特許第5721885号(P5721885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5721885
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】ケミカルフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20150430BHJP
   B01D 53/02 20060101ALI20150430BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20150430BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20150430BHJP
   B01J 20/12 20060101ALI20150430BHJP
   B01J 20/14 20060101ALI20150430BHJP
   B01J 20/16 20060101ALI20150430BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20150430BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   B01D53/04 A
   B01D53/02 Z
   B01J20/02 A
   B01J20/10 A
   B01J20/10 C
   B01J20/10 D
   B01J20/12 A
   B01J20/12 C
   B01J20/14
   B01J20/16
   B01J20/18 B
   B01J20/18 E
   H01L21/30 516F
   H01L21/30 562
【請求項の数】20
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-114338(P2014-114338)
(22)【出願日】2014年6月2日
【審査請求日】2014年6月2日
【審判番号】不服2014-25436(P2014-25436/J1)
【審判請求日】2014年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-216026(P2013-216026)
(32)【優先日】2013年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101362
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 幸久
(72)【発明者】
【氏名】茂田 誠
(72)【発明者】
【氏名】大塩 実
【合議体】
【審判長】 真々田 忠博
【審判官】 中澤 登
【審判官】 河原 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/099616(WO,A1)
【文献】 特開平6−77114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/02-53/12
H01L21/30,21/46
B01J20/00-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を吸着剤として用いたシラノール化合物除去用ケミカルフィルタであり、前記無機シリカ系多孔質材料がゼオライトであるシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項2】
前記吸着剤として、前記水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料とともに、他の吸着剤を用いた請求項に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項3】
前記無機シリカ系多孔質材料として合成ゼオライトを含み、前記吸着剤中の合成ゼオライトの含有量が、吸着剤の総重量に対して、10重量%以上である請求項1又は2に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項4】
前記無機シリカ系多孔質材料として合成ゼオライトを含み、前記合成ゼオライトにおけるSiO2とAl23の比(モル比)[SiO2/Al23]が、4〜2000である請求項1〜3の何れか1項に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項5】
前記無機シリカ系多孔質材料として合成ゼオライトを含み、前記合成ゼオライトが、A型、フェリエライト、MCM−22、ZSM−5、ZSM−11、SAPO−11、モルデナイト、ベータ型、X型、Y型、L型、チャバザイト、及びオフレタイトからなる群から選ばれた少なくとも1の骨格構造を有する合成ゼオライトである請求項1〜4の何れか1項に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項6】
前記ケミカルフィルタが、フィルタ基材に前記吸着剤がバインダにより付着されている請求項1〜5の何れか1項に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項7】
前記バインダが、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下であるバインダである請求項に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項8】
前記バインダが、無機バインダである請求項6又は7に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項9】
前記無機バインダが、コロイド状の無機酸化物粒子である請求項に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項10】
前記ケミカルフィルタの構造が、ハニカム構造、プリーツ構造、又は三次元網目構造である請求項1〜9の何れか1項に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項11】
前記ハニカム構造が、蜂の巣状の構造、又は、断面が格子状、円形状、波形状、多角形状、不定形状、若しくは全部あるいは一部に曲面を有する形状であって、空気が構造体の要素となるセルを通過する構造である請求項10に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項12】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタが、ペレット化された前記吸着剤を含む請求項1〜5の何れか1項に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項13】
前記ペレット化に、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下であるバインダを用いる請求項12に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項14】
前記ペレット化された吸着剤を含むフィルタの構造が、プリーツ構造、ペレット充填構造、及び三次元網目構造からなる群より選ばれた少なくとも1つの構造である請求項12又は13に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項15】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタが、抄紙法により製造された請求項1〜5の何れか1項に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項16】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタが、セラミック型である請求項1〜5の何れか1項に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項17】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタが、フィルタ基材に、バインダを用いずに前記吸着剤が付着されている請求項1〜5の何れか1項に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか1項に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタを備えた露光装置。
【請求項19】
請求項1〜17の何れか1項に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタを備えた塗布現像装置。
【請求項20】
請求項1〜17の何れか1項に記載のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタを備えたガス状汚染物質が制御されたクリーンルーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラノール化合物を空気中から除去するためのケミカルフィルタに関する。また、本発明は、該ケミカルフィルタを用いた空気浄化方法、該ケミカルフィルタを備えた露光装置、該ケミカルフィルタを備えた塗布現像装置、及び該ケミカルフィルタを備えたガス状汚染物質が制御されたクリーンルームに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスの露光工程において、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)のようなジシラザン化合物が、フォトレジスト密着剤として使用されることが知られている。HMDSは、例えばガスとしてウエハ表面に吹き付けられることにより、ウエハ表面の水酸基をトリメチルシラノール基に置換させることで、ウエハ表面を疎水化させて、ウエハ表面のレジスト剤との密着性を向上させている。しかし、HMDSは加水分解して低分子量物のトリメチルシラノール(TMS)となり、露光装置内にガス状で浮遊することがある。浮遊したTMSは、露光装置等で使用されるエキシマレーザーなどの短波長の光のエネルギーを受けて分解され、その分解されたものがレンズ等の表面に結合してレンズ曇りの原因となり、露光障害等を引き起こすおそれがある。
【0003】
露光工程が行われる露光装置のチャンバ内部には、通常、活性炭等の吸着剤を有するケミカルフィルタを通過した空気が供給される。TMS等のガス状不純物は、ケミカルフィルタによって除去されることにより、チャンバ内部は一定の清浄度に保持され、露光障害等が防止されるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、TMSは、低分子量で揮発性の物質であり、一般的なケミカルフィルタの吸着剤である活性炭等では吸着し難くまた吸着してもすぐに脱離してしまうため、効率的に除去することは難しい。したがって、従来、TMSを必要量除去するために、ケミカルフィルタを厚くしたり若しくは大容量化したりなど、活性炭を多量に使用する必要があった。
【0005】
特許文献2には、酸性添着剤を用いたケミカルフィルタが開示されている。このケミカルフィルタでは、空気中に含まれるシラノール化合物が酸性添着剤によって二量化されて吸着される。しかし、空気中のシラノール化合物の濃度が極めて低濃度の場合には、二量化の反応が起こりにくいため、この方法では除去効率が必ずしも十分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−181968号公報
【特許文献2】国際公開第2011/099616号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、TMS等のシラノール化合物を効率的に除去可能なシラノール化合物除去用ケミカルフィルタを提供することにある。
本発明の他の目的は、空気中に存在するTMS等のシラノール化合物を効率的に除去できる空気浄化方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、上記ケミカルフィルタを備えた露光装置、塗布現像装置、及びガス状汚染物質が制御されたクリーンルームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、純水との水混合物のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を吸着剤として用いると、空気中のTMS等のシラノール化合物を極めて効率よく除去できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を吸着剤として用いたシラノール化合物除去用ケミカルフィルタであり、前記無機シリカ系多孔質材料がゼオライトである第一のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタを提供する。
【0011】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、前記吸着剤として、前記水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料とともに、他の吸着剤を用いてもよい。
【0012】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、前記無機シリカ系多孔質材料として合成ゼオライトを含み、前記吸着剤中の合成ゼオライトの含有量が、吸着剤の総重量に対して、10重量%以上であってもよい。
【0013】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、前記無機シリカ系多孔質材料として合成ゼオライトを含み、前記合成ゼオライトにおけるSiO2とAl23の比(モル比)[SiO2/Al23]が、4〜2000であってもよい。
【0014】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、前記無機シリカ系多孔質材料として合成ゼオライトを含み、前記合成ゼオライトが、A型、フェリエライト、MCM−22、ZSM−5、ZSM−11、SAPO−11、モルデナイト、ベータ型、X型、Y型、L型、チャバザイト、及びオフレタイトからなる群から選ばれた少なくとも1の骨格構造を有する合成ゼオライトであってもよい。
【0015】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、フィルタ基材に前記吸着剤がバインダにより付着されたケミカルフィルタであってもよい。
【0016】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、前記バインダが、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下であるバインダであってもよい。
【0017】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、前記バインダが、無機バインダであってもよい。
【0018】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、前記無機バインダが、コロイド状の無機酸化物粒子であってもよい。
【0019】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、前記ケミカルフィルタの構造が、ハニカム構造、プリーツ構造、又は三次元網目構造であってもよい。
【0020】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、前記ハニカム構造が、蜂の巣状の構造、又は、断面が格子状、円形状、波形状、多角形状、不定形状、若しくは全部あるいは一部に曲面を有する形状であって、空気が構造体の要素となるセルを通過する構造であってもよい。
【0021】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、ペレット化された前記吸着剤を含むケミカルフィルタであってもよい。
【0022】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、前記ペレット化に、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下であるバインダを用いてもよい。
【0023】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、前記ペレット化された吸着剤を含むフィルタの構造が、プリーツ構造、ペレット充填構造、及び三次元網目構造からなる群より選ばれた少なくとも1つの構造であってもよい。
【0024】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、抄紙法により製造されたケミカルフィルタであってもよい。
【0025】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、セラミック型のケミカルフィルタであってもよい。
【0026】
前記シラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、フィルタ基材に、バインダを用いずに前記吸着剤が付着されているケミカルフィルタであってもよい。
【0031】
本発明は、さらに、前記のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタを備えた露光装置を提供する。
【0032】
本発明は、さらに、前記のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタを備えた塗布現像装置を提供する。
【0033】
本発明は、さらに、前記のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタを備えたガス状汚染物質が制御されたクリーンルームを提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明のケミカルフィルタによれば、特に、TMS等のシラノール化合物に対しては、一旦吸着したTMS等が再度脱離しないため、活性炭と比較して除去効果が長時間持続する。即ち、除去効率は短時間で低下することはなく、なだらかに下がり、活性炭のようにTMSを放出してマイナス効果(フィルタ上流よりも下流側の方が高濃度となる現象)になることがない。
【0035】
さらに、本発明のケミカルフィルタによれば、空気中のシラノール化合物を極めて効率よく除去することができるため、吸着剤の使用量をごく少量とすることができ、また、フィルタ基材の枚数も削減することができ、省エネルギー、低コスト、省スペースとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施例1で用いた通気試験装置の概略図である。
図2】実施例1で用いた通気試験装置の部分概略断面図である。
図3】実施例1の通気試験結果を示すグラフ(ゼオライトの水混合物のpHと除去効率の関係)である。
図4】実施例1の通気試験結果を示すグラフ(シリカゲル、酸性白土、活性白土、珪藻土、ヒュームドシリカ、及びタルクの水混合物のpHと除去効率の関係)である。
図5】実施例2の通気試験結果を示すグラフ(ゼオライトの水混合物のpHと除去効率の関係(時間変化))である。
図6】実施例2の通気試験結果を示すグラフ(シリカゲル、酸性白土、活性白土、及び珪藻土の水混合物のpHと除去効率の関係(時間変化))である。
図7】実施例4で用いた通気試験装置の概略図である。
図8】実施例4の通気試験結果を示すグラフ(TMSの除去効率の時間変化)である。
図9】実施例5の通気試験結果を示すグラフ(バインダの水混合物のpHと除去効率の関係(時間変化))である。
図10】実施例6の通気試験結果を示すグラフ(合成ゼオライトの含有量と除去効率の関係(時間変化))である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[ケミカルフィルタ]
本発明の第一のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を吸着剤として用いているシラノール化合物除去用ケミカルフィルタである。
【0038】
本発明の第二のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、無機シリカ系多孔質材料が吸着剤として用いられているケミカルフィルタであって、前記ケミカルフィルタから分離させた、吸着剤を含む混合物の、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である、シラノール化合物除去用ケミカルフィルタである。上記水混合物は、例えば、上記吸着剤の混合物5gに純水を加え、水混合物全体を100gとすることで、水混合物全体に対する上記吸着剤の混合物の含有割合を5wt%とし、十分に撹拌したのちに得ることができる。
【0039】
本発明の第三のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、無機シリカ系多孔質材料が吸着剤として用いられているケミカルフィルタであって、前記吸着剤を含む前記ケミカルフィルタの一片を純水に浸漬して得られる浸漬液(ケミカルフィルタの含有割合:5wt%)のpHが7以下である、シラノール化合物除去用ケミカルフィルタである。上記浸漬液は、例えば、吸着剤を含むケミカルフィルタ片5gに純水を加え、浸漬液全体を100gとすることで、浸漬液全体に対する上記吸着剤を含むケミカルフィルタ片の含有割合を5wt%とし、十分に撹拌したのちに得ることができる。
【0040】
本明細書中では、「本発明の第一のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ」、「本発明の第二のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ」、及び「本発明の第三のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ」を総称して、「本発明のケミカルフィルタ」と称する場合がある。また、本明細書では、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を用いた吸着剤を、「本発明の吸着剤」と称する場合がある。また、本明細書において、「水混合物のpH」は、特に断りのない限り、「水混合物(含有割合:5wt%)のpH」を言うものとする。また、本明細書において、「浸漬液のpH」は、特に断りのない限り、「浸漬液(ケミカルフィルターの割合:5wt%)のpH」を言うものとする。
【0041】
(本発明の吸着剤)
本発明のケミカルフィルタは、無機シリカ系多孔質材料を必須の吸着剤として用いている。上記無機シリカ系多孔質材料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0042】
本発明の第一のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタにおいて、上記無機シリカ系多孔質材料は、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下(例えば、3〜7)であり、好ましくは7未満(例えば、3以上7未満)、より好ましくは3〜6.5、さらに好ましくは4〜6である。上記pHが7以下であることにより、シラノール化合物を高効率で除去することができる。
【0043】
本明細書において、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHとは、水混合物全体に対して、当該水混合物中に混合させる物質(対象物質)の含有割合が5wt%である条件で測定したときのpHをいう。例えば、無機シリカ系多孔質材料の、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHは、無機シリカ系多孔質材料の含有割合が5wt%である条件で測定したときのpHである。上記水混合物のpHは、例えば、pH測定器を用いて測定することができる。
【0044】
本明細書において、水混合物(含有割合:5wt%)は、例えば、以下の「水混合物(含有割合:5wt%)の作製方法」によって作製することができる。
【0045】
水混合物(含有割合:5wt%)の作製方法
上記水混合物(含有割合:5wt%)は、例えば、含有割合が5wt%となるように、水混合物のpHの測定の対象とするサンプル(「対象サンプル」と称する場合がある)を純水に混合し、十分に撹拌したのち静置して作製することができる。上記水混合物の作製には純水を使用するが、有機溶媒と純水との混合溶媒を使用してもよい。ただし、有機溶媒を使用する場合、有機溶媒の種類や濃度によっては酸解離定数が大きく変動するため、一般的に、アルコールなどの水溶性の有機溶媒であって、pHに大きな影響を与えない範囲の濃度とする。なお、上記「wt%」は、「重量%」と同一の意味である。含有割合が5wt%である水混合物を作製するには、具体的には、例えば、対象サンプルを、秤などを用いて5g計り取り、さらに純水を加え、全体を100gとし、液を十分に撹拌することで作製することができる。例えば、無機シリカ系多孔質材料の水混合物(含有割合:5wt%)は、無機シリカ系多孔質材料を上記対象サンプルとして作製することができる。
【0046】
本発明のケミカルフィルタに用いられている上記無機シリカ系多孔質材料は、特に限定されないが、比表面積(BET比表面積)が10m2/g以上(例えば、10〜800m2/g)であってもよく、好ましくは50m2/g以上(例えば、50〜750m2/g)、より好ましくは100m2/g以上(例えば、100〜700m2/g)である。
【0047】
上記無機シリカ系多孔質材料は、特に限定されないが、多孔質材料中のSiO2の含有量が5重量%以上(例えば、5〜100重量%)であってもよく、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上である無機シリカ系多孔質材料などが挙げられる。
【0048】
上記無機シリカ系多孔質材料としては、特に限定されないが、例えば、ゼオライト(例えば、合成ゼオライト、天然ゼオライト等)、シリカゲル、シリカアルミナ、ケイ酸アルミニウム、多孔質ガラス、珪藻土、含水ケイ酸マグネシウム質粘土鉱物(例えば、タルク)、酸性白土、活性白土、活性ベントナイト、メソポーラスシリカ、アルミノケイ酸塩、ヒュームドシリカなどが挙げられる。吸着剤として上記無機シリカ系多孔質材料を用いることにより、シラノール化合物を高効率で除去することができる。中でも、合成ゼオライトが好ましい。吸着剤として合成ゼオライトを用いると、より長期間に亘ってシラノール化合物を効率よく除去し続けることができる。上記無機シリカ系多孔質材料は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。なお、上記合成ゼオライトには、人工ゼオライトが含まれるものとする。
【0049】
上記合成ゼオライトとしては、特に限定されないが、例えば、A型、フェリエライト、MCM−22、ZSM−5、ZSM−11、SAPO−11、モルデナイト、ベータ型、X型、Y型、L型、チャバザイト、オフレタイト等の骨格構造を有する合成ゼオライトなどが挙げられる。なお、上記合成ゼオライトは、1種の骨格構造のゼオライトを使用してもよいし、2種以上のゼオライトを組み合わせて使用してもよい。
【0050】
上記人工ゼオライトとしては、例えは、一般に、石炭火力発電所から排出される石炭灰や製紙工場から排出される製紙スラッジ焼却灰など、ケイ素やアルミニウムを含む廃棄物から製造されたゼオライトなどが挙げられる。上記人工ゼオライトは、1種のみを使用を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記天然ゼオライトとしては、特に限定されないが、例えば、クリノプチロライト(斜プチロル沸石)、モルデナイト(モルデン沸石)、菱沸石、ナトロライト、ゴンナルダイト、エディングトナイト、アナルシム、リューサイト、ユガワラライト、ギスモンダイン、ポーリンジャイト、フィリップサイト、チャバザイト、エリオナイト、ホージャサイト、フェリエライト、ミューティナアイト、チェルニヒアイト、ヒューランダイト、スティルバイト、コウレサイト、アルミノケイ酸塩、ベリロケイ酸塩(ロギアナイト、シャンハライト等)、ジンコケイ酸塩(ガウルタイト)などが挙げられる。上記天然ゼオライトは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
上記ゼオライトとして、上記天然ゼオライトを酸処理して得られる酸処理物や、上記天然ゼオライト中の陽イオンを水素に置き換えたプロトン型ゼオライトを用いてもよい。上記プロトン型ゼオライトは、例えば、天然ゼオライト中のナトリウムイオンなどの陽イオンをアンモニウムイオンにイオン交換した後、焼成する方法などを用いて作製することができる。
【0053】
上記ゼオライトは、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下(例えば、3〜7)であり、好ましくは7未満(例えば、3以上7未満)、より好ましくは3〜6.8、さらに好ましくは3.5〜6.7、特に好ましくは4〜6.5である。なお、ゼオライトの水混合物(含有割合:5wt%)は、上記「水混合物(含有割合:5wt%)の作製方法」により、ゼオライトを対象サンプルとして作製することができる。
【0054】
上記合成ゼオライトにおけるSiO2とAl23の比(モル比)[SiO2/Al23]は、特に限定されないが、シラノール化合物の除去効率の観点から、4〜2000であってもよく、好ましくは10〜1500、より好ましくは15〜1000、さらに好ましくは100〜500である。
【0055】
上記ゼオライトは、特に限定されないが、骨格構造中に陽イオンを含んでいてもよい。上記陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、水素イオン;アンモニウムイオン;リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;亜鉛イオン、スズイオン、鉄イオン、白金イオン、パラジウムイオン、チタンイオン、銀イオン、銅イオン、マンガンイオン等の遷移金属イオンなどが挙げられる。上記陽イオンは1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。上記ゼオライト中の上記陽イオンの含有量は特に限定されない。
【0056】
なお、上記ゼオライトの比表面積(BET比表面積)、平均粒子径(平均粒径)、平均細孔径(直径)、全細孔容積などは、特に限定されない。また、上記ゼオライトは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0057】
上記酸性白土としては、特に限定されず、各地で産出される酸性白土を用いることができる。例えば、新潟県産の酸性白土、山形県産の酸性白土などが挙げられる。上記酸性白土は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0058】
上記活性白土は、上記酸性白土を酸処理することによって得られ、例えば、上記酸性白土を硫酸等の鉱酸でモンモリロナイトの基本構造の全部を破壊しない程度に酸処理することにより、MgやFeの酸化物等の金属酸化物が溶出し、比表面積や細孔容積を増大させたものなどが挙げられる。上記活性白土は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0059】
上記珪藻土としては、特に限定されず、各地で産出される珪藻土を用いることができる。例えば、北海道稚内産の珪藻土(珪藻頁岩)、秋田県綴子産の珪藻土、岡山県蒜山産の珪藻土、大分県九重産の珪藻土、石川県能登産の珪藻土(珪藻泥岩)などのいずれの珪藻土であってもよい。上記珪藻土は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0060】
上記合成ゼオライト以外の無機シリカ系多孔質材料(他の無機シリカ系多孔質材料)は、純水に混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下(例えば、3〜7)であり、好ましくは7未満(例えば、3以上7未満)、より好ましくは3〜6.5、さらに好ましくは3.5〜6.3、特に好ましくは4〜6である。なお、他の無機シリカ系多孔質材料の水混合物(含有割合:5wt%)は、上記「水混合物(含有割合:5wt%)の作製方法」により、他の無機シリカ系多孔質材料を対象サンプルとして作製することができる。
【0061】
上記合成ゼオライト以外の無機シリカ系多孔質材料において、SiO2の含有量は、特に限定されないが、無機シリカ系多孔質材料の総重量(100重量%)に対して、50重量%以上(例えば、50〜100重量%)であってもよく、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
【0062】
本発明の吸着剤は、特に限定されないが、必要に応じて、上記水混合物のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料以外の吸着剤(他の吸着剤)を含んでいてもよい。即ち、本発明の吸着剤として、上記水混合物のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料とともに、他の吸着剤を用いてもよい。上記他の吸着剤としては、例えば、上記水混合物のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料以外の多孔質材料、その他のシリカ、粘土鉱物、活性炭、アルミナ、ガラスなどが挙げられる。吸着剤として上記他の吸着剤を併用することで、本発明の効果に加えて、他の吸着剤の効果を有するケミカルフィルタとすることもできる。
【0063】
本発明の吸着剤中(全吸着剤中)の上記水混合物のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料の含有量は、特に限定されないが、シラノール化合物の除去効率の観点から、吸着剤の総重量(100重量%)に対して、30重量%以上(例えば、30〜100重量%)が好ましく、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。
【0064】
本発明の吸着剤中(全吸着剤中)の合成ゼオライトの含有量は、特に限定されないが、シラノール化合物の除去効率の観点から、吸着剤の総重量(100重量%)に対して、10重量%以上(例えば、10〜100重量%)が好ましく、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。
【0065】
本発明のケミカルフィルタは、水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を吸着剤として用いたものであれば、特に限定されない。上記ケミカルフィルタとしては、例えば、フィルタ基材に本発明の吸着剤が付着(固着)されているケミカルフィルタが挙げられる。なお、本発明の吸着剤がバインダとしての機能も有するものである場合、バインダを用いずに吸着剤をフィルタ基材に付着させることもできるが、本発明の吸着剤はバインダを用いてフィルタ基材に付着されていることが好ましい。即ち、上記ケミカルフィルタは、フィルタ基材に、バインダを用いずに本発明の吸着剤が付着されている(あるいは、本発明の吸着剤のみが付着されている)ケミカルフィルタであってもよいが、フィルタ基材に本発明の吸着剤がバインダを用いて付着されているケミカルフィルタであることが好ましい。
【0066】
本発明の吸着剤は、特に限定されないが、ペレット化されていてもよい。即ち、本発明の吸着剤は、ペレット化された吸着剤であってもよい。即ち、本発明のケミカルフィルタは、ペレット化された本発明の吸着剤を含んでもよい。上記ペレット化は、例えば、本発明の吸着剤の粉末を、上記バインダを用いて造粒して行うことができる。
【0067】
(フィルタ基材)
上記フィルタ基材としては、特に限定されず、ケミカルフィルタのフィルタ基材として一般に用いられるものを使用できる。上記フィルタ基材として、例えば、有機繊維や無機繊維等の繊維から構成される繊維状基材(織布あるいは不織布)、ポリウレタンフォーム等から構成される発泡体、耐火性金属酸化物や耐火性無機物を使用したフィルタ基材などが挙げられる。中でも、上記フィルタ基材として、繊維状基材が好ましく、特にガラスクロス(ガラス布)が好ましい。
【0068】
上記繊維状基材における繊維としては、例えば、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維、ロックウール繊維、炭素繊維等の無機繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維等)、ポリビニルアルコール繊維、アラミド繊維、パルプ繊維、レーヨン繊維等の有機繊維などが挙げられる。上記の中でも、ケミカルフィルタの強度を高める観点、及び繊維からのアウトガスなどによる汚染が少ない観点から、無機繊維が好ましい。上記繊維は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、上記無機繊維及び上記有機繊維の形状は特に限定されない。
【0069】
(バインダ)
上記バインダは、吸着剤のフィルタ基材への付着を促進させることや、吸着剤のペレット化に使用することができる。上記バインダとしては、特に限定されず、公知乃至慣用のフィルタ用(例えば、エアフィルタ用、ケミカルフィルタ用等)のバインダを用いることができる。上記バインダとしては、有機バインダであってもよいし、無機バインダであってもよい。上記バインダは、特に限定されないが、無機バインダであることが好ましい。上記バインダは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0070】
上記バインダは、酸性であってもよいし、塩基性であってもよいが、上記無機シリカ系多孔質材料のpHを低く維持する観点から、酸性であることが好ましい。酸性のバインダは、純水に混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下(例えば、3〜7)であり、好ましくは7未満(例えば、3以上7未満)、より好ましくは3〜6.8、さらに好ましくは3.5〜6.7、特に好ましくは4〜6.5である。なお、バインダの水混合物(含有割合:5wt%)は、上記「水混合物(含有割合:5wt%)の作製方法」により、バインダを対象サンプルとして作製することができる。なお、上記バインダがコロイダルシリカなど溶媒を含むバインダである場合、上記含有割合は、上記水混合物に対する、上記バインダ中の固形分の含有割合である。
【0071】
上記有機バインダとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ABS樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等のセルロース、アラビヤゴムなどが挙げられる。上記有機バインダは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0072】
上記無機バインダとしては、上記無機シリカ系多孔質材料の表面を完全に覆わない粒子状のものが好ましく、例えば、ケイ酸ソーダ、シリカゾル、アルミナゾル、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイド状酸化スズ、コロイド状酸化チタンなどの無機酸化物粒子等が挙げられ、中でも、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイド状酸化スズ、コロイド状酸化チタン等のコロイド状の無機酸化物粒子などが好ましく挙げられる。中でも、コロイダルシリカが好ましい。上記無機バインダは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0073】
上記無機バインダの平均粒子径(一次粒子径)、比表面積(BET比表面積)、平均細孔径(直径)、全細孔容積などは、特に限定されない。
【0074】
(ケミカルフィルタの構造)
本発明のケミカルフィルタの構造は、特に限定されず、ハニカム構造、プリーツ構造、ペレット充填構造、三次元網目構造等のいずれであってもよい。これらの中でも、ハニカム構造、プリーツ構造、三次元網目構造が好ましく、圧力損失を抑制する観点から、ハニカム構造が特に好ましい。本発明の吸着剤として、ペレット化された吸着剤(ペレット)を用いる場合は、特に限定されないが、プリーツ構造、ペレット充填構造、三次元網目構造であることが好ましい。上記構造は、1の構造のみであってもよいし、2以上の構造を組み合わせたものであってもよい。
【0075】
上記ハニカム構造には、いわゆる蜂の巣状の構造の他、例えば、断面が格子状、円形状、波形状、多角形状、不定形状、全部あるいは一部に曲面を有する形状などであって、空気が構造体の要素となるセルを通過し得る構造が全て含まれる。
【0076】
上記ハニカム構造としては、例えば、コルゲート加工によって成形されたコルゲート状のシートと平坦状のシートが交互に積層して得られる構造(コルゲート状ハニカム構造)、プリーツ形状のシートと平坦状のシートからなる構造であって、通気方向に対して、プリーツ形状のシートと直角に平坦状のシートを順に積層した構造などが挙げられる。
【0077】
上記プリーツ構造には、例えば、限られたスペースの中でろ過面積を効率的に拡大することを目的として、波形あるいはV字型が連続するように加工されたジャバラ形状を有する構造が含まれる。
【0078】
上記ペレット充填構造は、例えば、上記ペレット化された吸着剤を、気体が内部を通過できる構造のケーシング内に充填した構造が挙げられる。また、吸着剤の粉末の粒径が、ケーシング内で保持できる程度に大きい粒径を有する場合は、上記ペレット充填構造の代わりに、ペレット化せず、粉末のままでもケーシング内に充填した構造とすることもできる。
【0079】
上記三次元網目構造は、例えば、上記ポリウレタンフォーム等から構成される発泡体や、グラスウールやロックウール繊維、あるいは上記繊維状基材の繊維を立体的に加工して作製した網目構造体のフィルタ基材を有する構造、あるいは針状繊維化されたポリテトラフルオロエチレンなどが好ましく例示される。
【0080】
(本発明のケミカルフィルタの製造方法)
本発明のケミカルフィルタの製造方法は、特に限定されず、公知乃至慣用の吸着剤を有するケミカルフィルタの製造方法を用いることができる。本発明のケミカルフィルタは、特に限定されないが、例えば、フィルタ基材に本発明の吸着剤を付着させる工程(吸着剤付着工程)を少なくとも有する。本発明のケミカルフィルタの製造方法は、特に限定されないが、上記吸着剤付着工程以外の工程(他の工程)を有していてもよい。また、上記フィルタ基材は、市販のフィルタ基材を購入してそのまま使用してもよい。
【0081】
上記吸着剤付着工程において、本発明の吸着剤の付着は、例えば、上記フィルタ基材を、本発明の吸着剤、水、及び、必要に応じて上記バインダや接着剤を含む懸濁液中に浸漬した後、懸濁液から取り出し、乾燥することにより行うことができる。上記懸濁液には、本発明の効果を損なわない範囲内で、沈降防止剤を含んでいてもよい。
【0082】
本発明の吸着剤の付着は、他に、上記フィルタ基材に、上記バインダ樹脂及び水を含む懸濁液中に浸漬した後、懸濁液から取り出し、乾燥し、その後、フィルタ基材表面に本発明の吸着剤を分散して付着させることにより行うこともできる。
【0083】
本発明の吸着剤の付着は、他に、上記フィルタ基材に、本発明の吸着剤の粉末を造粒して製造したペレットを、接着剤等で付着させたり、フィルタ基材内部に充填したりして行うこともできる。本発明の吸着剤の粉末を造粒する際には、必要に応じて上記バインダを混合してもよい。本発明の吸着剤の粉末、上記バインダ及び水を適量含んだ状態で混合すると、粘土状の粘性と可塑性を示すようになり,造粒が可能となる。
【0084】
本発明の吸着剤の付着は、他に、針状繊維化されたポリテトラフルオロエチレン樹脂を用い、該針状繊維に本発明の吸着剤を捕捉させて担持させることにより行うこともできる。
【0085】
なお、上記プリーツ構造のケミカルフィルタにおいて、本発明の吸着剤の付着は、例えば2枚の不織布製のフィルタ基材の間に、本発明の吸着剤の粉末やペレット化された吸着剤を、接着剤等を用いて挟み込むことにより行うこともできる。
【0086】
上記他の工程としては、例えば、フィルタ基材を加工する工程(フィルタ基材加工工程)などが挙げられる。なお、上記フィルタ基材加工工程と上記吸着剤付着工程の順序は、特に限定されないが、作業性の観点から、フィルタ基材加工工程、吸着剤付着工程の順が好ましい。
【0087】
上記フィルタ基材加工工程としては、例えば、上述したように、フィルタ基材にコルゲート加工を施す工程、ハニカム構造を形成する工程、フィルタ基材に細孔を設ける工程などが挙げられる。上記フィルタ基材加工工程は、1工程のみを行ってもよいし、同一又は異なる2工程以上を行ってもよい。上記フィルタ基材加工工程を2工程以上行う場合も、その順序は特に限定されない。
【0088】
本発明のケミカルフィルタは、他に、抄紙法により製造されたケミカルフィルタであってもよい。上記抄紙法により製造されたケミカルフィルタは、例えば、繊維状基材及び本発明の吸着剤を少なくとも有するケミカルフィルタであって、上記繊維状基材を構成する繊維及び本発明の吸着剤を含有する懸濁液に凝集剤を加えることにより生成されるフロックを湿式抄紙法でシート化した後、熱処理して得られる。
【0089】
本発明のケミカルフィルタは、他に、セラミック型のケミカルフィルタであってもよい。上記セラミック型のケミカルフィルタは、公知乃至慣用のセラミックス材料の加工方法により作製することができる。例えば、本発明の吸着剤を、セラミックス原料とともに成形及び焼成して製造することができる。具体的には、例えば、本発明の吸着剤、上記バインダ、造孔材、及び必要に応じて他のセラミックス原料を秤量及び混練を行って坏土を作製した後、この坏土をスクリュー式押出機等の押出機により押出加工し、成形体を作製する。得られた成形体を乾燥及び焼成して、多孔質のセラミック型のケミカルフィルタが得られる。上記セラミック型のケミカルフィルタは、特に限定されないが、ハニカム構造であるセラミック型のケミカルフィルタが好ましい。上記セラミック型のケミカルフィルタは、適宜、端面をダイヤモンドカッター、ダイヤモンドソー等の研削工具で、所定の長さに加工することもできる。
【0090】
本発明のケミカルフィルタは、上記の中でも、表面に本発明の吸着剤が無機バインダにより付着された波形シートが、薄板シートを介して複数個積層されたハニカム構造を有するケミカルフィルタが特に好ましい。
【0091】
本発明の第一のケミカルフィルタは、吸着剤として、水混合物のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を用いている。これにより、本発明の第一のケミカルフィルタは、ケミカルフィルタ中に水混合物のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料の表面が存在することで固体酸として作用し、シラノール化合物の脱水縮合によりシラノール化合物を強固に吸着するため、シラノール化合物を効果的に除去できるものと推測される。なお、吸着剤として他の吸着剤を併用した場合であっても、ケミカルフィルタ内に水混合物のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料の表面が存在するため、シラノール化合物を効果的に除去できるという効果を維持することができる。
【0092】
本発明の第二のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタにおいて、ケミカルフィルタから分離させた、吸着剤を含む混合物の、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHは、7以下(例えば、3〜7)であり、好ましくは7未満(例えば、3以上7未満)、より好ましくは3〜6.5、さらに好ましくは4〜6である。上記pHが7以下であることにより、シラノール化合物を高効率で除去することができる。なお、上記吸着剤には、上記無機シリカ系多孔質材料が含まれている。
【0093】
本発明の第二のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタにおいて、上記水混合物(含有割合:5wt%)は、例えば、上記「水混合物(含有割合:5wt%)の作製方法」で説明された方法により作製することができる。具体的には、吸着剤を含む混合物を対象サンプルとして作製することができる。
【0094】
本発明の第二のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタにおいて、上記分離は、例えば、無機シリカ系多孔質材料が吸着剤として用いられているケミカルフィルタを、メタノール、アセトン等の有機溶媒や水に浸漬し、上記ケミカルフィルタを有機溶媒中又は水中で振とうすることによって行うことができる。他に、上記ケミカルフィルタを空気中で振とうすることによって行ってもよい。
【0095】
本発明の第三のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタにおいて、吸着剤を含むケミカルフィルタの一片を純水に浸漬して得られる浸漬液(ケミカルフィルタの含有割合:5wt%)のpHは、7以下(例えば、3〜7)であり、好ましくは7未満(例えば、3以上7未満)、より好ましくは3〜6.5、さらに好ましくは4〜6である。上記pHが7以下であることにより、シラノール化合物を高効率で除去することができる。なお、上記吸着剤には、上記無機シリカ系多孔質材料が含まれている。
【0096】
上記の、吸着剤を含むケミカルフィルタの一片を純水に浸漬して得られる浸漬液(ケミカルフィルタの割合:5wt%)のpHとは、浸漬液の総重量に対して、当該浸漬液中に混合させる、吸着剤を含むケミカルフィルタの含有割合が5wt%である条件で測定したときのpHをいう。上記浸漬液のpHは、例えば、pH測定器を用いて測定することができる。
【0097】
上記浸漬液(ケミカルフィルタの割合:5wt%)は、例えば、吸着剤を含むケミカルフィルタの一片を、ケミカルフィルタの割合が5wt%となるように純水に混合し、十分に撹拌したのち静置して作製することができる。なお、上記「wt%」は、「重量%」と同一の意味である。ケミカルフィルタの含有割合が5wt%である浸漬液を作製するには、例えば、吸着剤を含むケミカルフィルタの一片を粉砕等によって粉末状にし、秤などを用いて5g計り取り、さらに純水を加え、浸漬液全体の重量を100gとし、浸漬液を十分に撹拌することで作製することができる。
【0098】
本発明の第三のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタにおいて、上記無機シリカ系多孔質材料は、特に限定されないが、純水と混合させて得られる水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下(例えば、3〜7)であることが好ましく、より好ましくは7未満(例えば、3以上7未満)、さらに好ましくは3〜6.5、特に好ましくは4〜6である。なお、上記吸着剤は、特に限定されないが、上記水混合物(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料とともに、他の吸着剤が用いられていることが好ましい。
【0099】
本発明の第二のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタ、及び本発明の第三のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、例えば、吸着剤として、本発明の第一シラノール化合物除去用ケミカルフィルタに用いられている上記水混合物のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を用いることで製造することができる。
【0100】
[空気浄化方法]
本発明の空気浄化方法では、本発明のケミカルフィルタを用いて空気中のシラノール化合物を除去する。このため、本発明のケミカルフィルタは、空気中のシラノール化合物を除去するため適宜な場所に設置できる。例えば、本発明のケミカルフィルタは、クリーンルーム内のケミカルフィルタ(特に、露光装置の内部ケミカルフィルタ、塗布現像装置の内部ケミカルフィルタ)、下水処理場のケミカルフィルタ、埋め立て地のケミカルフィルタなど、シラノール化合物の除去が求められている用途として、特に好ましく用いることができる。
【0101】
上記クリーンルーム(例えば、ガス状汚染物質が制御されたクリーンルーム、特に、半導体の製造工場のクリーンルームなど)では、シラノール化合物等の様々なガス状有機化合物が存在している。シラノール化合物は、半導体のシリコンウエハ表面や液晶ガラス基板表面に吸着し、これら製品に不具合を生じさせることがある。また、上記下水処理場において、消化槽から発生する消化ガスには、シャンプーや化粧品に含まれるシリコーンオイルに起因する微量のシラノール化合物が含まれている。さらに、上記埋め立て地においては、埋め立てに使用する泥(活性汚泥など)中のバイオガスに含まれるシロキサン化合物やシラノール化合物が問題となることがあった。従って、本発明のケミカルフィルタは、このような用途の空気浄化に特に好ましく使用することができる。
【0102】
上記クリーンルーム内のケミカルフィルタとしては、中でも、半導体製造プロセスの露光工程で用いる露光装置の内部用のケミカルフィルタ、塗布現像装置の内部用のケミカルフィルタであることが好ましい。半導体製造プロセスの露光工程で用いる露光装置の内部、あるいは塗布現像装置(コーターデベロッパー)その他において、TMSが発生することがあり、浮遊しているTMSは分解され、その分解されたものはレンズ等に結合して曇りの原因となり、露光障害等を引き起こすおそれがある。また、本発明のケミカルフィルタを上記露光装置の内部や、塗布現像装置に用いることで、本発明の露光装置、あるいは本発明の塗布現像装置とすることができる。
【0103】
本発明のケミカルフィルタの使用方法としては、例えば、通気ファンなどの動力を用いて、ケミカルフィルタを備えた装置の内部へ、除去対象の物質を含む空気を強制的に導入し、その除去対象の物質を除去する通気法の他に、ケミカルフィルタを備えた装置の内部へ動力を用いて空気を導入するのではなく、自然拡散や自然対流のみの接触で除去対象の物質の除去を行う静置法が挙げられる。即ち、本発明のケミカルフィルタは、通気法あるいは静置法のいずれでも使用することができる。
【0104】
[露光装置、塗布現像装置]
本発明の露光装置は、本発明のケミカルフィルタを備えている。上記露光装置は、本発明のケミカルフィルタを有する露光装置であれば特に限定されない。また、本発明の塗布現像装置は、本発明のケミカルフィルタを備えている。上記塗布現像装置は、本発明のケミカルフィルタを有する塗布現像装置であれば特に限定されない。本発明の露光装置及び本発明の塗布現像装置によれば、内部ケミカルフィルタとして、水混合物のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を吸着剤として用いた本発明のケミカルフィルタが用いられているため、活性炭を吸着剤とする従来のケミカルフィルタを用いた露光装置及び塗布現像装置と比較して、空気中のTMS等のシラノール化合物を効率よく除去できる。特に、シラノール化合物の除去効率は短時間で低下することはなく、活性炭のようにTMSを放出してマイナス効率(フィルタ上流よりも下流側の方が高濃度)になることがない。また、シラノール化合物を二量化せずに吸着できるので、空気中のシラノール化合物が低濃度であっても効率よく除去できる。そのため、空気中のシラノール化合物に起因する露光障害等を顕著に抑制できる。
【実施例】
【0105】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、それらに何ら制限されるものではない。なお、「ppb」は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0106】
実施例1
図1に示すような通気試験装置を用いて、吸着剤のガス除去効率を測定した。
すなわち、2本のアクリル製の円筒状の試験カラム(内径50mm、長さ30cm)1を直列につないだものを6系列並列に配置し、カラムの上流側にガス供給用のチューブ2を取り付け、カラムの下流側に、流量計3、流量調整バルブ4、ポンプ5をこの順に取り付けた。直列につないだ2本のカラムの間に不織布6を挟み、不織布6上に試験サンプル(吸着剤)7を5mm厚で敷き、試験サンプルのろ過風速が5cm/sとなるように流量を調整したエアを流した。カラムに流すエアは、恒温恒湿槽を用いて温度23℃、湿度50%に調整した空気に、TMS3ppb、VOC250ppbを混ぜて使用した。上記通気試験装置の概略断面図(1系列分)を図2に示す。
試験サンプル(吸着剤)として、表1に示す水混合物(含有割合:5wt%)のpHが異なる複数のゼオライト(合成ゼオライト)(平均粒子径:3〜20μm)、表2に示す水混合物(含有割合:5wt%)のpHが異なる複数のシリカゲル、酸性白土、活性白土、珪藻土、ヒュームドシリカ、及びタルク(平均粒子径:5〜30μm)を用いた。なお、ヒュームドシリカは、ペレット状に加工したものを用いた。試験サンプル6つごとに除去効率の測定を行い、測定を行う6つの試験サンプルをそれぞれ、6系列並列に配置したそれぞれのカラム1に用いた。
通気試験開始後3日目に、カラムの上流側、下流側のエアを吸着管により捕集し、エアを捕集した吸着管をATD(加熱脱着装置)−GC/MSによるガス分析に付し、TMSのガス濃度を測定した。測定したカラムの上流側、下流側のTMSのガス濃度からTMSの除去効率を下記式で算出し、試験サンプルの水混合物のpHと除去効率の関係のグラフを作成した。
除去効率(%)={(上流側のガス濃度−下流側のガス濃度)/上流側のガス濃度}×100
結果を図3(ゼオライト)、図4(シリカゲル、酸性白土、活性白土、珪藻土、ヒュームドシリカ、タルク)に示す。図4中、四角印(□)はシリカゲルのデータ、三角印(△)は酸性白土のデータ、丸印(○)は活性白土のデータ、バツ印(×)は珪藻土のデータ、菱形印(◇)はヒュームドシリカのデータ、アスタリスク印(*)はタルクのデータをそれぞれ示す。グラフの横軸は試験サンプルの水混合物のpH、縦軸は除去効率(%)である。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
図3に示されるように、水混合物のpHが7以下のゼオライトは、水混合物のpHが7を超えるゼオライトに比べて、TMSの除去効率が著しく大きい。また、水混合物のpHが低いゼオライトほどTMSの除去効率が高い傾向にある。図4に示されるように、pHが低い無機シリカ系多孔質材料ほどTMSの除去効率が高い傾向にある。
【0110】
実施例2
カラムに流すエアとして、恒温恒湿槽を用いて温度23℃、湿度50%に調整した空気に、TMS7ppb、VOC200ppbを混ぜたものを使用し、試験サンプルのろ過風速が3cm/sとなるように流量を調整したエアを流したこと以外は、実施例1と同様に、図1に示すような通気試験装置を用いて、吸着剤のガス除去効率を測定した。
試験サンプル(吸着剤)として、表1及び表2に示す中でも、特定のゼオライト、シリカゲル、酸性白土、活性白土、珪藻土をそれぞれ用いた。
カラムの上流側、下流側のエアを吸着管により捕集し、エアを捕集した吸着管をATD(加熱脱着装置)−GC/MSによるガス分析に付し、TMSのガス濃度を測定した。測定したカラムの上流側、下流側のTMSのガス濃度からTMSの除去効率を下記式で算出し、試験サンプルの時間変化のグラフを作成した。
除去効率(%)={(上流側のガス濃度−下流側のガス濃度)/上流側のガス濃度}×100
結果を図5(ゼオライト)、図6(シリカゲル、酸性白土、活性白土、珪藻土)に示す。図5中、バツ印(×)はゼオライトAのデータ、菱形印(◇)はゼオライトBのデータ、アスタリスク印(*)はゼオライトCのデータ、三角印(△)はゼオライトDのデータ、四角印(□)はゼオライトGのデータをそれぞれ示す。図6中、菱形印(◇)はシリカゲルAのデータ、四角印(□)はシリカゲルCのデータ、三角印(△)は酸性白土Aのデータ、バツ印(×)は酸性白土Bのデータ、アスタリスク印(*)は活性白土Bのデータ、丸印(○)は珪藻土Aのデータをそれぞれ示す。また、図5及び図6中、グラフの横軸は経過日数(日)、縦軸は除去効率(%)である。
【0111】
図5に示されるように、水混合物のpHが7以下のゼオライト(ゼオライトA、ゼオライトB、ゼオライトC、ゼオライトD)は、水混合物のpHが7を超えるゼオライト(ゼオライトG)に比べて、日数が経過してもTMSの除去効率が著しく大きい。また、図6に示されるように、水混合物のpHが7以下のシリカゲル(シリカゲルA)、酸性白土(酸性白土A)、活性白土(活性白土B)、珪藻土(珪藻土A)は、水混合物のpHが7を超えるシリカゲル(シリカゲルC)、酸性白土(酸性白土B)に比べて、日数が経過してもTMSの除去効率が大きい。
【0112】
実施例3
実施例2の通気試験の終了後のゼオライトAを30mlのアセトン溶媒に入れ、2時間振とうした。その後、上澄み液をGC−FID分析に付した。TMSのGC−FIDで測定した面積値を表3に示した。なお、比較対象として、ヤシ殻活性炭(フタムラ化学(株)製、商品名「太閤CB」)を吸着剤として、実施例2と同様の通気試験を行った後、上記測定サンプルと同様にTMSのGC−FIDで測定した面積値を表3に示した。
【0113】
【表3】
【0114】
表3に示されるように、ヤシ殻活性炭の場合は、吸着されたTMSはアセトン抽出により脱着されるが、ゼオライトAの場合は、吸着されたTMSはアセトン抽出によって脱着されない。このことから、TMSは水混合物のpHが7以下のゼオライトに、活性炭と比較して極めて強い力で吸着していることが分かる。
【0115】
実施例4
ガラスクロス(フィルタ基材)を波型に成形した後、シート状のガラスクロスを介して積層し(接着剤で固定)、この積層体を、ゼオライトAと無機バインダ(コロイダルシリカ、日産化学工業(株)製、商品名「スノーテックスO」)と水を含む懸濁液中に浸漬した後、懸濁液から取り出し、乾燥して、ハニカム構造のフィルタ構造体Aを作製した。フィルタ構造体Aの通気孔(通気路)の断面は波形であり、該波形の底辺の長さは1〜5mm、高さは1〜5mmである。上記フィルタ構造体Aを粉砕したものを純水に浸漬して浸漬液(フィルタ構造体Aの割合:5wt%)を作製し、当該浸漬液のpHを測定したところ、4.81であった。なお、比較材料として、ヤシ殻活性炭(フタムラ化学(株)製、商品名「太閤CB」)を同様にハニカム構造化したフィルタ構造体Bを用いた。
図7に示すような通気試験装置を用いて、フィルタ構造体のガス除去効率を測定した。
すなわち、アクリル製の四角筒状の試験カラム(19mm×19mm×長さ20cm)8を2本並列に配置し、カラムの上流側にガス供給用のチューブ2を取り付け、カラムの下流側に、流量計3、流量調整バルブ4、ポンプ5をこの順に取り付けた。カラムの中にフィルタ構造体(長さ80mm)9を入れた。フィルタ構造体のろ過風速が0.5m/sとなるように流量を調整したエアを流した。カラムに流すエアは、恒温恒湿槽を用いて温度23℃、湿度50%に調整した空気に、TMS7ppb、VOC250ppbを混ぜて使用した。
フィルタ構造体として、上記で作製したフィルタ構造体A、フィルタ構造体Bを用いた。上記の2つのフィルタ構造体を、2本並列に配置したそれぞれのカラム1に用いた。
カラムの上流側、下流側のエアを吸着管により捕集し、エアを捕集した吸着管をATD(加熱脱着装置)−GC/MSによるガス分析に付し、TMSのガス濃度を測定した。測定したカラムの上流側、下流側のTMSのガス濃度からTMSの除去効率を下記式で算出し、時間変化のグラフを作成した。
除去効率(%)={(上流側のガス濃度−下流側のガス濃度)/上流側のガス濃度}×100
結果を図8に示す。図中、三角印(△)はフィルタ構造体Aのデータを示し、菱形印(◇)はフィルタ構造体Bのデータを示す。グラフの横軸は経過日数(日)、縦軸は除去効率(%)である。
【0116】
図8に示されるように、ゼオライトAを用いたフィルタ構造体Aは活性炭を用いたフィルタ構造体Bに比べて、TMSの除去効率の経日による低下率が極めて小さい。活性炭の場合は、日数がある程度経過すると、除去効率がマイナスとなる。すなわち、一旦吸着されたTMSが脱着して、放出されるようになる。これに対し、フィルタ構造体Aの場合は、40日を過ぎても除去効率がマイナスにならない。
【0117】
実施例5
無機シリカ系多孔質材料としてゼオライトAを60重量部、バインダとして粘土であるカオリン石25重量部とコロイダルシリカ15重量部を混合し、純水を加えて粘土状の試料を作製した。この粘土状の試料を網目に通して糸状にし、オーブンで十分に乾燥した後乳鉢で粉砕し、ふるいで粒径200〜500μmのものを採取して、ペレット化された吸着剤(ペレット)を得た。なお、上記コロイダルシリカとして、pHの異なる3つのコロイダルシリカをそれぞれ用いて、3種類のペレット(ペレットA〜C)を作製した。
上記で得られた、表4に示すペレットA〜Cを試験サンプルとして用いたこと以外は、実施例2と同様にして、図1に示すような通気試験装置を用いて、吸着剤のガス除去効率を測定した。
カラムの上流側、下流側のエアを吸着管により捕集し、エアを捕集した吸着管をATD(加熱脱着装置)−GC/MSによるガス分析に付し、TMSのガス濃度を測定した。測定したカラムの上流側、下流側のTMSのガス濃度からTMSの除去効率を下記式で算出し、試験サンプルの時間変化のグラフを作成した。
除去効率(%)={(上流側のガス濃度−下流側のガス濃度)/上流側のガス濃度}×100
結果を図9に示す。図9中、菱形印(◇)はペレットAのデータ、四角印(□)はペレットBのデータ、三角印(△)はペレットCのデータをそれぞれ示す。また、図9中、グラフの横軸は経過日数(日)、縦軸は除去効率(%)である。
【0118】
【表4】
【0119】
図9に示されるように、水混合物のpHが7以下のゼオライト(ゼオライトA)をペレット化された吸着剤は、バインダの水混合物のpHの値にかかわらず、日数が経過してもTMSの除去効率が大きい。また、中でも、水混合物のpHが低いバインダを用いて作製したペレットの方が、TMSの除去効率が高い傾向にある。
【0120】
実施例6
合成ゼオライトであるゼオライトAと天然ゼオライトとを混合したもの(混合ゼオライト)を試験サンプルとして用いたこと以外は、実施例2と同様にして、図1に示すような通気試験装置を用いて、吸着剤のガス除去効率を測定した。なお、試験サンプルとする混合ゼオライトとして、混合ゼオライトA(混合割合:ゼオライトA10重量%、天然ゼオライト90重量%)、及び混合ゼオライトB(混合割合:ゼオライトA15重量%、天然ゼオライト85重量%)を用いた。
カラムの上流側、下流側のエアを吸着管により捕集し、エアを捕集した吸着管をATD(加熱脱着装置)−GC/MSによるガス分析に付し、TMSのガス濃度を測定した。測定したカラムの上流側、下流側のTMSのガス濃度からTMSの除去効率を下記式で算出し、試験サンプルの時間変化のグラフを作成した。
除去効率(%)={(上流側のガス濃度−下流側のガス濃度)/上流側のガス濃度}×100
結果を表5及び図10に示す。図10中、三角印(△)は混合ゼオライトAのデータ、四角印(□)は混合ゼオライトBのデータをそれぞれ示す。また、図10中、グラフの横軸は経過日数(日)、縦軸は除去効率(%)である。
【0121】
【表5】
【0122】
図10に示されるように、吸着剤中の合成ゼオライトの含有量が高いほどTMSの除去効率が高い傾向にある。
【符号の説明】
【0123】
1 カラム
2 チューブ
3 流量計
4 流量調整バルブ
5 ポンプ
6 不織布
7 試験サンプル(吸着剤)
8 カラム
9 フィルタ構造体
【要約】
【課題】空気中のシラノール化合物を効率よく除去することができるシラノール化合物除去用ケミカルフィルタを提供する。
【解決手段】本発明のシラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、純水と混合させたときの混合液(含有割合:5wt%)のpHが7以下である無機シリカ系多孔質材料を吸着剤として用いることを特徴とする。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10