(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721850
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/19 20060101AFI20150430BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20150430BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20150430BHJP
A61M 5/28 20060101ALI20150430BHJP
A61M 5/32 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
A61M5/19
A61M5/315 550N
A61M5/24 530
A61M5/28 520
A61M5/32 510K
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-539797(P2013-539797)
(86)(22)【出願日】2011年11月18日
(65)【公表番号】特表2013-543771(P2013-543771A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】SE2011051392
(87)【国際公開番号】WO2012067584
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2013年7月16日
(31)【優先権主張番号】1051213-5
(32)【優先日】2010年11月18日
(33)【優先権主張国】SE
(31)【優先権主張番号】61/415,082
(32)【優先日】2010年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503211493
【氏名又は名称】エス・ホー・エル・グループ・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】SHL GROUP AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルムクビスト,アンデシュ
【審査官】
田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】
特表平08−509153(JP,A)
【文献】
特表2005−519647(JP,A)
【文献】
特表2010−523181(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/057604(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/19
A61M 5/24
A61M 5/28
A61M 5/315
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置であって、
− ハウジング(10)と、マルチチャンバ薬剤容器を収容する薬剤容器ホルダ(12)とを備えた本体を含み、前記ハウジング(10)および前記薬剤容器ホルダ(12)は、相互作用するよう互いに接続され、互いに相対的に移動可能であり、薬剤容器ホルダは、送達部材(22)を取付けるための取付け手段(20)を含み、前記薬剤送達装置はさらに、
− 本体に相互作用するように接続されて、ハウジング内の薬剤容器ホルダを駆動して、調製を達成するための混合ガード機構を含み、
前記混合ガード機構は、
− 薬剤容器ホルダ(12)に動作可能に接続されたガード部材(34)と、
− 前記ガード部材(34)に作用するよう配置された力部材(52)と、
− 前記ガード部材(34)と前記薬剤容器ホルダ(12)との間に配置された第1のガード部材ロック手段(24,42)とを含み、前記第1のガード部材ロック手段(24,42)は、ガード部材(34)が力部材(52)の力に対抗して薬剤容器ホルダ(12)にロックされるように、前記薬剤容器ホルダ(12)に対して配置された第2の係合部材(24)に動作可能に作用する第1の係合部材(42)を含み、これにより、調製が達成されると、薬剤容器ホルダ(12)およびガード部材(34)は、送達部材(22)の取付けを可能にするために前記取付け手段(20)が前記ガード部材(34)の近位端から突出る予混合位置から、前記薬剤容器ホルダ(12)が前記ハウジング(10)に対して遠位側にずらされた混合位置へと、前記ハウジング(10)に対して移動可能となり、前記混合位置では、前記ガード部材ロック手段(24,42)が前記ハウジング(10)の近位領域(58)によって起動および解放され、これにより、前記ガード部材(34)が、送達部材(22)をカバーするために前記力部材(52)によって近位方向に推し進められ、
前記薬剤容器ホルダ(12)および前記ガード部材(34)の両方に相互作用するように接続された第2のガード部材ロック手段(28,30,44)をさらに含み、前記第2のガード部材ロック手段(28,30,44)は、前記送達部材(22)の近位部分が前記ガード部材(34)の近位端から突出るように前記力部材(52)を圧縮しつつ前記ガード部材(34)を遠位側にずらすことが可能となる第1のロック解除された状態に位置するよう、かつ、前記ガード部材が前記力部材(52)によって近位側にずらされて送達部材(22)をカバーした後に前記ガード部材(34)がロックされる第2のロックされた状態に位置するように配置され、
前記第2のガード部材ロック手段は、前記薬剤容器ホルダに対して配置されたフック(30)付きアーム(28)と、遠位側に向けられた端面が前記ガード部材(34)に対して配置されている少なくとも1つのリブ(44)とを含み、これにより、前記ガード部材(34)が近位側へ動かされると、前記少なくとも1つのフック(30)は前記少なくとも1つのリブ(44)の端面(50)を通り過ぎ、これにより、後に前記ガード部材が遠位側にずらされるのを防ぎ、
前記リブ(44)は切欠き(48)を有し、前記送達部材(22)が前記ガード部材(34)の近位端から最も突き出た状態において、前記アーム(28)の前記フック(30)が前記切欠き(48)内に位置決めされ、前記フック(30)が前記切欠き(48)のうちの遠位側に向けられた面を把持する、薬剤送達装置。
【請求項2】
前記第1の係合部材は弾力的に移動可能なフック状アーム(42)を含み、前記第2の係合部材はレッジ(24)を含み、前記ハウジング(10)の近位端面(58)は、前記フック状アーム(42)に接触すると、前記レッジ(24)との係合を解除するように前記フック状アームを移動させるよう配置される、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記混合ガード機構は、前記薬剤容器ホルダ(12)を前記ハウジング(10)内でずらすことを可能にするために、前記ハウジングと前記薬剤容器ホルダとを相互作用するように接続する第1の接続手段(14,16)を含む、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記第1の接続手段は、前記ハウジングおよび前記薬剤容器ホルダに対して協働するねじ山(14,16)を含む、請求項3に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記薬剤容器ホルダ(12)に回動可能に取り付けられたガイド部材(32)をさらに備え、該ガイド部材(32)は、前記アーム(28)を押すように配置されており、これにより、前記ガイド部材(32)および前記アーム(28)は、前記薬剤送達装置の長手方向に対して傾斜方向を向く、請求項1〜4のいずれかに記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記ガイド部材(32)は、前記切欠き(48)内に位置するまで前記リブ(44)に沿って移動し、前記ガイド部材(32)の近位端面が前記切欠き(48)の遠位側に設けられた面に接触することにより、前記ガイド部材(32)が前記リブ(44)の他方側に案内され、これによって、前記アーム(28)を前記薬剤送達装置の長手方向に平行な方向に屈曲させる、請求項5に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記ハウジング内に配置され、前記マルチチャンバ薬剤容器内に位置決めされたストッパを駆動するよう適合された駆動手段をさらに含む、請求項1から6のいずれかに記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記駆動手段は、プランジャロッドと、前記プランジャロッドに動作可能に作用して前記プランジャロッドを近位方向に推し進めるための力部材とを含む、請求項7に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
予め張力がかけられた状態で前記駆動手段を保持するための保持手段をさらに含む、請求項8に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
予め張力がかけられた状態から駆動手段を解放するために前記保持手段に作用することのできる起動手段をさらに含む、請求項9に記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記装置は注射装置である、請求項1から10のいずれかに記載の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、薬剤送達装置に関し、特に、患者への薬剤送達前に薬剤の混合を必要とするマルチチャンバ薬剤容器を用いた薬剤送達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
注射器などの薬剤送達装置においてマルチチャンバ薬剤容器を用いることがますます一般的になってきている。この理由として、何らかの液体中に溶解した薬剤と比べて、はるかに長期間にわたって薬剤を劣化させることなく貯蔵できる点が挙げられる。
【0003】
このように、薬剤および液体は薬剤容器内で別々の区画内に保存されており、これらの区画を互いに連通させることができるように隔離壁またはストッパを移動させることによって、薬剤および液体が使用の直前に混合される。
【0004】
しかしながら、マルチチャンバ薬剤容器は、1投与分の薬剤を注入することができるようになるまでに、より多くの処理ステップを必要とする。なぜなら、混合を開始するために、注射器のプランジャロッドによって薬剤容器のストッパを移動させなければならないからである。
【0005】
多くの薬剤送達装置および特に注射器の別の特徴として、薬剤送達部材、特に注射針、の薬剤容器への取付けと、さらに、不用意に針が突刺さるのを如何にして回避するかとが挙げられる。文献WO2010/000559は、マルチチャンバ薬剤容器を用いた薬剤送達装置を開示する。ここでは、近位側のハウジング部分に位置する薬剤容器ホルダを遠位側のハウジング部分内へと回転させ、これにより、薬剤容器のストッパをプランジャロッドに逆らって移動させることによって混合が行われる。
【0006】
初期位置においては、薬剤容器の近位端は近位側のハウジング部分を越えて突出しており、この場合、近位側のハウジング部分は、薬剤送達装置を薬剤容器ホルダに取付けることができるように針シールドとしても機能する。混合が行われると、薬剤送達部材は近位側のハウジング/針シールドに引込まれる。針シールドは、ここでは、装置を作動させるために用いられる。針入が実行されると、針シールドが遠位方向に押込まれ、これにより、自動注入シーケンスが開始される。こうして、針シールド組立品は装置のほぼ遠位端にまで延びて、注入を開始できるようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、いくつかの装置の場合、さほど多くの構成要素および機能を備えることが必要ではないかまたは所望されないことがある。というのも、多くの構成要素および機能を備えることにより、装置がより複雑で高価なものになってしまう傾向があるからである。したがって、薬剤送達装置には開発の余地がある。
【0008】
発明の簡単な説明
本発明の目的は、マルチチャンバ薬剤容器を単純かつ直観的に、但し安全な方法で扱うことを可能にする薬剤送達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主な局面に従うと、特許請求の範囲の独立項の特徴に従った薬剤送達装置を特徴とする。この発明の好ましい実施例は、特許請求の範囲の従属項の主題を形成する。
【0010】
本発明の主な局面に従うと、ハウジングと、マルチチャンバ薬剤容器を収容する薬剤容器ホルダとを備えた本体を含む薬剤送達装置を特徴とする。上記ハウジングおよび上記薬剤容器ホルダは、相互作用するように互いに接続され、互いに相対的に移動可能である。薬剤容器ホルダは、送達部材を取付けるための取付け手段を含む。薬剤送達装置はさらに、本体に相互作用するように接続されて、ハウジング内の薬剤容器ホルダを駆動し、これにより調製を達成するための混合ガード機構を備える。混合ガード機構は、薬剤容器ホルダに動作可能に接続されたガード部材と、上記ガード部材に作用するよう配置された力部材と、上記ガード部材が力部材の力に対抗して薬剤容器ホルダにロックされるように、上記ガード部材と上記薬剤容器ホルダとの間に配置されたガード部材ロック手段とを含む。これにより、調製が達成されると、薬剤容器ホルダおよびガード部材は、送達部材の取付けを可能にするために上記取付け手段が上記ガード部材の近位端から突出る予混合位置から、上記薬剤容器ホルダが上記ハウジングに対して遠位側にずらされた混合位置へと、上記ハウジングに対して移動可能となり、この混合位置では、上記ガード部材ロック手段が起動され、これにより、上記ガード部材が、送達部材をカバーするために上記力部材によって近位方向に推し進められる。
【0011】
本発明の別の局面に従うと、上記ガード部材ロック手段は、上記薬剤容器ホルダに対して配置された第2の係合部材に動作可能に作用する第1の係合部材を含み、これら第1および第2の係合部材は、上記ハウジングの近位領域によって起動および解放される。
【0012】
本発明のさらなる局面に従うと、上記第1の係合部材は弾力的に移動可能なフック状アームを含み、上記第2の係合部材はレッジを含み、上記ハウジングの近位端面は、上記フック状アームに接触すると、上記レッジとの係合を解除するように上記フック状アームを移動させるよう配置される。
【0013】
本発明のさらに別の局面に従うと、上記混合ガード機構は、薬剤容器ホルダをハウジング内でずらすことを可能にするために上記ハウジングと上記薬剤容器ホルダとを相互作用するように接続する第1の接続手段を含む。
【0014】
本発明のさらなる局面に従うと、上記第1の接続手段は、上記ハウジングおよび上記薬剤容器
ホルダに対して協働するねじ山を含む。
【0015】
本発明の別の局面に従うと、薬剤容器ホルダおよびガード部材の両方に相互作用するように接続された第2のガード部材ロック手段をさらに含む。第2のガード部材ロック手段は、送達部材の近位部分がガード部材の近位端から突出るように上記力部材を圧縮しつつガード部材を遠位側にずらすことが可能となる第1のロック解除された状態に位置するよう、かつ、ガード部材が上記力部材によって近位側にずらされて送達部材をカバーした後に当該ガード部材がロックされる第2のロックされた状態に位置するよう配置される。
【0016】
本発明のさらに別の局面に従うと、上記第2のガード部材ロック手段は、上記薬剤容器ホルダに対して配置されたフック付きアームと、遠位側に向けられた端面が上記ガード部材に対して配置されている少なくとも1つのリブとを含む。これにより、上記ガード部材が近位側へ動かされると、上記少なくとも1つのフックは上記少なくとも1つのリブの端面を通り過ぎ、これにより、後に上記ガード部材が遠位側にずらされるのを防ぐ。
【0017】
本発明のさらなる局面に従うと、上記ハウジング内に配置され、上記マルチチャンバ容器内に位置決めされたストッパを駆動するよう適合された駆動手段を含む。
【0018】
本発明のさらなる局面に従うと、上記駆動手段は、プランジャロッドと、上記プランジャロッドに動作可能に作用してこのプランジャロッドを近位方向に推し進めるための力部材とを含む。
【0019】
本発明の別の局面に従うと、予め張力がかけられた状態で上記駆動手段を保持するための保持手段をさらに含む。
【0020】
本発明のさらに別の局面に従うと、予め張力がかけられた状態から駆動手段を解放するために上記保持手段に作用することのできる起動手段をさらに含む。
【0021】
本発明のさらなる局面に従うと、装置は注射装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明にはいくつかの利点がある。ガード部材と薬剤容器ホルダとの間でロック機能を用いることにより、全混合シーケンス中に薬剤送達部材全体を視認できるようにする。これにより、使用者は、混合およびそれに付随する事前準備が実行されていることを確実に確認することができる。また、混合シーケンス中のいつの時点においても薬剤送達部材を取付けることができる。
【0023】
さらに、混合ガード機構により、装置が投与送達部位に押当てられたときに、管状のガード部材を遠位方向に押込むことが可能となる。投与送達完了後に装置を投与送達部位から取外すとき、管状のガード部材を上記のように移動させることにより、混合ガード機構の構成要素を移動させ、これにより、管状のガード部材をロックする準備が整う。管状のガード部材は、ばね力によって近位方向に押込まれ、これにより、ロックされた状態で薬剤送達部材を囲む。これにより、薬剤送達部材に対する不正な操作変更を防止することができる。
【0024】
本発明のこれらおよび他の局面ならびにその利点は、本発明の以下の詳細な説明および添付の図面から明らかになるだろう。
【0025】
図面の簡単な説明
本発明の以下の詳細な説明において、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】初期位置にある本発明の実施例を示す側面図である。
【
図3】初期位置にあるガード部材を示す
図1の装置の詳細図である。
【
図4】延ばされた近位位置にあるガード部材を示す
図1の装置の詳細図である。
【
図5】薬剤送達中に引込められた位置にあるガード部材を示す
図1の装置の詳細図である。
【
図6】薬剤送達後の中間位置にあるガード部材を示す
図1の装置の詳細図である。
【
図7】延ばされてロックされた位置にあるガード部材を示す
図1の装置の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本願においては、「遠位部分/端部(distal part/end)」という語が用いられる場合、これは、薬剤送達部位から最も遠くに離れた位置にある送達装置の部分/端部またはその部材の部分/端部を指す。これに対応して、「近位部分/端部(proximal part/end)」という語が用いられる場合、これは、薬剤送達部位に最も近接した位置にある送達装置の部分/端部またはその部材の部分/端部を指す。
【0028】
図1〜
図7はこの発明の実施例を示す。図示される装置は、遠位側のハウジング部分10および近位側のハウジング部分12を有するハウジングを含む。2つのハウジング部分はねじ山を介して互いに接続される。ここで、遠位側のハウジング部分10の内面上にはねじ山14(
図2)が配置され、近位側のハウジング部分12の外面上には対応するねじ山16が設けられて、第1の接続手段を形成する。近位側のハウジング部分12はさらに、上述のとおり、マルチチャンバ薬剤容器(図示せず)を収容するよう設計された内部区画18を有する。これにより、近位側のハウジング部分12は、以後、薬剤容器ホルダ12と称することとする。この薬剤容器ホルダ12にはさらに、図示のとおり、注射針などの薬剤送達部材22を取付けるための取付け手段が配置された近位側の首部分20が配置される。しかしながら、他のタイプの送達部材、たとえばマウスピース、ノーズピース、ノズル、ネブライザなどが採用可能であることが理解されるべきである。
【0029】
さらに、薬剤容器ホルダ12には第1の円周レッジ24および第2の円周レッジ26が配置される。第1のレッジ24は第2のレッジ26よりも遠位側に位置する。近位側のハウジング部分12の近位端には、遠位側に向けられた少なくとも1つのアーム28(
図3)がさらに配置される。このアーム28は、装置の長手方向に対して横断する方向に可撓性を有するよう配置される。アーム28の遠位端にはレッジまたはフック30が配置される。さらに、アーム28の隣りには、薬剤容器ホルダ12に回動可能に取付けられたガイド部材32が設けられる。
【0030】
薬剤容器ホルダ12に対して摺動可能である薬剤送達ガード部材34が、近位側のハウジング部分に対してさらに配置される。ガード部材34は概して管状に設計され、近位端壁35(
図4)を備える。この端壁35はその近位端に開口部36を備えており、開口部36の直径は、薬剤送達部材22の取付け部材37の直径よりもいくらか大きい。ガード部材34の遠位端の円周端面には、内側に向けられた円周レッジ38(
図3)が配置される。さらに、ガード部材34の遠位端領域にはいくつかのスリット40が設けられ、これにより、いくつかのアーム42が形成される。さらに、レッジ38は、薬剤容器ホルダ12に面する面43を備える。これらの面43は、装置の長手方向に対していくらか傾斜している。ガード部材の内面には、ガードの長手方向に延在する少なくとも1つのガイドリブ44(
図3)が取付けられる。ガイドリブ44は、近位側の円周レッジ26におけるスリット46(
図2)に延びている。ガイドリブ44には、その遠位端面50から一定の距離をおいて切欠48がさらに設けられる。切欠48の面は、装置の長手方向に対して傾斜している。力部材は、実施例においてはばね52(
図4)として示されるが、薬剤容器ホルダ12の近位端における円周レッジ54と薬剤送達ガード部材の近位端壁35との間に配置される。
【0031】
装置は以下のように機能するよう企図される。薬剤送達装置が使用者に引き渡される際、ガード部材は
図1に図示のとおり引込められた位置にある。これにより、薬剤容器ホルダ12の首部分20がガード部材34の近位側の開口部36から突出すこととなる。ガード部材34は、近位側のハウジング部分12の円周レッジ24のうち遠位側に向けられた側面に接するアーム42のレッジ38によって、この引込められた位置で保持される。まず、使用者は、薬剤容器ホルダ12の首部分20上に薬剤送達部材22を取付ける。これは、ガード部材34を引込ませることによって首部分20が露出されるために容易となる。ガイド部材32は、アーム28を押すように配置および設計されており、これにより、これらガイド部材32およびアーム28は、
図3に図示のとおり、装置の長手方向に対して傾斜方向を有することとなる。
【0032】
使用者は、次いで、薬剤送達の前に薬剤の混合または調製を実行する。使用者は、次いで、ハウジング部分10および12を互いに相対的に回転させ、これら2つの部分間のネジ接続部14,16により、薬剤容器ホルダ12を遠位側のハウジング部分10内に移動させる。遠位側のハウジング部分10内に配置されたプランジャロッド(図示せず)が、次いで、薬剤容器内の遠位側のストッパ(図示せず)に作用し、これにより、遠位側のストッパを移動させて、それ自体が公知の態様で薬剤の混合を行う。2つのハウジング部分間同士での混合動作の終わりに、遠位側のハウジング部分10のうち近位側に向けられた端面58(
図2および
図4)を移動させて、ガード部材34のうち遠位側に向けられたアーム42に接触させる。これにより、アーム42のレッジは、遠位側のハウジング部分の端面58が作用する傾斜面43のせいで、径方向外側に押される。
【0033】
アーム42が径方向に移動することにより、これらアーム42は遠位側のレッジ24から離れていき、これにより、ガード部材34は、ばね52の力により近位方向に自由に移動できるようになる。薬剤送達部材はこのときガード部材によってカバーされる。アーム42のレッジ38が薬剤容器ホルダ12の第2の円周レッジ26(
図4)に接触すると、ガード部材34の動きが停止する。
【0034】
次のステップは投与送達を実行するステップである。使用者は、ここで、ガード部材34を備えた装置の近位端を薬剤送達部位に押当てる。これにより、ガード部材34は、ばね52の力に対抗して遠位方向に押込まれ、これにより、薬剤送達部材22が、ガード部材34の開口部36(
図5)を通じて露出される。ガード部材34が移動することにより、ガイド部材32は、切欠48において適所に位置するまでリブ44に沿って移動する。これにより、ガイド部材32の近位端面が切欠48のうち遠位側に向けられた面に接触し、これにより、ガイド部材がリブ44の他方側に案内される。これにより、さらに、装置の長手方向に対して概して平行な方向にアームを屈曲させる。
【0035】
ガード部材34が遠位方向に移動している間、アーム28およびそのフック30は、フック30が切欠48に位置決めされ、これによりフック30が切欠のうち遠位側に向けられた面を把持するまで、リブ44に沿って移動する。これにより、ガード部材34が遠位方向にさらに移動するのが阻止され、こうして移動を阻止することにより、
図5に図示のとおり薬剤送達部材が注射針である場合、装置の最大の針入深さdが構成される。
【0036】
この位置においては、薬剤容器から薬剤送達部材を通じて1投与分の薬剤を排出するために、プランジャロッドを近位方向に押すことによって薬剤送達が開始される。この開始動作は、完全に手動であってもよく、すなわち使用者によって操作されてもよく、または自動的になされてもよい。この場合、ばねなどの駆動部材が、プランジャロッドに近位方向への力を加える。
【0037】
投与送達ステップが実行された場合、装置は薬剤送達部位から取外される。これにより、ばね52の力のせいでガード部材34が再び近位方向に移動する。アーム28およびそのフック30はまた、ガード部材34のレッジ38が移動して近位側の円周レッジ26に接触し、これにより移動が停止するまで、リブ44に沿って摺動する。この位置においては、アーム28のフック30が、リブのうち遠位側に向けられた端面50を通り過ぎ、これにより、ガード部材34が遠位方向に押込まれないようロックされる(
図7)。薬剤送達部材22は、このとき、ガード部材34内に安全にカバーされ、これにより、薬剤送達部材22が注射針である場合に針が偶発的に突刺さるのを防止する。装置はここで廃棄されてもよい。
【0038】
上に記載され図面に示される実施例は、単に本発明の非限定的な例としてみなされるべきであり、特許請求の範囲内で多くの態様で変更され得ることが理解されるべきである。