特許第5721875号(P5721875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5721875-チラー装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5721875
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】チラー装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
   F25B1/00 371F
   F25B1/00 361D
   F25B1/00 304L
   F25B1/00 101E
   F25B1/00 101H
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-33013(P2014-33013)
(22)【出願日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年7月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 篤史
(72)【発明者】
【氏名】青木 繁雄
(72)【発明者】
【氏名】細井 史幸
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−220947(JP,A)
【文献】 特開2001−165058(JP,A)
【文献】 特開2010−145036(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3160443(JP,U)
【文献】 特開2008−075919(JP,A)
【文献】 特開2014−020688(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0283830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却用の冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルに備えられる蒸発器を共用する加熱用の冷媒サイクルと、前記冷媒サイクル中に介在接続されて保温対象となる各種装置をワークとして、使用者向けに所定の温度範囲での選択的な温度設定に供されると共に、前記冷凍サイクルに備えられる電動式圧縮機の回転数、並びに当該冷媒サイクルに備えられる冷媒に対する加熱用の加熱装置における加熱温度を、使用者により設定された設定温度と当該冷媒サイクルの当該ワーク側寄り箇所に設けられた第1の温度センサにより検出されたワーク温度との温度差に応じて制御する制御装置と、を備えたチラー装置において、
前記冷媒サイクルは、前記蒸発器の冷媒吐出側で前記加熱装置に対する冷媒流入の手前側に設けられて冷媒温度を検出する第2の温度センサを有し、
前記制御装置は、前記設定温度と前記ワーク温度との温度差の少ない保温設定時には、前記第2の温度センサで検出される冷媒サイクル側冷媒検出温度について比例、積分、微分を含むPID演算した結果に基づいて生成した前記電動式圧縮機を駆動するためのインバータに対する駆動制御信号をシリアル通信し、当該電動式圧縮機での圧縮機回転数を一定の範囲で当該ワーク温度に応じて制御することを特徴とするチラー装置。
【請求項2】
請求項1記載のチラー装置において、前記冷凍サイクルは、前記蒸発器の冷媒吸入側に介在接続されて第1のステッピングモータで駆動される第1の電子膨張弁を有し、前記制御装置は、前記第1の温度センサで検出された前記ワーク温度について比例、積分、微分を含むPID演算した結果に基づいて生成したパルス信号により前記第1のステッピングモータを駆動することで前記第1の電子制御弁での開閉を制御して冷媒流量を制御することを特徴とするチラー装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のチラー装置において、前記冷凍サイクルは、前記電動式圧縮機の冷媒吸入側であって、前記蒸発器の冷媒吐出側に設けられて冷媒温度を検出するための第3の温度センサと、前記蒸発器の冷媒吸入側で前記第1の電子膨張弁よりも当該冷凍サイクルに備えられる凝縮器側に位置される箇所と当該蒸発器の冷媒吐出側とを繋ぐと共に、第2のステッピングモータで駆動される第2の電子膨張弁が介在接続された冷媒バイパス用の第1のバイパス流路と、を有し、前記制御装置は、前記第3の温度センサで検出される冷凍サイクル側冷媒温度について比例、積分、微分を含むPID演算した結果に基づいて生成したパルス信号により前記第2のステッピングモータを駆動することで前記第2の電子制御弁での開閉を制御して前記第1のバイパス流路における冷媒流量を制御することを特徴とするチラー装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載のチラー装置において、前記冷凍サイクルは、前記電動式圧縮機の冷媒吸入側に設けられて冷媒圧力を検出する圧力センサと、前記第1の電子膨張弁よりも前記蒸発器の冷媒吸入側に位置される箇所と前記電動式圧縮機の冷媒吐出側とを繋ぐと共に、第3のステッピングモータで駆動される第3の電子膨張弁が介在接続された冷媒バイパス用の第2のバイパス流路と、を有し、前記制御装置は、前記圧力センサで検出される前記冷媒圧力について比例、積分、微分を含むPID演算した結果に基づいて生成したパルス信号により前記第3のステッピングモータを駆動することで前記第3の電子制御弁での開閉を制御して前記第2のバイパス流路における冷媒流量を制御することを特徴とするチラー装置。
【請求項5】
請求項4項記載のチラー装置において、前記制御装置は、前記PID演算に際して、前記圧力センサで検出される前記冷媒圧力に対応する前記冷凍サイクル側の冷媒飽和温度を近似曲線で置換して算出し、算出された当該冷凍サイクル側の冷媒温度を使用者による設定変更で前記設定温度より所定の温度範囲分低くして当該設定温度に対する自動温度設定制御を行わせ、当該自動温度設定制御として、前記第3の電子制御弁を開閉制御しての前記第2のバイパス流路における前記冷媒流量の制御を行うことを特徴とするチラー装置。
【請求項6】
請求項3〜5の何れか1項記載のチラー装置において、前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサは、白金抵抗帯を用いたPtセンサであり、前記第3の温度センサは、熱電対を用いた熱電対センサであることを特徴とするチラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温対象となる各種装置をワークとして、使用者(ユーザ)が所定の温度範囲(例えば−20℃〜60℃)で選択的に温度設定して保温するためのチラー装置に係り、詳しくは設定温度とワーク温度との温度差に応じて冷却用の冷凍サイクルに備えられる電動式圧縮機の回転数と加熱用の冷媒サイクルに備えられる加熱装置の加熱温度とを制御装置で制御する機能を持つチラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のチラー装置では、冷却用の冷凍サイクルと加熱用の冷媒サイクルとにより冷媒を管内で循環させて冷媒サイクルの局部で保温対象の負荷となるワークを介在接続させる回路構成を持つ。冷凍サイクルは、冷媒ガスを電動式圧縮機により圧縮して高圧ガスとして吐出側の凝縮器へ送り、凝縮器では高圧ガスを凝縮して減圧機構の膨張弁を経由して減圧させてから蒸発器へ送り、蒸発器では減圧された低圧な気液混合状態の冷媒を蒸発させて圧縮機の吸入側に吸い込ませることで再び圧縮を繰り返す回路構成の一次温調回路となっている。冷媒サイクルは、冷凍サイクルの蒸発器を共有して低圧な液体状態の冷媒液を冷媒タンクで回収して蓄えると共に、冷媒タンクに装着された加熱装置(ヒータ)で冷媒液を適宜加熱するか、或いは加熱させずに冷媒タンクからポンプにより吸引した冷媒液をワークを介在させて蒸発器に戻す回路構成の二次温調回路となっている。
【0003】
ここでの冷凍サイクルに備えられる圧縮機の回転数と冷媒サイクルに備えられる加熱装置の加熱温度とは、使用者向けに所定の温度範囲(例えば−20℃〜60℃)での選択的な温度設定に供される制御装置により設定温度とワーク温度との温度差に応じて制御される。冷凍サイクルと冷媒サイクルとにはそれぞれ温度センサが設けられ、冷媒サイクルのポンプよりもワーク側の箇所に設けられた温度センサからはワーク温度が検出される。ここでワーク温度は、通常室温程度の周囲温度(例えば約20℃〜25℃程度とする)に近い場合が多いとみなせるが、必ずしもそうでない場合もあるため、周囲温度との関係は問わないものとする。
【0004】
制御装置では、初期的な設定温度とワーク温度との温度差に応じて異なる動作モードの制御を行う。例えば設定温度がワーク温度よりもずっと高い温度差(例えば10℃超過)のある高温設定時には、冷凍サイクルの冷却機能が不要であるため、圧縮機の回転数を低く抑制し、冷媒サイクルの加熱装置の加熱温度を高く設定して温度差を無くすように加熱機能を優先する動作モードを実施する。また、設定温度がワーク温度よりもずっと低い温度差(例えば10℃超過)のある低温設定時には、冷媒サイクルの加熱装置による加熱機能が不要であるため、加熱装置の加熱設定を行わずに冷凍サイクルの圧縮機の回転数を高く設定して温度差を無くすように冷却機能を優先する動作モードを実施する。更に、設定温度がワーク温度に近い温度差(例えば5℃〜10℃)の少ない保温設定時(上述した加熱機能を優先した動作モードや冷却機能を優先した動作モードが継続して実施されて温度差が少なくなった場合や予め初期的に温度差がない場合を含む)には、加熱装置による加熱機能と冷凍サイクルの冷却機能との双方を実施し、具体的には温度差を無くすように圧縮機の回転数を所定値から幾分増減変化させるか、或いは加熱装置の加熱を所定値から幾分増減変化させるようにして、加熱機能や冷却機能を切り替える動作モードを実施する。
【0005】
因みに、このようなチラー装置の保温機能に関連する周知技術としては、例えば広い温度範囲にわたって安定して運転でき、クーラントの温度を精度良く制御できる「チラー装置」(特許文献1参照)や、大型のヒータを必要とせず、かつ、クーラントの温度を精度良く制御できる「チラー装置」(特許文献2参照)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−75919号公報
【特許文献2】特開2008−75920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した既存のチラー装置の場合、設定温度がワーク温度に近い温度差の少ない保温設定時において、特に冷凍サイクルでの蒸発器の冷媒吸入側と冷媒吐出側との冷媒温度差が殆ど無い状態では冷媒を蒸発器に流す必要がないにも拘らず圧縮機が動作し続ける構造であるため、こうした場合には圧縮機に異常な過負荷(圧力)が掛かって圧縮機を故障させる虞がある他、冷凍サイクルでの冷却機能が不安定となって保温動作を安定して維持できなくなるという問題(係る問題点は特許文献1や特許文献2に開示された技術を適用しても基本的に解消され得ない)がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、設定温度とワーク温度との温度差が小さく、且つ冷凍サイクルでの蒸発器の冷媒吸入側と冷媒吐出側との温度差が殆ど無い場合でも圧縮機に過負荷を掛けずに安定して保温動作する機能のチラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を達成するため、本発明は、冷却用の冷凍サイクルと、冷凍サイクルに備えられる蒸発器を共用する加熱用の冷媒サイクルと、冷媒サイクル中に介在接続されて保温対象となる各種装置をワークとして、使用者向けに所定の温度範囲での選択的な温度設定に供されると共に、冷凍サイクルに備えられる電動式圧縮機の回転数、並びに当該冷媒サイクルに備えられる冷媒に対する加熱用の加熱装置における加熱温度を、使用者により設定された設定温度と当該冷媒サイクルの当該ワーク側寄り箇所に設けられた第1の温度センサにより検出されたワーク温度との温度差に応じて制御する制御装置と、を備えたチラー装置において、冷媒サイクルは、蒸発器の冷媒吐出側で加熱装置に対する冷媒流入の手前側に設けられて冷媒温度を検出する第2の温度センサを有し、制御装置は、設定温度とワーク温度との温度差の少ない保温設定時には、第2の温度センサで検出される冷媒サイクル側冷媒検出温度について比例、積分、微分を含むPID演算した結果に基づいて生成した電動式圧縮機を駆動するためのインバータに対する駆動制御信号をシリアル通信し、当該電動式圧縮機での圧縮機回転数を一定の範囲で当該ワーク温度に応じて制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のチラー装置によれば、制御装置で設定温度とワーク温度との温度差の少ない保温設定時には、冷媒サイクルにおける熱交換機能の要となる蒸発器の冷媒吐出側で加熱装置に対する冷媒流入の手前側に設けられて冷媒温度を検出するための第2の温度センサで検出された冷媒サイクル側冷媒温度についてPID演算した結果に基づいて生成した電動式圧縮機を駆動するためのインバータに対する駆動制御信号をシリアル通信し、電動式圧縮機での圧縮機回転数を一定の範囲でワーク温度に応じて制御するため、設定温度とワーク温度との温度差が小さく、且つ冷凍サイクルでの蒸発器の冷媒吸入側と冷媒吐出側との温度差が殆ど無い場合でも電動式圧縮機に過負荷を掛けずに安定して保温動作する機能が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係るチラー装置の基本構成を冷媒サイクルでのワークへの接続及び冷凍サイクルでの凝縮器への冷却装置を含めて示した全体的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明のチラー装置について、実施例を挙げ、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の実施例に係るチラー装置の基本構成を冷媒サイクル200でのワークWへの接続及び冷凍サイクル100での凝縮器103への冷却装置300を含めて示した全体的な概略図である。
【0014】
図1を参照すれば、このチラー装置は、従来通りに保温対象となる各種装置をワークWとして、使用者(ユーザ)が所定の温度範囲(例えば−20℃〜60℃)で選択的に温度設定して保温するための機能を持つ点は同じである。ここでは冷却用の冷凍サイクル100と、冷凍サイクル100に備えられる蒸発器(熱交換器)101を共用する加熱用の冷媒サイクル200と、冷媒サイクル200中に介在接続されて保温対象となる各種装置(負荷)をワークWとして、使用者向けに所定の温度範囲での選択的な温度設定に供されると共に、冷凍サイクル100に備えられる電動式圧縮機102の回転数、並びに冷媒サイクル200に備えられる冷媒に対する加熱用の加熱装置(ヒータ)202における加熱温度を、図示されない使用者向けの操作部で使用者により設定される設定温度と冷媒サイクル200のワークW側寄り箇所に設けられた第1の温度センサT1により検出されたワーク温度との温度差に応じて制御するためのCPU、ROM、RAM、IO等を備えた第1のプリント回路基板(PCB1)105、及び第2のプリント回路基板(PCB2)106による制御装置と、を備え、冷凍サイクル100及び冷媒サイクル200により冷媒を管内で循環させてワークWを保温する機能を持つ。
【0015】
因みに、ここでのワーク温度を検出するための第1の温度センサT1は、冷媒サイクル200に備えられる冷媒タンク201から冷媒を吸引するポンプ203の冷媒吐出側であって、ワークW寄りの冷媒流入側に設けられて冷媒サイクル側冷媒温度を検出して第2のプリント回路基板(PCB2)106に送出するようになっているが、その他に蒸発器101の冷媒吸入側であって、ワークW寄りの冷媒流出側に設けられた第4の温度センサT4からの冷媒検出温度を第2のプリント回路基板(PCB2)106に入力し、双方の検出結果を併用してワーク温度を検出するようにしても良い。ここでの第1の温度センサT1については、高い温度検出精度が要求されるため、抵抗値を100オームから0オームに可変できる白金抵抗帯を用いたPtセンサを用いることが好ましい。これに対し、第4の温度センサT4は、第1の温度センサT1程度には検出精度が要求されないため、製造コストを考慮して一般的な熱電対を用いた熱電対センサを用いることが好ましい。
【0016】
このうち、冷凍サイクル100は、冷媒のガスを電動式圧縮機102により圧縮して高圧ガスとして吐出側の凝縮器103へ送り、凝縮器103では高圧ガスを凝縮して減圧機構の膨張弁104を経由して減圧させてから蒸発器101へ送り、蒸発器101では減圧された低圧ガスを蒸発させて電動式圧縮機102の吸入側に吸い込ませることで再び圧縮を繰り返す回路構成の一次温調回路となっている。また、ここでは凝縮器103に対して配管を折り返すように接続し、入口側の管に設けられたバルブV5を経由して冷却水を取り込んで凝縮器103内を冷却してから出口側の管に設けられたバルブV7、V8を経由して外方へ戻す構造の冷却装置300が配備され、圧力スイッチPSWのオン状態で凝縮器103の吐出側に接続された圧力センサP2により検出された結果に応じてバルブV7の開閉が制御され、配管内を流れる冷却水の流量が制御されるようになっている。尚、バルブV7の吸入側に設けられたバルブV6は、排水用の弁である。因みにここで説明した冷却装置300による凝縮器103に対する冷却機能は、冷却ファンを用いて冷風で冷却する構成としても良い。
【0017】
冷媒サイクル200は、冷凍サイクル100の蒸発器101を共有して冷媒液を冷媒タンク201で回収して蓄えると共に、冷媒タンク201に装着された加熱装置(ヒータ)201で冷媒液を適宜加熱するか、或いは加熱させずに冷媒タンク201からポンプ203により吸引した冷媒液をワークWを介在させて蒸発器101に戻す回路構成の二次温調回路となっている。
【0018】
また、第1のプリント回路基板(PCB1)105に接続された加熱制御装置207は、設定温度と第1の温度センサT1により検出されたワーク温度との温度差に応じて第1のプリント回路基板(PCB1)105から制御を受けて加熱装置202による加熱温度を制御する。
【0019】
更に、ポンプ203における冷媒液の流出側の配管には流量検出センサ204が設けられ、この流量検出センサ204で検出された冷媒液の流量は第1のプリント回路基板(PCB1)105に入力され、第1のプリント回路基板(PCB1)105がインバータ206を駆動してポンプ203における冷媒液の吸引量を制御するようになっている。これにより、冷媒タンク201内では、冷媒液がロジック(LG)によりほほ一定量に保たれることになる。
【0020】
加えて、蒸発器101の冷媒吐出側の管に設けられたバルブV1と冷媒タンク201に接続された管に設けられたバルブV2とは共通の配管に接続され、排液処理用のドレンDに繋がって排液するために使用される。その他、ワークWにおける冷媒液の流入側の配管に設けられたバルブV3と流出側の配管に設けられたバルブV4とは、主としてワークWを冷媒サイクル200の局部に配管接続するときの冷媒液漏れを防止するために使用される。
【0021】
以上に説明したチラー装置の細部構成は、従来製品に共通したもので、第1のプリント回路基板(PCB1)105及び第2のプリント回路基板(PCB2)106の制御装置によって初期的な設定温度とワーク温度との温度差に応じて異なる動作モードの制御を行い、設定温度がワーク温度よりもずっと高い温度差(例えば10℃超過)のある高温設定時には、冷凍サイクル100の冷却機能が不要であるため、電動式圧縮機102の回転数を低く抑制し、冷媒サイクル200の加熱装置202の加熱温度を高く設定して温度差を無くすように加熱機能を優先する動作モードを実施し、設定温度がワーク温度よりもずっと低い温度差(例えば10℃超過)のある低温設定時には、冷媒サイクル200の加熱装置202による加熱機能が不要であるため、加熱装置202の加熱設定を行わずに冷凍サイクル100の電動式圧縮機102の回転数を高く設定して温度差を無くすように冷却機能を優先する動作モードを実施する点は同じである。
【0022】
但し、本実施例では設定温度がワーク温度に近い温度差(例えば5℃〜10℃)の少ない保温設定時において、特に冷凍サイクル100での蒸発器101の冷媒吸入側と冷媒吐出側との冷媒温度差が殆ど無い状態にあって、冷媒を蒸発器101に流す必要がないにも拘らず電動式圧縮機102が動作し続ける構造及び機能を改善している。
【0023】
具体的に云えば、本実施例に係るチラー装置で第1番目の特徴となるのは、冷媒サイクル200における蒸発器101の冷媒吐出側で加熱装置202に対する冷媒流入の手前側に設けられて冷媒温度を検出する第2の温度センサT2を有し、設定温度とワーク温度との温度差(例えば5℃〜10℃)の少ない保温設定時に、第2のプリント回路基板(PCB2)106が第2の温度センサT2で検出される冷媒サイクル側冷媒検出温度について比例、積分、微分を含むPID演算を行い、第1のプリント回路基板(PCB1)105が係るPID演算の結果に基づいて生成した電動式圧縮機102を駆動するためのインバータ107に対する駆動制御信号をシリアル通信し、電動式圧縮機102での圧縮機回転数を一定の範囲でワーク温度に応じて制御する点にある。因みに、ここでの第2の温度センサT2についても、高い温度検出精度が要求されるため、抵抗値を100オームから0オームに可変できる白金抵抗帯を用いたPtセンサを用いることが好ましい。
【0024】
係る機能構成によれば、設定温度とワーク温度との温度差が小さく、且つ冷凍サイクル100での蒸発器101の冷媒吸入側と冷媒吐出側との温度差が殆ど無い場合でも電動式圧縮機102に過負荷を掛けずに運転を行わせ、蒸発器101に流れる冷媒量を適正に保ち、安定して保温動作する機能が得られる。
【0025】
また、本実施例で第2番目の特徴となるのは、冷凍サイクル100における蒸発器101の冷媒吸入側に介在接続されて第1のステッピングモータSM1で駆動される第1の電子膨張弁EV1を有し、第2のプリント回路基板(PCB2)106が第1の温度センサT1で検出されたワーク温度について比例、積分、微分を含むPID演算を行い、第1のプリント回路基板(PCB2)105が係るPID演算の結果に基づいて生成したパルス信号により第1のステッピングモータSM1を駆動することで第1の電子制御弁EV1での開閉を制御して冷媒流量を制御する点にある。
【0026】
係る機能構成によれば、先の電動式圧縮機102の回転数制御に加え、冷凍サイクル100において別途に蒸発器101に吸入される冷媒量を別途適切に制御できるため、一層安定して保温動作する機能が得られる。
【0027】
更に、本実施例で第3番目の特徴となるのは、電動式圧縮機102の冷媒吸入側であって、蒸発器101の冷媒吐出側に設けられて冷サイクル100における冷媒温度を検出するための第3の温度センサT3と、蒸発器101の冷媒吸入側で第1の電子膨張弁EV1よりも冷凍サイクル100に備えられる凝縮器103側に位置される箇所と蒸発器101の冷媒吐出側とを繋ぐと共に、第2のステッピングモータSM2で駆動される第2の電子膨張弁EV2が介在接続された冷媒バイパス用の第1のバイパス流路108と、を有し、第2のプリント回路基板(PCB2)106が第3の温度センサT3で検出される冷凍サイクル側冷媒温度について比例、積分、微分を含むPID演算を行い、第1のプリント回路基板(PCB2)105が係るPID演算の結果に基づいて生成したパルス信号により第2のステッピングモータSM2を駆動することで第2の電子制御弁EV2での開閉を制御して第1のバイパス流路108における冷媒流量を制御する点にある。因みに、ここでの第3の温度センサT3の場合も、第2の温度センサT2程度に高い検出精度が要求されないため、製造コストを考慮して一般的な熱電対を用いた熱電対センサを用いることが好ましい。
【0028】
係る機能構成によれば、先の電動式圧縮機102の回転数制御や蒸発器101に吸入される冷媒量の制御に加え、冷凍サイクル100において第1のバイパス流路108を使用した冷媒のバイパス流量を別途に制御できるため、より一層蒸発器101への冷媒の流入量を細かく制御でき、保温動作の機能が格段に向上する。
【0029】
加えて、本実施例で第4番目の特徴となるのは、冷凍サイクル100における電動式圧縮機102の冷媒吸入側に設けられて冷媒圧力を検出する圧力センサP1と、第1の電子膨張弁EV1よりも蒸発器101の冷媒吸入側に位置される箇所と電動式圧縮機102の冷媒吐出側とを繋ぐと共に、第3のステッピングモータSM3で駆動される第3の電子膨張弁EV3が介在接続された冷媒バイパス用の第2のバイパス流路109と、を有し、第2のプリント回路基板(PCB2)106が圧力センサP1で検出される冷媒圧力について比例、積分、微分を含むPID演算を行い、第1のプリント回路基板(PCB2)105が係るPID演算の結果に基づいて生成したパルス信号により第3のステッピングモータSM3を駆動することで第3の電子制御弁EV3での開閉を制御して第2のバイパス流路109における冷媒流量を制御する点にある。
【0030】
係る機能構成によれば、先の電動式圧縮機102の回転数制御や蒸発器101に吸入される冷媒量の制御、第1のバイパス流路108を使用した冷媒のバイパス流量の制御に加え、冷凍サイクル100において第2のバイパス流路109を使用した冷媒のバイパス流量を更に別途制御できるため、蒸発器101への冷媒の流入量を極めて細かく制御でき、保温動作の機能が極めて良好なものとなる。
【0031】
ところで、第4番目の特徴について、第2のプリント回路基板(PCB2)106によるPID演算に際して、圧力センサP1で検出される冷媒圧力に対応する冷凍サイクル100側の冷媒飽和温度を近似曲線で置換して算出し、算出された冷凍サイクル100側の冷媒温度を使用者による設定変更で設定温度より所定の温度範囲(例えば−4℃〜−50℃)分低くして初期的な設定温度に対する自動温度設定制御を行わせ、係る自動温度設定制御として、第3の電子制御弁EV3を開閉制御しての第2のバイパス流路109における冷媒流量の制御を行うようにしても良い。因みに、ここでの冷媒圧力に対応する冷媒飽和温度の近似曲線は、予め第2のプリント回路基板(PCB2)106に備えられるROM等にテーブル形式の変換値として格納しておくことが可能であり、CPU等で読み出すことができるものである。
【0032】
係る機能構成によれば、設定温度がワーク温度に近い温度差(例えば5℃〜10℃)の少ない保温設定時において、使用者による設定変更での自動温度設定制御は、上述した第1のプリント回路基板(PCB1)105での電動式圧縮機102の圧縮機回転数のPID演算結果の制御、第2の電子制御弁EV2を開閉制御しての第1のバイパス流路108におけるPID演算結果の冷媒流量の制御、並びに第3の電子制御弁EV3を開閉制御しての第2のバイパス流路109におけるPID演算結果の冷媒流量の制御とは別個な機能であるが、これらを組み合わせて制御させることも可能である。こうした場合には、特に電動式圧縮機102の高圧吐出側から第2のバイパス流路109経由で第3の電子制御弁EV3を開閉制御して蒸発器101の冷媒吸入側へ冷媒を効率良く流すことができるため、ワークWに対する急冷が必要な事態が生じた場合に冷凍サイクル100での冷凍機能を独自で向上させることができ、結果としてワークWをユーザ向けの機能として従来に無く効率良く冷却することができる。
【0033】
以上に説明した実施例に係るチラー装置の細部構成は、冷却装置300や冷媒サイクル200、或いは制御装置の何れについても種々変更することが可能であり、例えば制御装置を成す第1のプリント回路基板(PCB1)105及び第2のプリント回路基板(PCB2)106は、単一のプリント回路基板(PCB)で構成したり、或いは3枚以上の基板に機能分けした構成とすることも可能であるため、本発明のチラー装置は、実施例で開示したものに限定されない。
【符号の説明】
【0034】
100 冷凍サイクル
101 蒸発器(熱交換器)
102 電動式圧縮機
103 凝縮器
104 膨張弁
105 第1のプリント回路基板(PCB1)
106 第2のプリント回路基板(PCB2)
107、206 インバータ
108 第1のバイパス流路
109 第2のバイパス流路
200 冷媒サイクル
201 冷媒タンク
202 加熱装置(ヒータ)
203 ポンプ
204 流量検出センサ
207 加熱制御装置
300 冷却装置
D ドレン
EV1 第1の電子膨張弁
EV2 第2の電子膨張弁
EV3 第3の電子膨張弁
P1、P2 圧力センサ
PSW 圧力スイッチ
SM1 第1のステッピングモータ
SM2 第2のステッピングモータ
SM3 第3のステッピングモータ
T1 第1の温度センサ
T2 第2の温度センサ
T3 第3の温度センサ
T4 第4の温度センサ
V1〜V8 バルブ
W ワーク
【要約】
【課題】設定温度とワーク温度との温度差が小さく、且つ冷凍サイクルでの蒸発器の冷媒吸入側と冷媒吐出側との温度差が殆ど無い場合でも圧縮機に過負荷を掛けずに安定して保温動作する機能のチラー装置を提供する。
【解決手段】このチラー装置では、回路基板(PCB2)106が設定温度とワーク温度との温度差の少ない保温設定時に、温度センサT2で検出される冷媒サイクル側冷媒検出温度についてPID演算し、回路基板(PCB1)105がその結果に基づいて生成したインバータ107に対する駆動制御信号をシリアル通信して圧縮機102の回転数を一定の範囲でワーク温度に応じて制御する他、回路基板106が温度センサT1で検出されたワーク温度についてPID演算し、回路基板105がその結果に基づいて生成したパルス信号によりステッピングモータSM1を駆動することで電子制御弁EV1での開閉を制御して冷媒流量を制御する。
【選択図】図1
図1