(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721864
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】ろ過膜用ヘッダー及びこれを含むろ過膜モジュール
(51)【国際特許分類】
B01D 63/00 20060101AFI20150430BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
B01D63/00 500
B01D63/02
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-551928(P2013-551928)
(86)(22)【出願日】2012年12月17日
(65)【公表番号】特表2014-503357(P2014-503357A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】KR2012010994
(87)【国際公開番号】WO2013100461
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2013年7月9日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0143518
(32)【優先日】2011年12月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】314003797
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ヒ−ワン
【審査官】
目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−142583(JP,A)
【文献】
再公表特許第97/010893(JP,A1)
【文献】
実開平05−074627(JP,U)
【文献】
特開2002−011331(JP,A)
【文献】
特開平07−148421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D61/00−71/82
C02F1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有するケース;及び
前記ケースの内部空間をろ過膜の挿入のための第1の空間及び前記ろ過膜の固定のための第2の空間に分割し、前記ケースと一体に形成されたパーティション;を含み、
前記パーティションには貫通ホールが形成されており、
前記第1及び第2の空間は、前記パーティションの貫通ホールを介して互いに流体連通することを特徴とするろ過膜用ヘッダー。
【請求項2】
前記第2の空間は、前記ケースの側壁の少なくとも一部と前記パーティションとの間に存在することを特徴とする、請求項1に記載のろ過膜用ヘッダー。
【請求項3】
前記パーティションの高さが前記側壁の高さより小さいことを特徴とする、請求項2に記載のろ過膜用ヘッダー。
【請求項4】
前記ケースの内側面に多数の溝が形成されており、
前記各溝は、前記ケースの外側面に行くほど大きくなる勾配形状を有することを特徴とする、請求項1に記載のろ過膜用ヘッダー。
【請求項5】
上部に開口を有するケースと、前記ケースの内部空間をろ過膜の挿入のための第1の空間及びろ過膜の固定のための第2の空間に分割し、前記ケースと一体に形成されたパーティションと、を含むヘッダー;
前記ケースと共に前記第1の空間内に集水空間を形成する固定層;及び
前記固定層内にポッティングされており、開放端を通して前記集水空間と流体連通するろ過膜;を含み、
前記パーティションには貫通ホールが形成されており、
前記固定層は、前記第1の空間の少なくとも一部と前記第2の空間にそれぞれ存在し、前記パーティションの貫通ホール内にも存在することを特徴とするろ過膜モジュール。
【請求項6】
前記第2の空間は、前記ケースの側壁の少なくとも一部と前記パーティションとの間に存在することを特徴とする、請求項5に記載のろ過膜モジュール。
【請求項7】
前記パーティションの高さが前記側壁の高さより小さく、
前記固定層の一部が前記パーティションの直ぐ上にも存在することを特徴とする、請求項6に記載のろ過膜モジュール。
【請求項8】
前記ケースの内側面に多数の溝が形成されており、
前記各溝は、前記ケースの外側面に行くほど大きくなる勾配形状を有し、
前記固定層の一部が前記各溝に挿入されていることを特徴とする、請求項5に記載のろ過膜モジュール。
【請求項9】
前記固定層は、
前記ケースと共に前記第1の空間内に集水空間を形成する第1のサブ―固定層;及び
前記第1のサブ―固定層上の第2のサブ―固定層;を含み、
前記第2のサブ―固定層は、前記第1の空間の少なくとも一部と前記第2の空間にそれぞれ存在し、前記パーティションの貫通ホール内にも存在することを特徴とする、請求項5に記載のろ過膜モジュール。
【請求項10】
前記第1及び第2のサブ―固定層は同一の物質で形成されることを特徴とする、請求項9に記載のろ過膜モジュール。
【請求項11】
前記第2のサブ―固定層は、処理すべき原水と直接接触するポッティング面を有し、
前記ろ過膜モジュールは、前記第2のサブ―固定層のポッティング面と前記ろ過膜が直接接触することを防止するために前記ポッティング面と前記ろ過膜との間に介在する保護層をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載のろ過膜モジュール。
【請求項12】
前記保護層は、前記第2のサブ―固定層より低い硬度を有することを特徴とする、請求項11に記載のろ過膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過膜用ヘッダー及びこれを含むろ過膜モジュールに関し、より具体的には、ろ過膜をろ過膜用ヘッダーに固定させる固定層が前記ろ過膜用ヘッダーから分離されることを防止できるろ過膜用ヘッダー及びこれを含むろ過膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
水処理のための分離方法としては、加熱又は相変化方法、ろ過膜方法などがある。ろ過膜方法は、細孔のサイズに応じて所望の水質を安定的に得られるので、工程の信頼度を高めることができる。また、ろ過膜を用いると、高温での加熱などの操作が必要でないので、微生物などを使用する分離工程にろ過膜が使用される場合、微生物が熱によって影響を受けることを防止することもできる。
【0003】
ろ過膜を用いた分離方法のうち一つとしては、中空糸膜が束状に存在する中空糸膜モジュールを用いる方法がある。伝統的に、中空糸膜モジュールは、無菌水、飲用水、超純水の製造などの精密ろ過分野に広く使用されてきたが、最近は、下/廃水処理、浄化槽での固液分離、産業廃水での浮遊物質(SS:Suspended Solid)除去、河川水のろ過、工業用水のろ過、及びプール水のろ過などにその応用範囲が拡大されている。
【0004】
一般に、中空糸膜を用いたろ過装置は、所定の長さを有する中空糸膜束を含み、その運転方式に従って加圧式と浸漬式に分類される。
【0005】
加圧式ろ過装置の場合、処理すべき流体に圧力を加えることによって、不純物又はスラッジなどの固形成分を除いた流体のみが中空糸膜の表面を通して中空に選択的に透過されるようにする。加圧式ろ過装置は、流体循環のための別途の設備を必要とするが、単位時間に得られる透過水の量が浸漬式ろ過装置に比べて相対的に多いという長所を有する。
【0006】
その一方、浸漬式ろ過装置の場合、処理すべき流体が貯蔵された槽に中空糸膜モジュールを直接浸漬させ、中空糸膜の内部に陰圧を加えることによって、不純物又はスラッジなどの固形成分を除いた流体のみが中空糸膜の表面を通して中空に選択的に透過されるようにする。浸漬式ろ過装置は、単位時間に得られる透過水の量が浸漬式ろ過装置に比べて相対的に少ないが、流体循環のための設備を必要としないので、施設費や運転費の節減をもたらし得るという長所を有する。
【0007】
加圧式及び浸漬式ろ過装置は、両方とも、中空糸膜を透過して中空に流入した透過水(filtrate)を中空糸膜の両端を通して集水する両端集水方式(double―ends collecting)、及び透過水を中空糸膜の一側末端を通してのみ集水する単端集水方式(single―end collecting)に分類することができる。
【0008】
加圧式及び浸漬式ろ過装置は、両方とも、中空糸膜を透過して中空に流入した透過水を収集する集水空間と、処理される原水をこの集水空間と空間的に分離するための手段とを必要とする。処理される原水と集水空間を空間的に分離する手段は、中空糸膜束をヘッダー内に固定させる機能も行うので、固定層とも称される。この固定層には、中空糸膜束がポッティングされている。
【0009】
一方、ろ過作業が進行されながら、処理すべき原水内に存在する不純物がろ過膜の表面にくっついてろ過膜を汚染させるファウリング(fouling)現象が発生する。このファウリング現象は、ろ過膜のろ過効率を低下させる。したがって、ろ過作業中にろ過膜の洗浄を行う必要がある。一般に、ろ過作業中にろ過膜の洗浄のために散気(aeration)洗浄が実施される。散気洗浄によると、ろ過膜モジュールの下部に位置した散気管から強く噴出される各気泡がろ過膜とぶつかることによって、その表面に付着した不純物が除去される。
【0010】
このような散気洗浄によってろ過膜が揺動しながら、前記ろ過膜がポッティングされている固定層とヘッダーとの間の接着力が弱化され、結局、ヘッダーから前記固定層が分離されるという結果をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、前記のような関連技術の制限及び短所に起因した各問題を解決できるろ過膜用ヘッダー及びこれを含むろ過膜モジュールに関する。
【0012】
本発明の一観点は、ろ過膜をろ過膜用ヘッダーに固定させる固定層が前記ろ過膜用ヘッダーから分離されることを防止できるろ過膜用ヘッダーを提供することにある。
【0013】
本発明の他の観点は、ろ過膜をろ過膜用ヘッダーに固定させる固定層が前記ろ過膜用ヘッダーから分離されることを防止できるろ過膜モジュールを提供することにある。
【0014】
上述した本発明の各観点の他にも、本発明の他の特徴及び利点を以下で説明するが、このような説明は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解され得るだろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記のような本発明の一観点によると、上部に開口を有するケース;及び前記ケースの内部空間をろ過膜の挿入のための第1の空間及び前記ろ過膜の固定のための第2の空間に分割するパーティション;を含み、前記パーティションには貫通ホールが形成されており、前記第1及び第2の空間は、前記パーティションの貫通ホールを介して互いに流体連通することを特徴とするろ過膜用ヘッダーが提供される。
【0016】
本発明の他の観点によると、上部に開口を有するケースと、前記ケースの内部空間をろ過膜の挿入のための第1の空間及びろ過膜の固定のための第2の空間に分割するパーティションとを含むヘッダー;前記ケースと共に、前記第1の空間内に集水空間を形成する固定層;及び前記固定層内にポッティングされており、開放端を通して前記集水空間と流体連通するろ過膜;を含み、前記パーティションには貫通ホールが形成されており、前記固定層は、前記第1の空間の少なくとも一部と前記第2の空間にそれぞれ存在し、前記パーティションの貫通ホール内にも存在することを特徴とするろ過膜モジュールが提供される。
【0017】
前記のような本発明に対する一般的敍述は、本発明を例示又は説明するためのものに過ぎなく、本発明の権利範囲を制限するものではない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、ろ過膜をろ過膜用ヘッダーに固定させる固定層と前記ろ過膜用ヘッダーが水平方向及び垂直方向に相対的に動くことを防止することによって、前記固定層が前記ろ過膜用ヘッダーから分離されることを防止することができる。
【0019】
したがって、本発明によると、ろ過膜モジュールの耐久性を向上させるだけでなく、ろ過膜モジュールの損傷によって発生し得る致命的なろ過作業でのエラーを事前に防止することによって、ろ過膜モジュールの信頼度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施例に係るろ過膜用ヘッダーを概略的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施例に係るろ過膜用ヘッダーの平面図である。
【
図3】
図1及び
図2のI―I'線に沿う本発明の一実施例に係るろ過膜用ヘッダーの断面図である。
【
図4】本発明の一実施例に係るろ過膜モジュールを概略的に示す斜視図である。
【
図5】
図4のI―I'線に沿う本発明の一実施例に係るろ過膜モジュールの断面図である。
【
図6】本発明の一実施例に係るろ過膜モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【
図7】本発明の一実施例に係るろ過膜モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【
図8】本発明の他の実施例に係るろ過膜モジュールの断面図である。
【
図9】本発明の更に他の実施例に係るろ過膜モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下で説明する本発明の各実施例は、本発明の理解を促進するための各例に過ぎないもので、本発明の権利範囲を制限するものではなく、本発明の技術的思想及び範囲を逸脱しない範囲内で本発明の多様な変更及び変形が可能であることは当業者にとって自明であろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載した発明及びその均等物の範囲内の変更及び変形を全て含む。
【0022】
以下では、添付の図面を参照して本発明に係るろ過膜用ヘッダー及びこれを含むろ過膜モジュールを詳細に説明する。
【0023】
本発明の各図面は、本発明の技術的思想を説明するためにろ過膜として中空糸膜を例示しているが、本発明は、中空糸膜のみに限定されるものではなく、平膜を含む多様な種類のろ過膜を本発明のろ過膜用ヘッダー及びろ過膜モジュールに適用することができる。
【0024】
図1〜
図3は、それぞれ本発明の一実施例に係るろ過膜用ヘッダーを概略的に示す斜視図、平面図、及びI―I'線断面図である。
【0025】
図1〜
図3に例示したように、本発明のろ過膜用ヘッダー110は、上部に開口を有するケース111と、前記ケース111の内部空間をろ過膜(図示せず)挿入のための第1の空間S1及び前記ろ過膜の固定のための第2の空間S2に分割する少なくとも一つのパーティション112とを含む。
【0026】
前記パーティション112には少なくとも一つの貫通ホールHが形成されており、前記第1及び第2の空間S1、S2は、前記パーティション112の貫通ホールHを介して互いに流体連通する。
【0027】
本発明の一実施例によると、前記ケース111は、底面部及び側壁を有し、前記第2の空間S2は、前記ケース111の側壁の少なくとも一部と前記パーティション112との間に存在する。選択的に、前記パーティション112は、共に前記第2の空間S2を形成する前記側壁の一部より低い高さを有することができる。すなわち、前記パーティション112の高さは、前記ケース111の側壁の高さより小さくなり得る。
【0028】
本発明の一実施例によると、前記ケース111の内側面に多数の溝Gが形成されている。選択的に、前記ケース111の外側面に行くほど大きくなる勾配形状を有するように前記各溝Gを前記ケース111の内側面に形成することができる。
【0029】
以下では、以上説明したろ過膜用ヘッダー110を含む本発明のろ過膜モジュール100を具体的に説明する。
【0030】
図4及び
図5は、本発明の一実施例に係るろ過膜モジュールの斜視図、及びI―I'線断面図である。
【0031】
図4及び
図5に例示したように、本発明のろ過膜モジュール100は、ろ過膜130と、前記ろ過膜130のためのヘッダー110とを含む。上述したように、前記ろ過膜用ヘッダー110は、上部に開口を有するケース111と、前記ケース111の内部空間を前記ろ過膜130の挿入のための第1の空間S1及び前記ろ過膜130の固定のための第2の空間S2に分割するパーティション112とを含む。前記第2の空間S2は、前記ケース111の側壁の少なくとも一部と前記パーティション112との間に存在し得る。
【0032】
本発明のろ過膜モジュール100は、前記ケース111と共に前記第1の空間S1内に集水空間SS1を形成する固定層120をさらに含む。前記ろ過膜130は、前記固定層120内にポッティングされており、開放端を通して前記集水空間SS1と流体連通する。
【0033】
前記パーティション112には貫通ホールHが形成されており、前記固定層120は、前記第1の空間S1の少なくとも一部[すなわち、前記集水空間SS1を除いた前記第1の空間S1の残りの部分]と前記第2の空間S2にそれぞれ存在し、前記パーティション112の貫通ホールH内にも存在する。
【0034】
すなわち、前記第1の空間S1の一部及び第2の空間S2内に存在する固定層120部分と前記パーティション112の相互作用により、前記固定層120と前記ヘッダー110の水平方向[固定層120の上部面に水平な方向]に対する相対的動きを阻止することができる。
【0035】
また、前記パーティション112の貫通ホールH内に存在する前記固定層120部分と前記パーティション112の相互作用により、前記固定層120と前記ヘッダー110の垂直方向[固定層120の上部面に垂直な方向]に対する相対的動きを阻止することができる。
【0036】
したがって、本発明によると、前記ヘッダー110の一部を構成する前記パーティション112の存在により、前記固定層120と前記ヘッダー110の水平方向及び垂直方向に対する相対的動きを阻止することができ、その結果、前記固定層120が前記ヘッダー110から分離されることを防止することができる。
【0037】
本発明の一実施例によると、
図4に例示したように、前記ケース111の内側面に多数の溝Gが形成されており、前記各溝Gは、前記ケース111の外側面に行くほど大きくなる勾配形状を有し、前記固定層120の一部が前記各溝Gに挿入されている。
【0038】
したがって、前記各溝Gに挿入されている前記固定層120の一部と前記各溝Gの相互作用により、前記固定層120と前記ヘッダー110の水平方向に対する相対的動きをさらに強力に阻止することができる。
【0039】
ただし、前記各溝Gに挿入されている前記固定層120の一部と前記各溝Gの相互作用は、前記固定層120と前記ろ過膜用ヘッダー110の垂直方向に対する相対的動きを阻止するのにほとんど役立たない。前記固定層120と前記ろ過膜用ヘッダー110の垂直方向に対する相対的動きを阻止するのに役立つためには、前記ケース111の底面部に行くほど大きくなる勾配形状を有するように前記各溝Gをケース111の内側面に形成することもできる。
【0040】
本発明の一実施例によると、
図5に例示したように、前記固定層120は、前記ケース111と共に前記第1の空間S1内に集水空間SS1を形成する第1のサブ―固定層121と、前記第1のサブ―固定層121上の第2のサブ―固定層122とを含むことができる。この場合、前記第2のサブ―固定層122が前記第1の空間S1の少なくとも一部と前記第2の空間S2にそれぞれ存在し、前記パーティション112の貫通ホールH内にも存在する。
【0041】
前記固定層120は、ろ過膜130、例えば、各中空糸膜を一定間隔だけ離れた状態に維持させなければならないという点、及び流体を通過させてはならないという点を考慮すると、高い硬度を有する硬質物質で形成されることが望ましい。本発明の一実施例によると、前記第1及び第2のサブ―固定層121、122は同一の物質で形成される。
【0042】
本発明の一実施例によると、前記パーティション112の高さが前記ケース111の側壁の高さより小さく、第2のサブ―固定層122の一部が前記パーティション112の直ぐ上にも存在する。
【0043】
以下では、
図6及び
図7を参照して、本発明の一実施例に係るろ過膜モジュール100の製造方法を説明する。説明の便宜上、ろ過膜として中空糸膜を例に挙げて説明する。
【0044】
まず、第1のサブ―固定層121にポッティングされた各中空糸膜130を次のように準備する。
【0045】
各中空糸膜130の開放端(切断によって形成された)を熱硬化性物質でシーリングした後、各中空糸膜130のシーリングされた各末端部をポッティングジグ内の第1のポッティング剤に浸漬させる。第1のポッティング剤としては、ウレタン系樹脂又はエポキシ系樹脂などが用いられるが、必ずしもこれらに限定されることはない。ただし、第1のポッティング剤は、相対的に高い硬度、例えば、80〜120の硬度(shore A)を有する物質であり得る。各中空糸膜130が浸漬されている状態で第1のポッティング剤を硬化させた後、ポッティングジグを除去する。続いて、硬化された第1のポッティング剤を各中空糸膜130の長さ方向と垂直な方向に切断することによって、第1のサブ―固定層121にポッティングされた各中空糸膜130を完成する。このとき、各中空糸膜130も共に切断されることによって、各中空糸膜130の各中空が再び開放される。
【0046】
続いて、
図6に例示したように、前記各中空糸膜130がポッティングされている第1のサブ―固定層121を、ケース111の内側面から所定距離だけ突出した突出部上に、又はケース111の内側面に形成された段差上に載せる。前記第1のサブ―固定層121は、ケース111内の第1の空間S1を集水空間SS1及び各中空糸膜130のための空間SS2に分割する。各中空糸膜130は、開放端を通して前記集水空間SS1と流体連通する。
【0047】
続いて、
図7に例示したように、前記各中空糸膜130のための空間SS2、第2の空間S2、及びパーティション112の貫通ホールH内を第2のポッティング剤で充填し、これを硬化させることによって第2のサブ―固定層122を形成する。前記第2のサブ―固定層122は、前記第1のサブ―固定層121と各中空糸膜130を前記ケース111内に固定させる。
【0048】
前記第2のポッティング剤としては、前記第1のポッティング剤と同様に、高い硬度、例えば、80〜120の硬度(shore A)を有するウレタン系樹脂又はエポキシ系樹脂などが用いられるが、必ずしもこれらに限定されることはない。
【0049】
以下では、
図8を参照して本発明の他の実施例に係るろ過膜モジュール100を説明する。
【0050】
図8に例示したように、前記パーティション112の高さが前記ケース111の側壁の高さと実質的に同一であり、前記パーティション112上には第2のサブ―固定層122が存在しない場合もある。
【0051】
この場合、前記パーティション112の高さが前記ケース111の側壁の高さより小さい場合に比べて、パーティション112に形成された貫通ホールHのサイズが同一であると仮定すると、前記各中空糸膜130のための空間SS2及び第2の空間S2に存在する第2のサブ―固定層122部分と前記パーティション112との間の相互作用が極大化され、前記第2のサブ―固定層122と前記ケース111の水平方向に対する相対的動きを効果的に阻止できるという利点がある。
【0052】
以下では、
図9を参照して本発明の更に他の実施例に係るろ過膜モジュール100を説明する。
【0053】
図9に例示したように、前記第2のサブ―固定層122は、処理すべき原水と直接接触するポッティング面を有し、前記ろ過膜モジュール100は、前記第2のサブ―固定層122のポッティング面と前記ろ過膜130が直接接触することを防止するために、前記ポッティング面と前記ろ過膜130との間に介在する保護層140をさらに含む。前記保護層140は、前記第2のサブ―固定層122より低い硬度を有する。より具体的には、10〜50の硬度(shore A)を有する軟質のオレフィン系、ウレタン系又はエポキシ系樹脂で前記保護層140を形成することができる。
【0054】
ろ過作業中に原水内に存在するろ過膜130が激しく揺動するので、前記保護層140が存在しない場合は、前記第2のサブ―固定層122のポッティング面と当接したろ過膜130部分で摩擦による損傷が発生し得る。前記第2のサブ―固定層122が硬質物質で形成されるので、このような損傷の憂いはさらに大きくなる。
【0055】
したがって、前記第2のサブ―固定層122のポッティング面と前記ろ過膜130との間に保護層140を介在することによって、前記第2のサブ―固定層122のポッティング面と前記ろ過膜130が直接接触することを防止し、ろ過作業中の前記ろ過膜130の揺動による膜の損傷を最小化することができる。
【0056】
保護層140を有するろ過膜モジュールの製造方法は、本出願人の大韓民国特許出願第10―2010―0119996号に詳細に開示されている。前記特許出願は、参照として本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0057】
110 ろ過膜用ヘッダー
111 ケース
112 パーティション
G 各溝
H 貫通ホール