特許第5721921号(P5721921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721921
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】白色発光装置及び照明装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20150430BHJP
【FI】
   H01L33/00 410
【請求項の数】7
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2006-88610(P2006-88610)
(22)【出願日】2006年3月28日
(65)【公開番号】特開2006-310817(P2006-310817A)
(43)【公開日】2006年11月9日
【審査請求日】2009年1月9日
【審判番号】不服2014-7467(P2014-7467/J1)
【審判請求日】2014年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2005-92976(P2005-92976)
(32)【優先日】2005年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】下村 康夫
(72)【発明者】
【氏名】木島 直人
【合議体】
【審判長】 吉野 公夫
【審判官】 松川 直樹
【審判官】 星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−267632号公報(JP,A)
【文献】 特開2003−332631号公報(JP,A)
【文献】 特開2001−148516号公報(JP,A)
【文献】 特開2002−363554号公報(JP,A)
【文献】 特開2003−064358号公報(JP,A)
【文献】 特開2003−124527号公報(JP,A)
【文献】 特開2005−008844号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、該光源からの光の少なくとも一部を吸収して波長の異なる光を発する少なくとも1種類の波長変換材料とを備え、該波長変換材料が発する光を含む白色光を発する白色発光装置であって、
該波長変換材料が、酸化物である緑色蛍光体を含有し、
下記一般式(3)で表される赤色蛍光体を含有し、
abcde 式(3)
上記一般式(3)において、Mは、Euであって、Aは、Ca及び/またはSrを表わし、Dは、Siを表わし、Eは、Alを表わし、Xは、O、Nからなる群から選ばれる1種または2種以上の元素を表わす。
また、上記一般式(3)中、a、b、c、d、及びeはそれぞれ下記範囲の数である。
0.00001≦a≦0.1
a+b=1
0.5≦c≦1.8
0.5≦d≦1.8
0.8×(2/3+4/3×c+d)≦e
e≦1.2×(2/3+4/3×c+d)
上記白色光の発光スペクトルの、500nmから650nmの所定波長範囲における最大発光強度が、上記所定波長範囲における最小発光強度の150%以下である
ことを特徴とする白色発光装置。
【請求項2】
該緑色蛍光体の100℃における輝度が、該緑色蛍光体の25℃における輝度の80%以上である
ことを特徴とする、請求項1に記載の白色発光装置。
【請求項3】
該緑色蛍光体が、MSi222:Eu、M−Si−Al−O−N:Ce、M−Si−Al−O−N:Eu(ただしMは1種又は2種以上のアルカリ土類金属を表す。)、下記一般式(1)又は(2)で表される母体結晶内に、発光中心イオンとして少なくともCeを含有する蛍光体からなる群より選ばれる緑色蛍光体である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の白色発光装置。
1a2b3cd (1)
上記一般式(1)において、M1は2価の金属元素、M2は3価の金属元素、M3は4価の金属元素をそれぞれ示し、a、b、c、dはそれぞれ下記の範囲の数である。
2.7≦a≦3.3
1.8≦b≦2.2
2.7≦c≦3.3
11.0≦d≦13.0
4e5fg (2)
上記一般式(2)において、M4は2価の金属元素、M5は3価の金属元素をそれぞれ示し、e、f、gはそれぞれ下記の範囲の数である。
0.9≦e≦1.1
1.8≦f≦2.2
3.6≦g≦4.4
【請求項4】
JIS−Z8726に規定された平均演色評価数Raが、90以上である
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の白色発光装置。
【請求項5】
該波長変換材料の100℃における輝度が、該波長変換材料の25℃における輝度の80%以上である
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の白色発光装置。
【請求項6】
該光源の発光ピーク波長の光に対する、該波長変換材料の吸光度が50%以上であり、かつ、該波長変換材料の内部量子効率が40%以上である
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の白色発光装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の白色発光装置を備える
ことを特徴とする、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色の光を発生する白色発光装置、並びに、それを使用した照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、照明や液晶ディスプレイ用バックライト等の光源として、冷陰極管などが使用されていた。ところが近年、これに代わる光源として、青色光を発する発光素子と青色光を吸収し黄色光を発する波長変換材料とを組み合わせた白色発光装置が開発された。この白色発光装置においては、例えば、青色光を発する発光素子としてはInGaN系の発光ダイオード(以下適宜、「LED」という)が、黄色光を発する波長変換材料としてはセリウムを添加したアルミン酸イットリウムが用いられている。しかし、従来の白色発光装置が発する光のスペクトルには本質的に緑色光成分及び赤色光成分が不足しており、このため、従来の白色発光装置は演色性が低く、また、色再現性も低かった。
【0003】
これを解決するために、アルミン酸イットリウム(黄色光を発する波長変換材料)の成分を調整して黄緑色光を発するように改良し、さらに、これに加えて青色光を吸収し赤色光を発する物質をアルミン酸イットリウムに追加することで、白色発光装置が発する光の赤色成分の不足を補い、演色性及び色再現性を改善することが提案されている。
また、非特許文献1では、波長変換材料として、緑色蛍光体であるSrGa24:Eu2+と赤色蛍光体であるZnCdS:Ag,Clとを使用した白色発光装置が提案されている。
そのほか、非特許文献2や特許文献1などにおいても発光素子と波長変換材料とを組み合わせた白色発光装置が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−71726号公報
【非特許文献1】J.Electrochem.Soc.Vol.150(2003)pp.H57−H60
【非特許文献2】板東完治 月刊ディスプレイ 2003年4月号 pp.20−26(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、非特許文献1,2や特許文献1に記載された白色発光装置をはじめ、従来の白色発光装置の演色性は、未だ十分に高いものではなかった。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、従来よりも演色性を向上させた、発光素子と波長変換材料とを備える白色発光装置、並びに、それを用いた照明装置及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、白色発光装置が発する白色光の発光スペクトル形状を500nmから650nmの範囲において従来よりも平坦にすることにより、白色発光装置の演色性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明の要旨は、光源と、該光源からの光の少なくとも一部を吸収して波長の異なる光を発する少なくとも1種類の波長変換材料とを備え、該波長変換材料が発する光を含む白色光を発する白色発光装置であって、
該波長変換材料が、酸化物である緑色蛍光体を含有し、
下記一般式(3)で表される赤色蛍光体を含有し、
abcde 式(3)
上記一般式(3)において、Mは、Euであって、Aは、Ca及び/またはSrを表わし、Dは、Siを表わし、Eは、Alを表わし、Xは、O、Nからなる群から選ばれる1種または2種以上の元素を表わす。
また、上記一般式(3)中、a、b、c、d、及びeはそれぞれ下記範囲の数である。
0.00001≦a≦0.1
a+b=1
0.5≦c≦1.8
0.5≦d≦1.8
0.8×(2/3+4/3×c+d)≦e
e≦1.2×(2/3+4/3×c+d)
上記白色光の発光スペクトルの、500nmから650nmの所定波長範囲における最大発光強度が、上記所定波長範囲における最小発光強度の150%以下であることを特徴とする白色発光装置に存する(請求項1)。これにより、白色発光装置が発する白色光の演色性を向上させることが可能となる。
また、該緑色蛍光体の100℃における輝度が、該緑色蛍光体の25℃における輝度の80%以上であることが好ましい(請求項2)。
また、該緑色蛍光体が、MSi222:Eu、M−Si−Al−O−N:Ce、M−
Si−Al−O−N:Eu(ただしMは1種又は2種以上のアルカリ土類金属を表す。)、下記一般式(1)又は(2)で表される母体結晶内に、発光中心イオンとして少なくともCeを含有する蛍光体からなる群より選ばれる緑色蛍光体であることが好ましい(請求項3)。
1a2b3cd (1)
上記一般式(1)において、M1は2価の金属元素、M2は3価の金属元素、M3は4価の
金属元素をそれぞれ示し、a、b、c、dはそれぞれ下記の範囲の数である。
2.7≦a≦3.3
1.8≦b≦2.2
2.7≦c≦3.3
11.0≦d≦13.0
4e5fg (2)
上記一般式(2)において、M4は2価の金属元素、M5は3価の金属元素をそれぞれ示し、e、f、gはそれぞれ下記の範囲の数である。
0.9≦e≦1.1
1.8≦f≦2.2
3.6≦g≦4.4
また、JIS−Z8726に規定された平均演色評価数Raが90以上であることが好ましい(請求項4)。
【0008】
また、該波長変換材料の100℃における輝度は、該波長変換材料の25℃における輝度の80%以上とすることが好ましい(請求項)。従来の白色発光装置では、蛍光体等の波長変換材料の温度依存性が大きかったために点灯後と継続点灯時とで白色光の色調が変化することがあった。しかし、波長変換材料の輝度が上記条件を満たすようにすることで、従来のような色調変化を抑制することが可能となる。
【0009】
また、上記の白色発光装置においては、該光源の発光ピーク波長の光に対する、該波長変換材料の吸光度を50%以上とし、かつ、該波長変換材料の内部量子効率を40%以上とすることが好ましい(請求項)。これにより、白色発光装置が発する光の強度を従来よりも高め、白色発光装置の発光効率を向上させることが可能となる。
【0010】
さらに、本発明の別の要旨は、上記の白色発光装置を備えることを特徴とする、照明装置に存する(請求項)。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、演色性に優れた白色発光装置、並びに、それを用いた照明装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0013】
[I.白色発光装置]
本実施形態の白色発光装置は、光(以下適宜、「一次光」という)を発生する光源(発光素子等)と、この光源からの光(以下適宜、「一次光」という)の少なくとも一部を吸収して、一次光とは波長の異なる光(以下適宜、「二次光」という)を発する少なくとも1種類の波長変換材料とを備え、波長変換材料が発する二次光を含む白色光を発するようになっている。ここで、白色光は、一次光と二次光との合成光、2以上の二次光の合成光などとして合成された光として得ることができる。
また、本実施形態の白色発光装置においては、上記白色光の発光スペクトルの、500nmから650nmの波長範囲(以下適宜、この波長範囲を「所定波長範囲」という)における最大発光強度が、上記所定波長範囲における最小発光強度の150%以下である。
【0014】
[1.白色光]
[1−1.発光スペクトルが平坦である点]
白色発光装置は、主に照明に使用され、物体の色を忠実に再現されること(即ち、発する白色光の演色性が高いこと)が望まれる。これを実現するためには、白色発光装置が発する白色光が、自然光に含まれる可視光成分をすべて含んでいることが好ましい。特に、発光スペクトルの500nmから650nmの所定波長範囲は、視感度が高く、青緑から赤色の主要な光成分を含む波長範囲であり、この波長範囲の可視光成分を均等に含むこと、即ち、発光スペクトルが平坦であることは、良好な演色性につながる。
【0015】
中でも、相関色温度5000K付近の昼白色、及び、相関色温度6500K付近の昼光色の白色照明は、国内外で使用される白色照明の大部分を占める照明色調であり、これらの相関色温度での完全放射体の発光スペクトルは、上述の所定波長範囲でほぼ平坦である。したがって、白色発光装置を照明装置として使用する場合にも、同様に、本実施形態の白色発光装置が発する白色光は、上記の所定波長範囲において平坦なスペクトルを有することが好ましい。
【0016】
なお、650nmより大きい波長範囲の光は、特に視感度が低く、この波長範囲の光を発生させることは白色発光装置全体の効率低下につながる虞がある。このため、本実施形態の白色発光装置が発する白色光は、650nmより大きい波長範囲、即ち、所定波長範囲よりも大きい波長範囲の光成分の発光強度は小さくてもよい。
【0017】
一方、500nm未満の波長範囲の光については、所定波長範囲の光と同様に平坦であることが好ましい。ただし、発光素子等の一次光の光源として現在入手できるものは、通常、発光の半価幅が小さい。このため、500nm未満の波長範囲においては、本実施形態の白色発光装置が発する白色光は、特定の波長の光が強く、それに近い波長域の光が少ない状況とならざるを得ない。しかしながら、500nm未満の青色から青紫色の領域も、650nmより大きい波長範囲の光と同様に視感度が低いため、500nm未満の波長範囲、即ち、所定波長範囲未満の波長範囲の光成分の発光スペクトルが平坦でなくとも、演色性等の特性が大きく低下することはない。
【0018】
上記の所定波長範囲における発光スペクトルの平坦の度合いは、次のように求められる指標I(ratio)により表わすことができる。
所定波長範囲における発光スペクトルの最小発光強度I(min)と最大発光強度I(max)とを測定し、その比率を%単位で表したものをI(ratio)とする。このI(ratio)は、以下の式(i)で計算される。
I(ratio)={I(max)/I(min)}×100 (i)
【0019】
I(ratio)は、定義上100%以上の値になるが、本実施形態の白色発光装置が発する白色光においては、このI(ratio)が、通常150%以下、好ましくは140%以下、より好ましくは135%以下、更に好ましくは130%以下であることが望ましい。即ち、上記所定波長範囲における白色光の発光スペクトルの最大発光強度が最小発光強度に対して上記範囲の大きさとなるようにすれば良い。I(ratio)が100%に近いほど発光スペクトルが平坦であることになるため、I(ratio)は小さいほど好ましいのである。
【0020】
[1−2.白色光の相関色温度]
本実施形態の白色発光装置が発する白色光の相関色温度は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意であるが、従来の蛍光ランプの光源色に関するJIS規格(Z 9112)における昼白色(記号N)、または、昼光色(記号D)に準じた発光色であることが好ましい。昼白色は、相関色温度が4600K以上、5400K以下に相当し、昼光色は、相関色温度が5700K以上、7100K以下に相当する。相関色温度の範囲として更に好ましいのは、昼白色における4800K以上、5200K以下の範囲と、昼光色における6000Kから6800Kの範囲であり、昼白色としては5000Kに、昼光色としては6500Kにできるだけ近いことが更に好ましい。なお、相関色温度は、JIS Z 8725に準じて求めるものであり、黒体放射軌跡からの距離が小さくなるように発光色を調節することが好ましい。
【0021】
[1−3.白色光の色]
本実施形態の白色発光装置が発する白色光の色は、その用途等に応じて任意に設定することができる。なお、明細書において、白色とはJIS Z8110の色区分に規定する白色のことを指す。また、白色光の色は、色彩輝度計、放射輝度計などで測定することができる。
【0022】
さらに、CIE色度図との関係で言えば、白色光の色は、CIE色度図において、色度座標(x,y)が(0.33,0.33)の通常の白色光はもとより、例えば、色座標(x,y)が(0.28,0.25)、(0.25,0.28)、(0.34,0.40)及び(0.40,0.34)で囲まれた領域内となる色にして用いてもよい。
【0023】
[1−4.白色光の発光効率]
本実施形態の白色発光装置において、白色光の発光効率は、通常20lm/W以上、好ましくは30lm/W以上、より好ましくは40lm/W以上である。この範囲の下限を下回る素子を多数使用することによっても必要な明るさを得ることができるが、エネルギーを多く消費することになるため、好ましくない。なお、白色発光装置の発光効率は、例えば、積分球で測定した白色光の光束を供給電力で割ることにより測定することができる。
【0024】
[1−6.白色光の演色性]
本実施形態の白色発光装置によれば、白色光の演色性を高めることができる。具体的な値としては特に制限されないが、JIS−Z8726に規定された演色性評価数R1〜R8の平均値Raの値として、通常80以上、好ましくは85以上、より好ましくは90以上である。
【0025】
[2.構成]
以下、図1に本実施形態の白色発光装置の模式的な断面図を示して白色発光装置の構成を説明するが、図1に示した白色発光装置は本発明の白色発光装置の一例であり、本発明の白色発光装置は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の白色発光装置1は、一次光を発する光源としての発光素子2と、一次光を吸収して二次光を発する少なくとも1種類の波長変換材料3,4とを備える。また、通常、白色発光装置1は、発光素子2及び波長変換材料3,4を保持するための基部としてフレーム5を備えている。
なお、本実施形態の白色発光装置1は、発する白色光が、所定波長範囲において発光スペクトルが平坦であり、相関色温度、色、強度及び発光効率が上述した範囲になるようになっているものとする。
【0027】
[2−1.フレーム]
フレーム5は、発光素子2及び波長変換材料3,4を保持する基部であり、その形状及び材質等は任意である。
フレーム5の形状の具体例としては、板状、カップ状等、その用途に応じて適当な形状とすることができる。また、例示した形状の中でも、カップ状のフレームは、白色光の出射方向に指向性をもたせることができ、白色発光装置1が放出する光を有効に利用できるため、好ましい。
【0028】
また、フレーム5の材質の具体例としては、金属、合金、ガラス、カーボン、セラミックス等の無機材料、合成樹脂等の有機材料など、用途に応じて適当なものを用いることができる。
ただし、発光素子2や波長変換材料3,4から発せられる光(例えば、一次光や二次光)が当たるフレーム5の面は、当たった光の反射率を高められていることが好ましく、特に、可視光域全般の光の反射率を高められていることがより好ましい。したがって、少なくとも光が当たる面は、反射率が高い素材により形成されていることが好ましい。具体例としては、ガラス繊維、アルミナ粉、チタニア粉等の高い反射率を有する物質を含んだ素材(射出整形用樹脂など)でフレーム5の全体又はフレーム5の表面を形成することが挙げられる。
【0029】
また、フレーム5の表面の反射率を高める具体的な方法は任意であり、上記のようにフレーム5自体の材料を選択するほか、例えば、銀、白金、アルミニウム等の高反射率を有する金属や合金でメッキ、或いは蒸着処理することにより、光の反射率を高めることもできる。
なお、反射率を高める部分は、フレーム5の全体であっても一部であってもよいが、通常は、発光素子2や波長変換材料3,4から発せられる光が当たる部分の全表面の反射率が高められていることが望ましい。
【0030】
さらに、通常は、フレーム5には発光素子2に対して電力を供給するための電極や端子等が設けられる。
本実施形態においては、カップ状に設けられたフレーム5の凹部5Aの底に、発光素子2に電力を供給するための導電性端子6,7が形成されていて、導電性端子6,7は外部の電源(図示省略)に接続されるようになっている。
【0031】
[2−2.発光素子]
発光素子2は、波長変換材料3,4の励起光として一次光を発するものであり、光源として機能する。また、一次光の一部は、白色発光装置1が放出する白色光の一成分として用いられることもあり、この場合、一次光と二次光とを合成した合成光が白色光として白色発光装置1から発せられることになる。即ち、発光素子2から発せられる一次光のうちの一部は波長変換材料3,4に励起光として吸収され、また別の一部は、白色発光装置1から発せられるようになる。なお、白色光は必ずしも一次光を含む必要はなく、例えば、本実施形態の白色発光装置1が2種以上の二次光の合成光として白色光を発するようにしても良い。
【0032】
発光素子2の種類は任意であり、白色発光装置1の用途や構成に応じて適当なものを選択することができる。発光素子2の例としては、半導体発光素子、ランプ、電子ビーム、プラズマ、エレクトロルミネッセンス素子などを使用することができるが、特に発光ダイオード(即ち、LED)、端面発光型又は面発光型のレーザーダイオード(即ち、LD)等の半導体発光素子を用いることが好ましい。中でも通常は、安価なLEDが好ましい。
【0033】
また、発光素子2が発する一次光の発光波長も任意であり、白色発光装置1に放出させる白色光に応じて適当な発光波長の一次光を発する発光素子を用いればよい。通常は、近紫外から青色の光を一次光として発する発光素子を用いることが望ましい。一次光の具体的な波長の範囲を例示すると、通常370nm以上、好ましくは380nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下が望ましい。この範囲の上限を上回る場合には、発光効率の高い発光装置を得るのが難しく、また、一次光の発光波長が480nm以上という青緑色より波長の長い光とした場合、それを青色の光に効率よく変換することは極めて難しいため、青色の光を含まない発光装置となってしまい白色発光装置を得ることができなくなる虞がある。また、下限を下回る場合にも発光効率の高い発光装置を得ることが極めて難しくなる。
【0034】
発光素子2の材料としては、例えば、窒化硼素(BN)、シリコンカーバイド(SiC)、ZnSeやGaN、InGaN、InAlGaN、AlGaN、BAlGaN、BInAlGaNなど種々の半導体を挙げることができる。また、これらの元素に不純物元素としてSiやZnなどを含有させ発光中心とすることもできる。中でも、InXAlYGa1-X-YN(式中、0<X<1、0<Y<1、X+Y≦1)で表される、AlやGaを含む窒化物半導体、あるいはInやGaを含む窒化物半導体(以下、「(In,Al,Ga)N系化合物半導体」と称する場合がある。)は、紫外領域から可視光の短波長を効率よく発光可能であり、使用時の温度や駆動電流の変化に対しても安定に発光可能であるため発光層の材料として好適である。
【0035】
また、半導体発光素子の好ましい構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体発光素子では、半導体層の材料やその混晶比によって発光波長を種々選択することができる。また、活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることでより出力を向上させることもできる。
【0036】
これらのうち(In,Al,Ga)N系化合物半導体を使用した(In,Al,Ga)N系発光素子(LEDやLD)が好ましい。なぜなら、(In,Al,Ga)N系LED等は、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体等の波長変換材料と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常(In,Al,Ga)N系はSiC系の100倍以上の発光強度を有し、またGaAs系よりも使用時の温度や駆動電流の変化に対して安定に発光可能である。(In,Al,Ga)N系LED等においては、AlX'GaY'N発光層、GaN発光層、またはInX'GaY'N発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInXGaYN発光層を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましく、(In,Al,Ga)N系LDにおいては、InXGaYN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
【0037】
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。(In,Al,Ga)N系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0038】
(In,Al,Ga)N系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、および基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlXGaYN層、GaN層、またはInXGaYN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが発光効率が高いため好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが発光効率がさらに高くいため、より好ましい。基板としては、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaAs、GaN等の材料が好適に用いられ、特に、サファイア、ZnO、GaN等が好適に用いられる。
【0039】
半導体発光素子の形状や大きさは特に限定されない。半導体発光素子としては、例えば、EPISTAR社製「ES−CEBL912」、Cree社製「C460MB」などを用いることができる。
なお、発光素子2は1個を単独で用いてもよく、2個以上の発光素子2を併用しても良い。さらに、発光素子2は1種のみで用いてもよく、2種以上のものを併用しても良い。
【0040】
また、発光素子2をフレーム5に取り付ける場合、その具体的方法は任意であるが、例えば、ハンダを用いて取り付けることができる。ハンダの種類は任意であるが、例えば、AuSn、AgSn等を用いることができる。また、ハンダを用いる場合、ハンダを通じてフレーム5に形成された電極や端子6,7等から電力を供給できるようにすることも可能である。特に、放熱性が重要となる大電流タイプのLEDやレーザーダイオードなどを発光素子2として用いる場合、ハンダは優れた放熱性を発揮するため、発光素子2の設置にハンダを用いることは有効である。
【0041】
また、ハンダ以外の手段によって発光素子2をフレーム5に取り付ける場合には、例えば、エポキシ樹脂、イミド樹脂、アクリル樹脂等の接着剤を用いてもよい。この場合、接着剤に銀粒子、炭素粒子等の導電性フィラーを混合させてペースト状にしたものを用いることにより、ハンダを用いる場合のように、接着剤を通電して発光素子2に電力供給できるようにすることも可能である。さらに、これらの導電性フィラーを混合させると、放熱性も向上するため、好ましい。
【0042】
さらに、発光素子2への電力供給方法も任意であり、上述したハンダや接着剤を通電させる他、発光素子2と電極や端子6,7等とをワイヤボンディングにより結線して電力供給するようにしても良い。この際用いるワイヤに制限はなく、素材や寸法などは任意である。例えば、ワイヤの素材としては金、アルミニウム等の金属を用いることができ、また、その太さは通常20μm〜40μmとすることができるが、ワイヤはこれに限定されるものではない。
【0043】
また、発光素子に電力を供給する他の方法の例としては、バンプを用いたフリップチップ実装により発光素子2に電力を供給する方法が挙げられる。
本実施形態においては、発光素子2としてLEDを用い、この発光素子2がフレーム5の凹部5Aの底部には設置されている。さらに、発光素子2は、導電性端子6と直接接続され、また、導電性端子7とワイヤ8を介してワイヤボンドにより接続されて、電力を供給されるようになっている。
ただし、光源としては、上述した発光素子以外のものを使用しても良い。
【0044】
[2−3.波長変換材料]
波長変換材料3,4は、発光素子2から発せられる一次光の少なくとも一部を吸収し、吸収した一次光とは波長が異なる二次光を発するものである。そして、波長変換材料3,4を適切に選択することにより、一次光と二次光との合成光や、2種以上の二次光の合成光として、白色光が得られる。
【0045】
波長変換材料3,4は、本発明の効果を著しく損なわない限り、白色発光装置1の用途に応じて公知のものを適宜選択して用いることができる。また、波長変換材料3,4の発光自体は、蛍光、りん光など、どのようなメカニズムにより発光が行なわれるものでも制限は無い。さらに、波長変換材料3,4は、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば1種を単独で用いても良いが、上記のようにI(ratio)を小さくする観点からは、発光波長の異なる波長変換材料3,4を2種以上使用することが好ましい。さらに、波長変換材料3,4を2種以上用いる場合、その組み合わせ及び比率は任意である。
【0046】
また、波長変換材料3,4は、励起光として吸収する光(通常は、一次光)の波長や、発光する光(即ち、二次光)の波長に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。これらの光の好ましい波長範囲を挙げると、波長変換材料3,4の励起光の波長範囲は、通常350nm以上、好ましくは400nm以上、より好ましくは430nm以上、また、通常600nm以下、好ましくは570nm以下、より好ましくは550nm以下が望ましい。一方、波長変換材料が発する光の波長は、通常400nm以上、好ましくは450nm以上、より好ましくは500nm以上、また、通常750nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは670nm以下が望ましい。
【0047】
さらに、2種類の波長変換材料3,4を用いる場合には、以下の特徴を満足する第1波長変換材料及び第2波長変換材料を併用することが好ましい。
第1波長変換材料は、励起光として、波長が通常350nm以上、好ましくは400nm以上、より好ましくは430nm以上、また、通常520nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは480nm以下の光を吸収するものが望ましい。
また、第1波長変換材料は、発する光の波長が、通常400nm以上、好ましくは450nm以上、より好ましくは500nm以上、また、通常600nm以下、好ましくは570nm以下、より好ましくは550nm以下であるものが望ましい。
【0048】
一方、第2波長変換材料は、励起光として、波長が通常400nm以上、好ましくは450nm以上、より好ましくは500nm以上、また、通常600nm以下、好ましくは570nm以下、より好ましくは550nm以下の光を吸収するものが望ましい。
また、第2波長変換材料は、発する光の波長が、通常550nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは600nm以上、また、通常750nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは670nm以下であるものが望ましい。
上記のような波長範囲の励起光を吸収し、上記のような波長範囲の光を発する波長変換材料を用いることにより、可視光領域すべての波長の光を発する発光装置とすることができ、特に500nmから650nmの範囲のすべての波長の光を発することができるという利点を得ることができる。なお、波長変換材料1種類でも本発明の要件を満足することができるのであれば、それでよい。
【0049】
さらに、本実施形態の白色発光装置1を構成するにあたっては、波長変換材料3,4として適切な材料を用いることにより、より特性の優れた白色発光装置1を得ることが可能となる。波長変換材料3,4として備えるべき特性としては、例えば、温度上昇による発光強度の変化が小さいこと、内部量子効率が高いこと、吸光度が大きいこと等が挙げられる。
【0050】
・温度上昇による発光強度の変化が小さいこと
波長変換材料3,4は、温度上昇による発光強度の変化が小さいことが好ましい。即ち、発光強度の温度依存性が小さいこと好ましい。波長変換材料3,4として温度依存性が大きいものを用いると、温度条件により二次光の強度が変化し、一次光と二次光との強度のバランスや二次光同士の強度のバランスが変化して、白色光の色調が変化する虞がある。具体例を挙げると、発光素子2として例えばLED等のように発光に伴い発熱するものを用いた場合には、点灯を継続すると発光素子2の発熱により白色発光装置1の温度が経時的に上昇し、それに伴って波長変換材料3,4が発する二次光の強度が変化して、点灯直後と継続点灯時とで白色光の色調が変化する虞がある。しかし、波長変換材料3,4の温度依存性が小さいものを用いることで、上述した色調変化を抑制することが可能となる。
【0051】
温度上昇による発光強度の変化は、25℃における輝度に対する100℃における輝度の比率(以下適宜、「輝度保持率」という)TR(%)によって表わすことができる。具体的には、輝度保持率TRが通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であることが望ましい。
【0052】
なお、TRは、例えば、以下のようにして測定することができる。
まず、向洋電子製温度特性評価装置を用い、直径8mmの粉体用ホルダーに約100mgの測定サンプル粉(波長変換材料)を詰め、装置内にセットする。その後、25℃並びに100℃に保持した状態で、大気中、TOPCON製色彩輝度計BM5Aを用いて、460nmの励起光(150Wキセノンランプの光を回折格子分光器で分光した光)を照射した状態での輝度を測定する。このとき、Y51フィルターなどを使用して、輝度計に励起光が入らないようにして、波長変換材料の発する光の輝度を求める。そして、25℃における輝度に対する、100℃における輝度の比率を計算し、輝度保持率TR(%)とする。
【0053】
また、これに関連し、波長変換材料3,4は硫黄の含有量が少ないことが好ましい。硫黄は、波長変換材料3,4の熱による劣化の原因となる場合があるため、硫黄が少ない、好ましくは硫黄を含まない波長変換材料3,4を使用することにより、特性の良い白色発光装置を得ることができる。具体的には、波長変換材料3,4として、硫黄を含む化合物を母体とするものを含まないこと、即ち、硫化物、酸硫化物、硫酸塩などを含まないことが好ましい。
【0054】
・内部量子効率が高いこと
波長変換材料3,4は、その内部量子効率が、通常40%以上、好ましくは50%以上であることが望ましい。この範囲の下限を下回る材料は白色発光装置の発光効率を低下させるので好ましくない。また、中でも500nmから600nmの波長の光を発する波長変換材料3,4に関しては、視感度が特に高い領域の光を二次光として発生するため、内部量子効率はさらに高いことがより好ましく、具体的には60%以上であることがより好ましい。
【0055】
・吸光度が高いこと
波長変換材料3,4の吸光度は、通常50%以上であり、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。この範囲の下限を下回ると、やはり、白色発光装置の発光効率を十分に高くできなくなる虞がある。
【0056】
なお、上記の内部量子効率及び吸光度は、発光素子2の発光波長の光に対する内部量子効率及び吸光度、詳しくは、発光素子2が発する光の発光ピーク波長の光(以下適宜、単に「発光素子2の発光ピーク波長の光」という)により励起した場合の内部量子効率及び吸光度であり、これらは、例えば以下のようにして求められる。
まず、反射率0.97の白色拡散板に発光素子の発光ピーク波長の光を入射して白色拡散板で反射させ、白色拡散板で反射した光を積分球で集め、積分球で集めた光をマルチチャンネルフォトディテクターで捉え、発光素子の発光ピーク波長の光が白色拡散板で反射した反射光強度RWを測定する。
【0057】
次に、波長変換材料に発光素子の発光ピーク波長の光を入射して、波長変換材料に反射した光、及び、波長変換材料により吸収されて波長変換されて発生した光を積分球で集め、積分球で集めた光を、反射光強度RWの測定と同様にして、マルチチャンネルフォトディテクターで捉える。マルチチャンネルフォトディテクターの測定のうち、発光素子の発光ピーク波長の光が波長変換材料で反射した反射光強度RPを測定する。
【0058】
そして、下記式(ii)により、波長変換材料に吸収された吸収光強度APを算出し、この吸収光強度APに発光素子の発光ピーク波長の光の波長をかけて吸収光フォトン数対応値PAに換算する。
吸収光強度AP={(反射光強度RW)/0.97}−(反射光強度RP) (ii)
また、反射光強度RWについても同様に、波長をかけて反射光フォトン数対応値RWAに換算する。
【0059】
その後に、反射光強度RPの測定において捉えた、波長変換材料に発光素子の発光ピーク波長の光を入射して積分球で集めた光について、観測された光の波長成分のうち、反射光を含まない波長範囲(即ち、波長変換材料が発した光の波長範囲)において、光の強度と波長との積を合計し、発光フォトン数対応値PPに換算する。
【0060】
最後に、「内部量子効率=(発光フォトン数対応値PP)/(吸収光フォトン数対応値PA)」によって、内部量子効率を算出する。
また、吸光度は、「吸光度=(吸収光フォトン数対応値PA)/{(反射光フォトン数対応値RWA)/0.97}」によって算出する。
なお、上記の内部量子効率が高いこと、及び、吸光度が大きいことが好ましく、両特性を共に備えていることが更に好ましい。
【0061】
上記のような特性を満足する波長変換材料3,4としては、例えば、Ca3Sc2Si312:Ce、Ca3(Sc,Mg)2Si312:Ce、CaSc24:Ceなどの緑色発光材料と、CaAlSiN3:Eu2+、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu2+、SrAlSiN3:Eu2+などの赤色発光材料とを適切な比率で混合した材料を使用することができるが、上述の条件を満たしさえすれば特にこれらに制限されるものではない。
なお、上記式のうち(Sc,Mg)や(Sr,Ca)は、(Sc1-a,Mga)、(Sr1-a,Caa)で、0≦a≦1であることを略して記したものであり、かっこ内に一つ又は複数の元素が合計1モル分含まれることを示す。本明細書中における同様の表記は、同様の意味を表すものである。
【0062】
以下、本実施形態の白色発光装置に用いて好適な波長変換材料3,4の例として、上記の第1波長変換材料及び第2波長変換材料の具体例を挙げる。ただし、波長変換材料3,4は以下の例示物に限定されるものではない。
【0063】
(第1波長変換材料の例)
第1波長変換材料の第1の例としては、酸化物、窒化物、酸窒化物などが熱安定性が良いので好ましい。例えば、MSi222:Eu、M−Si−Al−O−N:Ce、M−Si−Al−O−N:Eu(ただしMは1種又は2種以上のアルカリ土類金属を表す。)、好ましくは、SrSi222:Eu、Ca−Si−Al−O−N:Ce、Ca−Si−Al−O−N:Eu等が挙げられる。
また、他の例としては下記一般式(1)又は(2)で表される母体結晶内に、発光中心イオンとして少なくともCeを含有する蛍光体が、輝度が高く、緑色域での蛍光強度が高く、温度消光が小さいので好ましい。
【0064】
1a2b3cd (1)
ここで、M1は2価の金属元素、M2は3価の金属元素、M3は4価の金属元素をそれぞれ示し、a、b、c、dはそれぞれ下記の範囲の数である。
2.7≦a≦3.3
1.8≦b≦2.2
2.7≦c≦3.3
11.0≦d≦13.0
【0065】
4e5fg (2)
ここで、M4は2価の金属元素、M5は3価の金属元素をそれぞれ示し、e、f、gはそれぞれ下記の範囲の数である。
0.9≦e≦1.1
1.8≦f≦2.2
3.6≦g≦4.4
【0066】
以下、一般式(1)についてより詳しく説明する。
ここで例示する好適な第1波長変換材料は、下記一般式(1)表される母体結晶内に発光中心イオンとして少なくともCeを含有する緑色系蛍光体であり、式中M1は2価の金属元素、M2は3価の金属元素、M3は4価の金属元素をそれぞれ示す。
1a2b3cd (1)
前記一般式(1)におけるM1は2価の金属元素を表すが、発光効率等の面から、Mg、Ca、Zn、Sr、Cd、及びBaからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Mg、Ca、及びZnからなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましく、Caが特に好ましい。この場合、Caは単独系でもよく、Mgとの複合系でもよい。M1は、基本的には、ここに例示された好ましいとされる元素から選択されることが好ましいが、性能を損なわない範囲で、他の2価の金属元素を含んでいてもよい。
【0067】
また、一般式(1)におけるM2は3価の金属元素であるが、上記と同様に発光効率等の面から、Al、Sc、Ga、Y、In、La、Gd、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Al、Sc、Y、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であるのが更に好ましく、Scが特に好ましい。この場合、Scは単独系でもよく、YまたはLuとの複合系でもよい。M2は、基本的には、ここに例示された好ましいとされる元素から選択されることが好ましいが、性能を損なわない範囲で、他の3価の金属元素を含んでいてもよい。
【0068】
一般式(1)におけるM3は4価の金属元素であるが、発光効率等の面から、少なくともSiを含むことが好ましく、通常、M3で表される4価の金属元素の50モル%以上がSiであり、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に90モル%以上がSiであることが好ましい。M3のSi以外の4価の金属元素としては、Ti、Ge、Zr、Sn、及びHfからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Ti、Zr、Sn、及びHfからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、Snであることが特に好ましい。特に、M3がSiであることが好ましい。M3は、基本的には、ここに例示された好ましいとされる元素からなることが好ましいが、性能を損なわない範囲で、他の4価の金属元素を含んでいてもよい。
なお、ここで、性能を損なわない範囲で含むとは、上記M1、M2及びM3それぞれの金属元素に対し、他元素を、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは1モル%以下で含むことをいう。
【0069】
上記一般式(1)において、a、b、c、dはそれぞれ下記の範囲の数である。
2.7≦a≦3.3
1.8≦b≦2.2
2.7≦c≦3.3
11.0≦d≦13.0
【0070】
本発明に好適に用いられる緑色蛍光体は、上記一般式(1)で表される母体結晶内に発光中心イオン元素として少なくともCeを含有し、発光中心イオン元素が、M1、M2、M3のいずれかの金属元素の結晶格子の位置に置換するか、或いは、結晶格子間の隙間に配置する等により、a〜dの値は上記範囲の中で変動するが、本蛍光体の結晶構造はガーネット結晶構造であり、a=3、b=2、c=3、d=12の体心立方格子の結晶構造をとるのが一般的である。
【0071】
また、この結晶構造の化合物母体内に含有される発光中心イオン元素としては、少なくともCeを含有し、発光特性の微調整のためにCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選択された1種以上の2価〜4価の元素を含ませることも可能である。特に、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、及びYbからなる群から選択された1種以上の2価〜4価の元素を含ませることが可能であり、2価のMn、2価〜3価のEu、3価のTb、又は3価のPrを好適に含有させることができる。
【0072】
発光中心イオン(付活剤)としてのCeの添加量は適切に調節することが望ましい。Ce添加量が小さすぎると発光するイオンが少なすぎて発光強度が低く、大きすぎると濃度消光が大きくなって発光強度が下がる。発光強度の観点から、Ceの濃度は、上記一般式(1)で表される母体結晶1モルに対してモル比で0.0001以上、0.3以下の範囲が好ましく、0.001以上、0.1以下の範囲がより好ましく、0.005以上、0.05以下の範囲が更に好ましい。
【0073】
なお、一般式(1)で表される母体結晶内に発光中心イオンとして少なくともCeを含有する蛍光体は、通常420nm〜480nmの光で励起される。発光スペクトルは、500nm〜510nmにピークを持ち、450nm〜650nmの波長成分を有する。
【0074】
次に、一般式(2)についてより詳しく説明する。
ここで例示する好適な第1波長変換材料は、下記一般式(2)表される母体結晶内に発光中心イオンとして少なくともCeを含有する緑色系蛍光体であり、ここで、M4は2価の金属元素、M5は3価の金属元素をそれぞれ示す。
4e5fg (2)
また、前記一般式(2)におけるM4は2価の金属元素であるが、発光効率等の面から、Mg、Ca、Zn、Sr、Cd、及びBaからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Mg、Sr、Ca、及びZnからなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましく、Sr又はCaがより好ましく、Caが特に好ましい。この場合、Caは単独系でもよく、Mgとの複合系でもよい。M4は、基本的にはここに例示された好ましいとされる元素から選択されるのが好ましいが、性能を損なわない範囲で、他の2価の金属元素を含んでいてもよい。
【0075】
また、一般式(2)におけるM5は3価の金属元素であるが、発光効率等の面から、Al、Sc、Ga、Y、In、La、Gd、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Al、Sc、Y、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましく、Scが特に好ましい。この場合、Scは単独系でもよく、YまたはLuとの複合系でもよい。M5は基本的には、ここに例示された好ましいとされる元素から選択されるのが好ましいが、性能を損なわない範囲で、他の3価の金属元素を含んでいてもよい。
なお、ここで、性能を損なわない範囲で含むとは、上記M4、M5それぞれの金属元素に対し、他元素を、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは1モル%以下で含むことを言う。
【0076】
上記一般式(2)において、e、f、gで表される元素比は、それぞれ下記の範囲の数であることが、発光特性の面で好ましい。
0.9≦e≦1.1
1.8≦f≦2.2
3.6≦g≦4.4
【0077】
本発明に好適に用いられる緑色蛍光体は、前記一般式(2)で表される母体結晶内に発光中心イオン元素として少なくともCeを含有し、発光中心イオン元素が、M4、M5のいずれかの金属元素の結晶格子の位置に置換するか、或いは、結晶格子間の隙間に配置する等により、e〜gの値は前記範囲の中で変動するが、e=1、f=2、g=4であることが好ましい。
【0078】
また、この結晶構造の化合物母体内に含有される発光中心イオン元素としては、少なくともCeを含有し、発光特性の微調整のためにCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選択された1種以上の2価〜4価の元素を含ませることも可能であり、特に、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、及びYbからなる群から選択された1種以上の2価〜4価の元素を含ませることが可能であり、2価のMn、2価〜3価のEu、3価のTb、又は3価のPrを好適に添加できる。
【0079】
発光中心イオン(付活剤)としてのCeの添加量は適切に調節することが望ましい。Ce添加量が小さすぎると発光するイオンが少なすぎて発光強度が低く、大きすぎると濃度消光が大きくなって発光強度が下がる。発光強度の観点から、Ceの濃度は、上記一般式(2)で表される母体結晶1モルに対してモル比で0.0001以上、0.3以下の範囲が好ましく、0.001以上、0.1以下の範囲がより好ましく、0.005以上、0.05以下の範囲が更に好ましい。
【0080】
一般式(2)で表される母体結晶内に発光中心イオンとして少なくともCeを含有する蛍光体の中では、特にCa3Sc2Si312:Ce、Mgを添加したCa3Sc2Si312:Ceが好ましい。
これらの中でも、Mgを添加したものが好ましく、特にMgの濃度が母体結晶1モルに対して0.001以上、好ましくは0.01上、また、0.5以下、好ましくは0.3以下であるものが好ましい。このような蛍光体としては、例えば、Ca2.97Ce0.03Sc1.97Mg0.03Si312、Ca2.97Ce0.03Sc1.94Mg0.06Si312、Ca2.94Ce0.03Sc1.94Mg0.06Si312、Ca2.94Ce0.06Sc1.97Mg0.03Si312、Ca2.94Ce0.06Sc1.94Mg0.06Si312、Ca2.94Ce0.06Sc1.9Mg0.1Si312、Ca2.9Ce0.1Sc1.97Mg0.03Si312、Ca2.9Ce0.1Sc1.94Mg0.06Si312などが挙げられる。
【0081】
また、一般式(2)で表される母体結晶内に発光中心イオンとして少なくともCeを含有する蛍光体の中では、特にCe0.01Ca0.99Sc24、Ce0.007Ca0.993Sc24,Ce0.013Ca0.987Sc24が好ましい。Caの一部をSrで置換したCe0.01Ca0.94Sr0.05Sc24、Ce0.01Ca0.89Sr0.1Sc24、Ce0.01Ca0.84Sr0.15Sc24も好ましい蛍光体の例である。
なお、これらの蛍光体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0082】
(第1波長変換材料のその他の例)
第1波長変換材料のその他の例としては、(Ba,Ca,Sr)MgAl1017:Euや、(Ba,Mg,Ca,Sr)5(PO)4Cl:Eu、(Ba,Ca,Sr)3MgSi28:Eu等の400nm〜500nmに発光ピークを持つ物質や、(Ba,Ca,Sr)MgAl1017:Eu,Mn、(Ba,Ca,Sr)Al24:Eu、(Ba,Ca,Sr)Al24:Eu,Mn、(Ca,Sr)Al24:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)9(Sc,Y,Lu,Gd)2(Si,Ge)624:Eu、一般式CaxSi12-(m+n)Al(m+n)n16-n:Eu(但し、0.3<x<1.5、0.6<m<3、0≦n<1.5)で表されるEuで付活されたαサイアロンやβサイアロン等の500nm〜600nmに発光ピークを持つ物質が挙げられるが、これらに限定されない。また、上述の蛍光体を複数用いても良い。
【0083】
(第2波長変換材料の例)
第2波長変換材料の第1の例としては、酸化物、窒化物、酸窒化物などが、熱安定性が良いので好ましい。例えば、MSi710:Eu、M2Si58:Eu、(ただし、Mは1種又は2種以上のアルカリ土類金属を表す。)、好ましくは、BaSi710:Eu、(Ca,Ba,Sr)2Si58:Eu等が挙げられる。
また、他の例としては、下記一般式(3)で表される蛍光体が挙げられる。この蛍光体を用いることにより、輝度が高く、赤色域での蛍光強度が高く、温度消光が小さいという利点を得ることができる。
【0084】
abcde ・・・式(3)
上記一般式(3)において、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であって、Aは、M元素以外の2価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素を表わし、Dは、4価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素を表わし、Eは、3価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素を表わし、Xは、O、N、Fからなる群からから選ばれる1種または2種以上の元素を表わす。
【0085】
また、上記一般式(3)中、a、b、c、d、及びeはそれぞれ下記範囲の数である。
0.00001≦a≦0.1
a+b=1
0.5≦c≦4
0.5≦d≦8
0.8×(2/3+4/3×c+d)≦e
e≦1.2×(2/3+4/3×c+d)
【0086】
上記一般式(3)において、Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であるが、中でも、Mn、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、Er、及びYbからなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であることが好ましく、少なくともEuを含むものであることが更に好ましい。
【0087】
また、上記一般式(3)において、Aは、M元素以外の2価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であるが、中でも、Mg、Ca、Sr、及びBaからなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であることが好ましく、Caであることが更に好ましい。
【0088】
さらに、上記一般式(3)において、Dは、4価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であるが、中でも、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfからなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であることが好ましく、Siであることが更に好ましい。
【0089】
また、上記一般式(3)において、Eは、3価の金属元素からなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であるが、中でも、B、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Gd、及びLuからなる群から選ばれる1種または2種以上の元素であることが好ましく、Alであることが更に好ましい。
【0090】
さらに、上記一般式(3)において、Xは、O、N、及びFからなる群からから選ばれる1種または2種以上の元素であるが、中でも、N、またはNとOからなることが好ましい。XがNとOからなる場合、蛍光体中のOと(O+N)の比が0<{(Oの原子数)/(Oの原子数+Nの原子数)}≦0.5が好ましい。この値が、この範囲を超えて大きすぎると発光強度が低くなる虞がある。発光強度の観点からは、この値は、0.3以下がより好ましく、0.1以下が発光波長640nm〜660nmに発光ピーク波長を持つ色純度の良い赤色蛍光体となるので、更に好ましい。また、この値を0.1〜0.3とすることにより発光ピーク波長を600nm〜640nmに調整することができ、人間の視感度が高い波長域に近づくために輝度の高い発光装置が得られるので、別の観点から好ましい。
【0091】
また、上記一般式(3)において、aは発光中心となる元素Mの含有量を表わし、蛍光体中のMと(M+A)の原子数の比a{ただし、a=(Mの原子数)/(Mの原子数+Aの原子数)}が0.00001以上0.1以下となるようにするのがよい。a値が0.00001より小さいと発光中心となるMの数が少ないため発光輝度が低下する虞がある。a値が0.1より大きいとMイオン間の干渉により濃度消光を起こして輝度が低下する虞がある。中でも、MがEuの場合には発光輝度が高くなる点で、a値が0.002以上0.03以下であることが好ましい。
【0092】
さらに、上記一般式(3)において、cはSiなどのD元素の含有量であり、0.5≦c≦4で示される量である。好ましくは、0.5≦c≦1.8、さらに好ましくはc=1がよい。cが0.5より小さい場合および4より大きい場合は、発光輝度が低下する虞がある。また、0.5≦c≦1.8の範囲は発光輝度が高く、中でもc=1が特に発光輝度が高い。
【0093】
さらに、上記一般式(3)において、dはAlなどのE元素の含有量であり、0.5≦d≦8で示される量である。好ましくは、0.5≦d≦1.8、さらに好ましくはd=1がよい。d値が0.5より小さい場合および8より大きい場合は発光輝度が低下する虞がある。また、0.5≦d≦1.8の範囲は発光輝度が高く、中でもd=1が特に発光輝度が高い。
【0094】
さらに、上記一般式(3)において、eはNなどのX元素の含有量であり、0.8×(2/3+4/3×c+d)以上1.2×(2/3+4/3×c+d)以下で示される量である。さらに好ましくは、e=3がよい。eの値が上記範囲外となると、発光輝度が低下する虞がある。
【0095】
以上の組成の中で、発光輝度が高く好ましい組成は、少なくとも、M元素にEuを含み、A元素にCaを含み、D元素にSiを含み、E元素にAlを含み、X元素にNを含むものである。中でも、M元素がEuであり、A元素がCaであり、D元素がSiであり、E元素がAlであり、X元素がNまたはNとOとの混合物の無機化合物が望ましい。
この蛍光体は、少なくとも580nm以下の光で励起され、特に400nm〜550nmで最も効率がよい。発光スペクトルは、580nm〜720nmにピークを有する。
【0096】
また、赤色系蛍光体としては最密充填構造に近い結晶であるものが、熱安定性が良いので好ましい。さらに赤色系蛍光体に含まれる窒素原子として3配位の窒素原子を含むものが、熱安定性が良いので好ましい。赤色系蛍光体に含まれる窒素原子のうち、3配位の窒素原子の含有量が20%以上、好ましくは40%以上、特に60%以上であることが好ましい。ここで、M2Si58:Eu(ただし、Mは1種又は2種以上のアルカリ土類金属を表す。)は3配位の窒素原子の含有量が50%であり、上記式(3)で表される蛍光体、例えば:(Ca,Sr)AlSiN3:Euは3配位の窒素原子の含有量が66%である。
なお、これらの蛍光体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0097】
(第2波長変換材料のその他の例)
第2波長変換材料のその他の例としては、発光素子が発する一次光や第1波長変換材料が発する二次光と合成されて白色光となる波長の光を発するものであれば特に制限はされないが、例えば、一般式CaxSi12-(m+n)Al(m+n)n16-n:Eu(但し、0.3<x<1.5、0.6<m<3、0≦n<1.5)で表されるEuで付活されたαサイアロン、Ca2Si58:Eu、Sr2Si58:Eu、(Ca,Sr)2Si58:Eu、CaSi710:Eu、蛍光を発するユーロピウム錯体等を用いることが出来る。また、上述の蛍光体を複数用いても良い。
【0098】
なお、上述した第1波長変換材料と第2波長変換材料とを組み合わせて使用する場合、両者の使用量の比率は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。第1波長変換材料と第2波長変換材料の発光効率のバランスや、第2波長変換材料がどの程度第1波長変換材料からの発光を吸収するかにもよるが、第1波長変換材料と第2波長変換材料の合計重量に対して、第1波長変換材料を重量百分率で、通常65%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上含有することが好ましい。第1波長変換材料の重量百分率がこの範囲よりも小さい場合は、高輝度で演色性が高く好ましい白色を示す白色発光装置を得ることができず、赤みの強い白色発光装置となる虞がある。また、白色発光装置とするためには、第1波長変換材料の重量百分率は、通常99%以下、好ましくは98%以下、より好ましくは97%以下である。
【0099】
また、発光素子からの発光波長における第2波長変換材料の吸収効率が、第1波長変換材料の発光ピーク波長における第2波長変換材料の吸収効率より大きいことが好ましく、この場合には、発光素子からの発光が第2波長変換材料に吸収されて第2波長変換材料が励起されて発光する確率が、第1波長変換材料からの発光が第2波長変換材料に吸収されて第2波長変換材料が励起されて発光する確率より高くなり、発光効率がより高い発光装置を得ることができるので好ましい。
【0100】
さらに、波長変換材料3,4は、通常は粒子状で用いられる。この際、波長変換材料3,4の粒子の粒径は任意であるが、通常150μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下とすることが望ましい。この範囲を上回ると、白色発光装置1の発光色のばらつきが大きくなると共に、波長変換材料2とバインダ(封止剤)とを混合した場合には波長変換材料3,4を均一に塗布することが困難となる虞がある。また、粒径の下限は、通常1μm以上、好ましくは5μm以上とすることが望ましい。この範囲を下回ると、発光効率が低下する虞がある。
【0101】
(波長変換材料の発光効率)
波長変換材料を構成する蛍光体は、その発光効率が20%以上であることが好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上であることが更に好ましく、発光効率は高いほど良い。蛍光体の発光効率が20%より低いと輝度の高い発光装置が得られない虞がある。なお、蛍光体の発光効率は、蛍光体に照射された光の量子数に対する蛍光体から発せられる光の量子数として定義する。
【0102】
以下に、本発明の第1の発光装置において定義される蛍光体の発光効率を、量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積により求める方法を説明する。
まず、測定対象となる蛍光体サンプル(例えば、粉末状など)を、測定精度が保たれるように、十分に表面を平滑にしてセルに詰め、積分球などの集光装置に取り付ける。積分球などの集光装置を用いるのは、サンプルで反射したフォトン及びサンプルからフォトルミネッセンスで放出されたフォトンを全て計上できるようにする、すなわち、計上されずに測定系外へ飛び去るフォトンをなくすためである。
【0103】
この積分球などに蛍光体を励起する発光源を取り付ける。この発光源は、例えばXeランプ等であり、発光ピーク波長が例えば455nmとなるようにフィルターやモノクロメーター等を用いて調整がなされる。この455nmの波長ピークを持つように調整された発光源からの光を、測定しようとしているサンプルに照射し、その発光スペクトルを分光測定装置、例えば大塚電子株式会社製MCPD2000などを用いて測定する。この測定スペクトルには、実際には、励起発光光源からの光(以下では単に励起光と記す。)でフォトルミネッセンスによりサンプルから放出されたフォトンの他に、サンプルで反射された励起光の分のフォトンの寄与が重なっている。
【0104】
吸収効率αqは、サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsを励起光の全フォトン数Nで割った値である。
まず、後者の励起光の全フォトン数Nを、次のようにして求める。すなわち、励起光に対してほぼ100%の反射率Rを持つ物質、例えばLabsphere製「Spectralon」(450nmの励起光に対して98%の反射率を持つ。)等の反射板を、測定対象として該分光光度計に取り付け、反射スペクトルIref(λ)を測定する。ここでこの反射スペクトルIref(λ)から下記(式I)で求められた数値は、Nに比例する。
【数1】
ここで、積分区間は実質的にIref(λ)が有意な値を持つ区間のみで行なったものでよい。
【0105】
前者のサンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsは下記(式II)で求められる量に比例する。
【0106】
【数2】
ここで、I(λ)は、吸収効率αqを求めようとしている対象サンプルを取り付けたときの、反射スペクトルである。(式II)の積分範囲は(式I)で定めた積分範囲と同じにする。このように積分範囲を限定することで、(式II)の第二項は、対象サンプルが励起光を反射することによって生じたフォトン数に対応したもの、すなわち、対象サンプルから生ずる全フォトンのうち励起光によるフォトルミネッセンスで生じたフォトンを除いたものに対応したものになる。実際のスペクトル測定値は、一般にはλに関するある有限のバンド幅で区切ったデジタルデータとして得られるため、(式I)および(式II)の積分は、そのバンド幅に基づいた和分によって求まる。
以上より、αq=Nabs/N=(式II)/(式I)と求められる。
【0107】
次に、内部量子効率ηiを求める方法を説明する。ηiは、フォトルミネッセンスによって生じたフォトンの数NPLをサンプルが吸収したフォトンの数Nabsで割った値である。
ここで、NPLは、下記(式III)で求められる量に比例する。
【0108】
【数3】
この時、積分区間は、サンプルからフォトルミネッセンスによって生じたフォトンが持つ波長域に限定する。サンプルから反射されたフォトンの寄与をI(λ)から除くためである。具体的に(式III)の積分の下限は、(式I)の積分の上端を取り、フォトルミネッセンス由来のスペクトルを含むのに好適な範囲を上端とする。
以上により、ηi=(式III)/(式II)と求められる。
なお、デジタルデータとなったスペクトルから積分を行うことに関しては、αqを求めた場合と同様である。
そして、上記のようにして求めた量子吸収効率αqと内部量子効率ηiの積をとることで、本発明で定義される発光効率を求める。
【0109】
前記の蛍光体は、一般的な固相反応法によって合成することができる。例えば、蛍光体を構成する金属元素源となる原料化合物を、乾式法或いは湿式法により、粉砕・混合して粉砕混合物を調製し、得られた粉砕混合物を加熱処理して反応させることにより製造することができる。
また、窒化物又は酸窒化物蛍光体の場合は、例えば、蛍光体を構成する金属元素を少なくとも2種類以上含有する合金、好ましくは蛍光体を構成する金属元素を全て含有する合金を作製し、得られた合金を窒素含有雰囲気中、加圧下で加熱処理することにより、製造することができる。さらに、例えば、蛍光体を構成する金属元素の一部を含有する合金を作成し、得られた合金を窒素含有雰囲気中、加圧下で加熱処理した後、更に蛍光体を構成する残りの金属元素源となる原料化合物と混合、加熱処理することにより、製造することもできる。このように合金を経て製造された蛍光体は、不純物が少なく、輝度が高い蛍光体となる。
【0110】
さらに、波長変換材料3,4の存在状態は本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意である。例えば、バインダ9を用いてフレーム5に保持するようにしても良く、また、バインダ9を用いずにフレーム5に固定するようにしても良い。
バインダ9は、通常、粉末状や粒子状の波長変換材料3,4をまとめたり、フレーム5に添着させたりするために用いる。本実施形態の白色発光装置1に用いるバインダ9について制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。
【0111】
ただし、白色発光装置1を透過型、即ち、一次光や二次光などがバインダ9を透過して白色発光装置1の外部に放出されるように構成した場合、バインダ9としては、白色発光装置1が発する光の各成分を透過させるものを選択することが望ましい。
【0112】
バインダ9の例を挙げると、樹脂等の他、ガラス等の無機材料も用いることができる。その具体例を挙げると、樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の有機合成樹脂、ポリシロキサンゲルやガラス等の無機材料などが挙げられる。
【0113】
また、バインダ9として樹脂を用いる場合、その樹脂の粘度は任意であるが、使用する波長変換材料3,4の粒径と比重、特に、表面積当たりの比重に応じて、適当な粘度を有するバインダ9を用いることが望ましい。例えば、エポキシ樹脂をバインダ9に使用するときに、波長変換材料3,4の粒径が2μm〜5μm、その比重が2〜5である場合には、通常、1Pas〜10Pasの粘度のエポキシ樹脂を用いると、波長変換材料3,4の粒子をよく分散させることができるため、好ましい。
なお、バインダ9は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0114】
さらに、波長変換材料3,4にその他の成分を共存させることも可能である。その他の成分に特に制限は無く、公知の添加剤を任意に使用することができる。
具体例を挙げると、例えば、白色発光装置1の配光特性や混色の制御を行なう場合には、その他の成分として、アルミナやイットリア等の拡散剤を使用することが好ましい。
また、例えば、波長変換材料3,4を高密度に充填する場合には、その他の成分として、ピロリン酸カルシウムや硼酸バリウムカルシウム等の結着剤を使用することが好ましい。
【0115】
また、バインダ9を用いないで波長変換材料をフレームに保持させようとすることも可能である。例えば、波長変換材料を焼成して焼成体を作製し、その焼成体をそのままフレームに取り付けるようにすることができる。また、例えば波長変換材料でガラスを作製したり、波長変換材料の単結晶を加工したものをフレームに取り付けるようにしても良い。
【0116】
なお、バインダ9を用いる場合には、上記のその他の成分はバインダ9中に分散させるようにすればよいが、バインダ9を用いない場合にも添加剤等のその他の成分を波長変換材料に共存させることが可能である。
【0117】
本実施形態においては、波長変換材料3,4として、上述した第1波長変換材料に属する波長変換材料3と、第2波長変換材料に属する波長変換材料4とを用い、これらの波長変換材料3,4はバインダ9に分散させた状態でフレーム5の凹部5Aに保持させるようになっている。
また、本実施形態で用いる波長変換材料3,4は、温度上昇による発光強度の変化が小さく、内部量子効率が高く、吸光度も高いものを用いている。さらに、バインダ9は発光素子2が発する一次光や波長変換材料3,4が発する二次光を透過できるようになっていて、これにより、一次光と二次光との合成光として白色光が発せられるようになっているものとする。
【0118】
[2−4.製造方法]
白色発光装置1の製造方法に制限はなく任意であるが、例えば、波長変換材料3,4並びに適宜用いられるバインダ9及びその他の成分を分散媒に分散させてスラリーを調製し、調製したスラリーを、発光素子2を取り付けたフレーム5に塗布した後、スラリーを乾燥させて形成することができる。なお、適宜、発光素子2はスラリーの塗布時や塗布後にフレーム5に取り付けるようにしても良い。
【0119】
スラリーの調製は、波長変換材料3,4と、適宜用いられるバインダ9及び添加剤等その他の成分とを、分散媒に混合することにより行なう。なお、スラリーは、バインダ9の種類によってはペースト、ペレット等に呼称が変わる場合があるが、本明細書ではこれらを含めてスラリーと呼ぶことにする。
【0120】
スラリー調製に用いる分散媒に制限は無く、公知の分散媒を任意に用いることができる。その具体例としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ソルベッソ等の鎖状炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、セロソブル、ブチルソルブ、セロソルブアセテートなどのエーテル類、水や任意の水溶液等の水系溶剤などが挙げられる。
【0121】
次に、調製したスラリーをフレーム5等の基材に塗布する。塗布方法は任意であるが、例えば、ディスペンス、ポッティグ等の手法が利用できる。
塗布後、分散媒を乾燥させて、波長変換材料3,4をフレーム5に固定する。乾燥方法は任意であるが、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、真空乾燥、焼き付け、紫外線照射、電子線照射等の方法を用いればよい。中でも、数十℃〜百数十℃の温度でのベーキングは、安価な設備で簡単に、確実に分散媒を除去できるため好ましい。
【0122】
なお、反射型の白色発光装置(後述)を製造する目的で波長変換材料3,4の高密度化を行なう場合には、スラリーにその他の成分として結着剤を混合することが好ましい。また、結着剤を混合したスラリーを塗布する場合には、スクリーン印刷式やインクジェット印刷などの塗布方法を用いることが望ましい。スラリーの塗りわけ等を容易に行なうことができるためである。もちろん、結着剤を使用する場合に通常の塗布方法により塗布を行なってもよい。
【0123】
また、スラリーを用いない方法もある。例えば、波長変換材料3,4と、適宜使用されるバインダ9やその他の成分とを混合し、混錬成形することによって波長変換材料3,4をフレーム5に取り付けるようにして白色発光装置1を製造することもできる。さらに、成形する際には、例えば、プレス成型、押し出し成形(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形などを行なうことにより成形を行なうこともできる。
【0124】
さらに、バインダ9がエポキシ樹脂やシリコン樹脂等の熱硬化性のものである場合には、硬化前のバインダ9と波長変換材料3,4と適宜用いられるその他の成分とを混合、成形して、その後、加熱によりバインダ9を硬化させて波長変換材料3,4をフレーム5に取り付けるようにして白色発光装置1を製造することもできる。また、バインダ9がUV(紫外線)硬化性である場合には、上記方法の加熱の代わりにUV光を照射することによりバインダ9を硬化させて波長変換材料3,4をフレーム5に取り付けるようにして白色発光装置1を製造することもできる。
【0125】
ところで、波長変換材料3,4は、白色発光装置1の製造の際に一連の工程の中で作製してもよいが、予め波長変換材料3,4を含む部材を別途用意しておき、フレーム5等に後から組み込んで白色発光装置1を完成させるようにしても良い。
【0126】
[4.作用]
本実施形態の白色発光装置1は上記のように構成されているため、使用時には、発光素子2に電力を供給して発光素子2を発光させる。発光素子2は電力の供給により一次光を発する。一次光の一部は、バインダ9に分散した波長変換材料3,4に吸収され、これにより、波長変換材料3,4は、それぞれ二次光として蛍光を発する。以上のようにして、波長変換材料3,4に吸収されなかった一次光と、波長変換材料3,4が発した二次光とがバインダ9を透過して、白色発光装置1から一次光と二次光との合成光として白色光が発せられる。
【0127】
本実施形態の白色発光装置1が発する白色光は、上記の所定波長範囲において平坦な発光スペクトルを有しているため、演色性に優れる。
また、本実施形態の白色発光装置1では、発光強度の温度依存性が小さい波長変換材料3,4を用いているため、従来のような点灯後の白色光の経時的な色調変化を抑制することができる。
【0128】
さらに、本実施形態の白色発光装置1では、発光素子2が発する一次光と同様の波長の光に対して、内部量子効率が高く、且つ、吸光度が高い波長変換材料3,4を用いているため、白色発光装置1が発する白色光の強度を従来よりも高め、白色発光装置1の発光効率を向上させることができる。
なお、本実施形態では白色光が一次光を成分として含むものを挙げたが、白色光が一次光を含まないものも同様の利点を得ることができる。
【0129】
[5.その他]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
例えば、白色発光装置1を反射型に形成しても良い。具体例を挙げると、図2に示すように、発光素子2から発せられた一次光がフレーム5の表面等で反射して外部に発せられる構成にしても良い。なお、図2において、図1と同様の符号で示す部位は、図1と同様のものを表わす。
【0130】
図2の構成では、発光素子2は梁10によってフレーム5から離して設けられ、また、波長変換材料3,4はバインダ9に分散した状態でフレーム5の凹部5Aの表面に塗布形成されている。
また、導電性端子6,7は、発光素子2に電力を供給できるよう、梁10に設けられている。このほかは、図2の白色発光装置1は、上記の実施形態と同様に構成されている。
【0131】
この場合、発光素子2から発せられた一次光の一部はフレーム5の表面等で反射して白色光の一成分として白色発光装置1の外部に向けて発せられ、別の一部は波長変換材料3,4に吸収される。そして、凹部5Aの表面に固定された波長変換材料3,4は一次光を吸収し励起されて二次光を発する。これにより、白色発光装置1は一次光と二次光との合成光として白色光を発することができるようになっている。
【0132】
白色発光装置1をこのように反射型に構成した場合でも、白色光が上記の所定波長範囲において平坦な発光スペクトルを有するようにすることにより白色光の演色性を向上させることができ、また、発光強度の温度依存性が小さい波長変換材料3,4を用いることにより点灯後の白色光の経時的な色調変化を抑制することができ、さらに、発光素子2が発する一次光と同様の波長の光に対して、内部量子効率が高く、且つ、吸光度が高い波長変換材料3,4を用いていることにより白色光の強度を向上させて白色発光装置1の発光効率を向上させることができる。
【0133】
また、例えば、上記実施形態のように波長変換材料3,4を混合して用いるほか、波長変換材料3,4の性質や種類などに応じて別々の部位や部材に区別して配置するようにしても良い。
【0134】
具体例を挙げると、図3に示すように、フレーム5の凹部5A内の一部において波長変換材料3をバインダ9Aに分散させ、凹部5Aの残りの部分において波長変換材料4をバインダ9Bに分散させるようにしても良い。なお、図3において、図1,2と同様の符号で示す部位は、図1,2と同様のものを表わす。さらに、バインダ9Aとバインダ9Bとは、同種のものであってもよく、異なっていても良い。
【0135】
図3の構成では、発光素子2から発せられた一次光の一部は白色光の一成分として白色発光装置1の外部に向けて発せられ、別の一部は波長変換材料3,4に吸収される。そして、バインダ9A内に分散された波長変換材料3、及び、バインダ9B内に分散された波長変換材料4のそれぞれが一次光により励起されて二次光を発し、これにより、白色発光装置1は一次光と二次光との合成光として白色光を発することができるようになっている。
【0136】
白色発光装置1を、図3のように波長変換材料3,4の性質や種類などに応じて別々の部位や部材に区別して配置した場合でも、白色光が上記の所定波長範囲において平坦な発光スペクトルを有するようにすることにより白色光の演色性を向上させることができ、また、発光強度の温度依存性が小さい波長変換材料3,4を用いることにより点灯後の白色光の経時的な色調変化を抑制することができ、さらに、発光素子2が発する一次光と同様の波長の光に対して、内部量子効率が高く、且つ、吸光度が高い波長変換材料3,4を用いていることにより白色光の強度を向上させて白色発光装置1の発光効率を向上させることができる。
なお、図3の白色発光装置1を更に変形させて、波長変換材料3,4に応じて別々の凹部5Aをフレーム5に設け、波長変換材料3,4を性質や種類などに応じて別々の凹部5Aに配置するようにしても良い。
【0137】
[II.照明装置]
上記の白色発光装置1は、照明装置に用いることができる。この照明装置は、上記の白色発光装置1を備えていれば他に制限はないが、通常、レンズ等の配光素子や、保護カバー、反射防止フィルム、視野拡大フィルム、輝度向上フィルム、レンズシート、放熱板などの他の構成部材を適宜組み合わせて構成される。
【0138】
例を挙げると、例えば、白色発光装置1を用いて、図4に示す面発光照明装置11を構成することができる。この面発光照明装置11では、上面部分が開口した筐体である保持ケース12内に、上記の白色発光装置1が並べて多数配設されていて、保持ケース12の開口部分12Aに向けて白色発光装置1が白色光を発するようになっている。ここで、白色発光装置1は上記実施形態で説明したものと同様のものを、モールド部材で覆ったものである。また、各白色発光装置1には、電源や回路(図示省略)から電力を供給できるようになっている。さらに、保持ケース12の開口部分12Aにはアクリル板等の拡散板13が設けられていて、白色発光装置1から発せられた一次光及び二次光が拡散板13内で拡散して偏りのない均一な白色光が拡散板13から外部に向けて発せられるようになっている。
【0139】
上記のように白色発光装置1を用いて照明装置を構成することにより、演色性の向上、点灯後の白色光の経時的な色調変化の抑制、白色光の強度の向上及び白色発光装置1の発光効率の向上など、白色発光装置1と同様の利点を得ることができる。
なお、図4を用いて示した面発光照明装置11は本発明の照明装置の一例であり、本発明の照明装置は本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0140】
[III.表示装置]
上記の白色発光装置1は、表示装置(画像表示装置)に用いることができる。この表示装置は、上記の白色発光装置1を備えていれば他に制限はないが、通常、画像を形成させる像形成ユニットや、照明装置と同様の他の構成部材などを適宜組み合わせて構成される。
【0141】
例を挙げると、例えば、白色発光装置1を用いて、図5に示す表示装置21を構成することができる。この表示装置21は、白色発光装置1と、導光板22と、反射フィルム23と、拡散板24と、像形成ユニット25とを備えている。
【0142】
白色発光装置1は、上述したものと同様に形成されたもので、像形成ユニット25を背面から照らすためのバックライトユニットとして用いられるようになっている。
また、導光板22は、白色発光装置1からの白色光を像形成ユニット25に案内するための部材であり、鏡、プリズム、レンズ、光ファイバー等を利用したものをはじめ、公知の導光板を任意に用いることができる。導光板22を用いるようにすれば、像形成ユニット25に対して任意の位置に白色発光装置1を配設することが可能となり、表示装置21の設計の自由度を高めることができる。
本実施形態では、導光板としてプリズムを用いているものとする。
【0143】
さらに、反射フィルム23は、白色発光装置1から発せられた白色光を反射する部材であり、導光板22の背面に設けられている。これにより、導光板22の図中横に設けられた白色発光装置1から発せられた白色光を、反射フィルム23で反射させて、図中上に配設された拡散板24を介して像形成ユニット25に案内することができるようになっている。
【0144】
また、拡散板24は、白色発光装置1から発せられた光を拡散させる部材であり、白色発光装置1から発せられた光は拡散板24の内部で拡散し、偏りのない均一な白色光となって像形成ユニット25へ放出されようになっている。
拡散板24の具体的な構成に制限はなく、形状、材料、寸法などは任意であり、例えば、表裏に凹凸を有するシートや、合成樹脂などのバインダ中に合成樹脂やガラスなどの微粒子が分散した構造物を用いることもできる。本実施形態では、バインダ中に微粒子が分散したタイプの拡散板24を用いているものとする。
【0145】
さらに、像形成ユニット25は、白色発光装置1が発した白色光を背面側(図中下側)に照射されて、表面側(図中上側)に映像を形成する部材である。何らかの像を形成し、照射された白色光の少なくとも一部を透過させることができるものであれば他に制限はなく、任意の形状、寸法、材料等を有する公知の部材を用いることができる。
【0146】
像形成ユニット25の具体例を挙げると、液晶ディスプレイ等に用いられる液晶ユニットや、内部照明標識等に用いられる標識などが挙げられる。
例えば、液晶ユニットの一例としては、カラーフィルター、透明電極、配向膜、液晶、配向膜、透明電極が上記の順に重なった液晶層が、表裏に偏光フィルムを取り付けられたガラスセル等の容器に保持された構造のものが挙げられる。この場合、液晶ユニットでは透明電極に印加する電極によって液晶の分子配列を制御して像を形成するようになっているが、この際、上述した白色発光装置1が背面から白色光(バックライト)によって液晶ユニットを照らすことにより、液晶ユニットに形成された像を液晶ユニットの表面側に明瞭に表示することができる。
【0147】
さらに、表示装置が像形成ユニットに形成された像を表示する位置は、像形成ユニットの表面側であればよく、像形成ユニットの表面側に直接映像を表示する他、何らかの投影面に像を投影して表示するようにしても良い。このようなものの例としては、例えば、液晶プロジェクタなどが挙げられる。
【0148】
また、例えば像形成ユニットとして標識を用いる場合には、上述した白色発光装置1が背面から白色光によって標識を照らすことにより、標識に形成された像を標識の表面側に明瞭に表示することができる。
なお、像形成ユニット25に形成される像は任意であり、文字であっても画像であっても良い。
本実施形態では像形成ユニット25として、表面に直接像を表示する液晶ユニットを用いているものとする。
【0149】
上記のように表示装置を構成すれば、白色発光装置1から白色光を発して像形成ユニット25を背面から照らすようにすることにより、像形成ユニット25に形成されている像が像形成ユニット25の表面に明瞭に映し出すことができる。
この際、上記のように白色発光装置1を用いて表示装置21を構成することにより、演色性の向上により表示される像の色再現性を向上させることができる他、点灯後の白色光の経時的な色調変化の抑制、白色光の強度の向上及び白色発光装置1の発光効率の向上など、白色発光装置1と同様の利点を得ることが可能となる。
なお、図5を用いて示した表示装置21は本発明の表示装置の一例であり、本発明の表示装置は本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【実施例】
【0150】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変形して実施することができる。また、以下の実施例において、LEDは発光ダイオードを表わす。
【0151】
[実施例1]
以下の手順で表面実装型白色発光装置を作製し、その評価を行なった。
まず、表面実装型LED用のフレームのカップ部(凹部)の端子に、460nmの波長で発光するLED(Epistar社製:ES−CEBL912X10X)を、銀ペースト(導電性マウント部材)を使ってボンディングした。
次に、太さ20μmのAu線(導電性ワイヤ)を使用してLEDの電極とフレームの端子とを結線した。
【0152】
波長変換材料としては、Ca2.97Ce0.03Sc2Si312で表わされる第1の蛍光体とCa0.992AlSiEu0.0082.850.15で表わされる第2の蛍光体とを混合して用いた。混合比率(重量比)は、第1の蛍光体:第2の蛍光体=93:7とした。これらの蛍光体は、LEDが発する光(一次光)を吸収して、それぞれ、波長470nm〜690nmの光と波長540nm〜760nmの光を放出するものである。
【0153】
波長変換材料1gに対して、バインダとしてシリコーン樹脂を10gの比率で良く混合し、この蛍光体とシリコーン樹脂との混合物を、LEDをボンディングしたフレームのカップ部分に注いだ。これを150℃で2時間保持し、シリコーン樹脂を硬化させることにより、蛍光体含有樹脂部をカップ部分に形成して表面実装型白色発光装置を得た。
【0154】
上述のようにして得られた表面実装型白色発光装置を駆動させて白色光を発せさせ、その白色光の発光スペクトルを測定し、この発光スペクトルからJIS−Z8726にしたがって算出した演色性評価数R1〜R8の平均値Raを算出した。なお、表面実装型白色発光装置は、室温(約24℃)において、20mAで駆動した。
【0155】
また、表面実装型白色発光装置からの全ての発光を積分球で受け、さらに光ファイバーによって分光器に導き入れ、表面実装型白色発光装置から発せられた光の発光スペクトルを測定した。測定した発光スペクトルを図6に示す。
さらに、上記の白色光及び全ての光の発光スペクトルから、使用した波長変換材料それぞれについて、LEDが発する光に対する内部量子効率及び吸光度並びに25℃における輝度に対する100℃における輝度の輝度保持率TR(%)と、白色発光装置が発した白色光の上記所定波長範囲内における平坦度[I(ratio)]及び相関色温度とを測定した。これらの特性を表1に示す。
【0156】
[実施例2]
波長変換材料の種類をCa2.97Ce0.03Sc1.94Mg0.06Si312に変更した以外は実施例1と同様にして、表面実装型白色発光装置を製造し、表面実装型白色発光装置が発した白色光及び全ての光の発光スペクトルを測定し、実施例1と同様に各特性を測定して、この特性を表1に示した。また、表面実装型白色発光装置からの全ての発光の発光スペクトルを図7に示した。
【0157】
[比較例1]
波長変換材料の種類を(Y,Gd,Ce)3Al512に変更した以外は実施例1と同様にして、表面実装型白色発光装置を製造し、表面実装型白色発光装置が発した白色光及び全ての光の発光スペクトルを測定し、実施例1と同様に各特性を測定して、この特性を表1に示した。また、表面実装型白色発光装置からの全ての発光の発光スペクトルを図8に示した。
【0158】
【表1】
【0159】
表1から、500nmから650nmの所定波長範囲内における発光スペクトルを平坦にし、平坦度[I(ratio)]を150%以下とすることにより、白色発光装置から発せられる白色光の演色性を高めることが可能となることが確認された。
また、実施例1,2で用いた波長変換材料は、いずれも輝度保持率が80%以上と高く、このため、実施例1,2で作製した白色発光装置は点灯後にLEDの発熱により白色光の強度が経時的に低下する虞は小さい。
さらに、実施例1,2で用いた波長変換材料は、LEDの発光波長の光に対する吸光度が50%以上と高く、且つ、波長変換材料の内部量子効率が40%以上と高いため、白色発光装置が発する光の強度を比較例1よりも高めて、白色発光装置の発光効率に優れているものと推察される。
また、比較例1の白色発光装置は実施例1,2の白色発光装置よりも発光効率が高いものの、演色性は劣り、使用した波長変換材料の輝度保持率が低いことから温度変化による色調変化の発生が懸念される。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は白色光を用いる任意の分野において用いることができ、例えば屋内及び屋外用の照明などに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
図1】本発明の一実施形態としての白色発光装置の模式的な断面図である。
図2】本発明の一実施形態としての白色発光装置の模式的な断面図である。
図3】本発明の一実施形態としての白色発光装置の模式的な断面図である。
図4】本発明の一実施形態としての面発光照明装置の模式的な断面図である。
図5】本発明の一実施形態としての白色発光装置を用いた表示装置の模式的な断面図である。
図6】本発明の実施例1で測定した、表面実装型白色発光装置から発せられた光の発光スペクトルである。
図7】本発明の実施例2で測定した、表面実装型白色発光装置から発せられた光の発光スペクトルである。
図8】比較例1で測定した、表面実装型白色発光装置から発せられた光の発光スペクトルである。
【符号の説明】
【0162】
1 白色発光装置
2 発光素子
3,4 波長変換材料
5 フレーム
5A 凹部
6,7 導電性端子
8 ワイヤ
9,9a,9B バインダ
10 梁
11 面発光照明装置
12 保持ケース
13 拡散板
21 表示装置
22 導光板
23 反射フィルム
24 拡散板
25 像形成ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8