特許第5722112号(P5722112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5722112-複反射鏡アンテナ給電部 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722112
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】複反射鏡アンテナ給電部
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/19 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
   H01Q19/19
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-95954(P2011-95954)
(22)【出願日】2011年4月22日
(65)【公開番号】特開2012-227863(P2012-227863A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尚 尓昊
(72)【発明者】
【氏名】毛塚 敦
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第02120858(GB,A)
【文献】 特開2008−167114(JP,A)
【文献】 特開昭63−283211(JP,A)
【文献】 実開平04−027611(JP,U)
【文献】 実開昭64−038811(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 17/00
H01Q 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電導波管の放射開口部に対向した鏡面を有する副反射鏡を備えた複反射鏡アンテナ給電部であって、
前記副反射鏡の裏面の中央部に頂部が接した円錐台状の損失材料と、
前記円錐台状の損失材料の底部に接し、かつ前記副反射鏡から不要回折波が放射され得る前記副反射鏡の縁部の周囲から前記副反射鏡の裏面および前記損失材料を覆う金属カバーと
を備えたことを特徴とする複反射鏡アンテナ給電部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円形凹面型の主反射鏡と、主反射鏡の凹面中心から突出する1次放射器と、1次放射器の前方位置にフィードームで保持された円形凸面型の副反射鏡とからなる複反射鏡アンテナの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
図1は従来の複反射鏡アンテナの断面図である。副反射鏡4はフィードーム3支持部材に密着させて支持され、フィードームの他端は1次放射器2に密着し保持されている。1次放射器2から放射された電磁波はフィードーム3中を副反射鏡4に向かって拡散伝搬し、副反射鏡反射面5で反射されて1次放射器2の後方にある主反射鏡1に向き、主反射鏡1で再反射され空間へ放射される。
【0003】
電磁波は副反射鏡4で反射され、主反射鏡1に向かうことになる。ところが、副反射鏡エッジ6でスピルオーバーにより不要回折波を生ずる。この不要回折波の影響でアンテナのサイドローブレベルが上昇してしまう。Kuバンド衛星通信用アンテナは、隣接衛星に影響を与えないよう、厳しいアンテナサイドローブ規格が要求されている。この規格を満足するためには、サイドローブ要因となる副反射鏡エッジ6で生ずる回折波を抑圧する必要がある。
【0004】
そこで従来は、反射鏡アンテナのサイドローブレベルを落とすために、図1に示すような主反射鏡1は1次放射器2を覆うように鏡面を深くして焦点を主反射鏡の内部に位置したことで、副反射鏡エッジ6で生ずる回折波を抑圧する。(例えば、非特許文献1、2参照)。
【非特許文献1】Yueh−Chi And Myung Jin Im、 SYNTHESIS AND ANALYSIS OF SHAPED ADE REFLECTORS BY RAY TRACING、0−7803−2719−5/95/S4.00、IEEE、1995、P.1182−1185。
【非特許文献2】Walter Rotman And Joseph C. Lee、COMPACT DUAL FREQUENCY REFLECTOR ANTENNAS FOR EHF MOBILE SATELLITE COMMUNICATION TERMINALS、CH2043−8/84/0000−0771S01.00、IEEE、1984、P.771−774。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、陸上あるいは船上の移動体衛星通信システムに深い主反射鏡面を有する反射鏡アンテナを採用する場合、アンテナ全体の重量が大きいため、燃費が高くなる。したがって、アンテナ全体の軽量化を問題視し、主反射鏡面を浅くする必要がある。しかし、主反射鏡面を浅くすれば、焦点が主反射鏡の外側に移動し、副反射鏡エッジ6でのスピルオーバーによる不要回折波が増え、低サイドローブレベルを有する反射鏡アンテナを実現するのは困難となる。
【0006】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑みて、図3の複反射鏡アンテナ給電部(図1の主反射鏡1を除いた部分)を改良することで、副反射鏡エッジ6でのスピルオーバーによる回折波を抑圧し、低サイドローブレベルを有する複反射鏡アンテナを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために次の手段構成を有する
本発明に係る複反射鏡アンテナ給電部は、給電導波管の放射開口部に対向した鏡面を有する副反射鏡を備えた複反射鏡アンテナ給電部であって、前記副反射鏡の裏面の中央部に頂部が接した円錐台状の損失材料と、前記円錐台状の損失材料の底部に接し、かつ前記副反射鏡から不要回折波が放射され得る前記副反射鏡の縁部の周囲から前記副反射鏡の裏面および前記損失材料を覆う金属カバーとを備えて構成される
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の構成のアンテナ給電部は、副反射鏡エッジ6でのスピルオーバーによる不要回折波を低減するために損失材料7を嵌着する。さらに、損失材料7の上に圧着する金属カバー8の長さと傾きを調整することで、副反射鏡エッジ6で生ずる不要回折波を損失材料7へ導波し、損失材料7により吸収し、低サイドローブレベルを有する複反射鏡アンテナを実現することが可能である。
【0011】
また、本発明は広帯域にわたり電磁波を吸収できる損失材料7を採用することにより、広周波数帯において低サイドローブレベルを有する複反射鏡アンテナを実現することが可能となる。
【0012】
本発明は従来方法の図3に示すアンテナ給電部に損失材料7とシンプルな構造を有する金属カバー8を圧着することで広周波数帯域にわたり利用可能な低サイドローブ複反射鏡アンテナを実現する。また、金属カバー8と損失材料7はシンプルな構造で構成されるため、加工しやく安価で製作することが可能である。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態に関して、アンテナ給電部の図面を参照して説明する。図4は、本発明の実施例の構成を示す断面図である。副反射鏡4はフィードーム3支持部材に密着させて支持され、フィードームの他端は1次放射器2に密着し保持されている。
【0014】
また、副反射鏡4の上部に密着する損失材料7は距離が長くなるにつれて径が太くなり、副反射鏡エッジ6でのスピルオーバーによる不要回折波を漏れずに吸収する構造となっている。なお、前記の距離が長くなるにつれて径が太くなる形状とは、円錐形の上下を逆にして下側に頂点を有する逆円錐形を指す。
【0015】
さらに、損失材料7を挟着する金属カバー8は副反射鏡エッジ6でのスピルオーバーによる不要回折波を損失材料7へ導波して吸収させる。
【0016】
前記導波の様子を図12に示す。同図に示すように、金属カバー8に導波された不要回折波は損失材料7に吸収される。
【0017】
上述の構造により副反射鏡エッジ6でのスピルオーバーによる不要回折波を損失材料7に吸収され、アンテナ全体のサイドローブレベルを低減する。詳細結果に関して図5から図10に示す。ただし、図5から図10に示すアンテナ指向性パターンはアンテナ給電部の性能を確認するため、主反射鏡を除いた場合の計算例である。破線が従来の場合であり、実線が本発明実施例の場合である。
【0018】
図5から図10の計算結果によれば、本発明は従来型に比べ、主反射鏡方向(図5から図10におけるθ=90°〜180°)の指向性利得の変化が小さく、スピルオーバー方向の指向性利得(図5から図10におけるθ=0°〜90°)を抑圧できていることがわかる。
【0019】
ここで、θについて図11を参照して説明する。図11において、主反射鏡1は方向Aに存在する衛星10を正面に捉えており、当該衛星10と通信を行っている。本発明が解決すべき事は、スピルオーバーの影響によって図11の方向Bにも電波が向かってしまい、衛星10以外の衛星に不要波を創出することを防ぐことである。ここで、θは、主反射鏡が正面に捉えている衛星方向との角度の差を言う。
【0020】
本発明のアンテナ給電部は従来型に比べてKuバンド衛星通信用アンテナの受信周波数領域(10.7GHz〜12.75GHz)から送信周波数領域(14.0GHz〜14.5GHz)まで、サイドローブ特性が顕著に改善された。
【0021】
なお、本発明において、副反射鏡と損失材料と金属カバーの設置手段は任意であり、例えば副反射鏡と損失材料は圧着しても嵌着してもよい。また、副反射鏡と金属カバーによって損失材料を挟着してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来方法アンテナの断面図
図2】本発明アンテナ実施例の断面図
図3図1の主反射鏡を除いた部分(アンテナ給電部)の拡大図
図4図2の主反射鏡を除いた部分(アンテナ給電部)の拡大図
図5】10.7GHzにおけるアンテナ指向性パターン(E面、H面)
図6】11.725GHzにおけるアンテナ指向性パターン(E面、H面)
図7】12.75GHzにおけるアンテナ指向性パターン(E面、H面)
図8】14.0GHzにおけるアンテナ指向性パターン(E面、H面)
図9】14.25GHzにおけるアンテナ指向性パターン(E面、H面)
図10】14.5GHzにおけるアンテナ指向性パターン(E面、H面)
図11】角度θの説明図
図12】損失材料に不要波が導波される様子を示した図
【符号の説明】
【0023】
1…主反射鏡
2…1次放射器
3…フィードーム
4…副反射鏡
5…副反射鏡反射面
6…副反射鏡エッジ
7…損失材料
8…金属カバー
10…衛星

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12