体が撮像された領域からなる被検体領域を、前記ヒストグラムを基に検出する被検体領域検出手段と、前記被検体領域を代表する輝度値が、予め設定された前記被検体領域の目標輝度値に近づくように、前記X線条件を決定するX線条件決定手段と、を有し、前記X線発生手段は、前記決定されたX線のX線条件に従って前記X線を発生する、ことを特徴とする。
【0013】
また、前記被検体領域検出手段は、前記ヒストグラムを任意の輝度値を境に二つのデータ群に分割し、各データ群からなる二つのクラスのクラス間分散値、又はこのクラス間分散値に連動して増減する指標値、が最大となるときの輝度値を第一閾値とし、この第一閾値未満のデータ群を被検体領域として検出することを特徴とする。
【0014】
また、前記ヒストグラム生成手段は、前記X線画像のビット数よりも少ない任意のビット数に減調する処理、又は前記X線画像から生成したヒストグラムを所定の輝度値で間引きする処理、の少なくとも一つを行った処理後ヒストグラムを生成し、前記被検体領域検出手段は、前記処理後ヒストグラムを用いて前記被検体領域の検出を行うことを特徴とする。
【0015】
また、前記ヒストグラムにおける最小輝度値から加算した画素数の合計数の、前記ヒストグラムの全画素数に対する割合が、予め定義された第二閾値となるときの輝度値を基準輝度値とし、前記最小輝度値から前記基準輝度値までの各輝度値と、当該輝度値の画素数とを乗算した値の合計値を、前記最小輝度値から前記基準輝度値までの画素数の合計値で除した値をフィードバック輝度値として算出するフィードバック輝度値算出手段を更に備え、前記X線条件決定手段は、前記フィードバック輝度値が前記目標輝度値と一致するように、前記X線条件を決定することを特徴とする。
【0016】
また、前記被検体領域の画素数が、前記ヒストグラムの全画素数に対する割合を算出する被検体領域割合算出手段を更に備え、前記フィードバック輝度値算出手段は、算出された被検体領域割合に応じて、被検体領域割合が異なる少なくとも二つ以上の画像種別のいずれに前記X線画像が該当するかを判別し、各画像種別に応じた前記第二閾値を決定することを特徴とする。
【0017】
また、前記画像種別、及び各画像種別に応じた前記第二閾値は、前記X線画像を撮像する手技若しくは部位の少なくとも一つに応じて決定されることを特徴とする。
【0018】
また、前記フィードバック輝度値算出手段は、前記ヒストグラムにおける金属が撮像された領域の輝度値を前記最小輝度値として、前記フィードバック輝度値の算出を行うことを特徴とする。
【0019】
また、前記フィードバック輝度値を電圧に換算してフィードバック電圧を算出するフィードバック電圧算出手段を更に備え、前記X線条件決定手段は、前記目標輝度値を電圧に換算した基準電圧と前記フィードバック電圧とを比較し、前記フィードバック電圧が前記基準電圧よりも低い場合には、前記X線の出力が上がるように前記X線条件を変更し、前記フィードバック電圧が前記基準電圧よりも高い場合には、前記X線の出力が下がるように前記X線条件を変更することを特徴とする。
【0020】
また、前記ヒストグラム生成手段は、前記X線画像においてX線の照射領域を制限するX線絞りが撮像された領域よりも内側の領域の輝度値の分布を示すヒストグラムを生成することを特徴とする。
【0021】
また、本発明のX線発生装置の制御方法は、被検体のX線画像の輝度値の分布を示すヒストグラムを生成するステップと、前記X線画像における前記被検体が撮像された領域からなる被検体領域を、前記ヒストグラムを基に検出するステップと、前記被検体領域を代表する輝度値が、予め設定された前記被検体領域の目標輝度値に近づくように、X線の出力を規定するX線条件を決定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0022】
次に、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。同一機能を有する構成及び同一の処理内容の手順には同一符号を付し、その説明の繰り返しを省略する。本実施形態では、動画像からなるX線画像(以下「透視画像」という)を生成するX線透視撮影装置10に本発明を適用する場合を例に挙げて説明するが、静止画像を撮像するX線画像撮影装置に本発明を適用し、静止画像の輝度を調整する場合や、透視及び撮影の双方を行うX線画像診断装置にも本発明を適用することができる。以下、
図1及び
図2に基づいて、本実施形態に係るX線透視撮影装置の概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るX線透視撮影装置の構成を示すブロック図である。
図2は、本実施形態に係るX線透視撮影装置の機能ブロック図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係るX線透視撮影装置10は、X線を発生するX線管球1と、X線管球1に対してX線条件信号(例えば管電流値・管電圧値を示す信号)を出力するX線発生器2と、X線発生器2に対してX線条件を決定するためのフィードバック電圧信号を送信するX線制御装置3と、X線管球1と対向配置され、被検体を透過したX線を検出するX線平面検出器4と、検出された透過X線信号の読出処理の制御を行うX線平面検出器制御装置5と、読み出された透過X線信号を基に透視画像を生成し、その透視画像を基にフィードバック輝度値を算出してX線制御装置3に出力する画像処理装置6と、透視画像を表示する画像表示装置7と、X線制御装置3、X線平面検出器制御装置5、及び画像処理装置6に対する制御を行うシステム制御装置8と、被検体を載置するテーブル9とを備える。
【0024】
図2に示すように、画像処理装置6は、X線平面検出器制御装置5から出力された透過X線信号に基づいて透視画像を生成する画像生成部6aと、生成された透視画像の各フレームの画素値の分布を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成部6bと、ヒストグラムを基に、各フレーム内に占める被検体が撮像された領域(以下「被検体領域」という)を検出する被検体領域検出部6cと、算出された被検体領域が透視画像全体に占める割合を算出する被検体領域割合算出部6dと、被検体割合に応じた条件下でフィードバック輝度値を算出するフィードバック輝度値算出部6eと、画像生成部6aが生成した透視画像に対し、画像表示装置7に表示するための階調処理を施し、表示用画像データを画像表示装置7に出力する表示画像処理部6fと、を備える。すなわち、画像処理装置6は、大きくは、ABS制御のための演算処理部(ヒストグラム生成部6b、被検体領域検出部6c、被検体領域割合算出部6d、及びフィードバック輝度値算出部6e)と、画像表示のための表示処理部(表示画像処理部6f)とに分かれる。
【0025】
一方、X線制御装置3は、画像処理装置6から受信したフィードバック輝度値を電圧(以下「フィードバック電圧」という)に換算するフィードバック電圧算出部3aを備える。
【0026】
また、X線発生器2は、X線制御装置3から受信したフィードバック電圧が、透視画像の被検体領域を所望する輝度値(以下「目標輝度値」という)とするために予め定められた一定値になるように、X線条件(管電流・管電圧)を決定するX線条件決定部2aを備える。本実施形態では、前記一定値として、目標輝度値を電圧に換算した基準電圧を用いる。
【0027】
画像生成部6a、ヒストグラム生成部6b、被検体領域検出部6c、被検体領域割合算出部6d、フィードバック輝度値算出部6e、表示画像処理部6f、フィードバック電圧算出部3a、及びX線条件決定部2aは、それら各部の機能を実現するプログラムと、そのプログラムをロードして実行するハードウェア装置とにより構成される。
【0028】
<第一実施形態>
ここで、第1の実施形態について、
図3乃至
図8に基づいて説明する。
図3は実施形態に係るABS制御の処理の流れを示すフローチャートである。
図4は透視画像及びその透視画像を基に生成したヒストグラムを示す説明図であって、(a)は、透視画像の一例を示し、(b)は、この透視画像のヒストグラムをNビットに減調し、かつ輝度値をTずつ間引きしたヒストグラムを示す。
図5は各画像パターンに応じた画像のヒストグラムを示す説明図である。
図6はフィードバック輝度値からX線条件への変換処理を示す説明図である。
図7はフィードバック輝度値とX線条件(管電流/管電圧)との関係を示す説明図であって、(a)は、異なる被検体厚のものに同じX線条件で照射したときの被検体厚、X線条件(管電流/管電圧)、フィードバック輝度値、フィードバック電圧との関係を示し、(b)は、異なる被検体厚のもので、ABSが機能したときの被検体厚、X線条件(管電流/管電圧)、フィードバック輝度値、フィードバック電圧との関係を示す。
図8はABS制御の効果を説明するための説明図であって、(a)は、フィードバック輝度値が目標輝度値よりも低い値をとった場合のヒストグラムを示し、(b)はフィードバック輝度値が目標輝度値となった場合のヒストグラムを示す。
【0029】
透視が開始されると、透視X線信号は、X線平面検出器制御装置5の読出信号に従ってX線平面検出器4から読み出され、画像処理装置6へ渡される。以下、
図3の各ステップに沿って説明する。
【0030】
(ステップS10)
ステップS10では、画像生成部6aは、X線平面検出器4からn番目フレームの基となる透過X線信号を取得し、16ビットの透視画像データを生成する(S10)。本実施形態では、16ビットの透視画像データは、ABS制御のためにヒストグラム生成部6bに出力されるとともに、表示階調処理のために表示画像処理部6fに出力される。または、既に生成された16ビットの透視画像データを取得してもよい。
【0031】
(ステップS11)
ステップS11では、ヒストグラム生成部6bが、16ビットの透視画像データを用いてヒストグラムを生成する(S11)。
【0032】
(ステップS12)
被検体領域検出部6cは、透視画像データを16ビットからNビットへ階調を減調し、輝度値をTずつ、間引き処理を行う。そして、減調及び間引き後の輝度値の分布を示すヒストグラムを生成する(S12)。このときのNビットは、16ビット未満の任意の階調である。従って、ヒストグラム階調を16ビットからNビットへ落とすと、透視画像データ中の任意の画素は以下の式(1)で輝度値が変換される。
【0033】
PV
Nbit=PV
16bit÷2
(16-N)・・・(1)
PV
Nbit:任意画素のNビット減階調後の輝度値
PV16bit:任意画素の16ビット時の輝度値
本ステップにおいて、ヒストグラム階調を落とす目的は、ステップS13にて行う判別分析法の演算を高速化することにある。判別分析法は、その演算アルゴリズムから演算時間がヒストグラムの輝度値幅に依存するため、階調を落とし輝度値幅が小さくすることで演算時間が短縮されるからである。
【0034】
また、演算時間の更なる高速化として、Nビットに階調を落としたヒストグラム上の輝度値を等間隔に輝度値をTずつ間引くことで、更なる高速化が可能となる。
【0035】
本ステップで行うNビットへの減調処理及び間引き処理は、必須ではないので、省略してもよい。その場合、ステップS11からステップS13に処理が進む。
【0036】
(ステップS13)
被検体領域割合算出部6dは、は、Nビット
にした後輝度値をTずつ間引かれたヒストグラムを基に被検体領域を検出する(S13)。本ステップでは、Nビットかつ輝度値をTずつ間引かれたヒストグラム上にある任意の輝度値を境界にヒストグラムを2つに分割し、それぞれをクラス1、クラス2とした場合におけるクラス間分散が最大となる輝度値をしきい値として求める。具体的には下式(2)より算出されるクラス間分散Δ1の値が最大になるときの輝度値PV
thresholdを求める。
【0037】
Δ1={ω
1(μ
1-μ
a)
2+ω
2(μ
2-μ
a)
2}/(ω
1+ω
2)・・・(2)
Δ1:クラス間分散の値
ω
1:クラス1の画素数
ω
2:クラス2の画素数
μ
1:クラス1の平均輝度値
μ
2:クラス2の平均輝度値
μ
a:画像全体の平均輝度値
なお、式(2)の右辺の分母(ω
1+ω
2)は、1枚(すなわち1フレーム)の透視画像の全画素数を示しており、この値は、透視画像を構成する全てのフレームにおいて同じ値となる。よって、クラス間分散Δ1が最大となるときの輝度値PV
thresholdを求める際に、式(2)の右辺において(ω
1+ω
2)で除する演算を省き、下記式(2-1)を用いてもよい。式(2-1)は、クラス間分散に連動する指標値Δ2を求める式であるが、Δ2が最大となるとき、クラス間分散Δ1も最大となる。式(2)に代えて式(2-1)を用いることにより、(ω
1+ω
2)で除する演算が省略でき、より高速な演算処理が可能となる。
【0038】
Δ2=ω
1(μ
1-μ
a)
2+ω
2(μ
2-μ
a)
2・・・(2-1)
Δ2:クラス間分散の値に連動する指標値
ω
1:クラス1の画素数
ω
2:クラス2の画素数
μ
1:クラス1の平均輝度値
μ
2:クラス2の平均輝度値
μ
a:画像全体の平均輝度値
図4の(a)は、画像表示装置7に表示された透視画像20を示し、(b)は、16ビットの透視画像20の画素値の分布を示すヒストグラムを、Nビットに減調し、かつ輝度値をTずつ間引きしたヒストグラム25である。16ビットデータからなる透視画像20の全ての画素値の分布を示すヒストグラムも、ヒストグラム25と同様、直接線領域21と被検体領域22との画素値の差を起因とする双峰性を示す。
【0039】
透視画像20は、X線平面検出器4にX線が直接入射した直接線領域21と、被検体を透過したX線が入射した被検体領域22と、から成る。この透視画像20のヒストグラム25は、主に直接線領域21を構成する画素の高輝度値が分布する領域と、被検体領域22を構成する画素の輝度値が分布する領域と、からなる双峰性を持つ。この場合、クラス間分散が最大となる輝度値PV
thresholdは、2山の間の谷の部分となる。したがってPV
threshold以上の輝度値のデータ群を直接線領域26、PV
threshold未満の輝度値のデータ群を被検体領域27と認識することが出来る。
【0040】
(ステップS14)
被検体領域割合算出部6dは、ヒストグラム25を基にPV
thresholdを求め直接線領域26を求める。その後、被検体領域割合算出部6dは、下式(3)を基にヒストグラム25の全体に対する被検体領域27の割合W(%)を求める(S14)。
【0041】
W(%)=C
sp÷C
all・・・(3)
W:ヒストグラム25の全体に対する算出された被検体領域27の割合
C
sp:ヒストグラム25内の被検体領域27の画素数
C
all:ヒストグラム25全体の画素数
(ステップS15)
フィードバック輝度値算出部6eは、被検体領域割合算出部6dが算出した被検体領域27の割合W(%)を基づいて、被検体領域割合に応じた複数の画像パターンに分類する(S15)。本ステップでは、被検体領域割合がX
1%以上のものを被検体領域割合が多い画像、X
2%以上X
1%未満のものを中間画像、X
2%未満のものを被検体領域割合が少ない画像、と定義し、被検体領域27の割合W(%)と各定義に用いられた条件とを比較して、3つの画像パターンの何れに一致するか、条件分岐を行う(S15)。被検体領域割合が多い画像の場合にはステップS16へ、中間画像の場合には、ステップS17へ、被検体領域割合が少ない画像の場合にはステップS18へ進む。
【0042】
(ステップS16〜S18)
フィードバック輝度値算出部6eは、各画像パターンに応じて定められたPタイル法の演算に用いるP
1、P
2、P
3の値を設定する(S16〜S18)。Pタイル法の詳細については、次のステップS19において説明する。
【0043】
上記P
1、P
2、P
3の値は、予め実験的に各画像パターン(本実施形態では、被検体領域が比較的大きい画像、中間画像、被検体領域が比較的小さい画像の3つの画像パターン)における最適なX線出力を求め、その出力と同じになるように調整し、決定される。
【0044】
ここで、P
1は、被検体領域W(%)がX
1以上含まれる、比較的被検体領域の割合が多い画像パターンから求めた値である。P
2は、被検体領域W(%)がX
2以上X
1未満含まれる、中間画像パターンから求めた値である。P
3は、被検体領域W(%)がX
2未満含まれる、比較的被検体領域の割合が少ない画像パターンから求めた値である。
図5は、各画像パターンのヒストグラムを示す。
【0045】
各ヒストグラム中の点線Lは、PV
thresholdを示す。ヒストグラム28は1フレーム分の透視画像中における被検体領域割合が多い画像のヒストグラムであるので、点線Lの左右の各領域に属する合計頻度を比べると、点線Lの左側、すなわち被検体領域に属する合計頻度の方が、右側、すなわち直接線領域に属する合計頻度よりも多い。ヒストグラム29は1フレーム分の透視画像中における被検体領域割合が小さい画像のヒストグラムであるので、点線Lの左右の各領域に属する合計頻度を比べると、点線Lの左側、すなわち被検体領域に属する合計頻度のよりも、右側、すなわち直接線領域に属する合計頻度の方が多い。ヒストグラム30は中間画像であるので、点線Lの左右の各領域に属する合計頻度はほぼ等しくなる。
【0046】
このように、画像によって、被検体領域の割合の大小が生じるので、この被検体割合の大小に応じて、P
1、P
2、P
3のいずれかの値を適用する。P
1、P
2、P
3の大小関係は、被検体領域割合の大小関係と連動し、P
1>P
2>P
3となる。そこで、本ステップでは、ステップS15において算出した被検体領域の割合W(%)がX
1以上であるか(条件Aに相当する)、X
2以上X
1未満であるか(条件Bに相当する)、X
2未満であるか(条件Cに相当する)を判定し、条件Aに相当するとP
1%閾値を設定し、条件Bに相当すると、P
2%閾値を設定し、条件Cに相当すると、P
3%閾値を設定する。
【0047】
(ステップS19)
フィードバック輝度値算出部6eは、ステップS11で得られた16ビットの透視画像データからなるヒストグラムデータと、ステップS16〜S18で設定したP
1、P
2、P
3のいずれかの値と、を用いて下式(4)に示すPタイル法による演算処理を行い、基準輝度値PV
percentを算出する。続いて、フィードバック輝度値算出部6eは、下式(5)に算出した基準輝度値PV
percentを適用して、フィードバックに用いるフィードバック輝度値PV
ABSを算出する(S19)。
【0048】
まず、Pタイル法から説明する。Pタイル法とは、下式(4)に示すように、1画像のヒストグラムにおいて、輝度値0から画素数を加算していき、全画素数に対し加算した画素数の割合がP%になるときの基準輝度値PV
percentを算出する画像処理の2値化処理の方法である。
【0049】
P(%)=(PC
count÷PC
all)×100・・・(4)
P:設定する割合(すなわち、ステップS16〜S18で設定したP
1、P
2、P
3の何れかの値)
PC
count:輝度値0から加算した画素数の合計数
PC
all:1画像の合計画素数
例えば、被検体領域割合が多い画像の場合、式(4)の左辺にはP
1の値となる。そして、1画像の合計画素数に対する、輝度値0から加算した画素数の合計数の割合がP
1(%)となるときの輝度値が、基準輝度値PV
percentとなる。
【0050】
次にフィードバック輝度値算出部6eは、算出した基準輝度値PV
percentを下式(5)に適用してフィードバック輝度値PV
ABSを算出する。
PV
ABS:ABSフィードバック輝度値
K:任意の輝度値(0〜16383)
PC
k:輝度値kにおける画素数
PV
percent:Pタイル法により算出された輝度値
(ステップS20)
フィードバック輝度値算出部6eは、ステップS19で算出したPV
ABSをABSフィードバック輝度値信号(以下「フィードバック値信号」という)としてX線制御装置3に送り、X線制御装置3内のフィードバック電圧算出部3aが受信する。フィードバック電圧算出部3aは、受信したABSフィードバック輝度値PV
ABSからX線発生器2にフィードバックする電圧(以下「フィードバック電圧」という。)に換算する。X線発生器2のX線条件決定部2aは、フィードバック電圧を、予め定められた基準電圧と比較し、フィードバック電圧が基準電圧よりも低ければ現在のX線条件(管電圧、管電流の組み合わせ)を序々にあげていき、基準電圧(例えば5V)に合わせ込むように調整する。反対に、フィードバック電圧が基準電圧よりも高ければ、現在のX線条件(管電圧、管電流の組み合わせ)を序々に下げていき、基準電圧(例えば5V)に合わせ込むように調整する(S20)。
【0051】
図6に基づいて、フィードバック輝度値からX線条件への変換について説明する。
図6では、基準電圧Y
ref[V]として、フィードバック電圧がY
ref[V]と等しいときに、適切な輝度調整が行われていると判定する。
【0052】
図6では、現在の透視画像(n番目フレーム)からフィードバック輝度値算出部6eがPV
ABS=X
1を示し、それを基にフィードバック電圧算出部3aがフィードバック輝度値X
1をフィードバック電圧Y
1[V]に換算する。Y
ref[V]に比べてY
1[V]が小さい場合、X線条件決定部2aは基準電圧Y
ref[V]とフィードバック電圧Y
1[V]とを比較し、現在のX線条件(mA
1,kV
1)を(mA
2,kV
2)(但し、mA
1<mA
2,kV
1<kV
2)に上げる。そして、n+1番目の透視画像は、新たなX線条件(mA,kV)=(mA
2,kV
2)により撮像する。n+1番目フレームを基に算出されたフィードバック輝度値PV
ABS=X
2は、フィードバック電圧に換算すると、Y
2[V]となる。Y
2[V]がY
ref[V]と同値(Y
2[V]=Y
ref[V])のとき、フィードバック電圧と基準電圧とは一致するので、X線条件決定部2aはX線条件の変更は不要と判定する。よって、n+2番目フレームは、(mA,kV)=(mA
2,kV
2)の下、撮像される。上記のように、フィードバック輝度値PV
ABSとフィードバック電圧とは1対1の対応関係を持つが、フィードバック輝度値PV
ABSとX線条件(管電圧,管電流)とは1対1の対応関係を持っていない。
【0053】
フィードバック輝度値PV
ABSとX線条件(管電圧,管電流)との関係を
図7に基づいて説明する。同じX線条件で異なる厚さの被検体を撮像した場合、透過X線信号強度が異なるため、異なる被検体厚において、異なるフィードバック輝度値及びフィードバック電圧を示す。例えば
図7(a)では、同一のX線条件(管電流,管電圧)=(mA
20,kV
20)で被検体厚20cmの被検体と、同10cmの被検体とを撮像すると、前者はフィードバック輝度値X
3及びフィードバック電圧Y
3[V]、後者はフィードバック輝度値X
4及びフィードバック電圧Y
4[V](但し、X
3<X
4、Y
3[V]<Y
4[V])となる。
【0054】
ここで、異なる厚さの被検体を撮像した透視画像が一定の輝度値を示すようにABS(
自動輝度制御システム)が機能すると、
図7の(b)に示すように、異なる被検体厚においても同じフィードバック輝度値、フィードバック電圧を示す。すなわち、フィードバック輝度値PV
ABS=X
3とフィードバック電圧=Y
3[V]が一定の下、透過X線強度を一定にしようとすると、被検体厚が相対的に薄い方がよりX線強度を下げる必要がある。そのため、被検体厚20cmのX線条件(管電流,管電圧)=(mA
20,kV
20)に比べて、被検体厚10cmのX線条件は下げる必要がある。よって、被検体厚10cmの被検体には、X線条件として(管電流,管電圧)=(mA
10,kV
10)(但し、mA
10<mA
20,kV
10<kV
20)を適用する。
【0055】
本実施形態では、X線条件として、管電流と管電圧との組み合わせを用いて説明しているが、管電圧のみ又は管電流のみを昇降させてX線条件を変更してもよい。
【0056】
(ステップS21)
X線発生器2は、新たに決定したX線条件信号をX線管球1に出力し、その新たなX線条件に従ってn+1番目フレームの透視画像の撮像が行われる(S21)。
【0057】
本実施形態に係るABS制御の効果について、目標輝度値よりもフィードバック輝度値PV
ABSが低い値をとった場合を例に挙げて説明する。本実施形態では、目標輝度値よりもフィードバック輝度値PV
ABSが低い値となると、管電流及び管電圧を上げるように制御が働く。このときの効果について、
図8を基に説明する。
【0058】
図8の(a)に示すヒストグラム31は、フィードバック輝度値PV
ABSが目標輝度値よりも低いため(換言すればフィードバック電圧が基準電圧よりも低いため)、透視画像中の被検体領域の画素の輝度の幅が狭く、直接線領域の画素の輝度も相対的に高くない(1000未満である)。このヒストグラム31のフィードバック輝度値PV
ABSと目標輝度値とが一致するようにX線条件を変更して(例えば管電流及び管電圧を上げて)透視画像を撮像する。この透視画像の輝度値の分布を示すヒストグラム32(
図8(b)参照)では、ヒストグラム31に比べ、輝度値の分布が、全体的に高輝度寄りにシフトし、かつヒストグラム32に示す輝度値の分布幅が広がることとなる。
【0059】
従来のABSでは、透視撮影を行いたい部位を変える場合、部位ごとにROIの形状や大きさ等を変化させていたのに対し、本実施形態によれば、ROIの形状や大きさに依存することなく、透視画像毎にヒストグラム上の被検体領域を検出し、被検体領域の輝度値を用いてABSへのフィードバック輝度値の算出を行うため、被検体位置が移動した場合にもROIの再設定のための操作者の作業を介することなく、被検体位置の移動に対してX線条件を追従させることができる。また、直接線領域のようにハレーションを生じる領域が透視画像に含まれている場合にも、直接線領域の影響を排除して被検体領域を
目標輝度値で撮像・表示させることができる。また、本実施形態では、被検体領
域を代表する輝度値としてフィードバック輝度値を用いたが、被検体領域の平均輝度値や、被検体領域の輝度値分布の中央値を代表値とし、この代表値が目標輝度値と一致するようにX線条件を決定してもよい。
【0060】
<第二実施形態>
第二実施形態では、第一実施形態のステップS15で用いるX
1、X
2の値、及びステップS16〜S18で設定するP
1、P
2、P
3の値を手技別及び部位別に異なる値を持たせる。これは、手技によりヒストグラムの構成が変化することや、同じ手技を用いても、骨と臓器など見たい対象が異なると輝度値が異なることから、X線条件を変更したほうが、目標輝度値が達成できるからである。
【0061】
<第三実施形態>
第三実施形態では、被検体領域内に金属が写り込んでいる場合に、その金属による影響を軽減させる実施形態である。具体的には、第一実施形態のステップS19で行うPタイル法の演算において使用する式(4)を下式(6)のように変形する。
P(%)={PC
count metal÷(PC
all-PC
under metal)}×100・・・(6)
PC
count metal:輝度値M
thresholdから加算した合計画素数
PC
under metal:輝度値M
threshold以下の合計画素数
但し、M
thresholdは金属しきい輝度値である。
【0062】
第三実施形態について、
図9を基に説明する。
図9は、1フレーム分の透視画像中に金属が混入している場合のヒストグラムを示す説明図である。金属はX線を透過させにくい物質であるため、ヒストグラムにおける金属部分の輝度値領域33は低い値となる。このような場合、第一実施形態で説明した式(4)を用いてPタイル法を実施すると、金属が写り込んだ画素の輝度値が、フィードバック輝度値算出において演算対象に入る。このことにより、フィードバック輝度値PV
ABSが適切な値でなくなり、X線出力が上昇し、白飛びした画像になってしまう。したがって金属しきい輝度値34(以下、「M
threshold」と記載する)を設定することで、Pタイル法の演算においてPC
countを輝度値M
thresholdから加算する。このことにより1フレーム分の透視画像中に含まれる金属をフィードバック値算出の対象から除外することが可能となり、フィードバック輝度値PV
ABSが金属の影響を受けない、適切な値として算出される。
【0063】
<第四実施形態>
第四実施形態では、第一実施形態に加え、X線照射野領域を制限するためのX線絞りの位置情報を用いて、透視画像のうちX線絞りが写りこんだ画素の輝度値を、フィードバック輝度値PV
ABSの演算対象の画素から除外する実施形態である。X線管球1にX線絞りを入れた場合、1フレーム分の透視画像中における有効な画像部分は、透視画像中においてX線絞りが撮像された領域の内側となる。しかし第一実施形態では1フレーム分の透視画像中の全ての画素をABSのフィードバック対象としているため、X線照射野に挿入されている絞りの部分を被検体領域であると誤認識してしまい、その影響を受けてABSへフィードバックするフィードバック輝度値PV
ABSが適切な値でなくなり(値が低くなる)、適切なABS制御を行うことが出来ない。
【0064】
そこで、システム制御装置8に予めX線管球1に取り付けられたX線絞りの実際の位置情報を検出する絞り位置検出装置8aを設ける。ヒストグラム生成部6bは、実際の位置情報を用いて、画像生成部6aが生成した1フレーム分の透視画像中におけるX線絞りが撮像された領域の位置を求める。そして、透視画像中におけるX線絞りが撮像された領域よりも内側の画像を用いて、ヒストグラムを生成し、ステップS12以下の処理を行う。
【0065】
本実施形態によれば、X線絞りが撮像された領域の画素を除外してフィードバック輝度
値PV
ABSを算出するため、絞りを入れた透視画像に対しても適切なABS制御が可能となる。