(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレーム集合体の下部に設けられたキャスタの内側に位置されて前記フレーム集合体に取り付けられ、前記電磁シールド部材が前記キャスタに巻き込まれることを防止するための巻込み防止機構をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造。
前記フレーム集合体の伸展方向の端部の位置が前記磁気共鳴イメージング装置により発生する磁場の強度が所定の磁束密度にあることを報知するための報知手段をさらに有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造。
前記磁気共鳴イメージング装置を用いて診断される患者の状態をモニタする患者モニタ用ケーブルを含むチューブ状部材が前記電磁シールド部材の内側から外側に引き出される境界部分を筒状に包囲して電磁シールドするための筒状シールド部材をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造。
前記磁気共鳴イメージング装置を覆い得る電磁シールド体をさらに有し、前記フレーム集合体は、収縮時に前記電磁シールド体の内部に収納可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造。
前記電磁シールド体の側面に、前記磁気共鳴イメージング装置を用いて診断される患者の状態を観察し得る全面が開放された観察窓が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造が適用された手術室の一例を示す外観図である。なお、説明を明確にするため、
図1に示すように前後左右上下の方向を設定する。
【0026】
図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)100と、MRI装置用の電磁シールド構造200とが、例えば脳外科等の手術を行う手術室300に設置されている。MRI装置100は、所定の静磁場下に置かれた患者(被検者)の被撮像部位に、所定のパルスシーケンスでRFパルス、傾斜磁場を印加し、これによって発生したエコー信号を収集後処理して磁気共鳴画像を得るものである。
【0027】
図1に示すMRI装置100は、ここでは、側面視でコの字状に形成されたオープン型のMRI装置である。このMRI装置100は、患者の頭部等の被撮像部位が挿入されるガントリー開口部120が形成された本体部110を備えており、本体部110には、ガントリー開口部120を挟んで上下に対向する部位にそれぞれ磁石(図示せず)が設けられている。
【0028】
手術室300の床面310上におけるMRI装置100を含む所定の領域に、例えばステンレス鋼板等の非磁性体の導電材料からなる導電性床板320が敷設されている。MRI撮影を行う場合には、患者を載せた手術台兼用のベッド(図示せず)が導電性床板320の長手方向に沿うように導電性床板320上に移動させられる。
【0029】
手術室300の壁330の内側が一部掘り込まれて凹部331が形成されており、この凹部331内には、ノイズフィルタ(図示せず)を有するフィルタボックス332が配置されている。フィルタボックス332は、MRI装置100の背面側に設けられており、外部からの電源や信号用のケーブル類は、フィルタボックス332を介してMRI装置100と接続される。なお、手術室300内におけるMRI装置100の設置位置は、壁際に限定されるものではなく、壁330から離間した位置であってもよい。
【0030】
電磁シールド構造200は、MRI装置100を含む所定の撮影空間を、電磁波から遮蔽(電磁シールド)するものである。この電磁シールド構造200は、MRI撮影を行うときに、後記するフレーム集合体220が導電性床板320上に伸展させられることによってMRI装置100とMRI撮影される患者が横たわるベッド(図示せず)とを収容可能となるように、全体として伸展状態とされる。なお、
図1では、説明の都合上、電磁シールド部材250(
図2参照)は、図示省略している。
【0031】
図2は、電磁シールド構造の伸展状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図3は、電磁シールド構造の収縮(折畳み)状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図4は、電磁シールド構造の正面図であり、(a)は前面シールドカーテンで前面を覆った状態を示し、(b)は前面シールドカーテンを外した状態を示す。
【0032】
図2〜
図4に示すように、電磁シールド構造200は、MRI装置100を覆い得る電磁シールド体210と、門形状の複数のフレーム221が内側に連続した空間222(
図4(b)参照)を形成するように水平方向に並んで配置されると共に伸縮可能にX字状連結機構230により連結され、収縮時に電磁シールド体210の内部に収納可能なフレーム集合体220と、を有している。
【0033】
門形状のフレーム221は、例えばアルミニウム合金製の平角管を用いて形成される。フレーム221は、ここでは、水平部224及び一対の鉛直部225(
図4参照)を構成する3つの平角管を接続部材226(
図4参照)を介してねじ締結等により接続して形成されている。但し、フレーム221は、平角管を曲げ加工して形成されてもよい。
【0034】
X字状連結機構230は、一対のリンク部材231,232を中央部においてX字状に交差させると共に、その交差部を中央ピン233で軸支し、一対のX字状のリンク部材231,232を端部において上部ピン234及び下部ピン235で複数組連結することにより、伸縮自在に構成されている。そして、上部ピン234は、フレーム221の外側面に固定された凹溝部材236内に固定されており、一方、下部ピン235は、凹溝部材236内に上下方向に摺動可能に係合されている。なお、下部ピン235を凹溝部材236内に固定し、上部ピン234を凹溝部材236内に摺動可能に係合してもよい。凹溝部材236の素材として、例えばアルミニウム合金製の型材が使用される。
【0035】
複数のフレーム221の下部には、それぞれキャスタ223が取り付けられている。キャスタ223は、車輪223aと、車輪223aを回転可能に支持する支持部材223bとを備えており(
図4(a)参照)、支持部材223bがフレーム221の下部の外側面にねじ締結等により固定される。
【0036】
また、複数のフレーム221のうちの伸展端側(最前方側)のフレーム221には、フレーム集合体220を伸縮させる際に術者等の操作者が掴持するための取っ手237が、左右に一対取り付けられている。一方、最後方側のフレーム221は、図示しない規制手段により移動が規制されている。
【0037】
本実施形態では、電磁シールド構造200のフレーム集合体220に、フレーム集合体220が伸縮する際に当該フレーム集合体220の蛇行を抑制する蛇行抑制機構260が取り付けられている。なお、蛇行抑制機構260についての詳細は後記する。
【0038】
また、電磁シールド構造200は、複数のフレーム221の内側に取り付けられ、可撓性及び透光性を有するシート状の電磁シールド部材250を有している。電磁シールド部材250は、MRI撮影を行う際の外部からの電磁波(ノイズ)を除去する役目と、MRI装置100による強い磁場が作り出す漏れ磁場から周辺機器(図示せず)等を守る役目とを担っている。
【0039】
電磁シールド部材250の材料としては、例えば網状の繊維に銀等の非磁性体の導電材料をコーティングしたものが使用され得る。電磁シールド部材250の下端は導電性床板320上に接触するように設定されており、シールド性を確保できるようになっている。
【0040】
電磁シールド部材250は、複数のフレーム221の内側にトンネル状に取り付けられるトンネル状シールドカーテン251(
図2参照)と、複数のフレーム221のうちの最前方側のフレーム221の開放面を開放可能に閉止するための前面シールドカーテン252(
図4(a)参照)とを備えている。
【0041】
トンネル状シールドカーテン251は、例えば、複数のフレーム221の内側に固定された取付金具(図示せず)に紐等で結び付けることによって取り付けられる。一方、前面シールドカーテン252は、複数のフレーム221のうちの最前方側のフレーム221の上側に位置する水平部224(
図4(a)参照)の下面に固定されたカーテンレール(図示せず)に沿って水平方向に摺動可能に取り付けられる。
【0042】
図5は、トンネル状シールドカーテンの概略斜視図である。
図5に示すように、トンネル状シールドカーテン251は、空間222(
図4(b)参照)の上面及び側面に位置する覆い部253と、空間222の前面に位置する下方に開口したコの字状の補助部254とから構成されている。補助部254は、前面シールドカーテン252(
図4(a)参照)の上部及び左右両側部と重なるように形成されることによって、トンネル状シールドカーテン251と前面シールドカーテン252との隙間を埋めてシールド性を高める機能を有している。
【0043】
図6は、電磁シールド体の概略斜視図である。
図6に示すように、電磁シールド体210は、例えばアルミニウム合金板等の非磁性体の導電材料から形成されており、門形状を呈している。この電磁シールド体210により、電磁シールド構造200のシールド性をより向上させることができる。電磁シールド体210の側面には、MRI装置100を用いて診断される患者の状態を観察し得る全面が開放された観察窓211が設けられている。このような構成によれば、診断中の患者の視認性が増すため、例えば患者の被撮像部位がずれていないか、患者モニタ用ケーブル(図示せず)が患者から外れていないか等、患者の状態を外から十分に観察しながら、MRI装置100を用いた良好な撮影が可能となる。観察窓211は、電磁シールド体210の左右両方の側面に開設されることが左右両方から観察できる観点から好ましい。但し、観察窓211は、電磁シールド体210の左右いずれかの側面に形成されていてもよい。
【0044】
電磁シールド体210の下端には、一対の帯板部材212が固定されている。一対の帯板部材212は、フレーム集合体220が収縮されて電磁シールド体210内に収納されるとき、及びフレーム集合体220が収縮状態から伸展されて電磁シールド体210内から外に出されるときに、帯板部材212の内側面によってキャスタ223の移動をガイドする。
【0045】
図7は、フレーム集合体に取り付けられた蛇行抑制機構の伸展状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図8は、フレーム集合体に取り付けられた蛇行抑制機構の収縮状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。なお、
図7(a)及び
図8(a)では、フレーム集合体220のうちフレーム221の水平部224以外の部材は、理解を容易にするため図示省略している。
図9は、蛇行抑制機構のアームの固定方法を説明するための平面図であり、(a)はアームが固定板を介して固定された状態を示す平面図、(b)は固定板の平面図である。
図10は、アームがガードローラに移動可能に係合される様子を示す図であり、(a)は(b)のA−A線に沿う横断面図、(b)は(a)のB−B線に沿う縦断面図である。なお、
図10(a)では、図面の上下方向がフレーム集合体220の伸縮方向となっている。
【0046】
図7及び
図8に示すように、蛇行抑制機構260は、フレーム集合体220の上部に取り付けられた複数のガイドローラ(ガイド部材)261と、ガイドローラ261とフレーム集合体220の伸縮方向に相対的に移動可能に係合される複数のアーム262と、を備えている。これらの複数のアーム262は、フレーム集合体220の伸縮方向(前後方向)に沿って延在すると共に、前記伸縮方向と直交する水平方向(左右方向)に並んで配置される。
【0047】
各アーム262は、そのアーム262がガイドされるガイドローラ261が取り付けられたフレーム221と隣接するフレーム221に、固定板263を介して固定されている。但し、蛇行抑制機構260が伸展状態(
図7(a)参照)にあるときに伸縮方向(前後方向)中央に位置するアーム262は、複数のフレーム221のうちの中央寄りに位置する2つのフレーム221の上部に取り付けられた複数のガイドローラ261に係合されていて、フレーム221には固定されていない。これにより、蛇行抑制機構260が収縮状態(
図8(a)参照)にあるときに、全てのアーム262の伸縮方向の端部位置を一部突出すること無く揃えることが可能となる。なお、蛇行抑制機構260が伸展状態にあるときに伸縮方向(前後方向)中央に位置するアーム262の両端には、アーム262がガイドローラ261から脱落することを防止するためのストッパ板265が設けられている。
【0048】
図9に示すように、アーム262は、より具体的には、固定板263を介してベース板264上にねじ締結等により固定されており、ベース板264がフレーム221の水平部224上にねじ締結等により固定されている。なお、
図9(a)において、ねじ締結部は図示省略している。
図9(b)中の符号263aは、固定板263に形成されたねじ締結用の孔を示す。
【0049】
図10に示すように、アーム262の素材として、例えばアルミニウム合金製のC型チャンネルが使用される。
図10に示すアーム262の断面形状における端部262aが、ガイドローラ261の溝261a内に係合される。これにより、アーム262は、ガイドローラ261に対して、フレーム集合体220の伸縮方向に相対的に移動可能となっている。
【0050】
ガイドローラ261は、より具体的には、フレーム221の水平部224上に固定されたベース板264上に、ねじ部材266により回転自在に取り付けられている。なお、水平部224上には、ねじ部材266による締結用の部品との干渉を避けるための逃げ孔(図示せず)が形成される。
【0051】
このように、複数のアーム262は、フレーム集合体220の収縮時に隣り合う2つのアーム262の両側面が互いに対向するように並んで収縮し(
図8参照)、フレーム集合体220の伸展時に部分的にずれるように移動して伸展する(
図7参照)構成となっている。
【0052】
また、電磁シールド構造200は、フレーム集合体220の下部に設けられたキャスタ223の内側に位置されてフレーム集合体220に取り付けられ、電磁シールド部材250のトンネル状シールドカーテン251がキャスタ223に巻き込まれることを防止するための巻込み防止機構270(
図11参照)をさらに有している。
【0053】
図11は、フレーム集合体に取り付けられた巻込み防止機構のフレーム内側から見た側面図であり、(a)は伸展状態を示し、(b)は収縮状態を示す。
図11に示すように、巻込み防止機構270は、巻込み防止スライドパイプ271と、巻込み防止板272とを備えており、アルミニウム合金等の非磁性体の導電材料から形成されている。
【0054】
巻込み防止スライドパイプ271は、径の異なる複数のパイプが入れ子式に組み合わされて構成された伸縮可能なパイプであり、電磁シールド部材250のトンネル状シールドカーテン251とキャスタ223との間に介在する(
図4(b)参照)。また、巻込み防止板272は、前後方向の長さがフレーム221の幅(前後方向の長さ)よりも大きく設定された略矩形状の板であり、トンネル状シールドカーテン251とキャスタ223との間に介在する(
図4(b)参照)。なお、
図4(b)では巻込み防止スライドパイプ271の取付け用部材を図示省略している。
【0055】
巻込み防止スライドパイプ271の前端部及び後端部は、最前方側及び最後方側のフレーム221にそれぞれ固定されている。巻込み防止板272は、フレーム集合体220の伸縮方向(前後方向)中央寄りのフレーム221に固定される中央側巻込み防止板272aと、前後方向両端のフレーム221に固定される端部側巻込み防止板272bとを備えている。
【0056】
図12は、巻込み防止機構の要部を示す拡大図であり、(a)は
図11(a)のC部の拡大図、(b)は(a)のE方向(後方)から見た図、(c)は(a)の上から見た図、(d)は
図11(a)のD−D線に沿う断面図である。
図13は、フレームに取り付けられた巻込み防止板を示す図であり、(a)は後方から見た図、(b)は中央側巻込み防止板の側面図、(c)は端部側巻込み防止板の側面図である。但し、理解を容易にするため、
図13では巻込み防止スライドパイプ271及びその取付け用部材を、
図13(b)(c)ではさらにキャスタ223を図示省略している。また、
図12及び
図13における内外で示す矢印は、それぞれ門形状のフレーム221の内側方向、外側方向を示す(
図17でも同様)。
【0057】
図12(a)〜(c)に示すように、巻込み防止スライドパイプ271の軸方向(前後方向)両端に、L字状の取付け用ブラケット273がねじ部材274により固定されており、この取付け用ブラケット273が、端部側巻込み防止板272bを間に挟んでフレーム221の下部の内側面にねじ部材275により固定されている。また、
図12(d)に示すように、巻込み防止スライドパイプ271の中央寄りの部分は、中央側巻込み防止板272aに固定されたUボルト276の内側に受け入れられて支持されている。
【0058】
図13に示すように、巻込み防止板272(272a,272b)には長孔272cが形成されている。巻込み防止板272は、ねじ部材275を長孔272cに挿通させてフレーム221の下部の内側面に形成された図示しないねじ孔にねじ込むことにより、フレーム221に固定される。長孔272cは上下方向に長く形成されているため、巻込み防止板272の上下方向位置を、電磁シールド部材250のトンネル状シールドカーテン251がキャスタ223に巻き込まれない位置に調整することが可能となっている。
【0059】
このような巻込み防止機構270によれば、電磁シールド部材250のトンネル状シールドカーテン251が巻込み防止機構270の外側に出ないように矯正される。これにより、トンネル状シールドカーテン251がキャスタ223に巻き込まれて、フレーム集合体220を伸縮させる操作が困難あるいは不可能となる事態を防止できる。
【0060】
また、電磁シールド構造200は、MRI装置100を用いて診断される患者の状態をモニタする患者モニタ用ケーブルや酸素供給用チューブ等のチューブ状部材340(
図15(b)参照)が電磁シールド部材250の内側から外側に引き出される境界部分を筒状に包囲して電磁シールドするための筒状シールド部材255(
図14(a)参照)をさらに有している。
【0061】
図14は、筒状シールド部材の概略斜視図であり、(a)は本実施形態を示し、(b)は変形例を示す。
図15は、筒状シールド部材の使用方法を説明するための図であり、(a)は筒状シールド部材を使用する前の最前方側のフレームの開放面を部分的に示す概略斜視図、(b)は筒状シールド部材の使用状態を示す概略斜視図である。
【0062】
図14(a)に示すように、筒状シールド部材255は、展開状態において略矩形形状を呈するシート状部255aと、シート状部255aの適宜の箇所に設けられた面ファスナ255bとを有している。シート状部255aの材料としては、例えば電磁シールド部材250と同じ材料が使用され得る。筒状シールド部材255の使用時に、展開状態のシート状部255aは、チューブ状部材340の周囲を巻くようにして筒状に形成され、面ファスナ255bにより結束されて筒状に保持される。
【0063】
なお、
図14(b)に示すように、軸方向のヒンジライン256cに沿って開閉自在に結合された一対の半割れ円筒256a,256bを備え、最前方側のフレーム221の内側面にねじ締結等により固定される筒状シールド部材256が使用されてもよい。筒状シールド部材256の中には、電磁波をカットするためのフェライトコア(図示せず)が配置される。使用の際には、開閉式の筒状シールド部材256を開き、チューブ状部材340を入れてから閉じる。筒状シールド部材256は、一つのチューブ状部材340が挿通される内径を有するように形成されてもよいし、複数のチューブ状部材340が挿通可能な内径に形成されてもよい。
【0064】
図15(a)に示すように、最前方側のフレーム221の内側面には、筒状シールド部材255を引っ掛けて保持するためのフック227が、左右に一対取り付けられている(
図4参照)。また、最前方側のフレーム221の外側面には、面ファスナの構成部品である第1面部252aが、左右に一対取り付けられている(左側は図示省略)。
【0065】
図15(b)に示すように、前面シールドカーテン252の背面側(後側)の左右両側端部には、第1面部252aに押し付けられると貼着可能であり面ファスナの構成部品である第2面部252bが複数設置されている。
【0066】
チューブ状部材340を筒状に包囲した筒状シールド部材255がフック227に引っ掛けられて保持されると、トンネル状シールドカーテン251のコの字状の補助部254が、筒状シールド部材255によって外側に押し潰されるようにして筒状シールド部材255の周囲に接触する。それから、前面シールドカーテン252が閉じられて最前方側のフレーム221の開放面が閉止される。このとき、術者等の操作者が前面シールドカーテン252の側端部を、筒状シールド部材255に巻き付けるようにして丸く形成することにより、筒状シールド部材255の周囲に接触させる。この状態で術者等の操作者が前面シールドカーテン252の内側に設置された第2面部252bを最前方側のフレーム221の外側面に設置された第1面部252aに押し付けて貼着させることによって、前面シールドカーテン252の閉止状態が確実になると共に、前面シールドカーテン252の側端部が筒状シールド部材255の周囲に接触した状態に保たれる。なお、チューブ状部材340を筒状に包囲した筒状シールド部材255は、左右一対のフック227のいずれに保持されてもよい。
【0067】
このような筒状シールド部材255を使用することにより、チューブ状部材340が挿通する開口を介して電磁波が電磁シールド部材250の内側に入ることや、チューブ状部材340自体を通して電磁波が電磁シールド部材250の内側に入ることを防止できる。ここで、電磁シールド部材250を筒状シールド部材255の全周に接触させることができると共に、チューブ状部材340の延在方向における筒状シールド部材255の全長を長くできるため、電磁波の出入りをより確実に防止できる。したがって、電磁シールド部材250の内側から外側に引き出されるチューブ状部材340を、電磁シールド構造200のシールド性を損なわずに電磁シールド部材250の外側に設置された患者モニタ用機器等の各種機器(図示せず)に接続することができる。これにより、MRI装置100を用いた良好な撮影が可能となる。
【0068】
また、電磁シールド構造200は、フレーム集合体220の伸展方向の端部の位置L(
図16参照)がMRI装置100により発生する磁場の強度が所定の磁束密度にあることを報知するための報知手段としての第1プランジャ機構280(
図16参照)をさらに有している。
【0069】
前記所定の磁束密度は、ここでは、WHO(世界保健機関)の「5ガウス以下ではいかなる生物学的影響も認められない」との知見に基づいて、5G(ガウス)(0.5mT)に設定されている。また、MRI装置のJIS個別規格では、立ち入り制限区域として、5G(0.5mT)が定義されている。但し、前記所定の磁束密度は、前記値に限定されるものではなく、他の基準に基づいて変更可能である。
【0070】
図16は、電磁シールド構造における第1プランジャ機構の設置場所を説明するための側面図である。
図17は、第1プランジャ機構の詳細を示す一部を切り欠いた拡大図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のF−F線に沿う断面図である。
【0071】
図16に示すように、第1プランジャ機構280は、前から数えて3番目及び5番目のフレーム221の外側面に固定された凹溝部材236にそれぞれ設置されている。但し、第1プランジャ機構280は、他のフレーム221の凹溝部材236に設けられてもよいし、設置個数も任意に設定可能である。
【0072】
図17(a)に示すように、第1プランジャ機構280は、ナット282により凹溝部材236の前後の少なくとも一方の面(
図17では後面)に固定された一対のボールプランジャ283を備えている。ボールプランジャ283は、外面にねじ溝が形成された筒状体内の開口先端部に配置されたボール283aを筒状体内のばね部材で先端側に付勢した構造のものである。このボールプランジャ283は、先端が凹溝部材236の内壁面から突出するように配置されている。
【0073】
一方、
図17(b)に示すように、リンク部材231,232を連結する下部ピン235は、リンク部材231,232にそれぞれ形成された貫通孔(図示せず)に挿通される軸部235bと、軸部235bの先端側に設けられリンク部材231,232の外側への抜けを防止するヘッド部235aと、軸部235bの基端側に設けられ凹溝部材236内に上下方向に摺動可能に係合される円柱部材235cとを有している。
【0074】
フレーム集合体220の伸縮にともなって下部ピン235が上下方向に移動し、下部ピン235の円柱部材235cが一対のボールプランジャ283の一方の先端に当接すると、このボールプランジャ283のボール283aがばね部材の付勢力に抗して後退する。このときフレーム集合体220を伸縮させる操作が適度に重くなる。円柱部材235cが一方のボールプランジャ283のボール283aを乗り越えると、円柱部材235cは一対のボールプランジャ283の先端部に配置された一対のボール283aの間に位置される。
【0075】
この状態でフレーム集合体220を伸縮させようとすると、一対のボールプランジャ283により下部ピン235の移動に抗する抵抗力が働き、フレーム集合体220を伸縮させる操作が適度に重くなるくため、フレーム集合体220が所定長さに伸展された状態で保持されることになる。本実施形態では、この状態においてフレーム集合体220の伸展方向の端部の位置Lが5Gラインとなるように、第1プランジャ機構280の上下方向の設置位置が設定されている。なお、下部ピン235を凹溝部材236内に固定し、上部ピン234を凹溝部材236内に摺動可能に係合した場合には、上部ピン234の移動に抗する抵抗力が働くように第1プランジャ機構280の上下方向の設置位置が設定されることは言うまでもない。
【0076】
このような第1プランジャ機構280によれば、術者等の操作者が、フレーム集合体220の伸展方向の端部の位置によって、WHOによりいかなる生物学的影響も認められないとされる5Gラインを容易に認識することができる。したがって、この5Gライン内の領域が立ち入り制限区域であることを、術者等の操作者に明示して管理することが可能となる。
【0077】
また、電磁シールド構造200は、フレーム集合体220の伸展方向の端部の位置Lが最大伸展位置にある(フレーム集合体220が最大伸展状態にある)ことを報知するための第2プランジャ機構281(
図16参照)をさらに有している。
【0078】
図16に示すように、第2プランジャ機構281は、前から数えて2番目及び4番目のフレーム221の外側面に固定された凹溝部材236にそれぞれ設置されている。但し、第2プランジャ機構281は、他のフレーム221の凹溝部材236に設けられてもよいし、設置個数も任意に設定可能である。
【0079】
第2プランジャ機構281の構成部品は、第1プランジャ機構280と同様であるため説明を省略する。第2プランジャ機構281は、設置位置が第1プランジャ機構280よりも上方に設定されている点で、第1プランジャ機構280と相違している。具体的には、最大伸展位置において、下部ピン235の移動に抗する抵抗力が働くように、第2プランジャ機構281の設置位置が設定されている。
【0080】
このような第2プランジャ機構281によれば、フレーム集合体220を最大伸展長さに伸展した状態で保持することができる。つまり、フレーム集合体220を最大に伸展させた場合には一般に弾性力によって元に戻ろうとするが、これを防止して安定化することができる。なお、フレーム集合体220を最大伸展長さから収縮させる場合、術者等の操作者は初期のみフレーム集合体220を後方に少し強く押すことになる。
【0081】
次に、術中MRI撮影の際の電磁シールド構造200の使用方法について説明する。
まず、患者を載せた手術台兼用のベッド(図示せず)が5Gライン外の領域に設置され、例えば頭部の手術が行われる。この段階では、
図1に示すように、電磁シールド構造200のフレーム集合体220は、電磁シールド体210内に収納されている。
【0082】
そして、手術の進行を確認するためにMRI撮影を行う場合、患者の頭部を固定するためのベッドに付設された頭部定位固定具に撮像コイルが取り付けられる。続いて、患者を載せたベッドが、MRI装置100の前方の導電性床板320上に移動させられ、患者の頭部がMRI装置100のガントリー開口部120に挿入される。
【0083】
続いて、術者等の操作者が取っ手237を掴持して前方に引くと、フレーム集合体220及びこれに取り付けられた電磁シールド部材250が、蛇行抑制機構260の作用により蛇行することなく前方に伸展する。これにより、MRI装置100及び患者を載せたベッドを含む空間が電磁シールド構造200により包囲されて、電磁シールドされる。
【0084】
なお、フレーム集合体220の伸展途中で、第1プランジャ機構280により伸展操作が適度に重くなるが、このときのフレーム集合体220の伸展端位置によって術者等の操作者は5Gラインを認識することができる。
【0085】
また、患者モニタ用ケーブル等のチューブ状部材340が筒状シールド部材255によって包まれた状態でフック227に引っ掛けられた後、前面シールドカーテン252が閉じられて、シールド性が確保される。このようにして電磁シールドされた空間が形成された状態で、術中MRI撮影が行われる。
【0086】
前記したように、本実施形態のMRI装置100用の電磁シールド構造200は、門形状の複数のフレーム221が内側に連続した空間を形成するように水平方向に並んで配置されると共に伸縮可能に連結されたフレーム集合体220と、複数のフレーム221に取り付けられ、可撓性及び透光性を有するシート状の電磁シールド部材250と、フレーム集合体220に取り付けられ、フレーム集合体220が伸縮する際に当該フレーム集合体220の蛇行を抑制する蛇行抑制機構260と、を有している。
【0087】
このような本実施形態によれば、MRI撮影を行うために術者等の操作者がフレーム集合体220を伸縮させる際には、フレーム集合体220はほぼ真直ぐに伸縮する。したがって、フレーム集合体220を伸縮させる操作が過度に重くなって困難になる事態が回避され、操作性が向上する。また、蛇行が大きくなってベッドや患者モニタ用ケーブル等にフレーム221や電磁シールド部材250が接触して撮影に支障をきたす虞も無くなる。
すなわち、MRI撮影に支障をきたすこと無く、シート状の電磁シールド部材250が取り付けられた複数のフレーム221を操作性良くスムーズに伸縮させることができるMRI装置100用の電磁シールド構造200を提供することができる。
【0088】
したがって、MRI撮影を行う際にのみ、撮影に支障をきたすこと無くスムーズに電磁シールド部材250を引き出して、電磁シールドされた空間を作り出すことができる。これにより、例えば狭い手術室でも術中MRI撮影が可能となり、さらに本実施形態が適用された手術室は通常の手術が可能な手術室としても利用することができる。つまり、通常の手術室に、後付けで本実施形態を適用することにより、術中MRI撮影も行える手術室に改変することができる。
【0089】
また、本実施形態では、蛇行抑制機構260は、フレーム集合体220の上部に取り付けられた複数のガイドローラ261と、ガイドローラ261とフレーム集合体220の伸縮方向に移動可能に係合され、前記伸縮方向に沿って延在すると共に前記伸縮方向と直交する水平方向に並んで配置される複数のアーム262と、を備えている。
【0090】
このような構成によれば、伸縮方向と直交する水平方向(左右方向)に並んで配置される複数のアーム262を備えているため、複数のアーム262の全体的な剛性が高くなり、フレーム集合体220の蛇行の抑制力が向上する。また、蛇行抑制機構260はフレーム221の上部に取り付けられているため、床面310上にレール等を敷設する場合と比べて、術者等の操作者が足を取られて撮影に支障をきたす虞を防止することができる。
【0091】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、前記実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0092】
前記実施形態では、第1プランジャ機構280を用いて5Gラインを術者等の操作者に認識させる例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、フレーム集合体220の伸展方向の端部の位置Lが5Gラインにあることを図示しないリミットスイッチ等の検出手段により検出して、ランプの点滅・点灯、ブザー音による警告が行われてもよい。また、床面310上に凹部又は凸部を設け、これをキャスタ223が乗り越える際のショックを術者等の操作者の手に伝えることにより、5Gラインを術者等の操作者に認識させる方法も採用され得る。
【0093】
また、前記実施形態では、蛇行抑制機構260がガイドローラ261とこれに係合するC型チャンネルを用いたアーム262とを備える例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、蛇行抑制機構は、凹部及び凸部の一方が形成されたアームが、凹部及び凸部の他方が形成されたガイド部材に、凹凸嵌合により摺動可能に係合されたものであってもよい。
【0094】
また、前記実施形態では、電磁シールド構造200は、オープン型のMRI装置に適用されているが、トンネル型のMRI装置にも適用可能である。また、電磁シールド構造200の設置場所は、脳外科手術室に限定されるものではなく、他科の手術室や、MRI専用の部屋等の各種の場所であってもよい。
【0095】
また、前記実施形態では、電磁シールド部材250の素材自体のシールド性能を補助するために、金属製の電磁シールド体210を設けているが、この電磁シールド体210は本発明では必ずしも必要ではなく省略してもよい。