(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721922
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】エネルギー線硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/14 20060101AFI20150430BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
C08F290/14
C08G18/67
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2007-272956(P2007-272956)
(22)【出願日】2007年10月19日
(65)【公開番号】特開2009-102459(P2009-102459A)
(43)【公開日】2009年5月14日
【審査請求日】2010年4月7日
【審判番号】不服2014-4983(P2014-4983/J1)
【審判請求日】2014年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】村上 賢志
(72)【発明者】
【氏名】大西 敏之
(72)【発明者】
【氏名】菅原 輝明
【合議体】
【審判長】
小野寺 務
【審判官】
須藤 康洋
【審判官】
田口 昌浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−274194(JP,A)
【文献】
特開2007−177161(JP,A)
【文献】
特開2005−255555(JP,A)
【文献】
特開2002−128845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F283/01
C08F290/00-290/14
C08F299/00-299/08
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II)で表される分子内に(メタ)アクリレート基を1つ有する(メタ)アクリル酸エステル(A)の存在下、下記式(I)で表されるビスフェノール骨格と2個以上の水酸基を有するジ(メタ)アクリル酸エステル(B)と、
キシリレンジイソシアネート(C)とを、(C)成分のイソシアネート基1.0モルに対して(B)成分のモル比が1.0〜1.2モルとなる割合で、かつ有機溶剤を使用せずに反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート組成物を含有してなるエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【化1】
(式(I)中、R
1及びR
2はH又はCH
3を示し、lは繰り返し単位の平均数であり、1〜5である。)
【化2】
(式(II)中、R
3はH又はCH
3を示し、R
4はフェニル基を示し、nは平均値であって1〜10である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート組成物、及びその製造方法、並びに、上記ウレタン(メタ)アクリレート組成物を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂の中には、フレネルレンズや反射防止フィルム、偏光フィルム、光ファイバーコーティング材、光学接着剤のように高い屈折率が要求される用途に用いられるものがある。
【0003】
このような用途に、従来はスチレンのように揮発性の高い化合物が使用されていたが、作業環境の改善と硬化スピードの速さ、光によるパターンニングが可能であること等から、エネルギー線照射によって硬化可能な樹脂が種々開発され、幅広い分野で実用化されている。
【0004】
高屈折率を有するエネルギー線硬化樹脂としては、特定の構造を有し、ハロゲンを含有するウレタン化(メタ)アクリル酸エステルからなるもの(特開昭60−51706号公報)や硫黄原子を有する有機硫黄化合物からなるもの(特開平5−1116号公報)が提案されている。
【0005】
ところが、高屈折率を付与するために(メタ)アクリル酸エステルの構造中にハロゲン原子や硫黄原子を導入した場合、ハロゲン原子を含有するものでは燃焼した時にダイオキシンが発生することが問題となっている。また、得られる材料の比重が大きくなることから、プラスチック材料としてのメリットが小さくなることも問題となる。さらに、電子部材に使用する場合、遊離ハロゲンが存在すると、さびの発生、伝送損失が大きくなる等の問題が生じることがある。一方、硫黄原子を導入した場合、臭気、結晶性が高くて扱いにくい、硬化後の物性が硬すぎる等の問題がある。
【0006】
そこで、上記原子を含有しない構造とする試みがなされているが(特開平1−103616号公報)、高屈折率という点では十分でない。また、高屈折率という点では十分な性能を有するものでも、高粘度であり、合成時及び使用時に溶剤希釈が必要であるなど問題がある(特開2005−255555号公報)。このため、無溶剤系で高屈折率を発現するエネルギー線硬化型樹脂が望まれている。
【特許文献1】特開昭60−51706号公報
【特許文献2】特開平5−1116号公報
【特許文献3】特開平1−103616号公報
【特許文献4】特開2005−255555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決すべくなされたものであり、ハロゲン原子や硫黄原子を含有せずに高屈折率を発現し、かつ作業性を損なうことなく無溶剤系とすることが可能なウレタン(メタ)アクリレート組成物、及びこれを含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエネルギー線硬化型樹脂組成物は、下記式(II)で表される分子内に(メタ)アクリレート基を1つ有する(メタ)アクリル酸エステル(A)の存在下、下記式(I)で表されるビスフェノール骨格と2個以上の水酸基を有するジ(メタ)アクリル酸エステル(B)と、
キシリレンジイソシアネート(C)とを、(C)成分のイソシアネート基1.0モルに対して(B)成分のモル比が1.0〜1.2モルとなる割合で、かつ有機溶剤を使用せずに反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート組成物を含有してなるものである。
【化1】
【0009】
式(I)中、R
1及びR
2はH又はCH
3を示し、lは繰り返し単位の平均数であり、1〜5である。
【0010】
式(II)中、R3はH又はCH3を示し、R4はフェニル基を示し、nは平均値であって1〜10である。
【0011】
本発明に係るウレタン(メタ)アクリレートの製造方法は、分子内に(メタ)アクリレート基を1つ有する(メタ)アクリル酸エステルの存在下、上記式(I)で表されるビスフェノール骨格と2個以上の水酸基を有するジ(メタ)アクリル酸エステル(B)と、有機ポリイソシアネート(C)とを、反応させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハロゲン原子や硫黄原子を含まずに、高い屈折率を有する樹脂硬化物が得られる。また、上記ウレタン(メタ)アクリレート組成物は、有機溶剤を使用しなくても低粘度にすることができるので、作業性を向上することができ、また、無溶剤化により、溶剤の乾燥工程を省略することができる。また、上記ウレタン(メタ)アクリレート組成物は、製造工程において有機溶媒を使用しなくてもよいため、硬化後の樹脂中に残存する有機溶媒を非常に少なくすることができ、そのため、高純度の光硬化樹脂が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0014】
本発明において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを示す。また、(メタ)アクリレート基とは、アクリレート基又はメタクリレート基を示す。
【0015】
[(A)成分]
分子内に(メタ)アクリレート基を1つ有する(メタ)アクリル酸エステル(A)としては、公知の種々のモノ(メタ)アクリレートを用いることができる。例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート(即ち、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート)、EO変性o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート(即ち、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート)、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート(即ち、クレゾールポリエトキシ(メタ)アクリレート)、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート(即ち、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート)、EO変性2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート(即ち、2−エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート)、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート(即ち、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート)、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらはいずれか1種で用いてもよく、又は2種以上の混合物で用いてもよい。
【0016】
(A)成分の化合物は、その存在下で、(B)成分と(C)成分を反応させるために用いられるものであり、(A)成分自体が、(C)成分の有機ポリイソシアネートと反応することを意図して使用されるものではない。そのため、(A)成分としては、分子内に水酸基を有さないモノ(メタ)アクリル酸エステルが用いられる。
【0017】
また、(A)成分の化合物は、得られるウレタン(メタ)アクリレート組成物をより低粘度にできるものであることが好ましく、具体的には、25℃における粘度が、5〜200mPa・sであるものが好ましい。(A)成分が2種以上の混合物である場合、それぞれが上記範囲内に該当するとともに、その混合物が上記範囲内に含まれていることが好ましい。
【0018】
(A)成分としては、得られるウレタン(メタ)アクリレート組成物を低粘度化し、更にまた、得られる樹脂に高屈折率を付与する点から、下記式(II)で表されるフェノールエトキシ(メタ)アクリレートが好ましく、その中でも、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性o−フェニルフェノール(メタ)アクリレートを使用することがより好ましい。
【化2】
【0019】
式(II)中、R
3はH又はCH
3を示し、R
4はH、フェニル基又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、nは平均値であって1〜10であり、より好ましくは1〜5である。
【0020】
[(B)成分]
本発明で用いる、上記式(I)で表されるビスフェノール骨格と2個以上の水酸基を有するジ(メタ)アクリル酸エステル(B)の例としては、ビスフェノールA型グリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールF型グリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられ、これらは単独で使用してもよく、複数種併用することもできる。
【0021】
上記化合物(B)は公知の方法で合成することが可能であり、例えば、所定量のビスフェノール骨格を有するグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸を一括で仕込み、ヒドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤の存在下、空気を導入しながら、90〜100℃に加温しながら、酸価がなくなるまで撹拌することにより得られる。また、3級アミンや4級アンモニウム塩等を触媒として用いることができる。
【0022】
[(C)成分]
有機ポリイソシアネート化合物(C)としては、公知のものを使用することができ、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0023】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
上記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0025】
上記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0026】
上記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0027】
これらの有機ポリイソシアネートは単独でも用いることができ、また2種以上の混合物にして用いることもできる。これらの中で、高屈折率を付与する点から芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましい。
【0028】
[ウレタン(メタ)アクリレート組成物]
ウレタン(メタ)アクリレート組成物は、(A)成分の存在下、(B)成分と(C)成分とを反応させることにより得られる。より具体的には、(A)成分及び(B)成分と、重合禁止剤を含む溶液に、(C)成分を仕込み、70〜80℃で残存イソシアネート濃度が0.1重量%以下になるまで加温・攪拌することにより得られる。
【0029】
かかる反応に際しては、有機溶剤を使用しないことが好ましい。すなわち、(A)成分であるモノ(メタ)アクリル酸エステル中で、(B)成分と(C)成分とを、有機溶剤を実質的に使用せずに反応させて、ウレタン(メタ)アクリレートを合成することが好ましい。ここで、使用を排除すべき有機溶剤としては、特に限定されず、あらゆる有機溶剤の使用を排除すべきであるが、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサン、n−ヘプタンなどが挙げられる。
【0030】
上記重合禁止剤は、ビニル重合を防止するために添加される物質であり、例えば、酸化第一銅、酸化第二銅、塩化第一銅、塩化第二銅などの無機重合禁止剤、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、tert−ブチルヒドロキノン、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−tert−ブチル−p−クレゾール、パラベンゾキノン、2,5−ジフェニルパラベンゾキノン、フェノチアジン、ジフェニルアミンなどの有機重合禁止剤などが挙げられる。
【0031】
このようにして得られるウレタン(メタ)アクリレート組成物は、(B)成分と(C)成分とからなるウレタン(メタ)アクリレートと、(A)成分のモノ(メタ)アクリレートとを含む混合物である。
【0032】
(A)成分の量としては、(A)成分と(B)成分と(C)成分の総量に対し、その10〜80重量%程度であることが好ましく、より好ましくは20〜70重量%である。10重量%より小さくなると、ウレタン(メタ)アクリレート組成物の粘度が高くなり、操作性が悪くなりやすく、80重量%より大きいと、樹脂の架橋密度が低くなり樹脂物性が低下しやすい。
【0033】
また、(B)成分と(C)成分の割合は、特に限定されないが、(C)成分のイソシアネート基1.0モルに対して、(B)成分のモル比が1.0〜1.2モルとなる割合で反応させることが好ましい。
【0034】
[エネルギー線硬化型樹脂組成物]
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記ウレタン(メタ)アクリレート組成物を含有してなるものである。上記ウレタン(メタ)アクリレート組成物は、エネルギー線照射によって得られる硬化物が高屈折率を有するものであり、従って、該組成物を配合することにより、高屈折率のエネルギー線硬化型樹脂が得られる。具体的には、上記硬化物のナトリウムD線における屈折率が、1.55以上であることが好ましく、1.57以上であることがより好ましい。
【0035】
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて光重合開始剤を添加することができる。光重合開始剤の種類は特に限定されず、公知のものが使用可能であり、代表的な例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン等が挙げられる。これらを単独で用いても、複数種併用してもよい。光重合開始剤を使用する場合のその添加量は、得られる樹脂に対し、1〜10重量%が好ましく、3〜5重量%がより好ましい。
【0036】
本発明のエネルギー線硬化樹脂組成物には、また、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、触媒、着色剤、帯電防止剤、滑剤、レベリング剤、消泡剤、重合促進剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、界面活性剤、表面改質剤等を添加することができる。
【0037】
なお、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させるエネルギー線源は特に限定されないが、例としては、高圧水銀灯、電子線、γ線、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が挙げられる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、特に断らないかぎり、全て重量基準であるものとする。
また、下記実施例4は参考例である。
【0039】
[合成例(ジアクリル酸エステル(B1)の合成)]
フラスコに、ビスフェノールA型グリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン(株)製「JER828」、エポキシ当量=190)380g(1モル)、アクリル酸(日本触媒(株)製)144g(2モル)、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.262g、テトラブチルアンモニウムブロマイド2.62gを仕込み、空気を導入しながら撹拌した。95〜100℃の条件にて10時間反応させて、ジアクリル酸エステル(B1)(式(I)のR
1がH、R
2がCH
3、l=1.14、粘度は80000mPa・s(40℃))を得た。
【0040】
[実施例1]
フラスコに、上記合成例で得たジアクリル酸エステル(B1)1048g(2モル)、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.62g、o−フェニルフェノールのポリエトキシアクリレート(式(II)中のR
3がH、R
4がフェニル基(オルト位)、n=1.5、粘度125mPa・s(25℃)、日本化薬(株)製「KAYARAD OPP−1.5」)476g、フェノキシエチルアクリレート(式(II)中のR
3がH、R
4がH、n=1、粘度8mPa・s(25℃)、第一工業製薬(株)製「ニューフロンティアPHE」)666gを仕込み、攪拌した。ここに、キシリレンジイソシアネート188g(1モル)を仕込み、70〜80℃の条件にて残存イソシアネート濃度が0.1重量%になるまで反応させ、ウレタンアクリレート組成物aを得た。得られた組成物の粘度は13000mPa・s(25℃)であった。
【0041】
[実施例2]
フラスコに、上記合成例で得たジアクリル酸エステル(B1)1048g(2モル)、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.62g、o−フェニルフェノールのポリエトキシアクリレート(実施例1と同じ。)1268g、フェノキシエチルアクリレート(実施例1と同じ。)666gを仕込み、攪拌した。ここに、キシリレンジイソシアネート188g(1モル)を仕込み、70〜80℃の条件にて残存イソシアネート濃度が0.1重量%になるまで反応させ、ウレタンアクリレート組成物bを得た。得られた組成物の粘度は4000mPa・s(25℃)であった。
【0042】
[実施例3]
フラスコに、上記合成例で得たジアクリル酸エステル(B1)1048g(2モル)、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.62g、o−フェニルフェノールのポリエトキシアクリレート(実施例1と同じ。)1237gを仕込み、攪拌した。ここに、キシリレンジイソシアネート188g(1モル)を仕込み、70〜80℃の条件にて残存イソシアネート濃度が0.1重量%になるまで反応させ、ウレタンアクリレート組成物cを得た。得られた組成物の粘度は55600mPa・s(25℃)であった。
【0043】
[実施例4]
フラスコに、上記合成例で得たジアクリル酸エステル(B1)1048g(2モル)、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.62g、o−フェニルフェノールのポリエトキシアクリレート(実施例1と同じ。)1082g、フェノキシエチルアクリレート(実施例1と同じ。)325gを仕込み、攪拌した。ここに、ジフェニルメタンジイソシアネート250g(1モル)を仕込み、70〜80℃の条件にて残存イソシアネート濃度が0.1重量%になるまで反応させ、ウレタンアクリレート組成物dを得た。得られた組成物の粘度は52000mPa・s(25℃)であった。
【0044】
[比較例1]
フラスコに、上記合成例で得たジアクリル酸エステル(B1)1048g(2モル)、トルエン309g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.62gを仕込み撹拌した。ここに、キシリレンジイソシアネート188g(1モル)を仕込み、70〜80℃の条件にて残存イソシアネート濃度が0.1重量%になるまで反応させ、ウレタンアクリレート組成物eを得た。得られた組成物の粘度は70000mPa・s(25℃)であった。
【0045】
[評価]
上記実施例および比較例で得られたウレタンアクリレートについて、以下の要領で粘度、硬化物の屈折率及び透明性を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
・粘度
作業性を評価するため、得られた組成物についての粘度を測定した。東機産業(株)製TVE−22H型粘度計(E型)を用いて25℃で粘度測定を行なった。
【0047】
・屈折率
下記条件で硬化させた硬化物の屈折率(25℃)をMetricon社製Metricon Model PC2010プリズムカプラにより測定した。ここで、屈折率は、波長589nmのナトリウムD線における屈折率である。
【0048】
・硬化条件
ウレタンアクリレート組成物/イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ社製光重合開始剤、1−ヒドロキシヘキシルフェニルケトン)=100/3(質量比)の比率で配合して均一に溶解させた樹脂組成物をスピンコータを用いて、PETフィルムに厚膜20μm程度で塗布した。これを80w/cmの高圧水銀灯を用いて積算照度200mJ/cm
2の紫外線照射を行ない、硬化させた。
【表1】
【0049】
表1からわかるように、実施例1〜4ともに硬化物の屈折率を1.55以上保ちつつ、作業性が向上されていることが認められた。また、目視で確認したところ、透明性にも優れていた。従って、本実施例によれば、無溶剤系で屈折率を1.55以上保ちつつ、透明性に優れ、かつ作業性に優れたウレタン(メタ)アクリレート組成物、およびこれを含有するエレルギー線硬化型樹脂組成物を得ることができる。
【0050】
これに対し、比較例1は、有機溶剤としてトルエンを配合することで低粘度化したものであり、そのため、有機溶剤の乾燥工程が必要になる等の問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るウレタン(メタ)アクリレート組成物、及びこれを含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物は、フレネルレンズや反射防止フィルム、偏光フィルム、光ファイバーコーティング材、光学接着剤のように高い屈折率が要求される用途に特に好適に用いられる。