特許第5721845号(P5721845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5721845金属長纎維を含む電極構造を有する電池及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721845
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】金属長纎維を含む電極構造を有する電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20150430BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20150430BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20150430BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20150430BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20150430BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20150430BHJP
   H01M 4/08 20060101ALI20150430BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20150430BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   H01M4/13
   H01M4/62 Z
   H01M4/139
   H01M4/02 Z
   H01M4/04 Z
   H01M4/06 Z
   H01M4/08 Z
   H01M4/66 A
   H01M4/80 C
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-533780(P2013-533780)
(86)(22)【出願日】2011年10月19日
(65)【公表番号】特表2013-543231(P2013-543231A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】KR2011007768
(87)【国際公開番号】WO2012050407
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2013年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】513003301
【氏名又は名称】ジェナックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム クォンソク
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4113593(JP,B2)
【文献】 特開2009−266473(JP,A)
【文献】 特開2009−212131(JP,A)
【文献】 特開2007−128724(JP,A)
【文献】 特開平10−162816(JP,A)
【文献】 特開平10−125332(JP,A)
【文献】 特開2012−089303(JP,A)
【文献】 特表2009−537963(JP,A)
【文献】 特開平9−161807(JP,A)
【文献】 特開2000−537519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の金属長纎維間の物理的接触または化学的結合を通じて形成された導電性ネットワークと、
前記導電性ネットワークにバインディングされた第1電気的活物質と、を含む電極構造を有し、
前記金属長纎維のうち一部または全部は、その表面上に、第2電気的活物質がプリコーティングされ、
前記第2電気的活物質は、周囲の前記第1電気的活物質と同一であるか、または化学的親和度を有する他の種類の活物質であることを特徴とする電池。
【請求項2】
前記金属長纎維は、ランダムに配列されて、互いに締結される不織布構造を有することを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記金属長纎維は、二つ以上の異なる種類の金属で形成されることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記電極構造は、熱処理されることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記電極構造は、圧着されて板状構造を有したり、前記板状構造が、折れ、巻き、積層またはそれらの組み合わせにより変形した構造を有することを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項6】
前記金属長纎維は、1μmないし200μm範囲内の厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項7】
前記金属長纎維は、5mmないし1000mm範囲内の長さを有することを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項8】
前記金属長纎維は、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン及び銅、またはそれらの合金のうちいずれか一つまたはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項9】
前記電気的活物質は、一次電池用活物質または二次電池用活物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項10】
前記電気的活物質と導電性ネットワークとの間の気孔の間に浸湿された電解質液をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の技術に係り、より詳しくは、金属長纎維を用いた電極構造を有する電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池産業は、最近、半導体製造技術及び通信技術の発達による携帯用電子装置に関する産業が膨脹しており、環境保存及び資源の枯渇による代替エネルギーの開発要求に応じて活発に研究されている。代表的な電池として、リチウム一次電池は、従来の水溶液系電池に比べて、高電圧であり、エネルギー密度が高いため、小型化及び軽量化の側面で容易であるので、幅広く適用されている。このようなリチウム一次電池は、携帯用電子装置の主電源やバックアップ用電源に主に使われている。
【0003】
二次電池は、可逆性に優れた電極材料を用いて、充放電が可能な電池である。前記二次電池は、外観上によって、円筒形と角形とに分けられ、正極及び負極の物質によって、ニッケル・水素(Ni−MH)電池、リチウム(Li)電池、リチウムイオン(Li−ion)電池などに分けられる。このような二次電池は、携帯電話、ノート型パソコン、移動型ディスプレイのような小型電池から、電気自動車用バッテリー、ハイブリッド自動車に使われる中大型電池に達するまで、その適用分野が次第に拡大している。これらの電池は、軽量であり、エネルギー密度が高く、かつ優秀な充放電速度、充放電効率及びサイクル特性だけでなく、高い安定性及び経済性を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、エネルギー密度が高いだけでなく、充放電効率、充放電速度及びサイクル特性に優れており、さらに、形状の変化と容量の調節が容易な電極構造を有する電池を提供することである。
【0005】
本発明が解決しようとする他の課題は、前述したメリットを有する電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の一実施形態による電池は、一つ以上の金属長纎維間の物理的接触または化学的結合を通じて形成された導電性ネットワークと、前記導電性ネットワークにバインディングされた第1電気的活物質と、を含む。
【0007】
一部の実施形態において、前記金属長纎維は、ランダムに配列されて、互いに締結される不織布構造を有する。また、前記金属長纎維のうち少なくとも一部は、その表面上に、第2電気的活物質がプリコーティングされる。また、前記金属長纎維は、二つ以上の異なる種類の金属で形成される。
【0008】
一部の実施形態において、前記電極構造は、100℃ないし1200℃範囲内で熱処理される。また、前記電極構造は、圧着されて板状構造を有したり、前記板状構造が、折れ、巻き、積層またはそれらの組み合わせにより変形した構造を有する。
【0009】
前記金属長纎維は、1μmないし200μm範囲内の厚さを有し、5mmないし1000mm範囲内の長さを有する。前記金属長纎維は、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン及び銅、またはそれらの合金のうちいずれか一つまたはそれらの組み合わせを含む。
【0010】
前記他の課題を解決するための本発明の一実施形態による電池の製造方法は、互いに物理的接触または化学的結合を行う一つ以上の金属長纎維を含む第1長纎維層を提供するステップと、前記第1長纎維層上に、電気的活物質層を提供するステップと、前記電気的活物質層上に、互いに物理的接触または化学的結合を行う一つ以上の金属長纎維を含む第2長纎維層を提供するステップと、を含む。
【0011】
前記金属長纎維は、ランダムに配列されて、互いに締結される。一部の実施形態においては、前記第1長纎維層と前記第2長纎維層とが、互いに物理的接触または化学的結合を行うように圧着するステップをさらに行う。また、前記ステップの結果物を、100℃ないし1200℃範囲内で熱処理するステップがさらに行われる。
【0012】
前記他の課題を解決するための本発明の他の実施形態による電池の製造方法は、セグメント化した金属長纎維を提供するステップと、粒子状の電気的活物質を提供するステップと、前記金属長纎維と前記電気的活物質の混合組成物を形成するステップと、前記混合組成物を硬化させるステップと、を含む。
【0013】
前記混合組成物を形成するステップにおいて、前記混合組成物は、結合剤及び導電剤のうち一方または両方をさらに含む。また、一部の実施形態において、前記混合組成物を熱処理するステップがさらに行われる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金属の優秀な機械的特性及び熱的特性を有し、かつ纎維の加工性及び組職性を兼備する金属長纎維を用いて、電極構造を形成することで、集電構造と電気的活物質との間の接触抵抗の減少及び接触面積の増大によって、電池のエネルギー密度が向上するだけでなく、充放電速度、充放電効率及び電池のサイクル特性が改善される。
【0015】
また、金属長纎維の導電性ネットワークは、適切な気孔を形成することで、電解質の含浸工程を容易にするだけでなく、形状の変形と電池の充放電による体積の変化に伸縮性良く対応でき、熱処理が可能であるので、電池の製造工程が簡単であり、電池の寿命が顕著に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の多様な実施形態による電極構造を示す図面である。
図2】本発明の多様な実施形態による電極構造を示す図面である。
図3A】本発明の一実施形態による電極構造の製造方法を順次に示す図面である。
図3B】本発明の一実施形態による電極構造の製造方法を順次に示す図面である。
図3C】本発明の一実施形態による電極構造の製造方法を順次に示す図面である。
図3D】本発明の一実施形態による電極構造の製造方法を順次に示す図面である。
図4A】本発明の他の実施形態による電極構造を示す断面図である。
図4B】本発明の他の実施形態による電極構造を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態による電極構造を用いた電池を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付された図面を参照して、本発明の望ましい実施形態を詳細に説明する。
【0018】
本発明の実施形態は、当業者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものであり、下記実施形態は、色々な他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記実施形態に限定されるものではない。かえって、それらの実施形態は、本開示をさらに充実かつ完全にし、当業者に本発明の思想を完全に伝達するために提供されるものである。
【0019】
また、以下の図面において、各層の厚さやサイズは、説明の便宜及び明確性のために誇張されたものであり、図面上で、同じ符号は同じ要素を指す。本明細書で使われたように、用語“及び/または”は、該当列挙された項目のうちいずれか一つ、及び一つ以上の全ての組み合わせを含む。
【0020】
本明細書で使われた用語は、特定の実施形態を説明するために使われ、本発明を制限するためのものではない。本明細書で使われたように、単数の形態は、文脈上明確に取り立てて指摘するものではなければ、複数の形態を含む。また、本明細書で使われる場合、“備える(comprise)”及び/または“備えた(comprising)”は、言及した形状、数字、段階、動作、部材、要素及び/またはそれらのグループの存在を特定するものであり、一つ以上の他の形状、数字、動作、部材、要素及び/またはグループの存在または付加を排除するものではない。
【0021】
本明細書において、第1、第2などの用語は、多様な部材、部品、領域、層及び/または部分を説明するために使われるが、それらの部材、部品、領域、層及び/または部分は、それらの用語によって限定されてはならない。それらの用語は、一つの部材、部品、領域、層または部分を、他の領域、層または部分と区別するためにのみ使われる。したがって、後述する第1部材、部品、領域、層または部分は、本発明の思想から逸脱しない範囲内で、第2部材、部品、領域、層または部分を指す。
【0022】
本明細書で使われる金属長纎維は、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン及び銅、またはそれらの合金のような金属が纎維化されたものであって、例えば、数μmないし数十μmの直径を有し、かつ数十μm以上の長さを有する金属糸を指す。前記金属長纎維は、金属の耐熱性、可塑性及び電気伝導性を有し、かつ纎維特有の織造及び不織布の加工工程が可能であるというメリットを同時に有し、本発明は、このような金属長纎維のメリットを、電池の電極構造に適用した特徴及びメリットに関するものである。
【0023】
前記金属長纎維は、容器内で金属または合金を溶湯状態に維持し、圧縮ガスまたはピストンのような加圧装置を用いて、容器の射出孔を通じて、前記溶湯を大気中に噴出させて、急冷凝固させることによって製造される。または、前記金属長纎維は、公知の集束引抜法によって製造される。前記射出孔の個数、サイズ及び/または射出された溶融金属の飛上を制御することで、金属長纎維の厚さ、均一度、不織布のような組職及びその縦横比を制御できる。本発明の電池を構成する金属長纎維は、前述した製造方法だけでなく、他の公知の製造方法による金属長纎維を含み、本発明は、これに限定されるものではない。
【0024】
本明細書で使われる‘分離膜’という用語は、前記分離膜と親和性の少ない液体電解質を使用する液体電解質電池において一般的に通用する分離膜を含む。さらに、本明細書で使われる‘分離膜’は、電解質が分離膜に強く束縛されて、電解質と分離膜とが同一なものと認識される真性固体ポリマー電解質、及び/またはゲル固体ポリマー電解質を含む。したがって、前記分離膜は、本明細書で定義するところによって、その意味が定義されなければならない。
【0025】
図1及び図2は、本発明の多様な実施形態による電極構造100,200を示す。
【0026】
図1を参照すれば、電極構造100は、一つ以上の金属長纎維10及び電気的活物質20を含む。金属長纎維10は、金属の軟性及び展性によって可塑性を有する。また、金属長纎維10は、好適な長さを有するようにセグメント化して、複数である。本発明の実施形態において、金属長纎維10の長さ及び個数は、電池のサイズ及び容量によって適宜選択される。例えば、金属長纎維10は、1μmないし200μm範囲内の厚さを有し、5mmないし1000mm範囲内の長さを有することで、25ないし10の縦横比を有する。また、図1及び図2に示した金属長纎維10の形状は、大体的な直線と曲がった形態を表しているが、本発明の他の実施形態として、金属長纎維10は、カール状または螺旋状のような他の規則的または不規則な形状を有するように成形されてもよい。
【0027】
金属長纎維10は、互いに物理的接触または化学的結合を通じて、電気的に接続されて、一つの導電性ネットワークを形成する。一部の実施形態において、金属長纎維10は、図示したように、ランダムに配列されて、互いに締結される不織布構造を有する。一つ以上の金属長纎維10は、反ったり、折られたりして、互いにもつれることで、気孔を有し、かつ機械的に堅固な低抵抗の導電性ネットワークを形成する。金属長纎維10は、必要に応じて、二つ以上の異なる種類の金属で形成され、熱処理などのさらなる工程を通じて、それら間の金属間化合物の形成による前記化学的結合が達成され、その結果、機械的に強化した導電性ネットワークを形成することも可能である。
【0028】
電気的活物質20は、前記導電性ネットワーク内に、機械的にバインディングされる。電気的活物質20が導電性ネットワークに強く束縛されるように、金属長纎維10が形成する気孔のサイズ及び気孔率を適宜調節可能である。前記気孔のサイズ及び気孔率の調節は、金属長纎維10の全体の電極構造100内で、電気的活物質20との混合重量比を調節することによって行われる。
【0029】
電極構造100内の金属長纎維10の混合重量比は、金属長纎維10の個数または長さを増加させることによって調節可能である。または、電極構造100内の気孔のサイズ及び気孔率は、後述するように、金属長纎維10の可塑性を用いて、金属長纎維10と電気的活物質20の混合物を、ロ−ルプレスのような加圧器を用いて、機械的に圧縮することで、適宜調節可能である。このような機械的圧縮工程は、不織布構造の電極構造を得るようにし、導電性ネットワークを機械的に堅固にすると共に、電気的活物質20が前記導電性ネットワークに強く束縛され、電池のエネルギー密度を向上させる。
【0030】
電気的活物質20は、電極構造の極性、及び一次電池または二次電池であるかによって適宜選択される。例えば、カソード用の電気的活物質は、リチウム、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、ストロンチウム、バナジウム、ランタン、セリウム、鉄、カドミウム、鉛及び/またはマンガンを含む二成分系以上の酸化物、リン酸塩、硫化物、フッ化物またはそれらの組み合わせから選択される。しかし、これは例示的であり、前記カソード用の電気的活物質は、他のカルコゲン化合物で形成されてもよい。望ましくは、カソード用の電気的活物質は、リチウム二次電池用に適しているコバルト、銅、ニッケル、マンガンのうち少なくとも二つ以上を含み、O,F,S,P及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも一つ以上の非金属元素を含む三成分系以上のリチウム化合物である。
【0031】
アノード用の電気的活物質は、例えば、低結晶性炭素または高結晶性炭素のような炭素系材料である。前記低結晶性炭素は、例えば、軟化炭素または硬化炭素である。前記高結晶性炭素は、例えば、天然黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解炭素、液晶ピッチ系炭素纎維、炭素微小球体、液晶ピッチ、石油または石炭系コークスのような高温焼成炭素である。
【0032】
しかし、前記に列挙された活物質の材料は例示的であり、本発明は、これらに制限されるものではない。前記アノード用の電気的活物質は、高容量のリチウムイオンの吸張及び放出能力を有するシリコン、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、鉄及びカドミウムのような単原子系、それらの金属間化合物、または酸化物系材料を含む。また、他の実施形態において、前記アノード用の電気的活物質は、NaS電池に適しているナトリウム、または他の酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物及びテルル化物のうち少なくともいずれか一つを含む。
【0033】
前述した電気的活物質は、0.1μmないし100μmのサイズを有する粒子である。望ましくは、電気的活物質20は、5μmないし15μmのサイズを有する。しかし、これは例示的であり、電池の要求特性によって適宜選択される。
【0034】
一部の実施形態においては、図2に示すように、電気的活物質20が、例えば、黒鉛粒子のような炭素系物質でない場合、電極構造200は、電気的活物質20と共に、導電性ネットワーク内にバインディングされる導電剤25をさらに含む。導電剤25は、電気的活物質との混合総量に対して、約4ないし15%の重量比で添加される。導電剤25は、例えば、カーボンブラック、超微細グラファイト粒子、アセチレンブラックのようなファインカーボン、ナノ金属粒子ペースト、またはITO(indium tin oxide)ペーストである。
【0035】
必要に応じて、電極構造100,200は、電気的活物質20及び導電剤25と共に、好適なバインダー(または、結合剤ともする、図示せず)をさらに含む。前記結合剤は、例えば、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF−co−HFP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフッ化エチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、及びエチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)のようなポリマー系材料である。必要に応じて、前記結合剤は、導電性を有する他のポリマー系材料、石油ピッチ、コールタールであってもよく、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0036】
前記導電性ネットワークにバインディングされた電気的活物質20は、後述するように、熱処理によって焼結体を形成し、この場合、電気的活物質20は、金属長纎維10にさらに強く結合され、それによって、電池のエネルギー密度はさらに向上する。
【0037】
金属長纎維10は、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン及び銅、またはそれらの合金のような金属を含む。例えば、カソード(正極)の場合、金属長纎維10は、アルミニウムまたはその合金であり、アノード(負極)の場合、金属長纎維10は、銅、ステンレス鋼、ニッケルまたはそれらの合金である。一つの電池において、カソードとアノードの両者を、前述した電極構造100,200で形成したり、カソードとアノードのうちいずれか一つの電極にのみ選択的に、前述した電極構造100,200を提供する。
【0038】
一般に、二次電池の場合、充放電サイクルの間、電気的活物質20の体積変化が生じる。例えば、Liイオン電池の場合、高容量のアノードを構成する電気的活物質は、リチウム化反応時に100%以上の体積膨脹を経る。したがって、電気化学的サイクルの間、充放電を経るアノードでは、その膨脹と収縮が繰り返して、アノードの割れをもたらす。前記割れによって、電気的活物質が集電体とそれ以上電気的接触を行わないことになることで、電池は、それ以上充放電されず、安定性問題をもたらす。しかし、本発明の実施形態によれば、金属長纎維10を含むアノードでは、電気的活物質20の体積変化によって、金属長纎維10が伸縮するので、割れが生じない。また、金属長纎維10と電気的活物質20とにより形成された気孔が、充放電による電気的活物質20の体積変化を緩衝することもできる。
【0039】
このような体積変化に対する緩衝性によって、本発明の実施形態によれば、石油コークカーボンまたは黒鉛を代替するための次世代の高効率のLiインターカレーション物質であるシリコン(Si)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)またはそれらの合金のような高容量の高い体積変化量を有する金属系、またはそれら金属間化合物を含む電気的活物質の使用が可能になる。
【0040】
最近、充放電時のアノードの体積変化による電極の割れに対応するために、体積変化と割れメカニズムに不十分に脆弱なナノスケール構造、例えば、ナノワイヤー、ナノチューブまたはナノロードのような電極構造が提案されているが、それらの構造は、本質的にサイズの小さい電池構造に応用するのに適しているだけであるので、結局、大きい体積を要する高容量電池に適用しがたいだけでなく、触媒反応など複雑な製造工程が要求される。また、ナノスケールの電極に、電気的活物質を塗布するために、真空蒸着工程のような困難な工程が伴われる。しかし、本発明の実施形態によれば、機械的及び電気的に金属のメリットを有し、かつ纎維のような特性を有する金属長纎維を用いることで、体積が比較的大きい高容量及び中大型の電池を提供できるだけでなく、後述するような積層工程または混合工程を通じて、低コストで電池を製造できるというメリットがある。
【0041】
また、前述したように、金属長纎維10は、機械的強度があるだけでなく、高い導電性を有し、かつ高い溶融点によって、熱的安定性を有するので、優秀な集電効果を有するだけでなく、電気的活物質20の焼結工程が可能であるので、これによるエネルギー密度のようなバッテリー特性が向上する。前述した本発明のメリットから、当業者は、自動車の始動、照明及び点火(starting, lighting and ignition: SLI)用電池、または電気自動車及びハイブリッド自動車のような駆動用電池、またはグリーンエネルギー保存のための固定型電池のような大容量、かつ高い充放電速度を要する電池の応用においてさらに効果的であることを理解できるであろう。
【0042】
図示していないが、一部の実施形態においては、金属長纎維10の表面上に、電気的活物質をプリコーティングする。このために、好適な電気的活物質のパウダー、導電剤及びバインダーの混合組成物を、好適な溶媒に分散させた後、その結果物を金属長纎維10上に塗布し、乾燥工程を通じて、前記溶媒を除去することで、前記電気的活物質がコーティングされた金属長纎維が提供される。電気的活物質がプリコーティングされた金属長纎維10を使用する場合、液状電解液の適用時、前記電解液による金属長纎維10の腐食が防止される。プリコーティングされる電気的活物質は、周囲の電気的活物質20と同一であるか、または化学的親和度を有する他の種類の活物質である。または、電解液の侵食を防止するために、プリコーティング層は、耐食性のある他の金属または金属酸化物コーティング体であってもよい。
【0043】
図3Aないし図3Dは、本発明の一実施形態による電極構造の製造方法を順次に示す図面である。
【0044】
図3Aを参照すれば、一つ以上の可塑性の金属長纎維10を含む第1長纎維層10Lが提供される。例えば、好適な支持平面上に、金属長纎維10をランダムに展開して、第1長纎維層10Lを形成する。第1長纎維層10Lの厚さは、金属長纎維10の単一層または複数層の厚さを有する。第1長纎維層10L内の金属長纎維10は、重ねて互いに物理的接触を行い、選択的には、好適な熱処理を通じて、化学的結合を行うことも可能である。前記熱処理は、例えば、100℃ないし1200℃で行われる。一部の実施形態において、電気的活物質が均一にプリコーティングされた金属長纎維10を使用して、第1長纎維層10Lを形成することもできる。
【0045】
図3Bを参照すれば、第1長纎維層10L上に、電気的活物質層20Lを提供する。電気的活物質層20Lは、第1長纎維層10L上に電気的活物質20をコーティングすることによって得られる。電気的活物質20のコーティングは、好適な溶媒を用いて、一定の粘度を有するペーストまたはスラリー、あるいは電気的活物質分散液を、第1長纎維層10L上に好適な厚さほど塗ったり、撒いたりすることによって行われる。
【0046】
一部の実施形態において、前記電気的活物質は、前述した導電剤及び/または結合剤をさらに含む。この場合、前記電気的活物質は、それらが混合したペーストまたはスラリーの形態に、第1長纎維層10L上に塗布される。前記ペーストまたはスラリーは、該活物質80ないし98重量%、結合剤1ないし10重量%、及び導電剤1ないし10重量%の範囲から適宜選択して、合計量が100重量%となるように形成される。
【0047】
図3Cを参照すれば、電気的活物質層20L上に、第2長纎維層10Lが提供される。第1長纎維層10Lと同様に、例えば、電気的活物質層20Lの表面上に、金属長纎維10をランダムに展開して、第2長纎維層10Lが提供される。第2長纎維層10Lの厚さは、金属長纎維10の単一層または複数層の厚さを有する。第2長纎維層10L内の金属長纎維10は、重ねて互いに物理的接触を行い、選択的には、好適な熱処理を通じて、化学的結合を行うことも可能である。
【0048】
一部の実施形態においては、第2長纎維層10Lを形成する前に、好適な電気的活物質がプリコーティングされた金属長纎維10を使用して、第2長纎維層10Lを形成することもできる。
【0049】
一部の実施形態においては、図3Aないし図3Cを参照して、前述した工程が繰り返して行われる。例えば、図3Dに示すように、複数の長纎維層10L,10L,10Lと、電気的活物質層20L,20Lとを交差して積層する。図3Dでは、三層の長纎維層10L,10L,10Lと、二層の電気的活物質層20L,20Lとが交差して積層されたことを示しているが、これは例示的であり、本発明は、これに制限されるものではない。例えば、図3Cに示すように、二層の長纎維層と、一層の電気的活物質層とが交差して積層されても、四層以上の長纎維層と、三層以上の電気的活物質層とが交差して積層されてもよい。
【0050】
前述したように、長纎維層と電気的活物質層とが積層された構造体300を形成した後、それらを、ロ−ルプレスのような加圧器を用いて圧着する工程を行う。図3Dに示すように、構造体300の表面を、矢印方向に加圧して圧着し、これにより、隣接する長纎維層、例えば、第1長纎維層10Lと第2長纎維層10L、第2長纎維層10Lと第3長纎維層10Lに属する長纎維が、他の層の長纎維と互いにもつれて、物理的接触を行うことで、導電性ネットワークを形成する。一部の実施形態においては、前記加圧工程の間、積層された構造体300を加熱することで、相異なる層に属する長纎維が互いに化学的結合を行うように誘導することもできる。
【0051】
このように、ある長纎維層内に属する金属長纎維10が、他の隣接する長繊維層に属する金属長纎維10と物理的接触及び/または化学的結合を行うことで、導電性ネットワークが形成され、電気的活物質20は、前記導電性ネットワークにバインディングされて、構造体300は、図1及び図2に示すように、電気的活物質がバインディングされた金属長纎維10の不織布構造100または200を有する。一部の実施形態において、このように製造された電極構造は、圧着されて、所定の厚さを有する板状構造を有する。また、必要に応じて、加熱、紫外線照射または自然乾燥のような適切な硬化工程を行う。
【0052】
選択的には、前記圧着工程後に、その結果物を100℃ないし1200℃範囲内で熱処理する。前記熱処理の間、導電性ネットワークを形成する金属長纎維10内で、電気的活物質20は焼結されて、さらに強く前記導電性ネットワークにバインディングされる。次いで、電極構造内の導電性ネットワーク間の気孔の間に、電解質液30(図1)を浸湿させて、電極を活性化させる。
【0053】
図3Aないし図3Dに示した実施形態と異なり、所定の長さにセグメント化した金属長纎維と、粒子状の電気的活物質とを混ぜて、それを混合して、電極組成物を生成する。電気的活物質は、ペーストまたはスラリーの形態に提供される。また、電極組成物内に、結合剤及び/または導電剤をさらに添加してもよい。次いで、自然乾燥、熱硬化または紫外線照射のような多様な方法により、電極組成物を硬化させることで、金属長纎維によりランダムに形成された導電性ネットワーク、及びこれにバインディングされた電極構造100,200を得ることもできる。必要に応じて、電気的活物質の焼結のために熱処理を行う。次いで、電極構造100,200の一面に、外部電極端子に電気的に連結するための導電タップまたはリードが電極構造100,200に直接結合される。
【0054】
図4A及び図4Bは、本発明の他の実施形態による電極構造400A,400Bを示す断面図である。
【0055】
図4A及び図4Bを参照すれば、前述した製造方法を通じて得られた不織布構造の電極構造100または200の一面に、集電層CLを付加することで、他の実施形態による電極構造400A,400Bが得られる。不織布構造の電極構造100,200内の金属長纎維10(図1)は、集電体として機能できるが、例えば、電池組み立て工程で、電極タップまたはリードとの接触抵抗を減少させるために、別途の集電層CLが付設される。
【0056】
集電層CLは、図4Aに示すように、導電性接着層AL、例えば、金属ペーストを用いて、不織布構造の電極構造100に接着される。または、集電層CLは、図4Bに示すように、不織布構造の電極構造100と集電層CLの化学結合、または固溶による反応層またはポンディング層BLにより、電極構造200に結合されもする。集電層CLは、ステンレス鋼、アルミニウム及び銅のような薄い金属箔である。
【0057】
図5は、本発明の一実施形態による電極構造を用いた電池1000を示す分解図である。
【0058】
図5を参照すれば、電池1000は、一般的な円筒形電池を例示する。電池の反応面積を増大させるために、前述したカソード及びアノードの各電極構造100a,100bは、交差して互いに巻く構造を有する。電極構造100a,100bの一端部には、導電タップ100Tがそれぞれ結合される。相異なる極性の電極構造100A,100b間の絶縁のために、電極構造100a,100bの間に、分離膜500が配置される。
【0059】
分離膜500は、例えば、ポリマー系微細多孔膜、織布、不織布、セラミック、真性固体高分子電解質膜、ゲル固体高分子電解質膜またはそれらの組み合わせである。前記真性固体高分子電解質膜は、例えば、直鎖ポリマー材料または仮橋ポリマー材料を含む。前記ゲル高分子電解質膜は、例えば、塩を含む可塑剤含有ポリマー、フィラー含有ポリマー、または純粋なポリマーのうちいずれか一つまたはそれらの組み合わせである。前記固体電解質層は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブタジエン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ナイロン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンの共重合体、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリビニルアセテート、及びポリビニルアルコールのうちいずれか一つまたはそれらの組み合わせからなる高分子マトリックス、添加剤及び電解液を含む。
【0060】
前述した分離膜500に関して列挙した材料は例示的であり、分離膜500として、形状の変化が容易であり、機械的強度に優れるので、電極構造体100a,100bが変形されるとしても、破れたり、裂けることがない任意の好適な電子絶縁性を有し、かつ優秀なイオン伝導性を有する材料が選択される。
【0061】
分離膜500は、単層膜または多層膜であり、前記多層膜は、同一単層膜の積層体であっても、他の材料で形成された単層膜の積層体であってもよい。例えば、前記積層体は、ポリオレフィンのような高分子電解質膜の表面に、セラミックコーティング膜を含む構造を有する。分離膜500の厚さは、耐久性、ショットダウン機能及び電池の安全性を考慮すれば、10μmないし300μmであり、望ましくは、10μmないし40μmであり、より望ましくは、10μmないし25μmである。
【0062】
電池1000は、電極構造100a,100bにそれぞれ結合された導電タップ100Tを通じて、外部電極端子600,700に電気的に連結される。ハウジング900内では、水酸化カリウム(KOH)、臭化カリウム(KBr)、塩化カリウム(KCL)、塩化亜鉛(ZnCl)及び硫酸(HSO)のような塩を含む好適な水系電解液が、電極構造100a,100b及び/または分離膜500に吸湿されて、電池1000が完成される。図示していないが、電池1000の使用中の安定性及び/または電力供給特性を制御するための好適な電池運用システムがさらに結合される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
前述した電極構造で形成された電極組立体は、形状の変化が容易であり、電池の容量調節のために、その体積が多様に選択される。また、纎維状の電極構造が有する成形の容易性のため、積み、曲げ、巻きのような方法により三次元的に変形されて、前述した円筒形電池でない他の多様な体積と形状を有する電池が提供される。
【0064】
本発明の実施形態による電池は、服、かばんなどに付着されたり、服及びかばんの布地と一体となる小型電池として応用されても、高容量化して自動車の動力源または電力保存のような中大型電池として応用されてもよい。
【0065】
以上で説明した本発明が、前述した実施形態及び添付された図面に限定されず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で、色々な置換、変形及び変更が可能であるということは、当業者にとって明らかである。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図5