特許第5721898号(P5721898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5721898-テストピースの評価方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5721898
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】テストピースの評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20150430BHJP
   G01N 33/24 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   G01N17/00
   G01N33/24 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-258662(P2014-258662)
(22)【出願日】2014年12月22日
【審査請求日】2015年1月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509068574
【氏名又は名称】株式会社フジコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 藤吉郎
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5513696(JP,B1)
【文献】 特許第4709678(JP,B2)
【文献】 特開2010−054418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
G01N 33/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機廃棄物を含む盛土材を埋め立てた状態を再現したテストピースの評価方法であって、
前記盛土材に重金属および放射性物質を添加した前記テストピースを作成するテストピース作成工程と、
前記テストピース作成工程により得られたテストピースを繰り返し常温状態と凍結状態とに保つ凍結融解工程と、
前記凍結融解工程を経た前記テストピースを純水または海水を溶媒水として水浸させる水浸工程と、
前記水浸工程を経た前記溶媒水中の溶出物質を検出する溶出試験工程と、
前記水浸工程を経た前記テストピースの放射能濃度を測定する放射能濃度測定工程と、
前記水浸工程を経た前記テストピースの圧縮破壊強度を測定する圧縮強度試験工程と
を備えることを特徴とするテストピースの評価方法。
【請求項2】
請求項1記載のテストピースの評価方法であって、
前記テストピース作成工程は、前記盛土材を圧縮する圧縮条件および養生期間を含む作成条件を変えて前記テストピースが作成されることを特徴とするテストピースの評価方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のテストピースの評価方法であって、
前記水浸工程は、前記凍結融解工程を経た前記テストピースを純水または海水に日数を変えた水浸条件で水浸させることを特徴とするテストピースの評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機廃棄物を含む盛土材を埋め立てた状態を再現したテストピースの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のテストピースとしては、本願発明者および出願人による下記特許文献1に示すように、型枠内に段階的に投入された盛土材を一体化させたテストピースの製造システムおよびテストピースの製造方法が知られている。
【0003】
さらに、本願発明者は、作成したテストピースの高温または低温実験設備として、下記特許文献2の試験室を発明すると共に、作成したテストピースの切断装置として、下記特許文献3のテストピース用切断機を発明し、テストピースの試験のための設備を確立している。
【0004】
ここで、盛土材を埋め立てた状態を再現することにより、最終処分場における圧密成形状態を実質的に再現したテストピースは、その評価方法を確立することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5307951号公報
【特許文献2】特許5513696号公報
【特許文献3】特許5389294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、本願発明者によるテストピースの製造システムおよび製造方法により製造されたテストピースの評価方法を確立することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明のテストピースの評価方法は、無機廃棄物を含む盛土材を埋め立てた状態を再現したテストピースの評価方法であって、
前記盛土材に重金属および放射性物質を添加した前記テストピースを作成するテストピース作成工程と、
前記テストピース作成工程により得られたテストピースを繰り返し常温状態と凍結状態とに保つ凍結融解工程と、
前記凍結融解工程を経た前記テストピースを純水または海水を溶媒水として水浸させる水浸工程と、
前記水浸工程を経た前記溶媒水中の溶出物質を検出する溶出試験工程と、
前記水浸工程を経た前記テストピースの放射能濃度を測定する放射能濃度測定工程と、
前記水浸工程を経た前記テストピースの圧縮破壊強度を測定する圧縮強度試験工程と
を備えることを特徴とする。
【0008】
第1発明のテストピースの評価方法によれば、無機廃棄物を含む盛土材を埋め立てた状態を再現したテストピースに対して、凍結融解工程を行うことで、寒暖の差を考慮した経年劣化状態を再現することができる。さらに、水浸試験を行うことで、仮に、経年劣化したテストピースが池や河川などに沈みこんだり、海に放出されるような水浸状態を再現することができる。
【0009】
そして、このような経年劣化状態および水浸状態を経たテストピースに対して、溶出試験、放射能濃度測定および圧縮強度試験を行うことで、盛土材を埋め立てた状態を再現することにより最終処分場における圧密成形状態を実質的に再現したテストピースを、最終処分場の環境条件等も考慮して多角的に評価することができる。
【0010】
このように、第1発明のテストピースの評価方法によれば、本願発明者によるテストピースの製造システムおよび製造方法により製造されたテストピースの評価方法を確立することができる。
【0011】
第2発明のテストピースの評価方法は、第1発明において、
前記テストピース作成工程は、前記盛土材を圧縮する圧縮条件および養生期間を含む作成条件を変えて前記テストピースが作成されることを特徴とする。
【0012】
第2発明のテストピースの評価方法によれば、テストピースは、作成時の圧縮条件および養生期間によりその特性が変化するところ、かかる作成条件を変えてテストピースの評価を行うことで、盛土材の埋め立て条件を変えた圧密成形状体を再現して多角的に評価することができる。
【0013】
このように、第2発明のテストピースの評価方法によれば、本願発明者によるテストピースの製造システムおよび製造方法により製造されたテストピースをより多角的に評価することができる。
【0014】
第3発明のテストピースの評価方法は、第1または第2発明において、
前記水浸工程は、前記凍結融解工程を経た前記テストピースを純水または海水に日数を変えた水浸条件で水浸させることを特徴とする。
【0015】
第3発明のテストピースの評価方法によれば、テストピースは、日数を変えた水浸条件を変えて水浸させることで、その特性をより多角的に評価することができる。
【0016】
このように、第3発明のテストピースの評価方法によれば、本願発明者によるテストピースの製造システムおよび製造方法により製造されたテストピースをより多角的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】テストピースの評価方法での処理内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態としてのテストピースの評価方法について説明する。
【0019】
図1に示すように、テストピースの評価方法は、無機廃棄物を含む盛土材を埋め立てた状態を再現したテストピースの評価方法であって、テストピース作成工程(STEP10)と、寸法測定・比重算出工程(STEP20)と、凍結融解工程(STEP30)と、水浸工程(STEP40)と、溶出試験工程(STEP50)と、放射能濃度測定工程(STEP60)と、圧縮強度試験工程(STEP70)とを備える。
【0020】
テストピース作成工程(STEP10)では、上記特許文献1に詳細を示すように、テストピース材料乾燥装置により、予め重金属および放射性物質を添加した盛土材の材料を含水率1%未満に乾燥させ(材料乾燥工程)、含水率1%未満に乾燥させた盛土材の材料に対して、セメントおよび砂を加えると共に、加水して含水率を調整しながら盛土材を製造し(盛土材製造工程)、有底筒状の型枠内への盛土材製造工程により製造された前記盛土材の投入と、投入した該盛土材への衝撃圧縮とを繰り返し複数階層の圧密成形体を再現し(圧密成形工程)、再現された圧密成形体の上部を閉蓋部材で閉蓋し、押圧部材により前記型枠に対して該閉蓋部材を押圧する(後処理工程)ことにより、テストピースが製造される。
【0021】
このとき、テストピースは、圧密成形工程における圧縮条件および後処理工程における押圧期間としての養生期間を作成条件として、複数の圧縮条件および養生期間のテストピースが作成される。
【0022】
例えば、圧縮条件としては、25t、3tおよび0.003tの少なくとも3種類、養生期間については、14日および28日の少なくとも2種類について、作成条件を変えたテストピースとして作成される。
【0023】
寸法測定・比重算出工程(STEP20)では、テストピース作成工程(STEP10)で得られた各テストピースに対して、テストピースの直径(mm)、高さ(mm)および重量(g)が計測され、これらからテストピースの体積(cm)および比重が算出される。
【0024】
例えば、表1に示すように、テストピース作成工程(STEP10)で得られた各テストピースに対して、テストピースの直径(mm)、高さ(mm)および重量(g)が計測され、これらからテストピースの体積(cm)および比重が算出される。
【0025】
【表1】
【0026】
凍結融解工程(STEP30)では、寸法測定・比重算出工程(STEP20)を経た各テストピースに対して、繰り返し常温状態と凍結状態とに保つ。例えば、常温状態は、20℃であり、凍結状態は−20℃であり、それぞれ60分間その状態に保つ。繰り返し回数は、例えば1000回である。
【0027】
水浸工程(STEP40)では、凍結融解工程(STEP30)を経た各テストピースに対して、純水または海水を溶媒水として水浸させる。
【0028】
ここで、水浸期間を水浸条件として、2日、8日および32日の少なくとも3種類について、水浸状態が維持される。また、水浸状態では、例えばJIS A K0058『スラグ類の化学物質試験方法―第1部:溶出量試験方法』に基づいて撹拌等も行われる。
【0029】
溶出試験工程(STEP50)では、水浸工程(STEP40)を経た各テストピースに対して、溶媒水中の溶出物質を検出する。
【0030】
溶出物質の検出は、例えば、溶媒水を採取し、これを遠心分離し、メンブランフィルターでろ過することにより、主として重金属(カドミウム、シアン、鉛、六価クロム)について溶出物質を検出する。
【0031】
表2に、溶出試験の結果の一例を示す。表2は、圧縮条件:25t、養生期間:28日、水浸条件:人工海水32日という、水浸条件を過酷な条件とした場合のテストピースの溶出物質の検出を行った結果である。
【0032】
【表2】
【0033】
放射能濃度測定工程(STEP60)では、水浸工程(STEP40)を経た各テストピースに対して、放射能濃度を測定する。
【0034】
放射能濃度の測定は、本願出願による実用新案登録第3177566号に詳細を示すように、環境放射線を遮断した外部放射線遮蔽筺体内で、ゲルマニウム(Ge)半導体検出器を用いたγ線スペクトロメトリーによる核種分析方法に準拠して測定される。
【0035】
表3に、放射能濃度の測定結果の一例を示す。表3は、圧縮条件:25t、養生期間:28日、水浸条件:人工海水32日という、水浸条件を過酷な条件とした場合のテストピースの放射能濃度の測定結果である。
【0036】
【表3】
【0037】
圧縮強度試験工程(STEP70)では、水浸工程(STEP40)を経た各テストピースに対して、圧縮破壊強度を測定する。
【0038】
表4に、圧縮破壊強度の測定結果の一例を示す。表4は、圧縮条件:25t、養生期間:28日のテストピースを、水浸条件を純水、人工海水、海水に分けてそれぞれ32日間水浸させた場合のテストピースの圧縮破壊強度の測定結果である。
【0039】
【表4】
【0040】
以上詳しく説明したように、本実施形態のテストピースの評価方法によれば、無機廃棄物を含む盛土材を埋め立てた状態を再現したテストピースに対して、凍結融解工程を行うことで、寒暖の差を考慮した経年劣化状態を再現することができる。さらに、水浸試験を行うことで、仮に、経年劣化したテストピースが池や河川などに沈みこんだり、海に放出されるような水浸状態を再現することができる。
【0041】
そして、このような経年劣化状態および水浸状態を経たテストピースに対して、溶出試験、放射能濃度測定および圧縮強度試験を行うことで、盛土材を埋め立てた状態を再現することにより最終処分場における圧密成形状態を実質的に再現したテストピースを、最終処分場の環境条件等も考慮して多角的に評価することができる。
【0042】
さらに、テストピースは、作成時の圧縮条件および養生期間によりその特性が変化するところ、かかる作成条件を変えてテストピースの評価を行うことで、盛土材の埋め立て条件を変えた圧密成形状態を再現して多角的に評価することができる。
【0043】
また、テストピースは、日数を変えた水浸条件を変えて水浸させることで、その特性をより多角的に評価することができる。
【0044】
このように、本実施形態のテストピースの評価方法によれば、本願発明者によるテストピースの製造システムおよび製造方法により製造されたテストピースの評価方法を確立することができる。
【0045】
なお、本実施形態のテストピースの評価方法では、凍結融解工程(STEP30)および水浸工程(STEP40)を経たテストピースについて、溶出試験工程(STEP50)、放射能濃度測定工程(STEP60)および圧縮強度試験工程(STEP70)を行ったが、これに限定されるものではない。
【0046】
例えば、凍結融解工程(STEP30)と水浸工程(STEP40)とのいずれか経たテストピースに対して、後半の溶出試験工程(STEP50)、放射能濃度測定工程(STEP60)および圧縮強度試験工程(STEP70)を行うようにして、テストピースを簡易に評価してもよい。
【0047】
また、後半の溶出試験工程(STEP50)、放射能濃度測定工程(STEP60)および圧縮強度試験工程(STEP70)は、その一部のみを行って、テストピースを簡易に評価してもよい。
【要約】
【課題】テストピースの製造システムおよび製造方法により製造されたテストピースの評価方法を確立する。
【解決手段】テストピースの評価方法は、無機廃棄物を含む盛土材を埋め立てた状態を再現したテストピースの評価方法であって、テストピース作成工程(STEP10)と、寸法測定・比重算出工程(STEP20)と、凍結融解工程(STEP30)と、水浸工程(STEP40)と、溶出試験工程(STEP50)と、放射能濃度測定工程(STEP60)と、圧縮強度試験工程(STEP70)とを備える。
【選択図】図1
図1