(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アミノ酸が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、ヒスチジンおよびグリシルグリシンからなる群から選択される、請求項2に記載の使用。
紙、ボール紙、波形板紙、プラスチックフィルム、リッジ付きプラスチック部品、布地、木材、金属、ガラス、皮革、食料品または固体医薬組成物である、請求項12に記載の基材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、当技術分野で認識されているように、レーザーマーキング可能なAOM系の水性組成物には、活性化の前に不透明なコーティングがもたらされるという問題がある。さらに、いくつかの用途については、AOMの反応性が低過ぎると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、マーキング用途において、アミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体を使用することによって、当技術分野における上記に特定した欠陥、および欠点の1つまたは複数を単独でまたは任意に組み合わせて緩和、軽減、排除または回避することを探求する。そうした使用によって、より高い反応性(フルエンス対光学密度に関して)およびより良好な透明性を有するコーティングを得ることができる。アミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体は一般式(I)
Mo
xO
y(O
2)
zL
a(H
2O)
b (I)
で表すことができる。式中、「x」は1〜5の整数、例えば1、2または3であり;「y」は1〜10の整数、例えば1、4または7であり;「z」は1〜5の整数、例えば2であり;「a」は1〜3の整数、例えば1であり;「b」は1〜10の整数、例えば1、4または6であり;Lはアミノ酸である。アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、ヒスチジンおよびグリシルグリシンからなる群から選択することができる。好ましくは、アミノ酸はグリシンである。
【0008】
本発明の他の態様は、そうしたアミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体、溶媒および水溶性または水分散性のポリマー結合剤を含む組成物に関する。一般に、溶媒は水性溶媒である。さらに、その組成物は、還元されたインジウムスズ酸化物などの700nm〜2500nmの範囲の波長の光を吸収する光吸収剤を含むことができる。
【0009】
本発明の他の態様は、そうした組成物でコーティングされた基材に関する。その基材は、紙、ボール紙、波形板紙、プラスチックフィルム、リッジ付きプラスチック部品、布地、木材、金属、ガラス、皮革、食料品または固体医薬組成物であってよい。任意選択で、コーティングされた基材は、ポリエチレンなどのポリオレフィンでオーバーラミネート加工されていてよい。
【0010】
本発明の他の態様は、基材にマーキングする方法に関する。そうした方法において、基材を、本明細書で上述したような組成物でコーティングする。したがって、マーキングをしようとするコーティングされた基材のその部分を、100nm〜20,000nmの範囲の波長の光に曝露してマーキングを作り出す。一般に、その光は、10,000nm〜11,000nmの範囲の波長で動作するCO
2レーザーまたは700〜2500nmの範囲の波長で動作するレーザー、ダイオードもしくはダイオードアレイシステムによって供給される。マーキングをしようとするコーティングされた基材のその部分を100nm〜20,000の範囲の波長の光に曝露させるよりも、むしろ、マーキングをしようとする部分を、非接触式加熱または感熱式プリンターによって供給される接触式加熱に曝露してもよい。
【0011】
本発明の他の態様は、そうした方法によって得られるマーキングされた基材に関する。
【0012】
本発明の他の有利な特徴は、従属クレームにおいて定義される。さらに、本発明の有利な特徴を、本明細書で開示される実施形態において詳細に説明する。
【0013】
好ましい実施形態の詳細なまとめ
種々のモリブデン酸塩が当技術分野で公知である。一例として、モリブデン酸塩は、工業用水処理における腐食防止剤として使用されている。さらに、モリブデン酸塩は、防食用途におけるクロム酸塩の代替品として、一部用途が見出されている。しかし、中程度の腐食防止しか示さないので、防食用途におけるその使用はかなり限定されている。
【0014】
さらに、オクタモリブデン酸アンモニウム(AOM)がレーザーマーキング用途で使用されていることが分かっている。そうした用途では、一般に、マーキングしようとする基材を、AOMを含むインキ配合物でコーティングする。したがって、マーキングをしようとするコーティングされた基材の部分に照射してマーキングを得る。しかし、すでに概説したように、レーザーマーキング可能なAOM系の水性組成物は、活性化前に低い透明性を有する不透明なコーティングをもたらす問題がある。さらに、いくつかの用途のためには反応性、すなわち特定の光学密度を得るために必要とされるフルエンスが低過ぎる。
【0015】
予想外に、アミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体も、熱に曝露されると色が変わることが分かった。AOMと同様に、そうした錯体は、10,600nmのレーザー照射で直接マーキングすることができる、すなわち色を変えるはずである材料を構成する。したがって、そうした錯体は、画像、文字、図表、文章等を目的とするマーキング用途において使用するのに適している。
【0016】
アミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体はAOMより反応性が高い、すなわち、同じ光学密度を得るために、より少ないフルエンスしか必要とされない。さらに、アミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体は一般にAOMより良好な水溶性を示す。さらに、より良好な透明性を有するコーティングを、アミノ酸含有モリブデン(VI)ペルオキソ錯体を含む組成物で得ることができる。グリシンなどのいくつかのアミノ酸は、それが水に溶解している本質的に透明な溶液をも提供することになる。
【0017】
したがって、一実施形態は、マーキング用途における、アミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体の使用に関する。アミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体は一般式(I)で表すことができる。
Mo
xO
y(O
2)
zL
a(H
2O)
b (I)
式中、「x」は1〜5の整数、例えば1、2または3であり;「y」は1〜10の整数、例えば1、4または7であり;「z」は1〜5の整数、例えば2であり;「a」は1〜3の整数、例えば1であり;「b」は1〜10の整数、例えば1、4または6であり;Lはアミノ酸である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
そうした錯体の合成、特性および特性評価は当技術分野においてこれまで報告されている(cf.Djordjevicら、Inorganic Chimica Acta 104(1985)L7〜L9、Serdiukら、Transition Metal Chemistry 26(2001)538〜543頁、Djordjevicら、Inorganic Chemistry 36(1997)1798〜1805頁、Sastryら、Transition Metal Chemistry 21(1996)410〜412頁)。
【0019】
アミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体を得るために使用できるアミノ酸の例は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、ヒスチジンおよびグリシルグリシンからなる群から選択することができる。好ましくは、アミノ酸はグリシンである。
【0020】
さらに、キノリン、2-ピコリンならびに種々のアロイルヒドラゾンなどの他の配位子を有するモリブデン(VI)ペルオキソ錯体も当技術分野で公知である。
【0021】
さらに、アミノ酸がグリシンである錯体などの錯体は水に容易に溶解することが見出されている。したがって、透明な水性インキ配合物は、そうしたマーキング錯体を水溶液に溶解させることによって得ることができる。そうした組成物でコーティングされた基材は、AOMの水分散液でコーティングされた表面(cf.WO02/01250)とは対照的に本質的に透明である、すなわち不透明ではない。
【0022】
アミノ酸がグリシンである錯体は、以下の式MoO(O
2)
2(GLY)(H
2O)で表すことができる。
【0023】
好ましい実施形態は、マーキング用途における、アミノ酸がグリシンであるアミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体の使用に関する。
【0024】
マーキング用途においてアミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体が使用される場合、レーザーを用いて、アミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体の色を変えさせることによってマーキングを生み出すことができる。
【0025】
さらに、グリシンなどのアミノ酸含有モリブデン(VI)ペルオキソ錯体を含む水性インキ配合物の使用によって得られるコーティングは、実質的に可視光透明性である。そうしたコーティングは熱的に敏感であり、例えば:バルブ/マスク配置(bulb/mask arrangement)などの熱的光源、走査型レーザー、ダイオードアレイまたは熱接触式プリンターを用いる、コーディングおよびマーキングなどの熱的に駆動される色変化および画像化の用途において有用性が見出されており、非画像領域における不透明化なしで効果的な画像化を提供する。
【0026】
さらに、グリシンなどのアミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体の水溶解特性は、公知の熱的に敏感な画像形成材料のためのコーティング混合物の調製において一般に関与する、時間がかかり無駄の多い高コストのミリング工程の回避を可能にする。これらは、PET、BOPPおよびセルロース系フィルムなどの透明な基材上に作られる本質的に無色で良好な透明性および光沢の熱的に敏感な層も可能にし:これは、熱的に敏感な層が、予め印刷された基材に、前記基材の外観に無視できる程度にしか影響を及ぼすことなく塗布されるようにする。
【0027】
アミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体は、以下の特性:(i)水に可溶性、(ii)水系の配合物またはインキをコーティングまたは印刷して塗布した場合の基材上での透明またはほぼ透明なフィルムを形成する特性、(iii)アミノ酸含有モリブデン(VI)ペルオキソ錯体を含む層が、IRバルブ/マスク、走査型レーザーまたはダイオードアレイによって画像様(imagewise)に熱的に曝露される、かつ/または熱接触式プリンターによってヒートブロック画像化された場合の良好な視覚的弁別の色変化として明らかにされる熱感受性、(iv)ブレンドのほぼ透明なフィルムの形成によって示される、少なくとも1つの水相溶性結合剤系との相溶性の1つまたは複数を有することができる。したがって、そうした化合物を、マーキングしようとする基材上に透明なコーティングを得るのに有利に使用することができる。好ましくは、モリブデン(VI)ペルオキソ錯体中のアミノ酸はグリシンである。
【0028】
さらに、MoO(O
2)
2(GLY)(H
2O)を含む組成物は、透明PETフィルムなどの不活性基材上または予め印刷された基材の頂部にコーティングまたは印刷され、乾燥された場合、可視光に実質的に透明な連続層、すなわちコーティングを形成する。そうしたコーティングは熱的に敏感であり、IRバルブ/マスク、走査型レーザー、ダイオードアレイまたは熱接触式プリンターにより画像化するためのサーモグラフィ材料および三次元物体上において用途が見出される。
【0029】
本明細書で開示する組成物によって形成される透明なコーティングは不透明な基材上でも有用である。その理由は、それらが、つや消し面をもたらす懸濁された不溶性モリブデン酸塩を含む組成物とは区別されるような望ましい光沢を付与することができるからである。
【0030】
別の実施形態はインキ配合物に関する。そうしたインキ配合物は、アミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体、溶媒および水溶性または水分散性のポリマー結合剤を含む組成物であって、前記錯体が一般式(I)による錯体である組成物であってよい。
Mo
xO
y(O
2)
zL
a(H
2O)
b (I)
式中、「x」は1〜5の整数、例えば1、2または3であり;「y」は1〜10の整数、例えば1、4または7であり;「z」は1〜5の整数、例えば2であり;「a」は1〜3の整数、例えば1であり;「b」は1〜10の整数、例えば1、4または6であり;Lはアミノ酸である。好ましくは、モリブデン(VI)ペルオキソ錯体中のアミノ酸はグリシンであり、前記錯体は以下の式MoO(O
2)
2(GLY)(H
2O)で表すことができる。
【0031】
必ずというわけではないが、一般に、溶媒は水性溶媒である。水性溶媒は水だけからなっていてもよい。しかし、1つまたは複数の水混和性有機溶媒を含むこともできる。
【0032】
そうした水混和性有機溶媒の例には、C1〜4アルカノール、C2〜4ポリオール、C3〜6ケトン、C4〜6エーテル、C2〜3ニトリル、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドンおよびスルホランが挙げられる。ここで、C1〜4アルカノールおよびC2〜4ポリオールはC1〜4アルコキシ基で置換されていてよい。
【0033】
C1〜4アルカノールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールまたはブタノール、イソブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノールである。
【0034】
そのC1〜4アルコキシ誘導体の例は、2-エトキシエタノールおよび1-メトキシ-2-プロパノールである。C2〜4ポリオールの例は、グリコールおよびグリセロールである。
【0035】
C3〜6ケトンの例は、アセトンおよびメチルエチルケトンである。C4〜6エーテルの例は、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエチルおよびテトラヒドロフランである。
【0036】
C2〜3ニトリルの一例はアセトニトリルである。
【0037】
好ましくは、水混和性有機溶媒は、C1〜4アルカノール、C2〜4ポリオール、C3〜6ケトン、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドからなる群から選択される。ここで、C1〜4アルカノールおよびC2〜4ポリオールはC1〜4アルコキシ基で置換されていてよい。
【0038】
非水系溶媒の例には、エタノール、酢酸エチルおよびメチルエチルケトンが挙げられる。
【0039】
水溶性または水分散性のポリマー結合剤は、水系コーティングまたはインキ配合物で使用するのに適したある範囲の水溶性またはアミン安定化された水性エマルジョンポリマーの1つまたは複数であってよい。一例として、アクリルポリマーを使用することができる。
【0040】
本明細書で開示するマーキング錯体、すなわちアミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体は、約10μmの波長を有するレーザー放射線の使用によって色を変えさせることができる。そうしたレーザー光は、10,000nm〜12,000nmの範囲の発光波長で中位IR CO
2レーザーによって提供することができる。
【0041】
しかし、その物理的にかさばったサイズのため、中位IR CO
2レーザーは、既存の生産ラインに据え付けるのにはあまり適していない。NIRファイバーレーザーは、臍帯状コード(umbilical cord)で数メートル離れたレーザーに連結されている生産ラインに取り付けられた小さいプリントヘッドを有することができる。したがって、前記欠点は、NIR(近赤外)レーザーを使用することによって克服することができる。
【0042】
NIRレーザーの使用を可能にするために、組成物は、700nm〜2500nmの範囲の波長で光を吸収する光吸収剤、すなわちNIR吸収剤を含むことができる。光吸収剤は、吸収された近赤外レーザー放射線を伝導熱に変換させることができる。したがって、NIRレーザーを使用して組成物の色を変えることができる。したがって、組成物は、700nm〜2500nmの範囲の波長の光を吸収してその組成物をNIRレーザー印刷用途で使用できるようにする光吸収剤をさらに含むことができる。
【0043】
光吸収剤は、有機染料/顔料、無機顔料、例えばリン酸ヒドロキシ銅(II)(copper(II)hydroxyl phosphate)、非化学量論的無機顔料および導電性ポリマーからなる群から選択することができる。
【0044】
有機染料/顔料タイプ。これらのタイプの光吸収剤は、これらに限定されないが:金属ポルフィリン、金属チオレン、例えばニッケル、白金およびパラジウムジチオレンおよびポリチオレン、金属フタロシアニン、これらのアザ変異体、これらのアニール化(annellated)変異体、ピリリウム塩、スクアリリウム、クロコニウム(croconium)、アミニウム、ジイモニウム、シアニンおよびインドレニンシアニンのファミリーを含む。
【0045】
本発明で使用できる有機染料の例は米国特許第6,911,262号に教示されており、Developments in the Chemistry and Technology of Organic dyes、J Griffiths(ed)、Oxford:Blackwell Scientific、1984年およびInfrared Absorbing Dyes、M Matsuoka(ed)、New York:Plenum Press、1990年に記載されている。本発明のNIR染料または顔料の他の例は、Epolin、Newark、NJ、USAから供給されているEpolight(商標)シリーズ;American Dye Source Inc、Quebec、Canadaから供給されているADSシリーズ;HW Sands、Jupiter、FL、USAから供給されているSDAおよびSDBシリーズ;BASF、Germanyから供給されているLumogen(商標)シリーズ、特にLumogen(商標)IR765、IR788およびIR1055;FujiFilm Imaging Colorants、Blackley、Manchester、UKから供給されているPro-Jet(商標)シリーズの染料、特にPro-Jet(商標)830NP、900NP、825LDIおよび830LDI;Gentex Corp of Carbondale、PAから供給されているFiltron(商標)製品ならびにBitterfeld-Wolfen、GermanyのFew Chemicals GmbHによって販売されているものに見ることができる。
【0046】
1,000nm〜1,200nmの範囲の発光波長のレーザーで使用するのに特に適したNIR染料の例は、N,N,N',N'-テトラキス(4-ジブチルアミノフェニル)-p-ベンゾキノンビス(イミニウムヘキサフルオロアンチモネート)である。
【0047】
化学量論的無機顔料タイプ。これらのタイプの光吸収剤は、これらに限定されないが、銅、ビスマス、鉄、ニッケル、スズ、インジウム、亜鉛、マンガン、ジルコニウム、タングステン、チタン、ランタンおよびアンチモンなどの金属の酸化物、水酸化物、硫化物、硫酸塩、ホウ化物、窒化物およびリン酸塩を含む。MERCKから供給されているIriodin製品として公知のコーティングされた雲母、酸化アンチモンスズおよびタングステン・ブロンズなどの混合金属酸化物も含まれる。銅塩は特に好ましく、最も好ましい銅塩はリン酸ヒドロキシ銅(II)である。
【0048】
非化学量論的無機顔料タイプ。非化学量論的とは、化合物中の元素の比が整数でないことを指す。典型的な金属酸化物について、化合物を還元することができ、ここでは酸素の欠損があり、あるいは化合物を酸化することができ、ここでは、金属の欠損がある。適切な非化学量論的化合物は、これらに限定されないが:銅、ビスマス、鉄、ニッケル、スズ、インジウム、亜鉛、マンガン、ジルコニウム、タングステン、チタン、ランタンおよびアンチモンなどの金属の非化学量論的酸化物、水酸化物、硫化物、硫酸塩、ホウ化物、窒化物およびリン酸塩を含む。非化学量論的混合金属酸化物およびドープ金属酸化物も含まれる。特に好ましい例には、非化学量論的な窒化チタン、酸化亜鉛、アンチモンスズ酸化物、酸化タングステンおよびインジウムスズ酸化物が挙げられる。最も好ましい非化学量論的化合物は還元または青インジウムスズ酸化物である。非化学量論という用語は、ドープ金属酸化物などのドープ金属化合物も含む。その例には、アルミニウムドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ酸化スズおよびスズドープ酸化インジウムが挙げられる。
【0049】
導電性ポリマー。導電性ポリマーは重合した状態で、共役しており、したがって正または負の電荷の非局在化/導通を可能にする結合モノマー(一般に環)を含む材料である。この共役は、放射線の波長に適用されるように制御することができまたポリマーの濃度にも依存する、吸収シフトを可能にする。共役して適切な導電性ポリマーをもたらすことができるモノマーの例は、アニリン、チオフェン、ピロール、フランおよびその置換誘導体である。そうしたポリマーは、低出力レーザーから熱を移動させる望ましい手段を提供するのに加えて、コーティング材料から、簡単には拡散して外へ出ないという利点を有する。これらは、ポリマー結合剤としても役割を果たすことができる。そうした材料のさらに別の利点は、これらが、高いローディング(最大で5重量%)でも無色であり得ることである。これは、約800nmで吸収するが0.1重量%のローディングでも緑色を帯びた色を組成物に与える、フタロシアニンなどのこれまで使用されてきたモノマー種と対照的である。本発明で使用するのに適した導電性ポリマー製品の例には:PSS/PEDOTを含むことが公知であるBaytron(Bayer)、Clevios(HC Starck)およびOrgacon(Agfa)製品が挙げられる。
【0050】
他の適切なNIR吸収剤のさらなる例は、WO2005/012442、WO2005/068207、WO2007/141522およびWO2008/050153に教示されている。
【0051】
最も好ましいNIR吸収剤は、コーティングの色およびコーティングの透明性に対して本質的に無視できる程度の影響しか与えないものである。吸収剤の吸光度プロファイルが光/レーザー供給源の発光プロファイルと適合し、これが低いフルエンス画像化をもたらすことも好ましい。オーバーラミネート加工されているか否かにかかわらず、NIRレーザーまたはダイオードアレイシステムなどの近赤外光源で画像化可能な透明なコーティングを作製することが好ましい。
【0052】
一実施形態によれば、NIR吸収剤は、還元または青インジウムスズ酸化物ナノ粉末であってよい。還元または青インジウムスズ酸化物は、約1,500nmで発光波長を有する光源と組み合わせて使用することが好ましい。1,550nmのNIRレーザーは特に好ましい例である。還元または青インジウムスズ酸化物を1,550nm NIRレーザーと組み合わせて、<5重量%の濃度で使用することができる。コーティングの重量は10g/m
2未満であってよい。これらのパラメーターで、透明なコーティングは、本質的に無色でかつほとんど透明であるが、強い1,550nmのNIR吸光度を有しており、低いフルエンスのレーザー画像化をもたらす。透明コーティング中でのNIR吸収剤の存在は、通常、そのCO
2レーザー画像化能に対して悪影響は及ぼさない。実際、吸収剤がしばしばCO
2レーザー放射線を伝導熱に変換する助けとなるので、NIR吸収剤の存在によってCO
2レーザー画像化能はしばしば向上する。
【0053】
一例として、組成物は、5〜95重量%の水系溶媒などの溶媒および5〜50重量%のマーキング錯体、すなわち本明細書で開示するアミノ酸含有モリブデン(VI)ペルオキソ錯体を含むことができる。水系溶媒は、少なくとも10重量%の水、好ましくは少なくとも50重量%、例えば少なくとも75重量%または少なくとも95重量%の水を含むことができる。
【0054】
当業者は、様々な種類の添加剤を画像化層中に組み込むことが可能であり、これは、ある特定の状況では有益である可能性があることを理解されよう。そうした添加剤には、例えば、ポリマー結合剤、感熱式プリンター性能を増進させるための弱い還元剤、着色剤、例えば染料または顔料、光安定剤、例えばUV吸収剤およびヒンダードアミン光安定剤(HALS)、酸化防止剤および他の公知の安定剤、pH緩衝剤、酸および塩基捕捉剤、タルクまたは選択されたシリカなどのブロッキング防止物質、およびレーザー画像化の任意の熱分解生成物を吸着するまたはそれと反応性のある物質、界面活性剤、接着促進剤、分散助剤、インキ流動性/レオロジー調整剤、保湿剤、緩速乾燥溶媒、急速乾燥溶媒、殺生物剤などが含まれる。
【0055】
溶液もしくは懸濁液中、または別個の層において特に有用な添加剤は、発色剤またはロイコ染料としてしばしば公知の電子供与型の染料前駆体である。本明細書のマーキング錯体、すなわちアミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体を、そうした発色剤と一緒に層の中に組み込み、例えばCO
2レーザーを用いて熱的に画像化させた場合、着色された画像を得ることができる。この色は、特定のフェノールなどの一般的な顕色剤の使用によって得られる色に相当していてよい。弱いブロック画像を、例えば100〜120℃、1〜10秒間の接触時間でヒートシーラーを用いて得ることもできる。したがって、マーキング錯体は、これらの発色剤の少なくともいくつかのための電子受容体および顕色剤として作用することができる。
【0056】
別の実施形態は、本明細書で開示する組成物でコーティングされた基材に関する。基材または基材の一部をコーティングするためにこの組成物を使用することによって、これらはマーキング可能となる。一例として、簡単な方法で包装に製造年月日(date-of-packing)を提供することができるが、その包装材料は他のどこかで製造され、ラミネート加工されている。組成物は、フラッドコーティング、フレキソ印刷、グラビア印刷等の水系インキに適した公知の任意の印刷またはコーティング方法で塗布することができる。そのドライコート重量は0.1〜20g/m
2、例えば0.5〜10g/m
2または1〜5g/m
2の範囲であってよい。
【0057】
本明細書で開示する組成物を:PET、PP、BOPP、PEおよびセルロース系のフィルムを含むポリマーフィルムなどの柔軟性のある透明な基材上に塗布して、IRバルブ/マスク、走査型レーザー、ダイオードアレイまたは直接接触型の感熱式プリンターを用いて画像化できる本質的に透明な無色の基材を得ることができる。組成物を、着色したポリマーフィルム、紙、波形ボール紙、布地等の不透明な柔軟性のある基材に塗布し、IRバルブ/マスク、走査型レーザー、ダイオードアレイまたは直接接触型の感熱式プリンターを用いて画像化することもできる。コーティングを、例えば文章、ロゴ、図柄(graphic)および一次元バーコード、二次元データマトリックスコードなどの機械可読コード、高容量データコードなどを含む予め印刷された基材に塗布することが特に好ましい。これは、IRバルブ/マスク、走査型レーザー、ダイオードアレイまたは直接接触型の感熱式プリンターを用いてコーティング層に画像を作り出せるようにするが、その高度に透明で本質的に無色の特性のために、画像化されていない層は下にある予め印刷された基材の外観に無視できる程度にしか影響を及ぼさず、したがって、その予め印刷された基材上の文章、ロゴ、図柄および一次元バーコード、二次元データマトリックスコード、高容量データコードなどの機械可読コードの可読性に本質的に影響を及ぼさない。
【0058】
組成物は、例えばガラス、プラスチックまたは紙/カード等でできた三次元物体、例えば固体または液体の製品、特に固体または液体の食料品の貯蔵に適した容器などのリッジ付き基材に直接塗布することができる。
【0059】
一実施形態によれば、本明細書で開示する組成物でコーティングする基材は、紙、ボール紙、波形板紙、プラスチックフィルム、リッジ付きプラスチック部品、布地、木材、金属、ガラス、皮革、食料品または固体医薬組成物であってよい。
【0060】
コーティングは:PE、BOPP、PETおよびセルロース系のフィルムでできた透明および不透明なポリマーフィルム、セルロースパルプ基材、例えば紙および波形ボール紙、ホイル、ガラス、金属、布地、食料品および薬剤単位用量の製剤または丸剤などを含む印刷または包装産業で使用される種々の基材に塗布することができる。透明でマーキング可能なコーティングされた基材は、粘着(self-adhesive)ラベル、食料および非食料製品用の包装などの品目、食品容器を含む固体または液体製品用容器などの三次元品目ならびに新聞、雑誌および宛名入り封筒(addressed envelope)などの書類の作成に使用することができる。マーキング組成物を、マスカスタマイゼーションで使用するのに適した基材/包装を作製する基材/包装の全体に塗布することができる、あるいはそれを、基材/包装の比較的小さな部分上へのパッチとして塗布することができる。次いでこのパッチを画像化して、人が読める日付およびロットコード情報ならびに一次元バーコード、二次元データマトリックスコードおよび高データ容量バーコードなどの機械可読コードを提供することができる。
【0061】
さらに、それに組成物が塗布されている基材は、印刷または包装用途で使用するのに適した基材の製造において公知の任意の物質も含むことができる。これらの物質は、基材中に存在しても基材表面上に存在してもよい。例としては、基材表面上のクレーコーティングの層および例えばPEまたはアルミニウムなどでできた障壁層が含まれる。
【0062】
コーティングとして基材に塗布することはもちろん、本明細書で開示するマーキング化合物は基材中に直接組み込むこともできる。例えばそれらを、ポリマーフィルム中へ同時押出する、またはプラスチック物品中に同時成形する、あるいは紙またはカードの中に直接添加する、例えばサイジングの段階で製紙用パルプに添加する。
【0063】
本明細書で開示する組成物でコーティングされた基材にオーバーラミネート加工することができる。これは、マーキング可能なコーティングを保護する、または不浸透性などの他の特性を基材に付与するために実施される。オーバーラミネート加工する工程は、コーティング仕上げとして、または、本明細書で開示する組成物でコーティングされた表面の上に溶融ポリマー、例えばPEを薄膜として押し出すことによって実施することができる。基材は、ポリエチレンなどのポリオレフィンでオーバーラミネート加工することができる。
【0064】
組成物でコーティングされた基材にオーバーラミネート加工する複数の実施形態では、オーバーラミネート加工する工程の間にマーキング錯体が変色を受けないことが好ましい。特にオーバーラミネート加工する工程がポリマー押出である場合。
【0065】
他の実施形態は、基材にマーキングする方法に関する。そうした方法では、マーキングしようとする基材またはその一部を、本明細書で開示されるマーキング錯体、すなわちアミノ酸含有モリブデン(VI)ペルオキソ錯体を含む組成物でコーティングすることができる。基材の例は本明細書で上記に提供されている。マーキング錯体の色を変えさせそれによってマークを提供するために、マーキングをしようとするコーティングされた基材の部分を、100nm〜20,000nmの範囲の波長の光に曝露させることができ、それによってマークを作り出すことができる。その光は様々な仕方で供給することができる。バルブ/マスク配置を用いることができるが、レーザー、ダイオードまたはダイオードアレイシステムを使用することが好ましい。
【0066】
10,000nm〜11,000nmの範囲の波長で動作するCO
2レーザーまたは700〜2500nmの範囲の波長で動作するNIRレーザー、ダイオードもしくはダイオードアレイシステムを用いて光を供給してマーキングを作り出すことができる。
【0067】
さらに、基材にマーキングするためのプロセスにおいて、非接触式加熱または感熱式プリンターを用いて供給される接触式加熱を使用してマーキングを得ることもできる。したがって、熱をかけることによって、画像、文字、図表または文章などのマーキングを形成させることもできる。熱は熱接触式プリンター、ヒートガンなどのホットエア供給源によって加えるか、または適切な光源からのフォトニックエネルギーの形態で熱を加えることができる。
【0068】
好ましくは、熱は、非コヒーレント光源であってもコヒーレント光源であってもよい適切な光源での照射によって局所的に加えられる。光源は単色であっても広帯域のものであってもよい。
【0069】
特に好ましくは、単色でコヒーレントな光源はレーザーである。適切なレーザーは、100nm〜20,000nmの範囲の発光波長を有することができる。レーザーは、連続波レーザーであってもパルス状レーザーであってもよい。
【0070】
適切なレーザーの例には、UVレーザー(<400nm)、可視帯レーザー(400nm〜700nm)、Nd:YAGレーザー/NIRファイバーレーザー(700nm〜2,500nm)および10,000nm〜12,000nmの範囲の発光波長を有する中位IR CO
2レーザーが挙げられる。
【0071】
レーザーは一般に操作型ビームシステム(steered beam system)を用いて基材に光をあてる。しかし、マスク配置も用いることができる。
【0072】
他の光源には、ダイオード、ダイオードアレイ、ファイバー連結型ダイオードアレイおよびバルブ/マスク配置が含まれる。コヒーレント光と非コヒーレント光の両方を放つことができるダイオードアレイシステムは、高速の連続または「オンザフライ」画像化で使用するのに特に適している。
【0073】
本明細書で開示する組成物でコーティングされた基材がオーバーラミネート加工されている場合、オーバーラミネートによって吸収されない光を放つ光源を使用することが好ましい。特に好ましい例は、近赤外範囲、すなわち700nm〜2,500nmの発光波長で動作するNd:YAGレーザー/NIRファイバーレーザーである。しかし、すでに概説したように、そうした波長を利用するために、組成物は、その組成物が近赤外光を吸収し、それを伝導熱に変換させることができる物質をさらに含むことが好ましい。
【0074】
別の実施形態はマーキングされた基材に関する。そうしたマーキングされた基材は、まさに説明したようにして得ることができる。
【0075】
マーキング錯体、すなわちアミノ酸含有モリブデン(VI)ペルオキソ錯体を含むのに加えて、組成物は1つまたは複数の他のマーキング化合物を含むことができる。そうした他のマーキング化合物の例には、チャー形成化合物および当技術分野で公知の他のタイプのマーキング化合物が挙げられる。他のマーキング化合物の例は以下に提供される。
【0076】
チャー形成化合物は、加熱されると着色したチャー、一般に茶色がかっているかまたは黒っぽいチャーを生成するものである。チャー形成化合物の好ましい例には、そのカルボニル基が還元されてヒドロキシル基いわゆる糖アルコールになっている単糖類、二糖類および多糖類ならびにその誘導体などの炭水化物からなる群から選択されるポリヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0077】
単糖類の例は糖類:グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、リボース、エリトロースおよびキシロースである。二糖類の例は糖類:マルトース、セロビオース、ラクトースおよびスクロースである。多糖類の例はセルロース、デンプン、アラビアゴム、デキストリンおよびシクロデキストリンである。糖アルコールの例はメソ-エリトリトール、ソルビトール、マンニトールおよびペンタエリトリトールである。より好ましいポリヒドロキシ化合物は二糖類、多糖類および糖アルコールである。
【0078】
最も好ましいポリヒドロキシ化合物はスクロース、アラビアゴムおよびメソ-エリトリトールである。ポリヒドロキシ化合物がD鏡像異性体、L鏡像異性体またはそのラセミ化合物で存在できる場合、これら3つすべての形態が含まれる。任意選択で、チャー形成を助けるために塩を加えることができる。その塩の例には、ホウ酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0079】
チャー形成化合物に加えて、当技術分野で公知の他のマーキング化合物を、遷移金属オキシアニオンおよび少なくとも1つのアンモニウムカチオンを含む組成物に加えることもできる。そうした他のマーキング化合物の例は、WO2007/045912、WO2002/068205、WO2006/129078、WO2010/026407、WO2002/074548、英国特許第2447659号、WO2004/043704、WO2006/018640、WO2007/063339、WO2010/029331、WO2010/029329、WO2006/051309、WO2009/093028、WO2010/001171、WO2010/049282、WO2010/049281、WO2010/045274、WO2009/010405、WO2009/010393、WO2008/107345、WO2008/110487、WO2008/083912、WO2008/055796、WO2007/088104、WO2007/031454、WO2007/012578、WO2006/108745およびWO2006/067073に教示されている。
【0080】
一実施形態によれば、本明細書で開示する組成物は顔料を含むこともできる。顔料は水分散性の無機または有機添加剤、例えば炭酸カルシウム等であってよい。界面活性剤または滑沢剤、例えばステアリン酸亜鉛等を含むある範囲の添加剤の1つまたは複数を使用することができる。
【0081】
本明細書で開示するマーキング錯体、すなわちアミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体は、それらが、例えばグラビア印刷、タンポ印刷、UVフレキソ印刷リバース式グラビア印刷、スピンコーティングなどの有機溶媒系インキに適した任意のコーティングまたは印刷方法を用いて基材に塗布できる分散液または懸濁液を形成することができる、非水性または有機溶媒ベースのコーティング系中への配合にも適している。
【0082】
さらに詳細な説明を要することなく、上記の説明を用いて、当業者は本発明を最大限利用することができるものと考えられる。したがって、本明細書で説明した好ましい特定の実施形態は、単なる例示に過ぎず、いかなることがあっても残りの説明を限定するものでは全くないと解釈されるべきである。さらに、特定の実施形態を参照して本発明を上記に説明してきたが、本明細書で示した特定の形態に限定されないものとする。むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲のみによって限定され、上記の特定の実施形態以外の他の実施形態、例えば上述したものと異なる実施形態も、同等に添付の特許請求の範囲内であるものとすることができる。
【0083】
特許請求の範囲において、「含む(comprises)/含む(comprising)」という用語は、他の要素またはステップの存在を排除するものではない。さらに、異なるクレーム中に個別的な特徴が含まれている可能性があるが、これらを有利に組み合わせることが可能であり、異なるクレーム中への包含は、特徴の組合せが実行可能でないかつ/または有利でないという意味を含むものではない。
【0084】
さらに、単数形での参照は複数形を排除するものではない。「a」、「an」、「第1の(first)」、「第2の(second)」等の用語は複数を排除するものではない。
【0085】
実験
以下の実施例は単なる例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでは全くない。むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲のみによって限定される。
【0086】
すべての化学薬品および試薬は、標準的な実験室グレード品であり、Sigma-Aldrichから購入した。
【実施例1】
【0087】
「グリシン-ペルオキソ-モリブデート」の合成
酸化モリブデン(VI)(4.32g、30mmol)を過酸化水素水溶液(240ml(30%重量/体積))中、20℃で撹拌した。次いでスラリーを60℃に加熱し、次いで50〜60℃で2時間撹拌放置した。この後に、pH=0で黄色の溶液を得た。
【0088】
次いで、調製したこの黄色溶液にグリシン(2.25g、30mmol)を加え、50〜60℃でさらに1時間撹拌を続行した。次いでこの後、反応混合物を終夜静置して冷却させた。
【0089】
翌朝、反応混合物中に黄色結晶が生成していた。この結晶を真空ろ過により収集し、水(200ml)で洗浄し、吸引乾燥し次いで真空デシケーター中、20℃で十分に乾燥して3.24gの鮮黄色結晶を得た。
【0090】
得られた結晶は、予想外に、加熱するとAOMより容易に色が黒色へ変わる、すなわち、これらは、より反応性が高く同じ光学密度を得るのに、より少ないフルエンスしか必要としないことが分かった。したがって、アミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体はマーキング用途での使用を見出すことができると予想された。
【0091】
マーキング用途でのアミノ酸を含むモリブデン(VI)ペルオキソ錯体の使用を評価するために、得られた結晶を配合してインキ配合物にした(cf.実施例2)。
【実施例2】
【0092】
インキ配合物
1.Induprint 281(水性結合剤) 40.0重量%
2.Glascol LS2(水性結合剤) 14.2重量%
3.Agitan 350(界面活性剤) 0.5重量%
4.Tyzor LA(接着促進剤) 0.5重量%
5.DEG(遅延剤) 2.0重量%
6.r-ITO(NIR吸収剤) 2.5重量%
7.グリシンペルオキソ-オクタモリブデート結晶(発色剤) 30.0重量%
8.Aerosil 200(分散助剤) 0.3重量%
9.水(溶媒) 10.0重量%
【実施例3】
【0093】
画像化特性の評価
配合物を、AOMを含むインキ配合物と比較した
AOMを含むインキ配合物
Glascol LS2(結合剤) 15%
Dispelair CF49(消泡剤) 1%
DEG(遅延剤) 1%
Tyzor LA(接着促進剤) 1.5%
r-ITO(NIR吸収剤) 2.5%
Lucidene 198(結合剤) 35%
オクタモリブデン酸アンモニウム(発色剤) 30%
水 14%
【0094】
両方のインキ配合物を、18cm
3/m
2 Anilox携帯型フレキシプルーファ(hand held flexiproofer)(コート重量約8〜10g/m
2)を用いてクレーコートボール紙上に取り出した。次いでレーザー画像化を10W、1550nmファイバーレーザーを用いて実施した。得られたフルエンス対光学密度(黒色)データを以下のTable 1(表1)に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
Table 1(表1)から分かるように、「グリシン-ペルオキソ-モリブデート」(OXM)を含むインキ配合物は、オクタモリブデン酸アンモニウム(AOM)を含む配合物より高い反応性を示している。すなわち、AOMは、同じフルエンスでOXMより低いODBを提供する。さらに、OXMを含むコーティングされたインキ配合物は、AOMを含むインキ配合物より良好な透明性を示す(ΔE OXM=24.01対ΔE AOM=59.92)。