(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
弾性材料から構成されて一方を開口すると共に当該開口側と反対側に突出する1または2以上の容器部と、弾性材料から構成されて当該容器部の開口部からその径方向外側に延出して形成される弾性フランジ部とを連接して成り、前記容器部の内側、外側若しくは内部に、前記容器部の前記開口部の方向に開口部を備える有底カップ形状の補強部材を有する防水部材と、
前記防水部材より外方側にあって、前記容器部と対向する位置に貫通孔を備えるカバー部材と、
前記貫通孔から外方向に突出するキートップおよび前記容器部に挿入される軸部を有し、前記容器部に向かって駆動可能な押釦と、
を備え、
前記容器部の外側面と、前記防水部材より内方側にあって前記容器部を挿入する筺体の挿通口の内側との間で防水を図る防水機構部を有し、
前記軸部からの押圧を受けた前記容器部の底部によって前記容器部の下方に配置されるスイッチをオンにし、
前記防水機構部は、前記容器部の外側面に沿って連続形成され、前記挿通口の内壁に圧接する環状リブを備えることを特徴とする防水用押釦スイッチ部材。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯電話、携帯端末(PDA)等の小型の電子機器に対する防水機能の要求が大きくなってきている。かかる機器における浸水箇所は多数存在するが、その主な箇所は、押釦を外に露出させるために設けられた複数の開口部である。当該開口部からの浸水は、機器内部の電気ショートを招き、機器の信用を低下させるおそれがある。そこで、かかる問題をできるだけ生じないようにするため、押釦と機器内部の回路基板上のスイッチとの間に弾性部材を介在させ、開口部と弾性体との接触箇所の一部を密着させる防水構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示される防水構造は、開口側を機器の外側に向けるように貫通孔に装着される弾性材料から成るカップ部材と、当該カップ部材の開口に挿入される軸部を備える押釦とを備え、カップ部材の内側に樹脂若しくは金属製の筒状ホルダを装着したものである。筒状ホルダの存在によって、カップ部材の形状を保持して貫通孔とカップ部材との密着性を維持することができ、また、かかる防水構造を持つ押釦スイッチ部材を機器に組み込む作業も容易になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような従来の防水構造には、次のような解決すべき問題がある。当該防水構造は、筒状ホルダを補強部材として、弾性材料から成るカップ部材の内側に装着したものである。押釦の押し込みの際、カップ部材の底部が伸びて、カップ部材の底部越しに押釦が当該底部の下方に配置されるスイッチを押す。かかる押釦の押圧操作を繰り返すと、カップ部材の底部あるいは底部と側面との境界部分が破れやすくなる。この結果、防水性が損なわれる。
【0006】
カップ部材の耐久性を向上するために、カップ部材の底部の厚さを過度に大きくする方法も考えられるが、当該厚さが増すほど、押釦の押圧によって底部越しにスイッチを押した際の押圧感が悪くなるという別の問題が生じる。
【0007】
本発明は、かかる問題を解消すべくなされたものであって、高い防水性と良好な押圧感を両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一実施形態は、弾性材料から構成されて一方を開口すると共に開口側と反対側に突出する1または2以上の容器部と、弾性材料から構成されて容器部の開口部からその径方向外側に延出して形成される弾性フランジ部とを連接して成り、容器部の内側、外側若しくは内部に、容器部の開口部の方向に開口部を備える有底カップ形状の補強部材を有する防水部材と、防水部材より外方側にあって容器部と対向する位置に貫通孔を備えるカバー部材と、貫通孔から外方向に突出するキートップおよび容器部に挿入される軸部を有し、容器部に向かって駆動可能な押釦と、を備え、容器部の外側面と、防水部材より内方側にあって容器部を挿入する筺体の挿通口の内側との間で防水を図る防水機構部を有し、軸部からの押圧を受けた容器部の底部によって容器部の下方に配置されるスイッチをオンにする防水用押釦スイッチ部材である。
【0009】
本発明の別の実施形態は、上記形態において、防水機構部には、容器部の外側面に沿って連続形成され、挿通口の内壁に圧接する環状リブを備える防水用押釦スイッチ部材である。
【0010】
本発明の別の実施形態は、上記形態において、防水機構部には、容器部の外側面に沿って連続形成される環状嵌合突出部と、挿通口の内壁に沿って連続形成され環状嵌合突出部と嵌合する環状嵌合溝と、を備える防水用押釦スイッチ部材である。
【0011】
本発明の一形態は、上記いずれかの防水用押釦スイッチ部材を備える電子機器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い防水性と良好な押圧感を両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の防水用押釦スイッチ部材およびそれを備える電子機器の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以後の説明では、電子機器として携帯通信端末を例示するが、電子機器は、携帯電話機器、リモートコントローラー、小型テレビ受像機等の他の機器も含めるように広義に解釈される。
【0015】
1.第一の実施の形態
図1は、第一の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材を備える電子機器の斜視図を示す。
【0016】
本発明の第一の実施の形態に係る電子機器1は、その側面に凹部2を備えている。凹部2は、第一の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材3を嵌め込み可能な形態を備える。なお、凹部2は、電子機器1の側面に限定されず、表示部を配置した表側の面あるいは電子機器1の裏側の面に形成されても良い。したがって、防水用押釦スイッチ部材3も、また、電子機器1の表側あるいは裏側の面に備えても良い。
【0017】
図2は、
図1に示す防水用押釦スイッチ部材の分解斜視図を示す。
図3は、
図2に示す防水用押釦スイッチ部材を構成する防水部材の斜視図を示す。
【0018】
防水用押釦スイッチ部材3は、電子機器1にはめ込まれた状態におけるその内方側から外方側に向かって、防水部材10、押釦20、カバー部材30の順に重ねた構成を有する。防水部材10は、弾性材料から構成されて一方を開口すると共に開口側と反対側に突出する3個の容器部10aと、弾性材料から構成されて容器部10aの開口部12からその径方向外側に延出して形成される弾性フランジ部10bとを連接して成る。弾性フランジ部10bおよび容器部10aは、それぞれ別体にて構成されているものを接着して防水部材10を構成しても良く、また、一体として防水部材10を構成しても良い。製造工程の簡略化および低コスト化の観点から、後者のように弾性フランジ部10bおよび容器部10aを一体成形して防水部材10を構成する方が好ましい。
【0019】
この実施の形態において、弾性フランジ部10bは、薄厚で細長い形態を有しており、その長さ方向に3個の容器部10aを直列に配置する。ただし、弾性フランジ部10bの形態は、上記形態に限定されず、円、正方形あるいは十字形等の如何なる形態でも良い。また、容器部10aの配列、数、大きさについても、同様に如何なる配列、数、大きさでも良い。防水部材10を構成する弾性材料は、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーあるいは天然ゴム等から好適に成り、その中でもより好適には熱硬化性エラストマーの一種であるシリコーンゴムから成る。
【0020】
押釦20は、カバー部材30から一部を露出して、防水部材10の容器部10aに向かって駆動可能な部材であって、容器部10aの数と同数の3個備えられる。押釦20は、フランジ部21と、フランジ部21の一方の平面から突出すると共にフランジ部21よりも小径の底面を有するキートップ22と、フランジ部21のキートップ22と反対側にある他方の平面から突出すると共にフランジ部21よりも小径の底面を有する軸部23と、を備える。フランジ部21、キートップ22および軸部23は、それぞれ別体にて構成されているものを接着して押釦20を構成しても良く、また、一体として押釦20を構成しても良い。製造工程の簡略化および低コスト化の観点から、後者のように一体成形によって押釦20を構成する方が好ましい。なお、押釦20は、軸部23およびキートップ22をそれぞれ1個ずつ備える形態に限定されず、軸部23を複数備えた樹脂シートや弾性シート上に、1つまたは複数のキートップ22を備える形態であっても良い。この実施の形態において、フランジ部21は、薄厚の円板形状を有する。また、キートップ22は、フランジ部21から徐々に水平断面を小さくする台形形状を有し、その高さ方向の大部分を、カバー部材30の貫通孔(後述する)から挿通できる形態を有する。軸部23は、防水部材10の容器部10aの開口部12から挿入可能な径を有し、かつ容器部10aの底部に接触して、押釦20の押し込みによってスイッチをオンにすることが可能な駆動量を確保するのに十分な長さを有する。軸部23は、フランジ部21からその反対方向に向かって徐々に水平断面を小さくする台形形状を有する。押釦20は、キートップ22をカバー部材30の内側から外側に向かって貫通させ、軸部23を容器部10a内に挿入した状態で、防水用押釦スイッチ部材3に配置される。
【0021】
フランジ部21の形状は、円板以外の形状、例えば、矩形や三角形の板状体でも良い。また、キートップ22および軸部23は、台形以外の形状、例えば、円柱形状、直方体形状でも良い。押釦20は、防水部材10よりも硬質の材料、例えば、樹脂、金属、セラミックス、黒鉛等から好適に構成される。金属としては、ステンレススチール、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄等を例示できる。樹脂としては、アクリル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、あるいは2種以上の樹脂からなるポリマーアロイ等を例示できる。セラミックスとしては、アルミナ、窒化珪素、ジルコニア等を例示できる。
【0022】
図3に示すように、各容器部10aは、その外側面の周面に沿って連続形成される環状リブ13を備える。環状リブ13は、電子機器1の内方に配置される筺体との間で防水を図る防水機構部の一例である。環状リブ13は、好適には、容器部10aの開口部12と平行に形成される。ただし、環状リブ13を開口部12と非平行に形成することもできる。環状リブ13は、容器部10aと別体に構成され、容器部10aに接着されても良く、また、環状リブ13を一体化した容器部10aを製造しても良い。高い防水性、製造工程の簡略化および低コスト化を図る観点から、後者のように、環状リブ13を一体成形して容器部10aを構成する方が好ましい。環状リブ13については、後ほど詳述する。
【0023】
カバー部材30は、防水部材10より外方側にあって、防水部材10より硬質の材料、例えば、上記例示の押釦20の構成材料の選択肢の1つ若しくは2以上の組み合わせから好適に構成される。また、カバー部材30を防水部材10と同じ材料(弾性材料)から構成することもできる。カバー部材30は、防水部材10と同じ細長い形態を備える。カバー部材30は、各押釦20のキートップ22を挿通可能であるがフランジ21を挿通しない大きさの貫通孔31を、各容器部10aと対向する位置に、カバー部材30の長さ方向に直列に備える。カバー部材30は、防水部材10と好適には嵌め込み式で固定可能な形態を備えるが、接着やビス止め等により防水部材10と固定可能であっても良い。さらには、カバー部材30は、電子機器1の内方の筐体と固定可能であって、防水部材10を単に挟み込むようにしても良い。
【0024】
図4は、第一の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材を電子機器にセットした状態における主要断面図およびその一部Xの拡大図を示す。
【0025】
防水部材10は、容器部10aを電子機器1内部の筐体40に形成された挿通口41に挿入させ、弾性フランジ部10bを筐体40の外面に載置した状態にて配置される。容器部10aは、その内側に、補強部材50を挿入した状態で配置する。補強部材50は、容器部10aの開口部12の方向に開口部を備える有底カップ形状の部材であり、その底部を容器部10aの底部に接する状態にて、容器部10aの内側に固定される。
図4の一部Xの拡大図に示すように、容器部10aは、環状リブ13を筐体40の挿通口41の内壁に圧接した状態で、挿通口41内に配置される。環状リブ13と筐体40の挿通口41の内壁は、ともに防水機構部を構成する。補強部材50は、有底カップ形状の部材であるため、容器部10aの径方向の形状を保持する機能を持つ。したがって、環状リブ13と挿通口41との密着性を常に保持することができる。補強部材50は、上記以外の機能の他、容器部10aを筐体40の挿通口41に挿入しやすくする機能、押釦20の押圧によって、軸部23が容器部10aの底を破かないようにする機能を併せ持つ。さらに、後述するように、軸部23が補強部材50の底部を押して、容器部10aによってその下方に配置されるスイッチが押し込まれる際に、補強部材50は、良好な押圧感を使用者に与えるという機能も有する。
【0026】
かかる機能を発揮するための補強部材50は、防水部材10よりも硬質の材料、例えば、樹脂、金属、セラミックス、黒鉛等から好適に構成される。金属としては、ステンレススチール、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄等を例示できる。樹脂としては、アクリル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、あるいは2種以上の樹脂からなるポリマーアロイ等を例示できる。セラミックスとしては、アルミナ、窒化珪素、ジルコニア等を例示できる。軽薄短小化を図る場合には、剛性の高い金属部材にて補強部材50を構成するのが好ましく、また、キートップ22を内方側から照光する場合には透過性の高い樹脂にて補強部材50を構成するのが好ましい。
【0027】
押釦20は、軸部23を容器部10a内に挿入して、補強部材50の底部に当接させて配置される。カバー部材30は、貫通孔31から押釦20のキートップ22を挿通させ、押釦20のフランジ部21を貫通孔31の周囲に形成される鍔32の裏面に当接させた状態で、防水部材10の外側から覆い筐体40に固定される。カバー部材30は、貫通孔31の外周側の裏側の面に、内方に向けて突出する環状凸部33を備え、環状凸部33によって弾性フランジ部10bを筐体40側に押圧するように、電子機器1にセットされる。環状凸部33を弾性フランジ部10bに強く圧接する場合には、環状凸部33は、防水部材として機能し得る。しかし、容器部10aに形成される環状リブ13と筐体40の挿通口41の内壁との圧接によって防水を図っているので、環状凸部33による防水は必須ではない。したがって、環状凸部33をカバー部材30に形成していなくても良い。
【0028】
筐体40より内方には、回路基板60が配置される。回路基板60は、その表側の面に、スイッチ基板61を備える。スイッチ基板61は、筐体40の挿通口41の下方位置に、スイッチの一例であるドームスイッチ62を備える。ドームスイッチ62は、導電性に優れた材料、例えば、スチールから成る。ドームスイッチ62の環状下端は、スイッチ基板61上に形成された電極63に、電気的に接続される。また、スイッチ基板61上であって、ドームスイッチ62の凸部の直下位置には、電極63と電気的に非接触状態の電極64が配置される。ドームスイッチ62は、スイッチ基板61と固定するため、その上方の容器部10aと接触する領域を除く領域およびスイッチ基板61をシート65によって覆われる。容器部10aと接触する領域を除いてシート65を被せているのは、軸部23とドームスイッチ62との間に挟まれる部材に、できるだけ柔らかい材料を介在させないようにして、良好な押圧感を使用者に与えるためである。
【0029】
電子機器1の内部および防水用押釦スイッチ部材3を上記の構成とすると、キートップ22を電子機器1の内方に向けて押し込んだ際に、軸部23が補強部材50越しに容器部10aの底部を内方に押す。すると、防水部材10の弾性フランジ部10bと容器部10aとの接続領域が伸びて、容器部10aが電子機器1の内方側に移動し、ドームスイッチ62をへこませる。この結果、電極63と電極64は、ドームスイッチ62を介して電気的に接続され、スイッチがオンになる。なお、軸部23がドームスイッチ62をへこませてスイッチをオンにするまで、フランジ部21が弾性フランジ部10bに接触しないように、カバー部材30の鍔32から弾性フランジ部10bまでの距離は、軸部23の可動距離よりも長い。容器部10aが内方側に移動する際、環状リブ13は、挿通口41の内壁との間で圧接状態を保持しながら、電子機器1の内方に向かって挿通口41を移動する。このため、押釦20の押圧操作時にも高い防水性を発揮できる。
【0030】
キートップ22を電子機器1の内方側に向けて押し込んだ後、その押圧を解除すると、ドームスイッチ62がその弾性によって元の状態に戻ろうとする。同時に、容器部10aの開口部12周囲の弾性フランジ部10bも、伸びた状態から元の状態に戻ろうとする。その結果、押釦20と容器部10aは電子機器1の外方側に移動する。電極63と電極64は、ドームスイッチ62が元の形状に戻ることによって電気的に非接触状態に戻り、スイッチがオフになる。なお、上述のスイッチのオンまたはオフは、上記と逆であっても良い。
【0031】
2.第二の実施の形態
次に、本発明の第二の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材およびそれを備える電子機器について説明する。第二の実施の形態において、上述の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、また、重複した説明を省略する。第二の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材が第一の実施の形態に係るそれと異なる点は、防水機構部の形態であり、それ以外については第一の実施の形態と共通する。
【0032】
図5は、第二の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材を電子機器にセットした状態における主要断面図およびその一部Yの拡大図を示す。
【0033】
図5の一部Yの拡大図に示すように、容器部10aは、その外側面に、周面に沿って連続形成される環状嵌合突出部15を備える。環状嵌合突出部15は、好適には、容器部10aの開口部12と平行に形成される。筐体40の挿通口41は、その内壁に沿って連続形成される環状嵌合溝42を備える。環状嵌合溝42は、環状嵌合突出部15と嵌合する形態を有する。環状嵌合溝42と環状嵌合突出部15は、密接して、それより内方への防水を図る防水機構部の一例である。容器部10aは、環状嵌合突出部15を環状嵌合溝42に嵌合した状態で、筐体40の挿通口41内に配置される。補強部材50は、有底カップ形状の部材であるため、容器部10aの径方向の形状を保持する機能を持つ。したがって、環状嵌合突出部15と環状嵌合溝42との密着性を常に保持することができる。環状嵌合突出部15は、好適には、容器部10aの外側面から径方向外側に向かった端部を厚くし、当該端部より径方向内側に向かった位置を当該端部より薄くしたネック部16を備える。特に、環状嵌合突出部15の端部を環状嵌合溝42内に嵌め込み、ネック部16を環状嵌合溝42の開口部近傍に位置するように、環状嵌合突出部15を構成するのが好ましい。また、環状嵌合突出部15を、第一の実施の形態における環状リブ13と同様にネック部16を持たない突出形状とする共に、環状嵌合溝42をその開口部分にくびれを持たない形状とし、押釦20の押し込みおよびその解除に伴い、環状嵌合突出部15が特定の部位から折れ曲がることなく環状嵌合溝42内にて上下可動としても良い。
【0034】
図6は、
図5に示す防水用押釦スイッチ部材において、押釦を押す前後の防水機構部の状態の変化を示す部分断面図である。
【0035】
キートップ22を電子機器1の内方に向けて押し込むと、軸部23が補強部材50越しに容器部10aの底部を内方に押す。すると、防水部材10の弾性フランジ部10bと容器部10aとの接続領域が伸びて、容器部10aが電子機器1の内方側に移動し、ドームスイッチ62をへこませる。この結果、電極63と電極64は、ドームスイッチ62を介して電気的に接続され、スイッチがオンになる。この際、容器部10aの環状嵌合突出部15は、
図6に示すように、その端部を環状嵌合溝42内に保持した状態で、ネック部16から曲がり、容器部10aの電子機器1内方への移動(黒矢印方向への移動)を許容する。環状嵌合突出部15は、容器部10aの内方への移動の際に、環状嵌合溝42から外れないための十分な長さと柔軟性を有する。環状嵌合突出部15は、容器部10aと別体にて容器部10aの外側壁に接着されても良いが、高い防水性、高い強度、製造工程の簡略化および低コスト化を図る観点から、一体成形によって容器部10aと一体に製造される方が好ましい。
【0036】
キートップ22を電子機器1の内方側に向けて押し込んだ後、その押圧を解除すると、ドームスイッチ62がその弾性によって元の状態に戻ろうとする。同時に、容器部10aの開口部12周囲の弾性フランジ部10bも伸びた状態から元の状態に戻ろうとし、環状嵌合突出部15も元の状態に戻ろうとする。その結果、押釦20と容器部10aは電子機器1の外方側に移動する。
【0037】
3.その他の実施の形態
以上、本発明に係る防水用押釦スイッチ部材およびそれを用いる電子機器の各実施の形態を説明してきたが、本発明は、上記の各実施の形態に限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0038】
図7は、
図4に示す筐体の挿通口の変形例の断面図およびその一部Zの拡大図を示す。
【0039】
図4に示す筐体40の挿通口41は、凹凸のない内側面を有するものであるが、
図7に示すように、挿通口41からその径方向内側に、容器部10aの環状リブ13より外方向に環状の突出部45を設け、容器部10aが外方向に抜けるのを防止しても良い。この場合、防水部材10を筐体40にセットする際には、環状リブ13をその径方向内側に変形させながら、挿通口41の突出部45を乗り越えるが、一旦、乗り越えた後には、容器部10aに対して極めて大きな引き抜き力を加えない限り、容器部10aは挿通口41から容易に抜けない。なお、突出部45は、挿通口41の外側開口部に、鍔部として形成しても良い。さらに、突出部45は、必ずしも、環状に連続形成される必要はなく、挿通口41の内周において部分的に突出する構成でも良い。
【0040】
補強部材50は、容器部10aの内側に固定されているが、容器部10aの内部に埋設され、あるいは容器部10aの外側に固定されていても良い。強部材50を容器部10aの内側に固定せず、単に配置するだけでも良い。また、ドームスイッチ62以外のスイッチ、例えば、タクトスイッチ等を筐体40より電子機器1の内方に配置しても良い。その場合、押釦20は、押圧後にその押圧を解除した際、もっぱら防水部材10の弾性変形によって元の位置に戻る。
【0041】
防水機構部の一例である環状嵌合突出部15と環状嵌合溝42との組み合わせを維持したまま、容器部10a側に環状嵌合溝42を、筐体40の挿通口41の内壁側に環状嵌合突出部15を、それぞれ形成し、第二の実施の形態における凹凸関係を逆にしても良い。