(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
硫酸バリウム、ポリテトラフルオロエチレン、合成シリカ、及び酸化チタンのうち硫酸バリウムのみが配合され、その配合量が、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合ゴム100質量部当たり、35質量部以上70質量部以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム組成物。
硫酸バリウム、ポリテトラフルオロエチレン、合成シリカ、及び酸化チタンのうちポリテトラフルオロエチレンのみが配合され、その配合量が、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合ゴム100質量部当たり、15質量部以上45質量部以下であることを特徴とする請求項4に記載のゴム組成物。
硫酸バリウム、ポリテトラフルオロエチレン、合成シリカ、及び酸化チタンのうち酸化チタンのみが配合され、その配合量が、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合ゴム100質量部当たり、40質量部以上60質量部以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載のゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。本発明で用いるビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合ゴム(三元FKM系共重合ゴム)は、例えば、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合ゴム(三元FKM共重合ゴム)に反応性ハロゲン基(例えば、臭化オレフィン、ヨウ化オレフィン等)等の有機過酸化物架橋性基を導入した、過酸化物架橋が可能な三元FKM系共重合ゴムが挙げられる。前記三元FKM系共重合ゴムは、いわゆる汎用フッ素ゴムであり、パーフルオロエラストマー(FFKM)や特殊な耐薬品性フッ素ゴム(耐薬品性FKM等)等の高価なフッ素ゴムより、安価なフッ素ゴムである。
【0015】
前記三元FKM系共重合ゴム中のフッ素含有率は、好ましくは67質量%から72質量%、更に好ましくは67質量%から71質量%である。前記フッ素含有率が67質量%から72質量%であると、搬送ローラに用いるゴム部材として最適な引張応力緩和特性が得られ、かつ前記ゴム部材として最適な圧縮永久ひずみ特性が得られるため好ましく、72質量%以下であるとゴム組成物中での多官能性不飽和化合物の分散が良好であるため好ましく、67質量%から71質量%であると商業的に入手が容易であるため好ましい。
【0016】
本発明に好適な三元FKM系共重合ゴムは、ダイエルG−9062(ダイキン工業社製)、ダイエルG−9074(ダイキン工業社製)、ダイエルG−912(ダイキン工業社製)、ダイエルG−901(ダイキン工業社製)、ダイエルG−902(ダイキン工業社製)、ダイエルG−9503(ダイキン工業社製)、ダイエルG−952(ダイキン工業社製)、バイトンGF−600S(デュポンエラストマー社製)、テクノフロンP959(ソルベイソレクシス社製)、テクノフロンP459(ソルベイ ソレクシス社製)、テクノフロンP757(ソルベイソレクシス社製)又はテクノフロンP457(ソルベイ ソレクシス社製)、テクノフロンP959/30M(ソルベイソレクシス社製)等として商業的に入手しても良い。これらの三元FKM系共重合ゴムは、一種又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明において、硫酸バリウム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、合成シリカおよび酸化チタンからなる群から選ばれた一種以上からなる充填剤は、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり1〜150質量部である。前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり前記充填剤が1質量部未満であると、前記ゴム部材を搬送ローラに用いるゴム部材としてガラス板(前記フラットパネルディスプレイ用ガラス基板、前記板ガラスなど)を搬送する場合、前記ゴム部材から発塵した摩耗粉の前記ガラス板に対する粘着性が高くなり、前記ガラス板に付着した前記摩耗粉が、前記ガラス板に粘着して取り除きにくくなり問題である。また、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり前記充填剤が150質量部を越えると前記ゴム組成物の混合加工性が低下して問題である。
【0018】
前記摩耗粉が、前記ガラス板へ付着する量が少なくなることから、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、前記充填剤は3質量部以上が好ましい。また、前記ゴム組成物が加工及び成形に最適な粘度となり、成形時のゴム融合不良の発生が抑えられる等、成形性が良好となることから、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり前記充填剤は100質量部以下がより好ましい。
【0019】
本発明において、硫酸バリウム、PTFE、合成シリカおよび酸化チタンからなる群から選ばれた一種以上からなる充填剤は、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり1〜150質量部であり、前記硫酸バリウムは、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり5〜150質量部が好ましい。前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり前記硫酸バリウムが5質量部以上であると、前記ゴム部材用いた搬送ローラで前記ガラス板を搬送する場合、前記ゴム部材から発塵した摩耗粉の前記ガラス板に対する粘着性が低下し、前記ガラス板に付着した前記摩耗粉が、前記ガラス板に粘着せずに容易に取り除くことができる。また、前記摩耗粉が、前記ガラス板へ付着する量が少なくなることから、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、前記硫酸バリウムは10質量部以上がより好ましく、25質量部以上が更に好ましい。
【0020】
前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり前記硫酸バリウムが150質量部以下であると、前記ゴム組成物の混合加工性が良好であるため好ましい。前記ゴム組成物が加工及び成形に最適な粘度となり、成形時のゴム融合不良の発生が抑えられる等、成形性が良好となることから、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり前記硫酸バリウムは70質量部以下がより好ましく、55質量部以下が更に好ましい。
【0021】
本発明において、硫酸バリウム、PTFE、合成シリカおよび酸化チタンからなる群から選ばれた一種以上からなる充填剤は、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり1〜150質量部であり、前記PTFEは、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり1〜60質量部が好ましい。前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり前記PTFEが1質量部以上であると、前記ゴム部材を用いた搬送ローラで前記ガラス板を搬送する場合、前記ゴム部材から発塵した摩耗粉の前記ガラス板に対する粘着性が低下し、前記ガラス板に付着した前記摩耗粉が、前記ガラス板に粘着せずに容易に取り除くことができる。また、前記摩耗粉が、前記ガラス板へ付着する量が少なくなることから、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、前記PTFEは5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましい。
【0022】
前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、前記PTFEが60質量部以下であると、前記ゴム組成物の混合加工性が良好であるため好ましい。前記ゴム組成物が加工及び成形に最適な粘度となり、成形時のゴム融合不良の発生が抑えられる等、成形性が良好となることから、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、前記PTFEは50質量部以下がより好ましく、40質量部以下が更に好ましい。
【0023】
本発明において、硫酸バリウム、PTFE、合成シリカおよび酸化チタンからなる群から選ばれた一種以上からなる充填剤は、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり1〜150質量部であり、前記合成シリカは、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり1〜40質量部が好ましい。前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、前記合成シリカが1質量部以上であると、前記ゴム部材を用いた搬送ローラで前記ガラス板を搬送する場合、前記ゴム部材から発塵した摩耗粉の、前記ガラス板に対する粘着性が低下し、前記ガラス板に付着した前記摩耗粉が、前記ガラス板に粘着せずに容易に取り除くことができる。また、前記摩耗粉が、前記ガラス板へ付着する量が少なくなることから、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、前記合成シリカは3質量部以上がより好ましい。
【0024】
前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、前記合成シリカが40質量部以下であると、前記ゴム組成物の混合加工性が良好であるため好ましい。前記ゴム組成物が加工及び成形に最適な粘度となり、成形時のゴム融合不良の発生が抑えられる等、成形性が良好となることから、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり前記合成シリカは35質量部以下がより好ましく、25質量部以下が更に好ましい。
【0025】
本発明において、硫酸バリウム、PTFE、合成シリカおよび酸化チタンからなる群から選ばれた一種以上からなる充填剤は、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり1〜150質量部であり、前記酸化チタンは、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり5〜150質量部が好ましい。前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、前記酸化チタンが5質量部以上であると、前記ゴム部材を用いた搬送ローラで前記ガラス板を搬送する場合、前記ゴム部材から発塵した摩耗粉の、前記ガラス板に対する粘着性が低下し、前記ガラス板に付着した前記摩耗粉が、前記ガラス板に粘着せずに容易に取り除くことができる。また、前記摩耗粉が、前記ガラス板へ付着する量が少なくなることから、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、前記酸化チタンは15質量部以上がより好ましく、25質量部以上が更に好ましい。
【0026】
前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、前記酸化チタンが150質量部以下であると前記ゴム組成物の混合加工性が良好であるため好ましい。前記ゴム組成物が加工及び成形に最適な粘度となり、成形時のゴム融合不良の発生が抑えられる等、成形性が良好となることから、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、前記酸化チタンは100質量部以下がより好ましく、80質量部以下が更に好ましい。
【0027】
前記硫酸バリウムは、ゴム配合剤として一般的に使用する硫酸バリウムが適用可能であり、特に耐薬品性の点から沈降性硫酸バリウムが好ましい。
【0028】
前記硫酸バリウムは、成形性の点から平均粒径0.01〜10μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。また、SiO
2やAl
2O
3などで表面処理をしたものでもよい。
【0029】
前記PTFEの形態は特に限定は無く、任意の形態のものを使用でき、ゴム組成物の均質性、および成形性を得る観点から、微粉末が好ましい。前記微粉末PTFEの平均粒径は、好ましくは0.05〜200μmであり、より好ましくは1〜100μmであり、さらに好ましくは3〜30μmである。
【0030】
前記合成シリカは、ゴム配合剤として一般的に使用する合成シリカが適用可能であり、特に耐薬品性の点から乾式法で合成されたシリカが好ましい。前記合成シリカは、表面処理をしてもよい。 前記表面処理に使用する表面処理剤として、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジメチルシロキサン、アルキルシランまたはメタクリロキシシラン等のシラン、またはシランカップリング剤の一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
前記合成シリカの平均粒径に特に限定は無く、成形性の点から平均粒径0.005〜10μmが好ましく、0.007〜0.5μmがより好ましい。
【0032】
前記酸化チタンは、ゴム配合剤として一般的に使用する酸化チタンが適用可能であり、特に耐薬品性の点から結晶構造がルチル型の酸化チタンが好ましい。
【0033】
前記酸化チタンの平均粒径に特に限定は無く、成形性の点から平均粒径0.01〜10μmが好ましく、0.1〜5μmがより好ましく、0.1〜1μmがさらに好ましい。前記酸化チタンはSiO
2、Al
2O
3、ZnO等から選ばれる一種又は二種以上の物質で表面処理してもよい。
【0034】
前記硫酸バリウムおよび前記PTFEの前記平均粒径は次の方法で測定される。測定対象物、水又はエタノールなどの有機液体に投入し、35〜40kHz程度の超音波を付与した状態にて約2分間分散処理して得た分散液を用い、かつその場合の粒状物の量は該分散液のレーザー透過率(入射光量に対する出力光量の比)が70〜95%となる量とし、次いで該分散液について、マイクロトラック粒度分析計にかけてレーザー光の散乱により個々の粒状物の粒径(D1、D2、D3、…)、および各粒径ごとの存在個数(N1、N2、N3、…)を計測する(個々の粒状物の粒径(D)は、マイクロトラック粒度分析計によれば種々の形状の粒状物ごとに球相当径が自動的に測定される。)。視野内に存在する個々の粒子の個数(N)と各粒径(D)とから、下記式(1)にて平均粒径を算出する。
【数1】
【0035】
前記酸化チタンの平均粒径は、ビーズミルで粉砕した前記酸化チタンを含む樹脂塗料から作製した塗膜を透過型電子顕微鏡で観察し、無作為に選択した1000個の前記酸化チタンの粒子径を計測し、算術平均を求めたものである。
【0036】
前記合成シリカの平均粒径は透過型電子顕微鏡により、無作為に選択した3000個の前記合成シリカ粒子の粒子径を計測し、算術平均を求めたものである。
【0037】
本発明に用いる有機過酸化物配合量は、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり0.5質量部未満で有ると、本発明のゴム部材を用いた搬送ローラで前記ガラス板を搬送する場合、前記ゴム部材から発塵した前記摩耗粉の前記ガラス板に対する付着性および、前記ゴム部材の応力緩和、圧縮永久ひずみ特性に問題が生じることから、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり0.5質量部以上であり、0.7質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。一方、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり3質量部を超えると、前記有機過酸化物の配合量が多くなると架橋速度が速くなる傾向にあり、そのために成形中にスコーチが発生する等、成形性で問題であるため問題であることから、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり前記有機過酸化物は3質量部以下であり、2質量部以下が好ましい。
【0038】
前記有機過酸化物として、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン又はジ−t−ブチルパーオキサイド等が例示され、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
本発明で用いる多官能性不飽和化合物の配合量は、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり前記多官能性不飽和化合物は1質量部未満であると、本発明のゴム部材を用いた搬送ローラで前記ガラス板を搬送する場合に、前記ゴム部材から発塵した前記摩耗粉の前記ガラス板に対する付着性および応力緩和、圧縮永久ひずみ特性に問題が生じることから、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり前記多官能性不飽和化合物は1質量部以上であり、1.5質量部以上が好ましく、前記有機過酸化物による架橋反応をより好適に促進することから、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり前記多官能性不飽和化合物は2質量部以上がより好ましい。一方、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり前記多官能性不飽和化合物が5質量部を越えると、前記多官能性不飽和化合物はフッ素ゴムとの相溶性が悪いため、多量に配合すると成形時に凝集又は重合して成形品の表面に重合物が析出し成形不良が発生する等、成形性で問題が生じることから、好適な成形性を得るためには、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり前記多官能性不飽和化合物は5質量部以下であり、4質量部以下が好ましい。
【0040】
前記多官能性不飽和化合物として、キノンジオキシム系(p−キノンジオキシム等)、メタアクリレート系(トリエチレングリコールジメタアクリレート、メチルメタアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等)、アリル系(ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート等)、マレイミド系(マレイミド、フェニルマレイミド、N,N´−m−フェニレンビスマレイミド等)、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン又は1,2-ポリブタジエン等が例示され、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
本発明のゴム組成物に対して、前記有機過酸化物及び前記多官能性不飽和物の配合量が少なすぎると、本発明のゴム組成物を架橋してなるゴム部材は、引張応力緩和が大きくなる傾向にある。前記ゴム部材の引張応力緩和が大きくなると、搬送ローラのゴム部材として長期にわたり使用した際に、前記ゴム部材の緊迫力が緩和してしまい、前記搬送ローラの軸心の回転にゴム部材の回転が追従しなくなる恐れがあるため問題である。したがって、前記ゴム部材の引張応力緩和を抑制する点から、本発明のゴム組成物において、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合ゴム100質量部に対して、前記有機過酸化物の配合量が0.5質量部以上であり、且つ前記多官能性不飽和化合物の配合量が1質量部以上である。
【0042】
本発明のゴム組成物に前記有機過酸化物及び前記多官能性不飽和物の配合量が多すぎると、不良率の増大などの成形性に問題が生じる。このため、前記ゴム部材の成形性が良好な点からは、本発明のゴム組成物において、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合ゴム100質量部に対して、前記有機過酸化物の配合量が3質量部以下であり、且つ前記多官能性不飽和化合物の配合量が5質量部以下であることが必要である。
【0043】
本発明のゴム組成物において、硫酸バリウム、ポリテトラフルオロエチレン、合成シリカおよび酸化チタンからなる群から選ばれた一種以上からなる充填剤を除く金属元素含有化合物は、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり0.5質量部以下である。前記金属元素含有化合物は、前記充填剤を除くものであり、且つゴム配合剤として一般的に使用されるものであれば良く、例えば、受酸剤である酸化亜鉛、酸化マグネシウム又は水酸化カルシウム等が挙げられ、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、液状配合剤の取り扱いの容易性から、液状である有機過酸化物や多官能性不飽和化合物を、珪藻土、炭酸カルシウム等の金属元素含有化合物に含浸させて粉体化した配合剤(担持品と呼ぶ)も、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、前記金属元素含有化合物成分が0.5質量部以下の範囲で用いることが可能である。
【0044】
前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、0.5質量部を超えて前記金属元素化合物を配合すると、本発明のゴム組成物を架橋してなるゴム部材は、前記ガラス板の洗浄やエッチングに使用する薬品(例えば、りん酸、硝酸、酢酸、混合酸(りん酸、硝酸及び酢酸の混合溶液等)、塩酸、しゅう酸溶液、過酸化水素水又は次亜塩素酸ナトリウム溶液等)に対し、大きく膨潤する。前記ゴム部材が膨潤すると、前記ゴム部材の物性が低下し、また、前記ゴム部材として使用する場合には、搬送ローラに設けられた前記ゴム部材を固定する溝のエッジ部とゴム部材の接触が大きくなり前記ゴム部材の摩耗を増長させるため問題である。したがって、前記ゴム部材の耐薬品性の効果が充分に発揮される点から、本発明のゴム組成物において、前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり、前記金属元素含有化合物は0.5質量部以下であり、0.3質量部以下が好ましく、前記金属元素含有化合物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0045】
本発明のゴム組成物は、ゴム工業で一般的に使用されている着色剤(着色顔料、カラーバッチ等)等を必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で適量添加することができる。前記着色顔料としては、カーボンブラックや有機顔料(アゾ系顔料、多環式系顔料など)などを用いることができる。前記アゾ系顔料としては、モノアゾ系顔料、ジアゾ系顔料、アゾ縮合系顔料などが例示され、前記多環式顔料としては、イソインドリノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケト−ピロロ−ピロール系顔料、アンスラキノン系顔料、フタロシアニン系顔料などが例示される。本発明で使用する着色剤として、前記着色顔料を用いても良いし、前記着色顔料を前記三元FKM系共重合ゴムなどのフッ素ゴムなどに高濃度に分散したカラーバッチを用いても良い。
【0046】
従来から用いられる搬送ローラのゴム部材は、前記ゴム部材の強度を十分なものとするための補強剤または充填材などとしてカーボンブラックを配合しているため黒色ゴム部材しか提供できず、着色することが出来なかった。しかしながら、本発明のゴム組成物はカーボンブラックを必須成分とせず、且つ本発明の必須成分からなるゴム組成物およびゴム部材は白色、乳白色、淡黄色又は淡褐色であることから、本発明のゴム部材は、黒色と視覚的に識別できる色に着色することが可能である。これにより、耐薬品性が劣るゴム部材など他のゴム部材と、視覚による識別が可能な耐薬品性に優れたゴム部材が提供される。よって、同一装置内の薬品と接触する恐れの有る領域と接触する恐れの無い領域で、視覚的に同一であるが耐薬品性が異なるゴム部材を、使い分けて用いる装置において、耐薬品性が異なるゴム部材を視覚的に識別することが可能となる。例えば、FPD製造装置やそれに用いるガラス基板の原材料である板ガラス製造装置の、ガラス基板又は板ガラスを搬送する搬送ローラは、薬品と接触する恐れのある領域と接触する恐れのない領域のいずれにも、一般に同じ形状の搬送ローラを用いており、価格面から、搬送ローラに用いるゴム部材に、前記領域に応じて、異なる耐薬品性のゴム部材を用いていることから、耐薬品性が異なるゴム部材の取り違えによるトラブルが発生して問題であったが、本発明により、耐薬品性が異なるゴム部材を視覚的に識別できるようになったため、前記トラブルを防止できることから、本発明のゴム部材は、前記搬送ローラに用いるゴム部材に極めて好適である。
【0047】
本発明のゴム組成物には、例えば、老化防止剤(例えば、アミン系、フェノール系、イミダゾール系)、可塑剤(例えば、アジピン酸系可塑剤(ジオクチルアジペート等)、セバシン酸系可塑剤(セバシン酸ジオクチル等)、トリメリット酸系可塑剤(トリメリテート等)、重合型可塑剤(例えば、ポリエーテル若しくはポリエステル等の重合型可塑剤)等)又は加工助剤(例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス等)等ゴム工業で一般的に使用されている配合剤を必要に応じて適宜添加することができる。なお、各配合剤の添加量は特に限定せず、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて適宜設定することができる。
【0048】
本発明のゴム組成物を、従来公知のインタミックス、ニーダ、バンバリーミキサ等の混練機、オープンロール又は二軸混練押出機等を用いて混練した後、射出成形機、圧縮成形機、加熱プレス機又は押出成形機等を用いて所望の形状に架橋成形して前記ゴム部材を得ることができる。前記架橋成形において、例えば140℃〜200℃で2分間〜30分間の一次架橋を施した後、必要に応じて150℃〜230℃で1時間〜24時間の二次架橋を施すというような条件で架橋を行うことが好ましい。二次架橋を施すことで、一次架橋のみの場合のゴム部材と比較して、前記ゴム部材を搬送ローラのゴム部材とした場合に前記ゴム部材から発塵する摩耗粉の搬送物である前記ガラス板への付着量を低減でき、且つ前記ゴム部材の圧縮永久ひずみを小さくできる。
【0049】
本発明のゴム部材は、パーフルオロエラストマー(FFKM)や特殊な耐薬品性フッ素ゴム(耐薬品性FKM等)等の高価なフッ素ゴムより安価な汎用フッ素ゴムを用いて、高価なフッ素ゴムを用いたゴム部材と同等の耐薬品性が得られる。したがって、同一装置内の薬品と接触する恐れの有る領域と接触する恐れの無い領域で、視覚的に同一であるが耐薬品性が異なるゴム部材を使い分けて用いる装置において、従来よりも安価に、前記装置内全ての前記ゴム部材に耐薬品性の優れたゴム部材を用いることが可能となる。例えば、FPD製造装置やそれに用いるガラス基板の原材料である板ガラス製造装置の、ガラス基板又は板ガラスを搬送する搬送ローラは、薬品と接触する恐れのある領域と接触する恐れのない領域のいずれにも、一般に同じ形状の搬送ローラを用いているが、価格面から、搬送ローラに用いるゴム部材は、前記領域に応じて異なる耐薬品性のゴム部材を用いていることから、耐薬品性が異なるゴム部材との取り違えによるトラブルが発生して問題であったが、本発明により、安価に、全てのゴム部材を耐薬品性に優れたゴム部材を用いることが可能となり、これにより前記トラブルを防止できることから、本発明のゴム部材は、前記搬送ローラに用いるゴム部材に極めて好適である。
【0050】
本発明のゴム部材は、JIS K 6262に準拠して評価した、25%圧縮及び200℃70時間の試験条件での圧縮永久ひずみが30%以下であり、JIS K 6253に準拠して評価した、デュロメータ硬さ(瞬間値)がA55〜A90であることから、搬送ローラに用いるゴム部材として好適である。また、本発明のゴム部材は、圧縮永久歪みがシール部材として好適な範囲であることから、シール部材としても用いることができ、特に耐薬品性が求められる用途のシール部材を、安価に提供できる。
【0051】
また、本発明のゴム部材において、JIS K 6253に準拠して測定したデュロメータ硬さ(瞬間値)がA65〜A80であると、前記ゴム部材を搬送用ローラのゴム部材とした場合、前記搬送用ローラが前記ガラス板を搬送するためのグリップ力が向上して、前記搬送ローラの搬送効率が向上する。例えば前記三元FKM系共重合ゴム100質量部当たりの前記充填剤の配合量を、前記硫酸バリウム単独であれば35〜70質量部、前記PTFE単独であれば15〜45質量部、前記合成シリカ単独であれば5〜20質量部、前記酸化チタン単独であれば40〜60質量部とすると、本発明のゴム部材のデュロメータ硬さがA65〜A80となるため好ましい。
【0052】
また、本発明のゴム部材を搬送ローラに用いた場合、前記ゴム部材が極めて空転しにくく、良好な搬送性を維持できる。なお、前記空転とは、前記ゴム部材は連続した搬送により引張応力を連続的に受けるが、搬送物を連続して搬送することにより引張応力緩和が生じ、前記引張応力緩和が大きくなると、搬送物を搬送する際に、搬送ローラの回転軸の回転に、前記ゴム部材が追従せず空回りすることを言う。なお、本発明のゴム部材の引張応力緩和測定値は、JIS K 6263(引張応力緩和試験B法)に準拠して、試験片は短冊1号形とし、試験温度40℃、試験時間30分、試験ひずみ20%の条件下において、10%以下である。
【0053】
本発明のゴム部材の形状は特に限定されず、Oリング、Dリング、角リング、Xリング、Tリング等のリング形状又はシート形状等や、金属材料や樹脂材料と接着等で組み合わせた複合体等その目的に応じて適宜選ばれる。本発明のゴム部材の大きさも特に限定はなく、目的に応じ適宜選ばれる。
【0054】
本発明の搬送ローラは少なくとも搬送物と接する部分が本発明のゴム部材であり、例えば、中心軸を回転軸とした円筒状で前記円筒の側面に本発明のゴム部材を被覆したものや、周方向に溝を設けた円筒状もしくは円盤状搬送ローラ本体に前記溝に適合する形状とした本発明のゴム部材を設置したものが挙げられる。前記搬送ローラの少なくとも一式を搬送装置内に設置して前記ガラス板等を搬送する。
【0055】
本発明の搬送ローラは、搬送物である前記ガラス板などを搬送した際に、前記搬送ローラのゴム部材から発塵した摩耗粉が前記ガラス板に極めて粘着し難いことに加え、前記ガラス板の洗浄やエッチングに使用される薬品(例えば、りん酸、硝酸、酢酸、混合酸(りん酸、硝酸及び酢酸の混合溶液等)、塩酸、しゅう酸溶液、過酸化水素水又は次亜塩素酸ナトリウム溶液等)に対する前記ゴム部材の耐性が優れることから、例えばフラットパネルディスプレイ製造装置又は板ガラス製造装置等に使用される、ガラス板搬送用の搬送ローラとして、好適に使用できる。前記ガラス板搬送用以外の搬送ローラであっても、前記搬送ローラのゴム部材から発塵した摩耗粉の搬送物への粘着の低減、及び/又は耐薬品性等が要求される搬送ローラとして好適に使用できる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例等で使用した材料は以下のとおりである。
【0057】
前記フッ素ゴムとしては、
・ダイエルG−912(ダイキン工業社製):過酸化物架橋系ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合ゴム、フッ素含有率71質量%
・ダイエルG−952(ダイキン工業社製):過酸化物架橋系ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合ゴム、フッ素含有率69質量%
・テクノフロンP 757(ソルベイ ソレクシス社製):過酸化物架橋系ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合ゴム、フッ素含有率67質量%
・バイトンETP−600S(デュポンエラストマー社製):過酸化物架橋系テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル−エチレン系共重合ゴム、フッ素含有率67質量%
・ダイエルG−801(ダイキン工業社製):過酸化物架橋系ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン系共重合ゴム、フッ素含有率66質量%、
・バイトンE−60C(デュポンエラストマー社製):ポリオール架橋系ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン系共重合ゴム、フッ素含有率66質量%
・バイトンB−61J(デュポンエラストマー社製):ポリオール架橋系ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合ゴム、フッ素含有率68質量%
・テクノフロンP959/30M(ソルベイ ソレクシス社製):過酸化物架橋系ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合ゴム、フッ素ゴム中のフッ素含有率67質量%、PTFE微粒子の平均粒子径約50nm、PTFE微粒子含有率30質量%(PTFE微粒子を含むフッ素ゴム)
【0058】
前記充填剤の一つである硫酸バリウムとしては、
・SS−50(堺化学工業社製):平均粒径0.1μm
・BF−21F(堺化学工業社製):平均粒径0.5μm
【0059】
前記充填剤の一つであるPTFEとしては、
・Fluon PTFE L173JE(旭硝子社製):平均粒径7μm
・Algoflon L101-1(ソルベイ ソレクシス社製):平均粒径3μm
【0060】
前記充填剤の一つである合成シリカとしては、
・アエロジルR972(日本アエロジル社製):合成方法[乾式法]、表面処理[ジメチルシラン]、平均粒径16nm
・アエロジルNAX50(日本アエロジル社製):合成方法[乾式法]、表面処理[トリメチルシラン]、平均粒径30μm
【0061】
前記充填剤の一つである酸化チタンとしては、
・R−650(堺化学工業社製):結晶構造[ルチル型]、表面処理[ZnO・SiO
2・Al
2O
3]、平均粒径0.25μm)
・SA−1(堺化学工業社製):結晶構造[アナタース型]、表面処理[なし]、平均粒径0.15μm)
【0062】
有機過酸化物としては、
・パーヘキサ25B(日油社製):2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン
・ルペロックス101XL(アルケマ吉富社製):炭酸カルシウム:合成シリカ(乾式)の質量比が1:1である混合物55質量%に対し、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを45質量%含浸した粉体
【0063】
多官能性不飽和化合物としては、
・TAIC(日本化成社製):トリアリルイソシアヌレート(多官能性不飽和化合物)
・TAIC M60(日本化成社製):トリアリルイソシアヌレート(多官能性不飽和化合物)を珪藻土40質量%に対し、60質量%含浸させた粉体。TAIC担持品。
【0064】
前記金属元素含有化合物としては、
・酸化亜鉛2種(堺化学工業社製):酸化亜鉛(受酸剤)
・キョウワマグ150 (協和化学工業社製):酸化マグネシウム(受酸剤)
・カルディック2000 (近江化学工業社製):水酸化カルシウム(受酸剤)
【0065】
着色剤としては、
・Thermax Floform N990(Cancarb社製):カーボンブラック
・セイカファーストエロー2200(大日精化工業社製):有機顔料、C.I.Pigment Yellow(CAS.No.5468-75-7)
・Fast Orange R(山陽色素社製):有機顔料、C.I.Pigment Orange
【0066】
実施例1〜48、比較例1〜13、16、17について、表1〜7の配合に示す割合のゴム及び配合剤を、オープンロールにて混練してゴム組成物を調整した。次いで、ゴム組成物をプレス成形装置にて160℃で10分間プレス架橋した後、更に200℃で4時間二次架橋してゴム部材を得た。なお、表1〜7の配合の単位は質量部である。
【0067】
比較例14及び15は、ゴム組成物を170℃で10分間プレス架橋した後、更に230℃で24時間二次架橋した以外は、実施例1と同様に行い、ゴム部材を得た。
【0068】
なお、表2に示されるフッ素ゴムのうち、PTFEが事前に添加されているもの(テクノフロンP959/30M)は、表2に、硫酸バリウム、ポリテトラフルオロエチレン、合成シリカおよび酸化チタンからなる群から選ばれた一種以上からなる充填剤の総配合量を、テクノフロンP959/30M中にPTFEを含有する質量比率を用いて、算出して示した。
【0069】
また、表6に示される有機過酸化物及び多官能性不飽和化合物のうち、担体に担持されているもの(ルペロックス101XL及びTAIC M60)は、表6に、各成分(硫酸バリウム、ポリテトラフルオロエチレン、合成シリカおよび酸化チタンからなる群から選ばれた一種以上からなる充填剤)、前記充填剤を除く金属元素含有化合物、有機過酸化物および多官能性不飽和化合物)毎の総配合量を、担持品中の担体を含有する質量比率を用いて、算出して示した。
【0070】
実施例1〜48及び比較例1〜17で得られたゴム部材をサンプルとして、以下の(1)〜(6)の評価を行い、それらの結果に基づいて(7)総合評価を実施した。その結果を表1〜7に示す。
【0071】
(1)成形性
JIS B 2401記載のG25サイズのOリングを20個成形して目視で外観を確認し、多官能性不飽和化合物の重合物と思われる析出物や、スコーチによる成形不良、ゴムの融合不良等、配合組成に起因すると思われる異常が確認されたものを外観不良とし、以下の基準にて評価した。
○ : 成形品の外観不良品が1個以下
× : 成形品の外観不良品が2個以上
【0072】
(2)耐薬品性
試験試料をJIS B 2401記載のG25サイズのOリング3個を、試験溶液150mlに、70℃168時間浸漬した後の体積変化率を求めた。体積変化率はJISK 6258に準拠して測定し、以下の基準で評価した。
○ : 体積変化率が10%以下
× : 体積変化率が10%を超える
【0073】
なお、使用した試験溶液は、ガラス板の洗浄やエッチングとして使用される薬品の中で代表的なものとして、以下に示す7種類を選定した。
・硝酸:60〜61質量%硝酸試薬(JIS K 8541)特級
(和光純薬工業社製)
・酢酸:50質量%酢酸溶液:蒸留水100mlに99.7%以上酢酸試薬
(JIS K 8355)特級(和光純薬工業社製)100gを加えて調整。
・りん酸:85質量%以上りん酸試薬(JIS K 9005)特級
(和光純薬工業社製)
・塩酸:35〜37質量%塩酸試薬(JIS K 8180)特級(和光純薬工業社製)
・過酸化水素水:10質量%過酸化水素水として、蒸留水200mlに
約30%過酸化水素試薬(JIS K 8230)特級
(和光純薬工業社製)100mlを加えて調整。
・次亜塩素酸ナトリウム溶液:有効塩素濃度5質量%以上次亜塩素酸ナトリウム溶液
化学用(和光純薬工業社製)
・しゅう酸溶液:5質量%しゅう酸溶液:蒸留水190mlに98%以上しゅう酸試薬
(和光純薬工業社製)10gを加えて調整。
【0074】
(3)摩耗粉の粘着性
図1に示す摩耗試験装置を用いてガラス板への摩耗粉の粘着性を確認した。即ち、JIS B 2401に記載のP20サイズの試験用Oリング10を質量2.5NのOリングホルダー20で把持し、試験用Oリング10と可動式架台30に固定したガラス板40(松浪硝子工業社製 大型スライドガラス)を、Oリングホルダー20の質量により圧接し、駆動装置(図示せず)によりガラス板40を固定した可動式架台30を1分間に50回の速さで一方向(矢印で図示)に往復摺動(ストローク50mm)させ、10000往復後にガラス板40を取り出し、ガラス板40上に付着している摩耗粉を目視で確認し、以下の基準で評価した。
○ : 摩耗粉は見られない、
又は摩耗粉が発生してガラス板表面に付着しているが、
100ccポリエチレン製洗浄瓶を使用してエタノールを
かけ流すと容易に除去できる。
× : 摩耗粉がOリングの摺動方向に伸びてガラス板表面に
粘着している状態が観察される、
あるいは100ccポリエチレン製洗浄瓶を使用して
エタノールをかけ流しても容易に除去できない摩耗粉が
付着している。
【0075】
なお、固定台50に固定したホルダー固定架台60の上部に設けた円孔に、Oリングホルダー20を挿着することにより、試験装置稼動中に、Oリングホルダー20が、可動式架台30の往復摺動に追動せず、可動式架台30の往復摺動方向と垂直方向には自由に運動できるようにした。この時、Oリングホルダー20とホルダー固定架台60は、Oリングホルダー挿着部Iで、Oリングホルダー20の前記運動に影響がない程度に近接しており、Oリングホルダー挿着部I以外のいずれの部位においても接触しない。
【0076】
また、
図2に示すとおり、Oリングホルダー20のOリング固定溝は、試験用Oリング10が脱落しないように、あり溝形状とした。Oリング固定溝のサイズは、Oリング固定溝中心径φ=22.2mm、Oリング固定溝開口幅d=2.22mm、Oリング固定溝深さh=1.8mm、あり溝角度θ=66.6°、あり溝底半径r1=0.2mm、あり溝開口部エッジ半径r2=0.2mmとした。
【0077】
(4)圧縮永久ひずみ
JIS K 6262に準拠し、大形試験片を用いて、25%圧縮、200℃70時間の試験条件で試験し、以下の基準で評価した。
○ : 圧縮永久ひずみが30%以下
× : 圧縮永久ひずみが30%を超える
【0078】
(5)引張応力緩和
JIS K 6263引張応力緩和試験Aに準拠し、試験片形状短冊1号形、試験温度40℃、100mm/minで20%伸張し、30分後の引張応力緩和を測定し、以下の基準で評価した。
○ : 引張応力緩和が10%以下
× : 引張応力緩和が10%を超える
【0079】
(6)硬さ
JIS K 6253に準拠し、タイプAデュロメータによる瞬間値(加圧板を試験片に接触させた瞬間に読み取った数値)を測定し、以下の基準で評価した。
○ : 55〜90 (但し、65〜80を◎とした)
× : 55未満、又は90を超える
【0080】
(7)総合評価
前記(1)〜(6)の試験結果から、以下の基準にて評価した。
○: 評価(1)〜(6)において、○もしくは◎であるもの
×: 評価(1)〜(6)において、×が一つ以上あるもの
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
【0088】
表1〜7に示すように、着色剤を含まない実施例(実施例1〜7および実施例11〜48)は、白、乳白色、淡黄色または淡褐色であり、実施例8〜10に示すように、実施例を着色剤で着色しても、総合評価で合格である。また、表1〜7に示すように、本発明の実施例1〜48は、耐薬品性試験において体積変化率が10%以下であり、摩耗粉の粘着性試験において、摩耗粉が見られない、又は摩耗粉が発生してガラス板表面に付着しているが容易に除去できることから、搬送ローラに用いるゴム部材として優れた性能を有している。
【0089】
これに対し、現行使用されている高価で特殊な耐薬品性フッ素ゴムである過酸化物架橋系テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル−エチレン系共重合ゴムを用いる比較例2、4、6および9や、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン系共重合ゴムを用いる比較例3、5、7および10は、いずれも発塵した摩耗粉が搬送物へ粘着しやすく、また、前記金属元素含有化合物の配合量が三元FKM系共重合ゴム100質量部当たり0.5質量部を超える比較例11〜15は耐薬品性が劣っていた。なお、比較例14及び比較例15は、いずれもポリオール架橋系のフッ素ゴムを含むが、ポリオール架橋系樹脂組成物の場合、無機配合剤である受酸剤を添加する必要があるため、比較例14及び比較例15には一般的な配合量の受酸剤を処方した。