【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1教示によれば、上記目的は、収容手段に、エネルギ貯蔵モジュール同士の間の定変形挙動体(defined deformation behaviour, definiertem Deformationsverhalten(英訳、独訳))を備えた少なくとも1つの変形ゾーンを設けることにより達成される。
【0007】
エネルギ貯蔵モジュールと該エネルギ貯蔵モジュールの収容領域との間に定変形挙動体を備えた変形ゾーンを設けることにより、事故挙動が大幅に改善される。これにより、衝撃を受けたときに床構造に作用するエネルギを、例えば変形により縁領域でのみ吸収させる必要がないだけでなく、特に、エネルギ貯蔵モジュール同士の間の変形手段により吸収させることができる。前記構成によりエネルギ貯蔵モジュールへの損傷を効率的に防止する。
【0008】
定変形挙動体を備えた変形ゾーンを全てのエネルギ貯蔵モジュール同士の間に設けることが好ましい。これにより、収容手段を介して最高度のエネルギ吸収が達成され、したがって全てのエネルギ貯蔵モジュールの最適事故挙動および最適保護が確保される。
【0009】
エネルギ貯蔵モジュール同士の間には変形ゾーンが設けられているので、事故の場合に、エネルギ貯蔵モジュールが損傷を受けることなく、エネルギ貯蔵モジュール同士の間の空間が減少される。したがって、この空間内で、エネルギ貯蔵モジュールに損傷を与えることなく、収容手段の変形を生じさせることができる。
【0010】
エネルギ貯蔵モジュールとは、特にバッテリおよび電気エネルギを蓄えるアキュムレータを意味するものと理解すべきであるが、例えば燃料電池または水素電池のような他の形式のエネルギ貯蔵手段も含むものである。
【0011】
定変形挙動体を備えた変形ゾーンとは、床構造に作用する力を優先的に吸収できかつ他の構造要素に比べて例えば衝撃エネルギを特に良く受入れかつ吸収できるゾーンであると理解すべきである。
【0012】
定変形挙動体は、例えば、粉々に壊れ易いビーズまたは材料の凹みのような弱い材料により達成できるが、薄い領域または容易に変形可能な種々の材料を用いることもできる。
【0013】
エネルギ貯蔵モジュールに適した収容手段として、例えば、クロスメンバ、長手方向部材および側方部材が含まれる。より詳しくは、これらの部材は、これらの上にエネルギ貯蔵モジュールが横たわるか当接する部材、またはエネルギ貯蔵モジュールの収容領域を定める部材である。しかしながら、別の収容ボックスを設けることもできる。より詳しくは、クロスメンバおよび長手方向部材によって、エネルギ貯蔵モジュールを実質的に包囲するフレーム構造を形成できる。
【0014】
定変形挙動体を備えた変形ゾーンを、エネルギ貯蔵モジュール同士の間に配置すべきであるということは、一方では、これらのゾーンを、互いに間隔を隔てた少なくとも2つのエネルギ貯蔵モジュールにより形成される空間内に設けることができることを意味する。しかしながら、他方では、変形ゾーンは、エネルギ貯蔵モジュールにより形成される空間の長手方向延長部内に設けることもできる。このことは、変形ゾーンをエネルギ貯蔵モジュール同士の間に直接設けなくてはならないことを意味するものではなく、例えば、エネルギ貯蔵モジュールにより形成される空間の上または下に設けることをも意味する。
【0015】
本発明では、クロスメンバおよび長手方向部材は、中空プロファイルとして形成するのが好ましい。これにより、非常に軽量であるにも係わらず、床構造の非常に優れた安定性、したがって非常に優れた事故挙動を達成できる。より詳しくは、5つのクロスメンバにより、最適事故挙動を達成できる。これらのクロスメンバは、長手方向に実質的に均一に分散されるのが好ましい。
【0016】
本発明による床構造の第1実施形態によれば、床構造は、少なくとも1つのエネルギ貯蔵モジュールに1つの収容ボックス、好ましくは各エネルギ貯蔵モジュールについて1つの収容ボックスを有する。
【0017】
収容ボックスは、個々のエネルギ貯蔵モジュールに、定収容領域を利用できるようにする。これにより事故挙動は更に改善される。なぜならば、収容ボックスは、一方ではエネルギ貯蔵モジュールを部分的に包囲し、したがって保護し、他方では特にエネルギ貯蔵モジュールの領域において床構造の安定性を改善するからである。また、収容手段である収容ボックスは、変形ゾーンを提供できる。
【0018】
収容ボックスは、好ましくは床領域および側壁からなり、下からエネルギ貯蔵モジュールを包囲する。これにより、収容ボックスを下から緩めることにより、エネルギ貯蔵モジュールに下から特に容易にアクセスしかつ所望通りに交換できる。
【0019】
各エネルギ貯蔵モジュールについて1つの収容ボックスが設けられるという事実により、個々の収容ボックスを空にしておくことができ、かつ収容ボックスにより、個々のエネルギ貯蔵モジュールをそれぞれの収容領域内に固定できる。最後に、収容ボックスを設けることにより、個々のエネルギ貯蔵モジュールに欠陥が生じても、床構造の安定性を確保できる。
【0020】
しかしながら、実際には、収容ボックス内に1つ以上のエネルギ貯蔵モジュールを収容することを考えることもできる。これにより、重量および製造費用、したがって床構造のコストを低減できる。
【0021】
本発明による床プラットホームの他の実施形態によれば、少なくとも1つの収容ボックスが、強化を目的としてエンボス加工領域を有している。これにより、エネルギ貯蔵モジュールの安定性、したがって事故挙動および保護を更に改善できる。収容ボックスの床領域に交差補強部が設けられるならば特に好ましい。実際には、個々の収容ボックスの全てまたは一部にのみ、強化の目的でエンボス加工領域が設けられる。
【0022】
少なくとも1つの収容ボックスが、好ましくは少なくとも1つのエンボス加工部品を介して、少なくとも1つのクロスメンバに連結されるならば更に好ましい。収容ボックスをクロスメンバに連結することにより、収容ボックスを簡単な方法で床構造の収容手段の残部に連結できる。この連結において、クロスメンバは、特に側面衝突の保護を改善するための強化機能と、収容ボックスの固定要素としての機能を満たしている。このような連結は、床構造の長手方向に延びる3つ以上の収容ボックスが設けられる場合に特に有利である。この場合、収容ボックスは1つ以上のクロスメンバに固定できる。
【0023】
床構造の安定性を改善するには、収容ボックスは2つのクロスメンバに固定するのが好ましい。
【0024】
変形ゾーンが、収容ボックスが固定されるクロスメンバ上に設けられるならば特に有利である。このように変形ゾーンを設けると、側面衝突時に実質的にクロスメンバに沿って作用する力により、エネルギ貯蔵モジュール同士の空間をどれほど縮小できるかを正確に決定できる。
【0025】
収容ボックスとクロスメンバとの固定は、より詳しくは、エンボス加工部品を用いて行うことができる。これらは、例えば溶接により収容ボックスに連結され、かつ次に収容ボックスをクロスメンバにねじ止めするねじ連結のための収容領域を形成できる。しかしながら、実際には、溶接、接着、ロッキング係合等の確実係合、摩擦連結または材料連結による他の連結方法を使用できる。
【0026】
好ましくは、収容ボックスは、床構造の下側から床構造に、より詳しくはねじにより固定される。これにより、下側から収容ボックスのねじを緩めることにより、車両のエネルギ貯蔵モジュールへの容易なアクセスが可能になる。
【0027】
少なくとも2つの収容ボックスが設けられ、かつこれらの収容ボックスが実質的に長方形の形状を有しかつ長手方向部材に対して平行に延びるならば更に有利である。これにより、エネルギ貯蔵モジュール同士の間には、長手方向、すなわち移動方向に対して平行に空間が形成され、したがって、横方向のエネルギ吸収のための定変形挙動体を備えた変形ゾーンが形成される。一般に、車両のエンジン隔室および後部隔室における粉々に壊れ易いゾーンにより、車両の移動方向にはエネルギ貯蔵モジュールの充分な保護が与えられるので、収容ボックスおよびエネルギ貯蔵モジュールのこの構成により、特にエネルギ貯蔵モジュールの側面衝突保護が改善される。
【0028】
本発明による床構造の次の実施形態によれば、収容ボックスの側壁の縁部はフランジを有している。これにより、一方では、収容ボックスの安定性が更に増大され、したがって事故挙動が改善される。他方では、フランジ領域により、エネルギ貯蔵モジュール同士の間に、定変形挙動体を備えた変形ゾーンを簡単な方法で設けることができる。フランジは、側壁から実質的に直角に曲げられる。これにより、フランジを当接させて、隣接する収容ボックスを配置でき、変形ゾーンを特に有効に設けることができる。
【0029】
次の実施形態によれば、床構造は更に、1つのシル、好ましくは2つのシルを有している。長手方向部材に対して平行に延びるシルは、床構造の安定性を増大させ、これによりまた、事故挙動、より詳しくは側面衝突保護を改善する。シルは、最適安定性と、軽量性および低材料コストとを組合せることができるように、中空プロファイルとして形成するのが好ましい。シルは、例えばクロスメンバを介して床構造に連結される。これらの部材は直線に構成する必要はなく、曲げるか、湾曲させることもできる。
【0030】
好ましくは、少なくとも1つのクロスメンバおよび/または少なくとも1つの収容ボックスおよび/または少なくとも1つの長手方向部材により、エネルギ貯蔵モジュール同士の間に、定変形挙動体を備えた少なくとも1つの変形ゾーンが設けられる。かくして、床構造の重量を増大させることなくまたはコストが嵩む付加コンポーネンツを設けることなく、事故挙動を改善するのに床構造の既存の収容手段が有効に使用される。
【0031】
長手方向に空間が形成されるようにエネルギ貯蔵モジュールが配置される場合には、クロスメンバが変形ゾーンを有するのが好ましく、一方、空間が横方向に形成される場合には、変形ゾーンを長手方向部材にも設けることができる。各場合に、収容ボックスにより、エネルギ貯蔵モジュール同士の間に直接変形ゾーンを設けることができる。
【0032】
本発明による床構造の次の実施形態によれば、少なくとも1つのクロスメンバは、長手方向部材とシルとの間に、定変形挙動体を備えた変形ゾーンを有している。かくして、定変形する付加領域が設けられる。したがって、エネルギ貯蔵モジュール同士の間に、定変形挙動体を備えた変形ゾーンの高過ぎる負荷が回避される。なぜならば、衝撃エネルギの少なくとも幾分かが、長手方向部材とシルとの間の領域における、クロスメンバの定変形挙動体を備えた変形ゾーンにより既に吸収されているからである。また、これらの変形ゾーンは、より詳しくは粉々に壊れ易いビーズにより実現できる。
【0033】
表現「長手方向部材とシルとの間」とは、変形ゾーンが、シルと長手方向部材とにより形成される空間内に設けられることを意味する。しかしながら、変形ゾーンは、空間の長手方向延長部内に設けることもできる。このことは、変形ゾーンを、長手方向部材とシルとの間に直接設けなくてはならないのではなく、例えば空間の上または下に設けることができることを意味する。
【0034】
他の有利な実施形態では、床構造は、長手方向部材とシルとの間の定変形挙動体を備えた少なくとも1つの変形要素を有している。この変形要素により、側面衝突の場合における安定性、したがって事故挙動が大幅に改善される。付加要素は必要であるが、それでも、これにより衝突エネルギの大部分は、一般に、シルと長手方向部材との間で吸収される。定変形挙動体を備えたこのような変形要素は、優先的に変形する、粉々に壊れ易いビーズを備えた中空プロファイルから作ることができる。変形要素はまた、力の作用を受けて変形要素に沿って優先的に圧縮されるハーモニカ状の構造にすることができる。
【0035】
次の実施形態によれば、両シルは、ワンピースに形成された少なくとも1つのクロスメンバを介して連結される。これにより、床構造全体に亘る高い安定性が達成される。より詳しくは、ワンピースに形成されたクロスメンバは、更に、長手方向部材に直接連結することもできる。ワンピースに形成されたクロスメンバが、長手方向部材とシルとの間および/またはエネルギ貯蔵モジュール同士の間に、定変形挙動体を備えた変形ゾーンを有するならば特に有利である。これにより、更に改善された事故挙動を達成できる。ワンピースに形成された少なくとも1つのクロスメンバは、中空プロファイルとして形成するのが好ましい。
【0036】
長手方向部材は、ワンピースで形成された少なくとも1つのクロスメンバにより同様に連結される。これにより、特に横方向に高い剛性を有する床構造が達成される。ワンピースに形成されたクロスメンバは、特に、エネルギ貯蔵モジュールまたは収容ボックスを固定する収容手段として機能する。ワンピースに形成された少なくとも1つのクロスメンバは、好ましくは中空プロファイルとして形成される。
【0037】
他の実施形態では、少なくとも1つの長手方向部材が、フロント長手方向部材要素およびリア長手方向部材要素を有している。好ましくは、2つの長手方向部材が、それぞれ、フロント長手方向部材要素およびリア長手方向部材要素を有している。長手方向部材要素を設けることにより、一方では、長手方向に付加変形領域を形成できる。これにより、特に長手方向の事故挙動が改善される。他方では、別々の長手方向部材要素によりモジュラ構造の床構造が達成されるため、これはよりフレキシブルに使用できる。長手方向部材要素は、例えば、特に車両の形式に適合する領域を形成でき、これにより長手方向部材は種々の形式の車両に使用できる。
【0038】
長手方向部材要素は、連結部品を介して長手方向部材に連結される。簡単でフレキシブルではあるが安定した、長手方向部材への長手方向部材要素への連結は、連結部品を介して行われる。より詳しくは、連結部品は、曲り部品により形成できる。かくして、先ず第1に、複雑な構造の形状がシートに切断され、次にシートは、長手方向部材と長手方向部材要素とを結合できるプロファイルが得られるように定められた曲げ縁部で曲げられる。複雑で安定した構造の部品を、曲り部品により特に簡単な方法で作ることができる。
【0039】
また、クロスメンバも連結部品を介して床構造に結合できる。特に、シルを連結するクロスメンバが、連結部品を介して長手方向部材および/または長手方向部材要素に結合されるならば有利である。これにより、長手方向部材または長手方向部材要素と交差するクロスメンバの安定連結が達成される。
【0040】
長手方向部材要素は幾何学的に実質的に同一に形成されている。これにより、製造コストおよび製造努力および出費を低減できる。なぜならば、フロントおよびリアまたは左右の長手方向部材要素を区別する必要がなくなるからである。
【0041】
また、長手方向部材要素は、U−O成形法により作られるのが好ましい。これにより、軽量ではあるが安定した長手方向部材要素を製造できる。長手方向部材要素は、慣用の溶接またはレーザ溶接により閉プロファイルに溶接できる。これらは軽量であるが、このようにして製造された長手方向部材は高い安定性および剛性を有している。
【0042】
最後に、本発明の第2教示によれば、本発明による床構造は、電気モータおよび/または内燃機関を備えた自動車に使用するのが有利である。かくして、電気モータおよび/または内燃機関を備えた車両を提供でき、このような車両は、本発明の床構造により優れた事故挙動を有する。本発明の床構造の収容手段内に収容されたエネルギ貯蔵モジュールは、床構造の製造コストおよびその重量に悪影響を与えることなく、衝突、特に側面衝突による損傷に対して有効に保護される。
【0043】
以下、図示の例示実施形態を参照して、本発明をより詳細に説明する。