(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、燃焼器の熱気が当たる底面でのみ鍋の加熱が行われており、側部の加熱が十分でなかった。
【0005】
したがって本発明の目的は、効率良く加熱することが可能な鍋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鍋は、円筒形状の側部を有する鍋本体と、鍋本体の側面下部であって外側に設けられたリング状の部材であって、燃焼器の上に鍋本体を載置した場合に、燃焼器からの熱気を上方向で且つ鍋本体との間に誘導する熱誘導リングとを備える。
【0007】
熱誘導リングにより、燃焼器からの熱気が上方向に誘導され、鍋本体の側部に熱気が当たり温められやすくなり、熱誘導リングが無い場合にくらべて、鍋本体を温めやすくなる(効率良く加熱出来る)。また、鍋本体の側部のほとんどを覆う筒部がある場合に比べて、燃焼効率は下がるが、筒部などを省略できる分だけ、材料費や加工費のコストダウンメリットがある。特に、業務用の鍋の大きさだと、筒部を取り付ける加工費も、筒部を構成する材料費も少なくなく、1台あたりでも、数万円のコストダウンメリットを得ることも出来る。
【0008】
好ましくは、熱誘導リングは、鍋本体の側面下部から突出する部材を介して、鍋本体に取り付けられる。
【0009】
さらに好ましくは、鍋本体の側面下部から突出する部材の一つは、排出口として使用される。
【0010】
また、好ましくは、熱誘導リングの上方に取り付けられ、鍋本体の側部を覆う筒状の部材である筒部をさらに備え、筒部の外側には、断熱効果がある塗料を使った塗装が施される。
【0011】
燃焼器からの熱気は、熱誘導リングや筒部と、鍋本体の側部との間を通って上昇する。これにより、燃焼器からの熱気の下方から上方への流れを鍋本体の外形を沿うように形成できる。特に、断熱塗料により、筒部の側部からの放熱が妨げられるため、鍋本体を温めるのに燃焼器からの熱気を有効に活用出来る。また、断熱塗料により、筒部の外側面の温度が上がりにくくなるため、筒部を触っても火傷などの事故になりにくいメリットがある。
【0012】
また、好ましくは、熱誘導リングの上方に取り付けられ、鍋本体の側部を覆う筒状の部材である筒部をさらに備え、鍋本体の側面上部から突出し、熱誘導リングとで筒部を挟むフランジ、若しくは、筒部の上部の少なくとも一方は、複数の排気孔を有し、燃焼器からの熱気は、熱誘導リングや筒部と、鍋本体の側部との間を通り、複数の排気孔を介して排出される。
【0013】
燃焼器からの熱気は、熱誘導リングや筒部と、鍋本体の側部との間を通って上昇し、排気孔を介して、外部に放出される。これにより、燃焼器からの熱気の下方から上方への流れを鍋本体の外形を沿うように形成できる。
【0014】
さらに好ましくは、排気孔を封止する封止部材をさらに備える。
【0015】
封止する排気孔の数や位置を調整することにより、燃焼器からの熱気が熱誘導リングや筒部と、鍋本体の側部との間を通過する速度や流れの向きを調整することが可能になる。このため、鍋本体の大きさ、燃焼器の性能、鍋本体に入れる液体の性質などを考慮して、封止する排気孔の数や位置を調整すれば、最適な熱効率で鍋本体を温めることが可能になる。また、排気孔からは熱気が排出されるため、調理者に熱気があたらないように、封止する排気孔の位置を調整することも可能である。
【0016】
さらに好ましくは、排気孔の内側面はねじ切りされ、封止部材としてネジが用いられる。
【0017】
着脱が容易で且つ装着時に外れにくく確実な封止が可能になる。
【0018】
また、好ましくは、鍋本体の下部に、排出口が設けられ、排出口に取り付けられるバルブは、熱誘導リングの外側で取り付けられる。
【0019】
燃焼器からの熱気を熱誘導リングで遮断出来るため、熱誘導リングの外側の部材(バルブ)を遮熱出来る。
【0020】
本発明に係る鍋の熱誘導リングは、円筒形状の側部を有する鍋本体の側面下部であって外側に設けられたリング状の部材であって、燃焼器の上に鍋本体を載置した場合に、燃焼器からの熱気を上方向で且つ鍋本体との間に誘導する。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によれば、効率良く加熱することが可能な鍋を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態について、図を用いて説明する。本実施形態における鍋1は、鍋本体11、下部排出口13、上部排出口15、熱誘導リング17、筒部19、フランジ21、排気孔23、持ち手25、ストレーナー27を備える(
図1、
図2、
図4参照)。
【0024】
鍋本体11は、寸胴鍋など、上部から下部にかけて外径がほとんど変化しない鍋であり、上部には、鍋本体11を圧力鍋として使用するための耐圧蓋50を取り付けるための密閉機構11aが設けられ、パッキン12が挟まれた状態で、耐圧蓋50が鍋本体11に取り付けられる。なお、
図1、
図2、
図6、
図7、
図8、
図9、
図10、
図11、
図12、
図13では、耐圧蓋50を鍋本体11に取り付ける前の状態を示し、密閉機構11aを省略しているが、具体的には、
図14〜
図16に示されるような耐圧蓋50が密閉機構11aを介して、鍋本体11に取り付けられる。
【0025】
鍋本体11への取り付け時に、耐圧蓋50の外側で鍋本体11の上端部(開口部)と接する部分には、鍋本体11の上端部の上部と側部を覆う側面壁51が設けられる(
図14〜
図16参照)。通常は、パッキン12によって鍋本体11と耐圧蓋50の間の空間は密閉されている。ただし、経年劣化などによりパッキン12が破損した場合には、破損した個所から鍋本体11と耐圧蓋50の隙間を介して、蒸気やスープなどの内容物が飛び出すおそれがあるが、側面壁51により、上方や横方向(容器平面遠心方向)に噴出するのを防ぎ、側面壁51と鍋本体11の上端部との隙間から鉛直下向きに放出させることが出来る。
【0026】
鍋本体11への取り付け時に、耐圧蓋50の内側で鍋本体11と接する部分近傍には、半径方向内側に突出する縁部53が設けられる。縁部53と耐圧蓋50の内壁とで形成される部分を、後述する持ち手25の上部に設けられた凸部25aに合わせることで、耐圧蓋50を持ち手25に掛け止めすることが可能になる(
図16参照)。
【0027】
下部排出口13は、鍋本体11の内部の液体を抽出するため、排水のための少なくとも一方に使用される筒状物であり、鍋本体11の下部に設けられ、鍋本体11の内側から、後述する熱誘導リング17の外側に延び、水平方向に液体が流れるように、下部排出口用バルブ33が取り付けられる(
図3参照)。なお、下部排出口13は、筒状物でなく、孔に筒状物が取り付けられる形態でも良い。鍋本体11の底に貯まった液体などがよどみなく排出出来るように、下部排出口13は、鍋本体11の低い位置に設けるのが望ましい。
【0028】
下部排出口用バルブ33には、ジスク(弁体)が球状のボールバルブが用いられる。下部排出口用バルブ33は、ゲートバルブなど他の構造のバルブを使用する形態でもよいが、ボールバルブを採用するのが望ましい。鍋本体11の下部に取り付けられるため、燃焼器40などとの物理的な干渉で、鉛直方向下向きに液体が流れるようにバルブを取り付けることが難しく、水平方向に液体が流れるようにバルブを取り付ける必要があり、水平方向にバルブを取り付けた場合に、ジスク近辺に液体の中に含まれる骨粉などの固形物が滞留する可能性を少なくするためである。また、下部排出口用バルブ33は、メンテナンス(内部の清掃等)の作業性をよくするために、3分割などに分解できる構造を有するものが望ましい。
【0029】
突出部14は、下部排出口13と略同じ外形の円柱形状(若しくは筒状物)を有し、鍋本体11の下部に1以上設けられる(本実施形態では3つ、
図4参照)。下部排出口13の筒状物や、突出部14が、後述する熱誘導リング17との接続に用いられる。突出部14は、
図2などに示されるように、熱誘導リング17や筒部19を貫通する形態であってもよいし、筒部19を貫通せずに、筒部19の内壁がある部分まで突出する形態であってもよい。
【0030】
上部排出口15は、鍋本体11と耐圧蓋50の内側空間の気体の一部を排出して内圧を下げるため(減圧のため)、内部の液体を抽出するための少なくとも一方に使用される筒状物若しくは孔であり、鍋本体11の上部に設けられ、鉛直方向下向きに気体又は液体が流れるように、配管36を介して、上部排出口用バルブ35が取り付けられる(
図5参照)。
【0031】
上部排出口用バルブ35は、他の機器との物理的な干渉を考慮する必要がなく、水平方向に流れるように取り付けてもよいし、鉛直方向下向きに流れるように取り付けてもよい。ただし、水平方向に流れるように取り付けした場合には、固形物が滞留する可能性を少なくするために、ボールバルブを採用するのが望ましい。鉛直方向下向きに流れるように取り付けした場合には、他の構造のバルブを採用しても問題ない。
【0032】
上部排出口15を、鍋本体11の内圧を下げるために使用する場合には、鍋本体11の内部の液体が上部排出口15に取り込まれないように、上部に吸入口を有し、下部におもりを有する液体進入防止部材37を上部排出口15の内側に取り付けるのが望ましい(
図6参照)。下部のおもりにより、吸入口は常に上を向いた状態になり、鍋本体11の液体が、該吸入口を介して上部排出口15から排出されないように出来る。
【0033】
上部排出口15を、鍋本体11の内部の液体を抽出するために使用する場合には、先端部に濾過器(不図示)が設けられ、先端部がストレーナー27の上に載置され、先端部を介して、鍋本体11の下部の液体を上方に送る液送部材38を上部排出口15の内側に取り付けるのが望ましい(
図7参照)。なお、同時に、液体進入防止部材37と液送部材38とが取り付けられるように、上部排出口15を2つ以上設ける形態であってもよい。
【0034】
熱誘導リング17は、鍋本体11の側面下部であって外側に設けられたリング状の部材であり、燃焼器40の上に鍋本体11を載置した場合に、燃焼器40からの熱気を上方向で且つ鍋本体11との間に誘導する。熱誘導リング17は、下部排出口13や突出部14を貫通させる孔17aを有する。
【0035】
熱誘導リング17は、下部排出口13や、突出部14にネジ止め等で固定することにより、鍋本体11の下部に取り付けされる(
図4参照)。ただし、後述する筒部19、フランジ21を介して鍋本体11に取り付けられてもよい。鍋本体11を温める燃焼器40との物理的な干渉や、燃焼に使用される酸素の導入路を妨げない程度に、熱誘導リング17は、鍋本体11の底面よりも下方に突出した状態で鍋本体11に取り付けられるのが望ましい。
【0036】
筒部19は、鍋本体11の側部を覆う筒状の部材であり、フランジ21は、鍋本体11の側面上部から突出する鍔状の部材であり、筒部19は、鉛直方向で、鍋本体11の側面上部に設けられたフランジ21と、鍋本体11の側面下部に取り付けられた熱誘導リング17との間に挟まれる(
図2参照)。
【0037】
熱誘導リング17や筒部19の内径は、鍋本体11の側部の外径よりも大きく、熱誘導リング17や筒部19と、鍋本体11の側部との間に、燃焼器40からの熱気が通る空間が形成される。
【0038】
熱誘導リング17により、燃焼器40からの熱気が上方向に誘導され、鍋本体11の側部に熱気が当たり温められやすくなり、熱誘導リング17が無い場合にくらべて、約15%、鍋本体11を温めやすくなる(効率良く加熱出来る、例えば、
図8や
図9の形態で、鍋本体11に入れた水を沸騰させる時間を約15%短く出来る)。また、燃焼器40からの熱気を熱誘導リング17で遮断出来るため、熱誘導リング17の外側の部材(例えば、後述する下部排気孔用バルブ33)を遮熱出来る。
【0039】
熱誘導リング17により上方向に誘導された熱気は、筒部19により、横方向に逃げずに、鍋本体11の側部に沿って上昇するので、鍋本体11の側部の上方にも熱気が当たり温められやすくなり、熱誘導リング17や筒部19が無い場合にくらべて、約25%、鍋本体11を温めやすくなる(例えば、
図1や
図6の形態で、鍋本体11に入れた水を沸騰させる時間を約25%短く出来る)。
【0040】
筒部19の外側には断熱効果がある塗料を使った塗装が施されるのが望ましい。
【0041】
フランジ21は、鍔状の突出部21aの下部に、筒部19が取り付けられるリング状部材21bが設けられる。リング状部材21bには、全周に渡って、複数の排気孔23が設けられる(
図1参照)。
【0042】
燃焼器40からの熱気は、熱誘導リング17や筒部19と、鍋本体11の側部との間を通って上昇し、排気孔23を介して、外部に放出される。これにより、燃焼器40からの熱気の下方から上方への流れを鍋本体11の外形を沿うように形成できる。特に、断熱塗料により、筒部19の側部からの放熱が妨げられるため、鍋本体11を温めるのに燃焼器40からの熱気を有効に活用出来る。また、断熱塗料により、筒部19の外側面の温度が上がりにくくなるため、筒部19を触っても火傷などの事故になりにくいメリットがある。
【0043】
排気孔23は、封止部材を使って、孔を塞ぐ(封止する)ことも出来る(
図1参照)。特に、排気孔23の内側面をねじ切りし、封止部材としてネジを用いて孔を塞いだ場合には、着脱が容易で且つ装着時に外れにくく確実な封止が可能になる。
【0044】
封止する排気孔23の数や位置を調整することにより、燃焼器40からの熱気が熱誘導リング17や筒部19と、鍋本体11の側部との間を通過する速度や流れの向きを調整することが可能になる。このため、鍋本体11の大きさ、燃焼器の性能、鍋本体11に入れる液体の性質などを考慮して、封止する排気孔23の数や位置を調整すれば、最適な熱効率で鍋本体11を温めることが可能になる。
【0045】
また、排気孔23からは熱気が排出されるため、調理者に熱気があたらないように、封止する排気孔23の位置を調整することも可能である。
【0046】
フランジ21の上部には、コの字形状の持ち手(つる)25が設けられる。不使用時は、持ち手25の把持される部分(上端部)が鍋本体11に近づくように収納される形態であってもよいが、上部が半径方向外側に開いた状態で固定され、かかる上部に凸部25aを設け、耐圧蓋50を掛け止め出来るようにしても良い(
図14〜
図16参照)。持ち手25は、フランジ21の上部に設けられる形態であってもよいし、鍋本体11のフランジ21よりも上方の側面部に設けられる形態であってもよい。
【0047】
ストレーナー27は、濾過に使用される、若しくはストレーナー27の上部と下部の循環に使用される孔27aを有する部材で、鍋本体11の内部(鍋本体11の内壁、若しくは内壁から突出した部分、若しくは内壁から凹んだ部分)に着脱可能な状態で、下部排出口13よりも上流に(下部排出口13にはストレーナー27を通過した液体が流れるように)配置される。例えば、ストレーナー27は、平板状のもので、孔27aを複数有し、該平板の周囲が、鍋本体11の内壁から径方向内側に突出した部分に載置される。ストレーナー27と鍋本体11とが接触する部分にはパッキン(不図示)でシールが施されるのが望ましい。
【0048】
スープ生成に使用される具材は、ストレーナー27の上に載置される。所望するスープの種類によって、孔27aの大きさ、位置、数、形状が異なるストレーナー27を用意するのが望ましい。ストレーナー27は、鍋本体11から取り外して、必要に応じて他のストレーナー27と交換することも可能であるし、目詰まり除去などの清掃を行うことも可能である。
【0049】
下部に設けられた排出口(下部排出口13)からは、抽出目的の液体(スープ)だけでなく、固形物(例えば、スープ生成過程で出来た骨粉など)も一緒に流れ出て、かかる固形物が排出口を詰まらせる恐れがある。本実施形態では、下部排出口13よりも上流に設けられたストレーナー27で、濾過出来るため、固形物が排出口を詰まらせる可能性を低くすることが可能になる。
【0050】
固形物は、ストレーナー27の孔27aを通って下部に流れにくいので、鍋本体11の内側の底部に、固形物が堆積しにくい。このため、鍋本体11の内側の底部が焦げ付く可能性を低くすることが可能になる。孔27aよりも小さい固形物は、ストレーナー27の孔27aを通って下部に流れる可能性があるが、鍋本体11の底部は加熱により液体が対流している上、小さい固形物は軽いため底部に押し当てられる可能性が少なく、焦げ付く可能性を低く出来る。また、鍋本体11の下部に設けられた排出口(下部排出口13)から鍋本体11の内部の液体を抽出(若しくは排出)出来るため、焦げ付きの原因となる固形物が鍋本体11の底にたまりにくいメリットもある。
【0051】
鍋本体11、下部排出口13、上部排出口15、フランジ21は、例えば、アルミニウムの鋳造で一体的に形成される、若しくは、下部排出口13、上部排出口15、フランジ21が、別体で鍋本体11に取り付けられる。
【0052】
本実施形態における鍋1を使って、スープ(例えば、ラーメン用スープ)を生成し抽出する手順を説明する。鍋本体11の底が、燃焼器40の五徳41に接触するように、配置される(
図6、
図7参照)。
【0053】
下部排出口13には、下部排出口用バルブ33が取り付けられ、上部排出口15には、上部排出口用バルブ35が取り付けられる。下部排出口用バルブ33、及び上部排出口用バルブ35もバルブは閉じた状態にされる。上部排出口15を減圧のために使用する場合には、上部排出口15の内側に、液体進入防止部材37が、取り付けられ(
図6参照)、鍋本体11の内部の液体を抽出するために使用する場合には、上部排出口15の内側に、液送部材38が取り付けられる(
図7参照)。
【0054】
所望のスープに適した孔27aを有するストレーナー27が、鍋本体11の内側に取り付けられる。スープを生成するために使用される具材は、ストレーナー27の上に載置される。スープを生成するために使用される水などの液体は、少なくとも、具材が液体で隠れるように投入される。
【0055】
鍋本体11の上部に、耐圧蓋50が固定された後、燃焼器40が点火される。燃焼器40からの熱気は、鍋本体11の底部を熱する他、熱誘導リング17や筒部19を介して、鍋本体11の側部を熱し、封止されていない排気孔23を介して外部に排出される。
【0056】
所定の時間が経過し、所望のスープが生成されると、下部排出口用バルブ33を開く。下部排出口用バルブ33からは、鍋本体11の内部の圧力と、スープの重力によって、鍋本体11の内部のスープであってストレーナー27の孔27aで濾過されたものが抽出される。
【0057】
上部排出口15の内側に、液体進入防止部材37が、取り付けられた場合で、下部排出口用バルブ33を開く前に、上部排出口用バルブ35を開くと、鍋本体11の内部圧力が減少し、沸点が下がり、内部の液体が沸騰することで、撹拌され、乳化が促進される。乳化度合いは、液体の撹拌度合いで変化するため、上部排出口用バルブ35の開き具合を調整して、所望の乳化度合いのスープを得ることが出来る。
【0058】
上部排出口15の内側に、液送部材38が取り付けられた場合には、スープの抽出は、下部排出口用バルブ33を介して行わずに、上部排出口用バルブ35を介して行うことが出来る。下部排出口用バルブ33はボールバルブを用いるため、バルブを流れる流量を細かく調整することが難しいが、上部排出口用バルブ35は流量を細かく調整出来るため、流量を細かく調整してスープの抽出を行いたい場合に有効である。例えば、乳化をしない状態でスープの抽出を行うには、撹拌させないために、低速度でスープの抽出を行うのが望ましい。このため、上部排出口用バルブ35を用いてスープ抽出を行う方が、下部排出口用バルブ33を用いてスープ抽出を行うよりも、乳化度合いが低いスープを抽出しやすい。
【0059】
本実施形態では、圧力鍋を使ってラーメンなどのスープを生成するため、鍋本体11に封入した液体の沸点を高め、食材を通常よりも高い温度と高い圧力の下で温めることができ、短時間で所望のスープを生成することが可能になる。
【0060】
また、熱誘導リング17等により、燃焼器40からの熱気を鍋本体11の側部に当たるように誘導するため、熱誘導リング17等が無い形態に比べて、鍋本体11を温めやすく、且つ均一に(下部と上部とで温度差が少なくなるように)熱を伝えることが可能になる。
【0061】
また、熱誘導リング17等により、鍋本体11を底部だけでなく側部からも加熱することが出来るため、熱誘導リング17等が無い形態に比べて少ない熱量で温めることが可能になり、ストレーナー27との組み合わせにより鍋本体11の底部の焦げ付きの可能性を低くすることが可能になる。
【0062】
また、下部排出口13と上部排出口15により、乳化度合いの異なるスープを生成し抽出することが可能になる。
【0063】
なお、本実施形態では、鍋1が、鍋本体11の上に耐圧蓋50が取り付けられる圧力鍋であるとして説明したが、圧力鍋に限らず、上部から下部にかけて外径がほとんど変化しない円筒形状の側部を有する鍋でも、熱誘導リング17、筒部19、排気孔23による熱効率を高める効果は得られる。なお、圧力鍋でなく、蓋を閉じたまま内部のスープを抽出する作業が発生しない場合には、下部排出口13や上部排出口15が無い形態であってもよい。下部排出口13を省略する場合には、下部排出口13に代えて、略同じ外形の円柱形状(若しくは筒状物)を有する突出部14を設けて、鍋本体11と熱誘導リング17との接続に用いるのが望ましい。
【0064】
また、本実施形態では、燃焼器40からの熱気を鍋本体11の側部に誘導するために熱誘導リング17、筒部19を用いる形態を説明したが、筒部19を省略し、鍋本体11の下部に設けられたリング状の部材(熱誘導リング17)だけても、熱気の誘導効果は得られる(
図8、
図9参照)。この場合、鍋本体11の側部のほとんどを覆う筒部19がある場合に比べて、燃焼効率は下がるが、筒部19やリング状部材21bを省略できる分だけ、材料費や加工費のコストダウンメリットがある。特に、業務用の鍋の大きさだと、筒部19を取り付ける加工費も、筒部19を構成する材料費も少なくなく、1台あたりでも、数万円のコストダウンメリットを得ることも出来る。
【0065】
また、排気孔23は、フランジ21のリング状部材21bに形成される形態を説明したが、筒部19の上部に形成される形態であってもよいし、両方に形成され、かかる排気孔23を重ね合わせてフランジ21と筒部19の取り付けや位置決めに使用してもよい。
【0066】
また、ストレーナー27は、平板状のものを1枚用意するだけの形態でも良いが、ストレーナーの枚数や形状を異なるものにすることも考えられる。
【0067】
例えば、ストレーナー27が、ストレーナー27が鍋本体11に取り付けられる位置よりも低い位置にある円板部27bと、円板部27bと鍋本体11に取り付けられる位置との間に構成される斜辺部27cとを有する形態が考えられる(
図10参照)。円板部27bと斜辺部27cとで、上面が開口した円錐台が形成される。この場合、斜辺部27c、若しくは、斜辺部27cから径方向外側に突出したフランジが鍋本体11の内壁から径方向内側に突出した部分などに載置される。ストレーナー27と鍋本体11とが接触する部分にはパッキン(不図示)でシールが施されるのが望ましい。調理に使用する具材は、円板部27bに載置される。
【0068】
ストレーナー27と鍋本体11とが接触する部分は、下部排出口13との物理的な干渉を避けるために、下部排出口13がある部分よりも低くすることが出来ない。しかしながら、ストレーナー27を円板部27bと斜辺部27cで構成される形状にすることにより、ストレーナー27を平板状のもので構成する場合に比べて、斜辺部27cを使った凹み分だけ、調理に使用する具材を載置する位置を低くすることが出来、ストレーナー27と鍋本体11の底との間の空間を狭くすることが可能になる。調理の際には、具材が隠れる程度まで水などの液体を投入する必要があるが、かかる液体の投入量を減らすことが可能になる。
【0069】
ストレーナー27に設ける孔27aは、
図10のように、円板部27bや斜辺部27cの全体に設けてもよいが、円板部27bには孔27aを設けず、斜辺部27cだけに孔を設ける形態も考えられる(
図11参照)。この場合は、加熱時の堆積膨張によって多少の流れは発生するが、ストレーナー27よりも下の空間と、上の空間との間で液体の混合が生じにくい状態になる。このため、ストレーナー27の下部の液体と混じりにくい状態で、ストレーナー27の上部の具材を調理することが可能になる(例えば、つけ麺のスープ)。この場合は、上部排出口15を介して液体を抽出するか、若しくは、鍋1が圧力鍋でない場合には、蓋を開け鍋本体11の上から液体を抽出し、下部排出口13は、排水に用いられる。つまり、孔27aは、濾過のためではなく、ストレーナー27の上部と下部との間で、液体の循環に用いられる。
【0070】
なお、ストレーナー27に孔27aを設けずに、ストレーナー27よりも上の空間と、下の空間とを遮断すれば、ストレーナー27の上の具材と、下の液体とが混じり合わないようにすることも可能であるが、この場合は、ストレーナー27よりも下用と、ストレーナー27よりも上用とを別々に液体を投入する必要があり作業が繁雑になる。
【0071】
また、ストレーナー27が、複数のストレーナーで構成され、例えば、平板形状の第1ストレーナー27dと、第1ストレーナー27dよりも下流に配置され、円板部27bと斜辺部27cを有する形状の第2ストレーナー27eとを有する形態が考えられる(
図12参照)。
【0072】
第1ストレーナー27dの孔27aが大きく、第2ストレーナー27eの孔27aが小さい場合は、第1ストレーナー27dで大きな固形物を濾し、第2ストレーナー27eでは第1ストレーナー27dを通った小さな固形物を濾す。これにより、下部排出口13からは、ほとんど固形物が無い液体を抽出することが可能になる。この場合、第1ストレーナー27dや第2ストレーナー27eの孔27aは、主に濾過のために用いられる。
【0073】
第1ストレーナー27dの孔27aが小さく、第2ストレーナー27eの孔27aが第1ストレーナー27dの孔27aと同じかそれよりも大きい場合は、加熱時の堆積膨張によって第2ストレーナー27eよりも下の空間の液体が、第1ストレーナー27dと第2ストレーナー27eの間に進入することは考えられるが、第1ストレーナー27dよりも下の空間の液体と、第1ストレーナー27eよりも上の空間の具材とが混じり合いにくい状態で調理することが可能になる。この場合、第1ストレーナー27dや第2ストレーナー27eの孔27aは、濾過のためではなく、ストレーナー27の上部と下部との間で、液体の循環に用いられる。
【0074】
いずれの場合も、第2ストレーナー27eよりも下に固形物が進入しにくいので、鍋本体11の底部に固形物がたまって焦げ付くことを防止することが可能になる。
【0075】
ストレーナー27が複数のストレーナーで構成される場合には、両方のストレーナーが、鍋本体11の内部に着脱可能な状態で配置される形態(
図12参照)であってもよいし、一方のストレーナー(例えば、下側に配置された第2ストレーナー27e)が、鍋本体11の内部に着脱可能な状態で配置され、他方のストレーナー(例えば、上側に配置された第1ストレーナー27d)が、一方のストレーナーに着脱可能な状態で配置される形態であってもよい(
図13参照)。
【0076】
また、ストレーナー27が内容物などの重みで撓まないように、補強のため、複数のストレーナーの間や、ストレーナーと鍋本体11の底部の間であって、ストレーナー27の中心部などに、支柱27fを設ける形態であってもよい(
図13参照)。