特許第5722063号(P5722063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722063
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】開閉装置および開閉装置操作機構
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/42 20060101AFI20150430BHJP
   H01H 33/40 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   H01H33/42 Q
   H01H33/40 C
   H01H33/40 E
   H01H33/40 G
   H01H33/42 K
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-18481(P2011-18481)
(22)【出願日】2011年1月31日
(65)【公開番号】特開2012-160308(P2012-160308A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2013年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】395002434
【氏名又は名称】東芝変電機器テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸島 敬
(72)【発明者】
【氏名】小林 義賢
(72)【発明者】
【氏名】網田 芳明
(72)【発明者】
【氏名】清水 正治
【審査官】 出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−032560(JP,A)
【文献】 特開2009−238700(JP,A)
【文献】 特開2007−294363(JP,A)
【文献】 特開平09−180593(JP,A)
【文献】 特開2003−068172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/42
H01H 33/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉装置の可動接点を往復駆動して、その開閉装置を遮断状態と投入状態との間で相互に移行させる開閉装置操作機構であって、
支持構造体と、
前記支持構造体に対して回転可能に配設された投入シャフトと、
前記投入シャフトに固定され、前記可動接点に連動して揺動可能なメインレバーと、
前記投入シャフトの回転に応じて、前記遮断状態から投入状態に移行するとき蓄勢され、前記投入状態から遮断状態に移行するときに放勢されるように配設された遮断ばねと、
前記投入シャフトの回転軸とほぼ平行な回転軸の周りに前記支持構造体に対して回転可能に配設されたサブシャフトと、
前記サブシャフトに固定されて揺動するサブレバーと、
前記サブレバーの先端および前記メインレバーを互いに回転自在に連結する主副連結リンクと、
前記投入シャフトの回転に応じて前記サブシャフトを揺動させるカム機構と、
前記サブシャフトに固定されて揺動可能なラッチレバーと、
前記ラッチレバーの先端に取り付けられて回転可能なラッチローラピンと、
前記投入シャフトの回転軸にほぼ平行な回転軸の周りを前記支持構造体に対して回転可能に配設されたトリガーレバーと、
前記トリガーレバーの先端に取り付けられて回転可能なトリガーローラピンと、
前記トリガーレバーを所定の向きに回転するように付勢するトリガーレバー復帰ばねと、
前記トリガーレバーの回転軸と異なる位置で該トリガーレバーに固定されて前記投入シャフトの回転軸にほぼ平行な回転軸の周りに回転可能に配設され、前記ラッチローラピンと係合可能な先端部を有するラッチと、
前記ラッチを所定の向きに回転するように付勢するラッチ復帰ばねと、
前記投入シャフトの回転軸にほぼ平行な回転軸の周りを前記支持構造体に対して回転可能に配設され、前記トリガーローラピンと係合可能な先端部を有するソレノイドレバーと、
前記ソレノイドレバーを所定の向きに回転するように付勢するソレノイドレバー復帰ばねと、
前記ソレノイドレバー復帰ばねの付勢に抗して駆動して、前記ソレノイドレバーを押し動かし、前記投入状態から遮断状態に移行させるための遮断用電磁ソレノイドと、
を有し、
前記投入状態から遮断状態に移行するときに、前記ソレノイドレバーが前記ソレノイドレバー復帰ばねの付勢の向きと逆方向に回転するように前記遮断用電磁ソレノイドにより前記ソレノイドレバーが押されて回転し、前記トリガーローラピンと前記ソレノイドレバーの係合が外れて、前記ラッチローラピンからの付勢力により偏心ピンおよびトリガーレバーが回転し、前記ラッチローラピンと前記ラッチの先端部の係合が外れて、これにより、前記遮断ばねの放勢により前記ラッチレバーが回転するように構成されていること、
を特徴とする開閉装置操作機構。
【請求項2】
前記トリガーレバーの回転軸中心部で該トリガーレバーに固定されて前記支持構造体に対して回転可能に支持され、かつ、前記トリガーレバーの回転軸中心と異なる位置を回転軸中心として前記ラッチを回転可能に支持する偏心ピンを有すること、を特徴とする請求項1に記載の開閉装置操作機構。
【請求項3】
前記トリガーローラピンに係合可能なソレノイドレバーの先端部は、前記投入状態における該トリガーローラピンの回転軸中心と該ソレノイドレバーの回転軸中心とを結ぶ直線に垂直な平面をなすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の開閉装置操作機構
【請求項4】
前記トリガーローラピンに係合可能なソレノイドレバーの先端部は、前記投入状態における該トリガーローラピンの回転軸中心と該ソレノイドレバーの回転軸中心とを結ぶ直線上に曲率中心軸を有する凸円筒面であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の開閉装置操作機構。
【請求項5】
前記ラッチローラピンに係合可能なラッチの先端部は、前記投入状態における該ラッチローラピンの回転軸中心と該ラッチの回転軸中心とを結ぶ直線に垂直な平面をなすことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の開閉装置操作機構。
【請求項6】
前記ラッチローラピンに係合可能なラッチの先端部は、前記投入状態における該ラッチローラピンの回転軸中心と該ラッチの回転軸中心とを結ぶ直線上に中心を有する凸円筒面であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の開閉装置操作機構。
【請求項7】
前記ラッチに固定したラッチピンと、
前記ラッチピンの外径より大きい内径を持ち、前記ラッチピンの径方向外周を囲むように配置されて前記ラッチピンの径方向に移動可能なリングと、
をさらに有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の開閉装置操作機構。
【請求項8】
前記投入状態の前後に前記ラッチの先端部と前記ラッチローラピンとが係合しているときにその係合する位置の片側側面で前記ラッチローラピンと接することが可能で前記ラッチの先端部から突起した先端突起部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の開閉装置操作機構。
【請求項9】
前記投入状態に入る直前に前記ラッチローラピンと前記先端突起部とが接する際に生ずる振動を吸収する振動吸収部材が前記先端突起部に取り付けられていることを特徴とする請求項8に記載の開閉装置操作機構。
【請求項10】
前記投入シャフトに固定された投入レバーと、
前記投入レバーに対して回転自在に接合された投入リンクと、
前記投入リンクの先端と前記支持構造体の間に配置されて前記投入リンクの先端を前記投入シャフトから離す方向に付勢する投入ばねと、
を有すること、
を特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の開閉装置操作機構。
【請求項11】
前記投入ばねは、前記投入シャフトの回転に応じて、前記投入状態または前記遮断状態において蓄勢され、前記遮断状態から前記投入状態に移行するときに放勢されるように配設されていること、
を特徴とする請求項10に記載の開閉装置操作機構。
【請求項12】
前記投入レバーの先端に配置された爪と、前記爪と係合する保持装置とをさらに有し、
前記保持装置は、半円柱部を持つ投入用係止レバーと、前記投入用係止レバーを所定の方向に付勢する復帰ばねと、前記保持装置を前記復帰ばねの付勢に抗して駆動して、前記投入用係止レバーを動かし、前記遮断状態から前記投入状態へ移行させるための投入用電磁ソレノイドと、を有すること、
を特徴とする請求項10または請求項11に記載の開閉装置操作機構。
【請求項13】
往復移動可能な可動接点と、この可動接点を駆動する操作機構とを有し、前記可動接点の移動によって遮断状態と投入状態との間で相互に移行しうる開閉装置であって、前記操作機構は、
支持構造体と、
前記支持構造体に対して回転可能に配設された投入シャフトと、
前記投入シャフトに固定され、前記可動接点に連動して揺動可能なメインレバーと、
前記投入シャフトの回転に応じて、前記遮断状態から投入状態に移行するとき蓄勢され、前記投入状態から遮断状態に移行するときに放勢されるように配設された遮断ばねと、
前記投入シャフトの回転軸とほぼ平行な回転軸の周りに前記支持構造体に対して回転可能に配設されたサブシャフトと、
前記サブシャフトに固定されて揺動するサブレバーと、
前記サブレバーの先端および前記メインレバーを互いに回転自在に連結する主副連結リンクと、
前記投入シャフトの回転に応じて前記サブシャフトを揺動させるカム機構と、
前記サブシャフトに固定されて揺動可能なラッチレバーと、
前記ラッチレバーの先端に取り付けられて回転可能なラッチローラピンと、
前記投入シャフトの回転軸にほぼ平行な回転軸の周りを前記支持構造体に対して回転可能に配設されたトリガーレバーと、
前記トリガーレバーの先端に取り付けられて回転可能なトリガーローラピンと、
前記トリガーレバーを所定の向きに回転するように付勢するトリガーレバー復帰ばねと、
前記トリガーレバーの回転軸と異なる位置で該トリガーレバーに固定されて前記投入シャフトの回転軸にほぼ平行な回転軸の周りに回転可能に配設され、前記ラッチローラピンと係合可能な先端部を有するラッチと、
前記ラッチを所定の向きに回転するように付勢するラッチ復帰ばねと、
前記投入シャフトの回転軸にほぼ平行な回転軸の周りを前記支持構造体に対して回転可能に配設され、前記トリガーローラピンと係合可能な先端部を有するソレノイドレバーと、
前記ソレノイドレバーを所定の向きに回転するように付勢するソレノイドレバー復帰ばねと、
前記ソレノイドレバー復帰ばねの付勢に抗して駆動して、前記ソレノイドレバーを押し動かし、前記投入状態から遮断状態に移行させるための遮断用電磁ソレノイドと、
を有し、
前記投入状態から遮断状態に移行するときに、前記ソレノイドレバーが前記ソレノイドレバー復帰ばねの付勢の向きと逆方向に回転するように前記遮断用電磁ソレノイドにより前記ソレノイドレバーが押されて回転し、前記トリガーローラピンと前記ソレノイドレバーの係合が外れて、前記ラッチローラピンからの付勢力により偏心ピンおよびトリガーレバーが回転し、前記ラッチローラピンと前記ラッチの先端部の係合が外れて、これにより、前記遮断ばねの放勢により前記ラッチレバーが回転するように構成されていること、
を特徴とする開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気回路を開閉する開閉装置とその操作機構に関し、特に、高電圧電流を短時間で遮断するのに好適なものに係る。
【背景技術】
【0002】
一般に、開閉装置の操作機構は、大出力が得られる油圧操作力を用いたものや中・低出力のばね操作力を用いたものがある。前者を油圧操作機構と呼び、後者をばね操作機構と呼ぶ。特に近年、開閉装置の一種であるガス遮断器の消弧室の小型化が進み、少ない操作力で事故電流等を遮断できるようになり、ばね操作機構の適用が多くなっている。しかし、超高電圧クラスのガス遮断器では、2サイクル遮断(交流の2サイクル分の時間以内に遮断するもの)という高速動作性能が要求される。従来のばね操作機構では3サイクル遮断程度の動作性能が一般的であり、ばね力の保持機構や保持制御機構の応答性の問題のため、2サイクル遮断の実現は容易ではなかった。
【0003】
このような開閉装置の操作機構の第1の従来例として、特許文献1に開示された技術が知られている。特許文献1の技術では、遮断ばねの力は出力レバーを介して、ラッチとオープロップ(O−プロップ(開係止レバー))およびキャッチで構成される保持機構により保持されている。そのような構成のばね操作機構の遮断動作は、保持制御機構であるソレノイドにトリップ電流が流されるとソレノイドのプランジャがキャッチを動作させ、キャッチとプロップの係合が外れ、さらに出力レバーとラッチの係合が外れ出力レバーが回転し遮断ばね力が解放されることにより行なわれる。
【0004】
開閉装置の操作機構の第2の従来例として、特許文献2に開示された技術が知られている。特許文献2のばね操作機構では、遮断ばね力を保持するために引き外しレバーと保持レバーが配置してあり、保持レバーは遮断動作時には遮断ばねの力ではなく、加速ばねの力により動作させ、遮断ばね力を解放させる構造を採用している。
【0005】
開閉装置の操作機構の第3の従来例として、特許文献3に開示された技術が知られている。特許文献3のばね操作機構では、遮断ばねの力は出力レバーを介して、ラッチとリングと引き外しリンク機構で構成される保持機構により保持されている。そのような構成のばね操作機構の遮断動作は、ソレノイドにトリップ電流が流されるとソレノイドのプランジャが引き外しリンクを動作させ、出力レバーとラッチの係合が外れ、出力レバーが回転し遮断ばね力が解放されることにより行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−294363号公報
【特許文献2】特許第3497866号公報
【特許文献3】特開2009−32560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した開閉装置の操作機構の第1の従来例(特許文献1の例)においては、遮断ばね力の解放(遮断動作)は、ソレノイドの励磁によるキャッチの動作と、オープロップの動作と、遮断ばねを含む電気的な接触子の動作の三動作から構成されている。これらの動作関係を図19に示す。横軸は時間軸を示しており、縦軸は各部のストロークを示している。図19において最下部の曲線はトリップ電流の波形を示し、その上にキャッチの動作曲線(ストローク)を示してある。その上にはオープロップと遮断ばねのストロークを示してある。最上部にはガス遮断器の消弧室内部の接触子の通電信号を示している。
【0008】
トリップ電流を印加した時間を基点としキャッチが動作しオープロップの動作が開始されるまでの時間をT1とする。さらにオープロップの動作開始から遮断ばねの動作開始までの時間をT2とする。T3は遮断ばねの動作開始から開極点に達するまでの時間を示す。開極時間をT0とすると、
T0=T1+T2+T3 (1)
の関係が成立する。
【0009】
2サイクル遮断を実現するためには開極時間T0をある値以下にする必要がある。このように一般のばね操作機構ではトリップ電流印加後、キャッチから遮断ばねまで全て同時に動作が開始されるのではなく、キャッチがある程度動作した後にオープロップとの係合が外れることにより、オープロップの動作が開始され、オープロップがある程度動作してから遮断ばねが動作する。すなわち、遮断ばね力を保持している機構は、段階的に動作するため、T0を短縮するためにはT1、T2、T3のそれぞれの時間を短縮する必要がある。
【0010】
しかし、T3は消弧室の可動部重量と開極速度、駆動エネルギーから遮断ばね力が決定するため、時間短縮には限度がある。T2を短縮させる方法としては、オープロップの軽量化と遮断ばね力を保持する力(保持力)を大きくすることにより高速に動作させることができる。しかし、この方法だと保持力が大きくなると強度向上のためオープロップを大型化する必要があり軽量化には限界が生じる。したがって保持力増大による高速化には限界が生じることになる。また、保持力を大きくすることによりオープロップとキャッチとの係合部にも大きな力が作用し、キャッチが大型化し、さらにキャッチを動作させるため大きな電磁力を持つソレノイドが必要となってくる。
【0011】
現在、ソレノイドの高出力化のため、大型のコンデンサを利用した励磁方法がとられているが、ソレノイドに流せる電流値には規格で定められた上限値があるため、高出力化にも限度がある。このように、従来のばね操作機構では、容易に開極時間を短縮することが困難であった。
【0012】
また、第2の従来例(特許文献2の例)においても、遮断ばね力の解放過程は電磁石により引き外しフックが動作し、リセットレバーと加速ばねと保持レバーがほぼ同時に動作し、引き外しレバーと遮断ばねが同時に動作する三動作から構成されている。この従来例では遮断ばねの保持力(加圧力)の方向を保持レバーのほぼ回転中心としたことにより保持レバーの動作に要する力の低減をしている。
【0013】
また、二番目の動作に含まれている保持レバーの動きを加速ばねによって高速化し動作時間短縮を図っている。しかし、この二番目の動作時間を零秒にすることは物理的に困難であり、開極時間全体を大幅に短縮することは第1の従来例で説明した理由も含めて困難である。
【0014】
また、引き外しレバーと保持レバーが係合する部分への加圧力の方向を保持レバーのほぼ回転中心方向としているため、外部振動による保持レバーへの強制加振により、引き外しレバーが遮断動作方向に回転し、遮断指令なしの状態でも動作してしまう可能性がある。また、引き外しレバーに配置されたローラと保持レバーとの係合面の変形等により加圧力の方向が保持レバーの回転中心のどちらに向くか安定しておらず、加圧力が保持レバーの遮断動作する方向に作用した場合、遮断指令を入力しなくても引き外しレバーが外れてしまう可能性がある。
【0015】
さらに特許文献2には記載されていないが、投入動作においてローラが保持レバーを押しのけて再び係合する際の衝撃力で保持レバーが遮断方向に動作し、遮断指令無しで遮断動作することは十分考えられる。このように第2の従来例では大幅に開極時間を短縮することができず、遮断ばね力の保持の安定性が不足する可能性があった。
【0016】
また、第3の従来例(特許文献3の例)においては、ソレノイドが励磁されると、引き外しレバーと引き外しリンクを介し、ラッチが直接駆動されラッチとローラピンの係合を引き外す動作と、遮断ばねが動作する二動作により遮断動作が行なわれる。このように二動作にするため、遮断動作時間を短縮できるようになった。これは開極時間を表す式(1)において、T2がなくなった状態と同じとなる。しかし、ラッチが駆動してからローラピンとの係合が外れるまでは、遮断ばね力よりラッチを引き外す方向と逆向きの回転力がラッチにかかるため、遮断動作時間の大幅な短縮には至っていない。
【0017】
また、ラッチ、引き外しレバー、および、引き外しリンクが一体となって動作するため可動部質量が大きくなり、高速動作の妨げとなっている。
【0018】
また、ラッチと引き外しリンク間、および、引き外しリンクと引き外しレバー間はピン結合で構成されているため、僅かであるがギャップが存在するため、高速応答の妨げとなる。
【0019】
さらに、投入動作完了直前でラッチはラッチ復帰ばねの付勢力により投入位置へ復帰するが、ラッチと引き外しリンクが一体で動作するので可動部質量は大きくなる。そのため、ラッチ復帰ばね力が不十分な場合、ラッチの復帰が間に合わず、投入動作を失敗する可能性がある。その対策として、ラッチ復帰ばね力を強くすると、開極時間は長くなる。
【0020】
本発明の実施形態の課題は、電気回路の開閉を行なう開閉装置とその操作機構において、遮断ばね力を解放するまでの時間を短縮し、開極時間全体を短縮させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態に係る開閉装置操作機構は、開閉装置の可動接点を往復駆動して、その開閉装置を遮断状態と投入状態との間で相互に移行させる開閉装置操作機構である。この開閉装置操作機構は、支持構造体と、前記支持構造体に対して回転可能に配設された投入シャフトと、前記投入シャフトに固定され、前記可動接点に連動して揺動可能なメインレバーと、前記投入シャフトの回転に応じて、前記遮断状態から投入状態に移行するとき蓄勢され、前記投入状態から遮断状態に移行するときに放勢されるように配設された遮断ばねと、前記投入シャフトの回転軸とほぼ平行な回転軸の周りに前記支持構造体に対して回転可能に配設されたサブシャフトと、前記サブシャフトに固定されて揺動するサブレバーと、前記サブレバーの先端および前記メインレバーを互いに回転自在に連結する主副連結リンクと、前記投入シャフトの回転に応じて前記サブシャフトを揺動させるカム機構と、前記サブシャフトに固定されて揺動可能なラッチレバーと、前記ラッチレバーの先端に取り付けられて回転可能なラッチローラピンと、前記投入シャフトの回転軸にほぼ平行な回転軸の周りを前記支持構造体に対して回転可能に配設されたトリガーレバーと、前記トリガーレバーの先端に取り付けられて回転可能なトリガーローラピンと、前記トリガーレバーを所定の向きに回転するように付勢するトリガーレバー復帰ばねと、前記トリガーレバーの回転軸と異なる位置で該トリガーレバーに固定されて前記投入シャフトの回転軸にほぼ平行な回転軸の周りに回転可能に配設され、前記ラッチローラピンと係合可能な先端部を有するラッチと、前記ラッチを所定の向きに回転するように付勢するラッチ復帰ばねと、前記投入シャフトの回転軸にほぼ平行な回転軸の周りを前記支持構造体に対して回転可能に配設され、前記トリガーローラピンと係合可能な先端部を有するソレノイドレバーと、前記ソレノイドレバーを所定の向きに回転するように付勢するソレノイドレバー復帰ばねと、前記ソレノイドレバー復帰ばねの付勢に抗して駆動して、前記ソレノイドレバーを押し動かし、前記投入状態から遮断状態に移行させるための遮断用電磁ソレノイドと、を有する。前記投入状態から遮断状態に移行するときに、前記ソレノイドレバーが前記ソレノイドレバー復帰ばねの付勢の向きと逆方向に回転するように前記遮断用電磁ソレノイドにより前記ソレノイドレバーが押されて回転し、前記トリガーローラピンと前記ソレノイドレバーの係合が外れて、前記ラッチローラピンからの付勢力により偏心ピンおよびトリガーレバーが回転し、前記ラッチローラピンと前記ラッチの先端部の係合が外れて、これにより、前記遮断ばねの放勢により前記ラッチレバーが回転するように構成されている。
【0022】
また、本発明の実施形態に係る開閉装置は、往復移動可能な可動接点と、この可動接点を駆動する操作機構とを有し、前記可動接点の移動によって遮断状態と投入状態との間で相互に移行しうる開閉装置である。前記操作機構は、支持構造体と、前記支持構造体に対して回転可能に配設された投入シャフトと、前記投入シャフトに固定され、前記可動接点に連動して揺動可能なメインレバーと、前記投入シャフトの回転に応じて、前記遮断状態から投入状態に移行するとき蓄勢され、前記投入状態から遮断状態に移行するときに放勢されるように配設された遮断ばねと、前記投入シャフトの回転軸とほぼ平行な回転軸の周りに前記支持構造体に対して回転可能に配設されたサブシャフトと、前記サブシャフトに固定されて揺動するサブレバーと、前記サブレバーの先端および前記メインレバーを互いに回転自在に連結する主副連結リンクと、前記投入シャフトの回転に応じて前記サブシャフトを揺動させるカム機構と、前記サブシャフトに固定されて揺動可能なラッチレバーと、前記ラッチレバーの先端に取り付けられて回転可能なラッチローラピンと、前記投入シャフトの回転軸にほぼ平行な回転軸の周りを前記支持構造体に対して回転可能に配設されたトリガーレバーと、前記トリガーレバーの先端に取り付けられて回転可能なトリガーローラピンと、前記トリガーレバーを所定の向きに回転するように付勢するトリガーレバー復帰ばねと、前記トリガーレバーの回転軸と異なる位置で該トリガーレバーに固定されて前記投入シャフトの回転軸にほぼ平行な回転軸の周りに回転可能に配設され、前記ラッチローラピンと係合可能な先端部を有するラッチと、前記ラッチを所定の向きに回転するように付勢するラッチ復帰ばねと、前記投入シャフトの回転軸にほぼ平行な回転軸の周りを前記支持構造体に対して回転可能に配設され、前記トリガーローラピンと係合可能な先端部を有するソレノイドレバーと、前記ソレノイドレバーを所定の向きに回転するように付勢するソレノイドレバー復帰ばねと、前記ソレノイドレバー復帰ばねの付勢に抗して駆動して、前記ソレノイドレバーを押し動かし、前記投入状態から遮断状態に移行させるための遮断用電磁ソレノイドと、を有する。前記投入状態から遮断状態に移行するときに、前記ソレノイドレバーが前記ソレノイドレバー復帰ばねの付勢の向きと逆方向に回転するように前記遮断用電磁ソレノイドにより前記ソレノイドレバーが押されて回転し、前記トリガーローラピンと前記ソレノイドレバーの係合が外れて、前記ラッチローラピンからの付勢力により偏心ピンおよびトリガーレバーが回転し、前記ラッチローラピンと前記ラッチの先端部の係合が外れて、これにより、前記遮断ばねの放勢により前記ラッチレバーが回転するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態の開閉装置の操作機構の保持装置と保持制御装置の投入状態を示す正面図。
図2図1の開閉装置のばね操作機構の遮断状態を示す展開正面図。
図3図1の開閉装置のばね操作機構の投入状態を示す展開正面図。
図4図1の開閉装置の遮断動作途中の状態を示す要部正面図。
図5図1の開閉装置の遮断動作途中の図4の状態に続く状態を示す要部正面図。
図6図1の開閉装置の遮断動作途中の図5の状態に続く状態を示す要部正面図。
図7図1の開閉装置の遮断動作途中の図6の状態に続く状態を示す要部正面図。
図8図1の開閉装置の投入動作途中の状態を示す要部正面図。
図9図1の開閉装置の投入動作途中の図8の状態に続く状態を示す要部正面図。
図10図1のソレノイドレバー先端部付近を拡大して示す正面図。
図11】本発明の第2の実施形態の開閉装置の操作機構の保持装置の投入状態を示す正面図。
図12】本発明の第3の実施形態の開閉装置の操作機構の保持装置の投入状態を示す正面図。
図13図12のソレノイドレバー先端部付近を拡大して示す正面図。
図14図12のラッチ先端部付近を拡大して示す正面図。
図15】本発明の第4の実施形態の開閉装置の操作機構の保持装置の投入状態を示す正面図。
図16図15の開閉装置の投入動作完了直前の状態を示す要部正面図。
図17図15の開閉装置の投入動作完了直前の図16の状態に続く状態を示す要部正面図。
図18】本発明の第5の実施形態の開閉装置の操作機構の保持装置の投入状態を示す正面図。
図19】従来の開閉装置の遮断動作を説明するタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る開閉装置の操作機構の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
[第1の実施形態]
まず、図1図10を用いて本発明に係る開閉装置の操作機構の第1の実施形態を説明する。図1は、開閉装置の操作機構の保持装置と保持制御装置の投入状態を示す正面図である。図2は、図1で示した装置を含むばね操作機構の遮断状態を示す図である。図3は、図1で示した装置を含むばね操作機構の投入状態を示す図である。図4ないし図7は、投入状態から遮断状態に移行する途中の遮断動作過程を示す図である。図8および図9は、遮断状態から投入状態に移行する途中の投入動作過程を説明する図である。図10は、図1のソレノイドレバー先端部付近を拡大して示す正面図である。
【0026】
図2および図3において、リンク機構1の左方に可動接点2が連結されている。図2のようにリンク機構1が右方向に移動したときに可動接点2が開となって遮断状態となり、図3のようにリンク機構1が左方向に移動したときに可動接点2が閉となって投入状態となるように構成されている。リンク機構1の一端はメインレバー3の先端に回転自在に係合し、メインレバー3は、投入シャフト4に回転自由に固定されている。投入シャフト4はフレーム(支持構造体)5に固定された軸受(図示せず)で回転可能に支持されている。
【0027】
遮断ばね6はフレーム5の取り付け面5aにその一端が固定されており、他端は遮断ばね受け7に嵌着されている。遮断ばね受け7にはダンパー8が固着されており、ダンパー8の内部には流体が封入されており、ピストン8aが並進摺動自在に配置されている。ダンパー8の一端は遮断ばねリンク9に固着されており、メインレバー3のピン3aに回転自由に取り付けられている。
【0028】
フレーム5にはサブシャフト10が回転自由に配置されており、サブシャフト10にサブレバー11が固着されている。サブレバー11の先端にはピン11aが配置されており、メインレバー3に配置されたピン3bとピン11aは主副連結リンク20で連結されている。サブシャフト10にはラッチレバー12が固着されており、その先端にはラッチローラピン12aが回転自由に嵌着されている。さらに、サブシャフト10にはカムレバー13が固着されており、カムレバー13の先端にはカムローラ13aが回転自由に嵌着されている。
【0029】
投入ばね21はフレーム5の取り付け面5aにその一端が固定されており、他端は投入ばね受け22に嵌着されている。投入ばね受け22にはピン22aが配置されており、ピン22aは、投入シャフト4の端部に固着された投入レバー23のピン23aと、投入リンク24を介して連結されている。投入カム25は、投入シャフト4に固着されており、投入シャフト4の回転に従いカムローラ13aと離接自在に係合する。
【0030】
投入レバー23の一端には爪23bが配置されており、フレーム5に回転自由に配置された投入用係止レバー26に設けられた半円柱部26aと離接自在に係合している。また、投入用係止レバー26の一端には復帰ばね27が配置されており、復帰ばね27の他端はフレーム5に固定されている。復帰ばね27は圧縮ばねであり、投入用係止レバー26を時計方向に回転させるばね力が常に作用している。ただし、その回転はフレーム5に固着された投入用電磁ソレノイド28のプランジャ28aと投入用係止レバー26が係合することにより規制されている。
【0031】
図2に示す遮断状態では、投入リンク24の中心軸(ピン22aとピン23aの中心を結んだ軸)よりも投入シャフト4の中心4aが左側に位置しているので、投入レバー23には投入ばね21より反時計方向回転トルクが与えられている。しかし、爪23bと半円柱部26aの係合によりその回転が保持されて止められている。
【0032】
図1に示すように、係止レバー30には突起状の支持部30aが形成され、フレーム5に固着されたピン55と係合しているので、係止レバー30はフレーム5に対して固定されている。
【0033】
トリガーレバー31は係止レバー30の端部に回転自由に配置された偏心ピン32に固定されており、その先端にはトリガーローラピン31aが回転自由に嵌着されている。また、フレーム5とトリガーレバー31の間にはトリガーレバー復帰ばね33が配置され、トリガーレバー復帰ばね33の端部はフレーム5に固定されたピン5bと係合していて、このトリガーレバー復帰ばね33はトリガーレバー31を常に時計方向に回転させる力(トルク)を発生させている。このトリガーレバー復帰ばね33の時計方向回転は、フレーム5上に配置されたストッパーピン5cとトリガーレバー31が当接することにより規制される。
【0034】
ラッチ34は、トリガーレバー31の回転軸中心31bから偏心した位置に回転軸中心34aを持つように偏心ピン32の周りに回転自由で配置されている。また、ラッチ34には突起部34bが形成されている。係止レバー30とラッチ34間にはラッチ復帰ばね35が配置され、ラッチ復帰ばね35の端部は係止レバー30に固定されたピン30bと係合していて、このラッチ復帰ばね35はラッチ34を常に時計方向に回転させる力(トルク)を発生させている。このラッチ34の時計方向回転は、係止レバー30上に配置されたストッパーピン30cとラッチ34に配置された突起部34bが当接することにより規制される。ラッチ34の先端部34cは、ラッチローラピン12aの回転軸中心とラッチの回転軸中心34aとを結ぶ直線に垂直な平面で形成される。
【0035】
ラッチ34には、ラッチの先端部34cの片側側面から突起する先端突起部34dが形成されている。図1および図3に示す投入状態では、ラッチの先端部34cとラッチローラピン12aとが係合する位置の片側側面で、ラッチ復帰ばね35によるラッチ34を時計方向に回転させる力によって、先端突起部34dの側面がラッチローラピン12aの側面を押している。
【0036】
ソレノイドレバー36はフレーム5に固定された回転軸中心36bの周りに回転可能であって、回転軸中心36bの一方の側に延びた第一辺36cと回転軸中心36bから第1辺36cとは直角方向に延びた第2辺36dとを備えている。ソレノイドレバー36の第一辺36cの一端にはソレノイドレバー復帰ばね37が配置されており、ソレノイドレバー復帰ばね37の他端はフレーム5に固着されている。ソレノイドレバー復帰ばね37は引張りばねであり、ソレノイドレバー36を時計方向に回転させるばね力が常に作用している。ただし、その回転はフレーム5に固着されたストッパーピン5dとソレノイドレバー36の第一辺36cとが係合することにより規制される。
【0037】
図10に示すように、ソレノイドレバー36の第2辺36dのソレノイドレバー先端部36aの片側側面から突起するソレノイドレバー先端突起部36eは、トリガーローラピン31aの回転軸中心とソレノイドレバーの回転軸中心36bとを結ぶ直線に垂直な平面を有している。
【0038】
フレーム5に固定されている遮断用電磁ソレノイド38のプランジャ38aの先端はソレノイドレバー36に離接自在に係合しており、遮断指令が入力されるとソレノイドレバー36を反時計方向に回転させる。
【0039】
図1および図3に示す投入状態において、ラッチ34の先端部34cはラッチローラピン12aと係合し、ラッチローラピン12aがラッチ34の先端部34cをラッチ34の回転軸中心34aの向き(矢印E方向)に押す。このとき、トリガーレバー31の回転軸中心31bはラッチローラピン12aの中心とラッチ34の回転軸中心34aを結ぶ直線またはその延長線よりもサブシャフト10側にずれて位置しているため、トリガーレバー31および偏心ピン32は反時計方向の回転力が与えられる。しかし、トリガーレバー31の回転はトリガーローラピン31aとソレノイドレバー36の先端部36aとの係合により規制される。また、トリガーローラピン31aはソレノイドレバー36の先端部36aをソレノイドレバー36の回転軸中心36bの向きに押し、ソレノイドレバー36が反時計方向に回転しようとするのを止められる構造となっている。
【0040】
投入状態において、メインレバー3は、遮断ばね6が伸びようとするばね力によって常に時計方向に回転するトルクを受けている。メインレバー3に伝えられた力は、主副連結リンク20を介してサブレバー11に伝えられる。その力はサブレバー11を常に反時計方向に回転させるトルクとなり、同時にラッチレバー12も反時計方向に回転させようとする。
【0041】
ただし、投入状態ではラッチ34の先端部34cとラッチローラピン12aが係合しているためにラッチレバー12の反時計方向回転は規制され、それに続くサブレバー11から遮断ばね6に至るまでの部材は静止保持された状態となる。
【0042】
ここに示す実施形態では、投入シャフト4、サブシャフト10などの回転軸や各ピンの軸は、互いに平行であって図1ないし図10の紙面に垂直方向である。したがって、各部分の「回転」は2次元的に把握すればよい。
【0043】
(遮断動作)
このように構成された本実施の形態において、図1および図3に示す投入状態から図4ないし図7に示す状態を順に経て図2に示す遮断状態に至る遮断動作について説明する。
【0044】
まず、図1および図3に示す投入状態において、外部指令が入力されると遮断用電磁ソレノイド38が励磁され、プランジャ38aが矢印Aの方向に動作する。
【0045】
ソレノイドレバー36はプランジャ38aと係合するため反時計方向(矢印Bの方向)に回転し、ソレノイドレバー36の先端部36aとトリガーローラピン31aの係合が外れ、トリガーレバー31および偏心ピン32は反時計方向(矢印Cの方向)に回転する。すると、ラッチ34はラッチ34の先端部34cとラッチローラピン12aが係合した状態を保ちながら、遥動運動を始め、また、ラッチレバー12は遮断ばね6により反時計方向(矢印Dの方向)の回転力が与えられているため、反時計方向に回転する。この状態を示したのが図4である。
【0046】
このとき、ラッチローラピン12aはラッチ34の先端部34cをラッチ34の回転軸中心34aの向き(矢印Eの方向)に押しており、トリガーレバー31の回転軸中心31bは矢印Bよりサブシャフト10側にずれているため、偏心ピン32およびトリガーレバー31には反時計方向(矢印Cの方向)の回転力が与えられる。
【0047】
図4の状態に引き続き、ラッチレバー12はさらに反時計方向(矢印Dの方向)に回転する。また、偏心ピン32およびトリガーレバー31はさらに反時計方向(矢印Cの方向)に回転し、ラッチ34の突起部34bとストッパーピン30cが接触する。この状態を示したのが図5である。
【0048】
図5の状態に引き続き、ラッチレバー12はさらに反時計方向(矢印Dの方向)に回転する。また、偏心ピン32およびトリガーレバー31はさらに反時計方向(矢印Cの方向)に回転し、同時に、ラッチ34はストッパーピン30cと接触しながら反時計方向(矢印Fの方向)に回転する。この状態を示したのが図6である。この動作によりラッチ34の先端部34cとラッチローラピン12aの係合が外れる。
【0049】
図6の状態に引き続き、ラッチレバー12はラッチ34を押しのけながら、さらに反時計方向(矢印Dの方向)に回転する。この状態を図7に示す。
【0050】
図2は遮断動作終了状態を示している。ラッチ34はラッチ復帰ばね35(図1)により投入状態(図1図3)とほぼ同じ位置まで復帰している。トリガーレバー31もトリガーレバー復帰ばね33(図1)により投入状態(図1図3)とほぼ同じ位置まで復帰している。ソレノイドレバー36もソレノイドレバー復帰ばね37(図1)により投入状態(図1図3)とほぼ同じ位置まで復帰している。
【0051】
図3に示す投入状態において、ラッチ34とラッチローラピン12aの係合が外れると、ラッチレバー12とサブシャフト10に固着されたカムレバー13、サブレバー11が反時計方向(矢印G、H方向)に回転する。そして、メインレバー3が時計方向(矢印I方向)に回転し遮断ばね6とダンパー8は矢印J方向に動作する。リンク機構1とそれに連結された可動接点2が右方向に移動し、遮断動作が開始する。
【0052】
遮断ばね6がある一定距離伸びると、ピストン8aはフレーム5に固定されたストッパー5eに当接し、ダンパー8の制動力が発生し遮断ばね6の伸び動作を停止させ、それに連結されたリンクレバー類の動作も停止し遮断動作が完了する。その状態を示したのが図2である。
【0053】
(投入動作)
次に、図2に示す遮断状態から図8および図9に示す状態を順に経て図1および図3に示す投入状態に至る投入動作について説明する。
【0054】
図2は遮断状態で投入ばね21が圧縮されて蓄勢された状態を示す。外部指令が入力されると投入用電磁ソレノイド28が励磁され、プランジャ28aが矢印K方向に動作する。このとき、投入用係止レバー26はプランジャ28aと係合しているため反時計方向に回転する。すると半円柱部26aと爪23bの係合が外れ、投入レバー23と投入シャフト4は投入ばね21のばね力により反時計方向(矢印L方向)に回転し、投入ばね21は矢印M方向に伸びて放勢される。投入シャフト4に固着されている投入カム25は矢印Nの方向に回転し、カムローラ13aと係合する。カムローラ13aが投入カム25により押し込まれると、カムレバー13は時計方向(矢印O方向に回転し)、同時にサブレバー11は矢印Pの方向に回転する。
【0055】
サブレバー11の回転はメインレバー3に伝えられ、メインレバー3が反時計方向(矢印Q方向)に回転する。すると、リンク機構1とそれに連結された可動接点2が左方向に移動し、投入動作を行なう。メインレバー3の回転に伴い、遮断ばねリンク9は矢印R方向に動作し、遮断ばね6は圧縮されて蓄勢される。
【0056】
投入動作において図2の遮断状態からカムレバー13が時計方向(矢印O方向)に回転すると共に、カムレバー13とサブシャフト10に固着されたラッチレバー12も時計方向(矢印S方向)に回転する。この状態を示しているのが図8である。
【0057】
図8の状態に引き続き、ラッチローラピン12aによってラッチ34が反時計方向(矢印T方向)に回転する。この状態を示しているのが図9である。
【0058】
投入カム25とカムローラ13aの係合が無くなると、遮断ばね6が伸びる力により、ラッチローラピン12aは投入状態位置へ移動する。さらに、ラッチローラピン12aとラッチ34の係合がなくなると、ラッチ34はラッチ復帰ばね35の付勢力により投入状態位置まで復帰し、ラッチ34の先端部34cとラッチローラピン12aは再係合する(図1図3)。
【0059】
この再係合の際、ラッチローラピン12aがラッチ34の先端部34cをラッチ34の回転軸中心34aの向き(矢印E方向)に押しているので、トリガーレバー31および偏心ピン32は反時計方向(矢印C方向)に回転しようとするが、トリガーレバー31の回転はトリガーローラピン31aとソレノイドレバー36の先端部36aとの係合により規制される。また、トリガーローラピン31aはソレノイドレバー36の先端部36aをソレノイドレバー36の回転軸中心36bの向きに押すので、ソレノイドレバー36が反時計方向の回転が規制され、リンクレバー類の動作も停止し投入動作が完了する。その状態を示したのが図1および図3である。
【0060】
本実施の形態によれば、遮断指令が入力され遮断用電磁ソレノイド38が励磁されると、ソレノイドレバー36および偏心ピン32を介し、ラッチ34が直接駆動され、ラッチ34とラッチローラピン12aの係合を引き外す動作と、遮断ばね6が動作する二動作により遮断動作が行なわれる。このように従来のばね操作機構では三動作であったものを二動作にするため、遮断動作時間を大幅に短縮できるようになる。これは開極時間を表す式(1)において、T2がなくなった状態と同じとなるため、開極時間の短縮が可能となる。
【0061】
さらに、遮断指令が入力されてからラッチ34の先端部34cとラッチローラピン12aの係合が外れるまでは、偏心ピン32には常に反時計方向(矢印C方向)の回転力が与えられており、さらなる開極時間の短縮が可能となる。
【0062】
さらに、遮断用電磁ソレノイド38でラッチ34を直接駆動させるのではないので、ラッチ復帰ばね35の復元力による開極時間の影響は少ない。従って、ラッチ復帰ばね35の復元力を高めることにより、開極時間を延長させることなく、投入動作時のラッチ34の復帰を早め、投入動作安定性を向上させることができる。
【0063】
さらに、遮断ばね6の復元力を保持するソレノイドレバー36は、投入動作中、常に、投入動作終了時の位置で待機しているため、投入動作安定性を向上させることができる。
【0064】
また、ソレノイドレバー36の先端部36aの係合面が平面で構成され、投入時にはトリガーローラピン31aがソレノイドレバー36の先端部36aをソレノイドレバー36の回転軸中心36bの向きに押すようにしたため、投入状態においてトリガーローラピン31aからソレノイドレバー36へは回転力が作用しない。これによりソレノイドレバー36を小型化することができ、引き外す際に必要な力を最小化することができ、遮断用電磁ソレノイド38も小型化することができる。
【0065】
また、従来例よりも少ない部品点数で構成されているので、材料費や組立工程数を大幅に削減ができる利点がある。
【0066】
以上説明した第1の実施形態によれば、電気回路の開閉を行なう開閉装置とその操作機構において、遮断ばね力の保持と解放をラッチとその誤動作防止機構の組合せで行ない、遮断ばね力を解放するまでの時間を短縮し、開極時間全体を短縮させることができる。また、遮断ばね力保持の安定性や信頼性が向上する。
【0067】
[第2の実施形態]
図11は本発明の第2の実施形態の開閉装置の操作機構のラッチとソレノイドレバーの要部およびその周辺部を示す正面図である。ただし、第1の実施形態と同じまたは類似の部分には共通の符号を付すことにより重複説明は省略する。
【0068】
この実施形態では、ソレノイドレバー36は、係止レバー30に回転自由に配置されている。ソレノイドレバー復帰ばね37は引張ばねであり、ソレノイドレバー36を時計方向に回転させるばね力が常に作用している。ただし、その回転は係止レバー30に固着されたストッパーピン30dとソレノイドレバー36が係合することにより規制される。また、トリガーレバー復帰ばね33の端部は係止レバー30に固定されたピン30bと係合している。
【0069】
このように構成された本実施の形態において、ソレノイドレバー36は、ラッチ34およびトリガーレバー31と同様に係止レバー30に配置できるため、各部品の位置関係における誤差を少なくすることができる。
【0070】
[第3の実施形態]
図12は本発明の第3の実施形態の開閉装置の操作機構のラッチとソレノイドレバーの要部およびその周辺部を示す正面図である。図13は、図12のソレノイドレバー先端部付近を拡大して示す正面図である。図14は、図12のラッチ先端部付近を拡大して示す正面図である。ここで、第1の実施形態と同じまたは類似の部分には共通の符号を付すことにより重複説明は省略する。
【0071】
この実施形態では、図13に示すように、ソレノイドレバー36の先端部36aは凸円弧面(すなわち凸円筒面)で形成されており、その円弧面の中心位置は、投入状態におけるトリガーローラピン31aの回転軸中心とソレノイドレバー36の回転軸中心36bを結ぶ直線40の上にほぼ一致しているように形成される。これにより、遮断開始時のトリガーローラピン31aからソレノイドレバー36の先端部36aの係合を外す際に必要な力はさらに小さくなり、電磁ソレノイドの小型化、および、開極時間の短縮化が可能となる。
【0072】
さらに、図14に示すように、ラッチ34の先端部34cを凸円弧面(すなわち凸円筒面)で形成し、その円弧面の中心位置は、投入状態におけるラッチローラピン12aの回転軸中心とラッチ34の回転軸中心34aを結ぶ直線41の上にほぼ一致するように形成する。これにより、ラッチ34とラッチローラピン12aの係合を外す時間は短くなり、開極時間の短縮化が可能となる。
【0073】
[第4の実施形態]
図15は本発明の第4の実施形態の開閉装置の操作機構のラッチの要部およびその周辺部を示す正面図である。ただし、第1の実施形態と同じまたは類似の部分には共通の符号を付すことにより重複説明は省略する。
【0074】
この実施形態では、ラッチ34上にラッチピン34eが配置されており、ラッチピン34eにはリング42がラッチピン34eの径方向に移動可能に配置されている。リング42の内径はラッチピン34eの外径より大きい。
【0075】
このように構成された本実施の形態において、投入動作完了直前の状態を示しているのが図16および図17である。
【0076】
ラッチ34がラッチ復帰ばね35により投入状態位置まで復帰する際、ラッチ34の先端突起部34dはラッチローラピン12aと衝突し、跳ね返るため、ラッチ34は投入位置で停止せずに反時計方向に回転し、ラッチ34の先端部34cとラッチローラピン12aの係合が外れ、誤動作する可能性がある。
【0077】
しかし、本実施の形態では、ラッチ34の先端突起部34dとラッチローラピン12aが衝突すると、リング42は慣性力によりラッチ34の跳ね返り方向と逆の矢印Uの方向に移動し(図16)、ラッチピン34eに衝突する(図17)。これにより、ラッチ34の反時計方向回転を阻止することができ、ラッチ34の誤動作防止機構となる。
【0078】
本実施形態によれば、リング42により投入動作におけるラッチ34の先端突起部34dとラッチローラピン12aの衝突によるラッチ34の外れを防止することができ、ばね操作機構の動作信頼性の向上が可能となる。
【0079】
また、リング42の取り付け位置は図15に示した位置に限定されるものではなく、ラッチ34の任意の位置でも同様の効果を得ることができる。
【0080】
また、リング42は高硬度・高密度などの特徴をもつ金属、または、高弾性などの特徴を持つ高分子材料、またはその複合体から構成されことにより、ラッチ34の外れ防止の効果を高めることができる。
【0081】
[第5の実施形態]
図18は、本発明の第5の実施形態の開閉装置の操作機構のラッチとソレノイドレバーの要部およびその周辺部を示す正面図である。ただし、第1の実施形態と同じまたは類似の部分には共通の符号を付すことにより重複説明は省略する。この実施形態では、投入状態においてラッチ34の先端突起部34dとラッチローラピン12aとが当たる位置の先端突起部34d側に、高分子材料などの振動吸収性の高い振動吸収部材43を配置する。これにより、ラッチ34のラッチローラピン12aとの衝突による跳ね返りを緩和することができ、ラッチ34の外れ防止の効果を高めることができる。
【0082】
[他の実施形態]
上記各実施形態では、遮断ばね6および投入ばね21に圧縮コイルばねを用いているが、他の弾性体要素、たとえばネジリコイルばね、皿ばね、渦巻きばね、板ばね、空気ばねや引っ張りばねを用いることもできる。また、投入用係止レバー26やトリガーレバー31やラッチ34やソレノイドレバー36に設けた復帰ばね27、33、35、37にコイルばねやネジリコイルばねを用いているが、他の弾性体要素、たとえば皿ばね、渦巻きばね、板ばねを用いることもできる。
【0083】
さらに、複数の遮断ばねや複数の投入ばねを持つ操作装置にも適用できる。
【0084】
また、第1の実施形態では、トリガーレバー復帰ばね33の端部に係合するピン5bとラッチ復帰ばね35の端部に係合するピン30bとを別に設けているが、これをひとつに兼用させてもよい。また、トリガーレバー31の回転を規制するストッパーピン5cとラッチ34の回転を規制するストッパーピン30cとを別に設けているが、これをひとつに兼用させてもよい。
【0085】
また、係止レバー30はフレーム5に固定されているものであるから、係止レバー30を無くして、ピン30bおよびストッパーピン30cなどをフレーム5に直接固定するようにしてもよい。また、ピン30bおよびストッパーピン30cは、係止レバー30またはフレーム5と一体のものでもよい。
【0086】
また、ソレノイドレバー復帰ばね37によるソレノイドレバー36の時計方向回転の規制にストッパーピン5dを用いているが、遮断用電磁ソレノイド38のプランジャ38aで代用してもよい。
【0087】
また、第4の実施形態(図15ないし図17)のリング42を複数枚配置することも可能である。その場合に、それぞれのリング42の内径および外径が異なるとすると、各リング42が時間差をもってラッチピン34eに衝突するため、ラッチ34の外れを防止の効果を高めることができる。また、それぞれのリング42の質量が異なることにより、リング42は時間差をもってラッチピン34eに衝突するため、ラッチ34の外れを防止の効果を高めることができる。
【0088】
さらに、第4の実施形態のリング42は穴開きドーナツ型であるが、このような形状に限定するものではなく、それ以外の形状でも同様の効果を得ることができる。
【0089】
さらに、第4の実施形態では、第1の実施形態のラッチ34にラッチピン34eおよびリング42を取り付けた例を示したが、他の例として、第2または第3または第5の実施形態のラッチ34にラッチピン34eおよびリング42を取り付けてもてもよい。
【0090】
また、第5の実施形態(図18)では、第1の実施形態のラッチ34に振動吸収部材43を取り付けた例を示したが、他の例として、第2または第3または第4の実施形態のラッチ34の先端突起部34d側に振動吸収部材43を取り付けてもよい。
【0091】
以上説明した実施形態は例示であって、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1…リンク機構、2…可動接点、3…メインレバー、3a,3b…ピン、4…投入シャフト、4a…中心、5…フレーム(支持構造体)、5a…取り付け面、5b…ピン、5c,5d…ストッパーピン、5e…ストッパー、6…遮断ばね、7…遮断ばね受け、8…ダンパー、8a…ピストン、9…遮断ばねリンク、10…サブシャフト、11…サブレバー、11a…ピン、12…ラッチレバー、12a…ラッチローラピン、13…カムレバー、13a…カムローラ、20…主副連結リンク、21…投入ばね、22…投入ばね受け、22a…ピン、23…投入レバー、23a…ピン、23b…爪、24…投入リンク、24a…投入リンクの中心軸、25…投入カム、26…投入用係止レバー、26a…半円柱部、27…復帰ばね、28…投入用電磁ソレノイド、28a…プランジャ、30…係止レバー、30a…支持部、30b…ピン、30c、30d…ストッパーピン、31…トリガーレバー、31a…トリガーローラピン、31b…トリガーレバーの回転軸中心、32…偏心ピン、33…トリガーレバー復帰ばね、34…ラッチ、34a…ラッチの回転軸中心、34b…ラッチ突起部、34c…ラッチ先端部、34d…ラッチ先端突起部、34e…ラッチピン、35…ラッチ復帰ばね、36…ソレノイドレバー、36a…ソレノイドレバー先端部、36b…ソレノイドレバーの回転軸中心、36c…第1辺、36d…第2辺、36e…ソレノイドレバー先端突起部、37…ソレノイドレバー復帰ばね、38…遮断用電磁ソレノイド、38a…プランジャ、40,41…直線、42…リング、43…振動吸収部材、55…ピン
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