特許第5721956号(P5721956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721956
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B68G 7/05 20060101AFI20150430BHJP
   B68G 7/052 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   B68G7/05 B
   B68G7/052 A
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2010-39543(P2010-39543)
(22)【出願日】2010年2月25日
(65)【公開番号】特開2011-172772(P2011-172772A)
(43)【公開日】2011年9月8日
【審査請求日】2013年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(74)【代理人】
【識別番号】100103366
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 礼至
(72)【発明者】
【氏名】荒井 善雄
(72)【発明者】
【氏名】新道 隆
(72)【発明者】
【氏名】水野 信一
【審査官】 佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−303770(JP,A)
【文献】 特開平9−94364(JP,A)
【文献】 特開昭61−279279(JP,A)
【文献】 特開2005−170075(JP,A)
【文献】 実開平03−125500(JP,U)
【文献】 特開平4−189530(JP,A)
【文献】 特開平10−297561(JP,A)
【文献】 特開2008−073146(JP,A)
【文献】 特開2001−354057(JP,A)
【文献】 特開2003−225135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 7/05
B68G 7/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上、下型で、表面に凹溝を有する発泡体製パッドの表面に表皮材を加圧して接着することにより形成する車両用シートにおいて、前記表皮材は一枚状で、その表面側を内側に折り返し、その折り返し個所を重ねてその重ねた部分の先端まで一体に溶着して溶着部を形成し、その溶着部を、前記パッドの凹溝内に挿入してなることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用シートなどの車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車用シートには、表面に凹溝を有する発泡体製パッドに、表皮材を接着して形成するものがある(例えば実公平3−25670公報)。
【0003】
そして、このパッドの凹溝には表皮材の一部が喰い込まれて接着され、この表皮材の喰い込む部分は、複数の表皮片を縫着して接ぎ合わせた部分である。
【0004】
この従来品の一例を図3に基づいて説明すると、表皮材は多数の適宜形状に裁断した表皮片10,10、11の端末10A、11Aを図4に示す様に、一体に縫着して形成し、下型4上に載置する。その際、下型4に設けた位置決め用針体40に、表皮片10、11…の表皮片10、11…の縫着個所Aを挿し通して、表皮片10、11を下型4に位置決めて固定する。
【0005】
一方、凹溝20、20を有するパッド2は下向きに上型5に固定して、パッド22、又は表皮片10、11のいずれか一方に接着剤を塗布する。
然る後、上型5を下降させてパッド2を表皮片10、11に加圧して、表皮片10、11をパッド2に接着する。その際に、表皮片10、11の縫着個所Aをパッド2の凹溝20、20内に喰い込ませて接着する。
【0006】
このようにして、表皮片10、11をパッド2に接着すると、図4に示すように、縫着個所Aの縫糸口に対して先端の両表皮片10、11の縫い代10A、11Aの一方又は双方が折り曲がり凹溝20より突出して接着される場合がある。
【0007】
そのため、表皮片10、11の縫着個所Aがパッド2の凹溝20内に的確に嵌入されない。従って、表皮片10、11の接着後、表皮片10、11の縫着個所の外観が損なわれる。
【0008】
そこで、前記表皮片10、11の縫い代10A、11Aをメス付ミシンでカットして短くすると、前記不具合は除去されるが、縫着個所より、ほつれが発生する虞れがある。実験結果によれば少なくとも5ミリ程度以上の縫い代10A、11Aが必要であることが判明した。
【0009】
【特許文献1】実公平3-25670公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はパッドの表面に設けた凹溝内に、表皮材の一部が的確に挿入し、外観品質に優れた車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の目的を達成するための本発明は、上、下型で、表面に凹溝を有する発泡体製パッドの表面に表皮材を加圧して接着することにより形成する車両用シートにおいて、前記表皮材は一枚状で、その表面側を内側に折り返し、その折り返し個所を重ねてその重ねた部分の先端まで一体に溶着して溶着部を形成し、その溶着部を、前記パッドの凹溝内に挿入してなることを特徴とする構成である。
【0012】
以上の表皮材の溶着個所は、先端が硬質になり、パッドの凹溝に挿入し易くなり、パッドの凹溝内に全体を確実に挿入できる。また、先端の溶着個所の幅を狭くすることができ前記従来品の如き、縫い代が不要となるため、シートの表面に意匠的に優れた深い装飾溝が形成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表皮材の溶着個所全体がパッドの凹溝内に的確に挿入されるため、表皮材をパッドに接着した際に、パッドの凹溝に対応する部分の表皮材に皺、タルミ、凸起など発生せず、シートの外観品質を向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】表皮材を接着前の状態の部分断面図である。
図2】表皮材の接着後の状態の部分断面図である。
図3】従来の表皮材の接着方法を説明する断面図である。
図4】従来の表皮材をパッドに接着した状態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1、2を参照しつつ本発明に係る車両用シートの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、表皮材1は一枚状で、外表面を構成する可塑性合成樹脂材製の表皮、ウレタンフォームからなるワディング、不織布などからなるワディングカバーなどの積層体から構成されている。
【0017】
パッド2は図3に示すように、その表面の左右に凹溝20、20が形成されている従来周知の構造のものである。
【0018】
この表皮材1の前記パッド2の凹溝20内に挿入する溶着部1A´は、外表面側である表皮側を内側になるように折り返して、その折り返し個所の先端を重ねて、その重ねた部分の先端まで一体に超音波、高周波で一体に溶着イしたものである。
【0019】
このような表皮材1は、図2に示すように、溶着部1A´をパッド2の凹溝20に挿入してパッド2に接着してシートを形成する。
【0020】
その際、針体40を有しない従来の下型4に載置して、上型5で、従来通り、パッド2に加圧して接着することによりシートを形成する。
【0021】
従って、溶着部1A´は厚みと硬さを有するため、前記従来品の如く、下型4に針体40を設け、この針体40を縫着個所Aに差し通すことなく、パッド2の凹溝内に確実に挿入することができ、下型4に位置決め用の斜体40が不要になる。
【0022】
この一枚状の表皮材1に溶着部1A´を形成してシートを形成したものは、従来品の縫い代10A、11Aに相当するものがないため、パッド2の凹溝20内に縫着個所Aの端末11Aが折れ曲がって接着されることがなく、意匠的に優れた外観を有するシートを提供できる。
【符号の説明】
【0023】
1は表皮材
1A´は溶着部
2はパッド
20はパッドの凹溝
図1
図2
図3
図4