(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の支持装置51は、取付体53の側壁部23の係合部29が、支持体52内に単に挿入された状態で該支持体52の折曲片15に係合しているにすぎない。このため、支持装置51を形鋼材に取付け設置するときの作業中或いは支持装置51を形鋼材まで運搬する途中に、支持体52が、
図9に示すように、その長手方向が上下方向となっている状態で、支持体52のみを保持していると、取付体53が支持体52からすり抜けて落下してしまうことがあり、取付体53のみを保持していると支持体52が取付体53からすり抜けて落下してしまうことがあった。その結果、落下の都度、取付体53や支持体52を拾わなければならないから、面倒であった。また、取付体53や支持体52が足の上に落下して怪我する危険もあった。したがって、支持装置51を使用して被支持体を形鋼材に設置する作業を行なう間は、支持体52と取付体53との双方を確実に保持していなければならなかった。このため、作業性が低下し、特に、支持装置51が1個の支持体52に2個の取付体53が組付けられてなる場合は、把持する部材数が多いことから、著しく作業性が低下していた。
【0005】
そこで、本発明は、取付体及び支持体を形鋼材に固定し各種被支持体を形鋼材に支持させる作業において、取付体及び支持体のいずれか一方を把持した状態で他方を落下させることなく運搬し取り扱うことができる支持装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の支持装置は、底板と左右一対の側板とで断面コ字状に形成され、前記側板の開口側端部に内方に折曲する折曲片を備えた支持体と、前記支持体を、フランジ部を有する形鋼材に取付けるための取付体とを有するものであって、前記取付体は、側面視略コ字状に形成され、前記形鋼材のフランジ部を挟持するためのボルトが螺合する螺合部を有する上壁部と、該上壁部の両端から下方に延設された一対の側壁部とを備え、前記側壁部には、下端側が前記支持体内に挿入されて前記開口側に抜け出るのを防止すべく、前記折曲片に係合する係合部が突出して形成されている。
そして、特に、前記一対の側壁部には、
前記支持体を前記形鋼材のフランジ部に取付ける前の状態において、前記支持体の折曲片に圧接して該支持体または前記取付体が該支持体の長手方向に相対的に移動するのを防止する圧接部が設けられている。
ここで、支持体または取付体が支持体の長手方向に相対的に移動する、とは、具体的には、支持体を把持しているときに、支持体に対して取付体が支持体の長手方向に移動して落下し、また、取付体を把持しているときに、取付体に対して支持体がその長手方向に移動して落下することである。
【0007】
そして、前記取付体の圧接部
は、一対の側壁部の下方が、前記支持体の一対の折曲片の間隔より大きい間隔に形成され、前記一対の折曲片の間隔と同一または小さい間隔に弾性変形可能となっていることで形成されている。
【0008】
請求項2の支持装置は、特に、支持体の折曲片が、長手方向に沿って複数の突起を備え、取付体の係合部が、折曲片の突起に係合する複数の係合凹部を備えている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明は、取付体の一対の側壁部に、支持体の折曲片に圧接する圧接部を備えているから、圧接部の圧接による摩擦力によって支持体または取付体が支持体の長手方向に相対的に移動するのが防止される。その結果、支持装置を使用して各種被支持体を形鋼材に支持させる作業中の運搬、取り扱い等において、取付体及び支持体のいずれか一方を把持していれば他方が落下することがない。したがって、取付体または支持体が落下したときにそれを拾う手間が不要となり、また、取付体や支持体が足の上に落下して怪我する危険を回避できる。そして、運搬、取り扱い等において取付体及び支持体を共に確実に把持している必要がないから作業し易い。これらの結果、作業効率が向上する。
【0010】
加えて、取付体の圧接部
は、一対の側壁部の下方が支持体の一対の折曲片の間隔より大きい間隔に形成されるとともに支持体の一対の折曲片の間隔と同一または小さい間隔に弾性変形して縮小可能となっていることで形成されているから、圧接部を極めて簡易な構成で簡単かつ安価に形成することができる。
【0011】
請求項2の発明は、特に、支持体の折曲片が、長手方向に沿って複数の突起を備え、取付体の係合部が、折曲片の突起に係合する複数の係合凹部を備えているから、形鋼材のフランジ部を挟持するためのボルトを締付けることにより取付体の係合部が支持体の折曲片に接近し更に取付体の係合部の係合凹部と支持体の折曲片の突起とが係合する。したがって、支持装置を形鋼材のフランジ部に固定した後に支持体が長手方向に移動するのを確実に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の支持装置を図に基づいて説明する。
図1及び
図2において、支持装置1は、底板12と左右一対の側板13,13とを備えて照明器具、配管材等の被支持体43を支持する支持体11と、支持体11を形鋼材41のフランジ部42に取付けるための取付体21とで構成されている。形鋼材41は、
図5に示すように、H形鋼を例示する。
【0014】
まず、前記支持体11は、
図3及び
図5に示すように、底板12と左右一対の側板13,13とを備えた断面コ字状のチャンネル材で形成され、各側板13の開口14側の端部に内方に直角に折曲して
図2の水平方向に延出する折曲片15が形成されている。更に、この折曲片15は、先端部に直角に折曲して下方に突出する突出片16が形成されており、その突出片16の先端面には下方に僅かに突出する複数の小さい突起17が支持体11の長手方向に沿って連続して設けられている。支持体11の底板12には、
図5(d)に示すように、照明器具、配管材等の被支持体43を底板12に支持させるためのボルト、サドル、クリップ等の取付具が挿入し取着される各種形態の取着孔18が複数長手方向に沿って設けられている。
【0015】
次に、前記取付体21は、
図4に示すように、金属製帯板をプレス加工により折曲されて矩形枠板状に形成されており、上壁部22と、該上壁部22の両端から下方に延設された一対の側壁部23,23とを備えている。更に、底面には、両側壁部23の下端が折曲されて互いに内方に延出する一対の延出片24,24が上下に重合した状態で設けられている。そして、各延出片24には被支持体43としての吊りボルト等が挿通されてこれを取着するための取着孔25が設けられている。また、上壁部22には、形鋼材41のフランジ部42を支持体11の折曲片15とで挟持するボルト26が螺合する螺合孔からなる螺合部27が設けられている。
【0016】
取付体21の一対の側壁部23,23は、
図4(b)に示すように、側面視略コ字状に形成され、形鋼材41のフランジ部42が挿入される挿入空間28が切欠形成されている。更に、両側壁部23における挿入空間28の下端部には、取付体21の下端側が支持体11内に挿入されてその開口14側に抜け出るのを防止すべく、水平板部からなり支持体11の折曲片15に係合する一対の係合部29,29が水平外方に突出して形成されている。そして、この係合部29には、支持体11の折曲片15の突起17と対向する位置に該突起17に係合する複数の小さい窪みからなる係合凹部30が係合部29の全長に至って形成されている。
【0017】
更に、取付体21の一対の側壁部23,23は、
図4(c)に示すように、下方が、
図3に示す支持体11の一対の折曲片15,15の間隔L1より大きい間隔L2に形成されており、一対の側壁部23,23の下方を両側の外方から押圧することによって一対の折曲片15,15の間隔L1と同一または小さい間隔に弾性変形可能となっている。したがって、一対の側壁部23,23の下方を両側の外方から挟圧して一対の側壁部23,23の下方の間隔L2を一対の折曲片15,15の間隔L1と同一または小さい間隔に狭めて一対の折曲片15,15間に挿入してから挟圧を解除すれば、弾性復帰により一対の側壁部23,23は一対の折曲片15,15の突出片16,16の内方を向く外面に圧接する。この一対の側壁部23,23の下方は、本発明の特徴とする、支持体11の折曲片15に圧接して支持体11または取付体21が支持体11の長手方向に相対的に移動するのを防止する圧接部31を形成している。
【0018】
側壁部23に形成された圧接部31は、具体的には、
図4(c)に示すように、一対の側壁部23,23の上端部の間隔L3が支持体11の一対の折曲片15,15の間隔L1と略同一であり、一対の側壁部23,23の下方の間隔L2が前述のように一対の折曲片15,15の間隔L1より大きい寸法に設定されていることで形成されている、即ち、下方が僅かに広がった台形状となっていることで形成されている。圧接部31はこのようにして形成されているので、取付体21を支持体11に組付けたとき、一対の側壁部23,23はほぼ平行する垂直面の状態となって支持体11の一対の折曲片15,15に圧接する。
【0019】
次に、上記のように構成された本実施形態の支持装置1を使用して被支持体43を形鋼材41に支持させる方法を説明する。ここでは、被支持体43として照明器具44を支持させる場合を説明する。
最初に、取付体21の一対の側壁部23,23の下方を両側方から挟圧して一対の側壁部23,23の下方の間隔L2を支持体11の一対の折曲片15,15の間隔L1と同一または小さい間隔に弾性変形させて狭め、その状態で取付体21を支持体11の一端側から挿入し所定位置に達したら挟圧を解除する。これにより、取付体21は支持体11に組付けられ、一対の側壁部23,23の下方の圧接部31は支持体11の一対の折曲片15,15の突出片16,16に圧接して、その摩擦力により取付体21または支持体11が支持体11の長手方向に移動するのが防止される。ここで、照明器具44の支持においては、
図1に示すように、1個の支持体11に2個の取付体21を互いに対向させて組付ける。
【0020】
次に、
図6に示すように、照明器具44にコ字板状の取付金具45を取付けるとともに、取付金具45に設けられた取付孔と支持体11の底板12に設けられた取着孔18とにボルト46を挿通しナットを締付けて、照明器具44を支持体11の下方に取付ける。
【0021】
次いで、各取付体21の側壁部23の挿入空間28内に形鋼材41のフランジ部42を挿入し、上壁部22に設けられた螺合孔からなる螺合部27に取付けたボルト26を締付け、ボルト26の軸部の下端部と支持体11の一対の折曲片15,15の上面とでフランジ部42を挟持する。このとき、ボルト26を締付け、フランジ部42を挟持していくと、取付体21は支持体11に対して相対的に
図5(a)の上方に移動し、やがて取付体21の係合部29の上面が支持体11の折曲片15の突出片16の下端に当接するとともに、係合部29の係合凹部30内に折曲片15の突出片16の突起17が上方から係合する。なお、支持体11に対する取付体21の位置を変更または調整する場合は、一対の側壁部23,23を両側方から押圧して圧接部31における支持体11の折曲片15との圧接を解除するとともに、ボルト26の締付けを緩めて取付体21を下方に移動させ折曲片15の突出片16の突起17と係合部29の係合凹部30との係合を解除することにより、取付体21は支持体11に対して支持体11の長手方向に自在に移動可能となって、取付体21の位置を変更または調整することができる。以上により、
図6に示すように、照明器具44は形鋼材41に支持される。
【0022】
ここで、照明器具44を支持する作業中に、支持体11に取付体21が組付けられ、かつ支持体11が縦長となっている状態で、支持体11及び取付体21の一方を把持して作業したり移動することがあるが、そのとき、前述のように、取付体21の一対の側壁部23,23の圧接部31,31が支持体11の一対の折曲片15,15に圧接するので、その圧接による摩擦力により、把持されていない他方の支持体11または取付体21がその自重により、把持されている取付体21または支持体11に対して移動し、落下するのが防止される。
【0023】
次に、本実施形態の支持装置1の作用を説明する。
支持装置1は、取付体21の一対の側壁部23,23に、支持体11の折曲片15に圧接する圧接部31を備えているから、圧接部31の圧接による摩擦力によって支持体11または取付体21が支持体11の長手方向に相対的に移動するのが防止される。その結果、支持装置1を形鋼材41のフランジ部42に取付けて各種被支持体43を形鋼材41に支持させる作業において、支持体11が縦長の状態で支持体11及び取付体21のいずれか一方のみを把持するだけで他方をその自重により落下させることなく支持装置1を運搬したり取り扱うことができる。したがって、支持装置1を使用して被支持体43を形鋼材41に支持させる作業での運搬や取り扱いにおいて、支持体11及び取付体21の一方のみを把持すればよいから、作業し易い。また、取付体21または支持体11が自重により落下することがないから、落下したときにそれを拾う手間が不要となり、作業効率が向上する。加えて、取付体21や支持体11が足の上に落下して怪我する危険が回避される。
【0024】
そして、取付体21の圧接部31が、一対の側壁部23,23の下方が支持体11の一対の折曲片15,15の間隔より大きい間隔に形成され、支持体11の一対の折曲片15,15の間隔と同一または小さい間隔に弾性変形して縮小可能となっていることで形成されているから、圧接部31を極めて簡易な構成で簡単かつ安価に形成することができる。
【0025】
更に、支持体11の折曲片15が、長手方向に沿って複数の突起17を備え、取付体21の係合部29が、折曲片15の突起17に係合する複数の係合凹部30を備えているから、ボルト26の締付けにより係合部29の係合凹部30内に折曲片15の突出片16の突起17が上方から係合するので、支持装置1を形鋼材41のフランジ部42に固定した後に、外力による衝撃が加わったときなどにおいて支持体11が長手方向にずれるのが確実に防止される。
【0026】
ところで、上記実施形態の取付体21の側壁部23に形成された圧接部31は、一対の側壁部23,23の上端部の間隔L3が一対の折曲片15,15の間隔L1と略同一であり、一対の側壁部23,23の下方の間隔L2が一対の折曲片15,15の間隔L1より大きい寸法とすることで形成されている、即ち、下方が僅かに広がった台形状となっていることで形成されているが、圧接部31はこれに限られるものではなく、例えば、
図7(a)に示すように、一対の側壁部23,23の上端部の間隔L3と一対の側壁部23,23の下方の間隔L2とが略同一寸法で、かつ、これらの間隔L3及び間隔L2が一対の折曲片15,15の間隔L1より大きい寸法とすることで形成してもよい。このように形成すると、取付体21の一対の側壁部23,23の下方を両側方から挟圧して一対の側壁部23,23の下方の間隔L2を弾性的に狭め、取付体21を支持体11に組付けたときに、
図7(b)に示すように、取付体21を正面側から見た矩形状の枠は逆台形状となって、圧接部31が支持体11の折曲片15に圧接される。これにより、次の効果が得られる。
【0027】
即ち、支持体11の折曲片15の突出片16は、プレス加工後の戻りにより水平面の折曲片15に対して直角には折曲されず、
図7(b)に示すように、僅かに傾斜する状態で下方に突出することがある。この場合、取付体21の圧接部31は、前述のように、取付体21を支持体11に組付けたときに取付体21の矩形状の枠が逆台形状となるもので形成すれば、支持体11の折曲片15の突出片16の傾斜角度と取付体21の一対の側壁部23,23の傾斜角度とがほぼ合致し、それにより、両者は面接触の状態で当接する。このため、圧接部31の当接面積が増大し、圧接部31の摩擦力による落下防止効果が高まる。
【0028】
また、取付体21の側壁部23は、
図7(c)に示すように、上部側が下方に向かうに従って斜めに広がる傾斜面となっていて下方はほぼ垂直面となるよう高さ方向の略中間位置で僅かに屈曲した形状に形成することもできる。この場合は、
図7(d)に示すように、取付体21を支持体11に組付けたとき、支持体11の折曲片15の突出片16の傾斜角度と取付体21の一対の側壁部23,23の傾斜角度とがほぼ合致し、両者は面接触の状態で当接するとともに、一対の側壁部23,23の上部側は互いにほぼ平行する垂直面に形成することができる。
【0029】
更に、上記実施形態の
図4に示す取付体21の一対の側壁部23,23は、下方が僅かに広がった台形状となっている、即ち、両側壁部23ともに、僅かに傾斜する傾斜面に形成されているが、図示しないが、いずれか一方の側壁部23のみを傾斜面に形成し、いずれか他方の側壁部23は垂直面に形成した左右非対称の形状のものとしてもよい。
【0030】
加えて、上記実施形態の取付体21の圧接部31は、一対の側壁部23,23の下方が支持体11の一対の折曲片15,15の間隔L1より大きい間隔に形成され、弾性変形可能となっていることで形成されており、一対の側壁部23,23の下方に全面的に形成されているが、これに限定されるものではなく、
図8に示すように、支持体11の一対の折曲片15,15に圧接する箇所がビードのように部分的に外方に膨出した状態で突出し、支持体11の折曲片15に圧接するものとして形成することもできる。
【0031】
更に、上記実施形態の取付体21の圧接部31は、一対の側壁部23,23が弾性変形して一対の側壁部23,23の下方の間隔が縮小し、弾性拡開力で圧接するものとして形成されているが、この一対の側壁部23,23が弾性変形するものに限られるものでもない。即ち、側壁部23は弾性変形せず、例えば、一方または双方の側壁部23における圧接箇所をコ字状に切欠して基端部を中心に外方に弾性的に拡開可能な弾性突出片を一体に形成して、側壁部23に部分的に設けたこの弾性突出片により圧接部を形成してもよい。この場合、弾性突出片は、取付体21を支持体11に組付けたとき、弾性的に支持体11の折曲片15に圧接され、折曲片15との摩擦力により両部材が相対的に移動するのを防止する。或いは、側壁部23とは別体に、弾性的に支持体11の折曲片15に圧接する弾性部材を側壁部23に接着、接合などにより付設して、側壁部23に部分的に設けたこの弾性部材により圧接部を形成してもよい。
【0032】
また、取付体21の一対の側壁部23,23において支持体11の折曲片15に圧接する圧接部31は、その表面にローレット加工を施してもよい。この場合、圧接部31の圧接による支持体11または取付体21の落下防止効果を更に高めることができる。
【0033】
更に、上記実施形態の取付体21は、底面に、一対の側壁部23,23の各下端から内方に屈曲する延出片24が形成されているが、本発明は、底面に延出片24が形成されていない取付体21にも同様に適用することができる。
【0034】
なお、上記実施形態の支持装置1は、1個の支持体11に2個の取付体21を組付けているが、1個の支持体11に1個の取付体21を組付けたものとすることもできる。
また、上記実施形態では、
図6に示すように、被支持体43として照明器具44を形鋼材41に支持させる場合を説明しているが、被支持体43として、他に、配管材、吊りボルト等各種の部材を支持させることができる。