(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1および2に示される従来技術では、いずれの場合も乗場呼び釦の操作が必要であるため、同一系統の乗場呼び釦で複数台のエレベータを運行管理する群管理エレベータにおいては、乗場呼び釦が操作され保守点検の対象となっているエレベータ以外に対し、不要な乗場呼び登録が発生してしまい、エレベータ利用者の運行に支障を出してしまうから、単独で設置されたエレベータの場合のみ、上記特許文献1および2に示される従来技術の適用が可能であった。
【0007】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、同一系列の乗場呼び釦で複数台のエレベータを運行管理する場合においても、エレベータ利用者の運行に支障を与えず保守運転が可能なエレベータの保守運転装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係るエレベータの保守運転装置は、
同一系列の乗場呼び釦で複数台のエレベータを運行管理するエレベータ制御装置にて運行管理されるかごを保守運転させるためのエレベータの保守運転装置であって、前記エレベータのかご内に設けられたかご内保守運転スイッチ、および前記かご上に設けられたかご上保守運転スイッチの
うちの、少なくとも前記かご内保守運転スイッチの投入を検出し前記かごの保守運転を指令する保守運転モード検出装置と、この保守運転モード検出装置が保守運転の指令をしている場合に、前記かごの乗場に設けられた
前記乗場呼び釦の操作に応じ、最下階乗場から昇降路底部、および最下階以外の乗場から前記かご上へ作業者が移動可能な位置のいずれかへ前記かごを走行させる保守準備走行装置と、前記乗場呼び釦を所定操作した場合にのみ前記保守準備走行装置を起動させる第1の特殊呼び登録変更装置とを備えたことを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明は、かご内保守運転スイッチ、およびかご上保守運転スイッチ
のうちの、少なくともかご内保守運転スイッチの投入を保守運転モード検出装置が検出し、かごの保守運転を指令している場合に、乗場呼び釦が所定操作された際にのみ、第1の特殊呼び登録変更装置が保守準備走行装置を起動させ、最下階乗場から昇降路底部、および最下階以外の乗場からかご上へ作業者が移動可能な位置のいずれかへかごを走行させる。この結果、乗場呼び釦の操作で保守準備走行装置が起動する際においては、操作された乗場呼び釦が設置された乗場階へのかごの乗場呼び登録が行われないため、他のエレベータの運行に支障を与えることがない。したがって、単独で設置されたエレベータのみならず、同一系列の乗場呼び釦で複数台のエレベータを運行管理する場合においても、意図したエレベータのかごを保守準備走行装置にて保守準備走行させることができるから、エレベータ利用者の運行に支障を与えることなく、保守運転が可能となる。
【0010】
また本発明は、請求項1記載のエレベータの保守運転装置において、
第2の特殊呼び登録変更装置をさらに備え、前記第2の特殊呼び登録変更装置は、前記所定操作を前記第1の特殊呼び登録変更装置が検出し、かつ前記かご内保守運転スイッチの投入による保守運転モードを前記保守運転モード検出装置が検出した場合に前記保守準備走行装置を起動させ、
前記所定操作を前記第1の特殊呼び登録変更装置が検出し、かつ前記かご上保守
運転スイッチの投入による保守運転モードを前記保守運転モード検出装置が検出した場合に前記保守準備走行装置の起動を阻止し、前記所定操作を前記第1の特殊呼び登録変更装置が検出しない場合に前記乗場呼び釦が設置された乗場へかごを移動させる乗場呼び登録を可能とさせ
ることを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、乗場呼び釦の所定操作を第1の特殊呼び登録変更装置が検出し、かつ保守運転モードを保守運転モード検出装置が検出した場合に、保守準備走行装置が起動される。また、乗場呼び釦の所定操作を第1の特殊呼び登録変更装置が検出し、
かつ保守運転モードを保守運転モード検出装置が検出した場合に、保守準備走行装置の起動が阻止される。そして、乗場呼び釦の所定操作を第1の特殊呼び登録変更装置が検出しない場合は、乗場呼び登録が可能となる。この結果、保守運転モードにおいて乗場呼び釦が所定操作された場合にのみ、かごが保守準備走行されるため、かご上に乗り込んで保守作業を行う保守運転モードの場合において乗場呼び釦が操作された場合における、かごの保守準備走行を防止できる。また、乗場呼び釦が所定操作されない場合においては、乗場呼び登録が可能であるため、エレベータの運行に支障を与えない。
【0012】
また本発明は、請求項1又は2記載のエレベータの保守運転装置において、
第3の特殊呼び登録変更装置をさらに備え、前記第3の特殊呼び登録変更装置は、前記所定操作を前記第1の特殊呼び登録変更装置が検出しかつ前記保守運転モードを前記保守運転モード検出装置が検出した場合に複数のかごの中から
、前記乗場呼び
釦の所定操作を検出した前記乗場に最も近いかごを選択し、このかごの保守準備走行装置を起動させ
ることを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明は、乗場呼び釦の所定操作を第1の特殊呼び登録変更装置が検出し、かつ保守運転モードを保守運転モード検出装置が検出した場合に、複数のかごの中から
、乗場呼び
釦の所定操作を検出した乗場に最も近いかごが第3の特殊呼び登録変更装置にて選択され、このかごの保守準備走行装置を起動させるため、同一系列の乗場呼び釦で複数台のエレベータを運行管理する場合においても、効率よく意図したエレベータのかごを保守準備走行させて保守作業ができる。
【0014】
また本発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のエレベータの保守運転装置において、前記所定操作は、前記乗場呼び釦の所定時間を超える長押し操作、および所定時間における所定回数以上の複数回の押し操作の少なくとも一方であることを特徴としている。
【0015】
このように構成した本発明は、乗場呼び釦の所定操作を、乗場呼び釦の他の操作と明確に区別でき、この乗場呼び釦の所定操作の誤操作を防止できるから、エレベータのかごを保守運転させる際の誤動作を防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、かご内保守運転スイッチ、およびかご上保守運転スイッチの
うちの、少なくとも
かご内保守運転スイッチの投入を保守運転モード検出装置が検出し、かごの保守運転を指令している場合に、乗場呼び釦が所定操作された場合にのみ保守準備走行装置が起動し、かごを保守準備走行させる。このため、乗場呼び釦の操作で保守準備走行装置が起動する際に、乗場呼び登録が行われず、その他の場合は、乗場呼び登録が可能となり、他のエレベータの運行に支障を与えない。このように本発明は、単独で設置されたエレベータのみならず、同一系列の乗場呼び釦で複数台のエレベータを運行管理する場合においても、意図したエレベータのかごを保守準備走行できるため、エレベータ利用者の運行に支障を与えることなく、保守運転できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
本発明者らが先に考案した参考例、および本発明に係るエレベータの保守管理装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明
者らが先に考案したエレベータの保守運転装置の
参考例が備えられる単独のエレベータの概要を示す図である。
【0020】
この
図1に示すエレベータは、乗客を乗せるかご1を備えている。このかご1は、メインロープ2を介してつり合い錘3に接続されており、このメインロープ2の中間部がトラクションマシン4に巻回されている。そして、このトラクションマシン4には、かご1の位置情報を検出するためのパルスエンコーダ5が取り付けられている。このパルスエンコーダ5は、エレベータのかご1の移動等を制御するためのエレベータ制御装置6に接続されている。そして、このエレベータ制御装置6は、このエレベータ制御装置6にて運転制御されるかご1を保守運転させるためのエレベータの保守運転装置7を備えている。
【0021】
さらに、かご1は、上下方向に延出した昇降路塔8内に昇降可能に収容されている。この昇降路塔8の上端部には、トラクションマシン4が取り付けられている。さらに、この昇降路塔8内には、メインロープ2とともにつり合い錘3が収容されている。そして、この昇降路塔8の下端に位置する昇降路底部9には、この昇降路底部9でエレベータの保守点検を行う際に、かご1の昇降を停止させるための昇降路底部スイッチ11が設けられている。
【0022】
そして、かご1の内部には、このかご1内で保守運転モードの設定を行うためのかご内保守運転スイッチ12が設けられている。また、このかご1の上部には、このかご1上で保守運転モードの設定を行うためのかご上保守運転スイッチ13が設けられている。ここで、このかご上保守運転スイッチ13は、かご1内に設置されているかご内保守運転スイッチ12が投下操作されている際にのみ投下操作可能に構成されている。また、かご1上には、かご上停止スイッチ(図示せず)が設けられている。このかご上停止スイッチは、かご1の走行運転を可能とさせる運手モードと、このかご1の走行運転を停止させる停止モードとが、切り換え操作できる構成とされている。
【0023】
昇降路塔8に臨む各階の乗場には、乗場呼び釦14がそれぞれ設けられている。これら各乗場呼び釦14のそれぞれは、エレベータ制御装置6に接続されており、各階の乗場に設置された乗場呼び釦14の押下に応じてエレベータのかご1の呼び登録がされ、このエレベータのかご1の運行がエレベータ制御装置6にて制御されて管理されている。
【0024】
そして、このエレベータ制御装置6は、かご1の保守準備走行を制御する保守準備走行装置21と、この保守準備走行装置21の駆動を制御する特殊呼び登録変更装置22と、かご1の走行を制御する走行制御装置23と、パルスエンコーダ5からかご1の位置情報を検出する位置検出装置24を備えている。また、このエレベータ制御装置6は、かご内保守運転スイッチ12の操作状態およびかご上保守運転スイッチ13の操作状態に基づいて、かご1の保守運転状態を検出する保守運転モード検出装置25と、かご1が乗場位置であるドアゾーンに停止しているかどうかを検出するドアゾーン検出装置26とを備えている。ここで、このエレベータ制御装置6のうちの、少なくとも保守準備走行装置21と、特殊呼び登録変更装置22と、保守運転モード検出装置25とによって、エレベータの保守運転装置7が構成されている。
【0025】
さらに、このエレベータの保守運転装置7の保守準備走行装置21は、保守運転モード検出装置25が保守運転の指令をしている場合に、かご1の乗場に設けられた乗場呼び釦14の操作に応じ、最下階乗場から昇降路底部9、および最下階以外の乗場からかご1上へ作業者が移動可能な位置のいずれかへ、かご1を走行させる構成とされている。また、保守運転モード検出装置25は、かご内保守運転スイッチ12、およびかご上保守運転スイッチ13の少なくとも一方の投入を検出し、かご1の保守運転を指令する構成とされている。
【0026】
さらに、エレベータ制御装置6は、かご内保守運転スイッチ12が操作されたことを記憶するかご内スイッチ操作記憶装置27と、かご上保守運転スイッチ13が操作されたことを記憶するかご上スイッチ操作記憶装置28と、昇降路底部スイッチ11が操作されたことを記憶する昇降路底部スイッチ操作記憶装置29とを備えている。
【0027】
一方、エレベータの保守運転装置7の特殊呼び登録変更装置22は、保守運転モード検出装置25が保守運転モードであることを検出し、かつ乗場呼び釦14の特殊操作を検出した場合に、かご1の保守準備走行運転をさせるか否かを判定する構成とされている。さらに、この特殊呼び登録変更装置22は、複数、例えば第1〜第3の特殊呼び登録変更装置31,32,33を備えている。具体的に、第1の特殊呼び登録変更装置31は、いずれかの乗場呼び釦14を特殊操作した場合にのみ、保守準備走行装置21を起動させ、かつ操作された階の乗場呼び釦14によるかご1の呼び登録を行なわないようにする構成とされている。ここで、これら乗場呼び釦14の特殊操作は、予め定めた所定時間以上に亘って連続して押し下げられた状態を継続させた長押し操作が特殊操作、すなわち所定操作としてエレベータ制御装置6に設定されている。
【0028】
次いで、第2の特殊呼び登録変更装置32は、第1の特殊呼び登録変更装置31にて乗場呼び釦14の特殊操作を検出し、かつ保守運転モード検出装置25がかご内保守運転スイッチ12の押下によるかご内保守運転モードを検出した場合に、保守準備走行装置21を起動させる。また、この第2の特殊呼び登録変更装置32は、第1の特殊呼び登録変更装置31にて乗場呼び釦14の特殊操作を検出し、かつ保守運転モード検出装置25がかご上保守運転スイッチ13の押下による保守運転モードを検出した場合に、保守準備走行装置21の起動を阻止する。さらに、この第2の特殊呼び登録変更装置32は、第1の特殊呼び登録変更装置31が乗場呼び釦14の特殊操作を検出しない場合に、操作された乗場呼び釦14が設置された乗場へ、かご1を移動させる通常の乗場呼び登録を行う構成とされている。
【0029】
また、第3の特殊呼び登録変更装置33は、乗場呼び釦14の特殊操作が第1の特殊呼び登録変更装置31にて検出され、かご上保守運転スイッチ13の操作による保守運転モードが保守運転モード検出装置25にて検出された場合に、保守準備走行装置21を起動させる構成とされている。特に、この第3の特殊呼び登録変更装置33は、位置検出装置24にて検出されるかご1の位置情報に基づいて、複数台のエレベータの中から、特殊操作が行われた乗場呼び釦14が設置された乗場階の最も近くに位置するエレベータのかご1を選択し、このかご1の保守準備走行装置21を起動させる構成とされている。
【0030】
図2は、
本参考例が備えられる特殊呼び登録変更装置22によるかご1上に乗り込むまたは昇降路底部9に入出する際の制御を示すフローチャートである。以下、この
図2に示すフローチャートに基づいて、作業者がかご1上に乗り込む際の手順と、昇降路底部8へ入る際の手順について説明する。
【0031】
まず、第1段階として、作業者がかご1上に乗り込むときや、昇降路底部9へ入る場合において、作業者は、乗場からかご1内に入り、このかご1内に設けられているかご内保守運転スイッチ12を投入操作して保守運転モードに設定する(手順101)。この後、作業者は、かご1内から乗場へと出る。
【0032】
このとき、このかご内保守運転スイッチ12の投入操作に基づいて、保守運転モード検出装置25が保守運転モード
を検出する(手順102)。また同時に、このかご内保守運転スイッチ12が操作されたことが、かご内スイッチ操作記憶装置27にて記憶される(手順103)。
【0033】
この後、作業者は、かご1を保守準備走行させて下降運転させることを目的として、乗場呼び釦14を長押しして特殊操作を行う(手順104)。ここで、この手順104の特殊操作がされた際の詳細な手順を、
図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0034】
図3に示すように、上記手順104での特殊操作では、エレベータ制御装置6が、乗場呼び釦14の押し下げ操作を検出する(手順201)。このとき、この乗場呼び釦14と同一の乗場呼び釦14が押し下げられた状態が、所定時間以上に亘って継続された場合に(手順202)、この乗場呼び釦14が特殊操作されたと第1の特殊呼び登録変更装置31によってみなされる。さらに、この乗場呼び釦14の押し下げ操作の検出時に、エレベータが保守運転モードの場合は(手順203)、第2の特殊呼び登録変更装置32によって、このエレベータの保守準備走行装置21が起動される(手順204)。一方、この乗場呼び釦14の操作が特殊操作と認識されず第1の特殊呼び登録変更装置31にてみなされなかった場合や、エレベータが保守運転モードでない場合は、保守準備走行装置21が起動されず、通常の乗場呼び登録操作として処理される(手順205)。ここで、この手順205での通常の乗場呼び登録操作は、乗場呼び釦
14を押し下げて、この乗場呼び釦14が押し下げられた乗場へエレベータのかご1を呼ぶための登録をする操作処理である。
【0035】
図2へ戻り、保守準備走行装置21が起動されたエレベータは、かご内スイッチ操作記憶装置27にてかご内保守運転スイッチ12の操作が記憶されているため、作業者がこれからかご1上に乗り込む、又は昇降路底部9へ入ると限定されるため(手順105)、このときかご1が最下階に停止している場合は(手順106)、上昇運転される(手順107)。一方、最下階以外の階にかご1が停止している場合は、下降運転され(手順108)、パルスエンコーダ5に接続された位置検出装置24によって所定距離ほど走行された後(手順109)、停止される(手順110)。
【0036】
この状態で、作業者は、乗場ドアを開動作させることによって、かご1上に乗り込んだり、昇降路底部8へ入ったりして所要の保守作業を行うことができる。このとき、上記手順105において、かご内保守運転スイッチ12が操作されたことをかご内スイッチ操作記憶装置27が記憶していない場合は、誤動作の可能性があることから、かご1を走行運転させず停止させておく。
【0037】
図4は、
本参考例が備えられる特殊呼び登録変更装置22によるかご1上から降りてかご2内に乗り込む際の制御を示すフローチャートである。以下、この
図4に示すフローチャートに基づいて、作業者が所要の保守作業を終了してから、かご1上から降りて乗場からかご1内に乗り込むまでの手順について説明する。なお、この
図4に示す手順のうち、上述した
図2において説明した事項については、その説明を省略する。
【0038】
まず、かご1上のかご上保守運転スイッチ13は、かご1内のかご内保守運転スイッチ12が投下操作されている際にのみ操作可能である。このため、作業者は、かご1上から降りる場合には、かご1上に設置されたかご上停止スイッチを操作して停止モードにしてから、乗場ドアを開動作させてかご1上から乗場に降り立った後に、かご上保守運転スイッチ13を遮断操作する(手順301)。このとき、かご1内のかご内保守運転スイッチ12は投下済であり、かご上保守運転スイッチ13の遮断操作でかご上保守運転モードからかご内保守運転モードに切り替わる。
【0039】
さらに、このかご1内のかご内保守運転スイッチ12の状態を確認し(手順302)、このかご1内のかご内保守運転スイッチ12は上記手順101で投入しているので(手順302でYes)、保守運転モードとする(手順303)。もし、かご内保守運転スイッチ12が投入されていなければ(手順302でNo)、誤操作の可能性があることから、かご1を走行運転させず停止させておく。このとき、このか
ご上保守運転スイッチ13が操作されているので、かご上スイッチ操作記憶装置28はかご上保守運転スイッチ13の操作を記憶する(手順304)。
【0040】
この後、作業者は、かご1を保守準備走行させて上昇運転させることを目的として、乗場呼び釦14を特殊操作する。この結果、上述した
図3に示す手順と同一の手順が行われ、第2の特殊呼び登録変更装置32によって、このかご1の保守準備走行装置21が起動される(手順305)。
【0041】
すると、この保守準備走行装置21が起動されたエレベータは、かご上保守運転スイッチ13の操作
がかご上スイッチ操作記憶装置28に記憶されているため、作業者がこれから乗場からかご1内に乗り込む場合と限定されて(手順306)、このかご1が上昇運転され(手順307)、ドアゾーン検出装置26にてドアゾーンが検出される位置までかご1が走行されてから(手順308)、停止される(手順309)。この状態で、作業者は、乗場ドアを開けて乗場からかご1内に乗り込むことができる。
【0042】
このとき、上記手順306において、かご上保守運転スイッチ13が操作されたことをかご上スイッチ操作記憶装置28が記憶していない場合は、誤動作の可能性があることから、かご1を走行運転させず停止させておく。
【0043】
図5は、本
参考例が備えられる特殊呼び登録変更装置22による作業者が昇降路底部9から出て乗場からかご1内に乗り込む際の制御を示すフローチャートである。以下、この
図5に示すフローチャートに基づいて、昇降路底部9での所要の保守作業が終了した作業者が、昇降路底部9から乗場に出てかご1内に乗り込むまでの手順について説明する。なお、この
図5に示す手順のうち、上述した
図2において説明した事項については、その説明を省略する。
【0044】
まず、昇降路底部9での保守作業が終了した作業者が、昇降路底部9から乗場へ出る場合には、昇降路底部スイッチ11を投入操作してかご1を停止させる。次いで、乗場ドアを開動作させて昇降路底部9から乗場へ出てから、昇降路底部スイッチ11を再度操作して遮断状態にした後(手順401)、乗場に立つ。このとき、かご内保守運転スイッチ12が投入されて操作されている場合には(手順402)、保守運転モード検出装置25にて保守運転モードと検出される(手順403)。また同時に、昇降路底部スイッチ11が操作されていることが、昇降路底部スイッチ操作記憶装置29に記憶される(手順404)。
【0045】
この後、作業者は、かご1を保守準備走行させて下降運転させることを目的として、乗場呼び釦14を特殊操作する。この結果、上述した
図3に示す手順と同一の手順が行われ、このかご1の保守準備走行装置21が第2の特殊呼び登録変更装置32にて起動される(手順405)。
【0046】
すると、この保守準備走行装置21が起動されたエレベータは、昇降路底部スイッチ11の操作が昇降路底部スイッチ操作記憶装置29にて記憶されていることから(手順406)、これから作業者が乗場からかご1内に乗り込む場合と限定され、このかご1が下降運転され(手順407)、ドアゾーン検出装置26にてドアゾーンが検出される位置までかご1が走行されてから(手順408)、停止される(手順409)。この状態で、作業者は、乗場ドアを開けて乗場からかご1内に乗り込むことができる。
【0047】
このように構成した
参考例によれば、1台のエレベータのみ設置されている単独設置の場合おいて、作業者が昇降路塔8内へ出入りする際に、いずれかの乗場呼び釦14が特殊操作され、かつ保守運転モード検出装置25にて保守運転モードと検出された場合に、保守準備走行装置21を起動させる。そして、この起動させて保守準備走行装置21にて、昇降路塔8内へ出入りしやすい位置へかご1を走行させる保守準備走行をさせ、操作された乗場呼び釦14の乗場階への呼び登録を行わない。一方、特殊操作でない通常の押し下げ操作で乗場呼び釦14を操作した場合は、通常の呼び出し登録が行われる。
【0048】
このため、乗場呼び釦14の操作で保守準備走行装置21が起動する際に、乗場呼び登録が行われず、その他の場合は、通常の乗場呼び登録が可能となり、他のエレベータの運行に支障を与えない。よって、エレベータの保守用運転の際に発生する乗場呼び登録が行われなくなるから、従来、昇降路塔8内へ出入りする際、かご1内やかご1上に運転手を配置させていた保守準備作業を一人の作業者で行うことができるようになり、保守作業の時間短縮および必要作業員数の低減が可能となる。
【0049】
また、乗場呼び釦14の特殊操作を、予め定めた所定時間以上に亘って連続して押し下げた所定操作としたことにより、この特殊操作を、通常の乗場呼び釦14の押し下げ操作と明確に区別できる。よって、この乗場呼び釦14の特殊操作の誤操作を防止できるから、エレベータのかご1を保守運転させる際の誤動作を防止できる。
【0050】
図6は、本発明の
一実施形態が備えられる複数台のエレベータの概要を示す図であり、
図1に示す構成において、複数台のエレベータを同一系統の乗場呼び釦14で制御する場合の構成図である。なお、
図6において、各エレベータのかご1、トラクションマシン4等の周辺装置については、
図1に示す構成と同じ構成であるため、図示および説明を省略する。
【0051】
図6に示す構成においては、複数台設置されているエレベータのうちの1台を親機とし、この親機とされたエレベータのエレベータ制御装置6Aのみに、特殊呼び登録変更装置22が取り付けられている。一方、この親機とされたエレベータ以外の他のエレベータは、子機とされ、これら子機の各エレベータのエレベータ制御装置6Bには、特殊呼び登録変更装置22が取り付けられていない構成とされている。すなわち、これら子機の各エレベータは、親機のエレベータのエレベータ制御装置6
Aに備えられている特殊呼び登録変更装置22によって、子機の各エレベータのエレベータ制御装置6Bに指令が出され制御される。
【0052】
なお、
図6に示す構成においては、特殊呼び登録変更装置22を備えさせてない他のエレベータ、すなわち子機の各エレベータのエレベータ制御装置6Bを、親機のエレベータのエレベータ制御装置6Aから指令を出して制御する構成としているが、複数台のエレベータを統括して管理する群管理エレベータ制御装置(図示せず)等に、特殊呼び登録変更装置22を備えさせ、これら複数台の各エレベータのエレベータ制御装置6に指令を出して制御する構成とすることもできる。
【0053】
また、複数台の各エレベータのエレベータ制御装置6のそれぞれに、特殊呼び登録変更装置22を備えさせ、例えば、これらエレベータのうち最初に特殊呼び登録変更装置22が起動したエレベータを親機とし、この親機以外の他のエレベータのエレベータ制御装置6のそれぞれに指令を出して制御する構成とすることもできる。
【0054】
図7は、本発明の
一実施形態が備えられる特殊呼び登録変更装置22による複数台のエレベータの制御を示すフローチャートである。以下、この
図7に示すフローチャートに基づいて、複数台のエレベータが設置されているビルにおいて、特殊呼び登録変更装置22を用い、作業者がかご1上に乗り込むために所定のエレベータの保守準備走行装置21を起動させるまでの手順について説明する。
【0055】
まず、第1段階として、エレベータ制御装置6が、乗場呼び釦14の押し下げ操作を検出し(手順501)、この乗場呼び釦14と同一の乗場呼び釦14が押し下げられた状態が、所定時間以上に亘って継続された場合に(手順502)、この乗場呼び釦14が特殊操作されたものと第1の特殊呼び登録変更装置32にてみなされる。このとき、複数台のエレベータのうち、保守運転モードに設定されたエレベータが存在し(手順503)、この保守運転モードのエレベータが1台の場合は(手順504)、この保守運転モードに設定されている1台のエレベータの保守準備走行装置21が第2の特殊呼び登録変更装置32にて起動される(手順506)。
【0056】
この場合に、上記手順504において、保守運転モードに設定されているエレベータが複数台存在する場合は、特殊操作とみなされた乗場呼び釦14が設置されている乗場の最も近くのかご1のエレベータが、第3の特殊呼び登録変更装置33によって親機のエレベータとされ(手順506)、このエレベータの保守準備走行装置21が起動される。
【0057】
一方、この乗場呼び釦14の操作が、第1の特殊呼び登録装置31にて特殊操作と認識されなかった場合は、通常の乗場呼び登録操作として処理される(手順507)。また同様に、上記手順503で保守運転モードのエレベータが存在しない場合は、通常の乗場呼び登録操作として処理される(手順507)。
【0058】
このように構成した
一実施形態によれば、乗場呼び釦14が特殊操作された際に、保守運転モードのエレベータが1台の場合は、このエレベータの保守準備走行装置21を起動させる。一方、この場合に、保守運転モードのエレベータが複数台ある場合は、特殊操作された乗場呼び釦14の近くにあるかごのエレベータが親機とされ、このエレベータの保守準備走行装置21が起動される。
【0059】
したがって、同一系列の乗場呼び釦14で複数台のエレベータを運行管理する場合であっても、不要な乗場呼び登録が生じず、意図したエレベータのかご1を保守準備走行できるため、他のエレベータの運行に支障を与えることがない。よって、従来、昇降路塔8内へ出入りする際、かご1内やかご1上に運転手を必要としていた保守作業を一人の作業者で行うことができるから、保守作業の時間短縮および必要作業員数の低減が可能となる。すなわち、同一系統の乗場呼び釦14で制御する複数台のエレベータにおいても適用できる。
【0060】
特に、複数台のエレベータが設置されている場合における、従来の乗場呼び釦を用いた保守作業では、この乗場呼び釦が押されることによって呼び登録がなされ、不要な階でエレベータを停止させてしまい、利用者に不快な思いをさせていた。これに対し、本発明の
一実施形態では、不要な乗場呼び登録が生じないため、エレベータの保守作業時に、エレベータの利用者へ不快な思い等を生じさせるおそれがない。
【0061】
なお、本発明は、上述した実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において種々の実施形態が可能である。例えば、上述した実施形態において、乗場呼び釦14の特殊操作を、所定時間以上に亘って連続して押し下げられた状態を継続させる長押し操作としたが、予め定めた所定時間内に同一の乗場呼び釦14が所定回数以上の複数回に亘って押し下げ操作される連続操作等の、他の特殊操作であってもよい。