特許第5721905号(P5721905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5721905表面増強ラマン分光法に基づくセンサー、システム、及び検出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721905
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】表面増強ラマン分光法に基づくセンサー、システム、及び検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
   G01N21/65
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-512803(P2014-512803)
(86)(22)【出願日】2011年5月20日
(65)【公表番号】特表2014-517926(P2014-517926A)
(43)【公表日】2014年7月24日
(86)【国際出願番号】US2011037464
(87)【国際公開番号】WO2012161683
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2013年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(72)【発明者】
【氏名】キム,アンスーン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ツィーヨン
【審査官】 横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0116089(US,A1)
【文献】 米国特許第07342656(US,B1)
【文献】 特表2009−544967(JP,A)
【文献】 特表2013−525785(JP,A)
【文献】 特表2013−527921(JP,A)
【文献】 特開2011−081001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/83
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面増強ラマン分光(SERS)センサーであって、
少なくとも2つの隔置されたナノロッドを含むセンシング基板であって、前記ナノロッドはその第1の端部で該センシング基板に取り付けられ、該ナノロッドの第2の端部は、互いに近接するように可動であり、前記ナノロッドは、ラマン活性表面を有することからなる、センシング基板と、
ラマン信号発生器を構成する機能化された表面を有するナノ粒子であって、前記ナノロッドから独立したナノ粒子
を備え、
前記ナノ粒子と、互いに近接している前記ナノロッドの第2の端部との間の相互作用が検出可能である、SERSセンサー。
【請求項2】
前記ラマン信号発生器はラマンダイから構成され、検体の存在が、前記相互作用に対して、及び、前記ラマンダイからの検出可能なラマン散乱信号に対して影響を与える、請求項1のSERSセンサー。
【請求項3】
前記検体は、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質、ウイルス、ウイルス性副産物、細菌、細菌性副産物、他の有毒な有機体及びその副産物、毒素、毒物、薬物、化学物質、それらのうちの任意の一部、及び、それらの1以上の組み合わせから選択される、請求項2のSERSセンサー。
【請求項4】
前記ナノ粒子の機能化された表面はさらに第1の連結部分を有し、前記ナノロッドはさらに、該ナノロッドの第2の端部に第2の連結部分を有し、前記第1の連結部分及び前記第2の連結部分は、前記ナノ粒子と前記ナノロッドの第2の端部との間の相互作用を容易にする、請求項1のSERSセンサー。
【請求項5】
前記相互作用は、前記ナノ粒子と前記ナノロッドの第2の端部との間の直接の相互作用、または、前記ナノ粒子と前記ナノロッドの第2の端部との間の間接的な相互作用を含み、検体の存在が、前記間接的な相互作用を容易にするか、または、前記直接の相互作用を遮断するように作用する、請求項4のSERSセンサー。
【請求項6】
前記ナノロッドと、及前記ナノ粒子の前記機能化された表面は、それぞれ、さらに、連結部分と、前記ナノ粒子と前記ナノロッドに対する非特異的な結合を阻止するための遮断剤とを有し、
前記相互作用には、検体−ナノ粒子複合体を形成するために検体に選択的に結合する、前記ナノ粒子上にある前記連結部分と、検出可能なラマン信号を生成するために前記検体−ナノ粒子複合体の検体に選択的に結合する、前記ナノロッドの第2の端部上にある前記連結部分とが含まれる、請求項1のSERSセンサー。
【請求項7】
前記ナノロッドと、前記ナノ粒子の前記機能化された表面は、それぞれ、さらに、連結部分と、前記ナノ粒子と前記ナノロッドに対する非特異的な結合を阻止するための遮断剤とを有し、
検体が存在する場合を除いて、前記相互作用には、前記ナノ粒子と前記ナノロッドを互いに結合するための、前記ナノ粒子上にある前記連結部分及び前記ナノロッド上にある前記連結部分が含まれ、
前記検体は、前記ナノ粒子を前記ナノロッドから選択的に分離するように作用し、該分離は、前記相互作用によって生成されるラマン信号の減少として検出可能である、請求項1のSERSセンサー。
【請求項8】
表面増強ラマン分光(SERS)センサーシステムであって、
隔置されたナノロッドを含むセンシング基板と、前記ナノロッドから独立した機能化されたナノ粒子とを有するSERSセンサーであって、前記ナノロッドはその第1の端部で該センシング基板に取り付けられ、該ナノロッドの第2の端部は互いに近接するように可動であり、前記ナノロッドは、ラマン活性表面を有し、前記機能化されたナノ粒子は、互いに近接している前記ナノロッドの第2の端部と相互作用してラマン信号を生成することからなる、SERSセンサーと、
互いに近接している前記ナノロッドの第2の端部に向けられた照射源と、
互いに近接している前記ナノロッドの第2の端部の近傍からのラマン信号を検出するように配置されたラマン信号検出器
を備える、SERSセンサーシステム。
【請求項9】
前記機能化されたナノ粒子は、該ナノ粒子の表面にラマンダイ及び第1の連結部分を有し、前記ナノロッドはさらに、該ナノロッドの第2の端部に第2の連結部分を有し、前記第1の連結部分及び前記第2の連結部分は、前記ナノ粒子と前記ナノロッドの間の相互作用を容易にし、該相互作用によって前記ラマンダイからラマン信号が生成される、請求項8のSERSセンサーシステム。
【請求項10】
前記第1の連結部分及び前記第2の連結部分は、前記機能化されたナノ粒子と前記ナノロッドの第2の端部の両方に検体を結合するために、該検体の異なる相互作用部位に対して特異的に相補的であり、前記照射源の光路内における、前記検体への前記連結部分の結合によって、前記ラマン信号検出器によって検出可能なラマン信号が生成される、請求項9のSERSセンサーシステム。
【請求項11】
前記第1の連結部分と前記第2の連結部分は、前記照射源の光路内において前記機能化されたナノ粒子を前記ナノロッドの第2の端部に結合するために、互いに特異的に相補的であり、検体の存在によって、前記機能化されたナノ粒子が前記ナノロッドから選択的に分離され、前記ナノロッドからの前記機能化されたナノ粒子の分離によって、前記ラマン信号検出器によって検出可能なラマン信号が減少する、請求項9のSERSセンサーシステム。
【請求項12】
前記機能化されたナノ粒子の組をさらに含み、ナノ粒子の前記組の各々は、ナノ粒子の表面において、他のナノ粒子の組のものとは異なるラマンダイ及び対応する第1の連結部分で機能化され、異なるラマンダイは異なるラマン信号を有し、前記異なる対応する第1の連結部分はそれぞれ、それぞれのラマン信号を特定の検体に関連付けるために、異なるそれぞれの検体または前記ナノロッドに特異的に結合する、請求項8のSERSセンサーシステム。
【請求項13】
前記センシング基板上にナノロッドの組をさらに含み、ナノロッドの前記組の各々は、前記ナノロッド上に、他のナノロッドの組のものとは異なる第2の連結部分を有し、それらの異なる第2の連結部分は、異なる検体の検出を多重化するために、該異なる検体または前記異なる対応する第1の連結部分に特異的に結合する、請求項12のSERSセンサーシステム。
【請求項14】
表面増強ラマン分光(SERS)に基づく検出方法であって、
隔置されたナノロッドを提供するステップであって、前記ナノロッドはその第1の端部で基板に取り付けられ、該ナノロッドの第2の端部は、互いに近接するように可動であり、前記ナノロッドは、ラマン活性表面を有することからなる、ステップと、
前記ナノロッドから独立しているナノ粒子を提供するステップであって、前記ナノ粒子は機能化されている、ステップと、
前記ナノ粒子及び前記ナノロッドを検体にさらすステップと、
前記ナノ粒子と、互いに近接している前記ナノロッドの第2の端部との間の相互作用している部分を照射してラマン信号を生成するステップと、
前記検体によって引き起こされた、前記ラマン信号に対する影響を検出するステップ
を含む方法。
【請求項15】
射された前記相互作用している部分は、前記検体に選択的に結合された前記ナノ粒子及び前記ナノロッドの第2の端部、または、互いに直接結合された前記ナノ粒子と前記ナノロッドの第2の端部を含み、前記検体は、前記ナノロッドから前記直接結合されたナノ粒子を選択的に分離し、
ラマン信号に対する影響を検出する前記ステップが、ラマン信号の生成を検出することと、生成されたラマン信号の減少を検出することとの一方または両方を含むことからなる、請求項14の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へ相互参照:なし
【0002】
連邦支援の研究または開発に関する声明:なし
【背景技術】
【0003】
未知の物質の検出及び識別(または少なくとも分類)は、長きにわたって興味の対象であり、また、近年はますます重要になっている。正確な検出及び識別が特に期待できる方法には、種々の形態の分光法があり、特に、ラマン散乱を利用する分光法がある。物質または材料がある形態の電磁放射(たとえば可視光)によって照射されたときに生じる吸収スペクトル及び発光スペクトルの一方または両方を使って該物質または材料を分析し、特徴付け、及び識別するために、分光法を用いることができる。該材料を照射することによって生じる吸収スペクトル及び発光スペクトルは、該材料のスペクトル「指紋」(spectral fingerprint)を決定する。一般に、スペクトル指紋は、特定の材料の識別を容易にする該材料の特徴である。最も有効な発光分光技術は、ラマン散乱に基づくものである。
【0004】
ラマン散乱光波分光法(単にラマン分光法ともいう)は、照射されている材料の内部構造による光子の非弾性散乱によって生じる発光スペクトルまたはそのスペクトル成分を利用する。非弾性散乱によって生成された応答信号(すなわちラマン散乱信号)に含まれるそれらのスペクトル成分は、検体種の材料特性の決定(該検体の識別を含むがこれには限定されない)を容易にしうる。表面増強ラマン散乱(SERS)光波分光法は、ラマン活性表面(Raman-active surface)を利用するラマン分光法の一形態である。SERSは、特定の検体種によって生成されたラマン散乱信号の信号レベルまたは強度を大幅に増強することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】(追って補充)
【0006】
以下の詳細な説明を添付の図面と併せて参照することによって、本明細書に記載されている原理の例の種々の特徴をより容易に理解することができる。図面において、同じ参照番号は、同じ構成要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本明細書に記載されている原理にしたがう1例による表面増強ラマン分光(SERS)センサーの略斜視図である。
図2A】本明細書に記載されている原理にしたがう1例による、検体による結合を利用する表面増強ラマン分光(SERS)センシングの略図である。
図2B】本明細書に記載されている原理にしたがう1例による、検体による結合を利用する表面増強ラマン分光(SERS)センシングの略図である。
図2C】本明細書に記載されている原理にしたがう1例による、検体による結合を利用する表面増強ラマン分光(SERS)センシングの略図である。
図3A】本明細書に記載されている原理にしたがう別の例による、検体による分離を利用する表面増強ラマン分光(SERS)センシングの略図である。
図3B】本明細書に記載されている原理にしたがう別の例による、検体による分離を利用する表面増強ラマン分光(SERS)センシングの略図である。
図3C】本明細書に記載されている原理にしたがう別の例による、検体による分離を利用する表面増強ラマン分光(SERS)センシングの略図である。
図4】本明細書に記載されている原理にしたがう1例による、表面増強ラマン分光(SERS)センサーシステムのブロック図である。
図5】本明細書に記載されている原理にしたがう1例による、表面増強ラマン分光(SERS)センシングの1方法のフローチャートである。
図6A】本明細書に記載されている原理にしたがう1例による、図5の方法の結合メカニズムにおいて検体にSERSセンサーをさらす行程のフローチャートである。
図6B】本明細書に記載されている原理にしたがう別の例による、図5の方法の分離メカニズムにおいて検体にSERSセンサーをさらす行程のフローチャートである。
【0008】
いくつかの例は、添付の図面に記載されている特徴に加えて他の特徴を有しており、また、添付の図面に記載されている特徴に代えて他の特徴を有している。それらの特徴及び他の特徴については、添付の図面を参照して詳細に後述する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
SERSは、多岐にわたる検出及び識別分析用途において有用でありうる。しかしながら、SERSを使って検出対象の検体種、たとえば、生物学的種または化学種を検出することが難しい場合がある。たとえば、検体種の量が少なすぎたり、濃度が低すぎたりして検出できない場合があり、また、検体種の分子があまりにも大きいかかさばるために、数ナノメートルサイズのギャップ(間隙)を有するラマン「ホットスポット」を生成できないかもしくは検出できる程度には捕捉できない場合がある。本明細書に記載されている原理にしたがう例は、分子が大きく、かつ、量が微量の種々の検体種を検出することができる。
【0010】
いくつかの例では、センシング基板(sensing substrate。検出用基板)を備えるSERSセンサーが提供され、該基板は、該基板上に隔置された少なくとも2つのナノロッドを備える。それらのナノロッドは、それぞれの第1の端部で該基板に固定され、それらのナノロッドの第2の端部は互いに近接するように(すなわち、互いに近接する位置へと)移動可能である。ナノロッドは、ラマン活性表面を有する。SERSセンサーはさらに、表面において機能化されたナノ粒子(または官能化されたナノ粒子。以下同じ)を含む。ナノ粒子の機能化された表面(または官能化された表面。以下同じ)は、ナノ粒子とナノロッドとの間の検出可能な相互作用、たとえば、検体を伴う場合があるかまたは検体によって影響をうける相互作用を容易にしまたは促進する。
【0011】
いくつかの例では、ナノロッドセンシング基板と機能化されたナノ粒子の両方を含むSERSセンサーを備えるSERSセンサーシステムが提供される。該SERSセンサーはさらに、ナノロッドの第2の端部が互いに近接しているときに該第2の端部に向けられた放射源、及び、互いに近接しているナノロッドの第2の端部の近傍からのラマン信号を検出するように構成ないし配置されたラマン信号検出器を備える。いくつかの例では、SERSセンサーを検体にさらすことと、互いに近接しているナノロッドの第2の端部を照射してラマン信号を生成することと、検体によって引き起こされたラマン信号に対する影響を検出することを含むSERSセンシング方法が提供される。いくつかの例では、該SERSセンサーシステム及び該方法は、SERSセンサーによる種々の検体の多重化(検出)を可能にする。
【0012】
本明細書で使用されている「ある」という用語は、特許の分野におけるそれの通常の意味を有すること、すなわち、「1以上」意味するものであることが意図されている。たとえば、本明細書では、「あるナノ粒子」は、1以上のナノ粒子を意味し、また、「ナノ粒子」は、本明細書では、「(1以上の)ナノ粒子」を明示的に意味する。また、本明細書では、「上部」、「下部」、「より上の」、「より下の」、「上へ」、「下へ」、「前部」、「後部」、「第1の」、「第2の」、「左」、「右」という用語はいずれも制限的であることを意図していない。本明細書では、ある値に「約」という用語が付されているときは、別段の明示がある場合を除いて、その値の概ね±10%の範囲内にある値、または、使用される測定技術の通常の許容差内にある値を意味している。本明細書で提供されている値の範囲はいずれも、提供されている範囲内または該範囲間の値及び範囲を含む。さらに、本明細書の例は、例示に過ぎないことが意図されており、また、説明のために提示されたものであって、限定するために提示されたものではない。
【0013】
本明細書における「ナノロッド」は、その長さ(たとえば、ロッドの長さはロッドの幅の約2倍以上大きい)に垂直な面で切り取ったナノスケールの断面寸法(断面の寸法。たとえば幅)の数倍以上大きい長さ(または高さ)を有する長い(または細長い)ナノスケール構造として定義される。一般に、ナノロッドの長さは、該ナノロッドの幅または断面寸法よりもずっと大きい。いくつかの例では、長さは、断面寸法(または幅)の4〜10倍以上大きい。たとえば、幅を約130ナノメートル(nm)とすることができ、高さを約500ナノメートル(nm)とすることができる。別の例では、ナノロッドの基部の幅を、約20nm〜約200nmの範囲内とすることができ、長さを、約0.5マイクロメートル(μm)以上とすることができる。いくつかの例では、ナノロッドは、断面の外周が曲線または多角形(または切子形状)である概ね円柱形状である。別の例では、ナノロッドを、その基部の幅が約100nm〜約500nmの範囲内であり、該基部の長さまたは高さを約0.5μm〜数μmの範囲内とすることができる、円錐形とすることができる。いくつかの例では、ナノロッドは柔軟であり(すなわち可撓性を有し)、他の例では、ナノロッドは、後述するように、隣接するナノロッドの自由端が互いに対して近付くように移動できることを前提として硬質または半硬質である。
【0014】
本明細書における「ナノ粒子」は、長さ、幅及び深さが実質的に同じ寸法を有するナノスケール構造として定義される。たとえば、ナノ粒子の形状を、円、楕円、切り子状の円もしくは楕円、または、立方体、五角形、六角形などとすることができる。ナノ粒子の直径の大きさを、たとえば、約5nm〜約200nmの範囲内とすることができる。いくつかの例では、ナノ粒子の直径を、約50nm〜約100nmの範囲内、または、約25nm〜約100nmの範囲内、または、約100nm〜約200nmの範囲内、または、約10nm〜約150nmの範囲内、または、約20nm〜約200nmの範囲内とすることができる。さらに、本明細書の定義によれば、「ナノ粒子」は、後述する「ナノ粒子触媒」もしくは「触媒ナノ粒子」、並びに、ナノ粒子の層またはコーティング(被膜)と区別される。具体的には、本明細書で定義されている「ナノ粒子」は、ナノロッドから自由である、すなわち、ナノロッドから独立しているが、本明細書に記載されているように、ナノ粒子触媒及びナノ粒子の層及もしくはコーティングの各々は、「ナノ粒子」とは異なる機能を有する、ナノロッドに一体化した部分とみなされる。
【0015】
図1は、本明細書に記載されている原理の1例によるSERSセンサー100の略斜視図である。SERSセンサー100は、機能化された表面132を有するナノ粒子130と、表面を有するセンシング基板110を備え、該表面には、少なくとも2つの隣接するナノロッド120が隔置されて搭載されている。ナノ粒子130は、ナノロッド120から独立しており、ナノロッド120と相互作用するように提供される。いくつかの例では、基板110の表面上には、2または3または4または5または6などの数の倍数の数の隔置されたナノロッド120が存在する場合がある。さらに、隔置されたナノロッド120を、各組が、基板表面上の少なくとも2つの隣接するナノロッドからなる複数の組にグループ分けすることができる。図1には、例示及び図面の簡単化のために、そのような隣接するナノロッド120のうちの4つを示している。
【0016】
ナノロッド120は、3次元インプリント法(three-dimensional imprinting method)、エンボス加工、化学蒸着(CVD)成長プロセス、エッチング及びロール・ツー・ロール法(etching and roll-to-rollprocess)を含む(ただし、それらには限定されない)種々の技術のうちの任意のものを用いて、基板表面上に作製される。いくつかの例では、ナノワイヤ成長は、気相−固相(V-S)成長プロセス(vapor-solid growth process)と溶液成長(solution growth)プロセスの一方を利用することができる。他の例では、集束イオンビーム(focused ion beam:FIB)蒸着やレーザー誘起自己組織化(laser-induced self assembly)(ただし、それらには限定されない)などの指向性もしくは誘導性の自己組織化(directed or stimulatedself-organization)技術によって成長を達成することができる。別の例では、反応性イオンエッチング(reactive ion etching)(ただし、これには限定されない)などのエッチングプロセスを用いて、周囲の材料を除去してナノロッドを残すことによってナノロッドを作製することができる。
【0017】
各ナノロッド120は、その第1の端部で基板110に固定または取り付けられており、また、自由なすなわち取り付けられていない、(第1の端部と)反対側にある第2の端部122を有している。ナノロッド120の第2の端部122は、図に例示されているような丸みを帯びた形状(たとえば、ドーム形)、または、実質的に平坦な形状、または、実質的にとがった形状とすることができる先端部を有する(後者の2つは図示されていない)。たとえば、ナノロッド120は、該ナノロッド120を生成するために使用されるプロセス(たとえば、VLS成長)から自然に形成される先端部を有することができる。他の例では、ナノロッド120の第2の端部122に特定の形状を与えるために、該先端部をさらに処理することができる。たとえば化学機械研磨を用いて該先端部を(たとえば)平坦にすることができる。「とがっている」という用語は、先端部がナノロッド120の断面寸法から第2の端部122の末端に向かって先細になっていることを意味する。該末端では、一般に、該末端に通じる先端部の表面間が比較的鋭い角度で屈曲している。
【0018】
いくつかの例では、ナノロッド120は、たとえば、ナノロッド120を形成するために使用されるプロセス(たとえば、触媒VLS成長:catalyzed VLS growth)の結果として、第2の端部122の先端部に触媒ナノ粒子を有することができる。これらの例では、第2の端部122における触媒ナノ粒子の先端部はナノロッド120に一体化されている。「一体化」という用語は、ナノロッド120が、該ナノロッドの先端部においてナノ粒子触媒とともに形成されることを意味する(すなわち、本明細書では、ナノ粒子触媒は、ナノロッドの一部とみなされる)。ナノ粒子触媒の材料の例には、金−シリコン合金やケイ化チタン(titanium silicide:TiSi2)(ただし、これらには限定されない)が含まれる。いくつかの例では、ナノ粒子触媒を、ナノロッド120のラマン活性表面を強化するために、さらにナノスケールの表面粗さを与えるラマン活性材料とすることができる。
【0019】
いくつかの例では、ナノロッド120は、その長手に沿って曲がるための十分な柔軟性(すなわち可撓性)を有する材料から形成される。いくつかの例では、ナノロッド120を、曲がるための十分な柔軟性を有する無機材料から構成することができる。他の例では、ナノロッド120は、曲がるための十分な柔軟性を有する高分子材料(ポリマー材料)から構成される。ナノロッドの材料は曲がるための十分な柔軟性を有しており、これによって、隣接する隔置されたナノロッド120の第2の端部122同士が、互いに近接する方向に(すなわち、互いに近接する位置まで)動くことができるようになっている。「近接する」という用語は、ナノロッドの第2の端部122同士が、互いから0nm〜約10nmの範囲内、または、互いから0nm〜約15nmの範囲内、または、照射源によって照射されたときにラマン信号を十分に集めることができる互いからの距離内まで移動することを意味する。たとえば、隣接する1以上のナノロッド120の各々の第2の端部122は、近接したときに接触することができる。さらに、たとえば、近接したときに、ナノロッドの第2の端部は、照射源の光路と交差する。このため、1つの組(またはグループ)内のナノロッドは、該ナノロッドの第2の端部が、該組内で互いに近接した位置まで動くことできるのに十分距離だけ該組内で互いに離れて配置される。
【0020】
いくつかの例では、ナノロッド120の十分に柔軟な高分子材料は、ポリメタクリル酸メチル(polymethyl methacrylate:PMMA)、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane:PDMS)、シロキサン(siloxane)、ポリカーボネート(polycarbonate)、感光性レジスト(photosensitive resist)材料、ナノインプリントレジスト(nano-imprint resit)材料、並びに、モノマー(単量体)、オリゴマー、ポリマー(重合体)、または、これらの任意の組み合わせのうちの1以上から構成されるその他の熱可塑性ポリマー(thermoplastic polymer)及び紫外線(UV)硬化材料(ただし、それらには限定されない)を含む。他の例では、ナノロッド120の十分に柔軟な無機材料は、シリコン(ケイ素)、酸化ケイ素(silicon oxide)、窒化ケイ素(silicon nitride)、アルミナ、ダイヤモンド、ダイヤモンド状炭素(diamond-like carbon)、アルミニウム、銅、及び、これらの無機材料の任意の組み合わせ(ただし、それらには限定されない)を含む。いくつかの例では、ナノロッド120を、上記のような高分子材料と十分な柔軟性を有する無機材料との組み合わせから構成することができる。
【0021】
いくつかの例では、センシング基板110は、ガラス、ポリマー、シリコン、セラミックス、金属、及び金属酸化物(ただし、これらには限定されない)を含む硬質または半硬質の材料から形成される。他の例では、センシング基板110を、比較的柔軟な材料から形成することができ、または、該基板110は、ナノロッド120が取り付けられる柔軟な材料層を備える。たとえば、該基板のまたは該基板上の柔軟な材料を、外部から加えられた刺激に応答して、大きさと形状と体積(たとえば、比容積)のうちの1以上が変化する刺激応答性材料とすることができる。具体的には、本明細書に記載されているように、刺激応答性材料に刺激が加えられたときの該材料の大きさ、形状、または体積の変化は、(非活動時の配置状態では)互いに隔置されている隣接するナノロッド120の第2の端部122同士を近接した位置(活動時の配置状態)に移動させるのに十分なものである。刺激応答性材料または柔軟な基板が存在する場合には、ナノロッド120を、柔軟なものまたは硬質のものまたは半硬質のものとすることができる。刺激の例には、pH(ペーハー)、温度、電磁場、収着質(sorbate)、収着質中の物質濃度、及び、種々の特定の化学的トリガ(chemical trigger)のうちの1以上が含まれる(ただし、それらには限定されない)。「吸着質」は、一般に、たとえば、吸収、または、吸着、または、吸収と吸着との組み合わせのうちの1以上を用いて刺激応答性材料によって吸着ないし吸収されることができる任意の材料である。いくつかの例では、吸着質は、水、水溶液、及び、有機材料のうちの1つである。いくつかの例では、刺激応答性材料を、ヒドロゲル、または、類似の高吸水性樹脂(super absorbent polymer:SAP。高吸水性ポリマーともいう)から構成することができる。ヒドロゲルの例には、架橋ポリアクリルアミド(cross-linked polyacrylamide)やポリアクリラート(polyacrylate。ポリアクリレートともいう)がある(ただし、それらには限定されない)。
【0022】
いくつかの例では、ナノロッド120を、たとえば、微小毛管力(microcapillary force)、ファンデルワールス相互作用(van derWaals interaction)、電荷、電磁力、機械的な力、温度、及びpH(ペーハー)を含む(ただし、それらには限定されない)種々のメカニズムのうちの1以上を用いて近接位置へと動かし、及び近接位置から離れるように動かすことができる。近接位置への動きと近接位置から離れる動きは、いくつかの例では、可逆的であるが、他の例では、該動きは相対的に(またはある程度)不可逆的でありうる。たとえば、ナノロッドを2つの異なる材料から形成することができ、各々の材料は、温度によって隣接するナノロッドが可逆的に曲がって互いに近接するように互いに異なる熱膨張係数を有する。別の例では、ナノロッドのまわりの溶剤の蒸発による微小毛管力によって、隣接するナノロッド同士が近接するようにそれらのナノロッドを(たとえば、該ナノロッドを曲げることによって)動かし、一方、溶剤を再び導入ないし注入することによって、ナノロッドの第2の端部同士を近接位置から離れるように動かすことができる。
【0023】
いくつかの例では、ナノロッド120は、(不図示の)ラマン活性表面を有する。ラマン活性表面は、ナノロッド120全体わたるラマン活性材料のコーティング(被膜)からナノロッド120の第2の端部122に集中したコーティングといったものまで種々ありうる。本明細書における定義によれば、ラマン活性材料は、ラマン分光法の実施中のラマン散乱、及び、ラマン散乱信号の生成もしくは放出を促進する材料である。ラマン活性材料には、金、銀、プラチナ(白金)、その他の貴金属、並びに、アルミニウム、銅、及び、それらの金属の任意の組み合わせ(たとえば、合金や層の形態での組み合わせ)が含まれる(ただし、それらには限定されない)。たとえば、ラマン活性表面を、約1nm〜約50nmの金のオーバーコート層(overcoat layer)を有する約10nm〜約100nmの厚さの銀の層からなる多層構造から構成することができる。いくつかの例では、ラマン活性表面を、銀のオーバーコート層を有する金の層から構成することができる。いくつかの例では、ラマン活性表面は、電子ビーム蒸着(e-beam evaporation)、熱蒸着(thermal evaporation)またはスパッタリングなどの物理蒸着法(physical vapor depositionmethod)によって形成される。ラマン活性材料は、ナノロッドの先端部上に形成されるだけでなく、ナノロッドの側壁上に、及び、ナノロッドが固定されていないかまたは取り付けられていない基板上に付着ないし存在することができる。
【0024】
いくつかの例では、ラマン活性表面は、ラマン散乱を強化ないし増強することができるナノスケールの表面粗さ(たとえば、全体的に金属でコーティングされている)を有する1または複数の層から構成される。ナノスケールの表面粗さは、一般に、該(1以上の)層の表面上のナノスケールの表面特徴によって提供される。ナノスケールの表面粗さを、たとえば、(1以上の)ラマン活性材料層の蒸着ないし堆積(たとえば、金の蒸着ないし堆積)中に自然発生的に生成することができる。別の例では、表面粗さを、(たとえば、レーザー光線を使って)意図的に生成することができる。いくつかの例では、ラマン活性表面は、ナノロッドの表面を覆う(コーティングする)ナノ粒子の層から構成される。たとえば、金ナノ粒子の単一層を用いて、ナノロッド120を覆って(コーティングして)、ラマン活性表面を生成することができる。ナノ粒子の層は、たとえば、ラマン散乱を強化するナノスケールの粗さを提供することができる。いくつかの例では、ナノロッド上のラマン活性材料を、縁部に丸みがつけられた「アイスホッケーのパック」形状とすることができる。本明細書に記載されている原理によれば、たとえば、ナノロッドの第2の端部122は、特に、互いに近接しているときには、照射場(照射フィールド)を集中させて、ラマン散乱信号の強度を高めるナノアンテナとして作用する。この例におけるナノロッドを覆うナノ粒子の層は、後でさらに説明するように、ナノ粒子130に関するナノロッド120に一体化しており、すなわち、ナノロッド120に一体化した部分である。
【0025】
いくつかの例では、ナノロッド120はさらに、(具体的には、ナノロッドの第2の端部122上に)機能化された表面(または官能化された表面。以下、機能化表面という)を有する。いくつかの例では、機能化表面は、(特定の相手と結合する)選択的なまたは特異的な連結能力もしくは結合能力を有する部分(moiety。または要素)127を有する。後でさらに説明するように、部分127の連結能力もしくは結合能力は、検体または別の連結部分(linking moiety。または、連結要素)に対して選択性を有する。そのため、ナノロッド120の機能化表面は、ナノロッドの第2の端部122が互いに近接しているときに検出可能な、検体または他の連結部分との相互作用を容易にしまたは促進する。後でさらに説明するように、いくつかの例では、ナノロッド120の機能化表面はさらに、(第2の端部122との非特異的結合を含む)ナノロッド120との非特異的結合を阻止するように構成された遮断剤(blocking agent)129を含む。
【0026】
SERSセンサー100はさらに、ナノロッド120とは独立のまたはナノロッド120には一体化していない機能化表面132を有するナノ粒子130を有する。ナノ粒子130を、金属、半導体、量子ドット(quantum dot)、誘電体、または、それらの組み合わせを含む(ただし、それらには限定されない)材料から形成することができる。たとえば、ナノ粒子130を、金属被膜のポリマー粒子で形成することができる。ナノ粒子130の機能化表面132は、ラマン散乱信号すなわち「ラマン信号」を生成するためのラマン信号発生器(またはラマン信号発生源)を有する。いくつかの例では、ラマン信号発生器はラマンダイ(Raman dye。ラマン色素またはラマン染料ともいう)135である。ラマン信号発生器として有用なラマンダイの例には、シアニン染料(たとえば、Cy3及びCy5)、ローダミン(Rhodamine)6G、4-メルカプトベンゼン(4-mercaptobenzene)、4-ニトロベンゼンチオール(4-nitrobenzenethiol)、フェニル誘導体(phenyl derivative)、及びピリジニル誘導体(pyridinyl derivative)が含まれる(ただし、それらには限定されない)。
【0027】
いくつかの例では、ナノ粒子130の機能化表面132はさらに、選択的なまたは特異的な連結能力もしくは結合能力を有する部分(moiety)137を有する。部分137の連結能力もしくは結合能力は、検体またはナノロッド120上の連結部分127に対して選択性を有する。そのため、ナノ粒子130の機能化表面132は、ナノロッドの第2の端部122が互いに近接しているときに検出可能な、ナノ粒子130とナノロッド(またはナノロッドの第2の端部122)との間の相互作用を容易にしまたは促進する。いくつかの例では、ラマンダイ135を、ナノ粒子の表面132ではなく選択性を有する連結部分137に結合することができる。この例では、該結合を化学結合とすることができ、この場合、結合された部分(moiety)−ラマンダイ種は、ラマン信号発生器と、検体または連結部分127に対する選択的な連結能力との両方をナノ粒子130に提供する。図1は、1例として、ナノ粒子130の機能化表面132にある連結部分137と個別のラマンダイ135の両方を示している。
【0028】
いくつかの例では、ナノ粒子130の機能化表面及びナノロッド120はさらに、ナノロッド120及びナノ粒子130への非特異的結合を別個にすなわち独立に阻止するように構成されたそれぞれの遮断剤129、139を有する。遮断剤の例には、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone:PVP)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid:PAA)、ポリアクリルマレイン酸(polyacrylic maleicacid:PAMA)、及び、これらの任意の組み合わせがある(ただし、それらには限定されない)。遮断剤の他の例には、ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin:BSA)、カゼイン(casein)、牛乳(milk)、ポリエルリジン(poly-L-Lysine)、ホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド(phosphorothioate oligodeoxynucleotides:PS-ODN)、トゥイーン-20(Tween-20)、トリトンX-100(Triton X-100)、アイシングラス(fish gelatin)、全血清(whole sera)、及び、これらのうちの1以上の任意の組み合わせがある(ただし、それらには限定されない)。具体的には、ナノロッド120の表面とナノ粒子130の表面におけるそれぞれの遮断剤129、139は、検出可能な検体が存在する場合に、センサー100のナノ粒子130とナノロッド120との間の相互作用を容易にしまたは促進する。
【0029】
本明細書に開示されている原理によれば、ナノ粒子130とナノロッド120の間の相互作用は、結合(または関連付け。以下同じ)または分離を伴う。いくつかの例では、相互作用は結合である。結合の場合は、たとえば、ナノ粒子130上の連結部分137は、特定の検体に選択的に結合する(または関連付けられる)ように構成される。該特定の検体が存在する場合には、ナノ粒子の連結部分(以下、ナノ粒子連結部分という)137は、該特定の検体に(たとえば、該検体の特定の結合場所に)結合するかまたは(他のやり方で)関連付けられる。たとえば、検体を、核酸(nucleic acid)、タンパク質、炭水化物(carbohydrate)、脂質、ウイルス(virus)、ウイルス性副産物(viral byproduct)、細菌(バクテリア)、細菌性副産物(bacterial byproduct)、他の有毒な有機体及びその副産物、毒素、毒物、薬物、化学物質、それらのうちの任意の一部、及び、それらの1以上の組み合わせから選択することができる。ナノ粒子130を該特定の検体を含む環境にさらすと、ナノ粒子連結部分137を介して検体とナノ粒子130の間に結合または関連付けが生じる。この結果、検体−ナノ粒子複合体が形成される。検体に依存して、環境を、流体環境、たとえば、ガス(気体)環境または液体環境とすることができる。いくつかの例では、ナノ粒子130及び検体を含む溶液を緩衝液(すなわち、検体共役溶液)とすることができる。
【0030】
(相互作用が)結合の場合には、さらに、ナノロッドの第2の端部122上の連結部分127は、上記の同じ検体に対して選択性を有するように構成される。ただし、その選択性は、該同じ検体上の異なる個別の結合場所(結合部位)または該同じ検体に対する異なる個別の結合メカニズムに対するものである。たとえば、ナノロッドの第2の端部122上の連結部分127は、溶液中の(または溶解している)検体−ナノ粒子複合体にさらされると、ナノ粒子130が結合している該検体上の場所(部位)とは異なる(該検体上の)場所において該検体に結合するかまたは(他のやり方で)関連付けられる。センシング基板110のナノロッド120と検体−ナノ粒子複合体との間の相互作用は、ナノロッドの第2の端部122が互いに近接しているときに検出可能である。たとえば、相互作用をしたナノ粒子130上のラマンダイ135は、互いに近接しているナノロッドの第2の端部122によって強化されるラマン散乱信号を生成するように構成されている。したがって、本明細書に記載されている原理によれば、検体自体は、検出のためのラマン散乱信号を生成する必要はない。
【0031】
1例では、検体は、前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)であるか、または、それを含んでいる。ナノロッド120上の連結部分127とナノ粒子130上の連結部分137を、それぞれ、抗マウス(anti-mouse)PSA、抗ヤギ(anti-goat)PSAとすることができ、または、逆に、それぞれ、抗ヤギPSA、抗マウスPSAとすることができる。別の例では、検体は、ストレプトアビジン(streptavidin)もしくはアビジン(avidin)であり、または、ストレプトアビジンもしくはアビジンを含んでいる。この例では、連結部分137及び127の各々を、検体に別個に結合する(または関連付けられる)ビオチン(biotin)とすることができる。
【0032】
(相互作用が)分離の場合には、ナノ粒子130上の連結部分137は、センシング基板110のナノロッド120の第2の端部122上の連結部分127と選択的に結合する(または選択的に関連付けられる)ように構成される。ナノ粒子連結部分137は、ナノロッドの連結部分(以下、ナノロッド連結部分という)127に結合するかまたは(他のやり方で)関連付けられる。ナノロッドの第2の端部122が互いに近接すると、ナノ粒子130上のラマンダイ135によって生成されたラマン散乱信号は、ナノロッド−ナノ粒子複合体上で検出可能である。(相互作用が)分離の場合は、さらに、ナノロッド−ナノ粒子複合体のセンシング基板110は、検出対象である特定の検体にさらされる。該特定の検体は、ナノ粒子連結部分137、ナノロッド連結部分127、及びそれらの連結部分127、137の連結タイプ(たとえば接着)のうちの1以上を選択的に攻撃して(たとえば、溶解させたり切り裂いたりして)、ナノ粒子130とセンシング基板110上のナノロッド120との間の結合または関連付けを選択的に分離するかまたは除去する。換言すれば、連結部分137、連結部分127、及び、それらの部分127、137間の連結タイプのうちの1つは、特定の検体の特定のターゲット(標的)となるように構成される。ナノ粒子130とナノロッド120の間の相互作用は、特定の検体の存在によって変化し(すなわち、それらが分離し)、この場合、その分離(または関連付けの除去)がナノ粒子のラマンダイ135によって生成されたラマン散乱信号に与える影響によって、該相互作用を検出可能である。この影響は、互いに近接しているナノロッドの第2の端部122から検体によって分離された(または関連付けが除去された)ナノ粒子130の数に比例して、ラマン散乱信号が減少するというものである。
【0033】
本明細書に開示されている原理によれば、ナノロッド120上とナノ粒子130上のそれぞれの連結部分127、137は、特定の検体またはそれぞれの他方の連結部分137、127と、選択的にまたは特異的に結合しもしくは関連付けられもしくその他のやり方で相互作用するように構成される。それぞれの相互作用を、互いに別個の独立したものとすることができ、たとえば、共有結合、イオン結合、非共有結合、水素結合、及び、双極子間相互作用(dipole-dipole interaction)のうちの1以上とすることができる。
【0034】
たとえば、特定の結合対の要素である連結部分137をナノ粒子130に配置することができる。特定の結合対の例には、レセプター(受容体)−リガンド(receptor-ligand。またはレセプター−配位子)対、抗体−抗原(antibody-antigen)対、酵素−活性部位の鍵(enzyme-active site key)の対、DNA-RNA対、DNA−タンパク質対、RNA−タンパク質対、相補的核酸(complementary nucleic acid)の対、及び、これらのうちの1以上の組み合わせがある(ただし、それらには限定されない)。たとえば、特定のレセプター−リガンド結合対のレセプターを、連結部分137として、ナノ粒子の表面132上で機能化することができる(代替として、この特定のレセプター−リガンド結合対のリガンドを使用することができる)。この例のレセプター連結部分137は、特定のリガンド、すなわち、該特定の結合対の他方の要素と結合するように構成される。いくつかの例では、該特定のリガンドを、検出対象の検体、または、検出対象の該検体の一部もしくは該検体の副産物(すなわち、標的種)とすることができる。ナノロッドの第2の端部122上の連結部分127もまた、結合または関連付けによってSERSセンサー100で検出されることになる検体種の特定のリガンドと特異的にまたは別個に結合する。
【0035】
これらの例のうちの他の例では、該特定の結合対の特定リガンドもしくはそれの関連する部分を、ナノロッドの第2の端部122上の連結部分127とすることができる。ナノ粒子130上のレセプター部分137、及び、ナノロッドの第2の端部122上の特定のリガンド部分127は、SERSセンシング基板110上で結合しまたは関連付けられる。これらの例では、特異的(または特定的ないし選択的)に及び特徴的に検出される検体種または標的種は、上記のように、分離によってSERSセンサー100で検出されるナノ粒子130上のレセプター部分137とナノロッド120上の特定のリガンド部分127との間の結合のある側面を溶解または切断する。
【0036】
連結部分127と137間の結合のある側面を切断することができる検体種には、たとえば、(脂質を含む連結部分用の)リパーゼ、(アミラーゼ及び/またはでんぷん及び/またはマルトデキストリン(maltodextrin)を含む連結部分用の)アミラーゼ、(タンパク質を含む連結部分用の)プロテアーゼ、及び(核酸を含む連結部分用の)ヌクレアーゼのうちの1つ以上がある(ただし、それらには限定されない)。
【0037】
図2A図2Cは、本明細書に記載されている原理にしたがう1例における、検体を検出するための結合メカニズムを示す。略側面図である図2Aでは、上記した複数の機能化されたナノ粒子130を含むラマンレポーター溶液(Raman reporter solution)が検体202にさらされる。検体202に特有の(または特異的な)ナノ粒子連結部分137のいくつは、検体202に結合しまたは関連付けられて、検体−ナノ粒子複合体の検体−共役溶液を形成する。略側面図である図2Bでは、ナノロッド120のセンシング基板110が、該検体−共役溶液にさらされる。検体−ナノ粒子複合体中の検体202の個別の結合部位(結合場所)に固有の(または特異的な)ナノロッド連結部分127のいくつかは、ナノロッドの第2の端部において該検体−ナノ粒子複合体と結合または連結して、ナノロッド−検体−ナノ粒子複合体を形成する。図2Cは、検体−共役溶液中の溶剤(溶媒)を蒸発させた結果を示す略斜視図である。溶剤の蒸発によって、センサー100のナノロッド120の第2の端部は互いに近接し、これによって、ナノロッド120によって捕捉されて該ナノロッドの第2の端部に集められた検体−ナノ粒子複合体の機能化されたナノ粒子130からのラマン信号を検出できるようになる。
【0038】
図3A図3Cは、本明細書に記載されている原理にしたがう1例における、検体を検出するための分離メカニズムを示す。略側面図である図3Aでは、上記の複数の機能化されたナノ粒子130を含むラマンレポーター溶液が、ナノロッド120を含む上記のセンシング基板110にさらされる。ナノロッド連結部分127及びナノ粒子連結部分137は、互いに特異性(または特定性)を有しており、たとえば、それらの連結部分を、特定の結合対の要素とすることができる。ラマンレポーター溶液中のナノ粒子130は、ナノロッド120と結合し、または、それに関連付けられる。略斜視図である図3Bでは、ラマンレポーター溶液から溶剤が蒸発することによって、ナノロッドの第2の端部が互いに近接し、ナノ粒子130は、センサー100のナノロッドの第2の端部に集中する。センサー100は検体202にさらされ、該検体は、連結部分127と137の間の結合、または、連結部分127と137の一方を特異的(または特定的ないし選択的)に攻撃して、最終的に、センシング基板110のナノロッド120からナノ粒子130を分離する。この分離は、ナノ粒子130が互いに近接しているナノロッドの第2の端部から解放されたときの、ナノ粒子130上のラマンダイからのラマン信号の減少として検出可能である。図3Cは、連結部分127と137の間の結合を切り離して1つ以上の部分にする特定の検体202を用いて、ナノ粒子130をナノロッドの第2の端部122から分離する例を示す拡大略側面図である。
【0039】
図4は、本明細書に記載されている原理の1例によるSERSセンサーシステム400のブロック図である。SERSセンサーシステム400は、ナノ粒子とセンシング基板上のナノロッドとの相互作用に基づく、該ナノ粒子の機能化表面からのラマン散乱信号412を用いて検体を検出する。システム400は、SERSセンサー100について上記したものと実質的に同じであるSERSセンサー410を備えている。システム400はさらに、照射源420及びラマン信号検出器430を備えている。
【0040】
照射源(または照明源)420は、SERSセンサー410のセンシング基板に(その放射が)向けられており、具体的には、照射源420は、互いに近接した関係にある、センシング基板上の隣接するナノロッドの第2の端部または先端部を照射ないし照明するように構成されている(この点は、SERSセンサー100についても記述済みである)。照射源420は、機能化されたナノ粒子の表面によるラマン散乱信号412の放出を誘導する周波数を有する電磁(EM)放射ビーム(たとえば、光ビームまたは光信号)から構成される照射信号422を放出することができる。いくつかの例では、照射源420をレーザーから構成することができ、照射信号422をレーザービーム(レーザー光線)から構成することができる。他の例では、照射源420を、EM放射を生成するための他の手段(たとえば、発光ダイオードや白熱光源)とすることができる。いくつかの例では、ナノロッドの第2の端部が互いに近接していない場合には、または、該第2の端部が互いに近接するまでは、該第2の端部は、照射源420からの照射ビームとは交差しない(交わらない)。
【0041】
ラマン信号検出器430は、互いに近接しているナノロッドの第2の端部の近傍からのラマン信号を検出するように構成ないし配置されている。具体的には、ラマン信号検出器430は、SERSセンサー410のセンシング基板上で近接しているナノロッドの第2の端部に結合したまたは関連付けられたナノ粒子の機能化表面から生成されたラマン散乱信号412を受信するように構成されている。いくつかの例では、ラマン信号検出器430は、検体の存在下で、ナノ粒子が、センシング基板のナノロッドから分離(または関連付けを解除)された場合に、ラマン散乱信号412の変化(たとえば減少)を検出するように構成されている。
【0042】
図示されていないいくつかの例では、SERSセンサーシステム400はさらに、機能化されたナノ粒子の複数の組(または集合)を有する。ナノ粒子の各組は、他のナノ粒子の組とは異なるそれぞれの組のナノ粒子の表面上のラマンダイ及び対応する第1の連結部分で機能化されている。ある1つの組のラマンダイは、たとえば、他の組からのラマン信号とは異なるラマン信号を有することによって、他の組と異なり、これによって、それぞれの組が識別される。いくつかの例では、各組の第1の連結部分は、異なる検体またはセンシング基板の異なるナノロッドへの固有(または特異的な)結合ないし関連付けにより互いに異なっている。他の例では、各組の第1の連結部分は、それぞれの異なる検体に固有の(または特異的な)分離ないし関連付けの解除により互いに異なっている。1つの組内のラマンダイ及び対応する第1の連結部分は、特定の検体に固有(または特異的)である。この固有性(または特異性)によって、それぞれのラマン散乱信号と特定の検体とが相互に関連付けられる。
【0043】
(図示されていない)いくつかの例では、SERSセンサーシステム400はさらに、センシング基板上にナノロッドの複数の組を有する。ナノロッドの各組は、他のナノロッドの組とは異なる第2の連結部分をナノロッド上に有する。第2の連結部分は、それぞれの異なる検体またはナノ粒子の組のそれぞれ異なる第1の連結部分への固有の(または特異的な)結合ないし関連付けにより互いに異なっている。他の例では、各組の第2の連結部分は、異なる検体に固有の(または特異的な)分離ないし関連付けの解除により互いに異なっている。これらの例によるSERSセンサーシステム400によって提供される固有性(または特異性)は、単一のSERSセンサー410による種々の異なる検体の多重検出を容易にする。
【0044】
図5は、本明細書に記載されている原理の1例にしたがうSERS検出法500のフローチャートである。SERS検出法500は、互いに隔置されて、第1の端部で基板に取り付けられた複数のナノロッドを提供すること(510)を含む。複数のナノロッドの各々のナノロッドは、該ナノロッドの第1の端部の反対側にある自由な(すなわち束縛されていない)第2の端部を有する。いくつかの例では、ナノロッドは比較的柔軟であって、隣接するナノロッドの第2の端部が互いに近接する位置まで動けるように曲がることができるようになっている。いくつかの例では、基板は、隣接するナノロッドの第2の端部が互いに近接するように動くのを促進ないし容易にする可撓性材料または刺激応答性材料であり、あるいは、それらの可撓性材料または刺激応答性材料を含んでいる。ナノロッドはラマン活性表面を含み、該ラマン活性表面は、たとえば、該第2の端部に集中して配置されるか、または、該第2の端部を含むナノロッドの長さ全体または該長さの一部分に沿った該ナノロッド上のコーティング(被膜)である。さらに、ナノロッドの第2の端部の表面は、連結部分で機能化される。いくつかの例では、基板上に提供される(510)ナノロッドは、上記のSERSセンサー100のセンシング基板110上のナノロッド120と実質的に同じである。
【0045】
SERS検出法500はさらに、機能化された複数のナノ粒子を提供すること(520)を含む。ナノ粒子は、それらの表面において機能化されてナノロッドと直接または間接に相互作用するが、他の点では、ナノロッドから独立している。いくつかの例では、ナノ粒子は、たとえばラマンダイであるラマン信号発生器(またはラマン信号発生源)、及び、検体に固有の(または特異的な)連結部分もしくはナノロッドの第2の端部上の機能化されている連結部分で機能化される(または、ラマン信号発生源、及び、検体に固有の(または特異的な)連結部分であって、ナノロッドの第2の端部上の機能化されている連結部分で機能化される)。いくつかの例では、提供された(520)機能化されたナノ粒子は、上記のSERSセンサー100の機能化されたナノ粒子130と実質的に同じである。さらに、基板上に提供された(510)ナノロッド、及び提供された(520)ナノ粒子は、それぞれ、上記のSERSセンサー100と実質的に同じであるSERSセンサーを形成する。
【0046】
SERS検出法500はさらに、SERSセンサーのナノ粒子及びナノロッドを検体にさらすこと(530)を含む(「さらす」とは、対象物同士が相互作用するような状態にする、たとえば、対象物同士を接触させることを意味する)。図6Aは、本明細書に記載されている原理にしたがう1例による、SERS検出法500の結合(または関連付け)メカニズムにおいてSERSセンサーを検体にさらす行程530aのフローチャートである。結合(または関連付け)の場合には、SERSセンサーをさらす行程530aは、それぞれ独立したナノ粒子を検体にさらして、検体−ナノ粒子複合体の溶液(または溶解した検体−ナノ粒子複合体)を形成すること(531)、及び、検体−ナノ粒子複合体の溶液(または溶解した検体−ナノ粒子複合体)をナノロッドにさらして、ナノロッド−検体―ナノ粒子複合体の溶液(または溶解したナノロッド−検体―ナノ粒子複合体)を形成すること(533)を含む。さらす行程530aはさらに、ナノロッドの第2の端部が互いに近接するようにそれらの端部を動かすこと(535)を含む。たとえば、該溶液の溶剤を蒸発(または気化)させて、隣接するナノロッドの第2の端部同士を近接させること(535)ができる。他の例では、温度とpH(ペーハー)とその他の物理的ないし化学的パラメータとのうちの1以上を変えて、該第2の端部を近接させること(535)ができる。
【0047】
図6Bは、本明細書に記載されている原理にしたがう別の例による、SERS検出法500の分離(または関連付け解除)メカニズムにおいてSERSセンサーを検体にさらす行程530bのフローチャートである。分離(または関連付けの解除)の場合には、SERSセンサーをさらす行程530bは、それぞれ独立したナノ粒子をナノロッドにさらして、ナノロッド−ナノ粒子複合体を形成すること(532)、ナノロッドの第2の端部を互いに近接するように動かすこと(534)、及び、該第2の端部が互いに近接しているナノロッド−ナノ粒子複合体を検体にさらすこと(536)を含む。たとえば、溶剤を蒸発させること、温度を変化させること、pH(ペーハー)を変化させること、及びその他の物理的もしくは化学的に変化させることのうちの1以上を用いて、隣接するナノロッドの第2の端部間に近接関係を生じさせること(534)ができる。
【0048】
図5を再度参照すると、SERS検出法500はさらに、互いに近接しているナノロッドの第2の端部を照射する行程(540)を含み、該行程は、ナノ粒子とナノロッドの第2の端部との間の相互作用状態(または相互作用している部分)に効果的に光を当ててラマン信号を生成する。結合(または関連付け)の場合には、照射された(540)相互作用状態(または相互作用している部分)は、それぞれ独立したナノ粒子とナノロッドの第2の端部を含んでおり、該ナノ粒子及び該第2の端部はいずれも、ナノロッド−検体−ナノ粒子複合体(すなわち、ナノ粒子とナノロッドは間接的に相互作用する)をなすように検体に選択的に結合されている。分離(または関連付けの解除)の場合には、照射された(540)相互作用状態(または相互作用している部分)は、それぞれ独立したナノ粒子、及び、互いに近接しているナノロッドの第2の端部(該ナノ粒子と該第2の端部は、ナノロッド−ナノ粒子複合体(すなわち、ナノ粒子とナノロッドは直接相互作用する)をなすように互いに選択的に結合ないし関連付けされている)と、該ナノロッドから該ナノ粒子を選択的に分離する(または、該ナノロッドと該ナノ粒子の関連付けを選択的に解除する)検体を含んでいる。
【0049】
SERS検出方法500はさらに、検体によって引き起こされた、機能化されたナノ粒子からのラマン散乱信号に対する影響を検出する行程550を含む。結合(または関連付け)の場合には、ラマン散乱信号に対する影響は、検体を介するナノ粒子とナノロッドとの間の相互作用(すなわち、間接的な相互作用)の結果としてラマン散乱信号が生成されることである。分離(または関連付けの解除)の場合には、ラマン散乱信号に対する影響は、ナノ粒子とナノロッドとの間の相互作用(すなわち、直接の相互作用)の結果として、生成されるラマン散乱信号が減少することである。生成されるラマン散乱信号のこの減少は、検体の存在下での該直接の相互作用の分離(または遮断)に起因する。
【0050】
以上、ナノロッド、及び、該ナノロッドから独立した機能化されたナノ粒子が配置されたセンシング基板を用いるSERSセンサー、SERSセンサーシステム、及びSERS検出方法の例を説明した。当然ながら、上記の例は、本明細書に記載されている原理を表す多くの特定の例のうちのいくつかを例示したにすぎない。当業者であれば、特許請求の範囲によって画定される範囲から逸脱することなく、他の多くの構成ないし配置を容易に想起できることは明らかである。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B